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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20240216BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20240216BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240216BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H04B10/2507
G02B6/036
G02B6/02 416
G02B6/26 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022540507
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2020138718
(87)【国際公開番号】W WO2021136041
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】201911417874.6
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】グオ,チエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ルォイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジチュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-050820(JP,A)
【文献】特表2014-527301(JP,A)
【文献】特開2019-154004(JP,A)
【文献】特開2016-082318(JP,A)
【文献】特表2014-526815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/2507
G02B 6/036
G02B 6/02
G02B 6/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーおよびモード変換器を有する通信システムであって、前記少数モード・ファイバーは、M個の受領されたモード群を送信するように構成されており、前記少数モード・ファイバーにおける伝送中の前記M個のモード群の群遅延は、中心のまわりに対称的に分布し、前記M個のモード群の群遅延の中心は、前記M個のモード群の群遅延のうちの最大値と最小値の間の中央値であり、前記M個のモード群のそれぞれにおいて信号が搬送され、Mは、1より大きい整数であり;
前記モード変換器は:前記少数モード・ファイバーから前記M個のモード群を受領し、前記M個のモード群における第1のモード群と第2のモード群との間のモード群交換を行ってM個の交換されたモード群を得て、該M個の交換されたモード群を次のスパンの少数モード・ファイバーに結合するように構成されており、前記第1のモード群の群遅延と前記第2のモード群の群遅延は前記中心のまわりに対称的であり、前記第1のモード群と前記第2のモード群は前記M個のモード群のうちの少なくとも2つである、
通信システム。
【請求項2】
群遅延が前記中心のまわりに対称的である、前記M個のモード群のうちの第1のモード群および第2のモード群をそれぞれ含むすべてのペアは、群遅延和が等しい、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記少数モード・ファイバーが、内側から外側に順に、コア、内側クラッド、トレンチ、および外側クラッドを有し、
前記M個のモード群の群屈折率は、前記少数モード・ファイバーにおいて中心のまわりに対称的に分布し、
前記M個のモード群のそれぞれの群屈折率は、そのモード群の有効屈折率に基づいて決定され、そのモード群の有効屈折率は、前記少数モード・ファイバーの前記コアの屈折率、前記内側クラッドの屈折率、前記外側クラッドの屈折率、前記トレンチの屈折率、前記コアの半径、前記内側クラッドの幅、前記トレンチの幅、および前記外側クラッドの幅に基づいて決定される、
請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記モード変換器は、
【数33】
個の異なるグレーティング周期のファイバーグレーティングを有し、1つのグレーティング周期は1つの第1のモード群および1つの第2のモード群に対応し、
【数34】
は切り下げを示し、前記
【数35】
個の異なるグレーティング周期のそれぞれは、通信波長、対応する第1のモード群の有効屈折率、および対応する第2のモード群の有効屈折率に基づいて決定される、
請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記モード変換器の各グレーティング周期について、前記グレーティング周期に対応する前記第1のモード群の有効屈折率と、前記グレーティング周期に対応する前記第2のモード群の有効屈折率との差に前記グレーティング周期を乗じたものが前記通信波長に等しい、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記
【数36】
個の異なるグレーティング周期の前記ファイバーグレーティングは、カスケード構造または積層構造である、請求項4または5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記モード変換器は、反射位相板または透過位相板を有する、請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
当該通信システムは、増幅器をさらに有しており、
前記モード変換器は、前記少数モード・ファイバーと前記増幅器との間に位置する;または
前記モード変換器は前記増幅器に統合される、
請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年12月31日に中国国家知識産権局に出願された「通信システム」という名称の中国特許出願第201911417874.6号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本願は、通信技術の分野に関し、特に通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ファイバー通信技術の発展に伴い、単一モード・ファイバー通信システムは、増大する通信容量要求を満たすことができない。マルチモード・ファイバーが提案されている。マルチモード・ファイバーは、通信容量要求を満たすことができる(100~200個のモードをサポート可能)が、モード間分散が深刻であり、比較的深刻な信号歪みを引き起こす。よって、時代の要求に応じるような少数モード・ファイバー通信が出現する。少数モード・ファイバーは、モード間分散を低減でき、また通信システムの容量を改善することができる。よって、少数モード・ファイバーはファイバー通信システムにおいて広く使用されている。
【0004】
ファイバー通信システムでは、伝送プロセスにおいて異なるモードで搬送される信号間でクロストークが発生する。よって、受信端は、複数入力複数出力(multiple-input multiple-output、MIMO)アルゴリズムを使用することにより、異なるモードで搬送される信号を復調する必要がある。MIMOアルゴリズムの複雑さは、モード間の差動モード群遅延(differential mode group delay、DMGD)と正に相関する。すなわち、モード間のより大きなDMGDは、より複雑なMIMOアルゴリズムを示し、受信端のより長い信号復調時間を引き起こす。その結果、受信端の信号復調リアルタイム性能は比較的貧弱である。
【0005】
