(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】LEDアレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20240216BHJP
H01L 33/10 20100101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/10
(21)【出願番号】P 2022503482
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069917
(87)【国際公開番号】W WO2021013642
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】523259282
【氏名又は名称】スナップ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,タオ
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-035936(JP,A)
【文献】国際公開第2019/063957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)アレイを製造する方法であって、半導体材料の複数の層を形成するステップと、前記複数の層を覆う誘電マスク層を形成するステップであって、前記誘電マスク層は、
前記誘電マスク層を貫通する孔のアレイを有し、各孔は、半導体材料の前記
複数の層のうちの1つの
層の区域
を露出させる
、ステップと、前記孔の各々の中で、ある波長の範囲にわたって光を発光するように配置構成されるLED構造を成長させるステップと、を含み、前記複数の層のうちの少なくとも一部は、前記波長の範囲の少なくとも一部の光を反射させるように配置構成される分布ブラッグ反射器(DBR)を形成
し、
前記半導体材料の前記複数の層のうち、前記DBRを形成する層の上に形成された上側半導体層の各区域が露出され、
前記LED構造は、露出された前記上側半導体層の前記各区域の上で成長される、方法。
【請求項2】
前記複数の層のうちの少なくとも
前記上側半導体層は、前記LED構造のうちの少なくとも一部をともに接続する電気的コンタクトを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気的コンタクトは、前記DBRと前記誘電層との間に形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気的コンタクトは、ドープされた半導体材料により形成される、請求項
2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記DBRを形成するステップは、少なくとも2つの対の層を形成するステップであって、各々の対は、第1の材料の第1の層と、第2の材料の第2の層とを含む
、ステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各々の対の層のうちの一方は、ドープされた半導体材料により形成され、前記ドープされた半導体材料の多孔性を増大するために電気化学的にエッチングされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各々の対の層のうちの他方は、アンドープ半導体材料により形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の半導体層と、前記半導体層の上方に広がり、LED構造のアレイを有する、誘電層とを含むLEDアレイであって、前記LED構造は、前記誘電層を貫通して延び、ある波長の範囲にわたって光を発光するように配置構成され、前記複数の層のうちの少なくとも一部は、前記波長の範囲の少なくとも一部の光を反射させるように配置構成される分布ブラッグ反射器(DBR)を形成
し、
前記誘電層は、前記誘電層を貫通する孔のアレイを有し、各孔は、前記複数の半導体層のうちの1つの層の区域を露出させ、
前記複数の半導体層のうち、前記DBRを形成する半導体層の上に形成された上側半導体層の各区域が露出され、
前記LED構造は、前記孔の各々の中において、露出された前記上側半導体層の前記各区域の上に形成される、LEDアレイ。
【請求項9】
前記複数の層のうちの少なくとも
前記上側半導体層は、前記LED構造のうちの少なくとも一部をともに接続する電気的コンタクト層を形成する、請求項8に記載のLEDアレイ。
【請求項10】
前記電気的コンタクト層は、前記DBRと前記誘電層との間にある、請求項9に記載のLEDアレイ。
【請求項11】
