(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】磁性体パワーコンポーネント及び磁性体パワーコンポーネントが適用されるパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240216BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240216BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240216BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H05K7/20 B
H01F37/00 S
H01F37/00 T
H01F37/00 D
H01F27/24 P
H01F27/24 E
H01F27/08 153
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133751
(22)【出願日】2022-08-25
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】202110989889.0
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シィジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジィア
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジタオ
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-009116(JP,U)
【文献】特開平08-069935(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030531(WO,A1)
【文献】特開2002-008923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H05K 7/20
H01F 27/24
H01F 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体パワーコンポーネントであって、当該磁性体パワーコンポーネントは、
プリント回路基板と、
プリント回路基板に組み付けられた磁心と、を含み
該磁心は、磁心本体及び複数の放熱歯を含み、前記磁心本体は前記プリント回路基板に接合され、前記複数の放熱歯は、前記磁心本体に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている少なくとも1つの外面から突出し、前記複数の放熱歯と前記磁心本体とが直接接触によって接合さ
れ、
前記磁心本体は、互いに接続される第1の磁心部分と第2の磁心部分とを含み、前記第1の磁心部分は、本体部分と、該本体部分の表面に接続される少なくとも1つの支持部分とを含み、該支持部分は、前記プリント回路基板を貫通して前記第2の磁心部分に接合され、前記プリント回路基板は、前記本体部分と前記第2の磁心部分との間に位置し、前記複数の放熱歯は、前記第1の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている外面と、前記第2の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている外面とから突出しており、
前記第1の磁心部分は、前記本体部分と一体的に形成された少なくとも1つの隆起部をさらに含み、前記少なくとも1つの隆起部と前記少なくとも1つの支持部分とが、前記本体部分の同じ面に位置する、又は、少なくとも1つの隆起部が、前記第2の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板に向いている面に配置され、前記少なくとも1つの隆起部は、前記プリント回路基板に接合される、
磁性体パワーコンポーネント。
【請求項2】
前記第1の磁心部分及び前記第2の磁心部分の少なくとも一方が、前記プリント回路基板に接合される、請求項
1に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項3】
前記第1の磁心部分と、該第1の磁心部分の表面から突出する放熱歯とが、磁性材料を使用して一体的に形成され、
