(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】シングルサイト触媒によるマルチモーダルポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240216BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240216BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240216BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20240216BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08F4/6592
C08F210/16
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2022503785
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020069282
(87)【国際公開番号】W WO2021013552
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516071561
【氏名又は名称】アブ・ダビ・ポリマーズ・カンパニー・リミテッド・(ブルージュ)・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Abu Dhabi Polymers Co. Ltd (Borouge) L.L.C.
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】シング ラグヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アブ フォウル タリク ハシム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ パンカジ
(72)【発明者】
【氏名】バンディオパディヤイ プラティウシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディクシット ニラジ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-525546(JP,A)
【文献】国際公開第00/040620(WO,A1)
【文献】特開平01-271403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F、C08J5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂を含むポリエチレン組成物を含むフィルムであって、前記ベース樹脂は、
(A)第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)であって、前記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%の1-ブテン含有量、並びにISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される1.0~50.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR
2を有する第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)と、
(B)前記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分よりも高い1-ブテン含有量を有
し、ISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される0.05~1.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR
2
を有する第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)と
、
(C)15重量%までの、前記第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)とは異なるポリマーと、
からなり、
前記ベース樹脂は、シングルサイト触媒系の存在下で重合されたものであり、913.0~920.0kg/m
3の密度
、ISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される0.7~4.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR
2
及び前記ベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて8.0~13.0重量%の1-ブテン含有量を有し、
前記ベース樹脂中の前記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー(A)と前記第2のエチレン-1-ブテンコポリマー(B)との重量比が35:65~47:53であり、
前記ベース樹脂は、1-ヘキセンを含有しないポリエチレン組成物を含む、フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される、0.7~4.0g/10分のメルトフローレートMFR
2を有する請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って190℃の温度及び21.6kgの荷重において決定される、15~50g/10分のメルトフローレートMFR
21、及び/又は10~30の、メルトフローレートの比MFR
21/MFR
2であるフローレート比FRR
21/2を有する請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレン組成物は、3~8の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnである多分散性指数PDIを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ベース樹脂が、15重量%までの低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
ISO 6383-2:1983に従って厚さ40μmのインフレーションフィルムに対して決定される、少なくとも0.6Nの縦方向の引裂強度TS-MD(N)、及び/又は少なくとも5.0Nの横方向の引裂強度TS-TD(N)を有する請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
厚さ40μmのインフレーションフィルムに対して決定される、90~100℃のシール開始温度SITを有する請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
BICM90720に従って厚さ40μmのインフレーションフィルムに対して決定される、88~97℃のホットタック温度を有する請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項9】
ASTM D1003に従って厚さ40μmのインフレーションフィルムに対して決定される、14.0%以下のヘイズを有する請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】
厚さ40μmのインフレーションフィルムの内面でISO 2813に従って決定される、少なくとも92.0%の光沢度を有する請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項11】
フィルムの製造のための請求項1から請求項
5のいずれか1項で定義したポリエチレン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる1-ブテン含有量を有する、シングルサイト触媒による2つのエチレン-1-ブテンコポリマー画分を含むポリエチレン組成物、このポリエチレン組成物を調製するためのプロセス、上記ポリエチレン組成物を含む物品、及び物品の製造のための上記ポリエチレン組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム用途等の軟包装用途には、通常、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒の存在下で製造されたポリエチレン樹脂が使用される。シングルサイト触媒によるポリエチレン樹脂は、光学特性及び機械的特性に関して独特の特性を示し、とりわけフィルム用途に適している。
例えば、ユニモーダル(単峰性)ポリエチレン樹脂は、ヘイズが低い等の優れた特性を持っているが、溶融加工性がやや悪く、これが最終製品の品質問題の原因となることがある。
2種以上の異なるポリマー成分を含むマルチモーダルポリエチレン樹脂は、加工性ではより優れているが、マルチモーダルポリエチレンの溶融均質化には問題があり、例えば、最終製品のゲル含有量が高いことによって表されるような、不均質な最終製品が生じる可能性がある。
国際公開第00/40620号パンフレットは、シングルサイト触媒の存在下でポリエチレン組成物を製造するためのプロセスを開示する。国際公開第99/35652号パンフレットは、エチレン及び少なくとも1種の他のα-オレフィンの配位触媒重合によって得られる架橋性マルチモーダルエチレンコポリマーを含む絶縁組成物に関する。欧州特許出願公開第3331950号明細書は、直鎖状低密度ポリエチレンを含むマトリクスを含む、相溶性のある不均一ポリアミド-ポリエチレンブレンドに関する。
国際公開第2016/083208号パンフレットは、1-ブテン及び1-ヘキセン等の少なくとも2種の異なるコモノマーを有するマルチモーダルポリエチレン組成物であって、加工性、機械的特性、シール性及び光学特性に関して優れた特性のバランスを示す組成物を開示する。
【0003】
本発明では、驚くべきことに、国際公開第2016/083208号パンフレットの少なくとも2種の異なるコモノマーを有するマルチモーダルポリエチレン組成物の場合と同等の特性のバランスが、1-ブテン含有量及びそのメルトフローレートが異なる、シングルサイト触媒系の存在下で重合された2種のエチレン-1-ブテンコポリマーを含むポリエチレン組成物によって得ることができるということが見出された。
通常、1-ブテンのみをコモノマーとするポリエチレン組成物は、さらに1-ヘキセンコモノマーを有するポリエチレン組成物に比べて、とりわけ引裂強度及び衝撃特性等の機械的特性が劣る。加えて、1-ブテンのみをコモノマーとするポリエチレン組成物は、さらに1-ヘキセンコモノマーを含むポリエチレン組成物と比較して、光学特性や熱シール(熱融着)性に劣る。
【0004】
本発明では、驚くべきことに、2種のエチレン-1-ブテンコポリマーの1-ブテン含有量及びメルトフローレートを注意深く調整することにより、1-ブテン及び1-ヘキセン等の少なくとも2種の異なるコモノマーを有するポリエチレン組成物に匹敵する、加工性、機械的特性、シール性及び光学特性に関して改善された特性のバランスを有するポリエチレン組成物が得られることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第00/40620号パンフレット
【文献】国際公開第99/35652号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第3331950号明細書
【文献】国際公開第2016/083208号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベース樹脂を含むポリエチレン組成物であって、このベース樹脂は、
(A)第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)であって、この第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%の1-ブテン含有量、並びにISO 1133に従って、190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される1.0~50.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR2を有する第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)と、
