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特許7438341特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステムを制御する方法、および特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステムを制御する方法、および特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/40 20060101AFI20240216BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60T8/40
B60T8/1761
B60T8/17 B
B60T13/122 A
B60T13/138 A
B60T13/122 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022519618
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2020072512
(87)【国際公開番号】W WO2021063577
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】102019215288.0
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クレプサー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】フェルヒ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フルーエ,アルミン
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0072928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0273008(US,A1)
【文献】特開2006-273045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/40
B60T 8/1761
B60T 8/17
B60T 13/122
B60T 13/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ要求を予め与えるための操作装置(14)と、
前記操作装置(14)と結合されたマスタブレーキシリンダ(12)と、
少なくとも1つのブレーキ回路(30a、b)と、
前記ブレーキ回路(30a、b)に連結されたホイールブレーキ(64a~d)と、
非人力で操作可能なブレーキ圧発生器(50)であって、
前記ブレーキ圧発生器(50)と前記マスタブレーキシリンダ(12)とがそれぞれ互いに並列に前記ブレーキ回路(30a、b)と接触させてある、ブレーキ圧発生器と、
さらに、前記ブレーキ圧発生器(50)と前記ブレーキ回路(30a、b)との間の第1圧力媒体接続を制御するための圧力発生器制御弁(62a、b)と、
前記ブレーキ回路(30a、b)と前記マスタブレーキシリンダ(12)との間の第2圧力媒体接続を制御するためのブレーキ回路制御弁(32a、b)と、を備える、特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステム(10)を制御する方法において、
前記ブレーキ回路(30a、b)内にブレーキ圧なしに、かつ前記ブレーキ圧発生器(50)によるブレーキ圧増加が行われることなしに、前記非人力ブレーキシステム(10)を、圧力発生器制御弁(62a,b)が通過位置をとっている動作状態で動作させることと、前記非人力ブレーキシステム(10)のこの動作状態において、前記ブレーキ回路制御弁(32a、b)は、前記ブレーキ回路制御弁が通過位置をとるように操作されることと、を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記非人力ブレーキシステム(10)の前記動作状態中、前記非人力ブレーキシステム(10)の前記ブレーキ圧発生器(50)から圧力媒体リザーバ(24)まで成立している第3圧力媒体接続が遮断されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非人力ブレーキシステム(10)の前記ブレーキ圧発生器(50)は、電気モータで駆動可能な、およびプランジャシリンダ(56)内で軸方向に可動に案内されたプランジャピストン(54)を有することと、前記ブレーキ圧発生器(50)から前記圧力媒体リザーバ(24)までの前記第3圧力媒体接続が、前記プランジャシリンダ(56)内での前記プランジャピストン(54)の対応する位置決めによって遮断されることと、を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非人力ブレーキシステム(10)が第1ブレーキ回路(30a)と第2ブレーキ回路(30b)とを装備し、かつ前記第1ブレーキ回路(30a)に割り当てられた第1ブレーキ回路制御弁(32a)と前記第2ブレーキ回路(30b)に割り当てられた第2ブレーキ回路制御弁(32b)とを有する、方法において、