前記第2の磁心部分と、該第2の磁心部分の表面から突出する放熱歯とが、磁性材料を使用して一体的に形成される、請求項
1又は
2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項4】
前記磁心は、UI型磁心、EE型磁心、EI型磁心、又はUU型磁心のいずれかである、請求項
1又は
2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項5】
各放熱歯はストリップ形状に延び、同じ外面に位置する複数の放熱歯が、互いに平行であり、間隔を空けて配置される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項6】
熱伝導性界面材料が、前記磁心本体と前記プリント回路基板との接続界面に配置される、請求項1
又は2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項7】
各放熱歯に関するものであり且つ延長方向に直交する幅が、2mm以上である、請求項1
又は2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項8】
同じ外面に位置する隣接する2つの放熱歯の間の距離が、1mm以上である、請求項1
又は2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項9】
各放熱歯に関するものであり且つ前記放熱歯が位置する外面に直交する高さが、2mm以下である、請求項1
又は2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項10】
巻線が、前記プリント回路基板に組み込まれる、請求項1
又は2に記載の磁性体パワーコンポーネント。
【請求項11】
基板と、該基板に配置された磁性体パワーコンポーネントとを含むパワーモジュールであって、前記磁性体パワーコンポーネントは、
プリント回路基板と、
該プリント回路基板に組み付けられた磁心と、を含み、
前記磁心は、磁心本体と複数の放熱歯とを含み、前記磁心本体は前記プリント回路基板に接合され、前記複数の放熱歯は、前記磁心本体に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている少なくとも1つの外面から突出しており、前記複数の放熱歯と前記磁心本体とが直接接触によって接合さ
れ、
前記磁心本体は、互いに接続される第1の磁心部分と第2の磁心部分とを含み、前記第1の磁心部分は、本体部分と、該本体部分の表面に接続される少なくとも1つの支持部分とを含み、該支持部分は、前記プリント回路基板を貫通して前記第2の磁心部分に接合され、前記プリント回路基板は、前記本体部分と前記第2の磁心部分との間に位置し、前記複数の放熱歯は、前記第1の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている外面と、前記第2の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板とは反対側を向いている外面とから突出しており、
前記第1の磁心部分は、前記本体部分と一体的に形成された少なくとも1つの隆起部をさらに含み、前記少なくとも1つの隆起部と前記少なくとも1つの支持部分とが、前記本体部分の同じ面に位置する、又は、少なくとも1つの隆起部が、前記第2の磁心部分に関するものであり且つ前記プリント回路基板に向いている面に配置され、前記少なくとも1つの隆起部は、前記プリント回路基板に接合される、
パワーモジュール。
【請求項12】
前記基板は回路基板であり、前記プリント回路基板は前記基板に垂直に差し込まれる、請求項
11に記載のパワーモジュール。
【請求項13】
当該パワーモジュールは、前記基板に配置された放熱ファンをさらに含み、該放熱ファンは、前記磁性体パワーコンポーネントの端部に配置される、請求項
11に記載のパワーモジュール。
【請求項14】
前記磁性体パワーコンポーネントの前記放熱歯は、ストリップ形状に延び、延長方向が前記放熱ファンのエアダクト方向と一致する、請求項