(B)上記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分よりも高い1-ブテン含有量を有する第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)と
を含み、
上記ベース樹脂は、シングルサイト触媒系の存在下で重合されたものであり、913.0~920.0kg/m3の密度及び上記ベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて8.0~13.0重量%の1-ブテン含有量を有するポリエチレン組成物に関する。
【0007】
本発明はさらに、これまでに又は以降に規定されるポリエチレン組成物の調製方法であって、
a)第1の重合反応器において、シングルサイト触媒系の存在下でエチレン及び1-ブテンモノマーを重合して、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び上記シングルサイト触媒を含む第1の重合混合物を形成する工程であって、この第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、その第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%の1-ブテン含有量、並びにISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される1.0~50.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR2を有する工程と、
b)上記第1の重合混合物を上記第1の重合反応器から第2の重合反応器へ移す工程と、
c)上記第2の重合反応器において、シングルサイト触媒の存在下でエチレン及び1-ブテンモノマーを重合して、上記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)を含む第2の重合混合物を形成する工程と、
d)上記第2の反応器から上記第2の重合混合物を回収する工程と、
e)ベース樹脂を形成する工程であって、このベース樹脂は、913.0~920.0kg/m3の密度及びベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて8.0~13.0重量%の1-ブテン含有量を有する工程と、
f)上記ポリエチレン組成物を調製する工程と
を含む方法に関する。
【0008】
なおさらに、本発明は、これまでに又は以降に規定されるポリエチレン組成物を含む物品に関する。
【0009】
加えて、本発明は、物品の製造のための、これまでに又は以降に規定されるポリエチレン組成物の使用に関する。
【0010】
定義
本発明に係るポリエチレン組成物は、50mol%(モル%)を超えるエチレンモノマー単位及び任意に追加のコモノマー単位から誘導されるポリマーを表す。
【0011】
用語「コポリマー」は、エチレンモノマー単位及び0.05mol%を超える量の追加のコモノマー単位から誘導されるポリマーを表す。
【0012】
重量平均分子量又はコモノマー含有量等の少なくとも1つの特性が互いに異なる2つ以上の画分を含むポリエチレン組成物又はベース樹脂は「マルチモーダル(多峰性)」と呼ばれる。マルチモーダルのポリエチレン組成物又はベース樹脂が2つの異なる画分を含む場合、それは「バイモーダル(二峰性)」と呼ばれ、それに対応して3つの異なる画分を含む場合、それは「トリモーダル(三峰性)」と呼ばれる。このようなマルチモーダルのポリエチレン組成物又はベース樹脂の分子量分布曲線の形態、すなわち、その分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観は、モダリティー(様相)に応じて2つ以上の極大値を示すか、又は少なくとも個々の画分の曲線と比較してはっきりと幅が広がる。
本発明では、2種のエチレン-1-ブテンコポリマー画分は、それらのメルトフローレートMFR2にあることができるそれらの分子量だけでなく、それらの1-ブテン含有量においても異なる。
用語「ベース樹脂」は、当該ポリエチレン組成物の中に存在してもよい、ポリオレフィンとともに利用するための通常の添加剤、例えば安定剤(例えば酸化防止剤)、制酸剤及び/又は抗紫外線剤を除く、ポリエチレン組成物のポリマー部分を表す。好ましくは、これらの添加剤の合計量は、組成物の1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.25重量%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ベース樹脂
本発明に係るベース樹脂は、2種のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)を含む。
【0014】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、その第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%、好ましくは0.6重量%~5.0重量%、さらにより好ましくは0.7重量%~3.5重量%、最も好ましくは0.8重量%~3.0重量%の1-ブテン含有量を有する。
【0015】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、好ましくは915kg/m3~955kg/m3、より好ましくは925kg/m3~950kg/m3、最も好ましくは935kg/m3~945kg/m3の密度を有する。
【0016】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、好ましくは、エチレン及び1-ブテンのモノマー単位からなる。
【0017】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、1.0g/10分~50.0g/10分未満、好ましくは2.0g/10分~45.0g/10分、さらにより好ましくは3.0g/10分~30.0g/10分、さらにより好ましくは3.5g/10分~20.0g/10分、最も好ましくは4.0g/10分~10.0g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。
【0018】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)が、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)よりも高いメルトフローレートMFR2を有することが好ましい。第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)が、当該ポリエチレン組成物よりも高いメルトフローレートMFR2を有することがさらに好ましい。
【0019】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、好ましくは60g/10分~150g/10分未満、好ましくは65g/10分~140g/10分、さらにより好ましくは75g/10分~130g/10分、最も好ましくは85g/10分~120g/10分のメルトフローレートMFR21を有する。
【0020】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)が、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)よりも高いメルトフローレートMFR21を有することが好ましい。第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)が、当該ポリエチレン組成物よりも高いメルトフローレートMFR21を有することがさらに好ましい。
【0021】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の高いMFR2及び/又はMFR21の値は、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)及び/又は当該ポリエチレン組成物と比較して、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の低い分子量、例えば低い重量平均分子量Mwを示す。
【0022】
好ましくは、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、10~25、より好ましくは12~22、最も好ましくは15~20の、メルトフローレートの比MFR21/MFR2であるフローレート比を有する。
【0023】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、ベース樹脂の総重量に基づいて、好ましくは30~47重量%、より好ましくは32~46重量%、最も好ましくは35~45重量%の量でベース樹脂中に存在する。
【0024】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、通常、2つ以上の重合段階を順に重ねる多段重合プロセスにおいて、第1のポリマー画分として重合される。その結果、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の特性は、直接測定することができる。
【0025】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、その第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、好ましくは10.0重量%~25.0重量%、より好ましくは12.5重量%~22.0重量%、さらにより好ましくは15.0重量%~20.0重量%、最も好ましくは16.0重量%~18.5重量%の1-ブテン含有量を有する。
【0026】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、好ましくは870kg/m3~912kg/m3、より好ましくは880kg/m3~910kg/m3、最も好ましくは890kg/m3~905kg/m3の密度を有する。
【0027】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、好ましくは、エチレン及び1-ブテンのモノマー単位からなる。
【0028】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、ISO 1133に従って測定される、好ましくは0.05g/10分~1.0g/10分未満、より好ましくは0.1g/10分~0.8g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分~0.7g/10分、最も好ましくは0.3g/10分~0.6g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。
【0029】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)が、当該ポリエチレン組成物よりも低いメルトフローレートMFR2を有することがさらに好ましい。
【0030】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の低いMFR2及び/又はMFR21の値は、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び/又は当該ポリエチレン組成物と比較して、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の高い分子量、例えば高い重量平均分子量Mwを示す。
【0031】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、通常、2つ以上の重合段階を順に重ねる多段重合プロセスにおいて、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の存在下で、第2のポリマー画分として重合される。その結果、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の特性は、直接測定することはできず、計算しなければならない。第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)のコモノマー含有量、密度及びMFR2を計算するための適切な方法は、以下の「決定方法」に記載されている。
【0032】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)は、ベース樹脂の総重量に基づいて、好ましくは43~65重量%、より好ましくは44~62重量%、最も好ましくは45~60重量%の量でベース樹脂中に存在する。