前記非人力ブレーキシステム(10)の前記動作状態中、前記2つのブレーキ回路制御弁(32a、b)のうちの少なくとも1つが制御されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記非人力ブレーキシステム(10)は、前記操作装置(14)の操作ストロークを可能にするストロークシミュレータ(34)を装備し、
前記ストロークシミュレータ(34)は、操作可能なシミュレータ制御弁(44)を介して制御可能に前記マスタブレーキシリンダ(12)と接触させてある、方法において、
前記非人力ブレーキシステム(10)の前記動作状態中、前記シミュレータ制御弁(44)は、前記シミュレータ制御弁が通過位置をとるように操作されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記非人力ブレーキシステム(10)が電子制御器(28)を装備することと、前記ブレーキ回路制御弁(32a、b)、前記ランジャピストン(54)、および/または前記シミュレータ制御弁(44)の前記操作が前記電子制御器(28)により制御されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ブレーキ要求を予め与えるための操作装置(14)と、
前記操作装置(14)と結合されたマスタブレーキシリンダ(12)と、
少なくとも1つのブレーキ回路(30a、b)と、
前記ブレーキ回路(30a、b)に連結されたホイールブレーキ(64a~d)と、
非人力で操作可能なブレーキ圧発生器(50)であって、
前記ブレーキ圧発生器(50)と前記マスタブレーキシリンダ(12)とがそれぞれ制御可能に、および互いに並列に前記ブレーキ回路(30a、b)と接触させてある、ブレーキ圧発生器と、
さらに、前記ブレーキ圧発生器(50)と前記ブレーキ回路(30a、b)との間の第1圧力媒体接続を制御するための圧力発生器制御弁(62a、b)と、
前記ブレーキ回路(30a、b)と前記マスタブレーキシリンダ(12)との間の第2圧力媒体接続を制御するためのブレーキ回路制御弁(32a、b)と、を備える、特に自動車のための、電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステム(10)において、
前記非人力ブレーキシステム(10)が、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法で前記非人力ブレーキシステム(10)を制御するために形成されている電子制御器(28)を装備することを特徴とする、電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴による、特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステムを制御する方法、およびこの方法で制御される、請求項7の前提部の特徴による、特に自動車のための電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における電子的にスリップ制御可能な非人力ブレーキシステムは、従来技術に属する。この種の非人力ブレーキシステムでは、運転者がブレーキ圧の増加に関与するのではなく、ブレーキ要求を予め与えるだけであり、次いで、非人力で動かされるブレーキ圧発生器によりブレーキ圧が調整されるという点で、非人力ブレーキシステムは、従来の筋力ブレーキシステムとは基本的に異なる。非人力ブレーキシステムは、特に、電気駆動装置を備えた、相互作用する複数のシステムのブレーキトルクがブレーキ過程中に互いに重畳される最新の車両に用いるのに適している。それとは別に、非人力ブレーキシステムは、電子アシストシステムを装備した、例えば先行車両との距離を自動で制御するために、少なくとも一部自律運転操縦もしくは制動操縦を可能にする車両にも用いられる。
【0003】
運転者をブレーキ圧増加から切り離すことの利点は、例えば、例えばアンチロック保護制御動作(ABS)中にホイールスリップ制御の実行により圧力が変化した場合、あるいは走行動的特性の制御が行われる(ESPモード)場合に、運転者が触覚的に知覚可能なフィードバックをブレーキシステム自体から受け取らないということである。さらに、非人力ブレーキシステムは、圧力変化によりブレーキペダルを介して車両の内部空間に伝わる可能性のある騒音が発生しないため、運転快適性を改善する。
【0004】
本発明の基礎とされる非人力ブレーキシステムは、例えば特許文献1から知られている。
【0005】
