(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】硫黄酸化物低減のための燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/10 20060101AFI20240216BHJP
B01F 25/25 20220101ALI20240216BHJP
B01F 25/4314 20220101ALI20240216BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20240216BHJP
【FI】
C10L1/10
B01F25/25
B01F25/4314
B01F23/41
(21)【出願番号】P 2022540950
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2021008478
(87)【国際公開番号】W WO2023282360
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521358202
【氏名又は名称】ローカーボン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チョル・イ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-126669(JP,A)
【文献】特開2004-11479(JP,A)
【文献】特開2005-206773(JP,A)
【文献】特表2014-513747(JP,A)
【文献】特表2022-550945(JP,A)
【文献】特表2023-536675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L1/
B01F23/、25/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脱硫剤を燃料油に供給してラインミキシングするステップ;
(b)前記ステップ(a)で形成された混合物を液滴生成させる液滴生成ステップ;
(c)前記ステップ(b)で液滴が生成された混合物を磁場に通して磁化させる磁化ステップ;
(d)前記ステップ(c)で磁化された混合物を旋回混合させる旋回混合ステップ;及び
(e)前記ステップ(d)で旋回混合された混合物を
構造物に衝突させる衝突ステップ;を含む、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)で、前記燃料油100重量部に対して、前記脱硫剤は3~10重量部で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)に気体をさらに供給することを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項4】
前記気体は空気(air)又は酸素(O
2)であることを特徴とする、請求項3に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項5】
前記気体は、前記燃料油中で1~500μmの大きさのバブル(bubble)を形成することを特徴とする、請求項3に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項6】
前記ステップ(d)と前記ステップ(e)との間に、前記脱硫剤及び前記燃料油の内部に含まれた前記気体を分離する気体分離ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)は、複数の微細ホールが形成された液滴微粒化ユニットを通過させて液滴を生成することを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)の磁場は
0.9~1.5テスラであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)の磁場は移送流れの垂直方向に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【請求項10】
前記ステップ(e)
において、前記ステップ(d)で旋回混合された混合物の噴出方向と構造物との角度が15°角度であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄酸化物低減のための燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法に係り、より詳細には、バンカーC油等の燃料油に脱硫剤を混合させてエマルジョン化させることにより、燃料燃焼の際に硫黄酸化物(SOx)の排出が低減する、硫黄酸化物低減のための燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染を誘発する汚染源として、硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)が指摘されており、特に、硫黄酸化物は、硫黄成分を含有する化石燃料の燃焼から放出される産業排ガスに含まれており、酸性雨を誘発するなどの多様な環境汚染を引き起こすなどの問題を示している。
