(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電動式作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240216BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60K1/04 A
E02F9/00 C
(21)【出願番号】P 2022161515
(22)【出願日】2022-10-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】山浦 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】向後 浩司
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沼 泰暁
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141434(WO,A1)
【文献】特開2005-119416(JP,A)
【文献】特開2006-264940(JP,A)
【文献】特開2000-168565(JP,A)
【文献】国際公開第2022/202285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の動力源を有する車両本体と、
前記車両本体に着脱自在に取り付けられて前記動力源に対する給電を行うバッテリと、を備え、
前記バッテリが自走可能であ
り、
前記バッテリは、バッテリ本体と、前記バッテリ本体の下側に設けられた車輪と、前記バッテリ本体と前記車輪との間に設けられた脚部と、を有し、
前記脚部は、前記車輪を、前記バッテリ本体から下方に離れた離間位置と、前記離間位置よりも前記バッテリ本体に近い近接位置との間で、移動させるように構成され、
前記車両本体は、下部走行体と、前記下部走行体上に設けられた上部旋回体と、を備え、
前記バッテリは、前記上部旋回体に対して着脱自在に取り付けられ、
前記バッテリが前記上部旋回体に取り付けられ、かつ、前記車輪が前記近接位置に配置された状態では、前記車輪を含む前記バッテリ全体が、前記下部走行体の上側に位置する電動式作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンなどのように建設現場において自走可能な作業車両には、電動モータなどの電動式の動力源を備えた電動式の作業車両(電動式作業車両)がある。特許文献1には、動力源を有する車両本体と、車両本体に着脱自在に取り付けられて動力源に給電を行うバッテリと、を備えた電動式作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動式作業車両では、バッテリをクレーン等によって吊り上げることで車両本体に対して脱着する必要がある。また、トラックなどによってバッテリを搬送する必要がある。すなわち、特許文献1の電動式作業車両では、バッテリを交換するために、バッテリを車両本体に対して脱着するためのクレーン等の脱着用機械、バッテリを搬送するための搬送用車両、及び、これら脱着用機械及び搬送用車両を扱う作業者が必要となる。このため、バッテリ交換のためのコストが高くなってしまう。また、この種の電動式作業車両には、バッテリ交換時における更なる安全性の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、バッテリ交換のためのコストを削減でき、また、バッテリ交換時における安全性の向上を図ることが可能な電動式作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電動式作業車両は、電動式の動力源を有する車両本体と、前記車両本体に着脱自在に取り付けられて前記動力源に対する給電を行うバッテリと、を備え、前記バッテリが自走可能であり、前記バッテリは、バッテリ本体と、前記バッテリ本体の下側に設けられた車輪と、前記バッテリ本体と前記車輪との間に設けられた脚部と、を有し、前記脚部は、前記車輪を、前記バッテリ本体から下方に離れた離間位置と、前記離間位置よりも前記バッテリ本体に近い近接位置との間で、移動させるように構成され、前記車両本体は、下部走行体と、前記下部走行体上に設けられた上部旋回体と、を備え、前記バッテリは、前記上部旋回体に対して着脱自在に取り付けられ、前記バッテリが前記上部旋回体に取り付けられ、かつ、前記車輪が前記近接位置に配置された状態では、前記車輪を含む前記バッテリ全体が、前記下部走行体の上側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動式作業車両において、バッテリ交換のためのコストを削減でき、また、バッテリ交換時における安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による電動式作業車両を示す図である。
