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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】乾燥炉の搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/04 20060101AFI20240216BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20240216BHJP
   F26B 3/30 20060101ALI20240216BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F26B13/04
F26B13/08 Z
F26B3/30
B65H27/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022005366
(22)【出願日】2022-01-17
(62)【分割の表示】P 2021127833の分割
【原出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022802
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】稲本 浩也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将伸
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190924(JP,A)
【文献】特開2011-127762(JP,A)
【文献】特開2007-119082(JP,A)
【文献】特開2020-190354(JP,A)
【文献】特開2013-148310(JP,A)
【文献】特開平09-235010(JP,A)
【文献】特開平11-193122(JP,A)
【文献】米国特許第5217374(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/04
F26B 13/08
F26B 3/30
B65H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を乾燥炉内において乾燥しつつ搬送する乾燥炉の、搬送ローラであって、
一対の支持部材によってそれぞれ回転可能に支持され且つ軸心方向に離隔して同心に配置され、相対向する一対の軸側フランジが軸端にそれぞれ固設された一対の支持軸と、
前記一対の軸側フランジに対向した状態で前記一対の軸側フランジと着脱可能に締結された一対のローラ側フランジが、両端に固設された金属ローラと、
前記軸側フランジおよびローラ側フランジの一方の中央部から突設された嵌合突部と、
前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方に形成され、前記嵌合突部を嵌め入れて前記一対の支持軸と前記ローラとを相互に心出しする嵌合穴とを、備え、
前記一対の支持部材は、フレーム上にボルトによる螺合により締結された支柱を介して前記フレーム上に固定され、
前記支持軸は、前記軸側フランジが固設された大径軸部と、前記大径軸部に続いて前記乾燥炉の炉壁を貫通し、前記乾燥炉外において前記支持部材により回転可能に支持された小径軸部とを一体に有し、
前記支持軸の大径軸部と小径軸部との段差から前記炉壁の内壁面までの距離は、前記嵌合突部の突出し長さよりも長く設定されている
ことを特徴とする乾燥炉の搬送ローラ。
【請求項2】
前記嵌合穴が備えられた前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方が固設された前記支持軸および金属ローラの一方の開口には、前記嵌合穴と同径で前記嵌合突部を嵌め入れる第2嵌合穴が形成された環状のカラーが嵌め着けられており、
前記嵌合穴が備えられた前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方は、前記カラーに着脱可能にねじにより固定されている
ことを特徴とする請求項1の乾燥炉の搬送ローラ。
【請求項3】
前記搬送ローラは、前記乾燥炉において前記シート状部材の搬送方向に互いに平行に設けられた一対の支持部材に、複数本が互いに平行な方向で1本置きに同じ第1高さ位置および前記第1高さ位置より低い第2高さ位置となるように架け渡された状態で、互いに同期して回転駆動されるものであり、
