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特許7438352液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロック
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  • 特許-液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロック
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/42 20060101AFI20240216BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60T8/42
B60T8/17 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022530147
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020080245
(87)【国際公開番号】W WO2021104783
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】102019218513.4
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-503937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017502(US,A1)
【文献】特表2014-525875(JP,A)
【文献】特開2015-113033(JP,A)
【文献】特表平11-512681(JP,A)
【文献】実開平03-009963(JP,U)
【文献】特開平11-217071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーシリンダボア(3)を備え、前記パワーシリンダボア内でパワーピストン(4)が軸線方向に変位可能である、液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロックにおいて、前記パワーシリンダボア(3)内に、前記パワーピストン(4)を半径方向に前記パワーシリンダボア(3)内で案内するガイドブシュ(5)が配置されており、
前記パワーシリンダボア(3)が前記ガイドブシュ(5)の端面側に環状段部(2)を有し、前記環状段部内に、前記ガイドブシュ(5)によって軸線方向で前記環状段部(8)内で保持される第2のピストンパッキン(9)が配置されていることを特徴とする液圧ブロック。
【請求項2】
パワーシリンダボア(3)を備え、前記パワーシリンダボア内でパワーピストン(4)が軸線方向に変位可能である、液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロックにおいて、前記パワーシリンダボア(3)内に、前記パワーピストン(4)を半径方向に前記パワーシリンダボア(3)内で案内するガイドブシュ(5)が配置されており、
前記ガイドブシュ(5)が、外側に、周回するように延びる溝(12)を有していること、軸線方向において、前記ガイドブシュ(5)の前記外側で周回するように延びている溝(12)の高さで、複数のブレーキ液導管(13)が2つの周部位で前記パワーシリンダボア(3)内に開口し、前記複数のブレーキ液導管が、前記ガイドブシュ(5)の前記外側で周回するように延びている溝(12)によって互いに連通していることを特徴とする、液圧ブロック。
【請求項3】
パワーシリンダボア(3)を備え、前記パワーシリンダボア内でパワーピストン(4)が軸線方向に変位可能である、液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロックにおいて、前記パワーシリンダボア(3)内に、前記パワーピストン(4)を半径方向に前記パワーシリンダボア(3)内で案内するガイドブシュ(5)が配置されており、
前記パワーシリンダボア(3)が前記液圧ブロック(2)を貫通し、前記パワーシリンダボア(3)の一端がシリンダカバー(14)で閉止され、前記シリンダカバーが、前記液圧ブロック(2)から突出して前記パワーシリンダボア(4)を軸線方向に延長させていることを特徴とする、液圧ブロック。
【請求項4】
前記ガイドブシュ(5)が、その内周面に、周回するように延びるパッキン溝(6)を有し、前記パッキン溝内に、前記パワーピストン(4)と前記ガイドブシュ(5)との間を密封する第1のピストンパッキン(7)が配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の液圧ブロック。
【請求項5】
