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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240216BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240216BHJP
   H04N 7/18 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 C
H04N7/18 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022541445
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027587
(87)【国際公開番号】W WO2022030286
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020132824
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成川 理優
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-105807(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151932(WO,A1)
【文献】特開2019-060108(JP,A)
【文献】特開2019-169778(JP,A)
【文献】特開2017-082430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43
3/84-3/85
9/00-9/28
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作、走行操作のみのいずれかの操作が入力された場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記所定のエリア内に前記非協働作業者が含まれると判定された場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記操作装置に対して走行操作と旋回操作の複合操作と、走行操作とフロント操作の複合操作、走行操作と旋回操作とフロント操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項2】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された後に、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作、走行操作のみのいずれかの操作が入力された場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された後に、前記操作装置に対して走行操作と旋回操作の複合操作、走行操作とフロント操作の複合操作、走行操作と旋回操作とフロント操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合には、前記作業機械の停止を維持する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項3】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記非協働作業者が含まれると判定された後に、前記作業機械を操作するための操作装置に対して走行操作のみ、旋回操作のみ、走行操作と旋回操作の複合操作、走行操作とフロント操作の複合操作、旋回操作とフロント操作の複合操作、走行操作と旋回操作とフロント操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合には、前記作業機械の停止を維持する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項4】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記非協働作業者が含まれると判定された後に、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみが入力された場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項5】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械に取り付けられた複数のセンサの検出値に基づいて前記作業機械の速度ベクトルを演算し、
前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いていない場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記操作装置に対して走行操作のみが入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いていない場合であって、前記走行操作の操作量が所定の閾値以下の場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項6】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械に取り付けられた複数のセンサの検出値に基づいて前記作業機械の速度ベクトルを演算し、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された後に、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いていない場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記操作装置に対して走行操作のみが入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いていない場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項7】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記制御装置は、
前記作業機械に取り付けられた複数のセンサの検出値に基づいて前記作業機械の速度ベクトルを演算し、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された後に、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いている場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、
前記作業機械の停止中に前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記操作装置に対して走行操作のみが入力された場合であって、前記速度ベクトルが前記協働作業者に向いている場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項8】
作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、
前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、
前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、
前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、
前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、
前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、