前記一対の支持部材には、前記複数本の搬送ローラの径よりも小さい径を有し、前記複数本の搬送ローラのうちの前記第1高さ位置の搬送ローラよりも高い位置であって前記第2高さ位置の搬送ローラよりも前記第1位置の搬送ローラに近い位置で回転可能に支持されて前記シート状部材の反りを押えるための反押えローラが、前記複数本の搬送ローラ毎に回転可能に設けられ、
前記搬送ローラは、前記反押えローラと増速歯車装置を介して連結され、前記反押えローラの周速が前記搬送ローラと同様となるように前記反押えローラを前記搬送ローラよりも高速で回転駆動するものである
ことを特徴とする請求項1又は2の乾燥炉の搬送ローラ。
【請求項4】
前記乾燥炉は、前記搬送ローラにより搬送される前記シート状部材に対向して赤外線或いは遠赤外線を放射することで前記シート状部材を加熱する複数個のヒータが固定されたヒータ支持部材を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の乾燥炉の搬送ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内において、シート状部材を連続的に搬送する搬送ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有するシート状部材の一面に塗工液を塗布し、樹脂成分を含む塗工液が塗布されたシート状部材を、乾燥室内において搬送(支承)ローラを用いて搬送させる過程で、シート状部材に塗布された塗工液を加熱により連続的に乾燥させる乾燥炉が提案されている。たとえば特許文献1に記載の乾燥装置がそれである。
【0003】
上記のような乾燥炉に用いられる搬送ローラの一種に、金属製たとえば鋼製の支持軸と、クロムめっきにより形成された滑らかなロールメッキ層が外周面に形成されたたとえばステンレス管製の金属ローラと、前記支持軸が貫通させられた状態で金属ローラの両端に溶接によりそれぞれ固定され、前記支持軸が挿通させられた金属製の一対のセットカラーとを、備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-047401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記搬送ローラは、積層シートとの接触による傷、金属ローラのクロームメッキに対する前記塗工液の溶剤成分による浸食、メッキの剥離、汚れの蓄積等のため、定期的に交換することが必要である。しかしながら、前述の従来の支持ローラでは、乾燥処理作業に伴う昇温および降温の繰り返しによる熱膨張および熱収縮の影響や、支持軸に固着した塗工液の蓄積などにより、金属ローラを支持軸から抜くことができず、金属ローラの交換作業が容易ではなかった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、支持軸と金属ローラとを容易に分離でき、金属ローラの交換を容易に行なうことができる、乾燥炉の搬送ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、支持軸を金属ローラ製のローラを貫通させないでそのローラの端面に対して、インロー構造で同心状態を保ち、且つフランジ構造で着脱可能に固定することで、支持軸と金属ローラとを容易に分離でき、金属ローラの交換を容易に行なうことができることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて為されたものである。
【0008】
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)シート状部材を乾燥炉内において乾燥しつつ搬送する乾燥炉の、搬送ローラであって、(b)一対の支持部材によってそれぞれ回転可能に支持され且つ軸心方向に離隔して同心に配置され、相対向する一対の軸側フランジが軸端にそれぞれ固設された一対の支持軸と、(c)前記一対の軸側フランジに対向した状態で前記一対の軸側フランジと着脱可能に締結された一対のローラ側フランジが、両端に固設された金属ローラと、(d)前記軸側フランジおよびローラ側フランジの一方の中央部から突設された嵌合突部と、(e)前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方に形成され、前記嵌合突部を嵌め入れて前記一対の支持軸と前記ローラとを相互に心出しする嵌合穴とを、備え、(f)前記一対の支持部材は、フレーム上にボルトによる螺合により締結された支柱を介して前記フレーム上に固定され、(g)前記支持軸は、前記軸側フランジが固設された大径軸部と、前記大径軸部に続いて前記乾燥炉の炉壁を貫通し、前記乾燥炉外において前記支持部材により回転可能に支持された小径軸部とを一体に有し、(h)前記支持軸の大径軸部と小径軸部との段差から前記炉壁の内壁面までの距離は、前記嵌合突部の突出し長さよりも長く設定されていることにある。
