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特許7438269情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240216BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20240216BHJP
【FI】
G06T7/00 660Z
G06T7/90 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022093498
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2022514198の分割
【原出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146948
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永男
(72)【発明者】
【氏名】シュテンガー ビヨン
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206665(JP,A)
【文献】特開2020-102059(JP,A)
【文献】特開2017-224182(JP,A)
【文献】Pratheepan Yogarajah,外4名,A DYNAMIC THRESHOLD APPROACH FOR SKIN SEGMENTATION IN COLOR IMAGES,2010 IEEE International Conference on Image Processing,2010年09月26日,pp. 2225-2228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮影された画像から、人が存在すると判定された人領域を抽出する抽出手段と、
前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得する代表取得手段と、
前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正する補正手段と、
前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定する判定手段と、
を含み、
前記補正手段は、補正の量が前記第1特徴値の前記代表値に基づき、かつ、前記第1特徴値が前記肌範囲に含まれないピクセルの量が少ないほど前記補正の量が少なくなるように、前記肌範囲を補正する、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記人領域は顔領域であり、
前記人領域のうち一部は、前記人領域のうち目の近傍を含み、口の近傍および額の上部を含まない領域である、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理装置において、
前記代表値は前記特徴値の平均値である、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記変換関数の出力eは、ピクセルの赤成分をR、緑成分をG、青成分をB、Cr,Cg,Cbを予め定められた係数とした場合に、式
e=Cr×R+Cg×G+Cb×B-max(G,B)
により算出される、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置において、
補正前の肌範囲の算出に用いられた特徴値の平均値をμr、前記第1特徴値の平均値をμ1、前記第1特徴値が前記肌範囲の内にないピクセルの量をAn、前記人領域のうち一部を構成するピクセルの量をAp、nを1以上3以下の整数とする場合に、式
Δμ=(μ1-μr)×(An/Ap)
により算出されるΔμに基づいて前記肌範囲の上限値と下限値とが修正される、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理装置において、
補正前の肌範囲の算出に用いられた特徴値の平均値をμr、前記第1特徴値の平均値をμ1、前記第1特徴値が前記肌範囲の内にないピクセルの量をAn、前記人領域のうち一部を構成するピクセルの量をAp、前記一部に含まれる目の領域のピクセルの量をAe、nを1以上3以下の整数とする場合に、式
Δμ=(μ1-μr)×(An/(Ap-Ae))
により算出されるΔμに基づいて前記肌範囲の上限値と下限値とが修正される、
情報処理装置。
【請求項7】
撮像装置により撮影された画像から、人が存在すると判定された人領域を抽出するステップと、
前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得するステップと、
前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正するステップと、
前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定するステップと、
を含み、
前記補正するステップでは、補正の量が前記第1特徴値の前記代表値に基づき、かつ、前記第1特徴値が前記肌範囲に含まれないピクセルの量が少ないほど前記補正の量が少なくなるように、前記肌範囲を補正する、
情報処理方法。
【請求項8】
撮像装置により撮影された画像から、顔が存在すると判定された人領域を抽出する抽出手段、
前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得する代表取得手段、
前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正する補正手段、および