非人力ブレーキシステムでは、受動動作状態と能動動作状態とが区別される。受動動作状態中、運転者のブレーキ要求が存在せず、さらにブレーキ回路内のブレーキ圧が電子制御器により増加されることはない。これに対して、能動動作状態では、非人力で作動されるブレーキ圧発生器によるブレーキ過程もしくはブレーキ圧増加が行われる。受動動作状態から能動動作状態への移行のために、非人力ブレーキシステムのいくつかの制御可能な弁コンポーネントおよびブレーキ圧発生器コンポーネントの電気的制御が変化する。従来技術では、動作状態間の移行時に、制御されるべきコンポーネントが多数あるため騒音が発生し、この騒音を、車室内で車両の乗員によって知覚でき、それに応じて、車両の運転快適性が損なわれる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102014205431号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非人力ブレーキシステムの作動騒音の改善、および非人力ブレーキシステムの動作状態の移行時の車両の運転快適性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、本発明によれば、とりわけ非人力ブレーキシステムの動作状態中に、ブレーキ回路内でブレーキ圧増加が行われず、ブレーキ回路制御弁が通過位置をとるように、このブレーキ回路制御弁が電子制御器により制御されることによって達成される。
【0009】
本発明の他の利点または有利な発展形態は、従属請求項および以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】受動動作状態中の非人力ブレーキシステムの液圧回路図である。
図2】それに対して、能動動作状態中の非人力ブレーキシステムの液圧回路図である。
図3】上記の動作状態と区別するために、ブレーキ圧発生なしの能動動作状態と呼ばれる動作状態を非人力ブレーキシステムがとるときの、液圧回路図を用いて本発明を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載で詳しく説明する。
【0012】
図面は複数の図を含む。
【0013】
図1は、上述のように、受動動作状態中の非人力ブレーキシステムを示す。ブレーキ要求がない場合、もしくは電子制御器によってブレーキ圧増加が行われない場合に非人力ブレーキシステムは、この動作状態をとる。
【0014】
公知の非人力ブレーキシステム10は、運転者によるブレーキ要求を予め与えるために、操作要素14により操作可能なマスタブレーキシリンダ12を装備している。図1において、操作要素14としてブレーキペダルが示されるが、これに代えて、例えばブレーキレバーも考えられよう。この実施例では、操作要素14は、例示的に全部で2つのマスタブレーキシリンダピストン18a、bのうちの1つとプッシュロッド16を介して接続されている。マスタブレーキシリンダピストン18a、bは、共通のシリンダハウジング20内でそれぞれ1つの割り当てられた圧力室22a、bを画定し、この圧力室には、マスタブレーキシリンダ12と結合された圧力媒体リザーバ24から液圧媒体が供給される。操作要素14の方に向いた圧力室22aは、2つのマスタブレーキシリンダピストン18a、b.間にあり、第1ピストンばねを収容し、この第1ピストンばねにより第1マスタブレーキシリンダピストン18aが第2マスタブレーキシリンダピストン18bに支持されている。第2ピストンばねを介して第2マスタブレーキシリンダピストン18bがシリンダハウジング20の底に支持されている。したがって、運転者により操作要素14に負荷がかけられることによって、両方のマスタブレーキシリンダピストン18a、bが増圧方向で前方へ、したがってシリンダハウジング20の内部の奥に移動する。その際、割り当てられた圧力室22a、bの容積が減少し、操作要素14が操作ストロークを実行する。操作ストロークは、ストロークセンサ26によって検出され、電圧信号に変換される。この電圧信号は、ブレーキ要求に比例挙動し、非人力ブレーキシステム10に割り当てられた電子制御器28によってブレーキ圧を制御するために重要な入力量を形成する。
【0015】
マスタブレーキシリンダ12の2つの圧力室22a、bには、非人力ブレーキシステム10の全部で2つのブレーキ回路30a、bのそれぞれ1つが制御可能に連結されている。制御のために、各ブレーキ回路30a、bにそれぞれ1つのいわゆる回路分離弁32a、bが設けられている。これらの回路分離弁32a、bは、それぞれ、常時開2/2方切替弁であり、この弁は、非人力ブレーキシステム10の電子制御器28による電気的制御によって通過位置から遮断位置へ移すことができる。
【0016】
非人力ブレーキシステム10の図示された受動動作状態では、回路分離弁32a、bが通過位置をとり、それによりマスタブレーキシリンダ12からブレーキ回路30a、bへの液圧接続が形成される。
【0017】