前記コンタクト層の上に形成される電極をさらに含む、請求項9または10に記載のLEDアレイ。
【請求項12】
前記電気的コンタクトは、ドープされた半導体材料を含む、請求項
9から11のいずれか一項に記載のLEDアレイ。
【請求項13】
前記DBRは、少なくとも2つの対の層を含み、各々の対は、第1の材料の第1の層と、第2の材料の第2の層とを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のLEDアレイ。
【請求項14】
各々の対の層のうちの一方は、ドープされた半導体材料であって、前記ドープされた半導体材料の多孔性を増大するために電気化学的にエッチングされた、ドープされた半導体材料から形成される、請求項13に記載のLEDアレイ。
【請求項15】
各々の対の層のうちの他方は、アンドープ半導体材料により形成される、請求項14に記載のLEDアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)アレイと、LEDアレイを製造する方法とに関係する。特に、ただし排他的にではなく、本発明は、マイクロメートルスケールでのLEDのアレイに関係する。
【背景技術】
【0002】
マイクロメートルスケールでのIII族窒化物発光ダイオード(LED)、すなわち、マイクロサイズのLED(μLED)、新世代ディスプレイおよび可視光通信(VLC)用途に対する主たる構成要素を開発することに関する著しく増大しつつある要望が存する。III窒化物μLEDは、有機発光ダイオード(OLED)および液晶ディスプレイ(LCD)と比較して、ディスプレイ用途に対するいくつかの特有の特徴を呈する。LCDとは違い、μLEDが主要な構成要素であるIII窒化物マイクロディスプレイは、自発光である。μLEDを使用するモノクロディスプレイは、高解像度、高効率、および高コントラスト比を呈する。OLEDは、典型的には、妥当な寿命を維持するために、半導体LEDより数桁低い電流密度において動作させられる。結果として、OLEDのルミナンスは、非常に低く、フルカラーディスプレイの場合に典型的には3000cd/m2であり、一方で、III窒化物μLEDは、105cd/m2より上の高いルミナンスを呈する。当然ながら、III窒化物μLEDは、本質的に、OLEDとの比較において、長い動作寿命、および化学的堅牢性を呈する。それゆえに、III窒化物μLEDは、潜在的可能性として、スマートフォンなどの、近い将来の広い範囲の用途における高解像度および高輝度ディスプレイに対して、LCDおよびOLEDに取って代わることができることが期待される。ディスプレイ用途に加えて、μLEDは、広域LEDと比較して、低減された寸法の結果として、有意に低減された接合容量を呈し、かくして、潜在的可能性として、VLC用途におけるGHz変調帯域幅による高速伝送につながる。現在、III窒化物μLEDは、300μm×300μm、または、より一層大きい寸法の典型的なデバイス面積を伴う従来の広域LEDの製作と同様である、標準的なIII窒化物LEDウエハ上での、標準的なフォトリソグラフィ法、および、後続のドライエッチングプロセスを組み合わせることの手段により専ら製作される。広域LEDとμLEDとの間のデバイス製作における唯一の主要な違いは、デバイス寸法に起因する。典型的には、μLEDの直径は、50μmから数マイクロメートルに至る範囲に及ぶ。現在の技術が、例えば、Z.Y.Fan、J.Y.Lin、およびH.X.Jiang、J.Phys.D:Appl.Phys.41、094001(2008);H.X.JiangおよびJ.Y.Lin、Optical Express 21、A476(2013);ならびに、J.Day、J.Li、D.Y.C.Lie、C.Bradford、J.Y.Lin、およびH.X.Jiang、Appl.Phys.Lett.99、031116(2011)において説明される。
【0003】
現在、いわゆるクロストークに起因する、VLC用途に対して現在のμLEDを使用することにおける大きな難題が存在する。単一のμLEDが点灯するとき、近接するμLEDおよび領域は、同時に点灯するように見え、クロストークを発生させる。実例として、送信器としてマイクロ画素化μLEDアレイを使用する多チャネルVLCシステムの場合、信号が単一のμLEDから光学チャネルに沿って送出されるとき、近接するチャネルは、光学クロストークに起因して、同じ信号を搬送していることがある。クロストークの発生の機構は複雑であり、今なおそれほど明らかではない。