13に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁性体パワーコンポーネント及び磁性体パワーコンポーネントが適用されるパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力製品の電力密度が継続的に増大するにつれて、トランス又はインダクタ等の磁性体パワーコンポーネント(magnetic power component)の動作温度は益々高くなるが、磁性体パワーコンポーネント内の放熱のためのスペースは益々小さくなり、磁性体パワーコンポーネントの放熱対策に新しい課題を提起している。放熱方式では、ヒートシンクが磁性体パワーコンポーネントに接着される。具体的には、ヒートシンクは、放熱のために比較的良好な熱伝導率を有する接着剤を使用して磁心に接着される。しかしながら、放熱方式には次の欠点がある。(1)材料コスト:接着面積が比較的大きい場合に、比較的大量の熱伝導性接着剤を使用する必要があり、コストも高くなる。(2)適用シーン:屋外環境等、温度変化が激しい、又は湿度が高い等の過酷な環境下では、ヒートシンクが脱落するおそれがある。(3)プロセスの難しさ:ヒートシンクの接着には特定のタイプの熱伝導性接着剤が必要である。そうしないと、熱伝導性接着剤の熱膨張係数が比較的大きいため、磁心にクラックが入る危険性がある。加えて、熱伝導性接着剤の熱伝導能力と接着能力との間のトレードオフがさらに要求される。別の放熱方式では、サーマルパッドが、製品の磁心とハウジングとの間に配置され、それによって、熱が、サーマルパッドを通過した後にハウジングから放散される。しかしながら、放熱方式には次の欠点がある。(1)材料コスト:サーマルパッドのコストは、厚さが増大するにつれて連続的に増大する。(2)適用可能なシナリオ:放熱方式を、磁心がハウジングから遠く離れているシナリオに適用することは困難である。(3)プロセスの難しさ:磁心及びハウジングの寸法公差に対する要求が高い。サーマルパッドの厚さが非常に薄い場合に、磁心と放熱ハウジングとの間の接触が十分に接近せず、放熱効果が低下する。サーマルパッドの厚みが非常に大きい場合に、組み立て後に磁心とハウジングとの両方に比較的大きな応力がかかり、亀裂又は変形等のリスクが生じる。
【発明の概要】
【0003】
本願の実施形態の第1の態様は、磁性体パワーコンポーネント(magnetic power component)を提供する。この磁性体パワーコンポーネントは、プリント回路基板と、プリント回路基板に組み付けられた磁心(magnetic core)とを含み、磁心は、磁心本体及び複数の放熱歯を含み、磁心本体はプリント回路基板に接合され、複数の放熱歯は、磁心本体に関するものであり且つプリント回路基板とは反対側を向いている少なくとも1つの外面から突出している。
【0004】
磁心の放熱歯の設計により、磁心の放熱表面積が増大し、それにより放熱能力が向上する。従って、ハウジングとの接続を実現するために、磁心にヒートシンクを追加で接着する、又は磁心にサーマルパッドを配置する必要がなく、それにより磁性体パワーコンポーネントの占有体積を効果的に削減することができる。磁心本体がプリント基板に接合されるため、プリント基板の熱を磁心に伝導させることができ、磁心を使用して放熱することができる。
【0005】
本願の実施態様では、磁心本体は、互いに接続される第1の磁心部分と第2の磁心部分とを含み、第1の磁心部分は、本体部分と、本体部分の表面に接続される少なくとも1つの支持部分とを含み、支持部分は、プリント回路基板を貫通して第2の磁心部分に接合される。プリント基板は、本体部分と第2の磁心部分との間に位置する。複数の放熱歯は、第1の磁心部分に関するものであり且つプリント回路基板とは反対側を向いている外面と、第2の磁心部分に関するものであり且つプリント回路基板とは反対側を向いている外面とから突出している。
【0006】
通常、磁心本体の第1の磁心部分及び第2の磁心部分は、別々に形成される。組立て中に、第1の磁心部分及び第2の磁心部分は、プリント回路基板の両面にそれぞれ配置されるので、磁心本体をプリント回路基板に簡単且つ迅速に組み立てることができる。また、支持部分と第2の磁心部分との接合界面に接着剤を配置して、第1の磁心部分と第2の磁心部分とを強固に接合することができる。
【0007】
本願の一実施態様では、第1の磁心部分及び第2の磁心部分の少なくとも一方がプリント回路基板に接合される。
【0008】
本願の一実施態様では、第1の磁心部分は、本体部分と一体的に形成された少なくとも1つの隆起部をさらに含み、少なくとも1つの隆起部と少なくとも1つの支持部分とが、本体部分の同じ面に位置する、又は、少なくとも1つの隆起部が、第2の磁心部分に関するものであり且つプリント回路基板に向いている面に配置される。少なくとも1つの隆起部はプリント回路基板に接合される。
【0009】
