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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電磁放射線遮蔽部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240216BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240216BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240216BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240216BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H05K9/00 W
C08K3/04
C08K7/06
C08L53/02
B29C45/14
B32B25/08
B32B27/18 J
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021578130
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020068200
(87)【国際公開番号】W WO2021001298
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】102019118092.9
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー シュロイフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ズッター
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ハウアー
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド グルーネ
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-66936(JP,A)
【文献】特開2012-186222(JP,A)
【文献】特開2014-57042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C08K 3/04
C08K 7/06
C08L 53/02
B29C 45/14
B32B 25/08
B32B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線遮蔽基材の製造方法であって、
i)少なくとも1つの導電性フィラーを含む第1のポリマー材料(a)またはその前駆体を提供し、かつ少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)またはその前駆体を提供し、
ii)前記ステップi)で提供されたポリマー材料(a)および(b)またはその前駆体を成形に供して、前記ポリマー材料(a)および(b)を材料接続により結合させ、その際、前記前駆体が存在する場合には前記前駆体を重合させ、
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、熱可塑性エラストマーを含むか、または少なくとも1つの熱可塑性エラストマーからなり、前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性コポリエステルエラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、およびオレフィン系架橋熱可塑性エラストマー、ポリエーテルブロックアミド、およびそれらの混合物から選択され、
前記ポリマー材料(b)のポリマー成分は、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリル-メチルメタクリレート、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クロロスルホネート、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリネオプレン、ポリニトリル、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、エチレン-プロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物から選択され、
前記成形の後に、さらなるステップで、前記ステップii)で得られた基材で電子部品をコーティングおよび/または被覆し、かつ/または前記ステップii)で得られた基材に電子部品を埋め込む、方法。
【請求項2】
前記材料接続は、射出成形法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記射出成形法は、背面射出成形法である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ステップi)で提供される、前記ポリマー材料(a)、前記ポリマー材料(a)の前駆体、前記ポリマー材料(b)、および前記ポリマー材料(b)の前駆体から選択される成分のうち少なくとも1つは、ステップii)での成形のために流動性のある形態で使用されるか、またはステップii)のプロセス条件下で成形可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップii)で、材料接続による少なくとも1つの結合、および任意にさらに形状接続による少なくとも1つの結合を形成する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
さらにステップii)で、前記ポリマー材料(a)および(b)を、少なくとも1つのポリマー材料(c)またはその前駆体と、材料接続および/または形状接続により結合させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
iii)前記(a)および(b)および任意に(c)の複合材を、材料接続および/または形状接続により結合させ、任意にさらなる成形に供し、
その際、前記ステップiii)を、1回または複数回繰り返すことができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ステップi)で、ポリマー材料(a)または(b)のうちの一方を、コンポジット、好ましくは層状のコンポジットの形態で提供する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記コンポジットは、前記ポリマー材料(a)または(b)のポリマー成分と、少なくとも1つのさらなる成分(K)とを含み、前記さらなる成分(K)は、好ましくは、ポリマー、高分子材料、金属材料、セラミックス材料、鉱物材料、テキスタイル材料、およびそれらの組み合わせから選択され、特に好ましくは、ポリマーフィルム、ポリマー成形体、金属箔、金属成形体、強化および/または充填されたプラスチック材料、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ステップi)で、前記ポリマー材料(a)または(b)のポリマー成分をポリマーフィルム上のコーティングとして含むコンポジットを提供し、ステップii)で、前記コンポジットを、射出成形により別のポリマー材料と材料接続により結合させる、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
ステップi)で、前記ポリマー材料(a)のポリマー成分をポリマーフィルム上のコーティングとして含むコンポジットを提供する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
- 前記ポリマーフィルムを、前記射出成形ステップii)の後に、得られた射出成形体から剥離するか、または
- 前記ポリマーフィルムは、前記射出成形ステップii)の後に、得られた射出成形体と結合したままである、
請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記コンポジットは、少なくとも1つの強化および/または充填されたプラスチック材料を含み、前記強化材は、好ましくは、繊維状強化材、繊維状強化材の織物、繊維状強化材のレイドウェブ、繊維状強化材の緯編物、および繊維状強化材の経編物、ならびにそれらの混合物から選択され、前記フィラーは、好ましくは、カオリン、チョーク、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス粒子、およびそれらの混合物などの粒子状フィラーから選択される、請求項8または9記載の方法。
【請求項14】
前記ステップi)で提供されたポリマー材料(a)および(b)は、双方とも可塑性を示し、前記ステップii)で、前記ポリマー材料(a)および(b)を、多成分射出成形によって材料接続により結合させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
多成分射出成形には、以下の技術:コアバック法、トランスファ法、ロータリー法、シフト法、サンドイッチ法のうち少なくとも1つが用いられる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
以下:
- センサ機能を有する基材の成形、
- 機械的振動を防止するための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 衝突防止性を向上させるための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 絶縁耐力を向上させるための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 腐食防止機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 酸化防止機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 光保護機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 発熱体としての少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 熱電特性を有し、それによって電流を発生させることができる少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- シール要素のオーバーモールド成形、
- 保持および/または結合要素のオーバーモールド成形
のうち1つ以上の手段によって追加機能を前記基材に組み込む、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料(c)のポリマー成分は、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリル-メチルメタクリレート、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クロロスルホネート、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリネオプレン、ポリニトリル、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、エチレン-プロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項6または7記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、SEBS、SEPS、SBS、SEEPS、SiBS、SIS、SIBS、またはそれらの混合物、特に、SBS、SEBS、SEPS、SEEPSから選択される、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、オレフィン系熱可塑性エラストマーから選択され、特に、PP/EPDMおよびエチレン-プロピレン共重合体から選択される、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選択され、特に、少なくとも1つの高分子量ポリオールから誘導されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選択され、殊に、少なくとも1つのポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの高分子量ポリオールから誘導されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選択される、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー材料(c)のポリマー成分は、エラストマー、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物から選択される、請求項6、7または17記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、架橋熱可塑性スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系架橋熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー材料(a)のポリマー成分は、少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンを含む、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンは、低分岐状または線状であり、好ましくは0~20%の分岐度を有し、特に線状である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー材料(a)は、少なくとも1つの導電性ポリマーをさらに含む、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPhc)、スルホン化ポリスチレンポリマー、炭素繊維充填ポリマー、ならびにそれらの混合物、誘導体、および共重合体から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイト、グラフェン、導電性カーボンブラック、金属被覆支持体、単体金属、金属酸化物、金属合金、金属繊維、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記導電性フィラーは、金属からなる均質な層としては存在せず、好ましくは、前記導電性フィラーは、金属蒸着で得られた金属層でもなく、金属箔でもない、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記導電性フィラーは、カーボンブラックと、カーボンブラックとは異なる少なくとも1つの成分との混合物を含み、好ましくは、前記カーボンブラックとは異なる成分は、金属被覆支持体、単体金属、金属酸化物、金属合金、金属繊維、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記導電性フィラーは、少なくとも1つの導電性カーボンブラックと少なくとも1つの金属含有材料との混合物である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
請求項1から30までのいずれか1項記載の方法により得られる、基材。
【請求項32】
請求項31記載の、または請求項1から30までのいずれか1項記載の方法により得られる基材を含むか、またはそれからなる、電磁放射線遮蔽装置。
【請求項33】
電磁放射線を特にエレクトロニクス用筐体において遮蔽するための、請求項1から30までのいずれか1項記載の方法により得られる基材の使用。
【請求項34】
電動車両、航空機、宇宙船における、好ましくは電動車両およびドローンにおける、請求項33記載の基材の使用。
【請求項35】