【0033】
ベース樹脂における第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)と第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)との重量比は、好ましくは35:65~47:53、より好ましくは37:63~46:54、最も好ましくは40:60~45:55である。
【0034】
本発明の好ましい1つの実施形態では、ベース樹脂は、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)からなる。
【0035】
本発明の別の実施形態では、ベース樹脂は、15重量%まで、好ましくは2.5~15.0重量%、より好ましくは5.0~13.0重量%、最も好ましくは7.5~12.5重量%の、第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)とは異なるポリマー(複数種可)をさらに含む。
好ましくは、第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)とは異なる上記ポリマー(複数種可)は、α-オレフィンのホモポリマー又はコポリマーから選択される。1つのとりわけ好適な、第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)とは異なるポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)である。低密度ポリエチレンは、任意にさらなるコモノマーを含むエチレン系ポリマーであり、これは高圧プロセスで重合される。このような高圧プロセスは、当該技術分野で周知である。この任意の低密度ポリエチレンは、商業的に入手することもできる。
【0036】
本発明のポリエチレン組成物のベース樹脂は、そのベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて、8.0重量%~13.0重量%、好ましくは8.3重量%~12.0重量%、さらにより好ましくは8.5重量%~11.5重量%、さらにより好ましくは8.7重量%~11.0重量%、最も好ましくは9.0~11.0重量%の1-ブテン含有量を有する。
【0037】
本発明のポリエチレン組成物のベース樹脂は、913.0kg/m3~920.0kg/m3、好ましくは914.0kg/m3~918.0kg/m3の密度を有する。
【0038】
上記ベース樹脂は、好ましくは0.7g/10分~4.0g/10分、好ましくは0.9g/10分~3.0g/10分、さらにより好ましくは1.0g/10分~2.5g/10分、さらにより好ましくは1.1g/10分~2.0g/10分、最も好ましくは1.2g/10分~1.8g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。
【0039】
上記ベース樹脂は、好ましくは15g/10分~50g/10分未満、好ましくは17g/10分~45g/10分、さらにより好ましくは19g/10分~40g/10分、最も好ましくは20g/10分~35g/10分のメルトフローレートMFR21を有する。
【0040】
好ましくは、上記ベース樹脂は、10~30、より好ましくは12~27、最も好ましくは15~25の、メルトフローレートの比MFR21/MFR2であるフローレート比FRR21/5を有する。
【0041】
上記ベース樹脂は、当該ポリエチレン組成物の少なくとも95重量%、例えば95.0重量%~100重量%、より好ましくは99.0重量%~99.95重量%、さらにより好ましくは99.5重量%~99.95重量%、最も好ましくは99.75重量%~99.95重量%の量で本発明のポリエチレン組成物中に存在することが好ましい。
【0042】
好ましくは、上記ベース樹脂は1-ヘキセンを含まない。
【0043】
ポリエチレン組成物
当該ポリエチレン組成物は、添加剤及び/又はフィラーをさらに含有することができる。本明細書では、添加剤は、当該ポリエチレン組成物を製造するためのコンパウンディング(配合)工程において、エチレンのポリマー(a)中に存在してもよく、及び/又はベース樹脂と混合されてもよいことに留意されたい。このような添加剤の例は、とりわけ、酸化防止剤、プロセス安定剤、紫外線安定剤、顔料、フィラー、帯電防止用添加剤、アンチブロック剤(粘着防止剤)、核形成剤、酸捕捉剤、スリップ剤、及びポリマー加工剤(PPA)である。好ましくは、これらの添加剤の合計量は、当該ポリエチレン組成物の1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.25重量%以下である。
本明細書では、任意の添加剤及び/又はフィラーを、それぞれの添加剤を担体ポリマーとともに含む、いわゆるマスターバッチに任意に添加することができるということが理解される。このような場合、担体ポリマーは、当該ポリエチレン組成物のベース樹脂に対して算入されるのではなく、当該ポリエチレン組成物の合計量に基づいて、それぞれの添加剤の量に算入される。
【0044】
本発明のポリエチレン組成物は、以下の特性を特徴とする。
MFR2
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って決定される、好ましくは0.7g/10分~4.0g/10分、より好ましくは0.9g/10分~3.0g/10分、さらにより好ましくは1.0g/10分~2.5g/10分、さらにより好ましくは1.1g/10分~2.0g/10分、最も好ましくは1.2g/10分~1.8g/10分のメルトフローレートMFR2(190℃、2.16kg)を有する。
【0045】
MFR21
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って決定される、好ましくは15g/10分~50g/10分未満、好ましくは20g/10分~45g/10分、さらにより好ましくは23g/10分~40g/10分、最も好ましくは25g/10分~35g/10分のメルトフローレートMFR21(190℃、21.6kg)を有する。
【0046】
FRR21/2
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは10~30、より好ましくは12~27、最も好ましくは15~25の、MFR21とMFR2との比であるフローレート比FRR21/2を有する。
【0047】
分子量分布Mw/Mn
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは3.0~8.0の範囲、より好ましくは3.5~7.5の範囲、最も好ましくは4.0~6.0の範囲の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnである多分散性指数PDIを有する。
【0048】
密度
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1183-1:2004に従って測定される、913.0kg/m3~920.0kg/m3、好ましくは914.0kg/m3~919.0kg/m3の密度を有する。
【0049】
ベース樹脂の密度は、主にコモノマーの量及び種類に影響される。それに加えて、使用される触媒に主に由来するポリマーの性質、及びメルトフローレートが役割を果たす。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、ベース樹脂を含むポリエチレン組成物であって、このベース樹脂は、
(A)第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)であって、この第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%の1-ブテン含有量、及びISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される1.0~50.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR2を有する第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)と、
(B)第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)であって、この第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、10.0重量%~25.0重量%の1-ブテン含有量、及びISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される、0.05g/10分~1.0g/10分未満のメルトフローレートMFR2を有する第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)と
を含み、
上記ベース樹脂は、シングルサイト触媒系の存在下で重合されたものであり、913.0~920.0kg/m3の密度及び上記ベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて、8.0~13.0重量%の1-ブテン含有量を有するポリエチレン組成物に関する。
【0051】
物品
なおさらなる態様では、本発明は、これまでに又は以降に記載されるのプロセスによって得られるこれまでに又は以降に記載されるポリエチレン組成物を含む物品、及び物品の製造のためのそのようなポリエチレン組成物の使用に関する。
【0052】
当該物品は、好ましくは、フィルム又はブロー成形品若しくは回転成形品である。
当該物品が、インフレーションフィルム、キャストフィルム、又は多層フィルム等のフィルムであることがとりわけ好ましい。多層フィルムでは、当該ポリエチレン組成物は、その多層フィルムの1つ以上の層に含まれることが好ましい。
【0053】
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、好ましくは、以下の特性を特徴とする。
【0054】
縦方向の引張弾性率(TM-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D882に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度5mm/分及び歪み1%で測定したとき、好ましくは少なくとも150MPa、より好ましくは少なくとも175MPaの縦方向(機械方向)の引張弾性率(TM-MD)を有する。縦方向の引張弾性率の上限は、通常、500MPa以下、好ましくは300MPa以下である。
【0055】
横方向の引張弾性率(TM-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D882に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度5mm/分及び歪み1%で測定したとき、好ましくは少なくとも175MPa、より好ましくは少なくとも200MPa、最も好ましくは少なくとも225MPaの横方向の引張弾性率(TM-TD)を有する。横方向の引張弾性率の上限は、通常、500MPa以下、好ましくは350MPa以下である。
【0056】
縦方向の引張破断応力(TSB-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも30MPa、より好ましくは少なくとも35MPa、最も好ましくは少なくとも40MPaの縦方向の引張破断応力(TSB-MD)を有する。縦方向の引張破断応力の上限は、通常、100MPa以下、好ましくは75MPa以下である。
【0057】
横方向の引張破断応力(TSB-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも25MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、最も好ましくは少なくとも32MPaの横方向の引張破断応力(TSB-TD)を有する。横方向の引張破断応力の上限は、通常、100MPa以下、好ましくは75MPa以下である。
【0058】
縦方向の引張降伏応力(TSY-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも10MPa、より好ましくは少なくとも12MPa、最も好ましくは少なくとも13MPaの縦方向の引張降伏応力(TSY-MD)を有する。縦方向の引張降伏応力の上限は、通常、40MPa以下、好ましくは30MPa以下である。
【0059】