前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定する判定手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記補正手段は、補正の量が前記第1特徴値の前記代表値に基づき、かつ、前記第1特徴値が前記肌範囲に含まれないピクセルの量が少ないほど前記補正の量が少なくなるように、前記肌範囲を補正する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置により撮影された画像から、人が存在するか否かを判定する技術がある。人の存在を判定する手法の一つとして、画像の部分領域にあるピクセルの色が予め定められた範囲に収まっているかに基づいて判定する手法がある。
【0003】
非特許文献1には、ピクセルの色を所定の関数に入力することにより値を取得し、その値が所定の範囲にある場合にそのピクセルが肌であると判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】A NEW COLOUR SPACE FOR SKIN TONE DETECTION,Abbas Cheddad, Joan Condell, Kevin Curran and Paul Mc Kevitt,2009 IEEE International Conference on Image Processing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
照明などの影響により、撮影された画像中の肌の色が、予め定められた色の範囲に収まらないことがある。このような場合に、人の存在が適切に判定されないことがあった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、画像中の色に基づいて、より精度よく人がいるか否かを判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる情報処理装置は、撮像装置により撮影された画像から、人が存在すると判定された人領域を抽出する抽出手段と、前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得する代表取得手段と、前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正する補正手段と、前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定する判定手段と、を含む。
【0008】
また、本発明にかかる情報処理方法は、撮像装置により撮影された画像から、人が存在すると判定された人領域を抽出するステップと、前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得するステップと、前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正するステップと、前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定するステップと、を含む。
【0009】
また、本発明にかかるプログラムは、撮像装置により撮影された画像から、人が存在すると判定された人領域を抽出する抽出手段、前記人領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力することによる算出された第1特徴値の代表値を取得する代表取得手段、前記代表値に基づいて、前記変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正する補正手段、および、前記撮像装置により取得される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、前記画像の一部に人がいるか否かを判定する判定手段、としてコンピュータを機能させる。
【0010】
本発明の一形態では、前記人領域は顔領域であり、前記人領域のうち一部は、前記人領域のうち目の近傍を含み、口の近傍および額の上部を含まない領域であってよい。
【0011】
本発明の一形態では、前記補正手段は、前記第1特徴値が前記肌範囲に含まれないピクセルの量が少ないほど補正の量が少なくなるように、前記肌範囲を補正してよい。
【0012】
本発明の一形態では、前記代表値は前記特徴値の平均値であってよい。
【0013】
本発明の一形態では、前記変換関数の出力eは、ピクセルの赤成分をR、緑成分をG、青成分をB、Cr,Cg,Cbを予め定められた係数とした場合に、式e=Cr×R+Cg×G+Cb×B-max(G,B)により算出されてよい。
【0014】
本発明の一形態では、補正前の肌範囲の算出に用いられた特徴値の平均値をμr、前記第1特徴値の平均値をμ1、前記第1特徴値が前記肌範囲の内にないピクセルの量をAn、前記人領域のうち一部を構成するピクセルの量をAp、nを1以上3以下の整数とする場合に、式Δμ=(μ1-μr)×(An/Ap)により算出されるΔμに基づいて前記肌範囲の上限値と下限値とが修正されてよい。
【0015】
本発明の一形態では、補正前の肌範囲の算出に用いられた特徴値の平均値をμr、前記第1特徴値の平均値をμ1、前記第1特徴値が前記肌範囲の内にないピクセルの量をAn、前記人領域のうち一部を構成するピクセルの量をAp、前記一部に含まれる目の領域のピクセルの量をAe、nを1以上3以下の整数とする場合に、式Δμ=(μ1-μr)×(An/(Ap-Ae))により算出されるΔμに基づいて前記肌範囲の上限値と下限値とが修正されてよい。
【0016】