【0003】
このような産業排ガスから硫黄酸化物を除去する脱硫方法は、持続的に研究されてきた。工場又は化石燃料を使用する発電所では、一般に、燃焼後処理方法である排煙脱硫方法を使用してきた。
【0004】
排煙脱硫方法は、硫黄ガスを含有する化石燃料を燃焼させた後、その排ガスを脱硫処理することを意味し、このような排煙脱硫方法は湿式法と乾式法に分けられる。湿式法は、排ガスをアンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、石灰乳などを介して洗浄して硫黄酸化物を除去する方法であり、乾式法は、活性炭、炭酸塩などの粒子又は粉末を排ガスと接触させ、二酸化硫黄を吸着又は反応させることにより硫黄酸化物を除去する方法である。
【0005】
特に、船舶用エンジンに用いられるバンカーC油などの重油(MGO、MDO、DDO)のような燃料油(Fuel Oil)の硫黄酸化物の含有量は、自動車燃料より少なくは1千倍から多くは3千倍まで高く、全世界の船舶が排出する硫黄酸化物が自動車の130倍と多いため、高硫黄油(High Sulfur Fuel Oil、HSFO)と呼ばれ、環境汚染の主犯として知られている。
【0006】
このため、従来は、船舶用エンジンから排出される硫黄酸化物の除去のために船舶用湿式脱硫システムを用いて後処理として排煙脱硫を行っているが、前記湿式脱硫システムは、一般にポンプを用いて洗浄水(NaOH)を冷却器を経てスクラバーに供給し、前記スクラバーで排ガスと洗浄水を接触させて後処理として硫黄酸化物を除去する方式である。
【0007】
このとき、前記湿式脱硫システムの硫黄酸化物除去能力を一定のレベルに維持するために、洗浄水のpHをモニタリングして自動的に洗浄水の供給量を制御するが、使用済みの洗浄水を再使用するために浄化する過程で膨大な量のスラッジが発生し、このようなスラッジはスラッジタンクに集めて保管した後、停泊後に処理する方式で、後処理脱硫が運用されている。
【0008】
上述したように、従来の後処理湿式脱硫技術は、洗浄水の水質浄化過程が複雑であって人手と費用が多くかかり、複雑な脱硫設備を別途構築しなければならないので、現在運行中の船舶にこのような従来の脱硫システムを適用することは、空間的、費用的な面で現実的に容易ではないという問題点があった。
【0009】
したがって、このような船舶燃料油の燃焼及び硫黄酸化物の排出による環境汚染問題を画期的に改善するためには、単純で適用が容易である、硫黄酸化物の排出量が大幅に低減できる効果的な脱硫方法に関する研究が至急必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、オイル(oil)である燃料油に水(water)をベースとした脱硫剤をエマルジョン化させることにより燃料油中の脱硫剤が安定的に分散し、燃焼時に燃料油と脱硫剤を一緒に燃焼して、燃焼過程から発生する硫黄酸化物を除去することにより、最終的に排出される硫黄酸化物を低減させることができる、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)脱硫剤を燃料油に供給してラインミキシングするステップ;(b)前記ステップ(a)で形成された混合物を液滴生成させる液滴生成ステップ;(c)前記ステップ(b)で液滴が生成された混合物を磁場に通して磁化させる磁化ステップ;(d)前記ステップ(c)で磁化された混合物を旋回混合させる旋回混合ステップ;及び(e)前記ステップ(d)で旋回混合された混合物を衝突させる衝突ステップ;を含む、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を提供する。
【0012】
また、前記ステップ(a)で、前記燃料油100重量部に対して、前記脱硫剤は3~10重量部で含まれることを特徴とする。
【0013】
また、前記ステップ(b)に気体をさらに供給することを特徴とする。
【0014】
また、前記気体は、空気(air)又は酸素(O2)であることを特徴とする。
【0015】
また、前記気体は、前記燃料油中で1~500μmの大きさのバブル(bubble)を形成することを特徴とする。
【0016】
また、前記ステップ(d)と前記ステップ(e)との間に、前記脱硫剤及び前記燃料油の内部に含まれた前記気体を分離する気体分離ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記ステップ(b)は、複数の微細ホールが形成された液滴微粒化ユニットを通過させて液滴を生成することを特徴とする。
【0018】
また、前記ステップ(c)の磁場は、9,000~15,000ガウス(gauss)(0.9~1.5テスラ)であることを特徴とする。
【0019】
また、前記ステップ(c)の磁場は、移送流の垂直方向に形成されることを特徴とする。
【0020】