横方向引張降伏応力(TSY-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも8.0MPa、より好ましくは少なくとも9.0MPa、最も好ましくは少なくとも10.0MPaの横方向の引張降伏応力(TSY-TD)を有する。横方向の引張降伏応力の上限は、通常、40MPa以下、好ましくは30MPa以下である。
【0060】
縦方向の破断伸び(EB-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも500%、より好ましくは少なくとも550%、最も好ましくは少なくとも575%の縦方向の破断伸び(EB-MD)を有する。縦方向の破断伸びの上限は、通常、850%以下、好ましくは800%以下である。
【0061】
横方向の破断伸び(EB-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 527-3:1996に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度500mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも650%、より好ましくは少なくとも675%、最も好ましくは少なくとも700%の横方向の破断伸び(EB-TD)を有する。横方向の破断伸びの上限は、通常、1000%以下、好ましくは900%以下である。
【0062】
縦方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 6383-2:1983に従って40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも0.6N、より好ましくは少なくとも0.7N、最も好ましくは少なくとも0.8Nの縦方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-MD)を有する。縦方向のエルメンドルフ引裂強さの上限は、通常、5.0N以下、好ましくは4.0N以下である。
【0063】
横方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 6383-2:1983に従って40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも5.0N、より好ましくは少なくとも5.5N、最も好ましくは少なくとも6.0Nの横方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-TD)を有する。横方向のエルメンドルフ引裂強さの上限は、通常、20.0N以下、好ましくは15.0N以下である。
【0064】
縦方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 6383-2:1983に従って40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも50g、より好ましくは少なくとも60g、最も好ましくは少なくとも75gの縦方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-MD)を有する。縦方向のエルメンドルフ引裂強さの上限は、通常、500g以下、好ましくは400g以下である。
【0065】
横方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ISO 6383-2:1983に従って40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも600g、より好ましくは少なくとも625g、最も好ましくは少なくとも650gの横方向のエルメンドルフ引裂強さ(TS-TD)を有する。横方向のエルメンドルフ引裂強さの上限は、通常、1000g以下、好ましくは900g以下である。
【0066】
耐穿刺性 - 最大力(PRF-max)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D5758に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度250mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも20N、より好ましくは少なくとも22N、最も好ましくは少なくとも25Nの耐穿刺性 - 最大力(PRF-max)を有する。耐穿刺性 - 最大力(PRF-max)の上限は、通常、60N以下、好ましくは55N以下である。
【0067】
耐穿刺性 - 破断時の力(PRF-破断)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D5758に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度250mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも20N、より好ましくは少なくとも22N、最も好ましくは少なくとも25Nの耐穿刺性 - 破断時の力(PRF-破断)を有する。耐穿刺性 -破断時の力(PRF-破断)の上限は、通常、60N以下、好ましくは55N以下である。
【0068】
耐穿刺性 - 破断時のエネルギー(PRE)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D5758に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度250mm/分で測定したとき、好ましくは少なくとも0.50J、より好ましくは少なくとも0.55J、最も好ましくは少なくとも0.60Jの耐穿刺性 - 破断時のエネルギー(PRE)を有する。耐穿刺性 - 破断時のエネルギー(PRE)の上限は、通常、5.0J以下、好ましくは4.5J以下である。
【0069】
耐穿刺性 - 破断時の移動量(PRT)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D5758に従って40μmのインフレーションフィルムに対して試験速度250mm/分で測定したとき、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下、最も好ましくは85mmの耐穿刺性 - 破断時の移動量(travel)(PRT)を有する。耐穿刺性 - 破断時の移動量(PRT)の下限は、通常、少なくとも30mm、好ましくは少なくとも40mmである。
【0070】
落槍衝撃(DDI)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、40μmのインフレーションフィルムで測定したとき、好ましくは少なくとも100g、より好ましくは少なくとも125g、最も好ましくは少なくとも150gの落槍衝撃(dart drop impact、DDI)を有する。落槍衝撃の上限は、通常、500g以下、好ましくは450g以下である。
【0071】
シール開始温度(SIT)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下、最も好ましくは97℃以下のシール開始温度(SIT)を有する。シール開始温度(SIT)の下限は、通常、少なくとも90℃、より好ましくは少なくとも92℃である。
【0072】
ホットタック温度
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、40μmのインフレーションフィルムで測定したとき、好ましくは少なくとも88.0℃、より好ましくは少なくとも90℃、最も好ましくは少なくとも92℃のホットタック温度を有する。ホットタック温度の上限は、通常、97℃以下、より好ましくは95℃以下である。
【0073】
ヘイズ
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、ASTM D1003に従って40μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは14.0%以下、より好ましくは13.0%以下、最も好ましくは12.0%以下のヘイズを有する。ヘイズの下限は、通常、少なくとも2.0%、より好ましくは少なくとも3.0%である。
【0074】
光沢度
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、40μmのインフレーションフィルムの内面でISO 2813に従って測定したとき、好ましくは少なくとも92.0%、より好ましくは少なくとも95.0%、最も好ましくは少なくとも98.0%の光沢度を有する。光沢度の上限は、通常、115%以下、より好ましくは110%以下である。
【0075】
ゲル含有量
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径999μm超のゲルについて、好ましくは10ゲル/m2以下、より好ましくは6ゲル/m2以下、最も好ましくはゲルなし/m2である。
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径600~999μmのゲルについて、好ましくは100ゲル/m2以下、より好ましくは60ゲル/m2以下、最も好ましくは1.0ゲル/m2以下である。直径600~999μmのゲルの含有量の下限は、通常、0.01ゲル/m2以上、より好ましくは0.1ゲル/m2以上である。
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径300~599μmのゲルについて、好ましくは250ゲル/m2以下、より好ましくは200ゲル/m2以下、最も好ましくは170ゲル/m2以下である。直径300~599μmのゲルの含有量の下限は、通常、5ゲル/m2以上、より好ましくは7ゲル/m2以上である
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径100~299μmのゲルについて、好ましくは500ゲル/m2以下、より好ましくは400ゲル/m2以下、最も好ましくは100ゲル/m2以下である。直径100~299μmのゲルの含有量の下限は、通常、10ゲル/m2以上、より好ましくは20ゲル/m2以上である
【0076】
プロセス
当該ポリエチレン組成物は、第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー(A)及び(B)が、シングルサイト触媒系の存在下で、多段階プロセスにおいて任意の順序の少なくとも2つの連続した反応器段階で重合されるプロセスで製造される。
【0077】
シングルサイト触媒系
第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー(A)及び(B)は、好ましくはシングルサイト触媒系を用いて製造され、このシングルサイト触媒系は、メタロセン触媒及び非メタロセン触媒を含み、これらの用語はすべて当該技術分野で周知の意味を有する。用語「シングルサイト触媒系」は、本明細書では、共触媒と組み合わせた触媒的に活性なメタロセン化合物又はメタロセン錯体を意味する。メタロセン化合物又はメタロセン錯体は、本明細書では有機金属化合物とも呼ばれる。
【0078】
有機金属化合物は、周期表(IUPAC 2007)の第3~10族の遷移金属(M)、又はアクチノイドもしくはランタノイドの遷移金属(M)を含む。
【0079】
本発明に係る用語「有機金属化合物」は、少なくとも1つの有機(配位)配位子を持ち、単独で又は共触媒とともに触媒活性を示す任意の遷移金属のメタロセン化合物又は非メタロセン化合物を含む。遷移金属化合物は当該技術分野で周知であり、本発明は、周期表(IUPAC 2007)の第3~10族、例えば第3~7族、若しくは第3~6族、例えば第4~6族、並びにランタノイド又はアクチノイドからの金属の化合物を対象とする。
【0080】
1つの実施形態では、上記有機金属化合物は、下記式(I)を有する。
(L)mRnMXq (I)
上記式中、
「M」は、周期表(IUPAC 2007)の第3~10族の遷移金属(M)遷移金属(M)であり、
各「X」は、独立に、σ-リガンド等のモノアニオン性リガンドであり、
各「L」は、独立に、遷移金属「M」に配位する有機配位子であり、
「R」は、上記有機配位子(L)を連結する橋架け基であり、
「m」は、1、2又は3、好ましくは2であり、
「n」は、0、1又は2、好ましくは1であり、
「q」は、1、2又は3、好ましくは2であり、
m+qは、遷移金属(M)の価数に等しい。
【0081】
「M」は、好ましくは、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、又はチタン(Ti)からなる群から選択され、より好ましくは、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)からなる群から選択される。「X」は、好ましくはハロゲンであり、最も好ましくはClである。
