(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】冶金容器の吐出口における寸法を検出する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F27D 21/00 20060101AFI20240216BHJP
B22D 2/00 20060101ALI20240216BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20240216BHJP
B22D 11/16 20060101ALI20240216BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20240216BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20240216BHJP
G01F 1/74 20060101ALI20240216BHJP
G01N 27/74 20060101ALI20240216BHJP
G01V 3/10 20060101ALI20240216BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20240216BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F27D21/00 A
B22D2/00
B22D11/10 320A
B22D11/10 320D
B22D11/10 320E
B22D11/16 104E
B22D46/00
F27D3/14 B
G01F1/74
G01N27/74
G01V3/10 A
G01V3/10 E
H05B6/06 391
H05B6/06 393
H05B6/10 311
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181762
(22)【出願日】2022-11-14
(62)【分割の表示】P 2019528514の分割
【原出願日】2017-11-03
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/079100
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】314016535
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】マンハルト,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴコヴィッチ,ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】ガンヴェガー,クラウス
【審査官】櫻井 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-500646(JP,A)
【文献】特表2001-505487(JP,A)
【文献】特表2001-502607(JP,A)
【文献】特表2012-502247(JP,A)
【文献】特開昭50-056321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
B22D 2/00
B22D 11/10
B22D 11/16
B22D 46/00
F27D 3/14
G01F 1/74
G01N 27/74
G01V 3/10
H05B 6/06
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金容器の吐出口(5)における変数を検出ユニットにより検出するための方法であり、
前記吐出口(5)に接続する注湯チャネル(12)を形成する少なくとも1つの接続用耐火内部ケーシング(13)と、この接続用耐火内部ケーシング(13)が形成する前記注湯チャネル(12)を囲む少なくとも1つのコイル(6’、11’、13’、15)と、組み込み冷却システムから構成された取り外し可能な誘導加熱炉(14)を有し、
前記検出ユニットは、前記コイルと接続された供給ユニット(33a)と評価ユニット(33b)とを備え、前記方法は、
前記供給ユニット(33a)が所定周波数を有する交流電流を前記コイル内に発生させ、前記評価ユニット(33b)がパラメータの変化を決定し、
前記評価ユニット(33b)が、前記パラメータの変化から、インピーダンスまたは、インピーダンスと誘導電流を決定することであって、この決定によって、前記誘導加熱炉(14)の前記注湯チャネル(12)を囲む誘導コイル(15)を使用して、前記吐出口(5)における少なくとも1つの変数である
