(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】スペーサ切断用器具
(51)【国際特許分類】
G02B 6/46 20060101AFI20240216BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20240216BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G02B6/46 321
B26D3/08 Z
B26D1/02 C
(21)【出願番号】P 2022076512
(22)【出願日】2022-05-06
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】三沢 満
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-220400(JP,A)
【文献】特開2009-251300(JP,A)
【文献】特開平07-027922(JP,A)
【文献】実開平06-073701(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0152009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44,6/46
B26D 3/08,1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って切り込みを入れるためのスペーサ切断用器具であり、
スペーサを挿通するための貫通孔、前記貫通孔の壁面から前記貫通孔の中心軸方向に突出し、スロットに嵌合するためのガイド、および前記ガイドの頂部に配置された刃、を含む切断部と、
前記切断部を支持するための支持部と、
を有
し、
前記切断部が、前記貫通孔の壁面の一部を含む第1切断部と、前記貫通孔の壁面の他の一部を含む第2切断部とを含み、
前記第1切断部および前記第2切断部の少なくとも一方が、前記ガイドおよび前記刃を備え、
前記第1切断部および前記第2切断部は、それぞれの壁面が、前記貫通孔の径方向に移動可能に、前記支持部に支持されている、
スペーサ切断用器具。
【請求項2】
請求項
1に記載のスペーサ切断用器具において、
前記第1切断部および前記第2切断部が、それぞれ前記ガイドおよび前記刃を有する、
スペーサ切断用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバケーブルのスペーサ切断用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバ心線を含む光ファイバケーブルとして、周面にスロット(凹条)を有するスペーサを含むスロット型光ファイバケーブルが多用されている(例えば特許文献1)。当該スロット型光ファイバケーブルの一般的な構造の例を
図1に示す。
図1Aに示すスロット型光ファイバケーブル10では、スペーサ14の周面にらせん状にスロット15が配置されており、当該スロット15内に、複数の光ファイバ心線12を含むテープ心線13が収容されている。当該スロット型光ファイバケーブル10は、スペーサ14の外に、スペーサ14の中心に配置されたテンションメンバ18や、スペーサ14の周囲に配置された押え巻16、その外側に配置された外被17等を有する。また、
図1Bに示すスロット型光ファイバケーブル20では、スペーサ24のスロット25に、光ファイバ心線22が配置されている。当該スロット型光ファイバケーブル20は、スペーサ24の他に、スペーサ24の中心に配置された複数のテンションメンバ28や、スペーサ24の周囲に配置された押え巻26、その外側に配置されたアルミニウムテープ層29、外被27等を有する。なお、
図1Aおよび
図1Bのいずれのスロット型光ファイバケーブル10、20においても、アルミニウムテープ層29はあってもよく、なくてもよい。
いずれの構造のスロット型光ファイバケーブル10、20においても、架空や地下、宅内引き込み等の際、光ファイバ心線12、22を所望の位置から取り出し、これを単心コードや多心コードに変換することが一般的である。なお、光ファイバ心線12、22の取り出し位置以降のケーブルについては、テンションメンバ18、28以外の部材を除去(切断)することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、テンションメンバ18、28以外の構成を取り除く際、外被17、27や、押え巻16、26、アルミニウムテープ層29等は、比較的薄いこと等から、容易に切断し、除去することが可能である。一方、スペーサ14、24は樹脂製の部材であり、器具を用いることなく除去することが難しい。そのため、従来は、カッター等によって、不要なスペーサ14、24に切り込みを入れ、スペーサ14、24を切り開くことでテンションメンバ18、28から剥離していた。しかしながら、カッターによって切り込みを入れる作業は難しく、テンションメンバ18、28を傷つけたり、作業者の安全確保が難しい等の課題があった。
そこで、本発明の主な目的は、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、容易にかつ安全に切り込みを入れることが可能な、スペーサ切断用器具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って切り込みを入れるためのスペーサ切断用器具であり、
スペーサを挿通するための貫通孔、前記貫通孔の壁面から前記貫通孔の中心軸方向に突出し、スロットに嵌合するためのガイド、および前記ガイドの頂部に配置された刃、を含む切断部と、
前記切断部を支持するための支持部と、
を有し、
前記切断部が、前記貫通孔の壁面の一部を含む第1切断部と、前記貫通孔の壁面の他の一部を含む第2切断部とを含み、
前記第1切断部および前記第2切断部の少なくとも一方が、前記ガイドおよび前記刃を備え、