パワーエレクトロニクス、バッテリ、電気モータの分野の電磁放射線を遮蔽するための、ならびにナビゲーションおよび通信ユニットの遮蔽のための、特に好ましくは、インバータ、DC/DCコンバータ、車載充電器の電磁放射線を遮蔽するための、およびGPSシステムの遮蔽のための、請求項33または34記載の基材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、電磁放射線遮蔽基材の製造方法、該方法により得られる基材および装置、ならびに特にエレクトロモビリティ分野で電磁放射線を遮蔽するためのその使用に関する。
【0002】
従来技術
電磁波には、電界成分と磁界成分とがある。電子部品が発する波は、相互に電磁干渉(EMI)を引き起こす可能性がある。半導体技術の飛躍的な進歩により、電子部品はますます小型化し、電子装置内のその密度は大幅に高まっている。例えばエレクトロモビリティ、航空宇宙技術、または医療技術などの分野では、電子システムの複雑化に伴い、個々のコンポーネントの電磁両立性が大きな課題となっている。例えば、電動車両では、高出力の電気駆動装置が非常に狭い空間に組み込まれ、電子部品によって制御されているが、個々の部品が互いに干渉してはならない。電磁両立性を実現するために、電磁的影響を遮蔽筐体により減衰させることが知られている。電磁両立性(EMC)という用語は、例えば、DIN VDE 0870によれば、電気機器がその環境において、他の機器をも含み得るこの環境に許容できない影響を与えることなく満足に機能する能力と定義されている。したがって、EMCは、放出された放射線の遮蔽と他の電磁放射線に対する耐性という2つの条件を満たす必要がある。この場合、多くの国では、対応するデバイスが法的規制に準拠している必要がある。DIN VDE 0870によれば、電磁干渉(EMI)とは、電磁波が電気回路、デバイス、システム、または生体に及ぼす影響のことである。このような影響は、影響を受ける対象物において、許容できる障害のみならず、例えばデバイスの機能性や人への危険性など、許容できない障害をも招き得る。このような場合には、対応する保護措置を講じなければならない。EMI遮蔽の対象となる周波領域は、一般的に100Hz~100GHzである。照射された電磁波を遮蔽することで得られる減衰は、すべての遮蔽原理において、一般的に反射および吸収から構成される。吸収の場合には、電磁波のエネルギーが失われてそれが熱エネルギーに変換され、吸収量は遮蔽材の壁厚に依存する。一方で、反射は、周波領域によっては材料の厚さに関係なく、表と裏との双方で、また材料内部でも生じ得る。
【0003】
中周波領域では、通常、材料の電気伝導度の挙動を直接利用して遮蔽性を評価することができる。低周波領域では、相対的な透過率を用いて遮蔽性を評価し、高周波領域では、反射率や振動吸収率を用いて遮蔽性を評価することもできる。
【0004】
エレクトロモビリティ技術を成功させるためには、部品の電磁両立性、省エネルギー性、および熱管理が課題となる。最新のブラシレスモータや各種制御ユニットを使用するには、交流および三相交流の形態の電力供給が必要である。その際、電子コンポーネントは、異なる周波数の望ましくない磁気的、電気的、および電磁的な振動を発する。これらの振動は、一方では他の制御ユニットの干渉源となるおそれがあり、また他の部品から発せられた振動によって制御ユニット自体がその機能を妨げられる。電子コンポーネントが互いの機能の発揮に悪影響を及ぼさないように、現在はアルミニウム製の筐体を使用してこれらが電磁気的に遮蔽されている。しかし、遮蔽材としてのアルミニウムには、重量が大きく、コストが高いという、2つの大きな欠点がある。そのため、アルミニウムの代替材料、およびその代替材料に基づく電磁遮蔽部品の製造方法が非常に求められている。
【0005】
電磁放射線を遮蔽するために、例えばアルミニウムなどの金属製の筐体を使用することが知られている。ここで、金属は導電性が高いため、良好な遮蔽減衰性が得られる。しかし、純金属製の遮蔽体を使用すると、打抜き加工、曲げ加工、および腐食防止剤の塗布による手間のかかる製造が必要となり、非常にコストがかかるなど、さまざまな欠点がある。また、金属材料の場合、設計上の様式の自由度は非常に限られている。プラスチック製の遮蔽体は、金属製に比べて所望の形状にするのがはるかに容易である。ほとんどのプラスチックは絶縁体であるため、例えば電気めっきや物理蒸着(Physical Vapour Deposition、PVD)により表面コーティングを施すことで、これらに導電性を付与することができる。しかし、プラスチックへの金属コーティングは、通常、コーティングの良好な付着性を達成するために部品の前処理に多大な労力を必要とする。
【0006】
さらに、電磁遮蔽体の製造に、少なくとも1つのポリマー成分のマトリックスと遮蔽特性を有する少なくとも1つのフィラーとを有するプラスチックコンポジット(複合材、コンパウンド)を使用することも知られている。これらは、コーティング、絶縁テープ、成形体などの形態で使用することができる。例えば、導電性コンポジットを製造するために、導電性フィラーを少なくとも1つの非導電性ポリマーのマトリックスに分散させることができる。
【0007】
S. Geethaらは、Journal of Applied Polymer Science, Bd. 112, 2073-2086 (2009)において、電磁放射線を遮蔽するための方法および材料の概要を述べている。非導電性ポリマーをベースに多種多様な導電性フィラーを配合したさまざまなプラスチックコンポジットが挙げられる。別の方法として、導電性ポリマー、特にポリアニリンおよびポリピロールの使用が検討されている。
【0008】
K. Jagatheesanらは、Indian Journal of Fibre & Textile Research, Bd. 39, 329-342 (2014)において、導電性フィラーおよび導電性テキスタイルをベースとするコンポジットの電磁遮蔽特性について述べている。例えば、導電性ハイブリッドヤーンや多数の導電性ヤーンをベースとした、可能な限り広い周波領域を遮蔽するための特定のテキスタイルに焦点が当てられている。
【0009】
国際公開第2013/021039号は、ポリマーマトリックス中に分散された磁性ナノ粒子を含むマイクロ波吸収組成物に関する。ポリマーマトリックスには含窒素高分岐ポリマーが含まれており、具体的には、ポリオール官能性を有する超分岐メラミンをベースとしたポリウレタンが使用されている。
【0010】
米国特許第5,696,196号明細書には、プラスチックを電磁干渉(EMI)および無線周波干渉(RFI)から遮蔽するためのコーティング組成物が記載されている。記載されているこの組成物は、熱可塑性エマルションの水性分散液、ウレタンの水性分散液、グリコール系凝集溶媒、銀めっき銅フレーク、導電性クレイ、および消泡剤を含む。
【0011】
米国特許出願公開第2007/0056769号明細書には、非導電性ポリマー、固有の導電性ポリマー、および導電性フィラーを含む、電磁放射線を遮蔽するためのポリマーコンポジット材が記載されている。コンポジットを製造するため、ポリマー成分を集中的に接触させる。適切な非導電性ポリマーとしては、エラストマーポリマー、熱可塑性ポリマー、および熱硬化性ポリマーが挙げられ、これらはさまざまな異なるポリマークラスから選択することができる。この発明による実施例では、ニッケルコーティングされた炭素繊維を充填したポリスチレン/ポリアニリンブレンドのみが使用されている。
【0012】
未公開のDE102018115503には、a)少なくとも1つの導電性フィラーと、b)少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンを含むポリマーマトリックスとを含む、電磁放射線遮蔽用組成物が記載されている。この組成物と少なくとも1つのさらなるポリマー材料とから射出成形法によってEMI遮蔽基材を製造することは記載されていない。
【0013】
独国特許出願公開第102014015870号明細書には、短繊維強化プラスチック製の自動車用シャーシ部品が記載されており、これは特に、繊維長が0.1~1mmの炭素強化プラスチックであり得る。このシャーシ部品は、第1の射出成形プロセスでコアを製造し、第2の射出成形プロセスで同じ短繊維強化プラスチックをオーバーモールド成形してコアを成形することにより製造される。
【0014】
特開平07-186190号公報には、4種類の熱可塑性樹脂を使用した7層構造の射出成形物が記載されている。第1層および第7層、すなわち表面層は、ポリオレフィン樹脂からなる。第2層および第6層は、カーボンブラックや光吸収性フィラーで着色されたポリオレフィン樹脂からなる遮光層である。第2層は、酸素バリヤー性の樹脂である。第3層および第5層は、無水マレイン酸変性グラフトポリオレフィン樹脂である。
【0015】
特開2005-229007号公報には、電磁波シールド性を有する樹脂製筐体が記載されている。これは、少なくとも1つの導電層と接着層とを有する薄膜シートを用いた射出成形や、熱成形によって製造される。導電層は、ニッケル、アルミニウム、銀、金、鋼、または真鍮などを金属蒸着して得られた層や、アルミニウムや銅の金属箔である。
【0016】
国際公開第2014/175973号には、予め施与された導電性接着剤組成物を含む導電性熱可塑性フィルムを用いた電子回路基板のEMI遮蔽体の製造方法が記載されている。この接着剤組成物は、シリコーン系接着剤、相溶性シラン、および導電性粒子または繊維を含む。
【0017】
国際公開第2010/036563号には、電子デバイスの回路を封止するための少なくとも1つのコンパートメントを有するEMI遮蔽体が記載されている。この遮蔽体は、熱成形可能な導電性フォームで構成された弾性層を含み、この層は、その間の厚さ寸法を画定する第1の表面と第2の表面とを有し、この層は、周辺部分によって囲まれた内側部分を有する。この層の内側部分は、その厚さ寸法の方向に圧縮されて遮蔽体の上壁部分を形成し、周辺部分の厚さ寸法は、上壁部分から下方に延びて遮蔽体の側壁部分を形成し、この側壁部分は、上壁部分と一緒にチャンバの少なくとも一部を画定する。
【0018】
国際公開第1997/041572号には、所定の外径を有する細長い物体を包むために使用できる、熱収縮可能な電磁干渉(EMI)遮蔽ジャケットが記載されている。このジャケットは、長さが不定で、内径が対象物の外径よりも大きく拡張されている管状の外側部材と、この外側部材内に同軸的に収容され、その周囲に同一の外延で延在する導電性の内側部材と、この外側部材と内側部材との間に配置され、その周囲に同一の外延で延在する概ね連続した熱可塑性中間層とからなる。この中間層は、内側部材と外側部材とを実質的にその全長にわたって結合して、ジャケットを一体構造に統合している。外側部材も、ジャケットを対象物の外径寸法に実質的に適合させるために、拡張された内径よりも小さい回復された、すなわち収縮された内径へと熱収縮可能である。
【0019】
国際公開第2011/019888号には、シーリングアセンブリが記載されており、該シーリングアセンブリは、該シーリングアセンブリ内の摩耗、熱劣化、物理的損傷、化学的非相容性、および構造的故障に関する寿命検出ユニットと、シーリング環境の変化や差し迫ったシール故障を検出するために該検出ユニットから出力信号を送信するユニットとを備えている。
【0020】
プラスチック部品上に電磁遮蔽表面を製造するための従来技術に記載の方法では、一般的に成形後の追加の作業工程としてコーティングが施される。このようなプロセスには、以下のような欠点がある:
- 追加の作業工程によって製造コストが高くなる。これにより、例えばアルミダイキャスト製の遮蔽装置と比較すると経済的に不利になる。
【0021】
- 吹付けプロセスでは、いわゆるオーバースプレーによる材料のロスが多く発生する。
【0022】
- 吹付け塗布で得られるコーティングの層厚は、通常、部品の表面に対して均一ではない。また、導電層を、目標とする例えば1mm以下の低い厚さで施与することも困難である。
【0023】
- 例えばタッチセンサやスイッチといったさらなる機能や、熱や光に対する追加的な保護といったさらなる機能を部品に組み込むことは、プロセスによって制限される。
【0024】
そのため、電磁放射線を遮蔽できる層を有するプラスチック部品の製造方法であって、EMI遮蔽と、必要に応じて部品の表面へのさらなる機能の組み込みとを、成形部品の製造時に直接行う方法が必要とされている。
【0025】
複数の材料から、例えば硬質・軟質複合部品などのプラスチック部品を製造するために、特に成形体上の表面を製造するために、さまざまな確立された方法が知られている。これには、背面射出成形や多成分射出成形などの特殊な射出成形法が含まれる。
【0026】
本発明は、上述の欠点を克服する、電磁放射線遮蔽基材(部品)の製造方法を提供するという課題に基づく。
【0027】
驚くべきことに、この課題は、電磁放射線遮蔽基材を製造するために、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料を、特定の射出成形法で少なくとも1つの第2のポリマー材料と結合させると同時にこれを成形に供することができる方法により解決されることが見出された。
【0028】
本発明による方法、ならびに該方法により得られる基材および部品には、以下の利点がある:
- 本発明による方法は、最初に部品を別個に成形してからその後でコーティングすることなく、EMI遮蔽基材を製造することができる。
【0029】
- 厚さがわずかであり、かつ/または所望の層厚からの乖離(変動)が小さいEMIコーティングを実現することができる。
【0030】
- 部品の成形時に、EMI遮蔽体に加えて、さらなる機能を部品に直接組み込むことができる。これにより、例えば、複数の部品からなるEMI遮蔽筐体を、各筐体部品に接触する導電性シール材を用いて一体的に製造することや、熱遮蔽体を組み込むことができる。
【0031】
- 電磁放射線の遮蔽に、異なる形態(特に異なる波長域)のエネルギーを吸収できるエラストマーポリマー材料を使用することができる。このようにして、望ましくない機械的振動をも回避することができる。これは、例えば部品のNVH挙動(NVH=Noise, Vibration, Harshness)に有益な効果をもたらす。さらに、EMI遮蔽基材の製造時にさらなる機能性を持たせることも可能である。基材を少なくとも部分的に包囲するポリマーフィルムを用いることで、例えば衝突安全性の向上を図ることができ、また耐熱性ポリマーを用いることで、耐熱性の向上を図ることができる。
【0032】
- 基材の製造に複数のポリマー材料を組み合わせて使用することができ、一方の成分で基材に構造的強度を与え、その強度は、EMI遮蔽のために使用されるもう一方の成分によって悪影響を受けることはない。
【0033】
- 吹付け法でコーティングを施与する際に起こりがちな材料のロスが回避される。
【0034】
発明の概要
本発明の第1の主題は、電磁放射線遮蔽基材の製造方法であって、
i)少なくとも1つの導電性フィラーを含む第1のポリマー材料(a)またはその前駆体を提供し、かつ少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)またはその前駆体を提供し、
ii)ステップi)で提供されたポリマー材料(a)および(b)またはその前駆体を成形に供して、ポリマー材料(a)および(b)を材料接続により結合させ、その際、前駆体が存在する場合にはその前駆体を重合させる、方法である。
【0035】
本発明において、電磁放射線遮蔽基材とは、電磁放射線を遮蔽することができる基材、すなわち電磁放射線を遮蔽する基材をも意味する。
【0036】
一変形例では、本発明による基材で電子部品をコーティングするおよび/または覆うことで、電子部品から放出される電磁波を遮蔽し、許容できない影響を環境に与えないようにする。さらなる変形例では、本発明による基材で電子部品をコーティングおよび/または被覆することで、環境からの電磁波がコーティングおよび/または被覆された電子部品に許容できない影響を与えるのを防ぐ。その際、本発明による基材は、電子部品の一体的なコンポーネントとすることができる。
【0037】
好ましくは、本発明による方法のさらなるステップでは、ステップii)で得られた基材で電子部品をコーティングおよび/または被覆し、かつ/またはステップii)で得られた基材に電子部品を埋め込む。
【0038】
特に、ステップi)で提供される、ポリマー材料(a)、ポリマー材料(a)の前駆体、ポリマー材料(b)、およびポリマー材料(b)の前駆体から選択される成分のうち少なくとも1つは、ステップii)での成形のために流動性のある形態で使用されるか、またはステップii)のプロセス条件下で成形可能である。
【0039】