-溶融金属の吐出中のスラグ比率、
-前記注湯チャネル内の耐火要素の摩耗度、
-固化された溶融金属または固化された閉塞材の前記吐出口(5)内の量
の内の少なくとも1つの変数を測定することであって、前記閉塞材は前記吐出口(5)を外側から閉鎖する閉塞材であり、
該測定後、前記吐出口(5)のための閉鎖部材が起動され、
前記注湯チャネル内の金属の加熱、または前記注湯チャネルの取換えが行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記吐出口(5)における変数に関して様々な状態にある、注湯中又は注湯後の、前記インピーダンスの測定値又は前記誘導電流の測定値を、確認又は特定し、注湯前、注湯中又は注湯後の実際の測定値と比較する較正基準値として保存することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給ユニット(33a)によって前記コイルに発生させた電圧、電流及び周波数に基づいて、前記評価ユニット(33b)によって前記インピーダンスの変化を特定し、前記インピーダンスの複素抵抗(Z)、複素角度(φ)、及び/又は電流(I)を、前記評価ユニット(33b)によって特定することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの変数を監視するために、温度測定を、前記注湯チャネル(12)及び/又は前記誘導加熱炉(14)付近で更に行い、該測定値を、前記評価ユニット(33b)によって、前記変数を特定するために、参照し、又は目標値と比較し、差(deviation)がある場合には、前記吐出口(5)のための閉鎖部材を作動させ、前記注湯チャネルにおける前記金属を、加熱する、及び/又は前記注湯チャネルを、取換えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
冶金容器の吐出口(5)における変数を検出するための装置であって、この装置は、
冶金容器(1)の前記吐出口(5)に接続する注湯チャネル(12)を形成する少なくとも1つの接続用耐火内部ケーシング(13)を有するハウジング(9)と、
前記注湯チャネル(12)を開放または閉鎖するための耐火閉鎖板(6、8)を備える摺動閉鎖部(10)であって、前記吐出口(5)の端部に配設した摺動閉鎖部(10)と、
取外可能な誘導加熱炉(14)であって、該誘導加熱炉(14)は、前記ハウジング(9)の外側、又はその内部に、前記少なくとも1つの内部ケーシング(13)が形成する前記注湯チャネル(12)を少なくとも部分的に囲むように配設された誘導コイル(15)を含む少なくとも1つのコイルと、
該少なくとも一つのコイルを、導線を介して接続する、供給ユニット(33a)と評価ユニット(33b)と
を有し、前記誘導コイル(15)で前記注湯チャネル(12)内の金属を加熱し、前記吐出口(5)における少なくとも1つの変数であって
-溶融金属の吐出中のスラグ比率、
-前記注湯チャネル内の耐火要素の摩耗度、
-固化された溶融金属または固化された閉塞材の前記吐出口(5)内の量
の内の少なくとも1つの変数(ただし、前記閉塞材は前記吐出口(5)を外側から閉鎖する閉塞材である)を、前記評価ユニット(33b)によって検出又は測定することを特徴とする装置。
【請求項6】
前記誘導加熱炉(14)は、前記注湯チャネル(12)を囲む誘導コイル(15)と該誘導コイル(15)を包囲する冷却室(18、19)とを有することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記誘導コイル(15)を、フェライト材料製の支持体(17)に埋め込み、前記支持体(17)の周囲を取り囲む冷却室(18、19)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記支持体(17)を、該支持体を囲む前記冷却室(18、19)と共に、前記吐出口(5)に取付ける支持板(23)に取外可能に嵌合し、前記支持体(17)に対して内部ケーシング(13)を支持するスペーサリング(24)を、前記支持板(23)と前記摺動閉鎖部(10)との間に挿入することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記誘導加熱炉(14)の前記誘導コイル(15)を包囲する前記冷却室(18、19)に、給送及び戻り線(20、21)を有した冷却システム(16)を用いて冷却剤を給送することを特徴とする、請求項6~請求項8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記吐出口(5)における前記溶融物又はスラグの固化を、前記誘導コイルの前記冷却システム(16)で達成できることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記供給ユニット(33a)と評価ユニット(33b)の他に、発電機(27)及び変圧器(28)を、前記誘導コイル(15)に給電するために設けることを特徴とする、請求項5~請求項10の一項に記載の装置。