受信端の信号復調の複雑さを低減するために、従来の技術では、DMGDを低減するために、各スパンの少数モード・ファイバーの背後で正/負モード分散少数モード・ファイバーがカスケード接続される。しかしながら、正/負モード分散少数モード・ファイバーの準備プロセスは複雑であり、少数モード・ファイバーは正/負モード分散少数モード・ファイバーに適合することが困難であり、比較的困難なカスケード接続プロセスを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、受信端での到着中の異なるモード群の群遅延を減らすための通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面によれば、本願は、通信システムを提供する。通信システムは、少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーおよびモード変換器を含んでいてもよい。少数モード・ファイバーは、M個の受領されたモード群を送信するように構成されており、少数モード・ファイバーにおける伝送中のM個のモード群の群遅延は、中心のまわりに対称的に分布し、M個のモード群の群遅延の中心は、M個のモード群の群遅延のうちの最大値と最小値の間の中央値であり、M個のモード群のそれぞれにおいて信号が搬送され、Mは、1より大きい整数である。モード変換器は:少数モード・ファイバーからM個のモード群を受信し、M個のモード群における第1のモード群と第2のモード群との間のモード群交換を行ってM個の交換されたモード群を得て、該M個の交換されたモード群を次のスパンの少数モード・ファイバーに結合するように構成されており、第1のモード群の群遅延と第2のモード群の群遅延は中心のまわりに対称的であり、第1のモード群と第2のモード群はM個のモード群のうちの少なくとも2つである。
【0008】
この解決策に基づくと、M個のモード群は少数モード・ファイバーを用いて伝送される。M個のモード群が少数モード・ファイバーの末端に達するとき、M個のモード群の群遅延は中心のまわりに対称的に分布する。群遅延が中心のまわりに対称的に分布するM個のモード群は、モード変換器に入る。モード変換器は、中心のまわりに対称的な第1のモード群と第2のモード群を交換する。たとえば、群遅延が最大値であるモード群は、群遅延が最小値であるモード群と交換され、群遅延が2番目に大きいモード群は、群遅延が2番目に小さいモード群と交換される、などとなる。M個の交換されたモード群はさらに、伝送のために次のスパンの少数モード・ファイバーに結合される。次のスパンの少数モード・ファイバーでの伝送中、群遅延が最大値であるモード群は群遅延が最小値であるモード群に変えられ、群遅延が最小値であるモード群は群遅延が最大値であるモード群に変えられる、などとなる。M個のモード群が次のスパンの少数モード・ファイバーの末端に到着するとき、M個のモード群の群遅延はゼロであり、それにより受信端のMIMOアルゴリズムの複雑さを低減するのを助ける。
【0009】
ある可能な実装では、それぞれ第1のモード群および第2のモード群を含むすべてのペアは、群遅延和が等しい。ここで、第1のモード群および第2のモード群は前記M個のモード群のうちであり、群遅延が中心のまわりに対称的であるさらに、任意的に、Mが偶数である場合、M個の群遅延は、中心のまわりに対称的な群遅延のM/2個の対を含む、すなわち、M個のモード群は、M/2個の第1のモード群およびM/2個の第2のモード群を含む。Mが奇数である場合、M個の群遅延は、中心に関して対称的な群遅延の
【数1】
個の対を含む、すなわち、M個のモード群は、
【数2】
個の第1のモード群、
【数3】
個の第2のモード群、および1つの独立モード群を含む。
【0010】
ある可能な実装では、少数モード・ファイバーは、内側から外側に順に、コア、内側クラッド、トレンチ、および外側クラッドを含む。M個のモード群の群屈折率は、少数モード・ファイバーの中心のまわりに対称的に分布する。M個のモード群のそれぞれの群屈折率は、そのモード群の有効屈折率に基づいて決定され、そのモード群の有効屈折率は、少数モード・ファイバーのコアの屈折率、内側クラッドの屈折率、外側クラッドの屈折率、トレンチの屈折率、コアの半径、内側クラッドの幅、トレンチの幅、および外側クラッドの幅に基づいて決定される。
【0011】
M個のモード群に属し、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群を交換するために、モード変換器は、
【数4】
個の異なる周期のファイバーグレーティングを含んでいてもよく、1つの周期は1つの第1のモード群および1つの第2のモード群に対応し、
【数5】
は切り下げを示す。
【数6】
個の異なる周期のそれぞれは、通信波長、対応する第1のモード群の有効屈折率、および対応する第2のモード群の有効屈折率に基づいて決定される。
【0012】
また、任意的に、グレーティング周期に対応する第1のモード群の有効屈折率と、グレーティング周期に対応する第2のモード群の有効屈折率との差にグレーティング周期を乗じた値は、通信波長に等しい。
【0013】
ある可能な実装では
【数7】
個の異なる周期のファイバーグレーティングは、カスケード構造であってもよく、または積層構造であってもよい。
【数8】
個の異なる周期のファイバーグレーティングが積層構造である場合、それは、異なる領域のファイバーグレーティングの断面が、整合しない位相をもつ他のモード群の結合に及ぼす影響を回避するのに役立つ。
【0014】
ある可能な実装では、モード変換器は、反射位相板または透過位相板を含んでいてもよい。
【0015】
本願では、通信システムは、増幅器をさらに含む。モード変換器は、少数モード・ファイバーと増幅器との間に位置してもよく;またはモード変換器は増幅器に統合されてもよい。モード変換器を増幅器に統合することにより、信号伝送の信号対雑音比を劣化させることなく、モード変換器によって導入される挿入損を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願による、中心のまわりに対称的に分布した値の概略図である。
【0017】
図2】本願による、通信システムのアーキテクチャーの概略図である。
【0018】
図3】本願に係る少数モード・ファイバーの断面構造の概略図である。
【0019】
図4a】本願による、ステップ屈折率少数モード・ファイバーの構造の概略図である。
【0020】
図4b】本願による、ステップ屈折率少数モード・ファイバーの群屈折率プロファイルの概略図である。
【0021】
図4c】本願による、別のステップ屈折率少数モード・ファイバーの群屈折率プロファイルの概略図である。
【0022】
図5a】本願による、傾斜屈折率少数モード・ファイバーの構造の概略図である。
【0023】
図5b】本願による、傾斜屈折率少数モード・ファイバーの群屈折率プロファイルの概略図である。
【0024】
図5c】本願による、別の傾斜屈折率少数モード・ファイバーの群屈折率プロファイルの概略図である。
【0025】
図6a】本願による、ファイバーグレーティングのカスケード構造の概略図である。
【0026】
図6b】本願による、ファイバーグレーティングの積層構造の概略図である。
【0027】
図7a】本願による、位相板に基づくモード変換器によって実行されるモード群変換の概略図である。
【0028】
図7b】本願による、位相板に基づく別のモード変換器によって実行されるモード群変換の構造の概略図である。
【0029】
図7c】本願による、反射位相板であるモード変換器の構造の概略図である。
【0030】
図7d】本願による、透過位相板であるモード変換器の構造の概略図である。
【0031】
図8a】本願による通信システムにおけるモード変換器の位置の概略図である。
【0032】
図8b】本願による、通信システムにおける別のモード変換器の位置の概略図である。
【0033】
図8c】本願による、通信システムにおけるさらに別のモード変換器の位置の概略図である。
【0034】
図9】本願による別の通信システムのアーキテクチャーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
下記は、当業者が本願を理解するのを助けるために、本願のいくつかの用語を記述する。
【0036】
1. 少数モード・ファイバー(few mode fiber、FMF)
【0037】
FMFは、単一コア・ファイバーであり、比較的大きなモード場面積を有し、複数の独立したモードが並列に信号を伝送することを許容する。通例、少数モード・ファイバーは2~50個のモードをサポートする。すなわち、少数モード・ファイバーは、比較的大きなコア面積を有し、複数のモードでの並列信号伝送をサポートするファイバーである。モードは、光が電磁波としてファイバー内で伝送されるときに形成される場の分布の形として理解することができる。すなわち、光は少数モード・ファイバー内を進んでハイブリッドモードを形成し、ハイブリッドモードは通例、線形偏波(linearly polarized、LP)モードと呼ばれる。