【0082】
最も好ましくは、上記有機金属化合物は、置換基「L」としてシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニル配位子を含む、上で規定したような遷移金属化合物を含むメタロセン錯体である。さらに、配位子「L」は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、又は他のヘテロ原子基等の置換基を有していてもよい。適切なメタロセン触媒は当該技術分野で公知であり、特に、国際公開第95/12622号パンフレット、国際公開第96/32423号パンフレット、国際公開第97/28170号パンフレット、国際公開第98/32776号パンフレット、国際公開第99/61489号パンフレット、国際公開第03/010208号パンフレット、国際公開第03/051934号パンフレット、国際公開第03/051514号パンフレット、国際公開第2004/085499号パンフレット、欧州特許出願公開第1752462号明細書及び欧州特許出願公開第1739103号明細書に開示されている。
【0083】
最も好ましいシングルサイト触媒系は、メタロセン触媒系であり、このメタロセン触媒系は、上記で規定された触媒活性のあるメタロセン錯体と、活性化剤としても知られる共触媒とを意味する。適切な活性化剤は、当該技術分野で公知の金属アルキル化合物、とりわけアルミニウムアルキル化合物である。メタロセン触媒と共に使用されるとりわけ好適な活性化剤は、アルキルアルミニウムオキシ化合物であり、例えばメチルアルモキサン(MAO)、テトライソブチルアルモキサン(TIBAO)又はヘキサイソブチルアルモキサン(HIBAO)である。
【0084】
より好ましくは、第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)は、同じシングルサイト触媒系の存在下で製造される。
【0085】
プロセスの詳細
本発明に係るポリエチレン組成物を製造するためのプロセスは、以下の工程を含む。
a)第1の重合反応器において、シングルサイト触媒系の存在下でエチレン及び1-ブテンモノマーを重合して、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び上記シングルサイト触媒を含む第1の重合混合物を形成する工程であって、この第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)は、その第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)中のモノマー単位の総重量量に基づいて、0.5重量%~7.5重量%の1-ブテン含有量、並びにISO 1133に従って190℃の温度及び2.16kgの荷重において決定される1.0~50.0g/10分未満の範囲のメルトフローレートMFR2を有する工程、
b)上記第1の重合混合物を上記第1の重合反応器から第2の重合反応器へ移す工程、
c)上記第2の重合反応器において、シングルサイト触媒の存在下でエチレン及び1-ブテンモノマーを重合して、上記第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)を含む第2の重合混合物を形成する工程、
d)上記第2の反応器から上記第2の重合混合物を回収する工程、
e)ベース樹脂を形成する工程であって、このベース樹脂は、913.0~920.0kg/m3の密度及びベース樹脂中のモノマー単位の総重量量に基づいて8.0~13.0重量%の1-ブテン含有量を有する工程、並びに
f)上記ポリエチレン組成物を調製する工程。
【0086】
工程a)で生成される第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分は、好ましくは、これまでに又は以降に規定される第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)を表す。
工程c)で生成される第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分は、好ましくは、これまでに又は以降に規定される第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)を表す。
工程e)で形成されるベース樹脂は、好ましくは、これまでに又は以降に規定されるベース樹脂を表す。
【0087】
第1反応器、好ましくは第1スラリー相反応器、より好ましくは第1ループ反応器の温度は、典型的には50~115℃、好ましくは60~110℃、特に70~100℃である。圧力は、典型的には1~150bar(バール)、好ましくは1~100barである。
このスラリー相重合は、スラリー相重合に使用されるいずれかの公知の反応器で行われてもよい。このような反応器としては、連続撹拌槽反応器及びループ反応器が挙げられる。重合をループ反応器で行うことがとりわけ好ましい。このような反応器では、スラリーは、循環ポンプを使用して閉じたパイプに沿って高速度で循環される。ループ反応器は一般に当該技術分野で公知であり、例は、例えば、米国特許第4,582,816号明細書、米国特許第3,405,109号明細書、米国特許第3,324,093号明細書、欧州特許出願公開第479186号明細書及び米国特許第5,391,654号明細書に与えられている。
【0088】
スラリー相重合を、流体混合物の臨界温度及び臨界圧力を超えて行うことが有利な場合がある。そのような操作は、米国特許第5,391,654号明細書に記載されている。このような操作では、温度は、通常、少なくとも85℃、好ましくは少なくとも90℃である。さらには、温度は、通常、110℃以下、好ましくは105℃以下である。これらの条件下での圧力は、通常、少なくとも40bar、好ましくは少なくとも50barである。さらには、圧力は、通常、150bar以下、好ましくは100bar以下である。好ましい実施形態では、スラリー相重合工程は、反応温度及び反応圧力が炭化水素媒体とモノマーと水素と任意のコモノマーとによって形成される混合物の等価臨界点を超える超臨界条件で実施され、重合温度は形成されるポリマーの融解温度よりも低い。
【0089】
スラリーは、連続的又は間欠的にスラリー相反応器から取り出されてもよい。間欠的な取り出しの好ましい方法は、反応器から濃縮スラリーのバッチを取り出す前にスラリーを濃縮させる沈降脚の使用である。沈降脚の使用は、とりわけ、米国特許第3,374,211号明細書、米国特許第3,242,150号明細書及び欧州特許出願公開第1 310 295号明細書に開示されている。連続的な取り出しは、とりわけ、欧州特許出願公開第891 990号明細書、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書、欧州特許出願公開第1 591 460号明細書及び国際公開第2007/025640号パンフレットに開示されている。連続的な取り出しは、有利には、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書及び欧州特許出願公開第1 591 460号明細書に開示されている好適な濃縮方法と組み合わされる。
反応器から取り出されるスラリーを濃縮するために、沈降脚が使用される。このようにして取り出されるストリームは、平均して反応器内のスラリーよりも体積あたり多くのポリマーを含む。これにより、反応器に戻す必要のある液体の量が減り、これにより設備のコストが下がるという恩恵がある。商業規模のプラントでは、ポリマーと共に取り出された流体は、フラッシュタンクで蒸発し、そこからコンプレッサで圧縮され、スラリー相反応器へとリサイクルされる。
【0090】
しかしながら、沈降脚はポリマーを間欠的に取り出す。これは、反応器内の圧力やその他の変数が取り出しの周期に応じて変動することを生じさせる。また、取り出し量は限られており、沈降脚のサイズと数に依存する。これらの欠点を克服するためには、連続的な取り出しが好ましいことが多い。
他方、連続的な取り出しには、通常は、ポリマーが反応器内に存在するのと同じ濃度でポリマーを取り出すという問題がある。圧縮されるべき炭化水素の量を減らすために、連続取出口は、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書及び欧州特許出願公開第1 591 460号明細書に開示されているように、ハイドロサイクロン又は篩等の好適な濃縮装置と有利に組み合わされる。ポリマーに富むストリームは次いでフラッシュに導かれ、ポリマーが少ないストリームは直接反応器に戻される。
【0091】
スラリー相反応器で重合されたポリエチレン-1-ブテン画分のメルトフローレートを調整するために、好ましくは水素が反応器に導入される。
第1反応段階の水素供給量は、第1スラリー相反応器における水素/エチレン比が0.02~1.0mol/kmol、より好ましくは0.03~0.5mol/kmolを満たすように、エチレン供給量に対して調整することが好ましい。
【0092】
第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分を生成するために、エチレンモノマーに加えて、1-ブテンコモノマーがスラリー相反応器に添加される。
第1反応段階における1-ブテン供給量は、第1スラリー相反応器における1-ブテン/エチレン比が50~200mol/kmol、より好ましくは80~150mol/kmolを満たすように、エチレン供給に対して調整することが好ましい。
第1スラリー相反応器には、1-ブテン以外のさらなるコモノマーを導入しないことが好ましい。
【0093】
第1スラリー相反応器における滞留時間及び重合温度は、典型的には、ベース樹脂全体の30~47重量%、より好ましくは32~46重量%、最も好ましくは35~45重量%の量のエチレン-1-ブテンコポリマー画分を重合するように調整される。
【0094】
ポリマースラリーを第2の重合反応器に向ける前に、ポリマースラリーを、ポリマースラリーから炭化水素を実質的に除去するためのフラッシング工程に供することができる。フラッシング工程を適用した後、第1スラリー反応器で生成された第1の重合混合物は、好ましくは第2反応器、好ましくは気相反応器、より好ましくは流動床気相反応器に移される。
【0095】
流動床気相反応器では、オレフィンが、上方に移動するガス流中で重合触媒の存在下で重合される。この反応器は、典型的には、流動化グリッドの上に配置された、活性触媒を含む成長ポリマー粒子を含む流動床を含む。
ポリマー床は、オレフィンモノマー、最終的にはコモノマー(1種又は複数種)、最終的には水素等の連鎖成長制御剤又は連鎖移動剤、及び最終的には不活性ガスを含む流動化ガスの助けを借りて流動化される。これにより、不活性ガスは、スラリー相反応器で使用される不活性ガスと同じものでもよいし異なっていてもよい。流動化ガスは、反応器の底部にある入口チャンバに導入される。ガス流が入口チャンバの横断面に均一に分配されるようにするために、入口パイプは、例えば米国特許第4,933,149号明細書及び欧州特許出願公開第684 871号明細書の当該技術分野で公知の流れの分割要素を備えてもよい。
入口チャンバから、ガス流は、流動化グリッドを通って流動床へと上方に通される。流動化グリッドの目的は、ガス流を床の断面積に沿って均等に分割することである。流動化グリッドは、国際公開第2005/087261号パンフレットに開示されているように、反応器の壁に沿って掃引するガス流を確立するように配置されることもある。他のタイプの流動化グリッドは、とりわけ、米国特許第4,578,879号明細書、欧州特許出願公開第600 414号明細書及び欧州特許出願公開第721 798号明細書に開示されている。概要はGeldart及びBayens:The Design of Distributors for Gas-fluidised Beds、Powder Technology、第42巻、1985に記載されている。
【0096】
流動化ガスは流動床を通過する。流動化ガスの表面速度(空塔速度)は、流動床に含まれる粒子の最小流動化速度よりも高くなければならず、というのも、そうでなければ流動化が起こらないからである。他方、ガスの速度は気流輸送の開始速度よりも低くなければならず、というのも、そうしなければ床全体が流動化ガスに巻き込まれてしまうからである。最小流動化速度と気流輸送の開始速度は、粒子の特性がわかっている場合、一般的な工学的手法を用いて計算することができる。その概要は、とりわけGeldart:Gas Fluidisation Technology、J. Wiley & Sons、1996に記載されている。