前記第1切断部および前記第2切断部は、それぞれの壁面が、前記貫通孔の径方向に移動可能に、前記支持部に支持されている、スペーサ切断用器具を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスペーサ切断用器具によれば、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って、容易にかつ安全に切り込みを入れることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一般的な光ファイバケーブルの断面構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスペーサ切断用器具の斜視図、平面図、正面図、および断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスペーサ切断用器具のガイド部周辺の拡大図および概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスペーサ切断用器具の使用時の状態を説明する概略断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るスペーサ切断用器具の使用方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係るスペーサ切断用器具(以下、単に「器具」とも称する)について説明する。ただし、本発明の器具は、以下に示す実施形態に限定されない。
また、本実施形態の器具は、スロット型光ファイバケーブルのスペーサにスロット(凹条)に沿って切り込みを入れるための器具であり、スロット型光ファイバケーブルの押え巻や外被、光ファイバ心線等を取り除いた状態のスペーサに対して使用する。
【0009】
本実施形態の器具100の構造を、
図2に示す。
図2は、当該器具100の斜視図(
図2A)、平面図(
図2B)正面図(
図2C)、および
図2BにおけるA-A線での断面図(
図2D)である。ただし、これらの図は模式図であり、実際の寸法を示すものではない。当該器具100は、スペーサ(図示せず)を切断するための切断部110と、当該切断部110を支持するための支持部120とを含む。
【0010】
切断部110は、スペーサを挿通するための貫通孔112と、当該貫通孔112の壁面から当該貫通孔112の中心軸方向に突出し、スペーサのスロットに嵌合するためのガイド114と、ガイド114の頂部に配置された刃116と、を有する。なお、本実施形態では、切断部110が2つの部材(第1切断部110aおよび第2切断部110b)で構成されており、これらがそれぞれ、貫通孔112の径方向に移動可能に支持部120に支持されている。本実施形態の器具100では、通常、第1切断部110aおよび第2切断部110bの対向する面どうしが密着している(以下、当該状態を「閉状態」とも称する)が、必要に応じて、これらが離れるように移動すること(以下、「開状態」とも称する)が可能である。
【0011】
貫通孔112は、スペーサを挿通可能な孔であればよい。本実施形態では、器具100の閉状態において、第1切断部110aが有する略半円柱状の溝と、第2切断部110bが有する略半円柱状の溝とによって、貫通孔112が構成される。
貫通孔112の径は、スペーサの外径より大きければよいが、スペーサの外径より僅かに大きい、すなわち略同等であることが好ましい。貫通孔112の径がスペーサの外径と略同等であると、スペーサを切断する際に、貫通孔112の壁面によってスペーサの周面を支持しやすくなる。また、スペーサを切断する際に、後述のガイド114がスペーサのスロットから脱離し難くなる。
貫通孔112の径は、一端から多端まで一定であってもよく、連続的または断続的に変化していてもよい。ただし、いずれの領域においても、その径が、スペーサの外径より大きいことが好ましい。なお、本実施形態では、切断部110(第1切断部110aおよび第2切断部110b)の側面から貫通孔112に向けて、貫通孔112の中心軸に略垂直な貫通孔(図示せず)を形成し、当該貫通孔に後述のガイド114や刃116を挿入して固定している。そのため、ガイド114周辺において、貫通孔112の径が大きくなっているが、ガイド114や刃116の固定方法は当該方法に制限されず、ガイド114周辺においても貫通孔112の径が一定であってもよい。
また、貫通孔112の中心軸に垂直な断面形状は、本実施形態では、略円形状であるが、スペーサの形状や、スペーサと器具100(貫通孔112の壁面)との所望の密着度合いに応じて適宜選択され、例えば多角形状等であってもよい。
【0012】
ガイド114は、貫通孔112の壁面から当該貫通孔112の中心軸方向に突出するように配置された凸状の構造である。
図3に、ガイド114周辺の拡大図(
図3A)と、当該拡大図のB-B線における概略図(
図3B)とを示す。さらに、
図4に、2つのガイド114がスペーサ34のスロット35に嵌合した状態の概略図を示す。
図4に示すように、器具100の閉状態において、ガイド114がスペーサ34のスロット35に嵌合されると、その頂部に配置された刃116をスペーサ34の所定の深さまで押し込むことができる。一方で、ガイド114によって、刃116が、スペーサ34に深く入り過ぎてしまうことも抑制できる。そして、この状態で器具100(刃116)をスペーサ34の長さ方向に移動させると、テンションメンバ38を傷つけることなく、スペーサ34のみに切り込みを形成できる。
ここで、ガイド114の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。スペーサが複数のスロットを有する場合、全てのスロットに対応するように、複数のガイド114が貫通孔112の壁面に配置されていてもよく、一部のスロットのみに対応するように、ガイド114が貫通孔112の壁面に配置されていてもよい。また、貫通孔112の開口端からガイド114までの距離は特に制限されず、スロットの形状に応じて適宜選択される。なお、本実施形態では、第1切断部110aおよび第2切断部110bが1つずつガイド114および刃116を有しており、対向するように配置されている。