【請求項12】
注湯の終わりに前記吐出口(5)に到達する前記スラグを、前記誘導コイル(15)で検出でき、前記摺動閉鎖部(10)を、自動的に閉鎖できることを特徴とする、請求項5~請求項11の一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項5~請求項12の一項に記載の装置であって、
注湯チャネル(12)を形成する有孔レンガ(11)としての耐火要素、少なくとも1つの内部ケーシング(13)、該内部ケーシング(13)に設けられた環状挿入部(30)または摺動閉鎖部(10)の閉鎖板(6)に収容された、前記注湯チャンネル(12)を囲む少なくとも1つのコイル(6’、11’、13’、15)を有し、該少なくとも1つのコイルは1本の又は複数本の巻線から形成され、前記少なくとも1つのコイル内で交流電流を発生させる導線と接続できる
ことを特徴とする、装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのコイル(6’、11’、13’、15)を、前記注湯チャネル(12)と同軸に位置合せし、所定の測定条件を得るのに十分な数の巻線で構築することを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の冶金容器の吐出口における寸法を検出する
方法及び装置、及び請求項5に記載の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公開文献である特許文献1によると、溶融金属を収容するとりべからの溶融物流のスラ
グを早期に検出するための装置を開示しており、該装置では、コイルを設け、該コイルは
、とりべ出口の下で注湯用吐出口を囲む。この検出コイルは、電流を発生させ、該電流を
用いて、スラグによる流出金属溶融物の導電率の変化を、この検出コイルのインピーダン
スの対応する変化によって表し、評価手段によって測定する。そのために、信号増幅を伴
う回路を設け、該回路は、この検出コイル及び共振周波数を設定するための調整可能なコ
ンデンサを含み、それによりこのコンデンサの存在による回路の容量性反応で、回路の誘
導性反応を排除して、コイルの抵抗に応じてインピーダンスだけを残すようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基本的な目的は、冶金容器の吐出口における寸法を検出する方法を、金属溶融
物の鋳造で最適な利用可能となるように、また、全注湯工程中に、容器の完全な機能能力
を保証するように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、この目的を、請求項1及び請求項5の特徴に従い、達成する。
【0006】
本発明によるこの方法では、異なる変数を、吐出口にある少なくとも1つのコイルを用
いて、及び/又は吐出口における異なる変数の監視装置としての誘導加熱炉の誘導コイル
を用いて、検出又は測定し、該方法は、好適には、変数として、金属溶融物を注湯中のス
ラグ比率、注湯チャネルにおける耐火要素の摩耗程度、注湯チャネルにおける固化した金
属溶融物、流速及び/又は閉塞材を含む。その結果、吐出口用閉鎖部材を起動でき、注湯
チャネルにおける金属を加熱でき、及び/又は注湯チャネルを取換えできる。
【0007】
従って、簡単な方法で、容器からの金属溶融物の注湯中に最適な運転を、全注湯期間を
通して異常の発生を認識することによって、達成でき、その上、最後にスラグが注湯され
るのを、上手く防止できる。
【0008】
更に、注湯前若しくは後、又は溶解物が吐出口で固化した際に、どれくらいの固化した
溶解物又は閉塞材が、吐出口内に含まれるかを、極めて単純に確認(establish
)できる。
【0009】
同様に、吐出口を形成する耐火要素がどの程度まで摩耗しているか、及びどの時点で該
耐火要素を交換しなければならないかを検出及び特定できる。
【0010】
また、このように、吐出口の注湯チャネル内に溶融物を、溶融物の注湯前及び/又は中
に、固化を防止するために、或いは注湯チャネルで固化した可能性がある金属及び/又は
