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特許7438360排ガス後処理装置および排ガス後処理装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】排ガス後処理装置および排ガス後処理装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240216BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240216BHJP
   F01N 3/027 20060101ALI20240216BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/28 L
F01N3/027 C
C04B38/00 303Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022534748
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2020085055
(87)【国際公開番号】W WO2021116095
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】102019219150.9
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヒルト
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ブリュック
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー シュトック
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-202278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218817(US,A1)
【文献】特開平05-059939(JP,A)
【文献】特開平11-072017(JP,A)
【文献】特表平05-509037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0307775(US,A1)
【文献】特開平06-039294(JP,A)
【文献】特表2015-535796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/28
F01N 3/027
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出源の排ガスを後処理する装置であって、排ガスにより通流可能である排ガス路と、触媒活性の表面コーティングを備えたセラミックス製のハニカム体(1,5,8,12,15)を有する少なくとも1つの触媒と、金属製の電気的な導体(3,7,9)によって形成されている、電気的に加熱可能な加熱手段(3,7,9)と、を備え、前記ハニカム体(1,5,8,12,15)が、ガス流入側(11,16)からガス流出側へと通流可能な複数の流路を有している、排ガスを後処理する装置において、
前記導体(3,7,9)が、前記セラミックス製のハニカム体(1,5,8,12,15)内に統合されており、前記導体(3,7,9)が、流れ方向で見て、前記ガス流入側(11,16)の下流側かつ前記ガス流出側の上流側に配置されており、
前記導体(3,7,9)が、前記ガス流入側(16)および/または前記ガス流出側の端面に設けられた切欠き(17)内に挿入されており、
前記ガス流入側(16)における切欠き(17)は、連結した溝として形成されている、ことを特徴とする、排ガスを後処理する装置。
【請求項2】
前記導体が、係止エレメントにより前記セラミックス製のハニカム体内で位置固定されている、請求項記載の装置。
【請求項3】
前記セラミックス製のハニカム体(5)が、ディスクエレメント(6)として形成された少なくとも2つのハニカム体から形成されており、該ハニカム体が、流れ方向で相前後して配置されており、前記ディスクエレメント(6)のそれぞれが、統合された導体(7)を有しており、前記導体(7)が、前記ディスクエレメント(6)内で互いに導電接続されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
複数の導体が、前記ハニカム体内に統合されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記導体(3,7,9)が、前記ガス流入側(11,16)の端面に対して平行な1つの平面に配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記導体が、前記ガス流入側の端面に対して平行な1つの平面にも、前記端面に対して横方向にも配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
1つ以上の導体(7)が、前記ハニカム体(5)内の互いに対して平行な複数の平面内に配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項記載の装置の、金属製の電気的な導体(3,7,9)を備えたセラミックス製のハニカム体(1,5,6,8,12,15)を製造する方法であって、以下の製造ステップ、すなわち、
ラミックス製のハニカム体(1,5,6,8,12,15)を形成するステップと、
前記セラミックス製のハニカム体(1,5,6,8,12,15)内に金属製の導体(3,7,9)を押し込むステップと、
押し込まれた前記金属製の導体(3,7,9)を備えた前記ハニカム体(1,5,6,8,12,15)を焼結するステップと、
を実施することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記金属製の導体(3,7,9)を、前記ハニカム体(1,5,6,8,12,15)の端面に、該ハニカム体(1,5,6,8,12,15)のガス流入側(11,16)からガス流出側の方向へと押し込む、請求項記載の方法。
【請求項10】