個々のガイド114の形状は、スロット15の幅や形状に合わせて適宜選択される。ガイド114をスロット35に挿入した際に、所望の深さまで入るとともに、所望の深さを超えて入り込まないような形状であればよく、実施形態では、ガイド114が略直方体状であるが、当該形状に限定されない。例えば、角錐台状、円錐台状、半球状等、いずれの形状であってもよい。
また、スロット35は、通常スペーサ34の周面にらせん状に配置されている。したがって、ガイド114の向きを、らせん状のスロット35の延在方向に合わせることが好ましい。本実施形態では、ガイド114が、貫通孔の112の中心軸に対して、所定の角度を有するように配置されている。
【0013】
刃116は、スペーサ34を切断するための構成であり、ガイド114の頂部に配置されている。刃116は、全てのガイド114の頂部に配置されていてもよく、一部のガイド114の頂部のみに配置されていてもよい。本実施形態では、第1切断部110aおよび第2切断部110bのそれぞれのガイド114の頂部に刃116が配置されている。
刃116の種類は特に制限されず、片刃であってもよく、両刃であってもよいが、
図3Bに示すように、刃116の刃先が、スペーサ14に対して斜めに入り込むような形状であると、スペーサに切り込みを入れやすくなることから好ましい。また、刃116の向きは、スロット35の延在方向に平行であることが好ましい。また、ガイド114の頂部から刃先までの長さ(最大長さ)は、スペーサ14の厚さに応じて適宜選択され、スペーサ34の中心にあるテンションメンバ38に接しないように調整されていることが好ましい。上述のように、ガイド114や刃116を、第1切断部110aや第2切断部110bの外側から挿入して取り付ける場合等には、これらの挿入位置によって、刃先の位置を調整することも可能である。
【0014】
一方、支持部120は、上記切断部110を支持するための構成である。上述のように、本実施形態では、第1切断部110aおよび第2切断部110bが、それぞれ貫通孔112の径方向外側に移動できるように、それぞれを支持している。
なお、本実施形態の当該支持部120は略円環状の構造であり、円環の内部(貫通孔122)を介してスペーサを上記切断部110に挿通することが可能であるが、支持部120の構造は、当該構造に限定されない。
【0015】
本実施形態の器具100の使用方法について、
図5を用いて説明する。
まず、所定の位置で光ファイバ心線32を取り出した、スロット型光ファイバケーブルを準備する。このとき、スペーサ34を除去する領域において、スペーサ34が露出するように、押え巻(図示せず)や外被37等は取り除いておく。そして、器具100を開状態にし、すなわち第1切断部110aおよび第2切断部110bを、貫通孔(図示せず)の中心軸から離れるように移動させて、貫通孔内にスペーサ34を挿通する。そして、器具100を光ファイバ心線32の取り出し位置近傍まで移動させる(
図5A)。このとき、切断部110のガイド(図示せず)が、スペーサ34のスロット35に嵌合するように、器具100の位置や向きを調整する。
【0016】
上記位置合わせ後、器具100を閉状態にする。すなわち、第1切断部110aおよび第2切断部110bを密着させ(
図5B)、それぞれのガイド(図示せず)をスペーサ34のスロット35に嵌合させる。そして、第1切断部110aおよび第2切断部110bが開かないように押さえながら、器具100をスペーサ34の長さ方向(
図5Bにおいて、Bで示す方向)に移動させる。またこのとき、スペーサの周方向(
図5Bにおいて、Aで示す方向)にも、スロット35に合わせて適宜回転させる。このように移動させると、スロット35にガイドが嵌合した状態で器具100が移動し、スペーサ34に切り込みが形成される。所望の位置まで、器具100を移動させたら、再び器具100を開状態にし、スペーサ34やテンションメンバ(図示せず)から取り外す。器具100によって切り込みを入れたスペーサ34は、端部をペンチ等で引っ張ることで、テンションメンバから容易に剥離する。そして、当該スペーサ34を光ファイバ心線32の取り出し位置近傍で切断する。
【0017】
(その他の実施形態)
上記の説明では、器具100によってスペーサ34を切断する際、第1切断部110aおよび第2切断部110bが開かないように押さえていたが、器具100に、これらが開かないようにするためのロック機構等をさらに設けてもよい。
【0018】
また、上記の説明では、器具100の閉状態において、第1切断部110aおよび第2切断部110bの互いに対向する面が密着していたが、第1切断部110aおよび第2切断部110bの間にスペーサを挟み込むことが可能であれば、これらは必ずしも密着しなくてもよい。
【0019】
さらに、上述の器具100は、切断部110が第1切断部110aおよび第2切断部110bの2つの部材で構成されていたが、切断部110は1つの部材、すなわち常時閉状態となるように構成されていてもよく、3つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0020】
(上記スペーサ切断用器具の効果)
上記スペーサ切断用器具によれば、スペーサ切断時に刃が器具の外側に露出しておらず、使用者の安全性が確保される。またスペーサ切断時に刃が入り込みすぎてしまうことや、刃が十分に入り込まないことを抑制でき、テンションメンバを傷つけることなく、確実にスペーサを切断することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のスペーサ切断用器具によれば、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、容易にかつ安全に切り込みを入れることが可能なであり、光ファイバケーブルを取り扱う産業において、非常に有用である。
【符号の説明】
【0022】
10、20 スロット型光ファイバケーブル
12、22、32 光ファイバ心線
13 テープ心線
14、24、34 スペーサ
15、25、35 スロット
16、26 押え巻
17、27、37 外被
18、28 テンションメンバ
29 アルミニウムテープ層
100 スペーサ切断用器具
110 切断部
110a 第1切断部
110b 第2切断部
112 貫通孔
114 ガイド
116 刃
120 支持部
122 貫通孔