また、前記ステップ(e)は、前記ステップ(d)の噴出方向の15°角度で衝突させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法は、オイル(oil)である燃料油を連続相とし、水(water)をベースとした脱硫剤を分散相として、燃料油中の脱硫剤をW/O(Water in Oil)エマルジョン化させることにより、燃料油中の脱硫剤が安定的に分散することができ、燃焼時に燃料油と脱硫剤が一緒に燃焼して、燃焼過程から発生する硫黄酸化物を除去することにより、最終的に排出される硫黄酸化物を低減させるという効果がある。
【0022】
また、本発明に係る燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を用いると、燃料の燃焼後に排ガスを脱硫していた従来の方法とは異なり、燃料油を燃焼させる前に脱硫剤とエマルジョン化させて船舶エンジンで一緒に燃焼させることにより、追加の脱硫施設に投資する必要なく既存の船舶用エンジンを活用することができるため、単純で適用が容易であり、脱硫効果にも優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を示す工程図である。
【
図2】本発明の一実施形態によって使用されるステップ(a)のラインミキサーの平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によって使用されるステップ(c)の旋回混合機の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によってエマルジョン化された燃料油及び脱硫剤の燃焼過程を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態によって詳細に説明する前に、本明細書及び請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的且つ辞典的意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきであることを明かしておく。
【0025】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
以下では、本発明の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法についてより詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明による燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を順次作成した工程図である。
図1を参照すると、本発明は、(a)脱硫剤を燃料油に供給してラインミキシングするステップ;(b)前記ステップ(a)で形成された混合物を液滴生成させる液滴生成ステップ;(c)前記ステップ(b)で液滴が生成された混合物を磁場に通して磁化させる磁化ステップ;(d)前記ステップ(c)で磁化された混合物を旋回混合させる旋回混合ステップ;及び(e)前記ステップ(d)で旋回混合された混合物を衝突させる衝突ステップ;を含む、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を提供する。
【0028】
ステップ(a)は、脱硫剤を燃料油に供給してラインミキシングするステップ(S110)である。
【0029】
本ステップは、オイル(oil)である燃料油に水(water)ベースの脱硫剤を供給してW/O(Water in Oil)エマルジョン化させるために、燃料油及び脱硫剤をラインミキサーに供給してラインミキシングを介して混合するステップである。
【0030】
本発明で使用される燃料油と脱硫剤とが混合された液状のものを「混合物」と総称する。
【0031】
図2は本発明の一実施形態によって使用されるステップ(a)のラインミキサー100の斜視図である。
【0032】
図2を参照すると、前記燃料油はラインミキサー100の
図2(A)に燃料油が投入され、
図2(B)に脱硫剤が投入されて均一に混ぜられる過程(ラインミキシング)を経た後、燃料油と脱硫剤の混合物が
図2(C)に抜け出る。
【0033】
本ステップにおいて、燃料油(Fuel Oil)とは、主に燃料用として提供されるガソリン、灯油、軽油及び重油等を一括して意味し、本発明の一実施形態として、高硫黄油であるバンカーC油を例示するが、これに限定されるものではない。
【0034】
本ステップでは、燃料油が一定の流速で供給される間、脱硫剤を燃料油100重量部に対して3~10重量部で供給して混合することができる。
【0035】
脱硫剤を3重量部未満で供給する場合には、燃料油の内部に分散する脱硫剤の量が少なくて脱硫効果が減少し、脱硫剤を10重量部超過で供給する場合には、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン状態の燃焼効率が減少するという問題点がある。
【0036】
脱硫剤は、燃料油の燃焼時に発生する硫黄酸化物(SOx)を除去する液状触媒を使用することができる。
【0037】