本発明の一形態では、前記抽出手段は、複数の顔領域を複数の人領域として抽出し、前記代表取得手段は、前記複数の顔領域のうち、最も大きい顔領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力し、変換関数により算出されたそれぞれのピクセルの第1特徴値の代表値を取得し、前記判定手段は、前記複数の顔領域のうち前記代表値の取得に用いられなかった顔領域に含まれるピクセルについて前記変換関数により算出された第2特徴値が、前記補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、当該顔領域が人の顔を含むか否かを判定してよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、画像からより精度よく人がいるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかる情報処理システムの一例を示す図である。
図2】情報処理システムが実現する機能を示すブロック図である。
図3】画像から認識される顔領域の一例を示す図である。
図4】クライアント装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
図5】クライアント装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
図6】顔領域に含まれる参照領域を説明する図である。
図7】肌の色の分布を説明する図である。
図8】照明の影響を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。同じ符号を付された構成に対しては、重複する説明を省略する。本実施形態では、リモートワークのように厳格な入室管理がされていない環境において、撮影された画像に基づいて作業者以外の人が覗いているか否かを検出する情報処理システムについて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる情報処理システムの一例を示す図である。情報処理システムは、情報処理サーバ1とクライアント装置2とを含む。情報処理サーバ1は1または複数のクライアント装置2とネットワークを介して接続されている。
【0021】
情報処理サーバ1はプロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14を含む。なお、情報処理サーバ1は、サーバコンピュータである。情報処理サーバ1の処理は、複数のサーバコンピュータにより実現されてもよい。クライアント装置2は、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14、カメラ25を含む。クライアント装置2は、パーソナルコンピュータやタブレット端末である。
【0022】
プロセッサ11,21は、記憶部12,22に格納されているプログラムに従って動作する。またプロセッサ11,21は通信部13,23、入出力部14,24を制御する。プロセッサ21はプログラムに従ってカメラ25も制御する。なお、上記プログラムは、インターネット等を介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリやDVD-ROM等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
【0023】
記憶部12,22は、RAMおよびフラッシュメモリ等のメモリ素子とハードディスクドライブのような外部記憶装置とによって構成されている。記憶部12,22は、上記プログラムを格納する。また、記憶部12,22は、プロセッサ11,21、通信部13,23、入出力部14,24から入力される情報や演算結果を格納する。
【0024】
通信部13,23は、他の装置と通信する機能を実現するものであり、例えば無線LAN、有線LANを実現する集積回路などにより構成されている。通信部13,23は、プロセッサ11,21の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ11,21や記憶部12,22に入力し、他の装置に情報を送信する。
【0025】
入出力部14,24は、表示出力デバイスをコントロールするビデオコントローラや、入力デバイスからのデータを取得するコントローラなどにより構成される。入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパネルなどがある。入出力部14,24は、プロセッサ11,21の制御に基づいて、表示出力デバイスに表示データを出力し、入力デバイスをユーザが操作することにより入力されるデータを取得する。表示出力デバイスは例えば外部に接続されるディスプレイ装置である。
【0026】
カメラ25は、プロセッサ21の制御に基づいて画像を撮影する。カメラ25は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末に内蔵され、パーソナルコンピュータやタブレット端末を操作する人物がほぼ中央に撮影されるような位置に配置されている。
【0027】
次に、情報処理システムが提供する機能について説明する。図2は、情報処理システムが実現する機能を示すブロック図である。情報処理システムは、機能的に、画像取得部51、顔抽出部52,代表値取得部53、肌範囲補正部54、人判定部55、結果出力部56を含む。これらの機能は、クライアント装置2に含まれるプロセッサ21によって記憶部22に格納されるプログラムが実行され、通信部23、カメラ25などを制御することにより実現される。なお、これらの機能は、情報処理サーバ1に含まれるプロセッサ11によって記憶部12に格納されるプログラムが実行され、通信部13等を制御することにより実現されてもよい。
【0028】
画像取得部51は、撮像装置であるカメラ25により撮影された画像を取得する。画像取得部51が情報処理サーバ1により実現される場合には、クライアント装置2の通信部23から送信される、撮影された画像を通信部13経由で受信することにより、その画像を取得してよい。
【0029】