第1の磁心部分とプリント回路基板との間の接触面積を確保するために、隆起部は複数あってもよい。各隆起部の厚さは支持部分の厚さよりも小さいため、隆起部をプリント回路基板に接合することができる。このようにして、プリント回路基板で発生する熱、特に巻線で発生する熱は、隆起部を使用して磁心に伝導することができ、熱は磁心を使用して放散される。
【0010】
本願の一実施態様では、第1の磁心部分と、第1の磁心部分の表面から突出する放熱歯とが、磁性材料を使用して一体的に形成される。第2の磁心部分と、第2の磁心部分の表面から突出する放熱歯とが、磁性材料を使用して一体的に形成される。
【0011】
本願の一実施態様では、磁心は、UI型磁心、EE型磁心、EI型磁心、又はUU型磁心のいずれかである。
【0012】
本願の一実施態様では、各放熱歯はストリップ形状に延び、同じ外面に位置する複数の放熱歯が、互いに平行であり、間隔を空けて配置される。
【0013】
同じ外面に位置する隣接する2つの放熱歯の間にはストリップ形状の溝があり、放熱歯のストリップ形状の延長方向は、通常、空気ダクト方向である。これら2つの方向がずれると風量が低下し、放熱効果が低下する。
【0014】
本願の一実施態様では、熱伝導性界面材料が、磁心本体とプリント回路基板との間の接続界面に配置される。
【0015】
本願の一実施態様では、各放熱歯に関するものであり且つ延長方向に直交する幅が、2mm以上である。
【0016】
本願の一実施態様では、同じ外面に位置する隣接する2つの放熱歯の間の距離が、1mm以上である。
【0017】
本願の一実施態様では、各放熱歯に関するものであり且つ放熱歯が位置する外面に直交する高さが、2mm以下である。
【0018】
本願の一実施態様では、巻線は、プリント回路基板に組み込まれる。
【0019】
本願の実施形態の第2の態様は、基板と、基板に配置された磁性体パワーコンポーネントとを含むパワーモジュールを提供し、磁性体パワーコンポーネントは、本願の実施形態の第1の態様で説明した磁力コンポーネンである。基板は回路基板である。
【0020】
本願の一実施態様では、プリント回路基板は、基板に垂直に差し込まれる。
【0021】
複数の突出部が、磁性体パワーコンポーネントのプリント基板の端面に形成されるため、この突出部を使用してプリント基板を基板にプラグ接続することができる。プラグ接続孔が基板に対応して配置されるため、突出部を使用してプリント回路基板を基板のプラグ接続孔にプラグ接続することができ、プリント回路基板を基板に電気的に接続する。
【0022】
本願の一実施態様では、パワーモジュールは、基板に配置された放熱ファンをさらに含み、放熱ファンは、磁性体パワーコンポーネントの端部に配置される。
【0023】
本願の一実施態様では、磁性体パワーコンポーネントの放熱歯はストリップ形状に延び、延長方向が放熱ファンの空気ダクト方向と一致する。
【0024】
間隔を空けて配置された複数の磁性体パワーコンポーネントが基板に配置され、磁性体パワーコンポーネントのプリント回路基板が、対向して平行に配置される。放熱ファンは、複数の磁性体パワーコンポーネントの同じ端部に配置される。放熱ファンから吹き出される空気は、2つの磁性体パワーコンポーネントに吹き付けられ、空気ダクトの方向は、磁性体パワーコンポーネントの放熱歯の延長方向と一致する。磁心の表面で発生した熱は、放熱ファンから吹き出される流動空気を使用して迅速に奪い取られ、良好な放熱効果を実現し、高温によるデバイスの損傷を防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本願の一実施形態による磁性体パワーコンポーネントの概略三次元図である。
【
図1B】
図1Aの磁性体パワーコンポーネントの概略側面図である。
【
図2】
図1の磁性体パワーコンポーネントの概略分解図である。
【
図3】
図1の磁性体パワーコンポーネントの磁心の概略三次元図である。
【
図5A】変形実施形態における磁心の概略平面図である。
【
図5B】変形実施形態における磁心の概略平面図である。
【
図5C】変形実施形態における磁心の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
主な要素の記号の説明
100 磁性体パワーコンポーネント
10 磁心
30 プリント回路基板
11 磁心本体
13 放熱歯
130 溝
111 第1の磁心部分
113 第2の磁心部分
112 本体部分
114 支持部分
31 貫通孔
116 隆起部