スラグを溶融できるように、十分な高温に常に保つこともできる。
【0011】
その結果、注湯前でも、適所に摺動閉鎖部がある状態で、注湯チャネル内で固化した溶
融物及び/又はスラグを、誘導コイルで溶融できる。従って、全注湯工程を、より確実に
実行でき、それにより、より制御可能に実行でき、加えて、吐出口の耐火材を、より長く
使用可能になる。よって、閉塞材の使用及び閉塞材の穿孔除去、又は固化した溶融物若し
くはスラグを従来のランスで溶融することを、回避できる。
【0012】
本発明では、誘導加熱炉を、吐出口を囲む誘導コイル及び組み込み冷却システムから構
成することを提案する。これにより、運転時に加熱される際に、誘導コイル又は該コイル
のフェライト支持体を、炉のレンガ又は外部被覆物及び摺動閉鎖部が加熱するのを防止す
る。
【0013】
誘導コイルの熱出力を、出来るだけ損失させずに注湯チャネルに集中させるために、本
発明は、誘導コイルを、フェライト材料の支持体に埋め込み、冷却システムは、支持体の
周囲を囲む冷却室と共に、炉に向かう支持体の側壁と隣接する冷却室を備える。
【0014】
誘導コイルの冷却システムの更なる利点として、閉鎖した摺動閉鎖部を有する炉の吐出
口又は出鋼孔における溶融物又はスラグの意図的な固化を可能にもする点がある。これを
、コイルを用いて、検出し、それに応じて示すことができる。例えば、これは、貫通破損
(breakthrough)に対する防御手段として機能して、2つの注湯工程間で、
確実に炉の安全な運転ができ、これは、例えば、吐出口が運転中に湯面より下に位置する
場合、特定の冶金炉で重要となり得る。
【0015】
内部ケーシングは、挿入部の領域に、硬層を備え、該硬層は、挿入部の内面を保護し、
例えば、粘土材料又は炭化ケイ素(SiC)からなる。このようにして、流出する溶融物
又はスラグ又は酸化気体、例えば、空気が、挿入部を攻撃するのを防ぐ。また、この保護
効果を、硬層を挿入部の域を超えて延在させることによって、内部ケーシング全体にまで
拡大してもよい。
【0016】
以下では、本発明について、例示的実施形態を用いて、図面を参照して、より詳細に説
明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による摺動閉鎖部、及び銅陽極炉の吐出口の部分断面図又は部分図である。
【
図2】横座標による金属溶融物のスラグに対する混合率の関数として、コイルにおけるインピーダンスの電流、複素抵抗、及び複素角度に関する標準化曲線のグラフである。
【
図3】装置と共に、本発明による銅陽極炉を、遠近法で示した図である。
【
図4】
図1による吐出口における誘導加熱炉の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、冶金炉、好適には銅陽極炉1の吐出口5を示しており、該冶金炉は、外部鋼鉄
被覆2及び耐火内張り3を含む。内張り3内に、この吐出口5を、径方向外方に向けて、
排出口12を有する有孔レンガと共に、形成する。
【0019】
摺動閉鎖部10を、排出口12の閉鎖システムを吐出口5に配設するような、従来の方
法で設計する。摺動閉鎖部10は、炉の外側に取り付けるハウジング9を備え、該ハウジ
ング9内に、少なくとも1枚の耐火閉鎖板6を挿入し、耐火閉鎖板6上に隣接する内部ケ
ーシング13を、着脱可能に取り付ける。この摺動閉鎖部10は、図示したように、移動
可能な耐火摺動板8を更に有し、該耐火摺動板8を、ユニット(詳述せず)内に保持し、
上側の閉鎖板6に押圧し、該閉鎖板6に対して、摺動閉鎖部の開位置又は閉位置に移動で
きる。
【0020】
吐出口5には、取外可能な誘導加熱炉14を配置し、該誘導加熱炉14は、ハウジング
9の上方で内部ケーシング13を囲む誘導コイル15を有する。有利には、ハウジング9
には、支持リング23が割当てられており、該支持リング23を、炉1の外部鋼鉄被覆2
内に取り付けた保持板2’内に固定する。
【0021】
銅陽極炉1の吐出口5における変数を検出する方法では、排出チャネル12を囲む少な
くとも1つのコイル、及び該コイルに導線によって接続する供給又は評価ユニットを用い
て、そうした変数を測定及び評価することを提供する。従って、所定周波数を有する交流
電流を、供給ユニットによって各コイル内で発生させ、吐出口5における変数に関するイ
ンピーダンスの変化、及び/又は誘導電流プロファイルを、この評価ユニットによって測
定する。
【0022】
本発明によると、有孔レンガ11内、内部ケーシング13内、環状挿入部30内、摺動
閉鎖部10の閉鎖板6内のような、注湯チャネル12を形成する耐火要素内に収容するこ