本発明による方法の第1の好ましい実施形態は、フィルムおよび複合材の背面射出成形である。本発明による方法のさらなる好ましい実施形態は、多成分射出成形(複合射出成形またはオーバーモールディングとも呼ばれる)である。
【0040】
本発明のさらなる主題は、前記および後述の方法により得られる基材である。
【0041】
本発明のさらなる主題は、かかる基材を含む、またはかかる基材からなる電磁放射線遮蔽装置である。
【0042】
本発明のさらなる主題は、電磁放射線を遮蔽するための本発明による基材の使用である。
【0043】
発明の説明
本発明の趣意におけるポリマー材料(a)、(b)および(c)とは、少なくとも1つのポリマーを含むか、または少なくとも1つのポリマーからなる材料である。ポリマー材料(a)、(b)および(c)は、少なくとも1つのポリマーに加えて、少なくとも1つのさらなる成分、例えばフィラー、強化材またはそれとは異なる添加剤を含むことができる。ポリマー材料(a)、(b)および(c)は、特定の実施形態では、コンポジット(複合材)として存在する。
【0044】
ポリマー材料(a)、(b)、および存在する場合には(c)は、本発明による方法において別個の成分として使用され、本発明による基材を製造するために互いに結合される。その際、少なくとも1つの導電性フィラーを含むポリマー材料(a)(またはその前駆体)とポリマー材料(b)(またはその前駆体)との結合と、(a)および(b)の複合材の成形とを1ステップで行うことが、本発明による方法の本質的な特徴である。
【0045】
以下に、(a)と(b)とを1ステップで結合および成形するためのさまざまな変形例について詳しく説明する。一例として、2種以上のプラスチック材料からなり得る射出成形体の形態で基材を製造する多成分射出成形がある。本発明により使用できる多成分射出成形法の特徴は、2つ以上の射出成形ユニットを有することができるが、クランプユニットは1つで済むことである。そのため、本発明によれば、1回の作業工程で1つの金型だけで基材を製造することができる。
【0046】
電磁放射線遮蔽基材を製造するために、ポリマー材料(a)および(b)、または(a)および(b)の成形複合材を、少なくとも1つのさらなるポリマー材料(c)またはその前駆体と結合させることができる。少なくとも1つのさらなるポリマー材料(c)またはその前駆体との結合は、方法ステップii)で行うことができる。あるいは、(a)および(b)の成形複合材を、少なくとも1つの別個のステップiii)で、少なくとも1つのさらなるポリマー材料(c)またはその前駆体と結合させることもできる。任意に、(a)、(b)および(c)の複合材を、少なくとも1つのさらなる成形に供してもよい。この成形は、ステップii)またはステップiii)での結合と同時に行ってもよいし、別個のステップで行ってもよい。あるいは、ステップii)で得られた(a)、(b)および(c)の成形複合材を、少なくとも1つの別個のステップiii)で、さらなるポリマー材料(c)またはその前駆体と結合させてもよい。
【0047】
原則として、ポリマー材料(a)、(b)および(c)は、すべて同じポリマーを含むことも、部分的に異なるポリマーを含むことも、まったく異なるポリマーを含むことも可能である。
【0048】
本発明の趣意における「熱可塑性樹脂」という用語は、所定の温度を上回ると可逆的に変形し得るポリマーを指し、理論的にはこのプロセスを何度でも繰り返すことができる。熱可塑性樹脂は、化学結合ではなく弱い物理的な結合によってのみ互いに結合している(すなわち、未架橋の)、わずかに分岐した、または分岐していないポリマー鎖から構成されている。これは、熱可塑性樹脂が、熱硬化性樹脂や、製造後に熱可塑性変形ができなくなる(古典的な、つまり非熱可塑性の)エラストマーと異なる点である。
【0049】
本発明の趣意における「エラストマー」という用語は、形状が安定しているが、弾性的に変形可能なプラスチックを指し、そのガラス転移温度は、そのポリマーが通常使用される温度を下回る。エラストマーは、引張応力や圧縮応力を受けると弾性的に変形するが、その後、変形していない元の形状に戻ることができる。
【0050】
エラストマーの特殊な形態として、所定の温度範囲で熱可塑性の特性を示す熱可塑性エラストマーがある。熱可塑性エラストマーは、通常、低温では古典的なエラストマーと同様の挙動を示す。しかし、これは熱を加えると塑性変形し、熱可塑性の挙動を示すようになる。
【0051】
ステップii)での成形には、ステップi)で提供された成分のうち少なくとも1つが流動性のある形態で使用されるか、またはステップii)のプロセス条件下で成形可能である。当業者に知られているように、さまざまな種類のポリマー(非晶質熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、半結晶質熱可塑性樹脂、エラストマー、熱硬化性樹脂)の熱挙動は、状態範囲によって特徴づけられており、状態範囲内では熱機械的特性が変化しないか、わずかに変化するだけである。ガラス転移温度T未満では、ポリマーは一般的に固体であるガラス状態で存在する。
【0052】
非晶質熱可塑性樹脂は、Tを上回る温度で熱弾性状態に移行し、形状を変化させることができる。この形状の変化は、最初は可逆的であるが、より高い温度になると、ポリマー材料はいわゆる「熱成形」によって成形可能になる。非晶質熱可塑性樹脂は、厳密に定められた融点を有しない。流動温度を超えると、材料は軟質で流動性を有するようになり(可塑化)、一次成形(射出成形など)でも加工できるようになる。
【0053】
熱可塑性エラストマーは、Tを上回る温度で古典的なエラストマーと同様の挙動を示すプラスチックである。すなわち、(粘)弾性を有し、成形はできない。熱可塑性エラストマーは、溶融温度を上回る温度に加熱すると熱可塑性の挙動を示し、材料は流動性を有するようになり、一次成形(射出成形など)で加工することができる。
【0054】
エラストマーは、まだ架橋していない前駆体の形態で流動性のある形態にして、ステップii)での成形に使用することができる。エラストマーは、熱の影響で加硫されるため、熱可塑性樹脂とは異なり、再び溶融および変形させることができない。
【0055】
熱硬化性樹脂も、一般的には熱の作用により硬化する。硬化後は、再び溶融および変形させることができない。熱硬化性樹脂は、まだ硬化していない前駆体の形態で流動性のある形態にして、ステップii)での成形に使用することができる。適切な実施形態では、前駆体は比較的低い温度で型に注入され、より高い温度でそこで硬化される。本発明により使用されるポリマー材料の熱的挙動、すなわち、どのような条件下で該材料が成形可能または流動可能であるかは、専門的な知識に含まれるか、または当業者がルーチン実験によって決定することができる。
【0056】
材料接続は、結合パートナー間の原子や分子の力によって形成される。材料接続によるプラスチックの結合には、接着剤による結合や溶接による結合があり、射出成形法でも材料接続による結合が行われる。材料接続は、通常、取り外しのできない結合である。
【0057】
形状接続による結合は、少なくとも2つの結合パートナーがかみ合うことで生じる。その結果、力の伝達がないかまたは途切れていても、結合パートナーが外れることはできない。
【0058】
本発明による方法により、電磁放射線による望ましくない障害を低減または回避するために、電磁放射線の遮蔽を、そのような措置が必要とされる全ての周波領域において行うのに有利に適した基材を製造することができる。EMI遮蔽に関連する周波領域は、一般に約2Hz~100GHz、好ましくは100Hz~100GHzの範囲である。自動車用途での遮蔽に特に重要である周波数領域は、100kHz~100MHzの範囲である。特に、自動車用途での遮蔽の周波数領域は、3Hz~10kHzの中周波領域と、23GHz~85GHzのレーダ領域である。本発明による組成物は、これによく適している。ここで、本発明による方法で製造された基材は、低周波および中周波の遮蔽にも特に適している。例えば、磁性体などの磁場を偏向させる材料をフィラーとして使用することができる。さらに、フィラーとして、高周波の電磁波を反射する材料、例えば、高炭素の導電性ナノ材料を使用することもできる。広帯域の用途には、フィラーの適切な組み合わせを使用することができる。
【0059】
特定の第1の実施形態では、電磁放射線遮蔽基材を製造するための背面射出成形法が提供される。
【0060】
多成分射出成形により、2種以上の異なるプラスチックからなる射出成形体が製造される。最も単純な事例では、プラスチックの色だけを変えて、特定のデザインを実現する。しかし、異なる材料、つまり異なる特性を、目的に応じて組み合わせることも可能である。
【0061】
背面射出成形の場合と同様に、この場合にも、例えば複合射出成形やサンドイッチ射出成形といったさまざまな手法がある。複合射出成形では、2つ以上の射出成形ユニットを備えた射出成形機が必要であるが、クランプユニットは1つで済む。そのため、1回の作業工程で1つの金型だけでコスト効率よく部品を製造することができる。射出成形ユニットは調和して動作しなければならないが、常に互いに独立して制御可能でなければならない。各成分は、1つの特定のノズルを通じて注入することも、異なる箇所で金型に導入することもできる。
【0062】
背面射出成形では、ポリマー支持体(基材)とカバー材(装飾材)とからなる(エンボス加工/機能化された)成形体が製造される。背面射出成形には、インモールド・デコレーション(IMD)、フィルム・インサート・モールディング(FIM)、インモールド・ラベリング(IML)、インモールド・コーティング(IMC)、またはインモールド・ペインティング(IMP)など、さまざまな手法がある。これらすべてに共通しているのは、前処理された(エンボス加工/機能化された)フィルムを射出成形金型に導入し、さらなるプラスチックを背面射出成形し、エンボス加工を行って、機能性やフィルムコーティングを施したプラスチック部品を製造することである。
【0063】
特に、以下の技術のうち少なくとも1つを用いて背面射出成形を行う:インモールド・デコレーション(IMD)、フィルム・インサート・モールディング(FIM)、ロール・ツー・ロール、インモールド・ラベリング(IML)、インモールド・コーティング(IMC)、またはインモールド・ペインティング(IMP)。
【0064】
インモールド・デコレーション法は、ホットスタンプとフィルム背面射出成形とを組み合わせたものである。これは、特殊なIMDフィルムである支持体フィルムから基材に機能性を転写するために使用される。機能化および/またはエンボス加工された支持体フィルムを射出成形金型に入れる。第2のステップでは、プラスチック材料を注入する。最後のステップでは、得られた成形体を金型から取り出し、支持体フィルムを分離する。機能性が転写されたプラスチック成形体が得られる。
【0065】
特に、本発明によれば、IMD法での支持体フィルムは、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料(a)を含む。特に、本発明によれば、プラスチック材料は、少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)を含む。
【0066】
フィルム・インサート・モールディング法(FIM)では、機能化された支持体フィルムが、完成した基材の一部になる。まず、支持体材料であるエンボスフィルムを機能化(コーティング)し、予備成形して打ち抜く。裁断したフィルムを射出成形金型に入れ、プラスチック材料を背面射出成形する。方法ステップの厳密な順序は、自由である。最後に、支持体フィルムを取り除く。
【0067】
特に、本発明によれば、FIM法での支持体フィルムは、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料(a)を含む。特に、本発明によれば、プラスチック材料は、少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)を含む。
【0068】
また、支持体フィルムの加工には、ロール・ツー・ロール法(R2R法、英語ではroll-to-roll Processing)を用いることもできる。
【0069】
インモールド・ラベリング法は、この場合にはラベルフィルムを使用することを除けば、古典的なフィルム背面射出成形と非常によく似ている。これらのフィルムは、より薄い。このフィルムは、ロール品または完成したカット品として射出成形金型に導入することができる。最後にラベルフィルムを取り除く。
【0070】
特に、本発明によれば、IML法での支持体フィルムは、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料(a)を含む。特に、本発明によれば、プラスチック材料は、少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)を含む。
【0071】
インモールド・コーティングは、吹付けと射出成形とを組み合わせたものである。まず、スプレーガンを使用して射出成形金型にコーティングを施す。材料が乾燥した後、プラスチック材料を背面射出成形する。
【0072】
特に、本発明によれば、IMC法でのコーティングは、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料(a)を含む。特に、本発明によれば、プラスチック材料は、少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)を含む。
【0073】
インモールド・ペインティング法では、第1のステップでプラスチック材料を射出成形し、第2のステップでコーティングを吹き付ける、つまりIMC法のプロセスステップとは逆の順序でプロセスステップを行う。
【0074】
特に、IMP法でのコーティングは、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む第1のポリマー材料(a)を含む。特に、プラスチック材料は、少なくとも1つの第2のポリマー材料(b)を含む。
【0075】
コンポジット
特に、本発明による方法のステップi)では、ポリマー材料(a)または(b)のうちの一方がコンポジットの形態で提供される。好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)または(b)のうちの一方が、層状のコンポジットの形態で提供される。これは、本発明による方法を背面射出成形に用いる場合に特に有利である。特定の実施形態では、成分(b)が、コンポジットの形態で提供される。
【0076】
コンポジット、またはさらには複合材とは、2種以上の材料を結合して製造された材料であり、その個々の構成要素とは異なる材料特性を有するものである。この結合は、材料接続、形状接続、またはその双方の組み合わせによって行われる。その成分(相)は、1つの同じ主要材料群に由来することもあれば、異なる主要材料群に由来することもある。主要材料群としては、金属、セラミックス、ガラス、ポリマー、および複合材が挙げられる。本発明において、「コンポジット」という用語には、複合材と材料複合体との双方が含まれる。複合材は、少なくとも二相(すなわち、不均質)であるが、巨視的には均質に見える。肉眼で見ると1つの材料のように見えることが多い。材料複合体は通常、肉眼ですでに複数の異なる材料の複合体と認識することができる。層状のコンポジット(ラミネート)は、材料複合体の好ましい実施形態である。ラミネートは、重なり合う少なくとも2つの層からなる。3つの層のうち2つの層が同一の外層である特殊な事例は、サンドイッチ複合体とも呼ばれる。
【0077】
コンポジットは、好ましくは、ポリマー材料(a)または(b)の少なくとも1つと、それとは異なる少なくとも1つのさらなる成分(K)とを含む。特に、コンポジットは、ポリマー材料(b)と、それとは異なる少なくとも1つのさらなる成分(K)とを含む。なお、成分(K)は、それ自体が複合材であってもよい。さらなる成分(K)は、ポリマー、高分子材料、金属、金属材料、セラミックス材料、鉱物材料、テキスタイル材料、およびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0078】
特に好ましい実施形態では、さらなる成分(K)は、ポリマーフィルム、ポリマー成形体、金属箔、金属成形体、強化および/または充填されたポリマー材料、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
適切なポリマーは、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選択される。適切で好ましいプラスチックに関しては、ポリマー材料(b)に関する詳論が全面的に参照される。
