(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】計時器用止め機構
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127836
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・クリスタン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ポストマス
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-178490(JP,U)
【文献】実開昭47-36077(JP,U)
【文献】スイス国特許出願公開第706108(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(400)に固定された制御手段(300)を備える計時器用機構(100)であって、
前記制御手段(300)は、ユーザーによって、何らかの機構によって、又は計時器(1000)の回路によって、セッティングされ、かつ、前記計時器用機構(100)にある車(200)の止め又は解放を制御するように構成しており、
前記計時器用機構(100)は、ガイドにおいて前記構造(400)にガイドされる少なくとも1つの止めレバー(10)を備え、
前記止めレバー(10)には、第1のアーム(16)と第2のアーム(17)があり、
前記第1のアーム(16)は、前記ガイドから離れたところにおいて、前記制御手段(300)
に形成される開口(33)によってセッティングされるように構成している制御フィンガー(12)を担持しており、
前記第2のアーム(17)は、前記ガイドから離れたところにおいて、前記車(200)を支え又は前記車(200)を解放するように構成している止め面(13)を担持しており、
前記止めレバー(10)には、さらに、前記第1のアーム(16)よりもフレキシブルであるフレキシブルなアーム(15)があり、
前記フレキシブルなアーム(15)は、前記構造(400)にある第1の固定当接体(42)に支えられるように構成しており、
前記フレキシブルなアーム(15)は、前記制御手段(300)が前記制御フィンガー(12)を押すことによって前記制御フィンガー(12)を駆動するための単一の構成において、前記ガイドに対して前記止めレバー(10)が動くことができるようにして、前記第2のアーム(17)を動かし、前記車(200)の動きを止め、
前記第1のアーム、前記第2のアーム及び前記フレキシブルなアームは、前記ガイド
を定める止め軸(D10)の同じ側にて延在している
ことを特徴とする計時器用機構(100)。
【請求項2】
前記止めレバー(10)の
動きは、一方では前記第1の固定当接体(42)によって制限され、他方では前記構造(400)が担持する第2の固定当接体(41)によって制限される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用機構(100)。
【請求項3】
前記第2のアーム(17)は、前記第1のアーム(16)よりもフレキシブルであるアームである
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用機構(100)。
【請求項4】
前記フレキシブルなアーム(15)は、前記第2のアーム(17)よりもフレキシブルである
ことを特徴とする請求項3に記載の計時器用機構(100)。
【請求項5】
前記止めレバー(10)は、前記ガイドを定める
前記止め軸(D10)のまわりを回転可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用機構(100)。
【請求項6】
前記制御手段(300)は、引き部品(30)を含み、
前記制御フィンガー(12)を受けるように、
第1の支持面(31)と
第2の
動き制限
面(32)の間に
前記開口(33)が形成されており、
前記第1の支持面(31)を押すことによって前記制御フィンガー(12)の駆動を発生させる前記引き部品(30)の動きのみが、
前記止め面である止めフィンガー(13)
が前記車(200)から離れている前記止めレバー(10)のアイドル位置から前記止めフィンガー(13)が前記車(200)の動きを止めるアクティブ位置への切り替えを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用機構(100)。
【請求項7】
前記止め面である止めフィンガー(13)が前記車(200)から離れている前記止めレバー(10)の
アイドル位置において、前記止めレバー(10)は、前記第1の固定当接体(42)と
第2の固定当接体(41)の両方に支えられる
ことを特徴とする請求項2
または6に記載の計時器用機構(100)。
【請求項8】
前記制御手段(300)は、前記引き部品(30)を駆動するように構成しているロッド(310)を備え、
次に、前記引き部品(30)は、摺動ピニオンを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の計時器用機構(100)。
【請求項9】
前記ロッド(310)は、軸方向に動き、3つの軸方向のセッティング位置になるように構成しており、
そのうちの2つの軸方向のセッティング位置は、前記引き部品(30)と前記制御フィンガー(12)の間に駆動接触がないことに起因する、前記止めレバー(10)の前記アイドル位置に対応し、
第3の軸方向のセッティング位置は、前記引き部品(30)と前記制御フィンガー(12)の間の接触と駆動の連係による、前記止めレバーの前記アクティブ位置に対応する
ことを特徴とする請求項8に記載の計時器用機構(100)。
【請求項10】
前記車(200)は、前記
止め面である止めフィンガー(13)が連係するように構成している
輪縁体(201)である
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用機構(100)。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項1に記載の計時器用機構(100)を備える
ことを特徴とする計時器(1000)。
【請求項12】
携行型時計である