【0009】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記嵌合穴が備えられた前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方が固設された前記支持軸および金属ローラの一方の開口には、前記嵌合穴と同径で前記嵌合突部を嵌め入れる第2嵌合穴が形成された環状のカラーが嵌め着けられており、前記嵌合穴が備えられた前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方は、前記カラーに着脱可能にねじにより固定されていることにある。
【0010】
第3発明の要旨とするところは、第1発明又は第2発明において、前記搬送ローラは、前記乾燥炉において前記シート状部材の搬送方向に互いに平行に設けられた一対の支持部材に、複数本が互いに平行な方向で1本置きに同じ第1高さ位置および前記第1高さ位置より低い第2高さ位置となるように架け渡された状態で、互いに同期して回転駆動されるものであり、前記一対の支持部材には、前記複数本の搬送ローラの径よりも小さい径を有し、前記複数本の搬送ローラのうちの前記第1高さ位置の搬送ローラよりも高い位置であって前記第2高さ位置の搬送ローラよりも前記第1位置の搬送ローラに近い位置で回転可能に支持されて前記シート状部材の反りを押えるための反押えローラが、前記複数本の搬送ローラ毎に回転可能に設けられ、前記搬送ローラは、前記反押えローラと増速歯車装置を介して連結され、前記反押えローラの周速が前記搬送ローラと同様となるように前記反押えローラを前記搬送ローラよりも高速で回転駆動するものであることにある。
第4発明の要旨とするところは、第1発明から第3発明のいずれか1の発明において、前記乾燥炉は、前記搬送ローラにより搬送される前記シート状部材に対向して赤外線或いは遠赤外線を放射することで前記シート状部材を加熱する複数個のヒータが固定されたヒータ支持部材を備えることにある。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の乾燥炉の搬送ローラによれば、一対の支持軸の軸端に固設された一対の軸側フランジと前記金属ローラの両端に固設されたローラ側フランジとが着脱可能に締結されており、軸側フランジおよびローラ側フランジの一方の中央部から突設された嵌合突部が、前記軸側フランジおよびローラ側フランジの他方に形成された嵌合穴に嵌め入れられて心出しされる一方で、前記一対の支持部材は、フレーム上にボルトによる螺合により締結された支柱を介して前記フレーム上に固定され、前記支持軸は、前記軸側フランジが固設された大径軸部と、前記大径軸部に続いて前記乾燥炉の炉壁を貫通し、前記乾燥炉外において前記支持部材により回転可能に支持された小径軸部とを一体に有し、前記支持軸の大径軸部と小径軸部との段差から前記炉壁の内壁面までの距離は、前記嵌合突部の突出し長さよりも長く設定されているので、一対の支持軸と金属ローラとを容易に分離でき、金属ローラの交換を容易に行なうことができる。
【0012】
第2発明の乾燥炉の搬送ローラによれば、前記前記支持軸および金属ローラの一方の開口内には、前記嵌合穴と同径の第2嵌合穴が形成された環状のカラーが嵌め着けられており、前記軸側フランジおよび前記ローラ側フランジの他方は、前記カラーに着脱可能にねじにより固定されているので、金属ローラの交換時において、ローラ側フランジを再利用できる利点がある。
【0013】
第3発明の乾燥炉の搬送ローラによれば、前記複数本の搬送ローラの径よりも小さい径を有し、前記複数本の搬送ローラのうちの前記第1高さ位置の搬送ローラよりも高い位置であって前記第2高さ位置の搬送ローラよりも前記第1位置の搬送ローラに近い位置で回転可能に支持されて前記シート状部材の反りを押えるための反押えローラが、前記複数本の搬送ローラ毎に回転可能に設けられており、前記搬送ローラは、前記反押えローラと増速歯車装置を介して連結され、前記反押えローラは、反押えローラの周速が前記搬送ローラと同様となるように前前記搬送ローラよりも高速で回転駆動される。これにより、反押えローラは、は、乾燥炉内において搬送ローラによって搬送される搬送途中にシート状部材に反りが発生すると、その反りを押えるとともに、反押えローラとシート状部材の一面に塗布された塗膜との摺接が回避され、塗膜に傷が発生することが回避される。