前記監視装置は、前記検出人物の動作として視線を検出し、
前記制御装置は、
前記監視装置によって検出された前記検出人物の視線の先に前記作業機械が存在する場合には、当該視線を検出した前記検出人物を前記協働作業者と判定し、
前記検出人物が前記非協働作業者の場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、前記検出人物が前記協働作業者の場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定する
ことを特徴とする作業機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲を監視する監視装置の検出結果に基づいて作業機械の動作を制御する作業機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械において、ヘルメット等を着用して作業機械の周囲で作業する者(周囲作業者)の安全を確保することを目的として、人や障害物等を検知した際に、オペレータへ警告を発したり、作業機械の動作を停止させたりする技術がある。後者に関して、作業機械と人の接触を防ぐ制御のことを接触防止制御と称することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業機械に取り付けられ周囲を撮影する撮像装置を備える監視システムにおいて、当該撮像装置が撮影した画像上で人物及び保護具の認識と特定を行い、特定された人物または保護具(例えばヘルメット)までの接近距離を算出し、その接近距離が第1距離以下であれば警告を出力し、第1距離より小さい第2距離以下であれば警告を出力しかつ作業機械の動作を停止させる監視システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、作業機械が旋回中や傾斜地に位置している場合であれば第1距離や第2距離を拡大することが開示されている。さらに、画像認識した人の状況に基づいて第1距離や第2距離を変更してもよいこと、例えば、画像認識により人の向きや動きを特定し、人が作業機械に向いていると判定される場合には第1距離や第2距離を拡大することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-157497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
周囲作業者は、作業機械とともに協働作業を行う協働作業者と、作業機械とは協働作業を行わない非協働作業者とに分類できる。協働作業とは、作業機械と周囲作業者とが同一の目的のために協力して行う作業のことである。例えば、据付対象物の位置の微調整を周囲作業者が油圧ショベル(オペレータ)に指示しながら行う作業(据付け作業)は協働作業である。協働作業者は、その作業の性質上、非協働作業者と比較して作業機械に近接して作業を行う場面が多い。
【0007】
特許文献1の技術は、ヘルメット等の保護具を着用した人に対して一律に作業機械の動作制限(接触防止制御)を発動しており、人を協働作業者と非協働作業者に区別していない。そのため、例えば、作業機械の動作制限(接触防止制御)を開始する距離(第2距離)を、非協働作業者を基準にして設定すると、協働作業者の移動可能範囲が非協働作業者と同等に制限されてしまう。すなわち特許文献1では、協働作業者が作業機械に近づくことが難しく、協働作業の効率が低下するおそれがある。逆に協働作業者を基準にして設定すると、非協働作業者の移動範囲が協働作業者と同等にまで許容されてしまい、非協働作業者が作業機械と接触するおそれが高くなる。なお、特許文献1は、第1距離及び第2距離によって規定される警報エリア及び停止エリアを通常時に比して広くする点についての開示はあるが、狭くする点についての開示はない。
【0008】
本発明の目的は、周囲作業者に協働作業者が含まれる場合であっても、協働作業者による作業機械との協働作業の効率低下を抑制できる作業機械の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,作業機械の周囲に設定された所定のエリア内の人物の位置を検出する監視装置と、前記監視装置によって検出された人物である検出人物と前記作業機械との位置関係に基づいて前記作業機械の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて前記作業機械を制御する制御装置とを備えた作業機械の制御システムにおいて、前記監視装置は、前記検出人物の動作をさらに検出し、前記制御装置は、前記監視装置により検出される前記検出人物の動作に関する情報を利用して前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを判別し、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかに基づいて、または、前記検出人物が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかと前記作業機械の動作とに基づいて、前記作業機械の動作を制限する際の前記作業機械の許容速度を変更し、前記作業機械の許容速度は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係と、前記作業機械の許容速度との対応関係をそれぞれ規定する第1の数学的関係及び第2の数学的関係を含む複数の数学的関係に基づいて変更され、前記第2の数学的関係は、前記検出人物と前記作業機械との位置関係が同じ条件で比較して、前記第1の数学的関係よりも前記作業機械の許容速度が大きくなるように規定され、前記制御装置は、前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記作業機械を操作するための操作装置に対してフロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作、走行操作のみのいずれかの操作が入力された場合には、前記第2の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、前記所定のエリア内に前記非協働作業者が含まれると判定された場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定し、前記所定のエリア内に前記協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、前記操作装置に対して走行操作と旋回操作の複合操作と、走行操作とフロント操作の複合操作、走行操作と旋回操作とフロント操作の複合操作のいずれかの操作が入力された場合には、前記第1の数学的関係に基づいて前記作業機械の許容速度を決定することとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周囲作業者に協働作業者が含まれる場合であっても、協働作業者による作業機械との協働作業の効率低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図。
図2図1の油圧ショベルのコントローラを油圧駆動装置とともに示す図。
図3】実施形態1の制御システムの構成を示す図。
図4】監視領域の例を示す図。
図5】監視領域の例を示す図。
図6】レバー操作量とアクチュエータ速度の相関テーブルを示す図。
図7】監視領域と、減速領域と、停止領域の一例を示す図。
図8】監視領域と、減速領域と、停止領域の一例を示す図。
図9】油圧ショベルからの距離とアクチュエータの許容速度との関係を規定するテーブルを示す図。
図10】実施形態1のフローチャートを示す図。
図11】実施形態1のフローチャートを示す図。
図12】油圧ショベルの座標系を示す図。
図13】実施形態2の制御システムの構成を示す図。
図14】監視領域と、減速領域と、停止領域の一例を示す図。