【0080】
適切な金属は、アルミニウム、チタン、マグネシウム、銅など、およびそれらの合金から選択される。
【0081】
セラミックス材料は、一般的に無機質で、非金属性でかつ多結晶質である。ここで、「非金属性」とは、セラミックス材料が実質的に単体金属を含まないことと理解される。セラミックス材料を製造するには、例えば、セラミックス形成性の無機粒子状原料、液体、および任意に少なくとも1つの有機バインダーを熱処理(焼結)に供することができる。原則的には、酸化物系セラミックスと非酸化物系セラミックスとから構成される材料が、本発明による方法での使用に適している。適切な酸化物系セラミックスは、モノマテリアル系およびマルチマテリアル系から選択される。好ましい酸化物系セラミックスは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、チタン酸アルミニウム、ムライト(酸化アルミニウムと酸化ケイ素との混合物)、チタン酸ジルコン酸鉛、および酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムとの混合物から選択される。適切な非酸化物系セラミックスは、炭化物、例えば炭化ケイ素または炭化ホウ素、窒化物、例えば窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または窒化ホウ素、ホウ化物、およびケイ化物から選択される。
【0082】
適切な金属材料は、少なくとも1つの金属と、それとは異なる少なくとも1つの材料とを含む。金属とは異なる材料は、セラミックス材料、有機材料、およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。金属材料の好ましい実施形態は、連続した金属マトリックスと不連続なセラミックスおよび/または有機強化材とを含む金属基複合材(英語ではmetal matrix composite、MMC)である。強化材は、好ましくは、繊維またはウィスカーの形態である。金属は、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、および銅から選択される。マトリックスは、単体金属の形態として存在してもよいし、合金の形態であってもよい。強化相としては、セラミックス粒子(例えば、炭化ケイ素)、短繊維、連続繊維(例えば、炭素系)、または発泡体が適している。金属材料のさらなる好ましい実施形態は、金属粉末射出成形(MIM法)によって得られる材料である。
【0083】
特に、コンポジットは、少なくとも1つの強化および/または充填されたプラスチック材料を含む。好ましくは、強化材は、繊維状強化材、繊維状強化材の織物、繊維状強化材のレイドウェブ、繊維状強化材の緯編物、および繊維状強化材の経編物、ならびにそれらの混合物から選択される。フィラーは、カオリン、チョーク、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス粒子、およびそれらの混合物などの粒子状フィラーから選択されることが好ましい。好ましい強化プラスチック材料は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、天然繊維強化プラスチック(NFRP)などの繊維・プラスチック複合材である。
【0084】
第1の特に好ましい実施形態では、ステップi)で、ポリマー材料(a)として、ポリマー材料(a)のポリマー成分をポリマーフィルム上のコーティングとして含むコンポジットが提供され、ステップii)で、このコンポジットが、射出成形によりポリマー材料(b)と材料接続により結合される。第2の特に好ましい実施形態では、ステップi)で、ポリマー材料(b)として、ポリマー材料(b)のポリマー成分をポリマーフィルム上のコーティングとして含むコンポジットが提供され、ステップii)で、このコンポジットが、射出成形によりポリマー材料(a)と材料接続により結合される。
【0085】
特に、ステップi)で、ポリマー材料(a)のポリマー成分をポリマーフィルム上のコーティングとして含むコンポジットが提供される。ステップii)で、このコンポジットが、射出成形により少なくとも1つのポリマー材料(b)と材料接続により結合される。
【0086】
ポリマーフィルムは、その上に位置するポリマー材料(a)またはポリマー材料(b)のポリマー成分の支持体材料または転写材料として機能する。したがって、対応するポリマー材料(a)または(b)を提供するためには、ポリマー材料(a)または(b)のポリマー成分でポリマーフィルムをコーティングする必要がある。
【0087】
ポリマーフィルムは、原則として、ポリマー成分(a)または(b)のいずれかでコーティングするのに適したものでなければならない。IMD法、IFM法、およびIML法では、ポリマーフィルムはさらに、射出成形プロセスの後、すなわちステップii)の完了後に、基材から剥離することができなければならない。この変形例では、ポリマーフィルムは専ら転写材料である。IMC法およびIMP法では、ポリマーフィルムは基材の一部となる。その場合、ポリマーフィルムは例えば、支持体材料、機械的耐久性を向上させるための材料、装飾体などとして機能する。
【0088】
容易な剥離を可能にする適切なポリマーフィルムには、例えば、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン紙などのポリマーコート紙などが含まれる。基材に残る適切なポリマーフィルムには、例えば、ポリプロピレン、プラズマ処理されたフィルム、表面がフッ素化されたフィルムなどが含まれる。
【0089】
特定の第1の変形例では、ポリマーフィルムは、射出成形ステップii)の完了後に、得られた射出成形体から剥離される。
【0090】
特定の第2の変形例では、ポリマーフィルムは、射出成形ステップii)の完了後に、得られた射出成形体を得られた基材に結合したままである。
【0091】
特定の第2の実施形態では、電磁放射線遮蔽基材を製造するための複合射出成形法が提供される。
【0092】
複合射出成形では、第1のプラスチック成分をモールド(キャビティ)に注入する。キャビティを充填した後すぐに、第2のプラスチック成分を上から注入する。この方法では、異なる材料特性を有する複雑な部品を組み合わせることができる。例えば、コアバック法、トランスファ法、ロータリープレート法、またはシフト法など、さまざまな手法が当業者に知られている。
【0093】
特定の実施形態では、ステップi)で提供されたポリマー材料(a)および(b)は、双方とも可塑性を示し、ステップii)で多成分射出成形によって材料接続により結合される。
【0094】
特に、多成分射出成形には、以下の技術のうち少なくとも1つが用いられる:コアバック法、トランスファ法、ロータリー法、インデックスプレート法、シフト法、サンドイッチ法。
【0095】
トランスファ法では、最初の射出工程の後に、予備射出成形体を、この予備射出成形体および新たなコンポーネントのためのスペースがある新たな金型キャビティに移す。
【0096】
インデックスプレート法(トランスファ法)では、最初の射出工程の後に、予備射出成形体を、この予備射出成形体および新たなコンポーネントのためのスペースがある新たな金型キャビティに移し、この新たなコンポーネントを予備射出成形体の両面に施与することができる。
【0097】
ロータリー法/シフト法では、最初の射出工程の後に、金型(通常は片方のみ)を新たな位置に回転またはシフトさせ、この新たな位置で別のノズルを使用して予備射出成形体をオーバーモールド成形する。
【0098】
コアバック法では、新たに追加される成分のためのスペースをあけるために金型内でコアを戻す。この技術は、特に異なる色の領域を有するデバイス用筐体の製造に用いられている。
【0099】
サンドイッチ法では、通常、内側の成分が外側の材料で完全に包まれているため視認できない部品が作製される。サンドイッチ射出成形では、金型キャビティ(金型の空所)に流れ込む際の材料の源流が利用されている。ゲートから複数の溶融物が順次空洞を満たす。最初に流れてくる成形材料は、連続して壁に当てられ、最後に内部に流れてくる第2の成分によってこれに向かって押される。2つの射出成形ユニットが1つの射出成形ヘッドで連動しており、この射出成形ヘッドは、バルブや複数のシャットオフノズルによる制御によって、すべての射出成形ユニットから材料を自由に流入させることができる。源流は、こうした成分の完全な相互被覆を最小の壁厚まで申し分なく成功させる。スプルーは、第1の成分によって封止することができる。
【0100】
本発明による方法の特定の実施形態では、以下のうち1つ以上の手段によって、追加機能が基材に組み込まれる:
- センサ機能を有する基材の成形、
- 機械的振動を防止するための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 衝突防止性を向上させるための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 絶縁耐力を向上させるための少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 腐食防止機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 酸化防止機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 光保護機能を有する少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 発熱体としての少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- 熱電特性を有し、それによって電流を発生させることができる少なくとも1つのコンポーネントの使用、
- シール要素のオーバーモールド成形、
- 保持および/または結合要素のオーバーモールド成形。
【0101】
追加機能を基材に組み込むための考えられるさらなる手段は、例えば以下のものである:
- 装飾的な表面構成要素のオーバーモールド成形、
- 少なくとも1つの装飾的なポリマーフィルムの使用、
- 補強要素(リブ、リブ構造体)のオーバーモールド成形など。
【0102】
自動車分野では、走行快適性を損なわないために、機械的な振動を避けることが特に重要である。自動車や機械における聞きとれるまたは感じられる音や振動を総称して、「騒音・振動・ハーシュネス(Noise, Vibration, Harshness、NVH)」と呼ぶ。これを避けるために、振動源から振動伝達媒体への局所的な力の導入を防ぐコンポーネントが使用される。
【0103】
ポリマー材料
ポリマー材料a)、b)およびc)は、非晶質熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、半結晶質熱可塑性樹脂、エラストマー、熱硬化性樹脂、およびそれらの混合物から好ましく選択される少なくとも1つのポリマーを含むか、またはそれからなる。
【0104】
ポリマー材料a)、b)およびc)は、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリロニトリル/ブタジエン/アクリレート(ABA)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ABN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-メチルメタクリレート(AMMA)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、酢酸セルロース(CA)、酢酸セルロースブチレート(CAB)、ポリスルホン(PSU)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE=ポリフェニレンオキシド(PPO))、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン(PE)もしくはポリプロピレン(PP)、ポリケトン(PK)、例えば、脂肪族ポリケトンもしくは芳香族ポリケトン、ポリエーテルケトン(PEK)、例えば、脂肪族ポリエーテルケトンもしくは芳香族ポリエーテルケトン、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン(POM)、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂、クロロスルホネート、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリネオプレン、ポリニトリル、ポリイソプレン、天然ゴム、共重合体ゴム、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、エチレン-プロピレン(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、およびそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物(ブレンド)から特に好ましく選択される少なくとも1つのポリマーを含むか、またはそれからなる。
【0105】
好ましい脂肪族および芳香族ポリエーテルケトンは、脂肪族ポリエーテルエーテルケトンまたは芳香族ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。特定の実施形態は、芳香族ポリエーテルエーテルケトンである。
【0106】
本発明の趣意において、「ポリウレタン」という用語には、ポリ尿素および尿素基含有ポリウレタンも含まれる。
【0107】
適切な熱硬化性樹脂は、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-尿素-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、架橋可能なイソシアネートポリオール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート、メタクリレート、ポリスチレン、およびポリエステル樹脂である。
【0108】
適切な熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(特に、PP/EPDM)、熱可塑性スチレンブロック共重合体(TPS)(特に、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、SEBS、SEPS、SEEPS、およびMBS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性加硫物(TPV)、およびオレフィン系架橋熱可塑性エラストマー(特に、架橋PP/EPDM、および架橋エチレン-プロピレン共重合体(EPM))、およびポリエーテルブロックアミド(PEBA)である。
【0109】
熱可塑性スチレンブロック共重合体(TPS)は、特に、SEBS、SEPS、SBS、SEEPS、SiBS、SIS、SIBS、またはそれらの混合物から選択され、特に、SBS、SEBS、SEPS、SEEPS、MBS、およびそれらの混合物から選択される。
【0110】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、特に、PP/EPDMおよびエチレン-プロピレン共重合体(EPM)から選択される。
【0111】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)は、特に、少なくとも1つの高分子量ポリオール、殊に、少なくとも1つのポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、およびそれらの混合物から選択されるものから誘導されたものである。特定の実施形態は、少なくとも1つのポリエステルジオール、少なくとも1つのポリエーテルジオール、および少なくとも1つのポリカーボネートジオールを含む高分子量ポリオールの少なくとも1つの混合物を組み込みにより含むTPUである。
【0112】
熱可塑性加硫物(TPV)は、特に、芳香族ビニル繰返し単位を含む反応性または架橋性の硬質ブロックと、オレフィンまたはジエン繰返し単位を含む架橋性の軟質ブロックとを有するスチレンブロック共重合体から誘導されたものである。
【0113】