ことを特徴とする請求項11に記載の計時器(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造に固定された制御手段を備える計時器用機構に関する。前記制御手段は、ユーザーによって、何らかの機構によって、又は計時器の回路によって、セッティングされ、かつ、前記計時器用機構にある車の止め又は解放を制御するように構成しており、前記計時器用機構は、ガイドにおいて前記構造にガイドされる少なくとも1つの止めレバーを備え、前記止めレバーには、第1のアームと第2のアームがあり、前記第1のアームは、前記ガイドから離れたところにおいて、前記制御手段によってセッティングされるように構成している制御フィンガーを担持しており、前記第2のアームは、前記ガイドから離れたところにおいて、前記車を支え又は前記車を解放するように構成している止めフィンガーを担持している。
【0002】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のような計時器用機構を備える計時器、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、に関する。
【0003】
本発明は、計時器用制御機構の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
様々な計時器の機能において、特定の車の運動を止めるために、止め手段、特に、ストップレバーとしても知られている止めレバー、を用いる必要がある。このような止め手段は、非常にかさばることがわかっている。制御機構と止める対象の車の間の距離のためである。また、このような止め手段の動作は、制御機構が占めることができる位置の数によって複雑になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アイドル位置とアクティブ位置の2つの位置の間のみ動くことができる止めレバーを備える、単純でかさばらない止め機構を開発することを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、請求項1に記載の計時器用機構に関する。
【0007】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のような計時器用機構を備える計時器、特に、携行型時計、に関する。
【0008】
図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を一層明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る機構についての上方から見た概略的な部分的斜視図であり、左側には、制御手段に属する引き部品がある。この引き部品は、アイドル位置において、回転する止めレバーと連係し、この止めレバーの反対側の端には、止めフィンガーがあり、この止めフィンガーは、ここではバランスである、止める対象の車の輪縁体から離れている。止めレバーには、3つのアームがあり、そのうちの2つは、特定の相対的位置において引き部品と連係するように構成している制御フィンガーを担持しているアームと、止めフィンガーを担持しているアームである。第3のアームは、本発明に固有のフレキシブルなアームであり、第1の固定当接体に支えられる。
【
図2】同じ位置における同じ機構を下から見た図を示している。引き部品には、開口が形成されており、この開口内を止めレバーの制御フィンガーが動き、この制御フィンガーのトラベルは、この特定の実施形態において、一方では第1の支持面を形成するまっすぐなフィンガーによって制限され、他方では第1及び第2の固定当接体によって制限されることがわかる。この止めレバーの制御フィンガーは、第2のトラベル制限面を形成する曲面によって境界が定められる空間内にて動くことができ、この第2のトラベル制限面は、第1のトラベル制限面の反対側にあり、通常の動作では用いられない。当然、本発明の範囲から逸脱することなく、開口とフィンガーは逆であることができる。
【
図3】同じ位置にある同じ機構を上から見た図を示している。
【
図4】
図3の引き部品と止めフィンガーの側の横から見た同じ位置にある同じ機構についての図を示している。
【
図5】同じ位置にある同じ機構を下から見た図を示している。
【
図6】同じ機構についての
図5の線A-Aに沿った断面を示している。
【
図7】本発明に係る機構の別の変異形態についての上方から見た概略的な部分的斜視図であり、止めレバーのフレキシブルなアームが他の2つのアームの間にある。
【
図8】
図7における止めレバーについての上方から見た概略的な斜視図を示している。
【
図9】
図9及び10は、いくつかのコンポーネントの概略的な部分的透過底面図を示しており、止めレバーの同じアイドル位置に対応する制御ロッドの2つの位置における
図7の変異形態の引き部品と制御フィンガーの間の連係の詳細を示している。
図9において、制御フィンガーは、第2のトラベル制限面に近いが接触してはいない。
【
図10】制御フィンガーは、第1の支持面に近いが接触してはいない。
【
図11】
図7と同じ機構を示しているが、この図においては止めレバーのアクティブ位置にあり、止める対象の車に止めフィンガーが当たっている。
【
図12】
図11の位置にある
図9及び10と同じ機構について示しており、止めレバーを駆動するために制御フィンガーと第1の支持面が接触している。
【
図13】止めフィンガーと止める対象の車の間の連係の詳細についての上方から見た概略的な斜視図を示している。
【
図14】本発明に係る機構を備える、ここでは携行型時計である計時器を示しているブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、構造400に固定された制御手段300を備える計時器用機構100に関する。
【0011】
この制御手段300は、例えば、制御ロッド、ボタン、トリガーピースなどを用いてユーザーによって、又はパワーリザーブ制御機構のような計時器1000の何らかの機構によって、又は特に電気機械的回路である、計時器1000の回路によって、セッティングされるように構成している。この制御手段300は、機構100にある車200の止め又は解放を制御するように構成している。図面には、バランス201のような調整機構の車200の場合を示している。なお、これには限定されない。特にクロノグラフ機構やストライク機構などにおいて、他の多くのアプリケーションが可能である。