の少なくとも1つのコイル、及び/又は誘導加熱炉14の排出チャネル12を囲むこの誘
導コイル15を、使用し、該各コイルを用いて、少なくとも1つ、好適には、複数の変数
を、吐出口において、金属溶融物を注湯中のスラグ比率、注湯チャネルの摩耗程度、注湯
チャネルにおける固化した金属溶融物及び/又は閉塞材等を監視するために、検出又は測
定する。更に、この監視によって、流速を特定できるだけでなく、特に、流出溶融物にお
ける気泡としての気体の包含についても査定できる。
【0023】
評価に続いて、摺動閉鎖部10を作動でき、注湯チャネル12における金属の加熱、及
び/又はこの注湯チャネル12の取換えを、其々行うことができる。
【0024】
図1では、誘導コイル15に加えて、一例として、有孔レンガ11内のコイル11’、
内部ケーシング13内のコイル13’、及び閉鎖板6内のコイル6’を、この監視プロセ
スのために可能な配置の例として、示している。本発明による方法では、誘導コイル15
のみ、又は好適には、加えて、誘導コイル6’、11’、13’の中1つのみを其々、吐
出口5における異なる変数を検出するのに使用でき、該変数で、満足な結果を得られるこ
とは、自明である。ただし、誘導コイル15を、加熱にも使用できる。
【0025】
この各コイル6’、11’、13’を、
図3に示すように、外部の供給又は評価ユニッ
ト33と、誘導コイル15に対する導線26のように、導線34によって接続する。
【0026】
これらの導電性コイル6’、11’、13’は、其々、耐火部材6、11、13の通路
を、有利には、同軸で囲み、1本の又は好適には複数本の巻線から形成する。該コイルは
、耐火部材の外側を通る導線を備える。該コイルを、従って、適切な測定条件を得られる
十分な数の巻線で構築する。
【0027】
供給ユニットによってコイルで発生させる電圧、電流及び周波数に基づいて、インピー
ダンスの複素抵抗(Z)、複素角度(φ)、及び/又は電流(I)を求める。
【0028】
インピーダンス及び/又は誘導電流プロファイルに関する測定条件を、吐出口5におけ
る、溶融物中のスラグの比率又は摩耗に関する、様々な条件下で注湯前に、中に及び/又
は後に特定し、較正基準値として保存し、該較正基準値を、注湯中及び/又は後の実際の
測定値と比較し、重大さを、そうした値から導出する。
【0029】
また、インピーダンスの測定状態も、吐出口の新たな条件下で注湯前、注湯中及び/又
は注湯後に、及び吐出口のこの新たな条件下で金属だけの又はスラグだけの注湯中に特定
でき、実際の値を、この初期条件で、比較及び評価する。
【0030】
図2は、溶融物のスラグに対する混合率mの関数として、コイルのインピーダンスの電
流[I]、複素抵抗[Z]及び複素角度[φ]に関する、絶対数ではない、標準化曲線で
グラフを示している。混合率mを、横座標に、0~100%の金属(銅)の比率を0~1
で、縦座標には、標準化した又は比率の値を、-1~+1で、示している。
【0031】
複素抵抗[Z]は、50Hzのコイルにおける交流電流の曲線35に従い、金属の割合
(metal fraction)が減少するのに略比例して、増大するのが分かる。電
流[I]の曲線36及び複素角度[φ]の曲線37は、ゼロ線に対して略対称的に走り、
これらは、金属の比率が減少するのに従い変化し、初めは、極めて接近し、約80%以上
の金属割合で、曲線は、相対的により小幅な減少へと移り、ゼロに向かう。これは、流出
する金属溶融物におけるスラグの比率を、インピーダンスから正確に特定できることを裏
付けている。
【0032】
本発明の範囲内で、少なくとも1つ、好適には様々な変数を監視するために、温度測定
も、排出口12の領域、及び/又は誘導加熱炉14で行う。便宜上、少なくとも1個のセ
ンサを、上記領域に設置し、導線を介して、評価ユニットに接続し、変数の特定に、又は
基準値との比較に使用し、適当な差(deviation)が存在する場合、吐出口用閉
鎖部材を作動でき、排出チャネルにある金属を加熱でき、及び/又は排出チャネルの取換
えを開始できる。また、こうした吐出口5における温度に対する注目も、調整でき、又は
インピーダンスの特定と比較でき、それにより補償を、測定値における誤差に対して行う
ことができる。
【0033】
吐出口の排出チャネル12における誘導コイル15の加熱効果を最適化するために、好
適にはグラファイト製又はグラファイトを含有する材料製の環状挿入部30を、誘導コイ
ル15の領域にある内部ケーシング13に設ける。有利には、挿入部30は、絶縁層を裏
側又は両正面側に備える。
【0034】
内部ケーシング13は、好適には粘土アルミナ(Al2O3)又は炭化ケイ素(SiC)