適切なエラストマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート(ABA)、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(ABN)、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン(A/PE-C/S)、アクリロニトリル/メチルメタクリレート(A/MMA)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(E/EA)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、フッ素ゴム(FPMまたはFKM)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ポリイソブチレン(PIB)、エラストマーポリウレタン、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、塩化ビニル/エチレン(VC/E)、および(塩化ビニル-エチレン-メタクリレート(VC/E/MA)である。
【0114】
特定の実施形態では、ポリマー材料a)、b)およびc)は、特にオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(特に、PP/EPDM)、熱可塑性スチレン-ブロック共重合体(TPS)、特にスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、SEBS、SEPS、SEEPS、およびMBS、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ならびに熱可塑性加硫物(TPV)から選択される少なくとも1つのポリマーを含むか、またはそれからなる。
【0115】
ポリマー材料(a)
本発明により使用される、少なくとも1つの導電性フィラーを含むポリマー材料(a)により、高度な充填度と非常に良好な遮蔽効果(shielding effectiveness、SE)を達成することができる。ここで、遮蔽効果は、吸収成分SE、反射成分SE、および多重反射成分SEから構成される。特に、ポリウレタンおよび特定の尿素基含有ポリウレタンは、EMI遮蔽に適した数多くの異なるフィラーとの高い相容性を示す。
【0116】
本発明の基材は、含まれる導電性フィラーの種類および量に対するフレキシビリティが高く、さらなるポリマー成分、特に導電性ポリマーをも使用することができるため、遮蔽効果における吸収および反射のそれぞれの望ましい割合をうまく制御することができる。このように、本発明による遮蔽基材は、例えば対応するCISPR規格(Comite international special des perturbations radioelectriques、国際無線障害特別委員会)で規定されているような材料の電磁両立性に関する要件を非常によく満たしている。同時に、本発明による基材は、全体的に良好な使用プロファイルを特徴とする。これには、本発明による基材が、機械的、熱的、または化学的負荷に耐え得ること、そして、例えば、良好な耐傷性、付着性、耐食性、または弾性を特徴とすることが含まれる。
【0117】
ポリマー材料(a)は、少なくとも1つのポリマー成分を、ポリマー成分と少なくとも1つの導電性フィラーとの合計に対して15~99.5重量%、特に好ましくは20~99重量%含むことが好ましい。ここで、ポリマー成分という用語には、ポリマー材料(a)の前駆体を重合したものも含まれる。
【0118】
好ましくは、ポリマー材料a)は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、エラストマー、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリマーを含むか、またはそれからなる。熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物が好ましい。
【0119】
好ましくは、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、ポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマー、液状シリコーンゴム、エポキシポリマー、ポリウレタン、およびそれらの混合物から選択される。
【0120】
好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、少なくとも1つのポリオレフィンホモポリマーもしくはポリオレフィンコポリマーを含むか、またはそれからなる。好ましくは、ポリオレフィンは、1つ以上のC~Cオレフィンを重合導入により含み、これは好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテンまたはイソブテンから選択される。適切なポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリイソブテン(PIB)、ポリブテン(PB)、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、およびそれらの混合物から選択される。
【0121】
さらなる好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、液状シリコーンゴム(LSR、Liquid silicone rubber)を含むか、またはそれからなる。欧州特許出願公開第0875536号明細書には、a)少なくとも20個のSiH基を含むSiH架橋剤と、b)エポキシ官能性アルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサンとを含む自己接着性の付加架橋型シリコーンゴム混合物が記載されている。欧州特許出願公開第1854847号明細書には、少なくとも1つのジオルガノポリシロキサンと少なくとも1つのSiH含有架橋剤とを含む硬化性2成分系が記載されている。適切な液状シリコーンゴムは市販されており、例えば、Wacker Chemie AG、ドイツ、ミュンヘンのElastosil商標の2成分系シリコーンエラストマーが挙げられる。
【0122】
さらなる好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、ポリウレタンを含むか、またはそれからなる。一般的にポリウレタンは、ポリイソシアネートと、それと相補的な、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有する化合物とから構成されている。
【0123】
NCO基と反応する基は、好ましくは、OH基、NH基、NHR基、またはSH基である。NCO基とOH基との反応により、ウレタン基が形成される。NCO基とアミノ基との反応により、尿素基が形成される。本発明において、「ポリウレタン」という用語には、ポリ尿素、およびウレタン基と尿素基とを組み込みにより含む化合物も含まれる。後者を、以下で「尿素基含有ポリウレタン」とも呼ぶ。反応性基を1分子につき1つのみ有する化合物は、ポリマー鎖の切断につながり、調整剤として使用することができる。反応性基を1分子につき2つ有する化合物からは、線状のポリウレタンが形成される。反応性基を1分子につき2つ超有する化合物からは、分岐ポリウレタンが形成される。本発明の趣意におけるポリウレタンは、例えば、尿素構造、アロファネート構造、ビウレット構造、カルボジイミド構造、アミド構造、ウレトンイミン構造、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、またはオキサゾリドン構造によって結合されていてもよい。
【0124】
特定の実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンを含むか、またはそれからなる。
【0125】
ポリマー材料(a)は、少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンを、尿素基含有ポリウレタンと少なくとも1つの導電性フィラーとの合計に対して15~99.5重量%、特に好ましくは20~99重量%含むことが好ましい。
【0126】
特定の実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、少なくとも1つのポリウレタン、特に少なくとも1つの尿素基含有ポリウレタンのみからなる。
【0127】
尿素基含有ポリウレタンに関する以下の記述は、尿素基を含まないポリウレタン、すなわち、NCO基と反応する少なくとも2つのアミノ基を有するアミン成分がその製造に使用されないポリウレタンにも同様に適用される。
【0128】
尿素基含有ポリウレタンは、NCO基と反応する少なくとも2つのアミノ基を有する少なくとも1つのアミン成分を重合導入により含む。
【0129】
アミン成分の割合は、尿素基含有ポリウレタンの製造に使用される成分に対して好ましくは0.01~32mol%、特に好ましくは0.1~10mol%である。
【0130】
好ましくは、(尿素基含有)ポリウレタンは、低分岐状または線状に構成されている。特に好ましくは、尿素基含有ポリウレタンは、線状に構成されている。つまり、尿素基含有ポリウレタンは、ジイソシアネートと、それと相補的な2価の化合物とから構成されている。
【0131】
本発明の趣意における線状(尿素基含有)ポリウレタンとは、分岐度0%の尿素基含有ポリウレタンである。
【0132】
低分岐(尿素基含有)ポリウレタンは、好ましくは0.01~20%、特に0.01~15%の分岐度を有する。
【0133】
(尿素基含有)ポリウレタンの分岐度は、好ましくは0~20%である。ここで、分岐度とは、ポリマー鎖の節点の割合、すなわち、少なくとも3つのポリマー鎖が枝分かれする起点となる原子の割合を意味する。架橋とは、枝分かれした1つのポリマー鎖が、枝分かれした第2のポリマー鎖につながることを意味すると理解される。
【0134】
NCO基と反応する基は、少なくとも1つの活性水素原子を有することが好ましい。
【0135】
適切な相補的化合物は、低分子量ジ-およびポリオール、高分子量ポリオール、第1級および/または第2級アミノ基を有する低分子量ジ-およびポリアミン、高分子量ポリアミン、アミン末端ポリオキシアルキレンポリオール、分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つの第1級または第2級アミノ基とを有する化合物、特にアミノアルコールである。
【0136】
適切な低分子量ジオール(以下、「ジオール」という)および低分子量ポリオール(以下、「ポリオール」という)は、60~500g/mol未満の分子量を有する。適切なジオールは、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,2-ジオール、ペンタン-1,3-ジオール、ペンタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-2,3-ジオール、ペンタン-2,4-ジオール、ヘキサン-1,2-ジオール、ヘキサン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、ヘプタン-1,2-ジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,5-ヘキサジエン-3,4-ジオール、1,2-および1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-および1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-、1,2-、1,3-および1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1-、1,2-、1,3-および1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、(2)-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールである。
【0137】
適切なポリオールは、少なくとも3つのOH基を有する化合物であり、例えば、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリスリトール、ビス(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、ジグリセロール、トリグリセロール、もしくはオリゴグリセロール、または糖類、例えば、グルコース、3官能性以上のアルコールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、もしくはブチレンオキシドをベースとする3官能性以上のポリエーテロール、またはポリエステロールである。その際、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、およびそれらのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドをベースとするポリエーテロールが特に好ましい。これらの化合物は分岐の原因となるため、イソシアネートと相補的な化合物の総重量に対して最大5重量%、特に最大1重量%の量で使用するのが好ましい。特に、ポリオールは使用されない。
【0138】
適切な高分子量ジオールおよび高分子量ポリオールは、好ましくは500~5000g/molの分子量を有する。好ましくは、高分子量ジオールは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、およびポリカーボネートジオールから選択される。エステル基含有高分子量ジ-およびポリオールは、カルボン酸エステル基に代えて、またはそれに加えて、カーボネート基を有していてもよい。
【0139】
好ましいポリエーテルジオールは、ポリエチレングリコールHO(CHCHO)-H、ポリプロピレングリコールHO(CH[CH]CHO)-H(ここで、nは整数であり、n>4である)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ここで、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位の配列は、ブロック状であっても統計的であってもよい)、ポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ポリ-1,3-プロパンジオール、または上記の化合物の2つ以上の代表的なものの混合物である。
【0140】
上述のジオールの一方または双方のヒドロキシル基がSH基で置換されていてもよい。
【0141】
好ましいポリエステルジオールは、2価アルコールと2価カルボン酸とを反応させて得られるものである。ポリエステルジオールの製造には、遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物や低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステル、またはそれらの混合物を用いることもできる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族、または複素環式であってよく、任意に例えばハロゲン原子で置換されていてよく、かつ/または不飽和であってもよい。その例としては、次のものが挙げられる:コルク酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、二量体脂肪酸。好ましいのは、一般式HOOC-(CH-COOHのジカルボン酸(ここで、yは、1~20の数、好ましくは2~20の偶数である)であり、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカンジカルボン酸である。
【0142】
多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブテン-1,4-ジオール、ブチン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、例えば、1,4-ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、さらにはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが該当する。好ましいのは、一般式HO-(CH-OHのアルコール(ここで、xは、1~20の数、好ましくは2~20の偶数である)である。その例は、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、およびドデカン-1,12-ジオールである。さらに好ましいのは、ネオペンチルグリコールである。