110 滑らかな領域
200 パワーモジュール
210 基板
40 放熱ファン
101 突出部
【0027】
以下では、本願の実施形態における添付の図面を参照して本願の実施形態について説明する。
【0028】
トランス又はインダクタ等の磁性体パワーコンポーネントは、磁性材料の磁心を含む。しかしながら、磁性体パワーコンポーネントの既存の放熱方式では、接着剤を使用してヒートシンクを磁性体パワーコンポーネントに接着しており、その結果、磁性体パワーコンポーネントの全体構造がより大きなスペースを占有し、ヒートシンクが脱落する危険性がある。
【0029】
図1A及び
図1Bに示されるように、本願は、磁心10を含む磁性体パワーコンポーネント100を提供する。磁心10は、大きな比表面積を有し、従って大きな放熱面積を有する。磁心10によって生成された熱と、別のコンポーネント(プリント回路基板30等)によって生成された熱との両方が、磁心10を使用して効果的に伝達され得る。
【0030】
図1A及び
図1Bに示されるように、磁性体パワーコンポーネント100はプリント回路基板30をさらに含み、磁心10はプリント回路基板30に組み付けられる。磁心10は、磁心本体11と、磁心本体11の少なくとも1つの外面から突出した複数の放熱歯13とを含む。磁心本体11は、プリント回路基板30に接合される。複数の放熱歯13は、磁心本体11に関するものであり且つプリント回路基板とは反対側を向いている少なくとも1つの外面から突出している。溝130が、同じ外面上の隣接する2つの放熱歯13の間に形成される。放熱歯13の設計により、磁心10の放熱表面積が増大し、それにより放熱能力が向上する。従って、ハウジングへの接続を実現するために、ヒートシンクを磁心10に追加的に接着する必要がなく、又はサーマルパッドを磁心10に配置する必要がなく、それにより、磁性体パワーコンポーネントが占める体積を効果的に減少させることができる。この実施形態では、プリント回路基板30は多層構造であり、巻線(図示せず)がプリント回路基板30に組み込まれる。巻線は、磁心10によって形成される磁気回路内に配置される。磁性体パワーコンポーネント100が動作すると、電流が巻線に流れ、巻線が加熱され、大量の熱が発生する。従って、巻線、すなわちプリント回路基板30に放熱経路を設ける必要がある。さもなければ、巻線の抵抗率が増大する。
【0031】
磁心10は、金属磁性材料、合金磁性材料、及びフェライト磁性材料のうちの1つを含むがこれらに限定されない磁性材料で製造される。この実施形態では、放熱歯13及び磁心本体11は、金型(図示せず)内で少なくとも部分的に一体的に形成される。放熱歯13及び磁心本体11は直接接触して接合され、放熱歯13と磁心本体11との間に接着のための媒体(接着剤等)は配置されない。従って、接着不良により放熱歯13が脱落するおそれがなく、磁心本体11から放熱歯13に熱を直接伝導させることができるため、放熱効率も比較的高い。
【0032】
また、磁心本体11がプリント基板30に接合されるので、磁心本体11を使用してプリント基板30の熱を磁心10に伝導させることができ、熱は磁心10を使用して放熱される。
【0033】
図2及び
図3に示されるように、磁心本体11は、互いに接続される第1の磁心部分111と第2の磁心部分113とを含み、プリント回路基板30は、第1の磁心部分111と第2の磁心部分111との間に略位置している。通常、第1の磁心部分111と第2の磁心部分113とは別々に形成される。第1の磁心部分111は、本体部分112と、本体部分112の表面から突出する少なくとも1つの支持部分114とを含み、本体部分112と支持部分114とは一体的に形成される。いくつかの実施形態では、本体部分112はプレート形状であり、支持部分114は実質的に円柱状である。プリント回路基板30には、プリント回路基板30を貫通する少なくとも1つの貫通孔31が設けられ、各貫通孔31は、1つの支持部分114に対応する。各支持部分114は、対応する1つの貫通孔31を貫通して、第2の磁心部分113に接合される。本願では、第1の磁心部分111の構造について上述したが、第2の磁心部分113が、プリント回路基板30を第1の磁心部分111と第2の磁心部分113との間に挟み込むように第1の磁心部分111に接続可能である限り、第2の磁心部分113の構造については特に問わない(例えば、第2の磁心部分113は、第1の磁心部分111と対称な任意のプレート形状のミラー構造であり得るが、これに限定されない)。接着剤(図示せず)を支持部分114と第2の磁心部分113との接合界面に配置して、第1の磁心部分111及び第2の磁心部分113を堅固に接合することができる。プリント回路基板30は、本体部分112と第2の磁心部分113との間に配置される。貫通孔31の開口サイズは、支持部分114の断面サイズよりも大きく、支持部分114が、組立工程において貫通孔31を容易に貫通できるのを確実にする。