第4発明の要旨とするところは、第1発明から第3発明のいずれか1の発明において、前記乾燥炉は、前記搬送ローラにより搬送される前記シート状部材に対向して赤外線或いは遠赤外線を放射することで前記シート状部材を加熱する複数個のヒータが固定されたヒータ支持部材を備える。これにより、搬送ローラにより搬送されるシート状部材が赤外線或いは遠赤外線の放射を受けて効率よく加熱乾燥される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例の搬送ローラが備えられた乾燥炉を、その一部を切り欠いて示す平面図である。
図2図1の加熱炉における、搬送ローラおよび反押えローラとそれらの駆動装置とを説明するための、要部側面図である。
図3図1の乾燥炉に備えられた搬送ローラを、その一部を切り欠いて示す要部拡大図である。
図4図1の乾燥炉に備えられた搬送ローラにより搬送されるシート状部材の搬送経路を説明する図であって、シート状部材の一面に搬送ローラを接触させないように搬送する場合を示す図である。
図5図1の乾燥炉に備えられた搬送ローラにより搬送されるシート状部材の2種類の搬送経路を説明する図であって、搬送中のシート状部材の一面に搬送ローラを接触させることができる場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は発明に関連する要部を説明するものであり、寸法および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例
【0016】
図1は、本発明の一実施例の搬送ローラ10を備えた乾燥炉12を、一部を切欠いて示す平面図である。図2は、搬送ローラ10を回転駆動する回転駆動装置30を説明する図である。図3は、搬送ローラ10の構造の要部を示す拡大図である。
【0017】
乾燥(加熱)炉12は、たとえばポリイミド樹脂の前躯体であるポリアミド酸を有機溶媒で溶解した塗工液が一面に塗布された銅箔等のシート状部材14が、図示しない巻出ロールから連続的に供給されると、加熱乾燥処理を施して、シート状部材14の一面に塗布された塗工液を硬化させてポリイミド化し、たとえば銅箔の一面にポリイミド樹脂が積層された積層シート16を、図示しない巻取ロールへ連続的に送出する。積層シート16は、可撓性であって、シート状部材14の一面に硬化したポリイミド樹脂が積層されたものであり、電子部品が装着される電子回路用の基材、コネクタ相互を接続するフラットケーブル等として用いられる。
【0018】
乾燥炉12は、トンネル状を成し、フレーム18上に載置されている。乾燥炉12は、断熱材20aおよびその断熱材20aを包被するケーシング20bによって形成された炉壁20と、炉壁20の両外側に併設され、シート状部材14の搬送方向CRすなわち乾燥炉12の長手方向に平行に設けられた一対の支持部材22、24と、一対の支持部材22、24によって両端部がベアリング26を介して回転可能に支持され、乾燥炉12内においてシート状部材14を搬送する複数本の搬送ローラ10と、一対の支持部材22、24によって両端部がベアリング26を介して回転可能に支持され、乾燥炉12内において搬送ローラ10により搬送されるシート状部材14に発生する反りを押えるための反押えローラ28と、複数本の搬送ローラ10を同期して回転駆動する回転駆動装置30とを、備えている。
【0019】
一対の支持部材22、24は、フレーム18上にボルト29による螺合により締結された支柱31を介してフレーム18上に固定されている。一対の支持部材22、24は、相対向する長手状の複数対の支持板22a、24aが図1の平面視において所定の中心間隔D1を隔てた状態で連結板22b、24bによりそれぞれ連結され、長手方向に連ねられることで、構成されている。
【0020】
複数本の搬送ローラ10は、シート状部材14の搬送方向CRにおいて略一定の間隔Dを隔てて互いに平行な状態で乾燥炉12の幅方向すなわち搬送方向CRに直交する方向に平行に配置されている。搬送ローラ10は、その回転中心が1本置きに同じ第1高さ位置H1および第1高さ位置H1より低い第2高さ位置H2となるように、一対の支持部材22、24間にそれぞれ架け渡されている。
【0021】
複数本の搬送ローラ10の間のうちの第1高さ位置H1の搬送ローラ10に近い位置の上流側であって、第1高さ位置H1よりも高い第3高さ位置H3には、搬送ローラ10の径R1よりも小さい径R2を有する反押えローラ28が、一対の支持部材22、24により回転可能に支持されている。
【0022】
乾燥炉12内には、図3に示すように、搬送ローラ10により搬送されるシート状部材14に対向して赤外線或いは遠赤外線を放射することでシート状部材14を加熱する複数個のヒータ32が固定されたヒータ支持部材34が、搬送ローラ10の上側および下側に配設されている。ヒータ32による加熱によって、シート状部材14の一面に塗布された塗工液に含まれるポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の硬化反応が促進されることで、シート状部材14の一面には、硬化したポリイミド樹脂層が形成される。