【0143】
適切なポリエーテルジオールは、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、またはエピクロロヒドリンおよびそれら同士の重合によって得られ、これは、例えばBFの存在下で、またはこれらの化合物を任意に互いに混合して、または連続して、アルコールやアミンなどの反応性水素原子を有する出発成分、例えば水、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、またはアニリンに付加させることにより行われる。特に好ましいポリエーテルジオールは、ポリテトラヒドロフランである。適切なポリテトラヒドロフランは、例えば硫酸やフルオロ硫酸などの酸触媒の存在下でテトラヒドロフランをカチオン重合することで製造することができる。このような製造方法は、当業者に知られている。
【0144】
ポリカーボネートジオールは、例えば、ポリエステルポリオールの構成成分として挙げた低分子量アルコールの過剰量にホスゲンを反応させることで得られるものが好ましい。
【0145】
任意に、ラクトンベースのポリエステルジオールを併用してもよく、これは、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーであり、好ましくは、末端ヒドロキシル基を有するラクトンの、適切な2官能性スターター分子への付加生成物である。ラクトンとして好ましくは、一般式HO-(CH-COOHの化合物から誘導されるものが該当し、ここでzは、1~20の数であり、メチレン単位のH原子は、C~C-アルキル基で置換されていてもよい。例は、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトンおよび/またはメチル-γ-カプロラクトン、ならびにそれらの混合物である。適切なスターター成分は、例えば、ポリエステルポリオールの構成成分として上述した低分子量2価アルコールである。ε-カプロラクトンの対応するポリマーが特に好ましい。ラクトンポリマーの製造には、低級ポリエステルジオールやポリエーテルジオールをスターターとして使用することもできる。ラクトンのポリマーに代えて、ラクトンに対応するヒドロキシカルボン酸の化学的に等価な重縮合物を使用することもできる。
【0146】
特にポリカーボネートエステルポリエーテルジオール、およびポリカーボネートエステルポリエーテルポリオールが好ましい。
【0147】
第1級および/または第2級アミノ基を有する適切な低分子量ジ-およびポリアミンは、32~500g/mol未満の分子量を有する。好ましいのは、第1級および第2級アミノ基の群から選択されるアミノ基を2つ含むジアミンである。適切な脂肪族および脂環式ジアミンは、例えば、エチレンジアミン、N-アルキルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレンジアミン、N-アルキルプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、N-アルキルブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-アルキルヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)-アミノメチル-1-メチルシクロヘキシルアミン、1,4-ジアミノ-4-メチルペンタンである。
【0148】
また、本発明による組成物の製造には、低分子量芳香族ジ-およびポリアミンを使用することもできる。芳香族ジアミンは、好ましくは、ビス-(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、N,N’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ビス-(4-メチルアミノフェニル)メタン、2,2-ビス-(4-メチルアミノフェニル)プロパン、またはそれらの混合物から選択される。
【0149】
好ましくは、本発明による組成物の製造に使用される低分子量ジ-およびポリアミンにおいて、全ジ-およびポリアミンに対する芳香族ジ-およびポリアミンの割合は、最大で50mol%、特に好ましくは最大で30mol%、特に最大で10mol%である。特定の実施形態では、本発明による組成物の製造に使用される低分子量ジ-およびポリアミンは、芳香族ジ-およびポリアミンを有していない。本発明による2成分系(2C)ポリウレタンを製造するためのさらなる特定の実施形態では、芳香族ジ-およびポリアミンが使用される。その場合、全ジ-およびポリアミンに対する芳香族ジ-およびポリアミンの割合は、最大で50mol%、特に好ましくは最大で30mol%、特に最大で10mol%である。
【0150】
適切な高分子量ポリアミンは、好ましくは500~5000g/molの分子量を有する。これらには、ポリエチレンイミン、およびアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール、例えばa,ω-ジアミノポリエーテルが含まれ、これは、ポリアルキレンオキシドをアンモニアでアミノ化することにより製造することができる。特別なアミン末端ポリオキシアルキレンポリオールは、いわゆるジェファミン(Jeffamine)またはアミン末端ポリテトラメチレングリコールである。
【0151】
分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つの第1級または第2級アミノ基とを有する適切な化合物は、ジアルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、ジブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ビス(2-ヒドロキシ-1-ブチル)アミン、ビス(2-ヒドロキシ-1-プロピル)アミン、およびジシクロヘキサノールアミンである。
【0152】
当然のことながら、前述のアミンの混合物も使用可能である。
【0153】
本発明によれば、尿素基含有ポリウレタンは、少なくとも1つのアミノ基含有アミン成分を重合導入により含み、このアミン成分は、NCO基と反応する少なくとも2つのアミノ基を有する。これにより、重付加時に尿素基が形成される。
【0154】
好ましい実施形態では、尿素基含有ポリウレタンは、少なくとも1つのジアミン成分を重合導入により含む。
【0155】
好ましくは、重合導入されたジアミン成分は、エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチルジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,3,3-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,6-ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,4-シクロヘキシレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、およびそれらの混合物から選択される。
【0156】
イソシアネートは、イソシアン酸(HNCO)のN-置換有機誘導体(R-N=C=O)である。有機イソシアネートは、イソシアネート基(-N=C=O)が有機基に結合した化合物である。多官能性イソシアネートは、分子内に2つ以上(例えば3つ、4つ、5つなど)のイソシアネート基を有する化合物である。
【0157】
ポリイソシアネートは、総じて、2官能性および多官能性イソシアネート、2官能性イソシアネートのアロファネート、イソシアヌレート、ウレトジオンまたはカルボジイミド、およびそれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリイソシアネートは、少なくとも1つの2官能性イソシアネートを含む。特に、2官能性イソシアネート(ジイソシアネート)のみが使用される。
【0158】
適切なポリイソシアネートは、少なくとも2つの反応性イソシアネート基を有するものであれば、通常はすべての脂肪族および芳香族イソシアネートである。ここで、本発明において、脂肪族ジイソシアネートという用語には、脂環式ジイソシアネートも含まれる。
【0159】
好ましい実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、脂肪族ポリイソシアネートを組み込みにより含み、ここで、脂肪族ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの総重量に対して最大で80重量%、好ましくは最大で60重量%が、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートで置き換えられていてもよい。特定の実施形態では、尿素基含有ポリウレタンは、脂肪族ポリイソシアネートのみを組み込みにより含む。
【0160】
好ましくは、ポリイソシアネート成分において、NCO基の平均含有量は2~4である。ジイソシアネート、すなわち一般構造式O=C=N-R’-N=C=Oのイソシアン酸のエステルが好ましく、ここで、R’は、脂肪族基または芳香族基である。
【0161】
適切なポリイソシアネートは、2~5個のイソシアネート基を有する化合物、イソシアネート基の平均数が2~5であるイソシアネートプレポリマー、およびそれらの混合物から選択される。これには例えば、脂肪族、脂環式、および芳香族のジ-、トリ-、および高級ポリイソシアネートが挙げられる。
【0162】
好ましくは、(尿素基含有)ポリウレタンは、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートを組み込みにより含む。適切な脂肪族ポリイソシアネートは、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12-ジイソシアナトドデカン、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’,4’’-トリイソシアネート、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4,4-トリメチルヘキサン、イソホロンジイソシアネート(=3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、IPDI)、2,3,3-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(=メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート))から選択される。
【0163】
好ましくは、芳香族ポリイソシアネートは、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および2,6-トルイレンジイソシアネート、およびそれらの異性体混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジ-およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、オルト-トリジンジイソシアネート(TODI)、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0164】
適切な実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、ウレジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有する少なくとも1つのポリイソシアネートを組み込みにより含む。
【0165】
好ましい実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、ウレジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有する少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートを組み込みにより含む。
【0166】
さらなる好ましい実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートと、さらにはこれらの脂肪族ポリイソシアネートをベースとする、ウレジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有する少なくとも1つのポリイソシアネートとを組み込みにより含む。
【0167】
好ましくは、これは、ポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物であって、脂肪族および/または脂環式結合したイソシアネート基のみを有し、平均NCO官能価が2~4、好ましくは2~2.6、特に好ましくは2~2.4であるものである。
【0168】
特に好ましくは、(尿素基含有)ポリウレタンは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートを組み込みにより含む。
【0169】
好ましい実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、脂肪族ポリイソシアネートと、それと相補的な、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有する脂肪族化合物とから構成されており、ここで、脂肪族ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの総重量に対して最大で50重量%が、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートで置き換えられていてもよい。
【0170】
特に好ましい実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、脂肪族ポリイソシアネートと、それと相補的な、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有する脂肪族化合物とから構成されており、ここで、脂肪族ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの総重量に対して最大で30重量%が、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートで置き換えられていてもよい。
【0171】
特定の実施形態では、(尿素基含有)ポリウレタンは、脂肪族ポリイソシアネートと、それと相補的な、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有する脂肪族化合物とから構成されている。
【0172】
特定の実施形態では、尿素基含有ポリウレタンとして、ジアミン変性ポリカーボネートエステルポリエーテルポリウレタンが使用される。
【0173】
さらなる好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むか、またはそれからなる。適切かつ好ましいTPEは上述のものであり、それが参照される。
【0174】
適切なTPEは、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、および熱可塑性加硫物、またはオレフィン系架橋熱可塑性エラストマー(TPV)から選択される。
【0175】
TPAは、例えばArkema社のPEBAXとして市販されている。
【0176】
TPCは、例えばLG Chem社のKeyflexとして市販されている。
【0177】
TPOは、例えばPCW社のElastron TPO、Saxomer TPE-Oとして市販されている。
【0178】
TPSは、例えばKraton Polymers社のElastron GおよびElastron D、Kratonとして、Kuraray社のSeptonとして、BASF社のStyroflexとして、Kraiburg TPE社のThermolastとして、ALLOD Werkstoff GmbH & Co.KG社のALLRUNAとして、またはPCW社のSaxomer TPE-Sとして市販されている。