【
図2】
図1の電動式作業車両に備えるバッテリを示す図である。
【
図3】
図1の電動式作業車両において、バッテリを車両本体に取り付ける過程を示す図である。
【
図4】
図1の電動式作業車両において、バッテリを車両本体に取り付ける過程を示す図である。
【
図5】
図1の電動式作業車両において、バッテリを車両本体に取り付ける過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~5を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る電動式作業車両1は、主に建設現場や解体現場において自走可能な作業機械であり、車両本体2と、バッテリ3と、を備える。
【0010】
車両本体2は、下部走行体21と、上部旋回体22と、作業装置23と、電動式の動力源24と、を備える。
下部走行体21は、車両本体2を地面G上で走行させるための構造体である。下部走行体21は、クローラ(キャタピラ)を備えて構成されている。なお、下部走行体21は、例えば複数の車輪を備えて構成されてもよい。
上部旋回体22は、下部走行体21上に設けられている。下部走行体21上に配置された上部旋回体22は、上下方向に延びる軸を中心として、下部走行体21に対して旋回可能となっている。
【0011】
作業装置23は、上部旋回体22の前部(
図1において右側)に設けられている。作業装置23は、建設現場や解体現場において各種の作業に利用される装置である。本実施形態における作業装置23は、ジブ等の揚重機械を装備して各種の物体を吊り上げる揚重装置である。なお、作業装置23は、例えば土砂等の掘削作業を行う掘削装置であってもよい。
本実施形態の電動式作業車両1は、下部走行体21がクローラを備え、上部旋回体22が揚重装置を備えるクローラクレーンである。
【0012】
電動式の動力源24は、電動モータである。当該動力源24は、バッテリ3から給電されることで、下部走行体21、上部旋回体22及び作業装置23を駆動することができる。本実施形態において、動力源24は上部旋回体22に設けられている。なお、動力源24は、例えば下部走行体21に設けられてもよい。
【0013】
上部旋回体22の後部(
図1において左側)には、カウンターウェイト26が設けられている。カウンターウェイト26は、各種の作業に起因して作業装置23に荷重がかかった際に、電動式作業車両1の重心の移動が許容範囲に収まるようにする。
【0014】
図1,3,4に示すように、上部旋回体22には、後述するバッテリ3を着脱自在に取り付けるバッテリ取付部25が設けられている。バッテリ取付部25は、電動式作業車両1を配置した地面Gとの間に何も介在しないように、すなわち、上下方向において地面Gに対向するように、上部旋回体22に設けられている。
図1,3,4において、バッテリ取付部25は、バッテリ3を1つだけ取り付けるように構成されているが、例えば複数取り付けるように構成されてもよい。
【0015】
本実施形態において、バッテリ取付部25は、上部旋回体22の後部に設けられている。上部旋回体22の後部に設けられたバッテリ取付部25は、カウンターウェイト26の下側に位置している。これにより、バッテリ取付部25に取り付けられたバッテリ3は、カウンターウェイト26の一部として機能する。
【0016】
なお、上部旋回体22の後部には、例えばバッテリ取付部25だけが設けられてもよい。すなわち、バッテリ取付部25に取り付けられたバッテリ3のみによってカウンターウェイト26が構成されてもよい。
【0017】
バッテリ3は、車両本体2に着脱自在に取り付けられることで動力源に対する給電を行う。本実施形態において、バッテリ3は上部旋回体22に設けられたバッテリ取付部25に対して着脱自在に取り付けられる。バッテリ3は、自走可能である、すなわち地面G上を自力で走行可能である。バッテリ3は、バッテリ本体31と、車輪32と、脚部33と、を有する。
【0018】
図示しないが、バッテリ本体31は、車両本体2のバッテリ取付部25に取り付けられた状態で、動力源24と電気的に接続される。バッテリ本体31と動力源24とを電気的に接続するバッテリ本体31側の端子及び動力源24側の端子は、互いに接触する接触型の端子であってもよいし、互いに接触しない非接触型の端子であってもよい。