回路分離弁32a、bが閉じている場合、すなわち非人力ブレーキシステム10の能動動作状態の間も(図2)、非人力ブレーキシステム10の操作要素14の操作ストロークを可能にするために、操作要素14の方に向いたマスタブレーキシリンダ12の圧力室22aがペダルストロークシミュレータ34に連結されている。このペダルストロークシミュレータ34は、シミュレータシリンダ36に収容されている、ばね弾性要素38により負荷がかけられるシミュレータピストン40であり、このシミュレータピストンは、マスタブレーキシリンダ12の圧力室22aからの圧力媒体を充填可能なシミュレータ室42を画定する。ばね弾性要素38は、シミュレータ室42への圧力媒体の流入方向とは逆の方向に作用し、そのためシミュレータピストン40の裏側に配置されている。ペダルストロークシミュレータ34とマスタブレーキシリンダ12の圧力室22aとの液圧接続は、この場合も制御可能に形成されている。このために、電気的に制御可能な常時閉2/2方切替弁として形成されているシミュレータ制御弁44が設けられている。
【0018】
それに対応して、非人力ブレーキシステム10の図示された受動動作状態では、シミュレータ制御弁44が遮断位置をとり、それにより操作されるマスタブレーキシリンダ12の圧力室22aから圧力媒体が流入できない。
【0019】
ペダルストロークシミュレータ34のばね弾性要素38は、上述のように、シミュレータシリンダ36内の背後空間46において、シミュレータ室42から離反したシミュレータピストン40の裏側に配置されている。この背後空間46も同様に液圧媒体が充填され、このために、操作要素14から遠い、マスタブレーキシリンダ12の第2圧力室22b、およびこれと並列に、非人力ブレーキシステム10の圧力媒体リザーバ24と液圧接続されている。マスタブレーキシリンダ12の第2圧力室22b内の圧力を検出するために、非人力ブレーキシステム10は圧力センサ48を装備している。圧力センサは、割り当てられたブレーキ回路30b内のブレーキ圧に相当する電圧信号を電子制御器28に送る。圧力信号とストロークセンサ26のストローク信号とがブレーキ回路30a、b内のブレーキ圧を制御するための互いに冗長な量を形成する。
【0020】
回路分離弁32a、bの下流で、モータで駆動されるブレーキ圧発生器50がマスタブレーキシリンダ12に対して並列にブレーキ回路30a、bと接触させてある。このブレーキ圧発生器50は、プランジャシリンダ56内を軸方向に可動に案内されて、駆動モータ52により操作可能なプランジャピストン54を有するプランジャ装置である。駆動されるプランジャピストン54は、これが増圧方向に駆動される場合に、圧力媒体をプランジャ作動空間58からブレーキ回路30a、b内に押し込むか、またはプランジャピストン54が逆方向もしくは減圧方向に駆動された場合に、圧力媒体をブレーキ回路30a、bから取り出す。プランジャ作動空間58の容積が増圧方向に連続的に減少し、それに対応して減圧方向(Durchabbaurichtung)に増加する。
【0021】
駆動モータ52の操作はモータセンサ系により監視される。モータセンサ系のセンサ55a、bは、駆動モータ52の駆動軸の回転角度に比例する電圧信号と、モータ電流に比例する電圧信号を生成する。2つの電圧信号も同様に電子制御器28により検出され、とりわけブレーキ圧制御のために評価される。
【0022】
ブレーキ回路30a、bを有するブレーキ圧発生器50の液圧配管接続部60a、bは、プランジャ制御弁62a、bにより制御可能である。これらのプランジャ制御弁62a、bは、基本位置で閉じていて、非人力ブレーキシステム10の能動動作状態において電子制御器28により通過位置に切り替えられる2/2方切替弁である。
【0023】
図示された受動動作状態では、プランジャ制御弁62a、bは、ブレーキ回路30a、bとの配管接続部60a、bを遮断する。それによりブレーキ圧発生器50によってブレーキ回路30a、b内のブレーキ圧増加を行うことはできない。
【0024】
ブレーキ圧発生器50がブレーキ回路30a、bと結合されている場所の下流で、これらのブレーキ回路30a、bがそれぞれ2つのブレーキ回路分岐31a~dに分岐する。例示的にそれぞれ1つの連結されたホイールブレーキ64a~dに、必要な場合にこれらのブレーキ回路分岐31a~dの各々が、ブレーキ圧がかかった圧力媒体を供給する。ホイールブレーキ64a~dは、例えば車両に対角線状に分配配置され、すなわちブレーキ回路30a、30bの1つにそれぞれ車両のフロントアクスル(FLおよびFR)のホイールブレーキ64a、dの1つと、リアアクスル(RR、RL)のホイールブレーキ64b、cの1つがある。さらに、アクスルの2つのホイールブレーキ64a、64dもしくは64b、64cは車両の異なる側にある。
【0025】
各ホイールブレーキ64a~dにブレーキ圧制御弁装置が前置されている。ブレーキ圧制御弁装置は、それぞれ電子制御器28により電気的に制御可能な増圧弁66a~dと、全く同様の減圧弁68a~dとを備えている。増圧弁66a~dがそれぞれ常時開2/2方比例弁として形成されているのに対して、減圧弁68a~dはそれぞれ常時閉2/2方切替弁として形成されている。
【0026】