【0034】
図2に示されるように、複数の放熱歯13は、第1の磁心部分111に関するものであり且つプリント基板30とは反対側を向いている外面と、第2の磁心部分113に関するものであり且つプリント基板30とは反対側を向いている外面とから突出している。第1の磁心部分111及びそこから突出する放熱歯13は一体的に形成される。第2の磁心部分113及びそこから突出する放熱歯13は一体的に形成される。第1の磁心部分111及び第2の磁心部分113の少なくとも一方は、プリント回路基板30に接合される。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、この実施形態では、磁心10はUI型磁心であり、第1の磁心部分111は略U字形であり、第2の磁心部分113はプレート形状のI字形である。第1の磁心部分111は、プレート形状の本体部分112と、本体部分112の同じ面に位置する間隔を空けて配置された2つの支持部分114とを含む。各支持部分114は円柱状である。プリント回路基板30には、プリント回路基板30を貫通する2つの貫通孔31が配置されており、各貫通孔31は1つの支持部分114に対応している。各支持部分114は、対応する1つの貫通孔31を貫通して第2の磁心部分113に接合され、接触する。この実施形態では、第2の磁心部分113は、プリント回路基板30から間隔を空けて配置される。放熱歯13は、第1の磁心部分111に関するものであり且つプリント回路基板30とは反対側に向いている外面から突出しており、そして、放熱歯13は、第2の磁心部分113に関するものであり且つプリント基板30とは反対側に向いている外面からも突出しており、それによって、複数の放熱歯13は、それぞれ、磁心本体11の2つの反対面に配置される。この2つの外面は、第1の磁心部分111に関するものであり且つ外気と大面積で接触する面であるため、放熱歯13が配置される面としてその2つの外面が選択される。第2の磁心部分113に関するものであり且つプリント基板30に近い面に放熱歯13を配置しないのは、次の理由による。第2の磁心部分113がプリント回路基板30から間隔を空けて配置されるが、第2の磁心部分113とプリント回路基板30との間のギャップが比較的小さく、形成される空気ダクトが制限され、放熱効果があまり良くないためである。また、本願では、第1の磁心部分111の一部がプリント基板30に接合され、第1の磁心部分111は、本体部分112と一体的に形成された少なくとも1つの隆起部116をさらに含み、隆起部116は、プリント基板30に直接接合される。この実施形態では、隆起部116が3つある。複数の隆起部116があり、第1の磁心部分111とプリント回路基板30との間の接合接触面積を確保する。隆起部116及び2つの支持部分114は本体部分112の同じ面に位置し、隆起部116は2つの支持部分114から間隔を空けて配置される。各隆起部116の厚さは支持部分114の厚さより薄く、それによって、隆起部116をプリント回路基板30に接合することができる。このようにして、プリント基板30で発生した熱、特に巻線で発生した熱を、隆起部116を使用して第1の磁心部分111に伝導させることができ、磁心10を使用し熱が放散される。
【0036】
別の実施形態では、図示していないが、代替的に、第2の磁心部分113は、プリント回路基板30への接合を実施するために隆起部116を含んでもよいことが理解され得る。
【0037】
磁性体パワーコンポーネント100の磁心10はUI型磁心に限定されず、代替的に、別の磁心であってもよいことが理解され得る。
図5Aに示されるように、磁心10はUU型磁心等である。すなわち、第1の磁心部分111と第2の磁心部分113とは両方ともU字形である。第1の磁心部分111及び第2の磁心部分113は、それぞれ、プレート形状の本体部分112と、本体部分112の同じ面に位置する間隔を空けて配置された2つの支持部分114とを含む。それに対応して、図示していないが、プリント回路基板には、第1の磁心部分111の2つの支持部分114がそれぞれ貫通して第2の磁心部分113の2つの支持部分114に接合されるように、2つの貫通孔が設けられる。同様に、図示していないが、第1の磁心部分111又は第2の磁心部分113は、本体部分112と一体的に形成された隆起部をさらに含み、隆起部を使用してプリント基板30との接合を実現する。