一般的に言えば、2つの主要な機構が、H-Y Lin、C-W Sher、D-H Hsieh、X-Y Chen、H-M Philip Chen、T-M Chen、K-M Lau、C-H Chen、C-C Lin、およびH-C Kuo、Photonics Research 5、411(2017);ならびに、K.H.Li、Y.F.Cheung、W.S.Cheung、およびH.W.Choi、Appl.Phys.Lett.107、171103(2015)において説明されるように、このクロストーク問題点の原因であると受け入れられている。第1に、μLEDの発光機構は、自発発光プロセスに起因し、そのことは、μLEDから発出する光がすべての方向にわたって分散されることを意味する。μLED(すなわち、画素)のピッチは、典型的には、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの範囲に及ぶスケールである。結果として、1つのμLEDの側壁から発出する光は、近接するμLEDからの光との相互作用を有し、そのことが、干渉、および次いでクロストークにつながることが予測される。第2に、アレイ構成内のすべてのμLEDの側壁が不透明なコーティングによって十分に覆われるとしても、そのことは、μLEDの側壁から発出する光が完全に抑えられるはずであることを意味するが、クロストークの問題点は依然として存在する。このことは、1つのμLEDから発出する光が近接するμLEDに達することができる別のチャネルが存することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
III窒化物LEDは、典型的には、サファイア上で成長させられる。GaNの屈折率は、1より大きい(空気の屈折率は1である)が、サファイアの屈折率より小さく、当然のこととして、そのことが、空気とサファイアとの間に挟まれるGaN層内の導波路を形成する。全内部反射(TIR)効果に起因して、発光の小さい何分の1か(約6%)のみが、GaN表面から空気内へと上面の方に抽出され得、一方で、残りの発光の大半の部分(約66%)は、TIRによりGaN層内でトラップされる。このことは、スネルの法則により決定される。μLEDアレイに対しては、発光の小さい何分の1かのみが、上面表面から抽出された様態になり、スネルの法則により決定される制限された立体角を伴う発光円錐内へと発散し、一方で、活性領域よりも下では、活性領域から下向きに発出する発光の大半の一部分が、TIRに起因して、活性領域の下のGaN層の中で閉じ込められることになる。すべてのμLEDからのこれらの閉じ込められる発光は、かくして、導波路の役目をするGaNの中で(潜在的可能性としては、サファイアの中でも)チャネルをつくることになる。それゆえに、すべてのμLEDからの発光は、GaN導波路によって相互作用または干渉を形成することになる。これは、μLEDからの発光の大半の部分に対応し、かくして、クロストーク問題点では支配的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発光ダイオード(LED)アレイを製造する方法であって、半導体材料の複数の層を形成するステップと、複数の層を覆う誘電マスク層を形成するステップであって、誘電マスク層は、半導体材料の層のうちの1つの区域を各々が露出させる、その誘電マスク層を貫通する孔のアレイを有する、形成するステップと、孔の各々の中で、ある波長の範囲にわたって光を発光するように配置構成されるLED構造を成長させるステップと、を含み、複数の層のうちの少なくとも一部は、前記波長の範囲の少なくとも一部の光を反射させるように配置構成される分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する、方法を提供する。
【0006】
前記複数の層のうちの少なくとも1つは、LED構造のうちの少なくとも一部をともに接続する電気的コンタクトを形成し得る。電気的コンタクトは、DBRと誘電層との間に形成され得る。コンタクト層は、半導体層の上側層であり得る。電気的コンタクトは、nドープされたIII族窒化物材料、例えばn-GaNなどの、ドープされた半導体材料から形成され得る。
【0007】
DBRを形成するステップは、少なくとも5つの対の層、または好ましくは、少なくとも10個の対の層を形成するステップであって、各々の対は、第1の材料の第1の層と、第2の材料の第2の層とを含み、各々の対における2つの層は、異なる屈折率を呈する、形成するステップを含み得る。例えば、第1および第2の材料は、両方が、ただし、屈折率における差異につながる、異なるアルミニウム含有量などの、異なる組成の、III族窒化物材料を含み得る。
【0008】
各々の対の層のうちの一方は、多孔性に変わるように、本来の様態に向けて、電気化学的にエッチングされ、かくして、GaNの屈折率よりはるかに低い屈折率を呈し得る、n-GaNなどの、ドープされた半導体材料から形成され得る。各々の対の層のうちの他方は、電気化学エッチングプロセスの間は影響を及ぼされないままである、アンドープ半導体材料から形成され得る。