【0038】
少数モード・ファイバーは、モード分割多重技術に基づいて信号を伝送する。理想的には、異なるモードは相互に直交する。また、少数モード・ファイバーは複数の相互に直交な独立モードをサポートすることができ、これらのモードは独立したチャネルとして使用され、これらのモードは複数の信号を同時に搬送することができることも理解されうる。
【0039】
2. モード群
【0040】
モード群は、伝搬定数が一貫している複数のモードを含む群である。すなわち、1つのモード群に含まれる複数のモードは、群速度が等しい。1つのファイバーは複数のモード群を伝送することができる。
【0041】
3. 差動モード群遅延(differential mode group delay、DMGD)
【0042】
少数モード・ファイバーで伝送されるモード群は、異なる有効屈折率を有する。v=c/nである、すなわち、異なるモード群は少数モード・ファイバーにおいて異なる速度で伝送されるので、少数モード・ファイバーにおいて異なるモード群がある距離だけ伝送された後にモード群の間に生成される遅延差がDMGDであり、数式は次のようになる:
【数9】
ここで、λは通信波長を表し、vgは群速度を表し、cは真空中の光速を表し、光信号伝搬定数β=neff*k0、k0=2π/λであり、これは開放自由空間に存在する光波の伝搬定数を表し、neffはこのモード群の有効屈折率を表す。
【0043】
4. 有効屈折率
【0044】
有効屈折率は、導波路(たとえば、少数モード・ファイバー)における単位長さの位相遅延を定量的に記述することができる量であり、真空における単位長さの位相遅延に対する相対値である。均一な透明媒体では、屈折率nは、媒体のために波数(単位長さの位相遅延)が増大する程度を定量的に記述するために使用できる:媒体中の波数は真空中の波数のn倍である。有効屈折率neffは、同様の意味を有する:導波路(たとえば、少数のモード・ファイバー)において、波長のβ値は、真空中の波数のneff倍である。ここで、β=neff*k0=neff*(2π/λ)。
【0045】
有効屈折率は、波長に加えて伝送モードにさらに依存することに留意されたい。よって、有効屈折率は、モード屈折率とも呼ばれる。
【0046】
5. 屈折率プロファイル
【0047】
屈折率プロファイルは、屈折率または相対屈折率とファイバーの半径との間の関係を示す。たとえば、n(r)は半径rにおける屈折率を表す。
【0048】
6. 相対屈折率差
【0049】
相対屈折率差は、2つの屈折率の間の差の、相対屈折率に対する比を示す。たとえば、トレンチと外側クラッドとの間の相対屈折率差はΔnTRであり、ここで、ΔnTR=(nTR-nCL)/nCLであり、ここで、nCLは外側クラッドの屈折率を表し、nTRはトレンチの屈折率を表す。
【0050】
7. 中心のまわりの対称的な分布
【0051】
数軸では、原点0から反対方向に等距離にある2つの値点を対称的な点として相互に参照するのが慣例である。たとえば、7と-7は、中心に関して対称的な点として相互に参照される。0を中心とする2つの対称点の値の合計は0である。点0を中心とする対称的な点区間[-a,+a]では、0は含まれず、2a個の有効点があり、最大a対の対称的な点が形成されうる。
【0052】
M個の値は昇順または降順で配列され、中心から等距離の値のすべての対は合計が等しい。この値の対は、中心に関して対称的と呼ばれる。図1は、本願による、中心のまわりに対称的に分布した値の概略図である。たとえば、M=9である。M個の値は{a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8,a9}として逐次的に配列され、M個の値の中心値はa5=(a1+a9)/2であり、a1およびa9は中心から等距離であり、a2およびa8は中心から等距離であり、a3およびa7は中心から等距離であり、a4およびa6は中心から等距離である。また、a1+a9=a2+a8=a3+a7=a4+a6=2a5である。したがって、a1とa9は中心のまわりに対称的であり、a2とa8は中心のまわりに対称的であり、a3とa7は中心のまわりに対称的であり、a4とa6は中心のまわりに対称的である。
【0053】
また、中心のまわりに対称的に分布するM個の値においては、最大値と最小値が中心から等距離にあり、2番目に大きい値と2番目に小さい値が中心から等距離にあり、最大値と最小値との和は、2番目に大きい値と2番目に小さい値との和に等しい、なども理解しうる。
【0054】
モード分割多重に基づく少数モード・ファイバーの通信システムでは、少数モード・ファイバーによってサポートされる直交モードが並列信号伝送のための独立したチャネルとして使用され、それにより通信システムの伝送容量が改善される。加えて、少数モード・ファイバーのモードは比較的大きなモード場面積〔モード・フィールド・エリア〕を有するので、非線形許容度も高い。すなわち、少数モード・ファイバーを含む通信システムは、通信システムの伝送容量を改善することができ、また、システムに対する非線形効果によって生じる干渉を回避するのを助けるが、背景に記述された問題が存在する。
【0055】
背景における技術的問題に鑑み、本願は通信システムを提案する。通信システムは、受信端のMIMOアルゴリズムの複雑さを低減し、伝送システム効率を改善するのに役立つために、通信システムにおける異なるモード群の群遅延を低減することができる。
【0056】
図2から図9を参照して、下記は、本願で提案される通信システムを詳細に説明する。
【0057】
図2は、本願による通信システムのアーキテクチャーの概略図である。通信システムは、少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーおよびモード変換器を含むことができる。図2は、2つのスパンの少数モード・ファイバーおよび1つのモード変換器が含まれる例を示す。少数モード・ファイバーは、M個の受信されたモード群を送信するように構成されている。少数モード・ファイバーにおける伝送中のM個のモード群の群遅延は、中心のまわりに対称的に分布する。モード変換器は:少数モード・ファイバーからM個のモード群を受信し、M個のモード群における第1のモード群と第2のモード群との間でモード群交換を実行してM個の交換されたモード群を得て、該M個の交換されたモード群を次のスパンの少数モード・ファイバーに結合するように構成される。第1のモード群の群遅延および第2のモード群の群遅延は、中心について対称的であり、第1のモード群および第2のモード群は、M個のモード群の少なくとも2つであり、M個のモード群の群遅延の中心は、M個のモード群の群遅延の最大値と最小値との間の中央値であり、M個のモード群のそれぞれにおいて信号が搬送され、Mは、1よりも大きい整数である。
【0058】
本願では、M個のモード群のそれぞれは、1つの群遅延に対応し、M個のモード群はM個の群遅延に対応する。M個の群遅延は、それぞれt1、t2、…、tM-1、tMである。t1、t2、…、tM-1、tMが中心に関して対称的に分布している場合、t1+tM=t2+tM-1=…、すなわちt1とtMは中心に関して対称的であり、t2とtM-1は中心に関して対称的である。対応して、t1に対応するモード群とtMに対応するモード群の一方は第1のモード群であり、他方のモード群は第2のモード群であり;t2に対応するモード群とtM-1に対応するモード群の一方は第1のモード群であり、他方のモード群は第2のモード群である。たとえば、t1に対応するモード群が第1のモード群、tMに対応するモード群が第2のモード群であり、t2に対応するモード群が第1のモード群、tM-1に対応するモード群が第2のモード群である、などとなる。別の例では、t1に対応するモード群は第2のモード群であり、tMに対応するモード群は第1のモード群であり、t2に対応するモード群は第2のモード群であり、tM-1に対応するモード群は第1のモード群である、などとなる。モード変換器は、第1のモード群を第2のモード群に変換し、第2のモード群を第1のモード群に変換するように構成されることを理解されたい。すなわち、モード変換器は、第1のモード群のモード場を第2のモード群のモード場に徐々に変換し、第2のモード群のモード場を第1のモード群のモード場に徐々に変換するように構成される。