図15】実施形態2のフローチャートを示す図。
図16】実施形態2のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下では、作業機械として、作業機の先端の作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示するが、バケット以外のアタッチメントを備える作業機械に本発明を適用してもよい。また、旋回可能な構造物の上に、複数のリンク部材(アタッチメント、ブーム、アーム等)を連結して構成される多関節型の作業機を有するものであれば、油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【0013】
また、以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号の末尾にアルファベットの小文字を付すことがあるが、当該アルファベットの小文字を省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、同一の3つのポンプ190a、190b、190cが存在するとき、これらをまとめてポンプ190と表記することがある。
【0014】
<実施形態1>
図1は本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成図であり、図2は本発明の実施形態に係る油圧ショベルのコントローラ(制御装置)40を油圧駆動装置と共に示す図である。
【0015】
図1において、油圧ショベル1は、多関節型のフロント作業機1Aと、車体(機械本体)1Bで構成されている。車体(機械本体)1Bは、左右の走行油圧モータ3a、3bにより走行する下部走行体11と、下部走行体11の上に取り付けられ、旋回油圧モータ4によって駆動され左右方向に旋回可能な上部旋回体12とからなる。
【0016】
フロント作業機1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)を連結して構成されており、上部旋回体12に取り付けられている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており、アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され、アーム9はアームシリンダ6によって駆動され、バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。
【0017】
上部旋回体12に設けられた運転室内には、走行右油圧モータ3a(下部走行体11)を操作するための走行右レバー23aと、走行左油圧モータ3b(下部走行体11)を操作するための走行左レバー23bと、ブームシリンダ5(ブーム8)及びバケットシリンダ7(バケット10)を操作するための操作右レバー22aと、アームシリンダ6(アーム9)及び旋回油圧モータ4(上部旋回体12)を操作するための操作左レバー22bが設置されている。以下では、これらを操作レバー22、23や操作装置22、23と総称することがある。
【0018】
上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は、油圧ポンプ2とパイロットポンプ13(図2参照)を駆動する。油圧ポンプ2は可変容量型ポンプであり、パイロットポンプ13は固定容量型ポンプである。
【0019】
本実施形態においては、図2に示すように、操作レバー22、23は電気レバー方式である。コントローラ40は、オペレータによる操作装置22、23の操作量をオペレータ操作量検出装置(操作量センサ)53a、53b、53c、53d、53e、53fで検出し、検出された操作量に応じた電流指令を対応する電磁比例弁47a、47b、47c、47d、47e、47f、47g、47h、47i、47j、47k、47lに出力する。各電磁比例弁47は、パイロットポンプ13と流量制御弁15を接続するパイロットライン16に設けられており、コントローラ40より指令があった場合に、当該指令に応じたパイロット圧を流量制御弁15に出力する。
【0020】
流量制御弁15は、旋回油圧モータ4、アームシリンダ6、ブームシリンダ5、バケットシリンダ7、走行右油圧モータ3a、走行右油圧モータ3bそれぞれに、ポンプ2からの圧油を供給できるよう構成されている。以下では、電磁比例弁47a-lと総称することがある。なお、電磁比例弁47a-bは旋回油圧モータ4に、電磁比例弁47c-dはアームシリンダ6に、電磁比例弁47e-fはブームシリンダ5に、電磁比例弁47g-hはバケットシリンダ7に、電磁比例弁47i-jは走行右油圧モータ3aに、電磁比例弁47k-lは走行右油圧モータ3bに圧油を供給する、流量制御弁15にパイロット圧を供給する。
【0021】
パイロットライン16において、パイロットポンプ13と電磁比例弁47a-lの間には、コントローラ40と接続されたロック弁20が設けられている。運転室内のゲートロックレバー(図示しない)の位置検出器がコントローラ40と接続されている。当該位置検出器によりゲートロックレバーがロック位置にあると検出された場合には、コントローラ40はロック弁20をロックして電磁比例弁47a-lへの圧油(パイロット圧)の供給が遮断され、当該位置検出器によりゲートロックレバーがロック解除位置にあると検出された場合には、コントローラ40はロック弁20のロックを解除し、電磁比例弁47a-lに圧油が供給される。
【0022】
油圧ポンプ2から吐出された圧油は、パイロット圧によって駆動される流量制御弁15を介して、走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3b、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7が伸縮することで、ブーム8、アーム9、バケット10がそれぞれ回動し、バケット10の位置及び姿勢が変化する。また、供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。そして、供給された圧油によって走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3bが回転することで、下部走行体11が走行する。以下では、走行油圧モータ3、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7を総称して、油圧アクチュエータ3-7と総称することがある。
【0023】
図3は本実施形態の油圧ショベルが備える制御システムの構成図である。制御システムは、油圧ショベル1(フロント作業機1A、上部旋回体12、下部走行体11)の動作を減速又は停止させることで油圧ショベル1と人との接触を防ぐ接触防止制御を実行する。この図に示した制御システムは、コントローラ40と、油圧ショベル1の周囲に設定された所定のエリア(監視領域71(図4参照)と称する)内の人物を検出する監視装置51と、監視装置51によって検出された油圧ショベル周囲の人物(「検出人物」と称することがある)が周囲作業者と無関係者のいずれであるかを判定するための情報を検出する周囲作業者検出装置52と、ロータリエンコーダやポテンショメータ等によって操作装置22,23に対するオペレータの操作量を検出する操作量センサ53と、オペレータへ接触防止制御の状態等を報知する報知装置55と、流量制御弁15を制御するパイロット圧を出力する電磁比例弁47(47a-47l)とを備えている。
【0024】
(監視装置51)