流動化ガスが活性触媒を含む床と接触すると、モノマーや連鎖移動剤などのガス中の反応性成分が触媒の存在下で反応し、ポリマー生成物が生成される。同時に、ガスは反応熱で加熱される。
その後、未反応の流動化ガスは反応器の上部から取り除かれ、圧縮されて反応器の入口チャンバにリサイクルされる。反応器に入る前に、新鮮な反応物を流動化ガス流に導入して、反応と生成物の取り出しによる損失を補う。一般的には、流動化ガスの組成を分析し、組成を一定に保つためにガス成分を導入することが知られている。実際の組成は、生成物の所望の特性と、重合に使用する触媒によって決定される。
その後、ガスは熱交換器で冷却され、反応熱が除去される。ガスを床の温度よりも低い温度まで冷却することで、反応によって床が加熱されるのを防がれる。ガスの一部が凝縮する温度までガスを冷却することが可能である。液滴が反応ゾーンに入ると、液滴は気化する。そのとき、この気化熱が反応熱の除去に寄与する。この種の動作は凝縮モードと呼ばれ、そのバリエーションは、とりわけ、国際公開第2007/025640号パンフレット、米国特許第4,543,399号明細書、欧州特許出願公開第699 213号明細書、及び国際公開第94/25495号パンフレットに開示されている。欧州特許出願公開第696 293号明細書に開示されているように、リサイクルガス流に凝縮剤を添加することも可能である。凝縮剤は、プロパン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ブタン、又はイソブタン等の非重合性成分であり、これらは、冷却器内で少なくとも部分的に凝縮される。
ポリマー生成物は、連続的又は間欠的に気相反応器から取り出されてもよい。また、これらの方法の組み合わせが使用されてもよい。連続的な取り出しは、とりわけ、国際公開第00/29452号パンフレットに開示されている。間欠的な取り出しは、とりわけ米国特許第4,621,952号明細書、欧州特許出願公開第188 125号明細書、欧州特許出願公開第250 169号明細書及び欧州特許出願公開第579 426号明細書に開示されている。
上記少なくとも1つの気相反応器の頂部は、いわゆる離脱ゾーンを含んでもよい。そのようなゾーンでは、反応器の直径を大きくしてガス速度を低下させ、流動化ガスとともに床から運ばれた粒子が床に戻って沈むようにする。
床レベルは、当該技術分野で公知の様々な技術によって観察されてもよい。例えば、反応器の底部と床の特定の高さとの間の圧力差が反応器の全長にわたって記録されてもよく、その圧力差の値に基づいて床レベルを計算してもよい。このような計算により、時間平均されたレベルが得られる。超音波センサ又は放射性センサを使用することも可能である。これらの方法によって、瞬間的なレベルを得てよく、当然、それを経時的に平均化して時間平均の床レベルを得てもよい。
また、必要に応じて、少なくとも1つの気相反応器に帯電防止剤(1種又は複数種)が導入されてもよい。適切な帯電防止剤及びその使用方法は、とりわけ、米国特許第5,026,795号明細書、米国特許第4,803,251号明細書、米国特許第4,532,311号明細書、米国特許第4,855,370号明細書及び欧州特許出願公開第560 035号明細書に開示されている。これらは通常、極性化合物であり、その例としては、とりわけ水、ケトン、アルデヒド、アルコールが挙げられる。
反応器は、流動床内での混合をさらに促進するために、機械的な撹拌器を含んでもよい。適切な撹拌機のデザインの例は、欧州特許出願公開第707 513号明細書に与えられている。
【0097】
気相反応器での気相重合における温度は、典型的には、少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃である。この温度は、典型的には、105℃以下、好ましくは95℃以下である。圧力は、典型的には、少なくとも10bar、好ましくは少なくとも15barであるが、典型的には30bar以下、好ましくは25bar以下である。
【0098】
気相反応器で重合されるエチレン-1-ブテンコポリマー画分のメルトフローレートを調整するために、好ましくは水素が反応器に導入される。
気相反応器内の水素/エチレン比が0.2~1.5mol/kmol、より好ましくは0.2~1.0mol/kmol、最も好ましくは0.3~0.8mol/kmolを満たすように、水素供給量をエチレン供給量に対して調整することが好ましい。
気相反応器では、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分が製造される。
1-ブテン供給量は、好ましくは、少なくとも100~300mol/kmol、より好ましくは125~225mol/kmol、最も好ましくは150~200mol/kmolのコモノマー/エチレン比を満たすように、エチレン供給量に対して調整される。
【0099】
気相反応器内の反応混合物は、1-ブテンとは異なるコモノマー、例えば、1-ヘキセン等のα-オレフィンコモノマーを含んでいてもよい。この1-ブテンとは異なるコモノマーは、気相反応器における以前の重合運転からの残留物であるコモノマーの痕跡であってもよい。他の残留コモノマーの痕跡を、例えば1-ブテンでパージする等、当該技術分野で公知の技術によって除去することも可能である。本発明のポリエチレン組成物の重合中に、1-ブテンとは異なるコモノマーが気相反応器に供給されないことが好ましい。本発明のポリエチレン組成物の重合中に、気相反応器内に1-ブテンと異なるコモノマーが存在しないことがさらに好ましい。
【0100】
気相反応器内の滞留時間及び重合温度は、典型的には、ベース樹脂全体の43~65重量%、より好ましくは44~62重量%、最も好ましくは45~60重量%の量の第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分を重合するように調整される。
【0101】
さらに、好ましくは第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分からなる、気相反応器から出てくる最終的なベース樹脂は、913.0kg/m3~920.0kg/m3、好ましくは914.0kg/m3~918.0kg/m3の密度を有する。
【0102】
第1及び第2の重合段階における第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分の重合は、予備重合(プレポリマー化)工程が先行して行われてもよい。予備重合の目的は、低温及び/又は低モノマー濃度で触媒上に少量のポリマーを重合することである。予備重合により、スラリー中の触媒の性能を向上させること、及び/又は最終的なポリマーの特性を変更することが可能である。予備重合工程は、スラリー中で行っても、気相中で行ってもよい。好ましくは、予備重合はスラリー中で、好ましくはループ反応器中で行われる。そのとき、好ましくは、予備重合は不活性な希釈剤中で行われ、好ましくは、この希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素又はそのような炭化水素の混合物である。
予備重合工程における温度は、典型的には0~90℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~70℃である。
圧力は臨界ではなく、典型的には1~150bar、好ましくは10~100barである。
シングルサイト触媒系は、任意の重合段階に供給することができるが、好ましくは、第1重合段階、又は存在する場合には予備重合段階に供給される。触媒成分は、好ましくは全て予備重合工程に導入される。好ましくは、予備重合工程の反応生成物は、次に第1の重合反応器に導入される。プレポリマー成分は、予備重合工程の後に第1の実際の重合工程で生成される成分の量に、好ましくは低分子量エチレンポリマー成分の量に算入される。
【0103】
コンパウンディング
本発明のポリエチレン組成物は、好ましくは、反応器から典型的にはベース樹脂粉末として得られるベース樹脂を押出機で押し出し、次いで当該技術分野で公知の方法でポリマーペレットにペレット化して本発明のポリオレフィン組成物を形成する、コンパウンディング(配合)工程をさらに含む多段階プロセスで製造される。
任意に、添加剤又は他のポリマー成分を、上述したような量でコンパウンディング工程中に当該組成物に加えることができる。好ましくは、反応器から得られた本発明の組成物は、当該技術分野で公知の方法で、添加剤、並びにこれまでに規定された第1及び第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)及び(B)とは異なる任意のポリマー(複数種可)とともに押出機でコンパウンディングされる。
押出機は、例えば任意の従来から使用される押出機であってもよい。本コンパウンディング工程のための押出機の一例は、日本製鋼所、神戸製鋼所又はFarrel-Pomini(ファレル・ポミニ)によって供給される押出機、例えばJSW 460P又はJSW CIM90Pであってもよい。
【0104】
フィルム製造
ポリマーフィルムは、通常、インフレーションフィルム押出により、又はキャストフィルム押出により製造される。
多層フィルムの場合には、インフレーションフィルム押出又はキャストフィルム押出の際にフィルムのいくつかの層を共押出又は積層することができる。
これらのプロセスは当該技術分野で周知であり、本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムを製造するために容易に適合させることができる。
【0105】
使用
本発明はさらに、これまでに又は以降に記載されるフィルム等の物品の製造のための、これまでに又は以降に規定されるとおりポリエチレン組成物の使用に関する。
【実施例】
【0106】
1.決定方法
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はIS0 1133に従って決定され、g/10分で表される。MFRは、ポリマーの流動性、従って加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低い。ポリエチレンについては、MFRは190℃で決定される。MFRは、2.16kg(MFR2)、5kg(MFR5)、又は21.6kg(MFR21)等の異なる荷重で決定されてもよい。
【0107】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)のMFR
2(190℃、2.16kg)の計算
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)のMFR
2(190℃、2.16kg)の計算:
【数1】
上記式中、
w(A)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の重量分率[単位:重量%]であり、
w(B)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の重量分率[重量%]であり、
MFR(A)は、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)のメルトフローレートMFR
2(190℃、2.16kg)[単位:g/10分]であり、
MFR(A+B)は、ポリマー画分A及びBのブレンドのメルトフローレートMFR
2(190℃、2.16kg)[単位:g/10分]であり、
MFR(B)は、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の計算されたメルトフローレートMFR
2(190℃、2.16kg)[単位:g/10分]である。
【0108】
b)密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872-2(2007年2月)に従って調製した圧縮成形試験片に対して、ASTM;D792、方法B(23℃における天秤による密度)に従って測定し、kg/m3で示す。
【0109】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の密度の計算
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の密度の計算:
【数2】
上記式中、
w(A)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の重量分率[単位:重量%]であり、
w(B)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の重量分率[単位:重量%]であり、
密度(A)は、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の密度[単位:kg/m
3]であり、
密度(A+B)は、ポリマー画分A及びBのブレンドの密度[kg/m