【0009】
LED構造は、半導体層の上側層の露出された区域上で成長させられ得る。成長は全体的に上向き方向となり、なぜならば、孔の誘電側壁からの成長は起こらないからである。孔の中でのLED構造の上向き成長は、それゆえに、層状LED構造を結果的に生じさせ得るものであり、層の各々は、全体的に平坦または平面的であり、実質的に一定の厚さである。
【0010】
半導体層は、例えばGaNなどのIII族窒化物の、または、サファイア、ケイ素(Si)炭化ケイ素(SiC)の、または、ガラスの基板上に形成され得る。
【0011】
孔の各々の中でLED構造を成長させるステップは、n型層を成長させるステップを含み得る。孔の各々の中でLED構造を成長させるステップは、孔の各々の中で予備層(prelayer)を成長させるステップを含み得る。孔の各々の中でLED構造を成長させるステップは、孔の各々の中で少なくとも1つの活性層を成長させるステップを含み得る。孔の各々の中でLED構造を成長させるステップは、孔の各々の中でp型層を成長させるステップを含み得る。少なくとも1つの活性層は、少なくとも1つの量子井戸層を含み得、多重量子井戸層を含み得る。これらは、例えば、InGaN、または、別の適したIII族窒化物材料から形成され得る。予備層は、例えば、低いインジウム含有量、および、<100nmの典型的な厚さを伴うInGaN層、または、低いインジウム含有量を伴うInGaN/GaN超格子(超格子の総合的な厚さは、典型的には300nmより下である)のいずれかであり得る。n型層およびp型層は、さらには、GaN、InGaN、またはAlGaNなどのIII族窒化物材料からなり得る。
【0012】
各々のLED構造は、孔のうちのそれぞれの1つの中で成長させられるので、各々のLED構造は、中でそのLED構造が成長させられる孔の断面積に等しい、同じ断面積をすべてが有する、複数の層から形成される。
【0013】
少なくとも1つの活性層は、誘電層の上面より下である上側表面を有し得る。1つの量子井戸層のみが存する場合、上側表面は、その量子井戸層の上側表面である。複数の量子井戸層が存する場合、上側表面は、最も上側の量子井戸層の上側表面である。上向き方向は、半導体層の、および/または、LED構造の成長の方向と定義され得る。
【0014】
誘電マスク層を形成するステップは、誘電材料の層を成長させるステップと、誘電材料の層内へと孔のアレイをエッチングするステップとを含み得る。代替的には、誘電層は、誘電層の成長の間に、例えば、マスクを使用して、後で孔を形成する区域の周囲で成長させられ得る。
【0015】
方法は、孔の各々の中でLED構造を成長させるステップの前に、半導体層の露出された区域の各々をエッチングするステップをさらに含み得る。
【0016】
コンタクト層は、ドープされ得る。例えば、そのコンタクト層は、n型またはp型III族窒化物材料の単一層を含み得る。代替的には、コンタクト層は、第1のサブレイヤ(sub-layer)と、第2のサブレイヤとを含み得、それらの第1のサブレイヤと第2のサブレイヤとの間のヘテロ界面が、ヘテロ界面において2次元電荷キャリアガスを形成するように配置構成される。サブレイヤは、バッファ層およびバリア層を形成し得る。2次元電荷キャリアガスは、例えば、2次元電子ガス(2DEG)であり得る。2次元正孔ガス(2DHG)が、さらには使用され得るが、典型的には、これらは、より低い電荷キャリア密度および/または移動度を有する。例えば、GaNの層、および、AlGaNもしくはInGaNの層、または、より一般的には、異なるAl含有量を伴うAlGaNの2つの層、もしくは、異なるIn含有量を伴うInGaNの2つの層を含むヘテロ構造が、2つの層の間の界面において2DEGを形成することができ、2DEG内の電子密度は、AlGaN層のAl含有量、または、InGaN層のIn含有量を含むいくつかの要因によって変動するということがよく知られている。他のIII族窒化物ヘテロ界面が、同じ効果を伴って使用され得る。
【0017】
本発明は、複数の半導体層と、半導体層を超えて広がり、LED構造のアレイを有する、誘電層とを含むLEDアレイであって、LED構造は、その誘電層を貫通して延び、ある波長の範囲にわたって光を発光するように配置構成され、複数の層のうちの少なくとも一部は、前記波長の範囲の少なくとも一部の光を反射させるように配置構成される分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する、LEDアレイをさらに提供する。
【0018】