監視装置51は監視領域71に存在する人物を検出し得る。監視領域71とは、図4に示されるように油圧ショベル1の周囲に形成される所定の領域である。ただし、図4に示した監視領域71の形状は一例に過ぎず、例えば油圧ショベル1の旋回中心を中心とした円形など任意の形状を採用できる。また、監視装置51は、監視領域71に存在する人物の位置や、監視領域71に存在する人物と油圧ショベル1の位置関係(例えば、検出人物と油圧ショベル1との距離)を算出でき、監視領域71に存在する人物の「動作」を検出できる。当該「動作」としては、例えば、監視領域71に存在する人物の視線や、監視領域71に存在する人物の動作(例えば作業中に行われるジェスチャー)がある。監視装置51としては、例えばカメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)を利用できる。監視装置51は、フロント作業機1Aや上部旋回体12に設置されていても良いし(すなわち油圧ショベル1に搭載されていても良いし)、図5に示すように、油圧ショベル1の周囲の環境に複数の監視装置51を配置しても良い。
【0025】
(周囲作業者検出装置52)
周囲作業者検出装置52は、監視領域71に存在する人物(検出人物)の種類が、油圧ショベル1の近傍で作業する周囲作業者と、それ以外の人である無関係者のいずれかに分類(判定)するための情報を検出するための装置である。周囲作業者検出装置52としては、例えば、現場で働く全ての周囲作業者に小型の無線機器(例えば、RFタグやICタグ)を携帯させ、当該無線機器から送信される電波信号を受信する電波受信機(例えば、リーダライタ)や、監視領域71内に存在する人(検出人物)を撮影するカメラが利用できる。なお、この種の技術は公知技術の利用が可能であり、例えば特開2013-151830号公報には、作業者がマーカーとしてのヘルメットを装着し、油圧ショベルがマーカーを認識することで、油圧ショベルのオペレータに作業者を特定する画像を表示する技術が開示されている。
【0026】
(コントローラ40)
コントローラ40は、各種プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)とを備える。コントローラ40は、監視装置51や周囲作業者検出装置52によって検出された検出人物と油圧ショベル1との位置関係に基づいて油圧ショベル1の動作を制限する制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて油圧ショベル1を制御する。特に本実施形態のコントローラ40は、監視装置51を利用して判別される検出人物の種類(非協働作業者、協働作業者、無関係者)と油圧ショベル1の動作(本実施形態では、操作装置への入力操作)とに基づいて、油圧ショベル1の動作を制限する際の油圧ショベル1の許容速度を変更する。
【0027】
(コントローラ40により実行される処理)
コントローラ40は、コントローラ40内の記憶装置に記憶されたプログラムを処理装置が実行することで、協働作業判定部61、オペレータ操作速度推定部62及び動作制限部64として機能する。以下、コントローラ40で実行される処理の詳細について説明する。
【0028】
(周囲作業者判定部60)
周囲作業者判定部60は、周囲作業者検出装置52によって検出された情報に基づいて、監視領域71に存在する人物(検出人物)の種類を、油圧ショベル1の近傍で作業する周囲作業者と、それ以外の人である無関係者のいずれかに分類(判定)する。周囲作業者検出装置52として、例えば、現場で働く全ての周囲作業者が携帯するRFタグやICタグから送信される電波信号を受信する電波受信機(例えば、リーダライタ)を利用した場合には、周囲作業者判定部60は当該電波信号に基づいて周囲作業者であるか否かを判定する。また、周囲作業者検出装置52として監視領域71内に存在する人(検出人物)を撮影するカメラを利用した場合には、周囲作業者判定部60は、当該カメラにより撮影された人の服装の画像特徴量(外観特徴量)から当該人が周囲作業者であるか否かを判定する。
【0029】
周囲作業者検出装置52としてカメラを利用する場合には、当該カメラは監視装置51としても利用できる。また、周囲作業者検出装置52としてリーダライタを利用する場合には、無関係者を含めた人物の検出、当該人物までの距離の演算、及び当該人物の動作の検出のために監視装置51を別途備える必要がある。なお、周囲作業者検出装置52を監視装置51のように人物検出器(ただし、周囲作業者のみの検出となる)として利用した場合の監視領域71はリーダライタの通信可能距離となる。
【0030】
(協働作業判定部61)
協働作業判定部61は、周囲作業者判定部60によって監視領域71に存在すると判定された周囲作業者が協働作業者と非協働作業者のいずれであるかを、監視装置51によって検出される周囲作業者の動作を示す情報(動作情報)に基づいて判定する。周囲作業者の動作情報としては、例えば、周囲作業者の視線、周囲作業者の動き、周囲作業者の顔の向き等を示すデータがある。例えば、監視装置51からの動作情報として周囲作業者の視線データが利用される場合には、周囲作業者の視線が油圧ショベル1の方を向いている場合に協働作業判定部61は、監視領域71内で検知された人物が協働作業者であると判定する。さらに詳しくは、油圧ショベルの走行を誘導する場合や、油圧ショベルの停車位置を指示する場合等の周囲作業者の身振りを想定し、周囲作業者の視線、周囲作業者の動き、周囲作業者の顔の向きからその周囲作業者が協働作業者であると判別する。具体的には、油圧ショベルをガイドするような周囲作業者の腕を伸ばす姿勢や腕を回す動作が、周囲作業者の動きに該当し、その動きをしているときの油圧ショベルの方を向く周囲作業者の視線や、周囲作業者の顔の向きから協働作業者と判別する。周囲作業者が油圧ショベルから所定距離の範囲内(より具体的には、油圧ショベルに搭乗するオペレータから周囲作業者が見える範囲内や、油圧ショベルに搭載されたカメラが周囲作業者を撮影できる範囲内)に位置して上記のような動きをしていることを条件にその周囲作業者が協働作業者であると判別してもよい。
【0031】
監視装置51がカメラの場合、コントローラ40(協働作業判定部61)は、監視装置(カメラ)51により撮影された画像から周囲作業者(検出人物)の視線(周囲作業者の動作)を検出し、検出した視線の先に油圧ショベル1が存在する場合には、当該視線を検出した周囲作業者(検出人物)を協働作業者と判定できる(第1の処理)。また、コントローラ40(協働作業判定部61)は、監視装置(カメラ)51で撮影された画像から周囲作業者(検出人物)の動き(周囲作業者の動作)を検出し、検出した動きに協働作業を示すジェスチャーが含まれている場合には、当該動きを行った周囲作業者(検出人物)を協働作業者と判定できる(第2の処理)。コントローラ40(協働作業判定部61)は、この第1の処理と第2の処理のいずれかを行うことで、周囲作業者(検出人物)が協働作業者か非協働作業者かを判別できる。
【0032】
監視装置51がLiDARの場合、コントローラ40(協働作業判定部61)は、周囲作業者の頭部に固定された保護具(例えばヘルメット)の特徴的な形状を監視装置(LiDAR)51で検出することで当該周囲作業者(検出人物)の顔の向き(周囲作業者の動作)を検出することで視線を推定できる。そして、推定した視線の先に油圧ショベル1が存在する場合には、当該視線を検出した周囲作業者(検出人物)を協働作業者と判定できる(第1の処理)。また、コントローラ40(協働作業判定部61)は、監視装置(LiDAR)51により周囲作業者(検出人物)の動き(周囲作業者の動作)を検出し、検出した動きに協働作業を示すジェスチャーが含まれている場合には、当該動きを行った周囲作業者(検出人物)を協働作業者と判定できる(第2の処理)。コントローラ40(協働作業判定部61)は、この第1の処理と第2の処理のいずれかを行うことで、周囲作業者(検出人物)が協働作業者か非協働作業者かを判別できる。
【0033】
ところで、協働作業判定部61は、監視領域71内で検出された人物のうち、周囲作業者判定部60によって周囲作業者ではないと判定された人を無関係者と判定する。つまり、協働作業判定部61によって、監視領域71内で検出された人物(検出人物)は、協働作業者、無関係者、非協働作業者の3つのいずれかに分類される。
【0034】
(オペレータ操作速度推定部62)