【0059】
ある可能な実装では、1つのモード変換器は、前記少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーにおけるスパン2つ毎の少数モード・ファイバー間に含まれる、すなわち、あるスパンの少数モード・ファイバー+モード変換器+次のスパンのモード変換器である。前記少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーは、量が偶数であるスパンの少数モード・ファイバーであってもよく、または数が奇数であるスパンの少数モード・ファイバーであってもよいことに留意されたい。前記少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーが偶数個のスパンの少数モード・ファイバーである場合、M個のモード群があるスパンの少数モード・ファイバー+モード変換器+次のスパンのモード変換器を通過した後、M個の群の群遅延はゼロであってもよい。前記少なくとも2つのスパンの少数モード・ファイバーが奇数個のスパンの少数モード・ファイバーである場合、M個のモード群の群遅延は、最後のスパンの少数モード・ファイバーにおける群遅延であってもよい。
【0060】
図2に示される通信システムに基づいて、M個のモード群は、少数モード・ファイバーを使用して送信される。M個のモード群が少数モード・ファイバーの末端に達するとき、M個のモード群の群遅延は中心のまわりに対称的に分布する。群遅延が中心に関して対称的に分布するM個のモード群は、モード変換器に入る。モード変換器は、中心のまわりに対称的な第1モード群と第2モード群を交換する。たとえば、群遅延が最大値であるモード群は、群遅延が最小値であるモード群と、群遅延が2番目に大きい値であるモード群は、群遅延が2番目に小さい値であるモード群と交換される、などとなる。M個の交換されたモード群はさらに、伝送のために次のスパンの少数モード・ファイバーに結合される。次スパンの少数モード・ファイバーでの伝送中、群遅延が最大値であるモード群は群遅延が最小値であるモード群に変化し、群遅延が最小値であるモード群を群遅延は群遅延が最大値であるモード群に変化する、などとなる。M個のモード群が次のスパンの少数モード・ファイバーの末端に到着するとき、M個のモード群の群遅延はゼロであり、それにより受信端のMIMOアルゴリズムの複雑さを低減するのを助ける。
【0061】
以下では、例示的な具体的な実装解決策を提供するために、図2に示される構造を別個に説明する。
【0062】
1. 少数モード・ファイバー
【0063】
本願では、少数モード・ファイバー(few mode fiber)は、コア、内側クラッド(inner cladding)、トレンチ(trench)、および外側クラッド(outer cladding)を順次含んでいてもよい。図3は、本願による少数のモード・ファイバーの断面構造の概略図である。少数モードのファイバーは、コアとクラッドを含む。クラッドは、光波を搬送するコアの外側を覆うガラスまたは他の透明材料の層であり、コアよりもわずかに低い屈折率を有し、よって、光を、コア内で伝送されることに制限することができる。クラッドは、内側クラッドおよび外側クラッドを含む。図3における少数モード・ファイバーの内側クラッドは、コアを包む環状構造であり、内側クラッドを取り囲む構造は、トレンチであり(凹部層ともいう)、最も外側の環状構造は、外側クラッドである。
【0064】
少数モード・ファイバーは、屈折率プロファイルに基づいて、ステップ屈折率(step-index)少数モード・ファイバーと傾斜屈折率(graded-index)少数モード・ファイバーに分類されうる。以下は、ステップ屈折率少数モード・ファイバーと傾斜屈折率少数モード・ファイバーに基づいて、2つのタイプの少数モード・ファイバーにおける伝送中のM個のモード群の群遅延が中心のまわりに対称的に分布する実装を詳細に説明する。
【0065】
ある可能な実装では、少数モード・ファイバーにおける伝送中のM個のモード群の群遅延が中心のまわりに対称的に分布するために、屈折率プロファイル、コアの半径、トレンチの幅、内側クラッドの幅、および少数モード・ファイバーの外側クラッドの幅のような少数モード・ファイバーのパラメータを設計することができる。
【0066】
タイプ1。ステップ屈折率少数モード・ファイバー
【0067】
図4aは、本願によるステップ屈折率少数モード・ファイバーの構造の概略図である。ステップ屈折率少数モード・ファイバーの屈折率プロファイル関数は以下の通りである:
【数10】
ここで、nCOはコアの屈折率を表し、nICは内側クラッドの屈折率を表し、nCLは外側クラッドの屈折率を表し、nCL/(1-ΔnTR)はトレンチの屈折率を表し、ΔnTRはトレンチと外側クラッドの間の相対屈折率差ΔnTR=(nTR-nCL)/nCLを表し、RCOはコアの半径を表し、RICは内側クラッドの幅を表し、RTRはトレンチの幅を表し、RCLは外側クラッドの幅を表す。なお、トレンチは、内側クラッドと外側クラッドとの間に掘られた溝であり、よって、nIC=nCLであることが理解されるべきである。
【0068】
本願では、少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数はMであり、対応する正規化された周波数パラメータはVである。少数モード・ファイバーのパラメータの範囲は、以下の関係を使用して決定されうる:
【数11】
ここで、NAは開口数を表し、λは通信波長を表し、動作波長とも呼ばれる。NAは経験値であり、0.12±0.02の値範囲を有することに留意すべきである。少数モード・ファイバーが比較的高い非線形パワー閾値を有することを保証するために、比較的大きなモード場面積が必要とされる。よって、比較的大きなコア半径が必要とされる。対応する開口数も比較的大きく、NAは0.14であってもよい。さらに、λの値範囲は、1.5μm~1.6μmであってもよい。
【0069】
さらに、外側クラッドの材料は、主に二酸化ケイ素である。λ=1.55μmの場合、対応する屈折率は1.4444である。少数モード・ファイバーの準備プロセスにプロセス誤差等が存在することがあるので、外側クラッドの屈折率は通例±0.006の誤差を有する。具体的には、1.4444-0.006≦nCL≦1.4444+0.006、つまり1.4434≦nCL≦1.4446である。nCO
【数12】
に従って決定されてもよい。ΔnTRは経験的な値であり、-0.0045≦ΔnTR<0の値範囲をもつ。
【0070】
モード群をコアに閉じ込めるために、トレンチはコアから遠すぎることはできない。通例、RICの値範囲は0≦RIC≦RCO/2である。少数モード・ファイバーの製造プロセスを考慮すると、より広いトレンチは、より高い延伸コストを示す。したがって、RTRの値範囲は通例0≦RTR≦RCOであり、RCLは通例62.5μmである。
【0071】
上述の計算に基づいて、ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータの範囲は、以下の通りであることがわかる。
【数13】
【0072】
RCOは、ステップ屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数に基づいて決定されうることに留意されたい。少数モード・ファイバーの関連した屈折率パラメータの最大誤差は1e-4であることがあり、構造関連のパラメータRCO、RIC、RTRの最大相対誤差は2.5%である。
【0073】
たとえば、少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数は、M=3である。対応する正規化された周波数パラメータVの範囲が3.8≦V≦5.1であることが(たとえば、テーブルルックアップを通して)決定されうる。すなわち、少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数と正規化された周波数パラメータとの間には対応関係がある。さらに、任意的に、RCOの範囲は、V=2πRCONA/λに従って決定されてもよい。シミュレーションを通して、RCOの範囲がシミュレーション結果に与える影響は比較的小さいことが見出されていることに留意すべきである。シミュレーションの複雑さを低減するために、RCOの範囲における中央値が使用されてもよく、たとえば、RCOの範囲における最大値と最小値の平均が使用されてもよい、すなわち、RCO=8.5μmとなる。さらに、任意的に、1.4502≦nCO(r)≦1.4514が、