電気的コンタクト層が、DBRと誘電層との間にあり得る。このことは、LEDに給電する電流がDBR構造を通って流れず、そのDBR構造は、それゆえに、電気的に伝導性であることを必要としないという利点を有する。
【0019】
LEDアレイは、コンタクト層上に形成される電極をさらに含み得る。
方法またはLEDアレイは、任意の作動可能な組み合わせで、付随する図面を参照して今から説明される本発明の好ましい実施形態の任意の1つまたは複数の特徴をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】
図1aは、本発明の第1の実施形態によるプロセスにおいて形成された、成長させられた状態の(as-grown)テンプレートを示す図である。
【
図1b】
図1bは、
図1aのテンプレートであって、マスキングパターンがそのテンプレートのマスク層内に形成された、
図1aのテンプレートを示す図である。
【
図1c】
図1cは、LEDアレイを形成するためにマイクロLEDがマスク層内の孔内で成長させられた、
図1aのテンプレートを示す図である。
【
図1d】
図1dは、
図1cのLEDアレイであって、電気的コンタクトがそのLEDアレイ上に形成された、
図1cのLEDアレイを示す図である。
【
図2】
図1dのLEDアレイのテンプレートのLED構造を通る断面の図である。
【
図3】
図1dのLEDアレイのDBR形成部分を通る概略断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1aを参照すると、III族窒化物、または、他の適した半導体、例えば、標準的なアンドープGaN(u-GaN)層の、下側半導体層100が、初期に基板102上で成長させられる。基板102は、GaN基板であり得、または、サファイア、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、もしくはガラスまでもなどの、任意の異種基板であり得る。下側半導体層100は、有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)もしくは分子ビームエピタキシャル(MBE)のいずれか、または、任意の他の適した成長法を使用する、任意の標準的なGaN成長方法の手段により成長させられ得る。複数のさらなる層101が、下側層100の上方で成長させられる。これらの層は、下記でより詳細に説明されることになるような、2つの異なる材料の交互の層が存する、分布ブラッグ反射器(DBR)を形成するように配置構成される。上側半導体層103が、DBR層101の上方で成長させられる。この層103は、LEDデバイスに対する電気的コンタクト層を形成するように配置構成され、例えばn型GaN(n-GaN)からなり得る。コンタクト層は、50nmから10μmの厚さを有し得る。二酸化ケイ素(SiO
2)もしくは窒化ケイ素(SiN)、または、任意の他の適した誘電材料などの誘電層104が、PECDV、または、任意の他の適した堆積法により、上側半導体層103上に堆積させられる。誘電層の厚さは、20nmから500μmの範囲内であり得る。
【0022】
図1bを参照すると、孔106のアレイが、次いで、誘電層104内に形成される。孔106は、典型的には、マイクロメートルスケールであり、それゆえに、マイクロ孔と呼称される。このことは、手段、フォトリソグラフィ法、および次いで、エッチングプロセス(ドライエッチングまたはウェットエッチングであり得る)により行われ得る。マイクロ孔106を形成することにおいて、誘電層104は、上側半導体層103の上側表面に至るまで、その誘電層104の厚さ全体を貫通してエッチングされる。孔106が丸みのあるものである場合、それらの孔は、1μmから500μmの直径を有し得、ピッチ距離、すなわち、近接するマイクロ孔の中心の間の距離は、例えば、5μmから500μmであり得る。マイクロ孔区域の中のみの、上側半導体層103のさらなるエッチングが、残った誘電層104をマスクとして使用して実行され得る。n-GaNエッチング深さは、n-GaN層厚さに依存して、ゼロ(GaNエッチングがないことを意味する)から10μmであり得る。典型的には、最適なエッチング方法または条件は、上側半導体層103に対しては、誘電層104に対してとは異なることになる。例えば、SF
6エッチング液は、誘電層104をエッチングするために使用され得るが、n-GaN層100はエッチングしないことになる。それゆえに、誘電層104を貫通する進路のすべてをエッチングし、上側半導体層103の上面表面において停止することが、達成するのに簡単である。このことは、さらには、孔106内で成長させられるLED構造の品質に対する利点を有する。
【0023】