前記パワーシリンダボア(3)が前記ガイドブシュ(5)の端面側に環状段部(2)を有し、前記環状段部内に、前記ガイドブシュ(5)によって軸線方向で前記環状段部(8)内で保持される第2のピストンパッキン(9)が配置されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の液圧ブロック。
【請求項6】
軸線方向において前記ガイドブシュ(5)の高さで前記パワーシリンダボア(3)内にブレーキ液導管(10)が開口していること、前記ガイドブシュ(5)が、前記ブレーキ液導管(10)から前記ガイドブシュ(5)の前記端面側にある前記パワーシリンダボア(3)の前記環状段部(8)へ通じている通路(11)を有していることを特徴とする、請求項5に記載の液圧ブロック。
【請求項7】
前記ガイドブシュ(5)の前記軸線方向の外側に、前記パワーピストン(4)と前記パワーシリンダボア(3)との間に環状隙間(15)があり、および/または、前記パワーピストン(4)と前記シリンダカバー(14)との間に環状隙間(16)があることを特徴とする、請求項に記載の液圧ブロック。
【請求項8】
前記パワーシリンダボア(3)の開口部に、前記液圧ブロック(2)に設けた前記パワーピストン(4)のためのパワードライブ(24)が配置され、前記パワードライブにより、前記パワーピストン(4)がブレーキ圧を発生させるために前記パワーシリンダボア(3)内で変位可能であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の液圧ブロック。
【請求項9】
前記液圧ブロック(2)が、ブレーキマスタシリンダボア(25)および/またはシミュレータシリンダボア(26)を有していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の液圧ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の構成を備えた、液圧式車両ブレーキ装置の、特に液圧式のスリップコントロール型車両ブレーキ装置および/または動力式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための液圧ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液圧によるスリップコントロール型動力式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのための幅狭で直方体状の液圧ブロックを開示しており、液圧ブロック内には、ブレーキマスタシリンダボアが1つの幅狭側から対向する幅狭側へ貫通して設けられ、そしてパワーシリンダボアがブレーキマスタシリンダボアに対し垂直に同様に液圧ブロックの対向しあっている2つの大きな側面を貫通して設けられている。さらに、この公知の液圧ブロックは、ペダルストロークシミュレータのための受容部として袋穴を有している。パワーシリンダボア内には、一端にて閉じられているシリンダブシュが配置され、シリンダブシュは片側で液圧ブロックから突出し、シリンダブシュ内にはパワーピストンが軸線方向に変位可能に受容されている。動力でブレーキ圧を発生させるため、パワーピストンは電動機によりボールスクリュー装置を介してシリンダブシュ内を変位可能である。電動機はパワーシリンダボアに対し同軸に液圧ブロックの外面に配置され、ボールスクリュー装置は(同様に電動機に対し同軸に且つパワーシリンダボアに対し同軸に)電動機とパワーピストンとの間にある。電動機とボールスクリュー装置とはパワードライブ装置を形成し、そしてパワーピストンとシリンダブシュとパワーシリンダボアとともに液圧式車両ブレーキ装置のための動力式ブレーキ圧力発生装置を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102016202113A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
請求項1の構成を備えた本発明による液圧アッセンブリは、液圧式車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのために設けられ、特に液圧による動力式車両ブレーキ装置および/またはスリップコントロール型車両ブレーキ装置のために設けられている。液圧アッセンブリは特に直方体状の液圧ブロックを有し、液圧ブロックにはブレーキ管を介して車両ブレーキ装置の液圧式車輪ブレーキを接続可能である。スリップコントロールは特にアンチロックプログラム、アンチスピンレギュレーションプログラム、および/または、ダイナミックドライブコントロール/エレクトリックスタビリティプログラムであり、これらに対しては略語ABS、ASRおよび/またはFDR/ESPが慣用されている。最後のものは日常語では「ホイールスリッププロテクションコントロール」とも呼ばれる。スリップコントロールは公知であり、ここではこれ以上説明しない。
【0005】