【数14】
に従って決定されてもよい。さらに、0≦RIC≦RCO/2なので、0<RIC≦4.25μmが得られる。RTRの値範囲は0≦RTR≦RCOなので、0<RTR≦8.5μmが得られる。
【0074】
上述の計算に基づいて、ステップ屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数が3である場合、ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータの範囲は以下の通りであることがわかる:
【数15】
【0075】
ある可能な実装では、長さがLであるスパンの少数モード・ファイバーを用いて3つのモード群が伝送された後、群遅延はそれぞれt1=L/v1=L・ng1/c、t2=L/v2=L・ng2/c、t3=L/v3=L・ng3/cとなる。ここで、ng1、ng2、ng3はそれぞれそれらのモード群に対応する群屈折率であり、cは真空中の光速である。よって、少数モード・ファイバーにおける伝送中のモード群の群遅延は、モード群の群屈折率に直接比例すると決定できる。たとえば、M個のモード群の群遅延は、それぞれt1、t2、…、tM-1、tMであり、M個のモード群の群屈折率は、それぞれng1、ng2、…ngM-1、ngMである。t1+tM=t2+tM-1=…を満たすために、ng1+ngM=ng2+ngM-1…が要求される。さらに、任意的に、モード群の群屈折率および有効屈折率はngi=neffi-λ(dneffi/dλ)を満たす。ここで、ngiはi番目のモード群の群屈折率を表し、neffiはi番目のモード群の有効屈折率を表す。
【0076】
M個のモード群の群屈折率が中心のまわりに対称的に分布するときに得られる、ステップ屈折率少数モード・ファイバーの対応するパラメータは、ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータの範囲に基づいてシミュレーションソフトウェアCOMSOLおよびMATLABを用いることによって、同時シミュレーションを行うことによって決定されうる。
【0077】
ある可能な実装では、コアの半径RCO、コアの屈折率nCO、内側クラッドの幅RIC、内側クラッドの屈折率nIC、トレンチの幅RIC、およびトレンチと外側クラッドとの間の相対屈折率差ΔnTRを包括的に走査して、少数モード・ファイバーのパラメータとM個の有効屈折率との間の関係を得ることができる。さらに、少数モード・ファイバーのパラメータとM個の群屈折率との関係は、モード群の有効屈折率とモード群有効屈折率との関係に基づいて決定されてもよい。たとえば、M個のモード群の群屈折率を別個に決定するために、パラメータのうちの1つが変数として使用されてもよく、走査ステップは0.1である。
【0078】
表1に示されるように、少数モード・ファイバーのパラメータ群{nCO,nCL,nIC,ΔnTR,RCO,RIC,RTR}に基づいて、M個の有効屈折率が決定されてもよく、さらに、M個の群屈折率が決定されてもよい。
表1 少数モード・ファイバーのパラメータ、モード群の有効屈折率、およびモード群の屈折率
【表1】
【0079】
前述の表1に基づいて、ng1+ngM=ng2+ngM-1…を満たす、少数モード・ファイバーの対応するパラメータ{nCO,nCL,nIC,ΔnTR,RCO,RIC,RTR}が、少数モード・ファイバーにおいて伝送されるM個のモード群の群遅延の、中心のまわりの対称的な分布を実現するためのパラメータとして決定される。
【0080】
たとえば、ステップ屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群は、LP01、LP11、およびLP21である。シミュレーションを通じて、ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータが、nCO(r)=1.45、nCL=nIC=1.444、RCO=8.5μm、RIC=1μm、RTR=4μm、ΔnTR=-0.001であるとき、3つのモード群の群屈折率はng1+ng3=2ng2を満たすことが決定されうる。具体的には、3つのモード群の群遅延はt1+t3=2t2を満たす。すなわち、3つのモード群の群遅延は、中心のまわりに対称的に分布する。
【0081】
図4bは、本願による通信波長範囲1.5μm~1.6μmにおいてステップ屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群LP01、LP11、およびLP21の群屈折率プロファイルの概略図である。図4bに示される3つのモード群の群屈折率は、COMSOLおよびMATLABを用いて同時シミュレーションを行うことにより得られた有効屈折率に基づいて決定される。図4bから、3つのモード群LP01、LP11、およびLP21の群屈折率はすべて、通信波長が増加するにつれて増加し、同じ傾向で変化することが決定されうる。λ=1.55μmにおける3つのモード群(LP01、LP11、LP21)の群屈折率、群速度、群遅延はそれぞれ表2に示される。LP01の群屈折率は1.46993であり、LP01の群遅延は0である。LP11の群屈折率は1.47100であり、LP11の群遅延は3.5200ps/mである。LP21の群屈折率は1.47204であり、LP21の群遅延は7.0431ps/mである。したがって、LP01、LP11、LP21の群屈折率は、中心のまわりに対称的に分布している、すなわち、1.46993+1.47204≒2*1.47100となる;LP01、LP11、LP21の群遅延も、中心のまわりに対称的に分布している、すなわち、2*3.5200≒0+7.0431となる、と判断することができる。
表2 LP01、LP11、およびLP21の3つのモード群の群屈折率、群速度、および群遅延(λ=1.55μm)
【表2】
【0082】
ある可能な実装では、中心に関して対称的に分布するM個の群遅延は、(表2に示されるように)等差関係にあってもよく、等差関係になくてもよい。等差関係を満たすよう少数モード・ファイバーにおける伝送中のM個のモード群の群遅延を設計するために、等差関係が満たされるかどうかを判定するために、M個のモード群のそれぞれから前のモード群が差し引かれる必要がある。一方では、少数モード・ファイバーの屈折率プロファイルと構造パラメータを決定するためのシミュレーション・プロセスは比較的複雑である。他方では、少数モード・ファイバーの製造コストは比較的高い。少数モード・ファイバーの製造コストとシミュレーションの複雑さを低減するために、少数モード・ファイバーは、以下のように設計されてもよい:少数モード・ファイバーで伝送されるM個のモード群の群遅延は、等差なしに中心のまわりに対称的に分布する。下記は、例として、ステップ屈折率少数モード・ファイバーの屈折率プロファイルと構造パラメータを示す。これにより、ステップ屈折率少数モード・ファイバーにおいて伝送されるM個のモード群に対応するM個の群遅延が、等差なしに中心のまわりに対称的に分布させられることができる。たとえば、ステップ屈折率少数モード・ファイバーは4つのモード群(LP01、LP11、LP02、LP31)を送信する。前述の同じプロセスに基づいて、ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータは、nCO(r)=1.45、nCL=nIC=1.444、ΔnTR=0、RCO=11.9μm、RIC=0μm、RTR=0μmであり、ステップ屈折率少数モード・ファイバーにおける伝送中のLP01、LP11、LP02、およびLP31の群遅延は、等差なしに中心のまわりに対称的に分布させられることができる。図4cを参照すると、λは1.530μm~1.565μmの範囲であり、LP01の群遅延は0であり、LP11の群遅延は2.344ps/mであり、LP02の群遅延は5.925ps/mであり、LP31の群遅延は8.221ps/mである。
【0083】
タイプ2。傾斜屈折率少数モード・ファイバー
【0084】
図5aは、本願による傾斜屈折率少数モード・ファイバーの構造の概略図である。傾斜屈折率少数モード・ファイバーの屈折率プロファイル関数は以下の通りである:
【数16】
ここで、ΔnCOはコアと外側クラッドの間の相対屈折率ΔnCO=(nCO-nCL)/nCOを表し、αは屈折率プロファイル形状インデックスであり、経験的な値であり、2±0.5の値範囲をもつ。nCOはコアの屈折率を表し、nICは内側クラッドの屈折率を表し、nCLは外側クラッドの屈折率を表し、nCL/(1-ΔnTR)はトレンチの屈折率を表し、ΔnTRはトレンチと外側クラッドの間の相対屈折率差ΔnTR=(nTR-nCL)/nCLを表し、RCOはコアの半径を表し、RICは内側クラッドの幅を表し、RTRはトレンチの幅を表し、RCLは外側クラッドの幅を表す。
【0085】
たとえば、傾斜屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群の数は、M=3である。ステップ屈折率少数モード・ファイバーのパラメータを計算する前述のプロセスを参照すると、傾斜屈折率少数モード・ファイバーのパラメータの範囲は以下の通りであると決定することができる:
【数17】
【0086】
M個のモード群の群屈折率が中心のまわりに対称的に分布するときに得られる、傾斜屈折率少数モード・ファイバーの対応するパラメータは、傾斜屈折率少数モード・ファイバーのパラメータの範囲に基づいてシミュレーションソフトウェアCOMSOLおよびMATLABを使用することによって、同時シミュレーションを行うことによって決定されうる。具体的なプロセスについては、ステップ屈折率少数モード・ファイバーの前述の説明を参照されたい。詳細は、本明細書では一つ一つ再度説明されない。ng1+ngM=ng2+ngM-1を満たす、少数モード・ファイバーの対応するパラメータは、傾斜屈折率少数モード・ファイバーのパラメータとして決定されうる。
【0087】
たとえば、傾斜屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群は、LP01、LP11およびLP21である。シミュレーションを通じて、傾斜屈折率少数モード・ファイバーのパラメータが、nCO(r)=1.45、nCL=nIC=1.444、RCO=14.2μm、RIC=1μm、RTR=1μm、α=2.3、ΔnTR=-0.0045であるとき、3つのモード群の群屈折率はng1+ng3=2ng2を満たすことが決定されうる。具体的には、3つのモード群の群遅延はt1+t3=2t2を満たす。すなわち、3つのモード群の群遅延は、中心のまわりに対称的に分布する。
【0088】
図5bは、本願による範囲1.5μm~1.6μmにおいて傾斜屈折率少数モード・ファイバーによって伝送されるモード群LP01、LP11、およびLP21の群屈折率プロファイルの概略図である。図5bに示される3つのモード群の群屈折率は、COMSOLおよびMATLABを用いて同時シミュレーションを行うことにより得られた有効屈折率に基づいて決定される。図5bから、3つのモード群LP01、LP11、およびLP21の群屈折率はすべて、波長が増加するにつれて増加し、同じ傾向で変化することが見て取れる。λ=1.55μmにおける3つのモード群LP01、LP11、LP21の群屈折率、群速度、群遅延はそれぞれ表3に示される。LP01の群屈折率は1.46993であり、LP01の群遅延は0である。LP11の群屈折率は1.46944であり、LP11の群遅延は0.49176ps/mである。LP21の群屈折率は1.46958であり、LP21の群遅延は0.98218ps/mである。LP01、LP11、LP21の群屈折率は、中心のまわりに対称的に分布している、すなわち、1.46929+1.46958≒2*1.46944となる;LP01、LP11、LP21の群遅延も、中心のまわりに対称的に分布している、すなわち、2*0.49176≒0+0.98218となる、と判断することができる。
表3 LP01、LP11、およびLP21の3つのモード群の群屈折率、群速度、および群遅延(λ=1.55μm)
【表3】
【0089】
少数モード・ファイバーの製造コストとシミュレーションの複雑さを低減するために、少数モード・ファイバーは、以下のように設計されてもよい:少数モード・ファイバーにおいて伝送されるM個のモード群の群遅延は、等差なしに中心のまわりに対称的に分布する。下記は、例として、傾斜屈折率少数モード・ファイバーの屈折率プロファイルと構造パラメータを示す。これにより、傾斜屈折率少数モード・ファイバーにおいて伝送されるM個のモード群に対応するM個の群遅延が、等差なしに中心のまわりに対称的に分布させられることができる。たとえば、傾斜屈折率少数モード・ファイバーは4つのモード群(LP01、LP11、LP02、LP31)を送信する。前述の同じプロセスに基づいて、傾斜屈折率少数モード・ファイバーのパラメータは、nCO(r)=1.45、nCL=nIC=1.444、RCO=19.6μm、RIC=2μm、RTR=1μm、α=2.3、ΔnTR=-0.0045であり、傾斜屈折率少数モード・ファイバーにおける伝送中のLP01、LP11、LP02、およびLP31の群遅延は、等差なしに中心のまわりに対称的に分布させられることができる。図5cを参照すると、λは1.530μm~1.565μmの範囲であり、LP01の群遅延は0であり、LP11の群遅延は2.3372ps/mであり、LP02の群遅延は0.6842ps/mであり、LP31の群遅延は1.021ps/mである。
【0090】
2. モード変換器
【0091】
本願では、モード変換器は、異なるモード群の間の変換を実装するように構成される。すなわち、あるモード群から別のモード群への変換を実装することができる。モード変換器は、M個の受信モード群内にあり、群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群とを交換するように構成されてもよい。すなわち、モード変換器は、最高の伝送速度(最小の群遅延)を有するモード群と、最低の伝送速度(最大の群遅延)を有するモード群とを交換してもよい、すなわち
【数18】
2番目に高い伝送速度(2番目に小さい群遅延)を有するモード群と、2番目に低い伝送速度(2番目に大きい群遅延)を有するモード群とを交換してもよい、すなわち
【数19】
などとなる。たとえば、M個のモード群の群遅延は、それぞれt1、t2、…、tM-1、tMであり、t1とtMは中心に関して対称的であり、t2とtM-1は中心に関して対称的である、などである。したがって、モード変換器は、t1に対応するモード群とtMに対応するモード群を交換し、すなわち、t1に対応するモード群をtMに対応するモード群に変換し、tMに対応するモード群をt1に対応するモード群に変換し;t2に対応するモード群をtM-1に対応するモード群に変換し、tM-1に対応するモード群をt2に対応するモード群に変換することができる。
【0092】
たとえば、t1に対応するモード群が信号1を搬送し、tMに対応するモード群が信号2を搬送する場合、t1に対応するモード群がtMに対応するモード群に変換され、tMに対応するモード群がt1に対応するモード群に変換された後は、信号1はtMに対応するモード群において搬送され、信号2はt1に対応するモード群において搬送される。
【0093】
ある可能な実装では、モード変換器は、少数モード・ファイバーから光信号を受信することができ、光信号は、M個のモード群を含む。すなわち、モード変換器に光信号が入力され、また、出力モード変換器から光信号が出力される。
【0094】
本願では、モード変換器は、多平面光変換原理に基づいていてもよく、たとえば、位相板に基づくモード変換器、空間光変調に基づくモード変換器、またはメタ表面構造に基づくモード変換器である。あるいはまた、モード変換器は、導波路モード結合理論に基づいて実装されてもよく、たとえば、ファイバーグレーティングに基づくモード変換器、またはファイバーカプラに基づくモード変換器である。以下は、位相板に基づくモード変換器と、ファイバーグレーティングをベースとしたモード変換器を例として用いて、詳細な説明を与える。
【0095】
構造1。 ファイバーグレーティングに基づくモード変換器
【0096】
ファイバーグレーティングは、コア屈折率が周期的に変化するファイバーと考えることができる。通例、ファイバーグレーティングは、光感応性コアを有するファイバーでできており、ファイバーの外側クラッドの屈折率は変化しない。ファイバーグレーティングがモード変換器として使用される場合、ファイバーグレーティングの周期は比較的長く、したがって、モード変換器は、長周期ファイバーグレーティングに基づくモード変換器とも呼ばれる。