孔106は、示される実施形態において、丸みのある断面であるが、他の断面、例えば卵形または正方形が使用され得る。
【0024】
次に、
図1cを参照すると、標準的なIII窒化物LED構造が、上側半導体層103の露出された区域上で成長させられる。しかしながら、上側半導体層103の離散的な区域のみが、誘電層またはマスク内のマイクロ孔106により露出されるので、LED構造は、マイクロ孔106の間の誘電層104の残っている部分により分離される、離散的なLED108のアレイとして形成される。LED構造108は、MOVPEもしくはMBE法のいずれか、または、任意の他の適した成長法により成長させられる。成長は、上側層103のGaN(または他の半導体)の露出された区域から上向きに起こり、孔106の側壁からは起こらない。それゆえに、層状LED構造が、孔106の各々の内側で築き上げられ得、層の各々は、実質的に平坦または平面的である。LED構造は、n-GaN層110と、InGaN予備層と、活性領域112と、ブロッキング層としての薄いp型AlGaN層(示されない)と、次いで、最終的なpドープされたGaN層114とを含み得る。活性領域112は、InGaNベースの多重量子井戸(MQW)を含み得る。予備層は、例えば、低いインジウム含有量、および、<100nmの典型的な厚さを伴うInGaN層、または、低いインジウム含有量を伴うInGaN/GaN超格子(超格子の総合的な厚さは、典型的には300nmより下である)のいずれかであり得る。LED構造の例が、
図2を参照して下記でより詳細に説明される。上記で述べられたように、誘電マスク104に起因して、LED構造は、μLEDアレイを形成して、
図1cにおいて示されるように、マイクロ孔106の中でのみ成長させられ得る。
【0025】
InGaN MQW112の最も上側の層は、誘電層104の上側表面より上で広がるべきでないことが重要であり、広がると、テンプレートが最終的なμLEDアレイとして製作された後に短絡効果を生じさせることがある。また、マイクロ孔区域の各々の中の過成長させられた状態の(overgrown)n-GaN110は、すべての個々のμLEDが、誘電マスク104の下方のエッチングされない部分の上側半導体層103によって互いに電気的に接続されるように、誘電マスク104の下方のテンプレートのエッチングされない部分の中の上側半導体層103に直接的に接触することも、重要である。
【0026】
図1dを参照すると、LEDアレイ構造が完成させられると、アレイに対する電気的コンタクトの形成を含む、さらなるデバイス製作が遂行される。例えば、上側コンタクト層116が、誘電マスク層104の上方に、および、個々のマイクロLEDデバイス108の上側p-GaN層の上方に形成され得る。上側コンタクト層116は、それゆえに、LEDデバイス108のすべてに対するpコンタクトを形成する。このpコンタクトは、LEDデバイス108のすべてに対する共通pコンタクトであり得、または、各々が、LEDデバイスのうちの1つもしくは複数のそれぞれの群と接触し、その各々上に形成される別個のコンタクトを有する、複数の別個の区域として形成され得る。このことは、LEDデバイス108が群をなしてスイッチングされることを、それゆえに、アドレス指定可能なアレイを形成することを可能とする。上側コンタクト層116は、ITOまたはNi/Au合金から形成され得る。アノード118が、次いで、pコンタクト層116上に形成され得る。例えば、誘電層104の一部分が、エッチングで除かれ得、次いで、エッチングされた誘電層セクション上のLED構造の一部分が、さらには、上側半導体層103に至るまでエッチングされ得、そのことが、n-GaN上側半導体層103の区域122を露出させ、カソード120が、n-GaNのその露出された区域122上に形成され得る。
【0027】
図1dにおいて示されるような仕上げられた構造において、光は、すべての方向でLED108の各々から発光されるが、DBRが、下向きに発光される光を反射させ、以て、上向きに発光される光の割合を大幅に増大することになる。一般的には、DBR構造は、典型的には90%より上の、非常に高い反射率を示す。それゆえに、そのDBR構造は、抽出効率を有意に高めることになり、そのことは、個々のマイクロLEDからの発光の大半の部分が、表面から抽出されることになり、一方で、マイクロLEDの側壁から発出する発光の一部分、および、活性領域の下の導波路としてのGaN内で閉じ込められる発光の一部分の両方が低減されることになり、または、理想的な事例においては、なくされることにさえなることを意味する。適正な設計(マイクロLEDの層厚さ、および、マイクロLEDのピッチを適正に設計することによるなど)によって、100%に近付く抽出効率が、フォトニック結晶効果(Photonic Crystals:Molding the Flow of Light(フォトニック結晶:光の流れを型にはめ込む)、J.D.Joannopoulos、R.D.Meade、J.N.Winn、S.G.Johnson著、Princeton University Press、1995を参照されたい)およびマイクロキャビティ効果に起因して得られ得る。クロストークは、それゆえに、有意に低減され、または、実質的になくされ得る。