顔抽出部52は、取得された画像から、顔が存在すると判定された顔領域70を抽出する。顔抽出部52は、取得された画像をグレースケールに変換し、パターン認識に基づく公知の顔検出技術により認識される顔のある領域を顔領域70として抽出する。抽出される顔領域70は矩形の領域であってよい。なお、顔抽出部52は、顔領域70の代わりに、パターン認識に基づく公知の技術に基づいて、例えば手といった顔以外の人の部位または人のシルエットを有する人領域を検出し、その人領域が顔領域70の代わりに後述の処理で用いられてもよい。
【0030】
図3は、画像から認識される顔領域70の一例を示す図である。図3には、顔領域70の一例として、画像から顔領域71,72が抽出されている。顔領域71は、クライアント装置2を操作する人物の顔の画像を抽出したものであるが、顔領域72は背景にある家具などの模様が顔と誤認識されることにより抽出されたものである。
【0031】
代表値取得部53は、顔領域のうち一部に含まれるピクセルの色のそれぞれを変換関数に入力し、そのピクセルのそれぞれの特徴値を算出する。代表値取得部53は、算出された特徴値の代表値、例えば特徴値の平均値を取得する。代表値取得部53の処理の対象となる顔領域70は、顔抽出部52により抽出された顔領域70のうち、最も大きい顔領域70または中央にある顔領域70である。変換関数および特徴値の詳細については後述する。
【0032】
肌範囲補正部54は、取得された代表値に基づいて、変換関数により取得される特徴値が示す色が人の肌の色であることを示す肌範囲を補正する。肌範囲の詳細については後述する。
【0033】
人判定部55は、カメラ25により撮影される画像の一部を構成する複数のピクセルのそれぞれについて変換関数により算出された特徴値が、補正された肌範囲に含まれるか否かに基づいて、その画像のその一部に人がいるか否かを判定する。人判定部55の処理に用いられる、画像の一部は、顔抽出部52により抽出される顔領域70のうち、代表値取得部53における代表値の取得に用いられなかった顔領域70であってよい。人判定部55による処理は、顔抽出部52によって複数の顔領域70が抽出された場合に行われてよい。
【0034】
結果出力部56は、人判定部55の判定結果を出力する。より具体的には、結果出力部56は、人判定部55の処理において、カメラ25により撮影された画像のその一部に人がいると判定された場合、より具体的には代表値の取得に用いられなかった1または複数の顔領域70のうちいずれか1つについて人がいると判定された場合に、人がのぞき込んでいることを示す警告メッセージを出力する。警告メッセージの出力先は、クライアント装置2のディスプレイまたはスピーカであってよい。
【0035】
次に、情報処理システムの処理の詳細について説明する。図4,5は、クライアント装置2が実行する処理の一例を示すフロー図である。図4,5に示される処理は、一定の時間間隔で繰り返し実行されてよい。
【0036】
はじめに、画像取得部51は、カメラ25により撮影された画像を取得する(ステップS101)。次に、顔抽出部52は、公知の顔認識技術により、取得された画像から1または複数の顔領域70を取得する(ステップS102)。
【0037】
顔領域70が取得されると、代表値取得部53は、1または複数の顔領域70から1つの顔領域70を選択し、その選択された顔領域70から目の周囲にある参照領域75を取得する(ステップS103)。代表値取得部53は選択された顔領域70の中で、目の周囲が存在する蓋然性の高い相対位置にある領域を参照領域75として取得してよい。また、代表値取得部53は、画像認識によって目の周囲であると特定された領域を参照領域75として取得してもよい。以下では参照領域75について説明するとともに、前者の手法についてさらに説明する。
【0038】
図6は、顔領域70に含まれる参照領域75を説明する図である。顔領域70は、参照領域75、上領域76、下領域77を含む。参照領域75は、目の近傍を含む領域である。上領域76は、参照領域75の上にあり、額の上側の部分を含む領域である。下領域77は、参照領域75の下にあり、口を含む領域である。上領域76の額の上側の部分は髪に隠される可能性が高く、下領域77の口の周りはマスクで隠される可能性が高い。したがって、目の周囲にある参照領域75は、人の肌の色が最も視認されやすい領域である。
【0039】
代表値取得部53は、顔領域70の内部の相対的な位置に基づいて、参照領域75を決定する。例えば、顔領域70が、撮影された画像の縦横方向に延びる辺を有する矩形の領域であり、その矩形の顔領域70の左上の座標(tx,ty)、横方向のサイズth、縦方向のサイズtvであるとする。この場合、代表値取得部53は、左上の座標が(tx+0.05×th,ty+0.1tv)、右下の座標が(tx+0.9×th,ty+0.45tv)となる矩形の領域を参照領域75として取得してよい。なお、参照領域75は肌が露出している蓋然性の高い他の領域であってもよい。
【0040】
代表値取得部53は、参照領域75にあるピクセルのそれぞれについて、変換関数eにより特徴値を取得する(ステップS104)。より具体的には、代表値取得部53は、参照領域75にあるピクセルのそれぞれについて、ピクセルの色を変換関数eに入力し、変換関数eの出力を特徴値として取得する。変換関数eは以下の式である。
【0041】
e=Cr×R+Cg×G+Cb×B-max(G,B)
【0042】
ここで、R,G,Bは、ピクセルの色のそれぞれ赤,緑,青成分である。max(G,B)は、G,Bのうち大きい方を出力する関数である。Cr,Cg,Cbは予め定められた係数である。Cr,Cg,Cbは、基準となる照明のもとで観測することにより算出され、例えば以下の値である。これらの値は環境等に基づいて調整されてもよい。
【0043】
Cr=0.2989
Cg=0.5870
Cb=0.1402
【0044】
参照領域75にあるピクセルのそれぞれについて特徴値が算出されると、代表値取得部53は、特徴値の代表値として平均値を取得する(ステップS105)。代表値取得部53は、最頻値など他の手法で代表値を算出してもよい。
【0045】
また、肌範囲補正部54は、特徴値が肌範囲Rに含まれないピクセルの量を算出する(ステップS106)。