【0023】
図3は、搬送ローラ10の支持部材22側の端部を詳しく示している。搬送ローラ10の支持部材24側の端部も同様に構成されている。図3において、搬送ローラ10は、軸心方向に離隔して同心に配置され、相対向する一対の軸側フランジ40a、42aが軸端にそれぞれ固設された一対の支持軸40、42と、一対の軸側フランジ40a、42aに対向した状態で一対の軸側フランジ40a、42aと着脱可能に締結された一対のローラ側フランジ44a、44bが、両端に固設された金属ローラ44と、軸側フランジ40a、42aの中央部から突設された嵌合突部46と、ローラ側フランジ44a、44bに形成され、嵌合突部46を嵌め入れて一対の支持軸40、42と金属ローラ44とを相互に心出しする嵌合穴48とを、備えている。なお、上記軸側フランジ42aの中央部から突設された嵌合突部46と、ローラ側フランジ44bに形成され、嵌合突部46を嵌め入れる嵌合穴48とは、図示されていない。
【0024】
金属ローラ44は、たとえばステンレス鋼管から構成されており、その外周面には、シート状部材14の一面において硬化後のポリイミド樹脂層の表面が滑らかとなるように、滑らかなクロームメッキ層が形成されている。
【0025】
図3に示すように、金属ローラ44の開口内には、嵌合穴48が形成された環状のカラー52がたとえば溶接により一体的に嵌め着けられるとともに、金属ローラ44の端面には、段付穴54が機械加工により形成されている。また、ローラ側フランジ44aの中央部には、段付穴54と嵌合する心出突部56が形成されている。ローラ側フランジ44aは、その心出突部56が段付穴54と嵌合する状態で、締結ねじ58の螺合によって金属ローラ44の端面に固定されている。支持軸40の軸端に一体的に設けられた軸側フランジ40aは、軸側フランジ40aを通した締結ねじ60がローラ側フランジ44aに螺合されることで、軸側フランジ40aと着脱可能に固定されている。
【0026】
搬送ローラ10において、支持軸40、42の軸端に一体的に設けられた軸側フランジ40a、42aとローラ側フランジ44a、44bとが、締結ねじ60を緩めて取り外すことにより、相互に分離できる。これにより、支持軸40、42の取り付け状態が維持された状態で、金属ローラ44の交換が可能とされている。従来の搬送ローラのように、金属ローラから支持軸を抜いて金属ローラを交換する作業が不要となっている。図3に示すように、支持軸40は、軸側フランジ40aが形成された乾燥炉12内の大径軸部と、大径軸部に続いて炉壁20を貫通し、乾燥炉12外において支持部材22により支持された小径軸部とを一体に有し、支持軸40の大径軸部と小径軸部との段差から炉壁20の内壁面までの距離Dは、嵌合突部46の突出し長さAよりも長く設定されている。
【0027】
支持軸40は、炉壁20に設けられた貫通穴62を通して、乾燥炉12外の一対の支持板22aによりベアリング26を介して回転可能に支持されている。環状のシール部材64が支持軸40に装入されており、支持軸40に固定された環状のカラー66と環状のシール部材64との間にスプリング68およびスラストベアリング70が介挿されることで、貫通穴62の開口へ環状のシール部材64が乾燥炉12の外側から押し当てられている。シール部材64は、貫通穴62を通して乾燥炉12内から溶剤が漏れ出ることを防止するものであるが、乾燥炉12内が窒素等のガス雰囲である場合には、外気の流入を防止するものでもある。
【0028】
図2に詳しく示すように、フレーム18に固定された駆動モータ72の出力軸にはスプロケット74が固定されており、搬送ローラ10の支持軸42の軸端にはスプロケット76、78がそれぞれ固定されている。1点鎖線で示す無端環状のチェイン80が、駆動モータ72のスプロケット74と、第1高さ位置H1の搬送ローラ10のうちの支持軸42に固定されたスプロケット76と、第2高さ位置H2の搬送ローラ10の支持軸42の軸端にはスプロケット78を経由し、チェイン80により搬送ローラ10が回転駆動されるようになっている。駆動モータ72、スプロケット74、76、78、チェイン80が、複数の搬送ローラ10を回転駆動する回転駆動装置30に対応している。
【0029】