非人力ブレーキシステム10の図示された受動動作状態では、増圧弁66a~dおよび減圧弁68a~dがそれぞれ上記の基本位置をとる。
【0027】
減圧弁68a~dから、共通の圧力媒体戻り流路70が圧力媒体リザーバ24に戻って通じている。この圧力媒体戻り流路70は、2つの圧力媒体分岐部72a、bを介してブレーキ圧発生器50と接触させてある。第1圧力媒体分岐部72aは、プランジャシリンダ56内のプランジャピストン54のポジションに関して内死点の領域でプランジャ作動空間58内に通じ、第2圧力媒体分岐部72bは、プランジャピストン54の外死点の領域にある。第2圧力媒体分岐部72bは逆止弁74によって制御され、この逆止弁は、駆動モータ52によりプランジャピストン54が増圧方向に操作される場合に、プランジャ作動空間58から圧力媒体リザーバ24への圧力媒体の流出を遮断する。圧力媒体分岐部72aは、プランジャシリンダ56内のプランジャピストン54のポジションに依存して制御される。
【0028】
非人力ブレーキシステム10の受動動作状態の間、プランジャピストン54は、圧力媒体戻り流路70もしくは圧力媒体リザーバ24へ通じる第1圧力媒体分岐部72aが、図示されるように開いているポジションをとる。
【0029】
ブレーキ回路30a、bのホイールブレーキ64a~dは、非人力ブレーキシステム10の受動動作状態において、開いた増圧弁66a~dと、さらに同様に開いた回路分離弁32a、bとを介して、操作されないマスタブレーキシリンダ12と液圧接続され、したがって無圧である。
【0030】
図2は、能動動作状態中の図1による非人力ブレーキシステム10を示し、上述の弁コンポーネントおよび圧力発生器コンポーネントには、これらが図1とは異なる弁位置をとるにもかかわらず、簡単にするために互いに一致した参照符号が付されている。この能動動作状態への移行は、ブレーキ要求が生じると直ちに、もしくは電子制御器28による圧力発生器50の駆動モータ52の電気的制御によりブレーキ回路30a、b内でブレーキ圧が上昇すると直ちに行われる。
【0031】
非人力ブレーキシステム10は基本的に次のように機能する:
運転者のブレーキ要求の存在にもとづいてブレーキ圧増加が行われる場合、運転者はそのために非人力ブレーキシステム10の操作要素14を操作する。続いて、プッシュロッド16を介してこの操作要素14と機械的に結合されたマスタブレーキシリンダピストン18aは、これに割り当てられた圧力室22aから圧力媒体をペダルストロークシミュレータ34のシミュレータ室42に押し込み、操作要素14は、それに対応する操作ストロークを実行する。後者がストロークセンサ26により検出され、電圧信号に変換され、この電圧信号が電子制御器28に供給される。電子制御器は、電圧信号からブレーキ要求の存在を導出し、ブレーキ圧発生器50の駆動モータ52への制御信号を生成する。駆動モータ52は、プランジャピストン54を増圧方向に駆動する。その際、圧力媒体がプランジャ作動空間58からホイールブレーキ64a~dの方向に押し出され、そこで操作要素14の操作に比例するブレーキ圧の上昇をもたらす。その結果として、車両がブレーキ過程を実行する。
【0032】
万一、車両の少なくとも1つのホイールブレーキ64a~dのブレーキ圧が、このホイールブレーキ64a~dに割り当てられたホイールがロックしそうなほど高い場合、このロックの危険がホイール回転数センサ78により認識され、電子制御器28にさらに通知される。それにもとづいて電子制御器は、当該増圧弁66a~dが遮断位置をとり、減圧弁68a~dが通過位置をとるように、ブレーキ圧弁制御装置を制御する。割り当てられたホイールが再び車両速度に対応するスピン回転速度を有するまで、ホイール個別にブレーキ圧が圧力媒体戻り流路70を介して圧力媒体リザーバ24に向けて減少させられる。次いで、ブレーキ圧弁制御装置が電子制御器28により上述の初期状態に再び移される。
【0033】
まず、能動動作状態に移行する場合、2つの回路分離弁32a、bが電子制御器28により制御され、図2に示される遮断位置に移される。それとともにマスタブレーキシリンダ12がブレーキ回路30a、bから切り離され、したがってまだブレーキ要求検出装置として機能する。
【0034】
さらに、プランジャ制御弁62a、bも同様に電気的に制御され、図2に示されるように、通過位置に切り替えられる。それに伴い駆動モータ52の操作によって、ブレーキ圧発生器50により対応するブレーキ圧増加を行うことができるようにするために、ブレーキ圧発生器50とブレーキ回路30a、bとの液圧接続が形成される。
【0035】
このブレーキ圧増加が遅滞なく、したがって高い増圧ダイナミクスで行われるようにするために、プランジャピストン54は、プランジャピストン54のポジションの内死点に形成された、プランジャ作動空間58の第1圧力媒体分岐部72aが圧力媒体リザーバ24とともにプランジャピストン54により遮断されるポジションに移動される。そのために、プランジャピストン54は、駆動モータ52の電気的制御によって、内死点から増圧方向にわずかに前方に動かされる。