【0179】
TPUは、例えばBASF社のElastollanとして、またはCovestro社のDesmopan、Texin、Utechllanとして市販されている。
【0180】
TPVは、例えばDSM社のElastron V、Sarlinkとして市販されている。
【0181】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、およびポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)などのジエン系ゴム、これらのジエン系ゴム種を水素添加して得られる飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、エチレン/プロピレン-、エチレン/プロピレン-ジエン-、およびエチレン/オクテン共重合体ゴムを含むゴムから選択される。
【0182】
ポリマー材料(b)
一実施形態では、ポリマー材料b)のポリマー成分は、耐熱性だけでなく耐薬品性や良好な機械的特性をも特徴とするいわゆる高性能プラスチックから選択される少なくとも1つのポリマーを含むか、またはそれからなる。このようなポリマーは、特に自動車分野の用途に適している。
【0183】
好ましくは、ポリマー材料b)のポリマー成分は、ポリエステル、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリールスルホン、ABSコポリマー、およびそれらの混合物(ブレンド)から選択される。
【0184】
ポリエステルの特定の実施形態は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリカーボネート(PC)である。
【0185】
ポリアミドの特定の実施形態は、高耐熱ポリアミド(HTPA)である。これは、半結晶質または非晶質の熱可塑性で半芳香族のポリアミドである。好ましくは、これは、特にテレフタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸とイソフタル酸との混合物から選択される、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸を重合導入により含む。好ましいHTPAは、PA6.T、PA10.T、PA12.T、PA6.I、PA10.I、PA12.I、PA6.T/6.I、PA6.T/6、PA6.T/10T、PA10.T/6.T、PA6.T/12.T、PA12.T/6.T、およびそれらの混合物から選択される。
【0186】
ポリアミドのさらなる特定の実施形態は、ポリフタルアミド(PPA)である。
【0187】
好ましい実施形態では、ポリケトンは、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、およびそれらの混合物から選択される。
【0188】
さらなる好ましい実施形態では、ポリアリールスルホンは、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、およびPSUとABSとのブレンドから選択される。
【0189】
さらなる好ましい実施形態では、ポリマー材料(b)のポリマー成分は、ポリアミド-ABSブレンドを含むか、またはそれからなる。
【0190】
ポリマー材料(c)
一実施形態では、ポリマー材料(c)のポリマー成分は、エラストマー、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0191】
導電性フィラー
ポリマー材料(a)は、電磁放射線を遮蔽するための少なくとも1つのフィラーを含む。
【0192】
本発明による組成物は、上記および下記で定義されるように、成分(a)として少なくとも1つの導電性フィラーを含む。
【0193】
導電性フィラーは、有利には、粒子状材料または繊維の形態であってよい。これには、粉末、ナノ粒子材料、ナノチューブ、繊維などが含まれる。フィラーは、コーティングされていてもよいし、コーティングされていなくてもよく、また支持体材料に施与されていてもよい。粒子状材料または繊維の形状は、重要ではない。断面は、例えば、円形、楕円形、三角形、または長方形など、どのような形状でもよい。アスペクト比は、特に1~10000の範囲である。アスペクト比とは、粒子状材料または繊維の長さと厚さとの比である。
【0194】
好ましくは、少なくとも1つの導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイト、グラフェン、導電性カーボンブラック、金属被覆支持体などの金属含有材料、単体金属、金属酸化物、金属合金、金属繊維、およびそれらの混合物から選択される。
【0195】
好ましい金属被覆支持体は、金属被覆炭素繊維であり、特にニッケルメッキされた炭素繊維、および銀メッキされた炭素繊維である。好ましい金属被覆支持体はさらに、銀被覆ガラスビーズである。
【0196】
好ましくは、導電性フィラーは、金属からなる均質な層としては存在しない。好ましくは、導電性フィラーは、金属蒸着で得られた金属層でもなく、金属箔でもない。
【0197】
適切な単体金属は、コバルト、アルミニウム、ニッケル、銀、銅、ストロンチウム、鉄、およびそれらの混合物から選択される。
【0198】
適切な合金は、ストロンチウムフェライト、銀-銅合金、銀-アルミニウム合金、鉄-ニッケル合金、ミューメタル、非晶質金属(金属ガラス)、およびそれらの混合物から選択される。
【0199】
適切な金属繊維は、金属、金属合金、プラスチック被覆金属、金属被覆プラスチック、または完全に金属で覆われたコアからなる人工繊維である。適切な金属および合金は、上述のものである。好ましくは、金属繊維は、鉄、銅、アルミニウム、およびそれらの合金から選択される少なくとも1つの金属を含むか、またはそれからなる。特定の実施形態では、金属繊維は、鋼、特にステンレス鋼を含むか、またはそれからなる。
【0200】
特定の実施形態では、導電性フィラーは、好ましくは鉄、コバルト、ニッケル、それらの酸化物および混合酸化物、それらの合金および混合物から選択される、少なくとも1つの強磁性材料を含む。これらのフィラーは、特に低周波の電磁波を偏向させるのに適している。
【0201】
さらなる特定の実施形態では、導電性フィラーは、好ましくはカーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイト、グラフェン、導電性カーボンブラック、およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの高炭素導電性材料を含む。これらのフィラーは、特に高周波の電磁波を反射および吸収するのに適している。
【0202】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの導電性フィラーは、導電性カーボンブラック、金属含有材料、およびそれらの混合物から選択される。特に、導電性フィラーは、少なくとも1つの導電性カーボンブラックと、少なくとも1つの金属含有材料とを含む。カーボンブラックと金属含有材料との量比は、5重量%:95重量%~95重量%:5重量%の範囲である。
【0203】
第1のポリマー材料a)は、唯一の導電性フィラーとしてカーボンブラックを含むことができる。この場合、カーボンブラックの使用量は、着色のためにおよび/またはUV保護剤としてカーボンブラックを含む組成物における使用量よりも多い。第1のポリマー材料a)が唯一の導電性フィラーとしてカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックの含有量は、ポリマー材料a)の総重量に対して5~95重量%、特に好ましくは10~90重量%、特に20~85重量%である。
【0204】
好ましい実施形態では、第1のポリマー材料a)は、導電性フィラーとして、カーボンブラックと、カーボンブラックとは異なる少なくとも1つの成分との混合物を含む。特に、カーボンブラックとは異なる成分は、金属被覆支持体、単体金属、金属酸化物、金属合金、金属繊維、およびそれらの混合物から選択される。特に、第1のポリマー材料a)は、導電性フィラーとして、少なくとも1つの導電性カーボンブラックと少なくとも1つの金属含有材料との混合物を含む。
【0205】
フィラーは通常、予定された用途に望ましい電気伝導率を達成するのに十分な割合でポリマーマトリックスに含まれている。導電性フィラーの通常の使用量は、成分a)およびb)の総重量に対して、例えば0.1~95重量%の範囲である。好ましくは、フィラーa)の割合は、成分a)およびb)の総重量に対して、0.5~95重量%、特に好ましくは1~90重量%である。
【0206】
好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)は、尿素基含有ポリウレタンとは異なる少なくとも1つの導電性ポリマーをさらに含む。
【0207】
適切な導電性ポリマーは、総じて25℃で少なくとも1×10 Sm-1、好ましくは25℃で少なくとも2×10 Sm-1の導電率を有する。
【0208】
適切な導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリフェニレンスルフィド(PSP)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPhc)、スルホン化ポリスチレンポリマー、炭素繊維充填ポリマー、ならびにそれらの混合物、誘導体、および共重合体から選択される。
【0209】
好ましくは、少なくとも導電性ポリマーの重量割合は、成分b)の総重量に対して0~10重量%、例えば0.1~5重量%である。
【0210】
可能な実施形態では、ポリマー材料(a)は、尿素基含有ポリウレタンとは異なる少なくとも1つの非導電性ポリマーをさらに含む。
【0211】
尿素基含有ポリウレタンとは異なる適切な非導電性ポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン(POM)、液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、エポキシド、フェノール、クロロスルホネート、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ABN)、ブチレン、ネオプレン、ニトリル、ポリイソプレン、天然ゴム、および共重合体ゴム、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、エチレン-プロピレン(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン-モノマー(EPDM)、ニトリル-ブタジエン(NBR)、スチレン-ブタジエン(SBR)、およびそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0212】
好ましくは、尿素基含有ポリウレタンとは異なる少なくとも1つの非導電性ポリマーの重量割合は、成分a)の総重量に対して0~20重量%、好ましくは0~15重量%である。このような非導電性マトリックスポリマーが存在する場合、成分a)の総重量に対して少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5重量%の量で存在する。
【0213】
導電性ポリマーと非導電性ポリマーとを、マトリックスポリマーの重合(ゾル-ゲル法)時に、フィラー粒子の溶融混合や分散などの標準的な手法で混合して、各成分の混合物を形成することができる。この場合、均質ブレンドおよび不均質ブレンドが可能である。均質ブレンドではマクロ相が存在しないが、不均質ブレンドではマクロ相が存在する。
【0214】
好ましい実施形態では、第1のポリマー材料(a)は、以下のものを含む:
a1)少なくとも1つの導電性フィラー0.5~95重量%、
a2)少なくとも1つのポリマー成分15~99.5重量%、
a3)a2)以外の少なくとも1つの非導電性ポリマー0~20重量%、
a4)少なくとも1つの導電性ポリマー0~10重量%、
a5)任意に、少なくとも1つの添加剤、ただし、各添加剤は最大3重量%の量で存在する、
任意に、少なくとも1つの溶媒。
【0215】
適切な添加剤a5)は、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、光保護剤(紫外線安定剤、紫外線吸収剤、または紫外線遮断剤)、架橋反応用触媒、増粘剤、チクソトロピック剤、界面活性剤、粘度調整剤、潤滑剤、染料、核剤、帯電防止剤、離型剤、消泡剤、殺菌剤などから選択される。
【0216】
さらに、組成物は、成分a6)として、成分a)~c)とは異なる少なくとも1つのフィラーおよび強化材を含むことができる。後述のフィラーおよび強化材は、前述のように背面射出成形用のコンポジットを提供するのにも適している。
【0217】
「フィラーおよび強化材」(=成分a6))という用語は、本発明において広く理解され、粒子状フィラー、繊維状材料、およびあらゆる過渡的な形態を含む。粒子状フィラーは、ダスト状から粗い粒子状のものまで、幅広い粒径を有することができる。フィラーとして、有機または無機のフィラーおよび強化材が挙げられる。例えば、炭素繊維、カオリン、チョーク、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス粒子、例えばガラスビーズ、ナノスケールの層状ケイ酸塩、ナノスケールの酸化アルミニウム(Al)、ナノスケールの二酸化チタン(TiO)、層状ケイ酸塩、およびナノスケールの二酸化ケイ素(SiO)などの無機フィラーを使用することができる。また、フィラーには表面処理が施されていてもよい。
【0218】
適切な層状ケイ酸塩は、カオリン、蛇紋岩、タルク、マイカ、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物、およびそれらの混合物である。層状ケイ酸塩は、表面処理されたものであっても、未処理のものであってもよい。
【0219】
さらに、1つ以上の繊維状材料を使用することができる。これらは好ましくは、ホウ素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、セラミックス繊維、および玄武岩繊維などの既知の無機強化繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、およびポリエチレン繊維などの有機強化繊維、ならびに木質繊維、亜麻繊維、麻繊維、およびサイザル繊維などの天然繊維から選択される。
【0220】
好ましくは、成分a6)が存在する場合、成分a1)~a6)の総量に対して1~80重量%の量で使用される。
【0221】
さらなる実施形態として、本発明による組成物は、フォームとして存在してもよい。本発明の趣意におけるフォームとは、相互に連通したセルを有する、多孔質で少なくとも部分的に連続気泡型の構造体である。
【0222】
ポリウレタンフォームを製造するために、本発明による組成物の成分を、任意にその少なくとも一部を予備重合した後に、混合し、発泡させ、硬化させることができる。好ましくは、硬化は化学的な架橋によって行われる。発泡は、原則として、イソシアネート基と水との反応で生成される二酸化炭素によって行うことができるが、他の発泡剤を使用することも可能である。原則として、C~Cアルカン、例えばn-ブタン、sec-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサンなどの炭化水素、またはジクロロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、クロロジフルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、2,2-ジクロロ-2-フルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素、特にジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロプロパン、または六フッ化硫黄などの塩素不含のフルオロ炭化水素といった炭化水素クラスの発泡剤を使用することもできる。これらの発泡剤の混合物も可能である。その後の硬化は、通常は、約10~80℃、特に15~60℃の温度、特に室温で行われる。硬化後、任意に例えば対流式空気乾燥やマイクロ波乾燥などの通常のプロセスを用いて、なおも存在する残留水分を除去することができる。
【0223】