オペレータ操作速度推定部62は、操作量センサ53によって検出された操作装置22,23に対するオペレータの操作量に基づいて、オペレータ操作による各アクチュエータ3、4、5、6、7の速度(アクチュエータ速度)を演算する。例えば、図6に示すようなオペレータのレバー操作量(操作装置22,23に対する操作量)とアクチュエータ速度の相関テーブルに基づいて、オペレータ操作が規定する各アクチュエータ3、4、5、6、7の速度(オペレータによるアクチュエータ3、4、5、6、7への要求速度とも言う)を算出する。操作量と速度の相関テーブルは、アクチュエータ3、4、5、6、7ごとに設定することが好ましい。
【0035】
(動作制限部64)
動作制限部64は、監視領域71内に人物が検出された場合には、その人(検出人物)の種類(協働作業者、非協働作業者、無関係者の3つのいずれか)と、その人(検出人物)と油圧ショベル1との位置関係と、油圧ショベル1の動作(本実施形態では操作装置22,23への入力操作)とに基づいて、オペレータ操作により動作中又は動作を開始しようとするアクチュエータ3、4、5、6、7を減速または停止させるための制御信号を生成する。
【0036】
監視領域71は、図7に示すように、油圧ショベル1を中心にして外側に向かって、停止領域73、減速領域72、通常領域74の3つの領域に区分されている。停止領域73に検出人物が存在する場合には油圧ショベル1の動作(アクチュエータ3、4、5、6、7の動作)は停止される。減速領域72に検出人物が存在する場合には油圧ショベル1の動作(アクチュエータ3、4、5、6、7の動作)が制限(減速)される。通常領域74に検出人物が存在する場合には油圧ショベル1の動作(アクチュエータ3、4、5、6、7の動作)は制限されずオペレータ操作に従う。
【0037】
停止領域73と減速領域72は停止領域境界線731によって区画されており、減速領域72と通常領域74は減速領域境界線721によって区画されている。停止領域73は停止領域境界線731の内側(油圧ショベル1側)の領域であり、減速領域72は減速領域境界線721の内側かつ停止領域境界線731の外側の領域であり、通常領域74は減速領域境界線721の外側かつ監視領域71の内側の領域である。
【0038】
停止領域境界線731と減速領域境界線721の位置は、監視領域71内の検出人物の種類(協働作業者、非協働作業者、無関係者)に依って変化し得る。この点について図7のPo-Pe線上における停止領域境界線731と減速領域境界線721の位置を例にとって説明する。点Poは油圧ショベル1に設定した基準点(例えば上部旋回体12の旋回中心)である。点Peは、点Poから停止領域境界線731と減速領域境界線721に直交する直線を引いたときの、当該直線と監視領域71の境界との交点である。
【0039】
図9は、Po-Pe線上における油圧ショベル1からの距離と、アクチュエータ3、4、5、6、7の許容速度との対応関係の一例を規定するテーブル(許容速度テーブルと称することがある)を示している。図9において実線で描かれる許容速度テーブルは、検出人物に非協働作業者が含まれる場合に選択されるテーブル(非協働作業用の許容速度テーブル(第1許容速度テーブルや第1の数学的関係)と称することがある)である。また、点線で描かれる許容速度テーブルは、検出人物が協働作業者のみの場合に選択されるテーブル(協働作業用の許容速度テーブル(第2許容速度テーブルや第2の数学的関係)と称することがある)である。図中の許容速度の最大値V1としては各アクチュエータ3、4、5、6、7の最大速度を設定できる。なお、図9のようなテーブルはアクチュエータ3、4、5、6、7ごとに設定することが好ましい。
【0040】
(非協働作業用の許容速度テーブル(第1許容速度テーブル))
図9の非協働作業用の許容速度テーブル(第1許容速度テーブル)では、油圧ショベル1からの距離がdth1a以下となったときに許容速度がV1から単調に低下し、その後、同距離がdth2a以下となったときに許容速度がゼロになって油圧ショベル1が停止する。すなわち、図中のdth1aが非協働作業時の減速領域境界線721の位置であり、dth2aは非協働作業時の停止領域境界線731の位置である。
【0041】
(協働作業用の許容速度テーブル(第2許容速度テーブル))
また、図9の点線の協働作業用の許容速度テーブル(第2許容速度テーブル)では、油圧ショベル1からの距離がdth1b(ただし、dth1b<dth1a)以下となったときに許容速度がV1から単調に低下し、その後、同距離がdth2b(ただし、dth2b<dth2a)以下となったときに許容速度がゼロになって油圧ショベル1が停止する。すなわち、図中のdth1bが協働作業時の減速領域境界線721の位置であり、dth2bは協働作業時の停止領域境界線731の位置である。
【0042】
協働作業用の許容速度テーブル(第2許容速度テーブル)は、油圧ショベル1からの距離がdth1a以下の区間で油圧ショベル1からの距離が同一の値で比較して(つまり、検出人物と油圧ショベル1との位置関係が同じ条件で比較して)、非協働作業用の許容速度テーブル(第1許容速度テーブル)よりもアクチュエータの許容速度(速度制限後の速度)が大きくなるように規定されている。これにより協働作業時の方が油圧ショベル1の動作の制限度合いが小さくなる。つまり、協働作業時の方が、オペレータ操作で規定される速度が制限される度合いが小さく、油圧ショベル1の速度が低減し難くなる。したがって、協働作業者が油圧ショベル1と協働作業を行ったとしても、非協働作業者が同じ距離で作業する場合よりも油圧ショベル1の動作が制限され難くなる。
【0043】
監視領域71内に無関係者が検出された場合には、油圧ショベル1からの距離に関わらず、許容速度は常にゼロに保持される。これにより無関係者が検出された場合にはアクチュエータ3、4、5、6、7が停止される。
【0044】
なお、監視領域71内に複数の検出人物が存在する場合には各検出人物の種類を判別し、判別種類の中で最もアクチュエータの動作が制限される種類を対象として制御を行うことが好ましい。
【0045】
動作制限部64は、アクチュエータ3、4、5、6、7の減速または停止の方法として、検出人物の種類と、当該検出人物の油圧ショベル1からの距離と、図9のような許容速度テーブルとに基づいて、アクチュエータ3、4、5、6、7の許容速度を演算する。そして、オペレータ操作に基づくアクチュエータ3、4、5、6、7の速度が当該許容速度を超える場合には、当該許容速度を当該アクチュエータ3、4、5、6、7の制御要求速度とする。そして、動作制限部64は、当該制御要求速度でアクチュエータ3、4、5、6、7が動作するような電磁比例弁47の制御信号を生成し、生成した制御信号を電磁比例弁47に出力する。電磁比例弁47は制御信号に即した弁開度に調整され、当該弁開度が規定するパイロット圧を対応する流量制御弁15に作用させる。これにより対応するアクチュエータ3、4、5、6、7に流入する油圧が制限されて、アクチュエータ3、4、5、6、7は図9のテーブルに従って減速または停止される。
【0046】
(油圧ショベル停止中に人を検出した場合の制御)
油圧ショベル1がオペレータによって操作されていない状態(非操作状態)で、監視領域71内で人物を検知した場合のコントローラ40の制御例について説明する。(1)検出された人が「無関係者」の場合には、その後にオペレータが操作レバー22,23を操作して油圧ショベル1が操作されても、停止状態を維持する。(2)検出された人が「非協働作業者」の場合には、旋回体12の操作(旋回操作)と走行体11の操作(走行操作)の少なくとも一つが入力されていれば停止状態を維持し、フロント作業機1Aのみの操作(フロント操作)のみであれば、非協働作業者の許容速度テーブル(図9の実線)に従いアクチュエータ5,6,7を動作させる。(3)検出された人が「協働作業者」の場合には、走行操作と他の操作が複合される場合には停止状態を維持し、それ以外の場合には協働作業者の許容速度テーブル(図9の点線)に従い対象のアクチュエータを動作させる。
【0047】
(報知装置55)