【0046】
図7は、肌の色の分布を説明する図である。図7には、環境差および遺伝的な違いに基づく個人差が反映された人の肌の色についての特徴値の正規分布を示している。正規分布の平均値をμ、分散をσとすると、肌範囲Rの下限値は(μ-σ)、上限値は(μ+3σ)としている。μ,σの値は実験的に求められており、例えばμは12.3057、σは5.09026である。
【0047】
処理について具体的に記載する。肌範囲補正部54はピクセルのそれぞれの特徴値が肌範囲Rに含まれるか否か判定し、特徴値が肌範囲Rに含まれないピクセルの数(量)をカウントする。
【0048】
そして肌範囲補正部54は算出された代表値と、算出された、肌範囲Rに含まれるピクセルの量とに基づいて肌範囲Rを補正する(ステップS107)。
【0049】
肌範囲Rは、その下限値および上限値のそれぞれをΔμに基づいて算出することにより補正される。具体的な例としては、補正後の肌範囲Rの下限値が(μ+Δμ-σ)、上限値が(μ+Δμ+3σ)でなる。ここで、Δμは以下の式で求められる。
【0050】
Δμ=(μ1-μr)×(An/Ap)
【0051】
図8は、照明の影響を概略的に説明する図であり、照明の違いによる、特徴値の分布の変化、言い換えるとΔμの発生を説明する図である。μ1は、補正前の分布から求められるμの値である。μrは、参照領域75にあるピクセルのそれぞれについて算出された特徴値の代表値(ここでは平均値)である。
【0052】
Anは参照領域75にあるピクセルのうち、特徴値が肌範囲Rに含まれないピクセルの量であり、Apは参照領域75に含まれるすべてのピクセルの量である。Anは参照領域75のうち特徴値が肌範囲Rに含まれない部分の面積に、Apは参照領域75の面積に相当する。nは1以上の整数であり、3が好適であるが、1であってもよい。
【0053】
特徴値が肌範囲Rに含まれないピクセルの量が少ないほど補正が弱くなるようにすることで、照明以外の要因が補正に反映されるなどの理由で過剰な補正となる可能性を提言することができる。また、nを大きくすることにより、肌範囲Rに含まれるピクセルが多い場合に、肌範囲Rの補正が過度になる可能性を下げることができる。
【0054】
なお、Δμは以下の式で求められてもよい。
【0055】
Δμ=(μ1-μr)×(An/(Ap-Ae))
【0056】
この式では、Aeは参照領域75のうち目が存在するピクセルの量であり、単に参照領域75のすべてのピクセル量のうち所定の割合(例えば5%)であってよい。この場合はAp-Aeを、単に参照領域75のピクセルの量に1より小さい定数(例えば0.95)をかけることにより求めてよい。
【0057】
肌範囲Rが補正されると、人判定部55はカメラ25により撮影された画像から、肌範囲Rの補正のため代表値が求められた顔領域70以外の顔領域70に人の顔が含まれるか判定する。この処理は、より具体的には、人判定部55は、顔抽出部52により抽出され、代表値が求められた顔領域70以外の顔領域70が存在するか判定する(ステップS111)。他の顔領域70が存在しない場合には(ステップS111のN)、クライアント装置2の操作者と異なる人が居ないと判定して処理を終了する。
【0058】
一方、他の顔領域70が存在する場合には(ステップS111のY)、人判定部55は他の顔領域70のうち1つを選択する(ステップS112)。そして、人判定部55は選択された顔領域70のうちにあるピクセルのそれぞれについて、変換関数により特徴値を取得する(ステップS113)。人判定部55は特徴値が補正された肌範囲Rのうちにあるピクセルの量の参照領域75のすべてのピクセルの量に対する割合を算出する(ステップS114)。
【0059】
算出された割合が予め定められた判定閾値を超えている場合には(ステップS115のY)、結果出力部56は、クライアント装置2を操作するユーザに向けて除き見されている可能性がある旨の警告メッセージを出力する(ステップS116)とともに、情報処理サーバ1へその旨の情報を送信する。結果出力部56は、算出された割合が予め定められた判定閾値を超えていると判定された回数または時間が、所定の閾値を超えている場合には、クライアント装置2を強制的にシャットダウンする。一方、算出された割合が判定閾値を超えていない場合には(ステップS115のN)、ステップS116の処理はスキップされる。
【0060】
そして人判定部55は、他の顔領域70に未選択のものがあるか判定する(ステップS117)。未選択の顔領域70が存在する場合には(ステップS117のY)、未選択の他の顔領域70から1つを選択し(ステップS118)、ステップS113以降の処理を繰り返す。一方、未選択の顔領域70が存在しない場合には(ステップS117のN)、処理を終了する。
【0061】
なお、図4,5に示される処理は、クライアント装置2ではなく情報処理サーバ1により実行されてもよい。この場合、ステップS101において画像取得部51はクライアント装置2から送信される画像を取得する。またステップS116においてクライアント装置2に警告メッセージを出力させる情報を、そのクライアント装置2へ送信する。
【0062】
これまでに説明されたように、肌の色が認識されやすい領域を用いて肌範囲Rを補正し、その補正された肌範囲を画像中の肌の存在の判定に用いることにより、照明による撮影された肌の色の変化による判定精度の低下を軽減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 情報処理サーバ、2 クライアント装置、11,21 プロセッサ、12,22 記憶部、13,23 通信部、14,24 入出力部、25 カメラ、51 画像取得部、52 顔抽出部、53 代表値取得部、54 肌範囲補正部、55 人判定部、56 結果出力部、70,71,72 顔領域、75 参照領域、76 上領域、77 下領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8