好ましくは、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、2成分系(2C)ポリマー組成物の形態である。適切な(2C)ポリマー組成物は、エラストマー、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物を含むか、またはそれからなる。好ましいのは、2Cシリコーンゴム、2Cポリオレフィン、2Cポリウレタン、およびそれらの混合物である。
【0224】
さらなる好ましい実施形態では、ポリマー材料(a)のポリマー成分は、2成分系(2C)ポリウレタン組成物の形態である。適切な2成分系ポリウレタンラッカーは、例えば、成分(I)および成分(II)を含み、成分(I)は、尿素基含有ポリウレタンの製造に使用されるような、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有する前述の化合物の少なくとも1つを含む。代替的または追加的に、成分(I)は、NCO基と反応する基を少なくとも2つ有するプレポリマーを含むことができる。成分(II)は、尿素基含有ポリウレタンの製造に使用されるような、前述のポリイソシアネートの少なくとも1つを含む。代替的または追加的に、成分(II)は、少なくとも2つのNCO基を含むプレポリマーを含むことができる。任意に、成分(I)および/または(II)は、さらなるオリゴマーおよび/またはポリマー成分を含むことができる。例えば、水性2成分系(2C)ポリウレタン組成物の場合、成分(I)は、1つ以上のさらなるポリウレタン樹脂および/またはアクリレートポリマーおよび/またはアクリレートポリエステルおよび/またはアクリレートポリウレタンを有することができる。さらなるポリマーは、通常は水溶性または水分散性であり、ヒドロキシル基および任意に酸基またはその塩を有する。上述したポリマー材料(a)のさらなる成分は、それぞれ成分(I)または(II)のみに含まれていてもよいし、双方に分けて含まれていてもよい。
【0225】
ポリマー材料(a)の2成分系(2C)ポリウレタン組成物の2つの成分(I)および(II)の製造は、撹拌しながら個々の成分から常法に従って行われる。また、これら2つの成分(I)および(II)からのコーティング剤の製造も同様に、例えばディゾルバーなどの慣用の装置を用いた撹拌あるいは分散や、同じく慣用されている2成分系計量混合装置を用いて行われる。
【0226】
2成分系(2C)ポリウレタン組成物を含むポリマー材料(a)は、水性ラッカーの形態であってもよい。すぐに塗布できる状態の適切な水性2成分系(2C)ポリウレタンラッカーは、通常は、組成物の総重量に対して以下のものを含む:
- 少なくとも1つの導電性フィラー(前記で成分a)と定義されたもの)0.5~95重量%、
- 少なくとも1つのポリウレタン、特に尿素基含有ポリウレタン(前記で成分a2)と定義されたもの)15~99.5重量%、
- a2)とは異なる少なくとも1つの非導電性ポリマー(前記で成分a3)と定義されたもの)0~20重量%、
- 少なくとも1つの導電性ポリマー(前記で成分a4)と定義されたもの)0~7重量%、
- 少なくとも1つの溶媒0~90重量%、好ましくは10~80重量%、
- さらなる添加剤、フィラーおよび強化材100重量%まで。
【0227】
本発明による2成分系(2C)ポリウレタン組成物を用いて、例えば、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PC、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RIM、SMC、BMC、PP-EPDM、およびUP(DIN 7728T1に準拠した略語)などのプラスチックをコーティングすることができる。当然のことながら、被覆すべきプラスチックは、ポリマーブレンド、変性プラスチック、または繊維強化プラスチックであってもよい。さらに、本発明による2成分系(2C)ポリウレタン組成物は、例えば、金属、木材、または紙、または鉱物系基材などの他の基材にも施与することができる。
【0228】
官能化されていないおよび/または非極性の基材表面の場合、この表面を、コーティング前にプラズマ処理や火炎処理などの前処理に供することができる。
【0229】
必要に応じて、コーティングの前に、本発明による2成分系(2C)ポリウレタン組成物で基材を下塗りすることができる。この場合、プライマーとして、従来のプライマー、水性プライマーともにすべて挙げられる。当然のことながら、熱硬化型などの放射線硬化型プライマーのみならず、デュアルキュア型プライマーも使用可能である。
【0230】
施与は、例えば、吹付け、ブレード塗布、浸漬、刷毛塗りなどの従来の方法、またはコイルコーティングプロセスによって行われる。
【0231】
本発明によるコーティング剤は、通常、最高250℃の温度、好ましくは最高150℃の温度、非常に特に好ましくは最高100℃の温度で硬化される。
【0232】
本発明のさらなる主題は、電磁放射線遮蔽用組成物の製造方法であって、
a)少なくとも1つの導電性フィラーを提供するステップと、
b)少なくとも1つの導電性フィラーを、ポリマーマトリックスを形成するポリマーと混合するステップと
を含む方法である。
【0233】
本発明のさらなる主題は、先に定義した電磁放射線遮蔽用組成物を含むかまたはそれからなる電磁放射線遮蔽基材の製造方法であって、かかる電磁放射線遮蔽用組成物を提供し、
- 該電磁放射線遮蔽用組成物から基材を形成する(成形)、または
- 該電磁放射線遮蔽用組成物を基材に組み込む(組み込み)、または
- 該電磁放射線遮蔽用組成物で基材を少なくとも部分的にコーティングする(コーティング)方法である。
【0234】
本発明において、基材とは、その上に本発明による組成物を施与することができる、またはその中に本発明による組成物を組み込むことができる、または本発明による組成物からなる、任意の面状構造体を意味すると理解される。面状構造体とは、例えば、筐体、ケーブルシース、ケーシング、カバー、センサシステムである。
【0235】
好ましい実施形態では、上記で定義された方法にさらに乾燥および/または硬化のステップが続く。
【0236】
本発明による方法で使用するために、電磁放射線遮蔽用組成物に、導電性フィラーa)とは異なる少なくとも1つの添加剤を混合することができる。適切な添加剤は、上述のものである。
【0237】
成形(=変形例1)
本発明による方法の第1の変形例では、電磁放射線遮蔽用組成物から基材が成形される。ここで、本発明による組成物は可塑化され、成形ステップに供される。これらは、注型成形、ブロー成形、カレンダー加工、射出成形、プレス加工、射出エンボス加工、エンボス加工、押出加工など、当業者に知られている成形ステップである。
【0238】
組み込み(=変形例2)
本発明による方法の第2の変形例では、電磁放射線遮蔽用組成物が基材に組み込まれる。
【0239】
適切な組み込み方法は、当業者には原則的に知られており、プラスチック成形材料のコンパウンディングに一般的に使用されているものが含まれる。
【0240】
組み込みは、溶融状態でも固相でも行うことができる。例えば、固相で予備混合し、その後、溶融状態で混合することにより、これらのプロセスを組み合わせることも可能である。混練機や押出機など、一般的な装置を使用することができる。
【0241】
電磁放射線遮蔽用組成物を基材に組み込むことで得られた組成物を、その後、少なくとも1つのさらなる方法ステップに供することができる。これは好ましくは、成形、乾燥、硬化、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0242】
コーティング(=変形例3)
本発明による方法の第3の変形例では、基材が少なくとも部分的に電磁放射線遮蔽用組成物でコーティングされる。
【0243】
記載された電磁放射線遮蔽用組成物を用いた基材のコーティングは、当業者に知られている従来の方法により行われる。この目的のために、電磁放射線遮蔽用組成物またはそれを含むコーティング剤を、コーティングすべき基材に所望の厚さで施与し、任意に乾燥させ、かつ/または任意に部分的もしくは完全に硬化させる。このプロセスは、必要に応じて1回または複数回繰り返すことができる。基材への施与は、例えば、浸漬、吹付け、ヘラ塗り、ブレード塗布、ブラシ塗布、ロール塗布、ディップコーティング、ローラー塗布、キャスティング、ラミネート、背面射出成形、インモールド・コーティング、共押出、スクリーン印刷、パッド印刷、スピンコーティング、反応射出成形(RIM)、圧縮成形、およびトランスファ成形により、既知の方法で行うことができる。好ましい実施形態では、電磁放射線遮蔽用組成物は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(TPE)を含み、積層、背面射出成形、共押出、反応射出成形(RIM)、圧縮成形、またはトランスファ成形によって、コーティングすべき基材に施与される。
【0244】
コーティングは、例えば、空気圧吹付け法、エアレス吹付け法、または静電吹付け法などの吹付けプロセスによって、1回または数回施与することができる。
【0245】
コーティングの厚さ、すなわち導電層の厚さは、通常、約100~5000μm、好ましくは500~2000μmの範囲である。
【0246】
コーティングの施与、および任意に乾燥および/または硬化は、通常の温度条件下で、つまりコーティングを加熱せずに行うことができるが、温度を上げて施与することもできる。コーティングを、例えば施与中および/または施与後に、例えば25~200℃、好ましくは30~100℃の高温で乾燥および/または硬化させてもよい。
【0247】
本発明のさらなる主題は、電磁放射線を遮蔽するための、上記で定義された本発明による組成物の使用である。特に、上記で定義された本発明による組成物は、エレクトロニクス用筐体において電磁放射線を遮蔽するために使用することができる。
【0248】
本発明によるおよび本発明による方法により製造された電磁放射線遮蔽基材は、有利にも、電動車両、航空機、および宇宙船での使用に適している。好ましい使用分野は、電動車両およびドローンにおける、本発明によるおよび本発明による方法により製造された基材の使用である。一般的に、電動車両とは、少なくとも一時的または部分的に電気エネルギーで駆動される交通手段のことである。この場合、エネルギーを車両内で生成してバッテリに蓄えるか、または外部から(例えば、コンダクターレール、架線、誘導などにより)一時的もしくは恒久的に供給することができ、異なるエネルギー供給形態の組み合わせが可能である。バッテリ駆動式の自動車は、国際的にはBattery Electric Vehicle(BEV)とも呼ばれている。電動車両の例は、道路車両、鉄道車両、水上車両、または航空機であり、例えば、電動車、電動二輪車、電動バイク、電動三輪車、バッテリバス、トロリーバス、電気トラック、電気鉄道(鉄道および路面電車)、電動自転車、および電動スクーターである。本発明の趣意における電動車両には、ハイブリッド電動車両(Hybrid Electric Vehicle、HEV)や燃料電池電動車両(Fuel Cell (Electric) Vehicle、FC(E)V)も含まれる。燃料電池自動車では、燃料電池により水素やメタノールから電気エネルギーが生成され、これが電気駆動装置で運動に直接変換されるか、またはバッテリに一時的に蓄えられる。
【0249】
エレクトロモビリティは、電磁放射線の遮蔽が非常に重要である、パワーエレクトロニクス、バッテリ、モータ、ならびにナビゲーションおよび通信ユニットの4つの主要分野に分けられる。本発明による基材は、これら4つの分野におけるe-モビリティ車両のエレクトロニクス用筐体の製造に有利に適している。
【0250】
近年の電動車両は、例えば非同期モータや永久磁石同期モータ(ブラシレスDCモータ)などのブラシレスモータをベースとしている。モータの各相に供給される電圧の整流、ひいては運転に必要な回転磁界の生成は、いわゆるインバータによって電子的に行われる。制動時には、モータは発電機として機能し、インバータで整流された交流電圧をトラクションバッテリに供給する(回生)。燃料電池も電動車のバッテリも、これまで自動車業界で知られていた12Vの直流や24Vの直流よりも高い電圧を供給する。またさらに、オンボードエレクトロニクスの多くの部品では、低電圧のオンボード電源が必要である。このため、DC/DCコンバータを使用して、バッテリの高電圧を対応する低電圧に変換し、エアコン、パワーステアリング、照明などの消費装置に供給している。電動車のもう1つの重要なパワーエレクトロニクスコンポーネントは、車載用充電器である。電動車両への供給を行う充電ステーションでは、単相または三相の交流または直流が供給される。トラクションバッテリの充電には直流が必須であり、これは、車載充電器を使用して交流を整流および変換して生成される。本発明による基材は、特に、インバータ、DC/DCコンバータ、および車載充電器からの電磁放射線を遮蔽するのに適している。また、本発明による基材は、特にGPSシステムなどのナビゲーションおよび通信ユニットを電磁放射線から遮蔽するのにも適している。
【0251】
有利なことに、上記で定義された本発明による組成物は、電磁放射線の遮蔽に加えて、NVH特性(NVH=noise, vibration, harshness)の改善にも適している。
【0252】
さらに、上記で定義された本発明による組成物は、良好なシーリング性能を有するシール材または容器の製造に適している。
【0253】
EMI遮蔽用組成物は、以下の組成物をベースとすることが好ましい:
ポリマーマトリックス:
EMI遮蔽用組成物は、以下のポリマーマトリックスの1つ以上を含む:
- コンパウンディング処理されたTPE(老化防止剤、可塑剤、および任意に他の添加物質を含む)、または
- コンパウンディング処理されたTPU(老化防止剤、可塑剤、および任意に他の添加物質を含む)、または
- コンパウンディング処理されたTPV(老化防止剤、可塑剤、および任意に他の添加物質を含む)
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して、それぞれ20~95重量%、好ましくは40~95重量%。
【0254】
フィラー:
EMI遮蔽用組成物は、以下の導電性フィラーを1つ以上含む:
導電性カーボンブラック:
- 着色、導電性向上、紫外線保護の役割を果たす
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して5~30重量%。
【0255】
炭素繊維:
- 導電性向上の役割を果たす
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して5~30重量%。
【0256】
グラファイト:
- 導電性向上の役割を果たす
- 粒子径:5μm~600μm
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して5~30重量%。
【0257】
グラフェン/カーボンナノチューブ:
- 導電性向上の役割を果たす
- 粒子径:0.01μm~100μm
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して5~30重量%。
【0258】
金属繊維:
- 導電性向上の役割を果たす
- 使用される金属(合金を含む):鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム
- 断面形状:丸形、三角形、正方形、長方形
- 直径:1μm~500μm
- 長さ:0.5mm~15mm
- アスペクト比:1~15000
- 割合:EMI遮蔽用組成物の総重量に対して5~50重量%。
【図面の簡単な説明】
【0259】
図1】シール材をオーバーモールド成形し、さらに本発明によるEMI遮蔽用組成物をオーバーモールド成形した試験体。
図2】本発明によるEMI遮蔽用組成物をオーバーモールド成形し、穿孔した試験体。穿孔により、良好なEMI遮蔽特性に加えて、良好なNVH特性も達成されている。
【0260】
以下の実施例により本発明を詳説するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0261】
実施例
【表1】
【0262】
本発明による組成物を押出機で製造した後、造粒する。成形を射出成形により行い、標準化されたASTM試験体を形成する。あるいは、圧縮成形により寸法1mm×150mm×150mmのプレートを製造し、そこからASTM試験体を削り出す。
【0263】
この処方により、良好なEMI遮蔽試験体が得られる。
図1
図2