複数の金属製の導体を前記ハニカム体の前記端面内に押し込む、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記金属製の導体(3,7,9)が、定義された延在形状に沿っている、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出源、特に内燃機関の排ガスを後処理する装置であって、排ガスにより通流可能である排ガス路と、触媒活性の表面コーティングを備えたセラミックス製のハニカム体を有する少なくとも1つの触媒と、金属製の電気的な導体によって形成されている、電気的に加熱可能な加熱手段と、を備え、ハニカム体が、ガス流入側からガス流出側へと通流可能である複数の流路を有している装置に関する。さらに本発明は、ハニカム体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス温度を上昇させるために、内燃機関の排ガス路内では、排ガス後処理のためにそれぞれ必要となる最低温度により迅速に到達するために、電気的な加熱手段が使用される。これにより、使用される触媒が十分な排ガス後処理を可能にする、いわゆるライトオフ温度に、より迅速に到達することが試みられる。これは特に、内燃機関のコールドスタート時に有利である。ハイブリッド車両に関して、このようなコールドスタートがより高い反復率で発生してしまうので、電気的な追加加熱が必要である。
【0003】
排気系において使用される触媒は、金属製の母材またはセラミックス製の母材を有している。追加加熱器は、通常、通電する金属製の導体によって形成され、この導体は、排ガスの流れ方向において対応する触媒の上流側に配置されている。
【0004】
従来技術の装置における欠点は、特にセラミックス製の触媒母材に関する電気的な加熱システムの実施が、これまでのところ不十分であることである。特に、公知のシステムの加熱効果および耐久性は最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、電気的な加熱源を有していて、排ガス流および/またはセラミックス製の母材の改善された加熱を可能にする、排ガス後処理装置を提供することにある。さらに、このような装置を製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
装置に関する課題は、請求項1記載の特徴を有する装置によって解決される。
【0007】
本発明の1つの実施例は、排出源、特に内燃機関の排ガスを後処理する装置であって、排ガスにより通流可能な排ガス路と、触媒活性の表面コーティングを備えたセラミックス製のハニカム体を有する少なくとも1つの触媒と、金属製の電気的な導体により形成されている、電気的に加熱可能な加熱手段と、を備え、ハニカム体が、ガス流入側からガス流出側へと通流可能な複数の流路を有しており、導体が、セラミックス製のハニカム体内に統合されており、導体が、流れ方向で見て、ガス流入側の下流側かつガス流出側の上流側に配置されている、排出源の排ガスを後処理する装置に関する。
【0008】
セラミックス製のハニカム体は、従来技術において広く知られており、たとえば押出成形、プレス成形または流込み成形により形成され、次いで焼結されている。ハニカム体は、複数の流路を有しており、これらの流路は、ガス流入側からガス流出側への主方向に沿って通流可能である。
【0009】
金属導体は、たとえば、金属線によって形成されていてよい。適切な抵抗を得るために、様々な直径および横断面の他に、使用する材料も変更することができる。加熱効果は、導体をハニカム体の外側の電圧源に接続し、電流を加えることによって、導体のオーム抵抗を利用して得られる。
【0010】
これにより導体がセラミックス製のハニカム体内に配置されているので、流れ方向でガス流入側の下流側かつガス流出側の上流側における配置が好ましい。したがって、導体は、特に、ガス流入側、またはガス流入側の上流側には配置されていない。
【0011】
導体が、ガス流入側および/またはガス流出側の端面に設けられた切欠き内に挿入されていると、特に有利である。切欠きは、たとえば切削法により形成することができる。たとえば、ハニカム体のガス流入側の端面に溝をフライス加工することができ、この溝内に導体が挿入される。この場合、溝の延在形状によって、導体の配置も決定される。使用目的に応じて、たとえば、流れ方向で見て下流側の領域での加熱が目論まれる場合、金属製の導体がガス流出側にも配置されていてよい。
【0012】
導体が、係止エレメントによってセラミックス製のハニカム体内で位置固定されている場合も有利である。1つまたは複数の切欠きに加えて、導体をハニカム体内で位置固定する複数の係止エレメントが設けられていてよい。位置固定は、たとえば、突出部または係止突起により行うことができる。代替的には、たとえば複数の流路のうちの個別の流路に挿入されて、これにより導体を位置固定するクランプエレメントも設けられていてよい。
【0013】
好適な1つの実施例は、セラミックス製のハニカム体が、ディスクエレメントとして形成された少なくとも2つのハニカム体から形成されており、これらのハニカム体が、流れ方向で相前後して配置されており、ディスクエレメントのそれぞれが、統合された導体を有しており、これらの導体が、ディスクエレメント内で互いに導電接続されていることを特徴としている。
【0014】
ハニカム体全体が、複数のディスクエレメントから形成されていてよく、これらのディスクエレメントはそれぞれ、ハニカム体全体よりも短い軸方向の延在長さを有している。これらのディスクエレメントは、好適には、同一のセル密度およびチャネル分布を有している。代替的な構成では、互いに異なるセル密度およびチャネル分布を個別のディスクエレメント内に設けることもできる。
【0015】
ディスクエレメントの各々は、上述の原理に従ってハニカム体として作用するディスクエレメント内に配置され位置固定されている電気的な導体を有していてよい。個別の導体は、適切な電気的な接続部によって互いに接続されて、1つの共通の導体を形成していてよい。これにより、その主通流方向に沿って見て、ガス流入側に対して平行な多数の平面内で加熱導体を有するハニカム体が形成される。
【0016】
複数の導体がハニカム体内に統合されている場合も好適である。
【0017】
導体が、1つの共通の平面内に配置されているか、または好適にはガス流入側に対して平行に配置されている互いに異なる平面内に配置されていてもよい。これらの平面は、好適にはハニカム体の軸方向で互いにずらされて配置されている。