【0097】
ファイバーグレーティングは、モード群の間の結合を実現することができる。2つのモード群が通信波長の位相整合条件を満たす場合、2つのモード群の間でモード群変換が実行できる。位相整合条件は、λ=Δneff*Λであり、ここでλは通信波長であり、Λはファイバーグレーティングの周期であり、Δneff=neff1-neff2であり、Δneff1は第1のモード群の有効屈折率であり、neff2は第2のモード群の有効屈折率である。すなわち、第1のモード群と第2のモード群がこの周期のファイバーグレーティングを通過するとき、第1のモード群と第2のモード群は、相互に変換されうる。たとえば、通信波長がλ=1.55μm、Λ=290.5μm、ファイバーグレーティングの長さがL=24.9mmである場合、上記3つのモード群LP01、LP11、LP21が入力される。LP01、LP11、LP21がファイバーグレーティングに入った後、LP01のモード場は徐々に変化し、最後に、LP01はファイバーグレーティングの他端でLP21に変換される。対応して、LP21のモード場も徐々に変化し、最後に、LP21は、ファイバーグレーティングの他端でLP01に変換されうる。
【0098】
本願では、M個のモード群に属し、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群を入れ替えるために、モード変換器は、
【数20】
個の異なる周期のファイバーグレーティングを含んでいてもよく、ここで
【数21】
は切り捨てを示す。1つの周期は、1つの第1のモード群と1つの第2のモード群に対応する。すなわち、1つの周期は、群遅延が中心に関して対称的である1対のモード群に対応する。
【0099】
さらに、任意的に、M個のモード群に属し、中心のまわりに対称的である第1のモード群と第2のモード群は、各ファイバーグレーティングの周期を制御することによって交換されてもよい。たとえば、M個のモード群の群遅延は、それぞれt1、t2、…、tM-1、tMであり、t1とtMは中心に関して対称的であり、t2とtM-1は中心に関して対称的である、などとなる。t1に対応するモード群とtMに対応するモード群を交換するファイバーグレーティングの周期はΛ1であり、t2に対応するモード群とtM-1に対応するモード群を交換するファイバーグレーティングの周期はΛ2である、などとなる。Λ1=λ/(t1に対応するモード群の有効屈折率-tMに対応するモード群の有効屈折率)、Λ2=λ/(t2に対応するモード群の有効屈折率-tM-1に対応するモード群の有効屈折率)、などとなる。
【0100】
さらに、任意的に、Mが偶数である場合、M個の群遅延は、中心に関して対称的なM/2対の群遅延を含む、すなわち、M個のモード群は、M/2個の第1のモード群およびM/2個の第2のモード群を含む。モード変換器は、M個のモード群内にあり、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群をペアで交換することができる。Mが奇数である場合、M個の群遅延は、中心に関して対称的な群遅延の
【数22】
個の対を含む、すなわち、M個のモード群は、
【数23】
個の第1のモード群と、
【数24】
個の第2のモード群と、1つの独立モード群とを含む。モード変換器は、M個のモード群内にあり、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群および第2のモード群をペアで交換してもよく、独立モード群に対しては交換を実行しない。
【0101】
ある可能な実装では、
【数25】
個の異なる周期のファイバーグレーティングが、二酸化炭素(CO2)レーザーまたはフェムト秒レーザーを使用することによって、少数モード・ファイバー上に刻み込まれてもよい。さらに、任意的に、
【数26】
個の異なる周期のファイバーグレーティングは、カスケードされた構造であってもよい。図6aを参照すると、2つのファイバーグレーティング(ファイバーグレーティングIおよびファイバーグレーティングII)が例として使用される。具体的には、
【数27】
個の異なる周期のファイバーグレーティングが、少数モード・ファイバーの軸方向に逐次的に刻み込まれてもよい。あるいはまた、
【数28】
個の異なる周期のファイバーグレーティングは、積み重ねられた構造であってもよい。図6bを参照すると、2つのファイバーグレーティング(ファイバーグレーティングIおよびファイバーグレーティングII)が例として使用される。具体的には、
【数29】
個の異なる周期のファイバーグレーティングは、少数モード・ファイバーの
【数30】
個の半径方向(軸方向に垂直な任意の方向。図6bは、例として、2つの可能な半径方向を示している)の異なる角度で刻み付けられてもよい。積層構造は、異なる領域のファイバーグレーティングの断面が、整合していない位相を有する他のモード群の結合に及ぼす影響を回避するのに役立つ。積層構造の屈折率変調は、2つのファイバーグレーティングの屈折率変調のほぼ線形の重ね合わせであることに留意されたい。ここで、コアの屈折率の変化量は次のようになる:
【数31】
ここで、
【数32】
は、k番目のファイバーグレーティングの平均屈折率変化量であり、Λ1およびΛ2はそれぞれ、ファイバーグレーティングIおよびファイバーグレーティングIIの周期であり、φ1(z)およびφ2(z)はそれぞれ、2つのファイバーグレーティングの位相シフトまたはチャープに関連する追加的な位相である。
【0102】
ある可能な実装では、各ファイバーグレーティングの全長が閾値より大きく、その結果、モード群変換効率が改善できる。
【0103】
構造2。位相板(または位相シートと呼ばれる)に基づくモード変換器
【0104】
位相板に基づくモード変換器は、多平面光変換器(multi-plane light conversion、MPLC)とも呼ばれる。位相板とは、特定の厚さおよび屈折率を有するフィルム層が、ガラス板またはレンズ上の部分領域(通例、環状バンド)にめっきされ、その結果、その領域を貫通する光の位相が、めっきされていない領域を通る光の位相より進む、または遅れることを意味する。各位相板上には異なるピクセルが存在し、位相板上のピクセルは異なる位相を導入して入射光場を変調することができ、その結果、モード群の間の変換が実現できる。位相板に基づくモード変換器は、空間的な光場についての比較的強い制御能力を有し、理論的には、任意のモード群の間の変換を完了することができる。たとえば、位相板に基づくモード変換器は、ラウンドロビン・モード群変換を実装してもよい。図7aに示されるように、入射モード群は、逐次、LP01、LP11、およびLP21であり、それらの入射モード群は、逐次、LP11、LP21、およびLP01に変換される。別の例として、位相板に基づくモード変換器は、群遅延が中心に関して対称的であるモード群を交換することができる。図7(b)に示されるように、入射モード群は、逐次、LP01、LP11、LP21、LP02であり、LP01とLP02が交換されることができ、LP11とLP21が交換されることができる。
【0105】
ある可能な実装では、モード変換器は、反射位相板または透過位相板を含むことができる。たとえば、モード変換器は、一つまたは複数の透過位相板を含むことができ、少なくとも上下の反射位相板を含むことができ、または少なくとも1つの反射位相板と少なくとも1つの高反射器を含むことができる。位相板に基づくモード変換器は、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群との間のモード群交換を行うことができる。すなわち、位相板に基づくモード変換器の交換ポリシーは、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群と第2のモード群とを交換することである。モード変換器に含まれる位相板の数が多ければ多いほど、位相調整の細かさが高くなることを理解すべきである。
【0106】
図7cは、本願による反射位相板であるモード変換器の構造の概略図である。図7cにおいて、モード変換器は、2つの反射位相板であってもよく、または1つの反射位相板と1つの高反射器との組み合わせであってもよい。たとえば、モード変換器は3つのモード群(LP01、LP11、LP21)を受領する。LP01、LP11、LP21は、反射位相板上で複数回反射され、それによりLP01はLP21に変換され、LP21はLP01に変換され、LP11は変換されない。