液圧ブロックは、車両ブレーキ装置またはそのスリップコントロールの液圧構成要素の機械的固定および液圧結線に用いる。このような液圧構成要素とは、とりわけソレノイド弁、逆止弁、液圧アキュムレータ、ダンパーチャンバ、圧力センサである。これら液圧構成要素は液圧ブロック内の受容部内に固定され、受容部は大部分が筒状の貫通穴または袋穴として形成され、一部はダイアメータステップを備えて形成されている。「結線」とは、受容部またはその中に固定されている液圧構成要素が液圧ブロック内の導管によって車両ブレーキ装置またはそのスリップコントロールの液圧回路図に対応して結合されていることを意味する。しかしながら、導管は典型的には必ずしも液圧ブロック内に穿設されているものではない。
【0006】
液圧ブロックは、車両ブレーキ装置またはそのスリップコントロールの液圧構成要素を装備させると、液圧アッセンブリを形成し、この場合「装備」とは、液圧構成要素がそれらのためにそれぞれ設けられている液圧ブロックの受容部内に固定されていることを意味する。
【0007】
本発明による液圧ブロックはパワーシリンダボアを有し、パワーシリンダボア内ではパワーピストンが軸線方向に変位可能であり、パワーピストンはプランジャーピストンと呼ばれることも多い。パワーピストンを半径方向で案内するため、本発明による液圧ブロックはガイドブシュを有し、ガイドブシュはパワーシリンダボア内に配置され、パワーピストンを取り囲んでこれを軸線方向に変位可能にパワーシリンダボア内で案内する。本発明は、液圧ブロックとは異なる材料から成るパワーピストンの、たとえば耐摩耗性の案内および/または低摩擦の案内を可能にする。
【0008】
動力によるブレーキ圧発生のため、パワーピストンはたとえば電動機によりスクリュー装置を介して、または、他の回転/並進型変位装置により、パワーシリンダボア内で変位可能である。電動機とスクリュー装置との間には、機械的な減速装置が設けられていてよい。電動機とスクリュー装置とはパワーピストンのための電気機械式パワードライブを形成し、そしてパワーピストンおよびパワーシリンダボアとともに電気機械による動力式ブレーキ圧発生装置を形成し、この場合本発明は電気機械による動力式ブレーキ圧発生装置以外のものを排除しない。
【0009】
液圧ブロック内にブレーキマスタシリンダボアが好ましい態様で設けられていても、液圧ブロック内のブレーキマスタシリンダボアは本発明にとって必ずしも必要なものではない。ブレーキマスタシリンダボアは、ブレーキマスタシリンダの1つまたは複数のピストンに対し、車両ブレーキ装置の筋力操作または補助力操作のために設けられているものであり、すなわち複数のピストンのうちの1つは、機械的に(フット)ブレーキペダルまたは(ハンド)ブレーキレバーを用いてブレーキマスタシリンダボア内で変位可能である。
【0010】
液圧ブロックがブレーキマスタシリンダボアを有している限りにおいては、液圧ブロックは好ましくはペダルストロークシミュレータのためのシミュレータシリンダボアをも有し、シミュレータシリンダボア内には、たとえばばねまたはガス圧で付勢されるシミュレータピストンが軸線方向に変位可能に受容されている。ペダルストロークシミュレータは、好ましくはシミュレータ弁とも呼ぶことができるソレノイド弁を介してブレーキマスタシリンダに接続され、車両ブレーキ装置の動力操作時に仕切弁を閉じることによってブレーキマスタシリンダが車両ブレーキ装置から液圧的に切り離され、その結果ブレーキ液をブレーキマスタシリンダから車両ブレーキ装置内へ排除できない時に、ブレーキマスタシリンダボアからのブレーキ液を受容するために用いる。ペダルストロークシミュレータは、車両ブレーキ装置の動力操作時におけるブレーキマスタシリンダピストンの変位を可能にさせる。
【0011】
ここで「ボア」または「シリンダボア」と呼ばれている貫通穴または袋穴は、穿孔以外の方法によって形成されていてもよい。
【0012】
従属請求項は、独立請求項に記載されている本発明の更なる構成および有利な構成を対象としている。
【0013】
明細書および図面に開示されているすべての構成要件は、本発明を実施する際にそれ自体個別に実現されていてよく、或いは、基本的に任意の組み合わせで実現されていてよい。本発明の1つの請求項または1つの実施態様のすべての構成要件を有しているのではなく、そのうちの1つまたは複数の構成要件のみを有しているような発明の実施が基本的に可能である。
【0014】
次に、図面に図示した実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による液圧アッセンブリのパワーシリンダボアを軸線方向に切断したことによる液圧ブロックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に図示した本発明による液圧アッセンブリ1は、圧力発生のために、スリップコントロールを有する、液圧による動力式車両ブレーキ装置内に設けられている。このようなスリップコントロールはたとえばアンチロックプログラム、アンチスピンレギュレーションプログラム、および/または、ダイナミックドライブコントロール/エレクトリックスタビリティプログラムであり、これらに対しては略語ABS、ASR、FDR/ESPが慣用されている。