報知装置55は、オペレータに対してコントローラ40による接触防止制御の状態に関する情報を報知する。例えば、接触防止制御により、オペレータ操作に基づくアクチュエータ速度に比して、実際のアクチュエータ速度が制限されている場合には、その旨を報知する。また、監視領域71内に人が検出された場合には、監視領域71内に人が存在することを報知する。さらに、減速領域72内や停止領域73内に人が検出された場合には、その旨を報知する。報知の具体的方法としては、モニタディスプレイ(表示装置)による表示や、スピーカ(音声出力装置)からの音声や、警告灯の点灯・明滅などがある。
【0048】
(実施形態1のフローチャート)
本実施形態のコントローラ40によって実行される接触防止制御の動作について、図10及び図11を用いて説明する。
【0049】
ステップS100で、コントローラ40(協働作業判定部61)は監視領域71内で人物(検出人物)が検知されたか否かを判定する。検知された場合にはステップS101に進み、検知されなかった場合には特に処理は行わない。
【0050】
ステップS101では、コントローラ40(協働作業判定部61)はステップS100で検知された人物(検出人物)に無関係者が含まれるか否かを判定する。無関係者の分類は先述の周囲作業者判定部60による。無関係者を含まない場合にはステップS102へ進み、無関係者を含む場合にはステップS110へ進む。
【0051】
ステップS102では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は操作量センサ53の出力に基づいて、操作装置22,23に対する操作(レバー操作)が入力されているか否かを判定する。レバー操作が入力されているときにはステップS103へ進む。レバー操作が入力されていないときにはステップS112へ進む。
【0052】
ステップS103では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、ステップS100の検出人物が協働作業者のみであるか否かを判定する。検出人物が協働作業者か非協働作業者かの判定は、先述のように、監視装置51によって検出される当該検出人物の動作に基づく。検出人物が協働作業者のみである場合(監視領域71に協働作業者のみが存在すると判定された場合)にはステップS104に進む。一方、検出人物が非協働作業者を含む場合(監視領域71内に周囲作業者のみが存在し、かつ、監視領域71内に非協働作業者が含まれると判定された場合)にはステップS107へ進む。
【0053】
ステップS104では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は走行操作が入力されているか否かを判定する。走行操作が入力されていないとき、換言するとフロント作業機1Aの操作(フロント操作)と上部旋回体12の旋回操作の少なくとも一方が行われているとき(操作装置22,23に対して走行操作以外の操作が入力されている場合であり、より具体的には、フロント操作のみ、旋回操作のみ、フロント操作と旋回操作の複合操作)にはステップS106へ進む。下部走行体11に対する走行操作が少なくとも含まれているときにはステップS105へ進む。
【0054】
ステップS105では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、走行操作以外の操作(つまり、フロント操作と旋回操作)が無いことを判定する。走行以外の操作がない、つまり走行操作のみが入力されている場合には、ステップS106に進む。走行以外の操作がある、つまり走行操作と他の操作(フロント操作と旋回操作の少なくとも一方)が複合して入力されている場合にはステップS107へ進む。
【0055】
ステップS106では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、操作入力のあったアクチュエータの協働作業用の許容速度テーブル(例えば図9の点線の第2許容速度テーブル)とに基づいて、当該操作入力のあったアクチュエータの許容速度を算出(決定)する。
【0056】
ステップS107では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、操作入力のあったアクチュエータの非協働作業用の許容速度テーブル(図9の実線の第1許容速度テーブル)とに基づいて、当該操作入力のあったアクチュエータの許容速度を算出(決定)する。
【0057】
ステップS108では、コントローラ40(動作制限部64)は、オペレータ操作が規定するアクチュエータ速度が、ステップS106又はステップS107で算出した許容速度を超える場合には、当該アクチュエータの速度が当該許容速度となるように電磁比例弁47の制御信号を生成し、その制御信号を電磁比例弁47に出力する。
【0058】
ステップS109では、コントローラ40は、監視領域71内で周囲作業者が検知されたことをオペレータに報知装置55を介して通知する。また、オペレータ操作が図9の2つの許容速度テーブルのいずれかによって制限されているときは、油圧ショベル1の動作が制限されていることを報知装置55を介してオペレータに通達する。
【0059】
ステップS110では、コントローラ40(動作制限部64)は、検出人物に無関係者が含まれているため、全てのアクチュエータ3、4、5、6、7の速度をゼロにして油圧ショベル1の動作を強制的に停止させる。具体的には、各アクチュエータ速度がゼロになるよう、電磁比例弁47に制御信号を出力する。
【0060】
ステップS111では、コントローラ40は、監視領域71内で無関係者が検知されたため油圧ショベル1の動作を停止させたことを報知装置55を介してオペレータに通知する。
【0061】
また、ステップS102からステップS112へ進んだときは、油圧ショベル1は停止中であると判断される。ステップS112ではコントローラ40は停止中処理フラグを立て、その後ステップS200へ進む。ステップS200以降は図11を用いて説明する。
【0062】
ステップS200では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、油圧ショベル1の停止中に監視領域71内で検知された検出人物が協働作業者のみであるか否かを判定する。検出人物が協働作業者か非協働作業者かの判定は、先述のように、監視装置51によって検出される当該検出人物の動作に基づく。協働作業者のみである場合にはステップS201へ進む。協働作業者のみではない場合(つまり、非協働作業者が含まれる場合)にはステップS205へ進む。
【0063】
ステップS201では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、停止中処理フラグ(ステップS112参照)が立っている状態で、操作装置22,23に対して操作入力(レバー操作)があるか否かを判定する。レバー操作がある場合にはステップS202へ進む。レバー操作がない場合にはステップS200に戻る。
【0064】
ステップS202では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、走行操作が入力されているか否かを判定する。走行操作の入力がないとき、つまり走行操作以外の操作(フロント操作と旋回操作の少なくとも一方)が入力されているときにはステップS204へ進む。一方、少なくとも走行操作が入力されているときにはステップS203へ進む。
【0065】
ステップS203では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、走行以外の操作が入力されていないことを判定する。走行以外の操作の入力がない、つまり走行操作のみである場合、ステップS204に進む。走行操作以外の操作が入力されている、つまり走行操作と他の操作(フロント操作と旋回操作の少なくとも一方)が複合されている場合にはステップS206へ進む。
【0066】