本発明における脱硫剤は、SiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3よりなる群から選択された1種以上の酸化物を含むことができ、SiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3の酸化物を全て含んで使用することが好ましい。
【0038】
SiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3を全て含むときの基本化学式は、K0.8~0.9(Al,Fe,Mg)2(Si,Al)4O10(OH)2であって、一般にイライト(illite)と呼ばれる鉱物であり、イライトは、基本的に2つの四面体層の間に1つの八面体層が入って結合する2:1の構造を有し、八面体層は、結合構造内の陽イオンサイト3個のうち、2個だけ陽イオンで満たされる2八面体(dioctahedral)構造が特徴であって、陽イオンの不足により全体的に負(-)電荷を帯びており、これにより脱硫剤と混合された燃料油が燃焼するときに硫黄酸化物(SOx)を吸着することができる。
【0039】
各酸化物は、脱硫剤にSiO215~90重量部、Al2O315~100重量部、Fe2O310~50重量部、TiO25~15重量部、MgO20~150重量部、MnO10~20重量部、CaO20~200重量部、Na2O15~45重量部、K2O20~50重量部、及びP2O35~20重量部で含まれることができる。
【0040】
また、酸化物は、脱硫剤として形成される前に、微粉器によって粒子サイズ1~2μmの微粒子に混合及び微粉でき、2.5~3.0の比重を有し、条痕色及び銀白色を呈する粉末状に使用される。
【0041】
また、脱硫剤は、Li、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Cd及びPbよりなる群から選択された1種以上の金属を含むことができ、Li、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Cd及びPbの金属を全て含んで使用することが好ましい。
【0042】
各金属は、脱硫剤にLi0.0035~0.009重量部、Cr0.005~0.01重量部、Co0.001~0.005重量部、Ni0.006~0.015重量部、Cu0.018~0.03重量部、Zn0.035~0.05重量部、Ga0.04~0.08重量部、Sr0.02~0.05重量部、Cd0.002~0.01重量部、及びPb0.003~0.005重量部で含まれることができる。
【0043】
また、前記酸化物のように、金属も微分器によって粒子サイズ1~2μmの微粒子に混合及び微粉でき、2.5~3.0の比重を有し、条痕色及び銀白色を呈する粉末状に使用される。
【0044】
脱硫剤は、四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O)、水酸化ナトリウム(NaOH)、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)及び過酸化水素(H2O2)よりなる群から選択された1種以上の液状組成物を含むことができ、溶媒としては、水(water、H2O)を使用することができ、四ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム及び過酸化水素の液状組成物を全て含んで使用することが好ましい。
【0045】
脱硫剤は、前述した酸化物、液状組成物が混合及び反応を行いながらキレート剤の役目をして、金属との配位結合を介してキレート化された金属キレート化合物を形成する。
【0046】
また、液状組成物は、燃焼物が燃焼するときに発生する灰分(ash)に吸着して、灰分中に存在する硫黄酸化物と反応して除去することができる。四ホウ酸ナトリウムであるNa2B4O7からNaBO2が誘導され、水素化を経てNaBH4が生成され、生成されたNaBH4が酸素と硫黄酸化物に出会って硫酸ナトリウム(Na2SO4)として反応して硫黄酸化物を除去し、反応過程は、下記の反応式1及び2のとおりである。
【0047】
[反応式1]
【0048】
NaBH4+O3→Na2O2+H2O+B
【0049】
[反応式2]
【0050】
1)Na2O2+SO3→Na2SO4+O
【0051】
2)Na2O2+SO2→Na2SO4
【0052】
3)Na2O2+SO→Na2SO3
【0053】
また、各液状組成物は、脱硫剤に四ホウ酸ナトリウム20~130重量部、水酸化ナトリウム15~120重量部、ケイ酸ナトリウム50~250重量部及び過酸化水素10~50重量部で含まれることができる。
【0054】
脱硫剤は、400~1200℃の温度範囲で燃焼物と混合して燃焼させるときに硫黄酸化物の吸着効果が活性化できるが、600~900℃の温度範囲で燃焼させることが高い効率を示すことができる。
【0055】
ステップ(b)は、ステップ(a)で形成された混合物を液滴生成させるステップ(S120)である。
【0056】
本ステップでは、混合物に存在する燃料油及び脱硫剤をW/Oエマルジョン化させるために液滴を生成させて燃料油中に脱硫剤を分散させることにより、エマルジョン化を行うステップである。