【0107】
図7dは、本願による透過位相板であるモード変換器の構造の概略図である。図7dでは、たとえば、モード変換器は、4つの透過位相板を含む。たとえば、モード変換器は3つのモード群(LP01、LP11、LP21)を受領する。LP01、LP11、およびLP21が逐次4つの透過位相を通過した後、LP01はLP21に変換されてもよく、LP21はLP01に変換されてもよく、LP11は変換されなくてもよい。
【0108】
3. 増幅器
【0109】
本願では、通信システムはさらに増幅器を含んでいてもよく、増幅器はM個の受領されたモード群を増幅するように構成される。増幅器は添加ファイバー増幅器であってもよい。
【0110】
ある可能な実装では、モード変換器は、増幅器と、次の2つの位置関係を含むことができる。
【0111】
位置関係1. モード変換器は、少数モード・ファイバーと増幅器との間に位置する。
【0112】
次の2つの場合は、位置関係に基づく分類を通じて得ることができる。
【0113】
場合1。図8aは、本願による通信システムにおけるモード変換器の位置の概略図である。モード変換器は、少数モード・ファイバーの背後、増幅器の前にあってもよい。
【0114】
この場合1に基づいて、モード変換器は、群遅延が中心の周りに対称的に分布している第1のモード群および第2のモード群を変換し、M個の変換されたモード群を増幅器に送信するように構成される。増幅器が増幅変換を行った後に得られたM個のモード群は、次のスパンの少数モード・ファイバーに伝送される。
【0115】
場合2。図8bは、本願による通信システムにおける別のモード変換器の位置の概略図である。モード変換器は少数モード・ファイバーの前、かつ増幅器の後ろにある。
【0116】
この場合2に基づき、増幅器が増幅を実行した後に得られたM個のモード群が、モード変換器に入る。モード変換器は、増幅されたM個のモード群内にあり、その群遅延が中心に関して対称的である第1のモード群および第2のモード群を変換し、M個の変換されたモード群を次のスパンの少数モード・ファイバーに伝送する。
【0117】
位置関係2。モード変換器は増幅器中に統合される。
【0118】
図8cは、本願による通信システムにおけるさらに別のモード変換器の位置の概略図である。モード変換器は、増幅器に統合されてもよい。たとえば、モード変換器は、2つの添加された(たとえば、エルビウム添加された)ファイバーの間に位置してもよい。M個のモード群が増幅器に入った後、M個のモード群は、第1の添加されたファイバーを使用することによって増幅され、次いで、M個の増幅されたモード群は、可変光減衰器(Variable Optical Attenuator、VOA)に入る。M個の増幅されたモード群は、(増幅器の利得調整可能性を実現するため)VOAを使用することによって減衰され、次いで、M個の減衰されたモード群は、モード変換器に伝送される。モード変換器は、M個のモード群に属し、その群遅延が中心のまわりに対称的に分布している第1のモード群および第2のモード群を変換し、M個の変換されたモード群を第2の添加されたファイバーに伝送する。M個の変換されたモード群は、第2の添加されたファイバーを使用することによって増幅され、次いで、M個の増幅されたモード群は、連続的な伝送のために、次のスパンの少数モード・ファイバーに結合される。モード変換器は特定の挿入損を有するので、モード変換器を増幅器に統合することにより、信号伝送の信号対雑音比を劣化させることなく、モード変換器によって導入される挿入損失を補償することができる。
【0119】
以上の内容に基づき、以下では、上記の通信システムのアーキテクチャーと、受信端によって受信されるM個のモード群の群遅延を低減するための実装プロセスとをさらに理解するために、特定の構造を参照して上記の通信システムの具体的な実装を与える。
【0120】
図9は、本願による別の通信システムのアーキテクチャーの概略図である。通信システムは、送信モジュール、モード・マルチプレクサ、少数モード・ファイバー、モード変換器、増幅器、モード・デマルチプレクサ、および受信モジュールを含むことができる。送信モジュールは、M個の単一モード送信モジュールであってもよく、各単一モード送信モジュールは、1つの信号を送信し、M個の信号(たとえば、波長分割信号)を取得し、M個の信号をモード・マルチプレクサに送信するように構成される。各信号は、1つの特定のモード群によって搬送される。モード・マルチプレクサは、基本モードからの各信号を異なる高次モード群に変換し、異なる信号を搬送するM個のモード群を1つの信号中に多重化し、多重化された信号を伝送のために少数モード・ファイバーに結合するように構成される。少数モード・ファイバー、モード変換器、および増幅器については、少数モード・ファイバー、モード変換器、および増幅器の前述の説明を参照されたい。詳細は、本明細書においては、一つ一つ再び説明されない。モード・デマルチプレクサは、受信された多重化された信号を異なる信号を搬送するM個のモード群に分割し、M個のモード群を受信モジュールに送信するように構成される。受信モジュールは、M個のモード群を受信するように構成される。たとえば、受信モジュールは、M個の単一モード受信モジュールを含んでいてもよく、各単一モード受信モジュールは、一つの対応するモード群を受信してもよい。
【0121】
ある可能な実装では、送信モジュールは、光源を含んでいてもよく、光源は、同じ波長の光信号を送信するように構成されてもよく、または異なる波長の光信号を送信するように構成されてもよい。たとえば、各光源は、少なくとも1つのレーザーを含んでいてもよく、レーザーは、1.5μm~1.6μmの波長範囲で信号を送信してもよい。
【0122】
本願の実施形態では、別段の記載がない限り、または論理的矛盾がない限り、異なる実施形態の間の用語および/または説明は一貫しており、相互に参照することができ、異なる実施形態における技術的特徴は、それらの内部論理的関係に基づいて組み合わされて、新たな実施形態を形成することができる。
【0123】
本願のテキスト記述では、記号「/」は通例、関連するオブジェクト間の「または」関係を示す。本願の数式では、記号「/」は、関連するオブジェクト間の「除算」関係を示す。
【0124】
本願において使用される数字は、単に説明を容易にするために区別されるが、本願の実施形態の範囲を限定するために使用されるものではないことが理解できる。上記の諸プロセスのシーケンス番号は、実行シーケンスを意味するものではなく、それらのプロセスの実行シーケンスは、プロセスの機能および内部論理に従って決定されるべきである。「第1」および「第2」のような用語は、特定の序列または順序を記述するのではなく、類似のオブジェクトの間で区別するために使用される。さらに、用語「含む」、「有する」、およびその任意の他の変形は、たとえば、一連のステップまたはユニットを含む、非排他的な包含をカバーすることが意図されている。方法、システム、製品、または装置は、必ずしも明示的に列挙されたステップまたはユニットに限定されないが、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、製品、または装置に内在的な他のステップまたはユニットを含んでいてもよい。
【0125】
本願は、特定の特徴およびその実施形態を参照して記載されているが、本願の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および組み合わせがそれらに対して行うことができることは明らかである。対応して、明細書および添付の図面は、単に、添付の特許請求の範囲によって定義される本願の例示的な記述であり、本願の範囲をカバーする修正、変形、組み合わせまたは均等物の任意のものまたは全部と考えられる。
【0126】
明らかに、当業者は、本願の精神および範囲から逸脱することなく、本願にさまざまな修正および変更を加えることができる。このようにして、本願は、以下の特許請求の範囲およびそれらの同等の技術によって定義される保護の範囲内にあることを条件として、本願の実施形態のこれらの修正および変更をカバーすることが意図されている。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図9