【0028】
上記で説明された実施形態に対する様々な変形が可能であるということが認識されよう。例えば、1つの変形例においては、構造が反対にされ、p-GaN層が基板上で成長させられ、誘電層により覆われ、次いで、LEDデバイス108のp-GaN層が最初に形成され、多重量子井戸層、および次いで、n-GaN層が後に続く。nコンタクト層が、次いで、pコンタクト層に代わって誘電層の上面の上方に形成され、アノードおよびカソードの位置が逆にされる。
【0029】
図1aから
図1dの構成において、マイクロ孔106の中の過成長させられた状態のn-GaN110は、すべての個々のμLED108がn-GaN層103によって互いに電気的に接続されるように、誘電マスク104の下方のn-GaN上側半導体層103のエッチングされない部分のn-GaNと一致しなければならない。誘電マスク104の下方のエッチングされないn-GaN部分のn-GaNを、電気的に接続されるチャネルとして使用する代わりに、さらなる実施形態において、ヘテロ接合において2次元電子ガス(2DEG)を伴うIII族窒化物ヘテロ構造が、n-GaN層の代わりに、半導体層として使用される。この実施形態において、標準的なAlGaN/GaN HEMT構造が使用される。高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造のAlGaNバリアとGaNバッファとの間の界面において形成される、高いシートキャリード密度(sheet carried density)、および、高い電子移動度を伴う電子ガス(2DEG)が、電気的に接続されるチャネルとして使用される。
【0030】
そのようなデバイスを製造するために、標準的なAlGaN/GaN HEMT構造が、DBR層の上方で成長させられる。例えば、バッファ層を形成するGaN層が、DBR層の上方で成長させられ得、次いで、バリア層を形成するAlGaN層が、GaN層上で成長させられる。この構造は、本明細書において「成長させられた状態のHEMTテンプレート」と呼称される。引き続いて、例えば2nmから500μmの範囲内の厚さを伴う、SiO
2もしくはSiN、または、任意の他の誘電材料などの誘電層が、PECVD、または、任意の他の適した堆積法を使用することにより、成長させられた状態のHEMTテンプレート上に堆積させられる。結果的に生じる構造は、
図1aにおいて示される構造と同じであることになるが、上側半導体層103に代わってHEMT構造を伴う。そのことの後に、フォトリソグラフィ法、および次いで、エッチングプロセス(ドライエッチングまたはウェットエッチングであり得る)の手段により、誘電層は、誘電層内にマイクロ孔アレイを形成するために、HEMT構造の表面に至るまでエッチングされ、その場合、マイクロ孔直径は、1μmから500μmであり得、近接する孔中心の間のピッチ距離は、5μmから500μmの範囲内であり得る。マイクロ孔区域の中で、成長させられた状態のHEMTをさらにエッチングすることが、誘電層の残った領域をマスクとして使用して実行され得る。成長させられた状態のHEMTエッチング深さは、成長させられた状態のHEMTテンプレートのAlGaNバリア位置に依存して、ゼロ(エッチングが全くないことを意味する)から10μmであり得る。しかしながら、一般的には、エッチングは、LED構造の各々と2DEGとの間の良好な電気的接触を与えるように、少なくとも、成長させられた状態のHEMT構造の2つの層の間のヘテロ界面と同じほど遠方に、下向きに延びることになる。
【0031】
次に、標準的なIII窒化物LED構造が、例えば
図1cを参照して上記で説明されたように、MOVPEもしくはMBE法のいずれか、または、任意の他のエピタキシャル法により、マイクロ孔によって特徴付けられる、誘電マスクをパターニングされたHEMTテンプレート上で成長させられ、コンタクトが、例えば
図1dを参照して上記で説明されたように与えられる。
図1aから
図1dの実施形態と同様に、重要な点は、InGaN MQW212の上側表面は、最終的なμLEDアレイとして製作された後に、短絡効果を回避するように、誘電層204の上側表面より下であるべきであるということである。
【0032】