ステップS204ではコントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、操作入力のあったアクチュエータの協働作業用の許容速度テーブル(例えば図9の点線の第2許容速度テーブル)とに基づいて、当該操作入力のあったアクチュエータの許容速度を算出(決定)する。
【0067】
ステップS205では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、操作装置22,23に対して走行操作または旋回操作が入力されているか否かを判定する。走行操作または旋回操作が入力されている場合(つまり、走行操作のみ、旋回操作のみ、走行操作と旋回操作の複合操作、走行操作とフロント操作の複合操作、旋回操作とフロント操作の複合操作、走行操作と旋回操作とフロント操作の複合操作のいずれかが入力されている場合)にはステップS206へ進む。走行操作又は旋回操作の入力がない場合にはステップS208へ進む。
【0068】
ステップS206では、コントローラ40(動作制限部64)は、オペレータ操作に係るアクチュエータの速度がゼロに保持されるよう電磁比例弁47に制御信号を出力し、油圧ショベル1の停止状態を強制的に維持する。
【0069】
ステップS207では、コントローラ40は、油圧ショベル1の停止状態が維持されていることを報知装置55を介してオペレータに通知する。
【0070】
ステップS208では、コントローラ40(オペレータ操作速度推定部62)は、フロント作業機1Aに対するレバー操作(フロント操作)が入力されているか否かを判断する。フロント操作が入力されている場合(すなわちフロント操作のみが入力されている場合)にはステップS209に進む。フロント操作の入力がない場合(すなわち操作装置22,23への入力が一切ない場合)にはステップS200へ戻る。
【0071】
ステップS209では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、操作入力のあったアクチュエータ(油圧シリンダ5,6,7の少なくとも1つ)の非協働作業用の許容速度テーブル(第1許容速度テーブル)とに基づいて、当該操作入力のあったアクチュエータの許容速度を算出(決定)する。
【0072】
ステップS210では、コントローラ40(動作制限部64)は、オペレータ操作が規定するアクチュエータ速度が、ステップS204又はステップS209で算出した許容速度を超える場合には、当該アクチュエータの速度が当該許容速度となるように電磁比例弁47の制御信号を生成し、その制御信号を電磁比例弁47に出力する。
【0073】
ステップS211では、コントローラ40は、アクチュエータ速度が低減されていることを報知装置55を介してオペレータに通達する。
【0074】
ステップS212では、コントローラ40は、停止中処理フラグを下げてステップS100に戻る。
【0075】
(効果)
上記のように構成した油圧ショベル1の制御システムでは、協働作業者のみが減速領域72に存在する場合には、非協働作業者が減速領域72に存在する場合と比較して油圧ショベル1の許容速度が大きく設定される。また、通常領域74と減速領域72との境界線721と、減速領域72と停止領域73との境界線731とは、協働作業時の方が非協働作業時よりも油圧ショベル1の近くに設定され、協働作業時の減速領域72及び停止領域73は非協働作業時よりも縮小される。これにより協働作業中は非協働作業中よりも油圧ショベル1が減速・停止することが抑制される。したがって、本実施形態によれば、協働作業者による油圧ショベル1との協働作業中に油圧ショベル1の動作が制限される場面を低減できるので、協働作業の効率低下を抑制できる。
【0076】
ただし、本実施形態では、走行操作とフロント操作又は旋回操作とが複合して操作される場合には、減速領域72に協働作業者のみがいる場合であっても、非協働作業用の許容速度テーブルに基づいて油圧ショベル1を制御することとしている。このような操作が入力される状況下では油圧ショベル1が短時間で移動できる範囲が大きく、たとえ協働作業者であっても油圧ショベル1との接触可能性が上昇し得る。そのため許容速度を制限することで協働作業者が油圧ショベル1と接触する可能性を低減している。
【0077】
また、本実施形態では、作業に関係の無い無関係者が監視領域71に存在する場合には、油圧ショベル1の動作を強制的に停止するので、無関係者が油圧ショベル1と接触することを防止できる。
【0078】
さらに、油圧ショベル1の停止中に減速領域72に協働作業者のみが検出された場合であっても、走行操作とフロント操作又は旋回操作とが複合して操作される場合には、その操作に基づく動作を開始することなく油圧ショベル1の停止状態を保持するようにした。これにより、オペレータが走行操作との複合操作によって油圧ショベル1を始動させようとする場合に当該複合操作に従った油圧ショベル1の始動が禁止されるので、協働作業者が油圧ショベル1と接触することを防止できる。
【0079】
また、同様に、油圧ショベル1の停止中に減速領域72に非協働作業者が検出された場合であって走行操作又は旋回操作が入力された場合には、その操作に基づく動作を開始することなく油圧ショベル1の停止状態を保持するようにした。これによりオペレータが走行操作または旋回操作によって油圧ショベル1を始動させようとする場合に当該操作に従った油圧ショベル1の始動が禁止されるので、非協働作業者または協働作業者が油圧ショベル1と接触することを防止できる。
【0080】
また、油圧ショベル1の停止中に減速領域72に非協働作業者が検出された場合であってフロント操作のみが入力された場合には、非協働作業用の許容速度テーブルに基づいて油圧ショベル1を制御することとした(ステップS209)。すなわちフロント操作に基づくフロント作業機1Aの動作は許容されるので、作業効率の低下を抑制できる。
【0081】
(その他)
なお、監視装置51によって協働作業者のみが検出された場合には、監視領域71内の減速領域72と停止領域73を縮小して図8のように矩形(例えば、油圧ショベル1の前後方向に沿って長方形の長さ方向を配置する)に変形しても良い。このように減速領域72と停止領域73を縮小すると、油圧ショベル1が動作制限を受ける領域をさらに縮小できるので、協働作業効率のさらなる低減抑制を達成できる。
【0082】
また、監視装置51によって協働作業者のみが検出された場合に、図8の減速領域72と停止領域73を採用するときを、フロント操作のみが入力されるときに限定しても良い。これにより、協働作業者が減速領域72の外に位置してフロント作業機1Aの動作平面から離れている場合には、フロント作業機1Aについては動作が制限されないので作業効率を向上できる。
【0083】
さらに、動作制限部64は、油圧ショベル1がオペレータによって操作されていない状態(油圧ショベル1が停止している状態)で、監視領域71内で人物を検知した場合には、油圧ショベル1の動作を停止状態に保持したり、オペレータ操作が規定する速度よりもアクチュエータの速度を減速したりしても良い。例えば、検知した人物が無関係者や非協働作業者である場合には、操作入力があっても油圧ショベル1の停止状態を維持し、検知した人物が協働作業者である場合には、油圧ショベル1の動作を減速するように構成してもよい。また、検知した人物が非協働作業者である場合であって、フロント作業機1Aの延長線上に非協働作業者が存在しない場合には、フロント作業機1Aは停止保持とせずに、許容速度で動作させてもよい。
【0084】
なお、図10,11のフローチャートでは、検出人物の種類(協働作業者、非協働作業者、無関係者)と、油圧ショベル1の動作(具体的には操作装置22,23への操作入力から推定される動作)との2つの因子に基づいて、操作入力に係るアクチュエータ3,4,5,6,7の許容速度の決定の際に利用する許容速度テーブルを選択した。しかし、検出人物の種類(協働作業者、非協働作業者、無関係者)のみに基づいて、操作入力に係るアクチュエータ3,4,5,6,7の許容速度の決定に利用する許容速度テーブルを選択しても良い。この場合、図10からはステップS104、S105が省略され、図11からはステップS202、S203が省略されることになる。