【0057】
本ステップで混合物の液滴を生成する方法は、公知の多様な方法を使用することができるが、好ましくは、均質機(Homogenizer)を使用することができる。
【0058】
また、本ステップで混合物の液滴を生成する方法では、混合物を移送する移送管内に液滴微粒化ユニットを通して液滴を生成することができる。
【0059】
液滴微粒化ユニットは、混合物に圧力又は剪断力を加えて液滴を形成するユニットを意味し、液滴微粒化ユニットの一実施形態として、ステップ(a)の混合物を移送する移送管内に管内径と同じ直径で形成された板を準備して固定し、板に微細径のホールを複数形成する。
【0060】
移送ポンプによって移送管内の混合物が移送され、混合物は、液滴微粒化ユニットにぶつかって圧力を受ける。液滴微粒化ユニットによって移動を妨げられた混合物が剪断力及び圧力によって、液滴微粒化ユニットに形成された微細ホールを抜け出しながら微細に分散して混合物の液滴が形成される。
【0061】
本ステップの一実施形態として用いられる液滴微粒化ユニットのホールの直径は、1~500μmとすることができ、前記ホールが1μm未満の直径である場合には、液滴微粒化装置を通過して液滴が生成される混合物の量が少ないため、全体工程上の流れが遅くなるという問題があり、前記ホールが500μm超過の直径である場合には、液滴形成効果が低下するという問題点がある。
【0062】
また、本ステップで気体をさらに供給して混合することができる。
【0063】
本ステップで混合物の液滴生成中に供給する気体は、混合物内にエアバブル(air bubble)を形成させ、エアバブルの発生と割れの繰り返しで燃料油及び脱硫剤の表面張力に衝撃を加えて液滴生成を容易にすることができる。
【0064】
本ステップで、気体は、混合物が液滴微粒化ユニットを通過する前、通過する途中、又は通過した後のいずれのときも気体を供給することができ、又は、それぞれの過程に連動又は独立して供給するように構成することができる。
【0065】
本ステップで供給される気体は、公知の様々な気体を使用することができるが、本発明で供給される気体は、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化を助け、後で燃焼時に完全燃焼できるように空気(air)又は酸素(O2)を使用することができる。
【0066】
気体は、燃料油中で1~500μmのバブルを形成することができ、1μm未満の大きさのバブルを形成する場合には、混合物の内部にエアバブルが形成され難く、500μmを超える大きさのバブルを形成する場合には、バブルの安定性が低下して破壊されやすく外部に離脱することができる。
【0067】
ステップ(c)は、ステップ(b)で液滴が生成された混合物を磁場に通して磁化させる磁化ステップ(S130)である。
【0068】
本ステップは、ステップ(b)で液滴が形成された混合物が移動する配管ラインの外側に永久磁石を配置して磁場を形成することにより、配管を通る混合物が磁場を通過するように構成して磁化させるステップである。
【0069】
燃料油は疎水性を帯びており、脱硫剤は親水性を帯びているため、磁場を通過した混合物は、磁力によって電荷又は磁気モーメントが形成され、エマルジョンとしての分散効果が極大化される。
【0070】
本ステップで使用される磁場は、9,000~15,000ガウス(gauss)(0.9~1.5テスラ)であり、この範囲外の磁場では、混合物に電荷又は磁気モーメントの形成が発生しないか或いは弱く発生して分散効果に劣る。
【0071】
また、本ステップにおける磁場は、磁石又は電磁石のように磁場を形成することができる公知の様々な方法を使用することができるが、好ましくは、永久磁石を活用して形成することができ、永久磁石は、配管ラインに1つ以上設置できる。
【0072】
磁場は、混合物の移送流れと同じ方向に流れるように構成することができ、又は、移送流れの垂直方向に磁場が形成されるように構成することができる。
【0073】
ステップ(d)は、ステップ(c)の磁化された混合物を旋回混合させる旋回混合ステップ(S140)である。
【0074】
本ステップでは、ステップ(c)で磁化された混合物をポンプで押し出して回転させる方法で、燃料油と脱硫剤が強力に分散及び混合されるようにする。
【0075】
本ステップで投入された混合物が回転によって混合されるように、内部が円形又は楕円形である容器に投入して、旋回回転によって混合させることができる。
【0076】
また、旋回混合は、異なる大きさの多段円筒からなる旋回混合機に流入させて回転させることにより、混合物中の燃料油及び脱硫剤の分散がより上手く行われるようにする。
【0077】
図3は本ステップで使用される旋回混合機200の一実施形態を示す斜視図である。
図3を参照すると、旋回混合機200は、外部円筒210と内部円筒220で形成される。外部円筒210の一側には、混合物が投入される投入口212が形成されており、内部円筒220の中央を貫通するホールによって、混合物が噴出される排出口222が形成されている。
【0078】