図2を参照すると、
図1aから
図1dのLEDアレイ内のLED構造は、任意の適した構造を有し得るが、1つの例において、それらのLED構造は、n-GaN層210と、n-GaN層210の上方に形成されるInGaN予備層216と、予備層216の上方に形成されるいくつかのInGaN量子井戸層212と、例えばp-AlGaNの、pドープされたブロッキング層218と、次いで、p-GaN層214とを含み得る。この構造は、いくつかの手立てで変動させられ得るということが認識されよう。上記で指摘されたように、量子井戸層212のうちの最も上側のものの上面は、誘電層の上面より下であることが好ましい。ブロッキング層218の上面は、さらに誘電層の上面より下であることが、さらには好ましい。
【0033】
図3を参照すると、上記で説明されたように、DBR層101は、LEDからの光が層101の間の界面において反射させられるように、異なる屈折率を有する2つの異なる材料の交互の層101a、101bを含む。DBRの原理はよく知られており、そのため、詳細には説明されないが、層101a、101bは、近似的に等しい厚さであり、この厚さは、反射させられる光の強め合う干渉および透過させられる光の弱め合う干渉を生み出すように反射される(DBR層の材料内での)光の波長のおよそ4分の1である。
【0034】
DBR構造101は、MOVPEもしくはMBE、または、任意の他の成長法により成長させられる、交互のAl(Ga)NおよびGaN層のいくつかの対を意味する、Al(Ga)N/GaNシステムに基づき得る。DBR構造は、代替的には、交互のGaNおよびナノ多孔性GaN層のいくつかの対を含み得る。この構造を生み出すために、交互のnドープされたGaNおよびアンドープGaN層のいくつかの対が、MOVPEもしくはMBE、または、任意の他の成長法により用意され得、標準的な電気化学(EC)エッチングが、次いで施される。ECエッチングの機構は、Y.Hou、Z.Ahmed Syed、L.Jiu、J.Bai、およびT.Wang、Appl.Phys.Lett.111、203901(2017)において説明されるような、アノードバイアスのもとでの酸性溶液内での、酸化プロセスおよび続く溶解プロセスの組み合わせに基づく。正アノードバイアスのもとで、注入電流は、伝導性であるnドープされたGaN部分を通って流れることになり、そのことは、nドープされたGaNの酸化につながり、酸化された層は、次いで、酸性電解液内で化学的に溶解させられ、そのことは、nドープされたGaNをナノ多孔性GaNへと変ずる。それゆえに、ECエッチングは、n型GaN上でのみ、そのn型GaNの良好な伝導性に起因して実行され得、一方で、伝導性でないアンドープGaNは、エッチングされないままである。
【0035】
図4を参照すると、DBRの反射率は、波長の関数であるが、典型的には、DBRは、波長の相対的に幅広い範囲、阻止帯域400を有するように配置構成され得、その阻止帯域にわたって、ほとんど全反射と言ってもよいものが達成される。Al(Ga)N/GaN DBR、または、GaNおよびナノ多孔性GaN DBRのいずれかに対して、阻止帯域が、赤外部から全部の可視部を通して紫外部までの、広いスペクトル範囲をカバーするように調節され得る。反射率は、さらには、DBRへの光の入射の角度の関数であるが、上記で説明されたLEDアレイにおいて、DBRの主となる機能は、下向きに発光された光を180°反射させて上向き方向に戻すことであり、そのため、DBRは、そのことを達成するように設計され得る。
【0036】
DBRの反射率は、層101a、101bの対の数とともに増大する。それゆえに、DBR構造は、少なくとも5つの対の層、および、より好ましくは、少なくとも10個の対の層を有し得る。
【0037】
LED108は、ある波長の範囲にわたって光を各々が発光することになる。波長のその範囲は、中でも、LED108の断面積を選択することにより選択され得る。例えば、上記で説明されたように成長させられるLEDは、それらのLEDの直径が約30μmである場合にスペクトルの赤部分において、それらのLEDの直径が約20μmである場合にスペクトルの緑部分において、および、それらのLEDの直径が約10μmである場合にスペクトルの青部分において、ピーク波長を有することが示されている。LEDすべてが、同じエレクトロルミネセンススペクトルを有する場合、DBRは、LEDのピーク波長の中心に定められる、または、少なくともそのピーク波長を含む、阻止帯域を有するように配置構成され得る。LEDが、異なるピーク波長を伴う、異なるエレクトロルミネセンススペクトルを有するように設計される場合、DBRは、異なるLEDに対する最も良好な総体的な反射率を与えるように最適化され得る。