からなる硬層31を、挿入部30の領域に備え、該硬層31を用いて、挿入部の内面を、
流出する溶融物又はスラグ又は酸化気体、例えば空気等に対して保護する。硬層31を、
任意には、環状挿入部30を超えて延在させてもよい。嵌合を容易にするために、内部ケ
ーシング13を、ハウジング9の及びスペーサリング24の中心に配置し、外側から有孔
レンガ11に挿入する。
【0035】
図3は、銅陽極炉1を、該炉の吐出口に摺動閉鎖部10を嵌合させた状態で、示してお
り、該炉は、鋼鉄被覆2及び充填口4を有する炉ドラムを含む。特別な処理によって炉で
精錬した銅溶融物を、次に、炉ドラムの周面上にある吐出口に嵌合する摺動閉鎖部10を
通して注湯する。
【0036】
銅陽極炉1では、線25を介して外部発電機27、及び該発電機27に接続する変圧器
28を、好適には、誘導加熱炉14を運転するために吐出口に設ける。加えて、変圧器2
8から誘導コイル15に繋がるこの電力供給線26だけでなく、冷却線も、設ける。また
、発電機及び変圧器を、一体に形成して、炉に取着できる、又は炉から分離して配置でき
る。
【0037】
更に、前述したように、各コイル6’、11’、13’を、導線34によって外部供給
又は評価ユニット33に接続し、該ユニット33によって、この検出を、本発明に従い、
行う。また、コイル用供給ユニットを、発電機27に統合することも可能である。
【0038】
冷却ユニット29と、給送及び戻り線20、21とを有する冷却システム16を用いて
、冷却剤を、誘導コイル15及び誘導加熱炉14の冷却室18、19に搬送する一方、他
方で、十分な冷却能力を有する発電機27及び変圧器28に搬送する。
【0039】
また、本発明は、吐出口が、該吐出口の端部に配設した摺動閉鎖部を備える、全ての冶
金炉において、基本的に使用できる。
【0040】
本発明による誘導加熱炉14を、摺動閉鎖部の作動装置と協働して、手動で又は自動で
起動させる。炉の種類又は構造によって、吐出口長に亘り分散した多数の誘導コイルを含
むことができる。
【0041】
図4から明白なように、誘導コイル15を、フェライト材料製の支持体17に埋め込む
。支持体17を、該支持体17を囲む冷却室18、19と共に、支持板23に嵌合する。
更に、誘導加熱炉14を、有利には、後壁及び側壁で絶縁層で包囲する。加えて、好適に
は銅材料製のスペーサリング24を、この支持体17と摺動閉鎖部10との間に挿入する
。このスペーサリング24は、加えて、吐出口5において内部ケーシング13を中心に配
置するのに役立つ。ただし、2個の別々のリングを、設けてもよい。また、誘導コイル1
5用の電力供給線及び冷却線等の、少なくとも1本の線26を受容するための溝等を有す
る長手方向に走る線を、支持リング23、保持板2’とハウジング9との間に、設ける。
【0042】
ハウジング9を、支持リング23又は保持板2’に取り付け、別個に嵌合でき、支持体
17、誘導コイル15及び冷却室18、19を有する誘導加熱炉14から、纏めて、及び
内部ケーシング13と共に取外しできる。
【0043】
また、銅陽極炉の代わりに、例えば、有孔レンガ無しに数本の並置したパイプから構築
した出鋼孔を有する銅転炉、自溶製錬炉、電気溶融炉、又は同様の冶金容器のような、摺
動閉鎖部、又は類似の閉鎖装置を有する他の容器も提供できるであろう。
【0044】
指定した変数を検出するための発明による方法は、銅転炉の出口として設けた吐出口に
有利に適合する。少なくとも1つのコイルを、複数の並置したパイプ(出鋼口レンガ(t
apping brick))の1本に、又は該パイプを囲む耐火要素としての中間スリ
ーブに埋め込む。特定をインピーダンスによって行う場合、特に、耐火要素の摩耗程度を
確認でき、出口における固化した金属溶融物及び/又は閉塞材及びそれらの状態を、単純
な方法で確認でき、必要に応じて、測定を直ぐに行い、まず、摩耗した状態の耐火部材を
交換し、次に、耐火部材の摩滅による、転炉における貫通破損の危険性を防止することが
できる。
【0045】
本発明の範囲内で、別の閉鎖部材、例えば、差込閉鎖部(plug closure)
を、摺動閉鎖部の代わりに、使用でき、該別の閉鎖部材を用いて、吐出口を、既知の方法
で、容器の内側から、又は外側から、開閉できる。また、閉塞材を、外側から既知の方法
で出口を閉鎖するための閉鎖部材として使用できる。例えば、酸化アルミニウムを含有し
、変形可能なものが挙げられる。
【0046】
例えば、タンディッシュを有する自走ノズルといった、閉鎖部材が無い出口では、コイ
ルを耐火部材に埋め込むこともでき、本発明による方法を用いて、出口を形成する耐火部
材の少なくとも摩耗状態を、特定できる。