3]であり、
密度(B)は、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の計算された密度[単位:kg/m
3]である。
【0110】
c)分子量、分子量分布(Mn、Mw、MWD) - GPC
屈折率(RI)、オンライン4キャピラリーブリッジ粘度計(PL-BV 400-HT)、及び15°及び90°の角度を持つデュアル光散乱検出器(PL-LS 15/90光散乱検出器)を備えたPL 220(Agilent(アジレント))GPCを使用した。固定相としてAgilentのOlexis3本及びOlexis Guardカラム1本を用い、移動相として1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化)を160℃で、1mL/分の一定流量で適用した。1回の分析につき200μLの試料液を注入した。すべての試料は、ポリマー8.0~12.0mgを、安定化したTCB(移動相と同じ)10mL(160℃)に160℃で連続的に穏やかに振盪しながら、PPは2.5時間、PEは3時間かけて溶解して調製した。160℃のポリマー溶液の注入濃度(c
160℃)は、以下の方法で求めた。
【数3】
上記式中、w25(ポリマー重量)及びV
25(25℃のTCBの体積)。
対応する検出器定数及び検出器間遅延量は、モル質量132900g/mol、粘度0.4789dl/gの狭いPS標準試料(MWD=1.01)を用いて決定した。TCB中の使用したPS標準液の対応するdn/dcは0.053cm
3/gである。計算は、Cirrus Multi-Offline SEC-Software Version 3.2(Agilent)を用いて行った。
各溶出スライスでのモル質量は、15°の光散乱角を用いて計算した。データ収集、データ処理及び計算は、Cirrus Multi SEC-Software Version 3.2を用いて行った。分子量は、Cirrusソフトウェアの「sample calculation options」フィールドの「slice MW data from」サブフィールドにあるオプション「use LS 15 angle」を使用して計算した。分子量の決定に使用したdn/dcは、RI検出器の検出器定数、試料の濃度c、分析した試料の検出器応答の面積から算出した。
この各スライスの分子量は、C.Jackson及びH.G.Barth(Handbook of Size Exclusion Chromatography and related techniques、C.-S.Wu、第2版、Marcel Dekker、ニューヨーク、2004、103頁のC.Jackson及びH.G.Barth、「Molecular Weight Sensitive Detectors」)によって記載されているようにして小角で算出する。LS検出器又はRI検出器の信号が少ないそれぞれ低分子領域及び高分子領域については、リニアフィットを用いて溶出量と対応する分子量との相関をとった。試料に応じて、リニアフィットの領域を調整した。
分子量平均値(Mz、Mw及びMn)、分子量分布(MWD)、並びに多分散性指数PDI=Mw/Mn(式中、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)で表される分子量分布の広さを、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-99に従ったゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記式を用いて決定した。
【数4】
溶出量間隔ΔV
iが一定の場合、A
i及びM
iは、GPC-LSで求めたクロマトグラフィーピークのスライス面積及びポリオレフィンの分子量(MW)である。
【0111】
d)コモノマー含有量:
NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマー中のコモノマー含有量を定量した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1H及び13Cについてそれぞれ500.13MHz及び125.76MHzで動作するBruker Advance III 500 NMR分光計を使用して、溶融状態で記録した。すべてのスペクトルを、150℃の13Cに最適化した7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの物質を外径7mmのジルコニアMASローターに詰め、4kHzで回転させた。迅速な同定及び正確な定量に必要な高感度{klimke06、parkinson07、castignolles09}を主な理由としてこの設定を選んだ。短い繰り返し時間のNOE{pollard04、klimke06}及びRS-HEPTデカップリングスキーム{fillip05、griffin07}を利用して、標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で1024(1k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、30.00ppmのバルクメチレンシグナル(δ+)を内部参照している。
【0112】
エチレンの量は、モノマーあたりの報告部位の数を考慮して、30.00ppmのメチレン(δ+)部位の積分値を用いて定量した。
E=Iδ+/2
孤立したコモノマー単位の存在は、存在する孤立したコモノマー単位の数に基づいて補正する。
Etotal=E+(3×B+2×H)/2
上記式中、B及びHはそれぞれのコモノマーについて定義されている。連続及び非連続のコモノマーの組み込みがあった場合、それらの補正を同様の方法で行う。
1-ブテンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観測し、コモノマー分率を、ポリマー中の全モノマーに対するポリマー中の1-ブテンの分率として算出した。
fBtotal=(Btotal/(Etotal+Btotal+Htotal)
EEBEE配列に組み込まれた孤立した1-ブテンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、38.3ppmの*B2部位の積分値を用いて定量した。
B=I*B2
EEBBEE配列に連続して組み込まれた1-ブテンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、39.4ppmのααB2B2部位の積分値を用いて定量した。
BB=2×IααB2B2
EEBEBEE配列に不連続に組み込まれた1-ブテンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、24.7ppmのββB2B2部位の積分値を用いて定量した。
BEB=2×IββB2B2
孤立した(EEBEE)1-ブテン及び不連続に組み込まれた(EEBEBEE)1-ブテンのそれぞれ*B2及び*βB2B2部位が重複しているため、孤立した1-ブテンの組み込みの合計含有量は、存在する不連続の1-ブテンの量に基づいて補正する。
B=I*B2-2×IββB2B2
1-ブテンの合計量は、孤立した1-ブテン、連続した1-ブテン、及び不連続に組み込まれた1-ブテンの合計に基づいて計算した。
Btotal=B+BB+BEB
次に、ポリマー中の1-ブテンの総モル分率を次のように計算した。
fB=(Btotal/(Etotal+Btotal+Htotal)
1-ヘキセンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観測し、コモノマー分率を、ポリマー中の全モノマーに対するポリマー中の1-ヘキセンの分率として計算した。
fHtotal=(Htotal/(Etotal+Btotal+Htotal)
EEHEE配列に組み込まれた孤立した1-ヘキセンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、39.9ppmの*B4部位の積分値を用いて定量した。
H=I*B4
EEHHEE配列に連続して組み込まれた1-ヘキセンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、40.5ppmのααB4B4部位の積分値を用いて定量した。
HH=2×IααB4B4
EEHEHEE配列に不連続に組み込まれた1-ヘキセンの量は、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して、24.7ppmのββB4B4部位の積分値を用いて定量した。
HEH=2×IββB4B4
次に、ポリマー中の1-ヘキセンの総モル分率を次のように計算した。
fH=(Htotal/(Etotal+Btotal+Htotal)
このモル分率から、コモノマーの組み込み率(モルパーセント)を算出する。
B[mol%]=100×fB
H[mol%]=100×fH
コモノマーの組み込み率(重量パーセント)は、モル分率から計算する。
B[重量%]=100×(fB×56.11)/((fB×56.11)+(fH×84.16)+((1-(fB+fH))×28.05))
H[重量%]=100×(fH×84.16)/((fB×56.11)+(fH×84.16)+((1-(fB+fH))×28.05))
【0113】
参考文献
klimke06
Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382.
parkinson07
Parkinson,M.、Klimke,K.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2007;208:2128.
pollard04
Pollard,M.、Klimke,K.、Graf,R.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Sperber,O.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Macromolecules 2004;37:813.
filip05
Filip,X.、Tripon,C.、Filip,C.、J.Mag.Resn. 2005、176、239
griffin07
Griffin,J.M.、Tripon,C.、Samoson,A.、Filip,C.及びBrown,S.P.、Mag.Res. in Chem. 2007 45、S1、S198
castignolles09
Castignolles,P.、Graf,R.、Parkinson,M.、Wilhelm,M.、Gaborieau,M.、Polymer 50(2009) 2373
busico01
Busico,V.、Cipullo,R.、Prog.Polym.Sci. 26(2001) 443
busico97
Busico,V.、Cipullo,R.、Monaco,G.、Vacatello,M.、Segre,A.L.、Macromoleucles 30(1997) 6251
zhou07
Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.、Winniford,B.、J.Mag.Reson. 187(2007) 225
busico07
Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128
resconi00
Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253
【0114】
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の1-ブテンコモノマー含有量の計算
第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の1-ブテン含有量の量の計算:
【数5】
上記式中、
w(A)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の重量分率[単位:重量%]であり、
w(B)は、ポリマー画分A及びBのブレンド中の第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の重量分率[単位:重量%]であり、
C(A)は、第1のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(A)の1-ブテンコモノマー含有量[単位:重量%]であり、
C(A+B)は、ポリマー画分A及びBのブレンドの1-ブテンコモノマー含有量[単位:重量%]であり、
C(B)は、第2のエチレン-1-ブテンコポリマー画分(B)の計算された1-ブテンコモノマー含有量[単位:重量%]である。
【0115】