また、図2に示すように、第1高さ位置H1の搬送ローラ10のうちの支持軸42に固定された大径歯車82と、反押えローラ28の支持部材24側の軸端に固定された小径歯車84とが、相互に噛み合わされた増速歯車装置を構成しており、第1高さ位置H1の搬送ローラ10によって反押えローラ28が回転駆動されるようになっている。搬送ローラ10に塗布された塗工液の表面に傷が発生することを回避するために、大径歯車82と小径歯車84とは、第1高さ位置H1の搬送ローラ10の金属ローラ44の周速と反押えローラ28の周速とが同じとなるように、歯数比が設定されている。
【0030】
図4および図5は、乾燥炉12内においてシート状部材14が搬送される2種類の搬送経路を示している。図4および図5中の搬送ローラ10内に示す矢印は搬送ローラ10の回転方向を示している。図4は、搬送ローラ10により搬送されるシート状部材14の一面(上面)の塗膜に搬送ローラ10を接触させないように搬送する場合の搬送経路を示している。図5は、搬送ローラ10により搬送されるシート状部材14の一面(上面)の塗膜に搬送ローラ10を接触させることができる場合の搬送経路を示している。
【0031】
上述のように、本実施例の乾燥炉12の搬送ローラ10によれば、一対の支持軸40、42の軸端に固設された一対の軸側フランジ40a、42aと金属ローラ44の両端に固設されたローラ側フランジ44a、44bとが着脱可能に締結されており、軸側フランジ40a、42aの中央部から突設された嵌合突部46が、ローラ側フランジ44a、44bに形成された嵌合穴48に嵌め入れられて心出しされるので、支持軸40、42と金属ローラ44とを容易に分離でき、金属ローラ44の交換を容易に行なうことができる。
【0032】
また、本実施例の乾燥炉12の搬送ローラ10によれば、金属ローラ44の開口内には、嵌合穴48と同径の第2嵌合穴50が形成された環状のカラー52が嵌め着けられており、ローラ側フランジ44a、44bは、カラー52に着脱可能に締結ねじ60により固定されているので、金属ローラ44の交換時において、ローラ側フランジ44a、44bを取り外して再利用できる利点がある。
【0033】
また、本実施例の乾燥炉12によれば、複数本の搬送ローラ10の径よりも小さい径を有し、複数本の搬送ローラ10のうちの第1高さ位置H1の搬送ローラ10よりも高い位置であって第2高さ位置H2の搬送ローラ10よりも第1高さ位置H1の搬送ローラ10に近い位置で回転可能に支持されてシート状部材14の反りを押えるための反押えローラ28が、複数本の第1高さ位置H1の搬送ローラ10毎に回転可能に設けられており、搬送ローラ10は、反押えローラ28と増速歯車装置を構成する大径歯車82および小径歯車84を介して連結されている。反押えローラ28の周速が第1高さ位置H1の搬送ローラ10と同様となるように、反押えローラ28は搬送ローラ10よりも高速で回転駆動される。これにより、乾燥炉12内において搬送ローラ10によって搬送される搬送途中にシート状部材14に反りが発生すると、その反りを反押えローラ28が押えるとともに、反押えローラ28とシート状部材14の一面に塗布された塗膜との摺接が回避され、塗膜に傷が発生することが回避される。
【0034】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0035】
たとえば、前述の実施例において、軸側フランジ40a、42aの中央部から突設された嵌合突部46が、ローラ側フランジ44a、44bの中央部に形成された嵌合穴48に嵌め入れられていたが、逆に、ローラ側フランジ44a、44bの中央部から突設された嵌合突部が、軸側フランジ40a、42aの中央部に形成された嵌合穴に嵌め入れられていてもよい。要するに、軸側フランジ40a、42aおよびローラ側フランジ44a、44bの一方の中央部から突設された嵌合突部が、他方の中央部に形成された嵌合穴に嵌め入れられていればよい。
【0036】
また、前述の実施例の乾燥炉12には、反押えローラ28が備えられていたが、たとえば図5に示す搬送経路でシート状部材14が搬送される場合は、反押えローラ28は必ずしも備えられていなくてもよい。
【0037】
また、前述の実施例では、嵌合突部46およびそれを嵌め入れる嵌合穴48と、心出突部56およびそれを嵌め入れる段付穴54とが設けられていたが、それらのうちの一方が省略されていても差し支えない。
【0038】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0039】
10:搬送ローラ
12:乾燥炉
14:シート状部材
28:反押えローラ
40、42:支持軸
40a、42a:軸側フランジ
44:金属ローラ
44a、44b:ローラ側フランジ
46:嵌合突部
48:嵌合穴
50:第2嵌合穴
52:カラー
82:大径歯車(増速歯車装置)
84:小径歯車(増速歯車装置)
図1
図2
図3
図4
図5