【0019】
図2に示すように、バッテリ3の車輪32は、バッテリ本体31の下側に設けられている。車輪32は、バッテリ3が自走する際に地面G上で転動する。バッテリ3は、車輪32を複数有する。複数の車輪32の少なくとも一部は、能動的に回転する駆動輪である。複数の車輪32すべてが駆動輪であってもよいし、例えば一部の車輪32が能動的には回転しない従動輪であってもよい。車輪32は、例えば転動する向きが変わるように、バッテリ本体31に取り付けられてよい。これにより、バッテリ3が走行する向きを変えることができる。なお、車輪32は、例えばクローラなどであってもよい。
【0020】
脚部33は、各車輪32とバッテリ本体31との間に設けられている。脚部33は、車輪32を離間位置P1と近接位置P2との間で移動させるように構成されている。離間位置P1は、バッテリ本体31から下方に離れた車輪32の位置である。近接位置P2は、離間位置P1よりもバッテリ本体31に近い車輪32の位置である。
【0021】
車輪32を離間位置P1と近接位置P2との間で移動させるために、本実施形態の脚部33は、伸縮するように構成されている。図示例の脚部33は、油圧ジャッキを内蔵した伸縮体であるが、例えばマジックハンドのような伸縮リンク機構であってもよい。また、脚部33は、例えばバッテリ本体31に対して折り畳み可能に取り付けられてもよい。このような脚部33であっても、車輪32を離間位置P1と近接位置P2との間で移動させることができる。
【0022】
図1に示すように、バッテリ本体31が上部旋回体22のバッテリ取付部25に取り付けられ、かつ、バッテリ3の車輪32が近接位置P2に配置された状態では、車輪32を含むバッテリ3全体が、下部走行体21の上側に位置する。一方、
図5に示すように、バッテリ本体31が上部旋回体22のバッテリ取付部25に取り付けられ、かつ、バッテリ3の車輪32が離間位置P1に配置された状態では、脚部33がバッテリ本体31の下方に延びることで車輪32が地面Gに接触する。
【0023】
本実施形態の電動式作業車両1では、バッテリ3を車両本体2に近づけるようにバッテリ3を地面G上で走行させることで、バッテリ3を車両本体2に対して取り付けることができる。以下、車両本体2に対してバッテリ3を取り付けるバッテリ3の取付方法の一例について説明する。
【0024】
車両本体2にバッテリ3を取り付ける際には、はじめに
図3,4に示すように、バッテリ3を地面G上で走行させることで、バッテリ3を車両本体2のバッテリ取付部25に近づける。具体的には、車輪32を近接位置P2に配置した状態でバッテリ3を地面G上で走行させることで、当該バッテリ3をバッテリ取付部25の下側まで到達させる。
【0025】
次いで、
図4,5に示すように、脚部33によって車輪32を近接位置P2から離間位置P1に移動させることで、バッテリ本体31を上昇させる。これにより、バッテリ本体31がバッテリ取付部25に取り付けられる。この状態では、バッテリ本体31と動力源24とが電気的に接続される。
最後に、
図1に示すように、脚部33によって車輪32を離間位置P1から近接位置P2に移動させる。これにより、車輪32を含むバッテリ3全体が下部走行体21の上側に位置する。以上により、バッテリ3の取付方法が完了する。
【0026】
バッテリ3を車両本体2から取り外す場合には、上記した取付方法における工程を逆順で実施すればよい。
【0027】
上記のバッテリ3の取付方法においては、バッテリ本体31がバッテリ取付部25に取り付けられた後に、例えば、脚部33によって車輪32を離間位置P1から近接位置P2に移動させなくてもよい。すなわち、
図5に示す状態でバッテリ3の取付方法が完了してもよい。言い換えれば、バッテリ3が車両本体2に取り付けられた状態において、車輪32が地面Gに接触していてもよい。この場合、車輪32は、下部走行体21に対する上部旋回体22の動きや下部走行体21の走行に応じて、地面G上で転動すればよい。
【0028】
また、上記のバッテリ3の取付方法においては、例えば、バッテリ3を地面G上で走行させることで、バッテリ本体31がバッテリ取付部25に取り付けられてもよい。具体的には、脚部33によってバッテリ本体31をバッテリ取付部25と同じ高さ位置まで上昇させた後に、バッテリ3を地面G上で走行させることで、バッテリ本体31がバッテリ取付部25に取り付けられてもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の電動式作業車両1によれば、車両本体2に着脱自在に取り付けられるバッテリ3が自走可能である。これにより、バッテリ3自体が動くことで、バッテリ3を車両本体2に対して脱着することができ、また、バッテリ3を搬送することができる。このため、従来のように脱着用の機械、搬送用の車両及びこれらを扱う作業者が無くても、バッテリ3を交換することができる。したがって、バッテリ3交換のためのコストを削減することができる。