【0017】
本発明による液圧アッセンブリ1は液圧ブロック2を有し、液圧ブロックは、ソレノイド弁、逆止弁、液圧アキュムレータ、ダンパーチャンバのようなスリップコントロールの液圧構成要素および他の構成要素の機械的固定および液圧結線のために用いる。これらの構成要素は液圧ブロック1の側部および内部に配置されており、液圧ブロック2の示していない穿孔部によって、動力式車両ブレーキ装置およびスリップコントロールの液圧回路図に対応して互いに液圧結合されている。例として、2つのソレノイド弁27が回路符号として図示されている。
【0018】
図示し、説明している本発明の実施形態では、液圧ブロック2は、たとえばアルミニウム合金から成る直方体状の平らな金属ブロックであり、金属ブロックは、複数の構成要素を受容するために複数の穿孔部を備えており、車両ブレーキ装置およびスリップコントロールの液圧回路図に対応して穿孔されている。
【0019】
液圧ブロック2は、液圧ブロック2の互いに対向しあっている2つの大きな側面に対し垂直に、パワーシリンダボア3として貫通穴を有し、パワーシリンダボア内にパワーピストン4が軸線方向に変位可能に受容されている。パワーピストン4を軸線方向に変位可能に案内するため、パワーピストン4をパワーシリンダボア3内で半径方向に案内するガイドブシュ5がパワーシリンダボア3内に軸線方向に固定して配置されている。
【0020】
本実施形態では、ガイドブシュ5はプラスチックから成っている。ガイドブシュ5は、外側で、液圧ブロック2のパワーシリンダボア3内で圧力ばねによって密封されている。
【0021】
ガイドブシュ5は、内側に、周回するように延びるパッキン溝6を有し、パッキン溝内には第1のピストンパッキン7としてのパッキンが配置されている。パワーピストン4のための高圧パッキンとも解釈できる第1のピストンパッキン7は、パワーピストン4とガイドブシュ5との間を密封する。
【0022】
ガイドブシュ5には、パワーシリンダボア3の環状段部8が軸線方向に接続し、環状段部によりパワーシリンダボア3はガイドブシュ5の領域でよりも小さな直径に縮小している。環状段部8はガイドブシュ5から軸線方向の間隔を有し、その結果周回するように延びる溝が形成され、この溝の中に、低圧パッキンとも解釈できる第2のピストンパッキン9が配置されている。第2のピストンパッキン9は、軸線方向においてガイドブシュ5とパワーシリンダボア3の環状段部8との間で保持されている。第2のピストンパッキンは、パワーシリンダボア3とパワーピストン4との間を密封する。
【0023】
軸線方向においてガイドブシュ5の高さで、液圧ブロック2内に設けたブレーキ液導管10がパワーシリンダボア3内に開口している。本実施形態では、ブレーキ液導管10は第1のピストンパッキン7と第2のピストンパッキン9との間でパワーシリンダボア3内に開口している。ガイドブシュ5は、ブレーキ液導管10の開口部からガイドブシュ5の環状段部8側の端面へ通じている通路11を有し、その結果ブレーキ液導管10は、通路11によってガイドブシュ5側の端面で第2のピストンパッキン9と連通している。通路11は、図示したようにガイドブシュ5の外周に設けた軸線平行な溝であってよく、或いは、外周からガイドブシュ5の環状段部8側の端面へ延びるようにガイドブシュ5に設けた穿孔部であってよい(図示せず)。ガイドブシュ5は、その通路11がブレーキ液導管10と連通するように回転させてパワーシリンダボア3内に配置されている。ブレーキ液導管10は図示していないブレーキ液容器と連通して、第2のピストンパッキン9の領域でのパワーピストン4の外周の潤滑を生じさせている。ブレーキ液は、軸線方向への移動の場合、パワーピストン4の外周で第1のピストンパッキン7へも到達し、その結果両ピストンパッキン7,9が潤滑されている。
【0024】
ガイドブシュ5は、外側に、周回するように延びる溝12を有し、この溝は通路11で中断されて、両側が通路11から間隔をもって終わっており、その結果溝12は通路11と連通していない。パワーシリンダボア3内には、軸線方向において溝12の高さで、ガイドブシュ5の外周の2つの周部位において、溝12によって互いに連通し合っている複数のブレーキ液導管13が開口している。このようにして、液圧による動力式車両ブレーキ装置のスリップコントロールの液圧構成要素を互いに結合させている2つのブレーキ液導管13が、パワーシリンダボア3の外側周辺で互いに結合されている。両ブレーキ液導管13は、本発明の図示した実施形態では、断面の外側にあり、それ故両ブレーキ液導管13のうちの1つは、断面の中へ回転させて図示されている。他のブレーキ液導管13は、図面では見えない。
【0025】