【0012】
機構100は、ガイドにおいて構造400上をガイドされる少なくとも1つの止めレバー10を備え、これは、特に、図に示している実施形態において、特にセンタリング機構11における、構造400上の止め軸D10に沿って回転する。この止めレバー10には、第1のアーム16があり、この第1のアーム16は、特に前記ガイドから離れたところにて、特に図示している変異形態においては前記止め軸D10から離れたところにて、制御手段300によってセッティングされるように構成している制御フィンガー12を担持している。止めレバー10には、さらに、第2のアーム17があり、この第2のアーム17は、前記止め軸D10から離れたところにて、止め面13、特に止めフィンガー、を担持し、これは、車200を支えて車200を止めたり又は解放したりするように構成している。
【0013】
本発明によると、止めレバー10には、さらに、第1のアーム16よりもフレキシブルであるフレキシブルなアーム15があり、このフレキシブルなアーム15は、構造400にある第1の固定当接体42に支えられるように構成しており、制御フィンガー12を押す制御手段300によって制御フィンガー12を駆動するための単一の構成において、止め軸D10のまわりのを止めレバー10を回転させることを可能にし、これによって、第2のアーム17を動かして、特に図示している代替的実施形態においては回転させて、車200の動きを止める。
【0014】
特に、止めレバー10のトラベル、特に、図面に示している実施形態においては止めレバー10の角度的回転トラベルは、一方では第1の固定当接体42によって制限され、他方では構造400が担持する第2の固定当接体41によって制限される。
【0015】
特に、第2のアーム17は、第1のアーム16よりもフレキシブルであるフレキシブルなアームである。
【0016】
特に、フレキシブルなアーム15は、第2のアーム17よりもフレキシブルである。
【0017】
図に示している特定のアプリケーション(これに限定されない)において、制御手段300は、引き部品30を備え、この引き部品30には、第1の支持面31と第2の面32の間にて制御フィンガー12を受けるように構成している開口33が形成されており、この第2の面32は、通常動作では機能しないが、衝撃を受けたときなどに最終的なトラベル制限面を形成することができる。そして、第1の支持面31によって押すことによって制御フィンガー12を駆動させる引き部品30の動きのみが、止めフィンガー13が車200から離れている止めレバー10のアイドル位置から止めフィンガー13が車200の動きを止めるアクティブ位置への切り替えを制御することができる。制御フィンガー12と第1の支持面31を分離させる反対の動きは、止めレバー10をアイドル位置へと戻す。
【0018】
特に、アイドル位置において、止めレバー10は、第1の固定当接体42及び第2の固定当接体41の両方に支えられる。
【0019】
特に、この特定の引き部品の実施形態において、制御手段300は、引き部品30を制御するロッド310を備え、次に、この引き部品30が摺動ピニオンを制御する。また、制御手段の実行に応じて、ロッドは、伝統的な形態のように、レバーを制御する引き部品を制御することができ、これが、次に、摺動ピニオンを制御する。
【0020】
具体的には、このロッド310は、軸方向に動くことができ、そして、3つの軸方向のセッティング位置になるように構成している。そのうちの2つの軸方向のセッティング位置は、引き部品30と制御フィンガー12の間の駆動接触がないことに起因する、止めレバー10のアイドル位置に対応し、第3の軸方向のセッティング位置は、引き部品30と制御フィンガー12の間の接触駆動の連係による、止めレバーのアクティブ位置に対応する。
【0021】
特に、車200は、軸D200のまわりを回転する調整機構のバランスであり、このバランスには、バランスばね202と、止めフィンガー13が連係するように構成している輪縁体201がある。
【0022】
別の代替的実施形態において、車200には、フルート、ノッチング、カッティングのような起伏がある周部があり、この周部と止めフィンガー13が連係して、インデクシングされた位置において車200を止めることができる。
【0023】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のような計時器用機構100を備える計時器1000に関する。特に、この計時器1000は、携行型時計である。
【0024】
3つの位置になる軸方向に動くロッドに作用することによってセッティングを行う計時器用ムーブメントに関連する図に示している特定のアプリケーションにおいて、本発明のおかげで、ストップレバーとしても知られている止めレバーを2つの位置のみにて用いることができる。これに対して、伝統的な形態で摺動ピニオンによってセッティングされる止めレバーを用いる伝統的な構造においては、3つの位置を管理する必要がある。
【0025】
また、本発明のおかげで、止める対象の車、特にバランス、が制御機構、特にロッド、から非常に離れている場合には特に、小さいままであることができる。
【0026】
短く書くと、止めレバーは、第1の固定当接体に支えられてムーブメント内でガイドされ、止めレバーは、そのフレキシブルなアーム15によって、この第1の固定当接体に押し付けられる。第1の支持面31と制御フィンガー12が接触していない2つの軸方向のロッド位置において、止めレバー10は動かない。引き部品30が止めレバー10を押すのは、第3の位置においてのみであり、制御フィンガー12を第1の支持面31によって押すと、止めレバー10が車200をロックする。
【符号の説明】
【0027】
10 止めレバー
12 制御フィンガー
13 止めフィンガー
15 フレキシブルなアーム
16 第1のアーム
17 第2のアーム
30 引き部品
31 第1の支持面
32 第2のトラベル制限面
33 開口
41 第2の固定当接体
42 第1の固定当接体
100 計時器用機構
200 車
201 輪縁体
300 制御手段
310 ロッド
400 構造
1000 計時器