投入口212が形成された方向を内部円筒220の上面としたとき、内部円筒220の上面は外部円筒210の上面と同じ位置に形成されており、下面は離れて一定の空間を置いている。
【0079】
本ステップでの旋回混合方法をより詳細に説明すると、ステップ(c)で磁化された混合物は、ポンプの圧力(static pressure)を受けた状態で旋回混合機の投入口212に流入し(
図3の矢印A)、混合物は、内部円筒220の外側と外部円筒210の内側との間に形成された空間で強い回転力を有する状態で動的(dynamic)回転をしながら強く混せられる。
【0080】
圧力によって数回回転する混合物は、内部円筒220の下面に形成された排出口222に沿って外部へ排出(
図3の矢印B)される。
【0081】
本発明では、ステップ(d)が完了した後、脱硫剤と燃料油とが混合された混合物の内部に含まれている気体を分離する気体分離ステップをさらに含むことができる。
【0082】
気体分離ステップの一実施形態として、加圧が可能なチャンバにステップ(d)の混合物を充填して加圧し、加圧によって、混合物の内部に存在していた気体と、燃料油及び脱硫剤の液体とに分離されることができる。
【0083】
分離された液体(混合物)は、後述するステップ(e)の衝突ステップ(S150)を行う。
【0084】
ステップ(e)は、ステップ(d)で排出された混合物を衝突させる衝突ステップ(S150)である。
【0085】
本ステップでは、ステップ(d)の旋回混合機100の排出口222を介して排出された混合物をスプレー等の噴出機によって噴出させ、これを壁や配管などの構造物と強く衝突させてより微小な液滴に形成させるステップである。
【0086】
ステップ(d)で旋回混合された混合物を壁や配管などのように衝突可能な構造物にぶつかるようにして、混合物にさらに微細な液滴を生成することにより分散がうまく行われ、エマルジョン状態を長らく維持させることができる。
【0087】
本ステップで混合物を衝突させるとき、衝突する構造物は、壁や配管などの公知の様々な構造物を使用することができ、衝突させる角度は、様々な角度にすることができるが、噴出される流れ方向の15°角度にすることができる。
【0088】
本発明のエマルジョン化方法は、本発明の方法によって1回又は数回繰り返し行うことができる。
【0089】
また、本発明の燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法は、船舶用、車両用、発電燃焼用燃料油など、燃焼させて使用する全ての燃料油に適用可能である。
【0090】
図4は本発明の一実施形態によってエマルジョンされた燃料油、脱硫剤及び気体の燃焼過程を示す概念図である。
【0091】
図4(a)は本発明の一実施形態によってエマルジョン化された燃料油、脱硫剤及び気体を含む混合物を噴射したときの様子であって、噴射時に燃料油10の内部に液滴としてエマルジョン化されている脱硫剤20と気体30が含まれている。
【0092】
図4(b)は本発明の一実施形態によってエマルジョン化された燃料油、脱硫剤及び気体を含む混合物を噴射したときに燃焼させて脱硫させる過程を示す概念図である。
【0093】
図4(b)を参照すると、
図4(b)のAステップは、エマルジョン化された燃料油、脱硫剤及び気体を含む混合物の噴射ステップである。噴射された混合物は、Bステップで熱によって燃焼し、Cステップでは混合物が破壊され、含まれていた気体である酸素が燃料油と共に燃焼しながら完全燃焼の効果を示す。
【0094】
Dステップでは、燃焼した燃料油の硫黄酸化物を、脱硫剤が触媒を使用して除去するステップである。
【0095】
上述したように、本発明による燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法は、複雑である、人手及び費用が多くかかる、複雑な脱硫設備を別途構築しなければならなかった従来の問題点を解決するために案出されたものであり、オイル(oil)である燃料油を連続相とし、水(water)をベースとした脱硫剤を分散相として、燃料油中の脱硫剤をW/O(Water in Oil)エマルジョン化させて、燃料油中の脱硫剤が安定的に分散することができ、燃焼時に燃料油と脱硫剤が一緒に燃焼して、燃焼過程から発生する硫黄酸化物を除去することにより、最終的に排出される硫黄酸化物を低減させるという効果がある。
【0096】
また、本発明に係る燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法を利用すると、燃料の燃焼に排ガスを脱硫していた従来の方法とは異なり、燃料油を燃焼させる前に脱硫剤とエマルジョン化させて船舶エンジンで一緒に燃焼させることにより、追加の脱硫施設に投資する必要なく既存の船舶用エンジンを活用することができるため、単純で適用が容易であるうえ、脱硫効果にも優れるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化方法に広範囲に使用できる。
【符号の説明】
【0098】
10 燃料油
20 脱硫剤
30 気体
100 ラインミキサー
200 旋回混合機
210 外部円筒
212 投入口
220 内部円筒
222 排出口