液圧ブロック2を貫通しているパワーシリンダボア3は、一端で、お椀状のシリンダカバー14で閉止され、シリンダカバーは、本実施形態では、パワーシリンダボア3にねじ込まれている。たとえば割り座金を用いた固定も可能であり、割り座金は、外側で、パワーシリンダボア3の内側で周回するように延びる溝に食い込み、内側で、シリンダカバー14の外面に設けた周回するように延びる溝に食い込む(図示せず)。シリンダカバー14は液圧ブロック2から外側へ突出して、パワーシリンダボア3を延長させ、よってパワーピストン4の変位距離を延長させている。
【0026】
シリンダカバー14は、複数の半径方向スリットを有する縁を備えたクラウンカバーであり、この縁でもってシリンダカバーはガイドブシュ5を軸線方向においてパワーシリンダボア3内で保持する。半径方向スリットをブレーキ液が貫流することができる。
【0027】
パワーシリンダボア3は、ガイドブシュ5の外側で、パワーピストン4よりも大きな直径を有し、その結果パワーピストン4とパワーシリンダボア3との間に環状隙間15がある。同様に、シリンダカバー14はパワーピストン4よりも大きな内径を有し、その結果シリンダカバー14内にも、パワーピストンとシリンダカバー14との間に環状隙間16がある。これにより、パワーピストン4はもっぱらガイドブシュ5内で半径方向に案内されている。
【0028】
動力でブレーキ圧を発生させるためにパワーシリンダボア3内でパワーピストン4を変位させるため、液圧アッセンブリ1は電動機17を有し、電動機は、パワーピストン4を、減速装置としての遊星歯車装置18とボールスクリュー装置19とを介して、パワーシリンダボア3内で変位させる。ボールスクリュー装置19は、一般的にはスパイラルギヤ装置または回転/並進型減速装置とも解釈できる。ボールスクリュー装置19は、パワーピストン4に対して且つパワーシリンダボア3に対して同軸に部分的にパワーピストン4内に配置され、この目的のためにパワーピストンは中空ピストンとして実施されている。ボールスクリュー装置19は、管状の軸受保持体21を用いて液圧ブロック2の外面に配置されている玉軸受20を用いて支持されている。遊星歯車装置18は、同様にパワーシリンダボア3に対して且つパワーピストン4に対して同軸に、ボールスクリュー装置19と電動機17との間に配置されている。電動機17はモータハウジング22を有し、モータハウジングは、同様にパワーシリンダボア3に対して且つパワーピストン4に対して同軸に、液圧ブロック2の外面にねじ止めされている。電動機17と、遊星歯車装置18と、ボールスクリュー装置19とは、電気機械型動力式駆動装置23を形成しており、この電気機械型動力式駆動装置により、パワーピストン4は、車両ブレーキ装置のためのブレーキ圧を発生させるためにパワーシリンダボア3内を動力で軸線方向へ変位可能である。動力式駆動装置23は、パワーシリンダボア3と、シリンダカバー14と、パワーピストン4とともに、本発明による液圧アッセンブリ1の動力式ブレーキ圧発生装置24を形成している。動力でブレーキ圧を電気機械により発生させる以外のものを、本発明は除外するものではない。
【0029】
図示し、説明している本発明の実施形態では、液圧ブロック2はブレーキマスタシリンダボア25を有し、ブレーキマスタシリンダボア内には図示していないブレーキマスタシリンダピストンが配置され、ブレーキマスタシリンダピストンは、機械的にピストン棒を介して、図示していないフットブレーキペダルまたはハンドブレーキレバーによりブレーキマスタシリンダボア25内で変位可能である。さらに、液圧ブロック2は、たとえばばねで付勢される図示していないシミュレータピストンのためのシミュレータシリンダボア26を有している。車両ブレーキ装置の動力操作の際にブレーキマスタシリンダピストンをブレーキマスタシリンダボア25内で変位させることができるようにするため、ブレーキマスタシリンダボア25からブレーキ液がシミュレータシリンダボア26内へ排除可能である。車両ブレーキ装置は、動力式ブレーキ圧発生装置24以外にも、筋力でもブレーキマスタシリンダピストンをブレーキマスタシリンダボア25内で変位させることによって操作することができ、このことは特に動力式ブレーキ圧発生装置24の不具合時または故障時に意図されている。
【0030】
パワーシリンダボア3、ブレーキマスタシリンダボア25、および/または、シミュレータシリンダボア26は、穿孔以外の方法によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 液圧アッセンブリ
2 液圧ブロック
3 パワーシリンダボア
4 パワーピストン
5 ガイドブシュ
6 パッキン溝
7 第1のピストンパッキン
8 環状段部
9 第2のピストンパッキン
10 ブレーキ液導管
11 通路
12 溝
13 ブレーキ液導管
14 シリンダカバー
15 環状隙間
16 環状隙間
25 ブレーキマスタシリンダボア
26 シミュレータシリンダボア
図1