【0018】
さらに、導体が、ガス流入側の端面に対して平行な1つの平面内に配置されていると有利である。
【0019】
さらに、導体が、ガス流入側の端面に対して平行な1つの平面内にも、端面に対して横方向にも配置されていると、有利である。したがって、導体は、ハニカム体の軸方向、つまり端面に対して横方向にも延びていてよい。したがって、たとえば1つの導体を複数の平面のために利用することができる。
【0020】
また、1つ以上の導体が、ハニカム体内の互いに対して平行な複数の平面内に配置されている場合も好都合である。
【0021】
方法に関する課題は、請求項9記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0022】
本発明の1つの実施例は、先行する請求項のいずれか1項記載の、金属製の電気的な導体を備えたセラミックス製のハニカム体を製造する方法であって、以下の製造ステップ、すなわち
たとえばセラミックス粉末または顆粒の成形加工、プレス加工または流込み加工によって、セラミックス製のハニカム体を製造するステップと、
セラミックス製のハニカム体内に金属製の導体を押し込むステップと、
押し込まれた金属製の導体を備えたハニカム体を焼結するステップと、
を実施する方法に関する。
【0023】
導体は、特に、グリーン体と呼ばれるまだ焼結されていないハニカム体に押し込まれる。この時点では、セラミックスは、焼結プロセス後に生じるような強度をまだ有していない。導体を押し込み、次いで焼結することにより、セラミックス製のハニカム体内における導体の精度のよい耐久性の収容が達成される。導体は、たとえば、所望の形態でガス流入側の端面上に置かれ、次いでハニカム体内に面状に押し込まれてよい。
【0024】
付加的な加工ステップは、軸方向の凹設部の予備形成によって特徴付けられていてよく、この場合に、適切な機械加工を利用して、セラミックス製のハニカム体内に金属製の導体を挿入するための凹設部が形成される。
【0025】
さらに、金属製の導体を、ハニカム体の端面内に、ハニカム体のガス流入側からガス流出側の方向へと押し込むと有利である。このようにすると、加熱のための導体は、流れ方向で見てハニカム体の始端部にあり、これにより、流れる排ガスは主に、ハニカム体を通流する前に加熱される。これは、排ガスのより迅速な加熱を促進する。
【0026】
さらに、金属製の導体が定義された延在形状に沿っていると好都合であり、この場合に導体は、特に螺旋状またはメアンダ状に配置されている。特に、排ガスのできるだけ均質な加熱を確実にするために、導体がハニカム体の横断面にわたってできるだけ均質に分布されて配置されていると有利である。
【0027】
不均等な分布により、たとえば、ハニカム体を通る通流が不均質な場合に、改善された加熱を達成することができる。不均質な通流は、たとえば、排ガスの流れ区間における変向により生じることがあり、これによって、排ガス濃度の不均一な分布が生じ、さらに、ハニカム体の横断面にわたって異なる流速が生じることがある。
【0028】
また、複数の金属製の導体をハニカム体の端面に押し込む場合も有利である。
【0029】
本発明の有利な改良形は、従属請求項および以下の図面の説明に記載されている。
【0030】
以下に、本発明を複数の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ハニカム体の端面における導体の配置を示す概略図である。
図2】複数のディスクエレメントから形成されたハニカム体の断面図である。
図3】ガス流入側の端面の近傍の、押し込まれた導体を備えたハニカム体の断面図である。
図4】上流側に配置された加熱ディスクを備えたセラミックス製のハニカム体を示す図である。
図5】導体を収容するためのフライス加工された溝を備えたハニカム体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、ハニカム体1の端面を上から示した平面図である。図示された例では、方形の横断面を有する流路2を確認することができ、さらに、ハニカム体1の端面に沿って波状に延びる導体3を確認することができる。さらに、導体3の電気的な接触接続のために役立つ接触接続手段4も示されている。
【0033】
導体3は流路2と交差しており、したがって流路2の流れ横断面のある程度の割合を覆っていることを確認することができる。
【0034】
図2は、多数のディスクエレメント6から形成されているハニカム体5を示している。ディスクエレメント6のそれぞれは、導体7を有している。導体7は、ディスクエレメント6間で導電接続されている。したがって、導体7は、ハニカム体5全体を通って延びる1つの共通の導体を形成している。ディスクエレメント6の積み重ねにより、実際には、流れる排ガスの加熱が行われる多数の平面がハニカム体5内に形成される。
【0035】
図3は、ハニカム体8の断面を示している。壁部10により流路が示唆されており、これらの流路は、ガス流入側11からハニカム体8を通って延びている。参照符号9により、電気的な導体が示されており、この導体は、図1に示した導体3と同様に、ハニカム体8の横断面にわたって分配されて配置されている。特に、導体9が、ハニカム体8の端面11のすぐ近傍に配置されていることを確認することができる。
【0036】
図4は、セラミックス製のハニカム体12を示している。このハニカム体12の上流側には加熱ディスク13が配置されており、加熱ディスク13は、結合エレメント14によってハニカム体12に結合されている。加熱ディスク13は、好適には同様にセラミックス製のハニカム体であり、このハニカム体は上述の図面と同様の導体を有している。
【0037】
図5は、ハニカム体15の断面を示している。ガス流入側16には切欠き17が示されており、切欠き17は、完成した、つまり焼結されたハニカム体に加工されている。切欠きは、たとえば切削加工により加工することができる。個別の切欠き17は、ガス流入側16を上から見た平面図において、連結した溝を形成することができ、この溝内に導体が挿入される。
【0038】
図1図5に示した実施例は、特に限定的な性格を有しておらず、本発明の思想を明らかにするために役立つ。
図1
図2
図3
図4
図5