【0038】
図5Bに示されるように、磁心10はEE型磁心であり、第1の磁心部分111と第2の磁心部分113は両方ともE字形である。第1の磁心部分111及び第2の磁心部分113は、それぞれ、プレート形状の本体部分112と、本体部分112の同じ面に位置する間隔を空けて配置された3つの支持部分114とを含む。第1の磁心部分111の3つの支持部分114は、第2の磁心部分113の3つの支持部分114に1対1の対応関係で接合される。これに対応して、図示しないが、プリント回路基板には、第1の磁心部分111の3つの支持部分114がそれぞれ貫通して第2の磁心部分111の3つの支持部分114にそれぞれ接合されるように、3つの貫通孔が配置される。同様に、図示しないが、第1の磁心部分111又は第2の磁心部分113は、本体部分112と一体的に形成された隆起部をさらに含み、隆起部を使用してプリント回路基板30への接合を実現する。
【0039】
図5Cに示されるように、磁心10はEI型磁心である。すなわち、第1の磁心部分111はE字型であり、第2の磁心部分113はプレート形状のI字型である。第1の磁心部分111は、プレート形状の本体部分112と、本体部分112の同じ面に位置する間隔を空けて配置された3つの支持部分114とを含む。これに対応して、図示しないが、プリント回路基板には、第1の磁心部分111の3つの支持部分114がそれぞれ貫通して第2の磁心部分113に接合されるように、3つの貫通孔が配置される。同様に、図示しないが、第1の磁心部分111又は第2の磁心部分113は、本体部分112と一体的に形成された隆起部をさらに含み、隆起部を使用してプリント回路基板30への接合を実現する。
【0040】
磁心10は、
図3及び
図5A~
図5Cに示される構造に限定されず、代替的に、別の形状の磁心であってもよいことが理解され得る。
【0041】
磁心10を直接接触によってプリント回路基板30に接合してもよく、又は熱伝導性界面材料を磁心10とプリント回路基板30との間の接続界面に配置してもよいことが理解され得る。
【0042】
図示していないが、抵抗器及びコンデンサ等の他の電子素子をプリント回路基板30上にさらに配置してもよいことが理解され得る。
【0043】
図4に示されるように、各放熱歯13はストリップ形状に延びている。この実施形態では、磁心本体11の同じ外面に位置する複数の放熱歯13は、互いに平行であり、間隔を空けて配置される。隣接する2つの放熱歯13の間には、ストリップ形状の溝130がある。放熱歯13のサイズは、要件に基づいて調整及び設計することができる。各放熱歯13は、延長方向の長さa、延長方向に直交する幅b、磁心本体の外面に直交する高さc、及び隣接する放熱歯13の間の距離dを有する。
【0044】
通常、空冷式の放熱機器、例えば放熱ファンが磁性体パワーコンポーネント100の近くにさらに配置され、空気の流れを利用して磁心10及びプリント基板で発生した熱を迅速に奪い取り、良好な放熱効果を実現し、高温によるデバイスの損傷を防止する。放熱歯13の長さaの方向は、通常、エアダクト方向である。従って、磁心10の表面における放熱歯13の延長方向及び空気の流れ方向は、両方向が一致するように設計される。2つの方向が一致しないと、空気流量が減少し、放熱効果が大幅に低下する。
【0045】
放熱歯13の長さaは、通常、磁心の全長Lに等しい。しかしながら、この実施形態では、
図4に示されるように、放熱歯13が、磁心本体11に関するものであり且つ放熱歯13が配置された外面の2つの側部のみに配置され、その2つの側部の中央は滑らかな表面の平滑領域110となっている。磁性体パワーコンポーネント100を自動加工して組み立てる際に、吸着ノズルを平滑領域に吸着させて磁心の自動把持を実現できるように、平滑領域110が配置される。この実施形態では、放熱歯13に関するものであり且つ磁心本体11とは反対側を向いている面が平滑領域と面一であるため、磁心10の成形難易度を下げることができる。実際の適用において、要件に基づいて、放熱歯13が外面全体に配置されるか、又は外面の一部に配置されるかが決定され得ることが理解され得る。
【0046】