【0036】
最後に、能動動作状態への移行時になおシミュレータ制御弁44が制御され、その通過位置に移される。したがって、マスタブレーキシリンダ12のペダル側の圧力室22aは、ペダルストロークシミュレータ34と結合され、そのことが図2における変位したプランジャピストン40により示されている。
【0037】
非人力ブレーキシステム10が受動動作状態から能動動作状態へ移行する場合の上述のコンポーネントの上述の電気的制御は、不都合にも作動騒音を発する。この作動騒音が、車両室内で乗員によって知覚でき、場合によっては運転快適性が損なわれる可能性がある。
【0038】
本発明は、図3に示されており、とりわけ非人力ブレーキシステム10を制御する方法に関する。提案される方法は、非人力ブレーキシステム10が、ブレーキ圧増加が行われない動作状態にある場合に、弁および圧力発生器コンポーネントの変更される切替ポジションを調整することにより、この非人力ブレーキシステム10の作動騒音の改善と快適性の向上を目標とする。この動作状態は、上記の動作状態と区別するために、ブレーキ圧増加なしの能動動作状態と呼ばれる。
【0039】
本発明によれば、プランジャピストン54が、非人力ブレーキシステム10のこの動作状態中、プランジャシリンダ56内でその現在ポジションを維持し、したがって圧力媒体戻り流路70への第1圧力媒体接続72aを遮断することが提案される。さらに、2つの回路分離弁32a、bのうちの少なくとも1つが、通過位置をとるように電気的に制御される。この少なくとも1つの開いた回路分離弁32a、bを介して、最終的に2つのブレーキ回路30a、bがマスタブレーキシリンダ12の圧力室22a、bの1つと接続され、それに伴い圧力媒体リザーバ24と液圧接続される。圧力媒体リザーバ24とのこの液圧接続は、ブレーキ回路30aでは、割り当てられた回路分離弁32aにより直接行われるのに対して、それぞれもう1つのブレーキ回路30bでは、電気的に操作され、それに伴い通過位置をとるプランジャ制御弁62a、bと、間に位置するブレーキ圧発生器50のプランジャ作動空間58と、通過位置にある回路分離弁32aとを介して間接的に行われるにすぎない。
【0040】
ここで付言しておきたいのは、代替的に、回路分離弁32aの代わりに、それぞれもう1つの回路分離弁32bも通過位置に移すことができるということ、または両方の回路分離弁32a、bが通過位置をとるということである。
【0041】
したがって、ブレーキ圧増加なしの能動動作状態中に場合によって起こり得る圧力媒体の加熱、およびその結果生じるブレーキ回路30a、b内の圧力媒体の体積増加を、圧力媒体リザーバ24に向かって低下させることができ、ホイールブレーキ64a~dにおけるブレーキ圧増加、またはホイールブレーキ64a~dにおける残留摩耗トルク(Restschleifmoment)の発生が妨げられるが、そのためにプランジャピストン54を減圧方向に操作する必要はない。
【0042】
ブレーキ圧発生器50の駆動モータ52の適合させた電気的制御によって、非人力ブレーキシステム10のこの動作状態中にプランジャシリンダ56内のプランジャピストン54のポジションが維持される。
【0043】
それにより、ブレーキ圧増加なしのこの能動動作状態からブレーキ圧増加を伴う能動動作状態への移行のために必要なのは、回路分離弁32a、bの一方または両方の電気的制御を取り消すことのみである。プランジャ制御弁62a、bの電気的制御は変わらず、プランジャピストン54もプランジャシリンダ56内のポジションを保持する。すなわちプランジャ作動空間58と圧力媒体戻り流路70との第1圧力媒体接続72aは閉じたままである。
【0044】
それにしたがって、本発明によれば、結局のところ、動作状態の移行時に関与するコンポーネントの操作がより少なく行われ、したがって、引き起こされる作動騒音が少なくなる。その結果、非人力ブレーキシステム10の機能はそのまま変わらずに、車両の音響快適性が改善される。
【0045】
当然のことながら、本発明の基本思想から逸脱することなしに上記の実施例を変更または追加することが考えられる。
【符号の説明】
【0046】
10 非人力ブレーキシステム
12 マスタブレーキシリンダ
14 操作装置
18a、b マスタブレーキシリンダピストン
22a 圧力室
24 圧力媒体リザーバ
26 ストロークセンサ
28 電子制御器
30a、b ブレーキ回路
32a、b 回路分離弁、ブレーキ回路制御弁
34 ペダルストロークシミュレータ
36 シミュレータシリンダ
38 ばね弾性要素
40 シミュレータピストン
42 シミュレータ室
44 シミュレータ制御弁
46 背後空間
50 ブレーキ圧発生器
52 駆動モータ
54 プランジャピストン
55a、b センサ
56 プランジャシリンダ
58 プランジャ作動空間
62a、b 圧力発生器制御弁、プランジャ制御弁
64a~d ホイールブレーキ
66a~d 増圧弁
68a~d 減圧弁
70 圧力媒体戻り流路
72a、b 圧力媒体分岐部
74 逆止弁
図1
図2
図3