また、作業者がいなくてもバッテリ3の交換が可能となるため、バッテリ3交換時における安全性の向上を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態の電動式作業車両1において、車両本体2に複数のバッテリ3を取り付け可能である場合には、複数のバッテリ3のうち交換対象ではないバッテリ3によって電動式作業車両1を稼働させることができる。このため、電動式作業車両1が稼働中であっても、バッテリ3の交換を行うことができる。具体的には、バッテリ3が自走可能であることで、バッテリ3を稼働中における車両本体2の動きに追従させることができる、これにより、稼働中の電動式作業車両1に対してバッテリ3の交換を実施できる。したがって、電動式作業車両1による作業がバッテリ3の交換によって中断されることを抑制又は防止することができる。
【0031】
また、本実施形態の電動式作業車両1によれば、バッテリ本体31の下側に設けられた車輪32を、脚部33によって、バッテリ本体31から下側に離れた離間位置P1と、離間位置P1よりもバッテリ本体31に近い近接位置P2との間で移動させることができる。このため、脚部33によって車輪32を近接位置P2から離間位置P1に移動させることで、バッテリ本体31を上昇させることができる。これにより、車両本体2のバッテリ取付部25が地面Gの上方に離れていても、バッテリ3をバッテリ取付部25に対して簡単に脱着することができる。
また、車輪32が近接位置P2に配置された状態では、車輪32が離間位置P1に位置する場合と比較してバッテリ3の重心が低くなるため、バッテリ3を安定に走行させることもできる。
【0032】
また、本実施形態の電動式作業車両1によれば、バッテリ3が車両本体2の上部旋回体22に取り付けられ、かつ、脚部33によって車輪32が近接位置P2に配置された状態では、車輪32及び脚部33を含むバッテリ3全体が、車両本体2の下部走行体21の上側に位置する。これにより、上部旋回体22が下部走行体21に対して旋回しても、バッテリ3の車輪32及び脚部33が下部走行体21に干渉することを確実に防止できる。
【0033】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0034】
本発明において、バッテリ取付部25は、上部旋回体22の任意の位置に設けられてよい。バッテリ取付部25は、カウンターウェイト26の下側ではなく、例えばカウンターウェイト26の後側に設けられてよい。また、バッテリ取付部25は、例えば上部旋回体22の下側に設けられてもよい。バッテリ取付部25が上部旋回体22の下側に設けられる場合、バッテリ取付部25は、例えば左右に並ぶ2つのクローラの間など下部走行体21と干渉しない位置に配置されるとよい。また、バッテリ取付部25は、例えば下部走行体21の前後左右に張り出さないように、下部走行体21の上側に設けられてもよい。
【0035】
本発明において、バッテリ3は、少なくともバッテリ本体31と、当該バッテリ本体31の下側に取り付けられた車輪32と、を備えていればよく、例えば脚部33を備えなくてもよい。
【0036】
本発明は、電動式のクローラクレーンに限らず、少なくとも建設現場や解体現場において自走可能な任意の電動式作業車両1に適用されてよい。すなわち、本発明は、例えば、クローラクレーンと同様に下部走行体21及び上部旋回体22を有する油圧ショベルなどに適用されてもよいし、上部旋回体22を備えない作業車両に適用されてよい。
【符号の説明】
【0037】
1 電動式作業車両
2 車両本体
3 バッテリ
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 作業装置
24 動力源
25 バッテリ取付部
26 カウンターウェイト
31 バッテリ本体
32 車輪
33 脚部
P1 離間位置
P2 近接位置
【要約】
【課題】電動式作業車両において、バッテリ交換のためのコストを削減でき、また、バッテリ交換時における安全性の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】電動式作業車両1は、電動式の動力源24を有する車両本体2と、車両本体2に着脱自在に取り付けられて動力源24に対する給電を行うバッテリ3と、を備える。バッテリ3は自走可能である。
【選択図】
図1