磁心の長さLと幅Mとの両方が決定される場合に、放熱歯13の幅b及び放熱歯13同士の間の距離dは、共同で磁心の1つの外面上の放熱歯13の数量nを決定し、ここで、n=M/(b+d)である。放熱歯13の幅bと放熱歯13同士の間の距離dとの和が小さいほど放熱歯13の数量nが多いことを示す。また、放熱歯13の数量nと、放熱歯13の高さc及び長さaとは、共同で磁心の追加の放熱面積をさらに決定し、S=c×a×2nである。放熱面積を大きくすることを考えることに基づいて、理論的には、長さa及び高さcは大きい方が良く、幅b及び距離dは小さい方が良い。ただし、金型の成形加工能力によって、量産性を確保するために、各放熱歯13に関するものであり且つ延長方向に直交する幅bは、2mm以上である。同じ外面に位置する隣接する2つの放熱歯13の間の距離は、1mm以上である。各放熱歯13に関するものであり且つ放熱歯13が位置する外面に直交する高さは、2mm以下である。
【0047】
図6に示されるように、本願は、基板210と、基板210に配置された磁性体パワーコンポーネント100とを含むパワーモジュール200をさらに提供する。パワーモジュール200は、トランス、インダクタ等であり得るが、それらに限定されない。磁性体パワーコンポーネント100は、プリント回路基板30を使用して基板210に垂直に差し込まれる。基板210もプリント回路基板である。本願のこの実施形態では、間隔を空けて配置された2つの磁性体パワーコンポーネント100が基板210に配置される。この実施形態では、2つの磁性体パワーコンポーネント100のプリント回路基板30は、対向して平行に配置される。放熱ファン40が基板210上にさらに配置され、放熱ファン40は2つの磁性体パワーコンポーネント100の同じ端部に位置する。放熱ファン40から吹き出される空気は、2つの磁性体パワーコンポーネント100に吹き付けられ、空気ダクトの方向は、磁性体パワーコンポーネント100の放熱歯13の延長方向と一致している。磁心10の表面で発生した熱は、放熱ファン40から送風される流動空気を使用して迅速に奪い取られ、良好な放熱効果を実現し、高温によるデバイスの損傷を防ぐ。
図2に示されるように、磁性体パワーコンポーネント100のプリント回路基板30の端面には複数の突出部(bulge)101が形成され、プラグ接続孔(図示せず)が基板210に対応して配置され、それによって、回路基板30は、突出部101を使用して基板210のプラグ接続孔にプラグ接続され、プリント回路基板30と基板210との間の締結接続を実現することができ、プリント回路基板30は、基板210に電気的に接続される。
【0048】
放熱効果のシミュレーションデータ検証:
【0049】
同じサイズの2つの磁心が、選択され、同じサイズ及び仕様の2つのトランスに適用される。2つの磁心の長さ、幅、厚さが同じである。相違点は、比較例として、一方の磁心に放熱歯を配置し、他方の磁心に放熱歯を配置しないことである。熱シミュレーションデータに基づくと、比較例と比較して、放熱歯が配置された磁心を含む平面トランスのPCB巻線の温度は4.4℃だけ低下し、磁心本体の温度は11℃だけ低下する。
【0050】
本願は、以下の改良において従来の技術とは異なる:
【0051】
(1)材料コスト:ヒートシンク、接着剤、又はサーマルパッド等の追加材料が必要ないため、材料コストが削減される。
【0052】
(2)適用シナリオ:磁心の放熱歯は、自由なサイズ設計のために、磁心本体及び磁心本体が配置される環境に適合することができる。放熱歯は磁心と一体的に成形されるため、放熱部品の脱落、又は長期間の動作後による放熱性能の低下のリスクがない。
【0053】
(3)プロセスの難しさ:磁心の放熱歯は、金型製造により一度に製作でき、大量生産に適している。磁心のサイズのために他の材料を再設計する必要はない。組立方式を考慮し、工程コストを削減する。
【0054】
(4)体積の利点:ヒートシンク、接着剤、又はサーマルパッド等の材料を追加で配置する必要がないため、本願の磁性体パワーコンポーネントの全体的な占有スペースは比較的小さく、それにより、パワーモジュールの小型化が容易になる。
【0055】
前述の説明は、本願の特定の実施態様に過ぎないが、本願の保護範囲はそれに限定されないことに留意されたい。本願に開示した技術的範囲内で当業者が容易に想起するあらゆる変形又は置換は、本願の保護範囲内にあるものとする。本願の実施態様及び実施態様内の機能は、互いに競合しない限り、相互に組み合わせることができる。従って、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。