e)フィルムの引張特性
フィルムの引張特性は、ISO 527-3に従い、厚さ40μmのインフレーションフィルムを使用した試験片タイプ2を用いて、23℃で測定する。フィルム試料は、「実験部」で後述するように製造した。
縦方向の引張弾性率(TM-MD)及び横方向の引張弾性率(TM-TD)は、ASTM D882に従って、試験速度5mm/分及びゲージ長50mmで1%セカント弾性率として測定した。
引張破断強度(TSB-MD及びTSB-TD)、引張降伏強度(TSY-MD及びTSY-TD)、並びに破断伸び(EB-MD)は、ISO 527-3の試験片タイプ2に従って、ゲージ長50mm及び試験速度500mm/分で測定した。
【0116】
f)引裂強度(エルメンドルフ引裂強さとして測定):縦方向(MD)及び横方向(TD)
引裂き試験は、40μmのインフレーションフィルムに対してASTM 1922に従って行う。フィルム試料は、「実験部」で後述するように製造した。
エルメンドルフ引裂強さは、フィルム試料に引き裂きを伝播させるのに必要な力(単位:ニュートン)である。エルメンドルフ引裂強さは、正確に較正した振り子装置を用いて測定する。重力を利用して振り子が弧を描くように動き、あらかじめ切られたスリットから試料を引き裂く。試験片は片側が振り子で、反対側が固定部材で保持されている。振り子によるエネルギーの損失は、ポインタで示される。目盛りの表示は、試験片を引き裂くのに必要な力の関数である。振り子の重さの選択は、試験片の吸収エネルギーに基づいており、振り子容量の20~80%が好ましい。引裂き力と試験片の厚さには直接的な線形関係はない。それゆえ、同じ厚さの範囲で得られたデータのみを比較する必要がある。
【0117】
g)耐穿刺性
ASTM D5748に従い、40μmのインフレーションフィルムに対して突出耐穿刺性試験を行う。この試験方法は、直径19mmの梨地状のTFEフルオロカーボンをコーティングした特定サイズのプローブを、標準的な低速度、単一の試験速度(250mm/分)で貫入させたときのフィルム試料の抵抗を測定するものである。この試験方法は標準的な条件で行うと、二軸性の応力負荷を与える。150mm×150mmのフィルム試験片を治具に合わせてカットし、23±2℃、相対湿度50±5%で調整を行う。
穿刺抵抗力(N)は試験中に観測された最大の力又は最高の力であり、耐穿刺性エネルギー(J)はプローブが試験片を破るまでに使用されるエネルギーであり、いずれも高精度の500Nロードセル及びクロスヘッド位置センサを用いて測定する。
【0118】
h)落槍強度
落槍を、ISO 7765-1の方法A(代替の試験手法)を用いてフィルム試料から測定する。直径38mmの半球状の頭部を持つダーツ(矢)を穴の上に固定されたフィルムに0.66mの高さから落下させる。20個の試験片の組を連続して試験する。各組には1つの重りを使用し、重りは組ごとに一定の増分で増加(又は減少)する。上記複数の試験片の50%が破損したときの重量を算出し、報告する。
【0119】
i)シール特性
ホットタック温度及びホットタック力は、「実験部」で後述するように製造した厚さ40μmのフィルム試料を用いて、ASTM F 1921-98(2004)の方法Bに従って測定した。ホットタック温度におけるホットタックの設定は以下のようにした。
【0120】
ホットタック温度(最大ホットタック力を得るための最低温度)及びホットタック(最大ホットタック力)は、以下の設定に従って測定した。
Q-名称装置:ホットタック・シーリング試験機
モデル:J&Bモデル 4000 MB
シールバーの長さ:50[mm]
シールバーの幅:5[mm]
シールバーの形状:フラット
シールバーのコーティング:NIPTEF(登録商標)
シールバーの粗さ:1[μm]
シール温度:可変[℃]
シール時間:1[s]
冷却時間:0.2[s]
シール圧力:0.15[N/mm2]
クランプ分離速度:200[mm/s]
試料幅:25[mm]
【0121】
シール温度
以下の設定を使用した。厚さ40μmのフィルム試料は、「実験部」で後述するように製造した。
Q-名称装置:ホットタック・シーリング試験機2
モデル:J&Bモデル 4000 MB
シールバーの長さ:50[mm]
シールバーの幅:5[mm]
シールバーの形状:フラット
シールバーのコーティング:NIPTEF(登録商標)
シールバーの粗さ:1[μm]
シール温度:可変[℃]
シール時間:1[s]
冷却時間:30[s]
シール圧力:0.4[N/mm2]
クランプ分離速度:42[mm/s]
試料幅:25[mm]
【0122】
j)ヘイズ
ヘイズは、「実験部」で後述するように製造した厚さ40μmのフィルム試料に対してASTM D 1003に従って測定した。
【0123】
k)光沢度
光沢度は、「実験部」で後述するように製造した厚さ40μmのフィルム試料の内面について、ISO 2813に従って20°、65°、85°の角度で測定した。
【0124】
l)ゲル含有量の決定:
ゲルカウント:
厚さ約70μmのキャストフィルム試料を押し出し、CCD(電荷結合素子)カメラ、画像処理装置及び評価ソフトウェア(装置:OCS-FSA100、供給元OCS GmbH(Optical Control System(オプティカル・コントロール・システム)))を用いて検査する。フィルムの欠陥を測定し、その大きさ(最長寸法)によって分類する。
キャストフィルムの調製、押し出しパラメータ
1.出力25±4g/分
2.押出機の温度プロファイル:230-230-230-220-210(溶融温度223℃)
3.膜厚 約70μm
4.冷却ロール温度 55~65℃
5.エアナイフ不要
押出機の技術データ
1.スクリュータイプ:3ゾーン、窒化
2.スクリュー直径:25mm
3.スクリューの長さ:25D
4.供給ゾーン:10D
5.圧縮ゾーン:4D
6.ダイ 100mm
欠陥は、大きさ(μm)/m2に従って分類した。
100~299
300~599
600~999
>999
【0125】
2.実験部
a)実施例の準備
・触媒の調製
メタロセン錯体ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド(CAS番号151840-68-5)130gと、市販のメチルアルモキサン(MAO)のトルエン中の30%溶液9.67kgとを合わせ、3.18kgの乾燥精製トルエンを加えた。このようにして得られた錯体溶液を、17kgのシリカ担体Sylopol 55 SJ(Grace(グレース)が提供)上に、2時間かけて非常にゆっくりと均一に噴霧して添加した。温度は30℃未満に保った。この混合物を、錯体添加後3時間、30℃で反応させた。
【0126】
・発明例IE1の重合:
予備重合:
容積50dm3のループ反応器を、温度60℃、圧力65barで運転した。この反応器に、2.5kg/hのエチレン、30kg/hのプロパン希釈剤、50g/hの1-ブテンを導入した。上述の触媒も16g/hで反応器に導入した。ポリマー生成速度は約2kg/hであった。
【0127】
重合
反応器からのスラリーを断続的に取り出し、容積500dm3のループ反応器に導き、このループ反応器を温度85℃及び圧力64barで運転した。この反応器に、25kg/hのプロパン、エチレン、1-ブテンコモノマー及び水素を加え、反応混合物中のエチレン含有量が4mol%になるようにし、水素/エチレンのモル比が0.08mol/kmol、1-ブテン/エチレンの比が110mol/kmolになるようにした。6.0g/10分のメルトインデックスMFR2及び940kg/m3の密度を有するエチレン系コポリマーの生成速度は50kg/hであった。
このスラリーを、沈降脚を用いてループ反応器から断続的に取り出し、温度50℃及び圧力3barで稼動するフラッシュ容器に導いた。そこからポリマーを、圧力20bar及び温度75℃で稼動する気相反応器(GPR)に導いた。エチレン、1-ブテンコモノマー、不活性ガスとしての窒素、及び水素を追加し、反応混合物中のエチレン含有量が37モル%であり、水素/エチレンの比が0.35モル/kmolであり、1-ブテン/エチレンの比が175モル/kmolであるようにした。この気相反応器でのポリマー生成速度は70kg/hであり、従って気相反応器からの全ポリマー取り出し速度は122kg/hであった。ポリマーのメルトインデックスMFR2は1.5g/10分であり、密度は918kg/m3であった。製造分担率(%ループ/%GPR成分)は42/58であった。予備重合生成物の量は、ループ生成物の量に算入した。
このポリマーを、1920ppmのIrgafos 168、480ppmのIrganox 1010(いずれもBASF SEから市販されている)及び270ppmのDynamar FX5922(3M Company(スリーエム・カンパニーから市販されている)と混合した。その後、このポリマーを、CIMP90押出機を用いて、SEIが230kWh/kg、溶融温度が250℃になるように、窒素雰囲気下でコンパウンディングし、ペレット状に押し出した。
【0128】
・発明例IE2の重合:
本発明例IE2のポリマー画分は、発明例1と同様に製造したが、表1に示すような重合条件を用いた。このポリマーに、2400ppmのIrgafos 168、600ppmのIrganox 1010(いずれもBASF SEから市販されている)、400ppmのDynamar FX5922(3M Companyから市販されている)、1000ppmのCrodamide ER(Croda(クロダ)から市販されている)、1875ppmのSilton JC-30(水澤化学工業から市販されている)、625ppmのSilton JC-50(水澤化学工業から市販されている)を混合した。その後、このポリマーを、窒素雰囲気下でCIMP90押出機を用いて、SEIが230kWh/kg、溶融温度が250℃になるようにコンパウンディングし、ペレット状に押し出した。
【0129】
・参考例RE3の重合:
参考例RE3のポリマー画分は、発明例1と同様に製造したが、表1に示すような重合条件を用いた。気相反応器において、1-ブテンの代わりに1-ヘキセンをコモノマーとして使用した。IE1の本発明のポリマーと同じ添加剤パッケージを使用した。
【0130】
・ブレンド組成物の調製
本発明のブレンドIE1:
発明例IE1の最終ポリマー組成物90重量%、及びFT5230という商品名で販売されている高圧法で製造された市販の直鎖状低密度ポリエチレン(Borealis(ボレアリス)製、MFR2:0.75g/10分、密度:923kg/m3、引張弾性率MD:230MPa)10重量%。
本発明のブレンドIE2:
発明例IE2の最終ポリマー組成物90重量%、及びFT5230 10重量%。
【0131】
参考例のブレンドRE3:
参考例RE3の最終ポリマー組成物90重量%、及びFT5230 10重量%。
比較例のブレンドCE4:
MFR2が1.0g/10分、密度が918kg/m3、及び引張弾性率MDが220MPaのユニモーダルの、メタロセン触媒によるエチレン-1-ブテンコポリマーである、インフレーションフィルム押出用LLDPEグレード118W(Sabic(サビック)から市販されている)の最終ポリマー組成物90重量%、及びFT5230 10重量%。
重量%は、2つのポリマー成分の合計量に基づいている。
【0132】
・フィルム試料の調製
5層共押出しインフレーションフィルムライン(ホソカワアルピネ(Hosokawa Alpine))を用いて、上述のブレンド組成物からなる厚さ40μmの試験フィルムを調製した。
この装置には5台の押出機があり、この装置の4台の押出機はスクリュー直径が65mmであり、1台の押出機はスクリュー直径が90mmであった(真ん中の押出機が一番大きい)。ダイの幅は400mmであり、ダイギャップは1.8mmであり、膜厚は40μmであった。
・ブローアップ率(BUR):2.5
・温度プロファイル、℃:30-190-190-190-190-190-195-195-195 - 5台の押出機の温度プロファイルはすべて同じで、押出機1台あたりのスループットは60kg/h
・ダイ温度205℃、5台の押出機すべてで同じダイ温度プロファイル
・FLH:ダイの直径の2倍
ブレンド組成物の2つのポリマー成分は、押出機に供給する前にドライブレンドした。
【0133】
【0134】
【0135】
発明例IE1及びIE2のポリエチレン組成物を含むフィルムは、参考例RE3のポリエチレン組成物を含むフィルムと同等の特性バランスを示す。とりわけ、IE1及びIE2のSITは、1-ヘキセンコモノマーを含むRE3と比較して、著しく高いSITを示すことが予想された。意外なことに、発明例のSITはRE3と同等である。発明例IE1及びIE2のポリエチレン組成物を含むフィルムは、比較例CE4のポリエチレン組成物を含むフィルムと比較して、衝撃特性(DDI)、シール性(SIT及びホットタック)、並びに光学特性(ヘイズ及び光沢度)に関して改善された挙動を示す。