【0085】
<実施形態2>
本実施形態では、第1実施形態で説明した方法をベースとしながらも、油圧ショベル1の速度ベクトル(推定速度ベクトル、実速度ベクトル)を演算し、その速度ベクトルの方向と検出人物との関係性も考慮しながら許容速度テーブルを選択している点に主たる特徴がある。なお、実施形態1と同じ部分については適宜説明を省略することがある。
【0086】
図12に示すように、本実施形態における油圧ショベル1は、ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度θbm、θam、θbkを測定するために、ブームピン8aに取り付けられたブーム角度センサ30と、アームピン9aに取り付けられたアーム角度センサ31と、バケットリンク14に取り付けられたバケット角度センサ32とを備えている。なお、角度センサ30、31、32はそれぞれ基準面(例えば水平面)に対する角度を検出する角度センサ(例えば、IMU)に代替可能である。または各油圧シリンダ5、6、7のストロークを検出するシリンダストロークセンサに代替し、得られたシリンダストロークを角度に換算する構成としても良い。
【0087】
また、上部旋回体12と下部走行体11の回転中心近傍に、上部旋回体12と下部走行体11の相対角度(旋回角度θsw)を検出可能な、旋回角度センサ19が取り付けられている。
【0088】
油圧ショベル1の姿勢は、図12に示すショベル基準座標系上に定義できる。ショベル基準座標系は、上部旋回体12の旋回中心軸のうち、下部走行体11が地面と接する点を原点としている。下部走行体11が直進する際の進行方向と、フロント作業機1Aの動作平面が平行となり、かつフロント作業機1Aの伸ばし方向の動作方向と、下部走行体11を前進させたときの動作方向とが一致する向きをX軸とし、これを下部走行体11の下面(地面との接地面)に固定する。上部旋回体12における旋回中心をZ軸とし、前述したX軸及びZ軸と右手座標系を構成するようにY軸を定めた。また、旋回角度θswについては、フロント作業機1AがX軸と平行になる状態を0度とした。X軸に対するブーム8の回転角をブーム角θbm、ブーム8に対するアーム9の回転角をアームθam、アーム9に対するバケット10爪先の回転角をバケット角θbk、下部走行体11に対する上部旋回体12の旋回角を旋回角θswとした。
【0089】
図13に本実施形態におけるコントローラ40の機能ブロック図を示す。本実施形態のコントローラ40には、旋回角度センサ19や角度センサ30-32から構成される姿勢検出装置54が接続され、各角度センサ19、30-32の検出データが入力されている。また、コントローラ40は、プログラムを実行することで、油圧ショベル1の姿勢を演算するショベル姿勢演算部65と、油圧ショベル1の動作を演算する動作演算部63として機能する。
【0090】
(ショベル姿勢演算部65)
ショベル姿勢演算部65は、旋回角度センサ19の検出データから、ショベル基準座標系における上部旋回体12の旋回角度を演算する。また、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32の検出データから、ショベル基準座標系におけるフロント作業機1Aの姿勢を演算する。これらの角度情報と、油圧ショベル1の各部の寸法情報(図12に示すLsb,Lbm,Lam,Lbk)を用いることで、ショベル基準座標系における油圧ショベル1の各フロント部材(ブーム8、アーム9、バケット10、上部旋回体12)の姿勢と位置を演算できる。
【0091】
(オペレータ操作速度推定部62)
オペレータ操作速度推定部62は、操作量センサ53の検出データから演算される各操作装置22、23のオペレータ操作量と、予めコントローラ40内に保持している操作量とアクチュエータ速度との相関テーブルとを用いて、オペレータ操作による油圧アクチュエータ3、4、5、6、7の推定速度を演算する。さらに、オペレータ操作速度推定部62は、演算した油圧アクチュエータ3、4、5、6、7の推定速度を、ショベル姿勢演算部65が演算する油圧ショベル1の姿勢情報を用いて、フロント作業機1A(各フロント部材8、9、10)の速度(角速度)に変換する。
【0092】
(動作演算部63)
動作演算部63は、姿勢検出装置54の検出データに基づいて、実際の油圧ショベル1の動作を演算する。例えば、動作演算部63は、角度センサ30~32の検出データから演算される角度の時間変化(ショベル姿勢演算部65が算出する油圧ショベル1の姿勢の時間変化)に基づいて、フロント作業機1Aに実際に生じる速度ベクトル(実速度ベクトル)を算出する。また、動作演算部63は、油圧ショベル1の旋回角度と、操作装置23a、23bの操作量から、車体座標系において油圧ショベル1が旋回する方向と走行する方向を演算できる。また、動作演算部63は、オペレータ操作速度推定部62で演算したフロント作業機1Aの角速度から、オペレータ操作によってフロント作業機1Aに生じる速度ベクトル(推定速度ベクトル)も演算できる。
【0093】
(協働作業判定部61)
本実施形態の協働作業判定部61は、操作装置22,23に入力される操作の内容だけでなく、当該操作に基づく油圧ショベル1の動作方向も考慮することで、協働作業が行われているか否かを判定する。
【0094】
協働作業判定部61において協働作業が行われていると判定され得る油圧ショベル1の動作としては、例えば、オペレータが操作装置22を操作することによって生じる油圧ショベル各部の速度ベクトルが協働作業者に向かう成分を持たないことや、走行レバー23の操作量が閾値以下(つまり、下部走行体11の速度が閾値以下)であることがある。例えば、動作演算部63で演算される実速度ベクトルと推定速度ベクトルの方向がともに協働作業者に向かう成分を持たないことを、協働作業が行われていると判定する条件にしても良い。また、フロント作業機1Aや上部旋回体12の旋回動作によって、協働作業者に向かう速度ベクトルがフロント作業機1Aに生じない場合であっても、作業機1Aや上部旋回体12に対する操作と同時に走行操作が検出された場合には協働作業でないと判定しても良い。
【0095】
(動作制限部64)
本実施形態の動作制限部64は、油圧ショベル1の動作によって停止領域境界線731と減速領域境界線721の位置を変更し得る。すなわち、動作制限部64は、油圧ショベル1の動作によって、減速領域72や停止領域73の形状を変化させ得る。これにより、例えば、より油圧ショベル1に近い位置で協働作業者が作業を行えるようにできる。例えば、図14に示すようにフロント作業機1Aに図中左向きの速度ベクトルが生じているときには、減速領域72や停止領域73の形状を、図7に示した形状から図14に示した形状に変更しても良い。図14の形状では、フロント作業機1Aの動作方向と逆方向に位置する減速領域72と停止領域73が縮小されている。
【0096】
(実施形態2のフローチャート)
本実施形態のコントローラ40によって実行される接触防止制御の動作について、図15及び図16を用いて説明する。
【0097】
図15において、ステップS100、S101、S102、S103、S104、S108、S109、S110、S111については、実施形態1と同一の処理を行う。なお、ステップS102で油圧ショベル1に対する操作入力がないと判定された場合には図16のステップS200へ進むものとする。
【0098】
第1に、監視領域71内に協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、操作装置22,23に対して走行操作以外の操作が入力された場合には、ステップS300に進む。
【0099】
ステップS300では、コントローラ40(動作演算部63)は、オペレータに操作によってフロント作業機1Aに生じる速度ベクトルである推定速度ベクトルを演算する。
【0100】
ステップS301では、コントローラ40(動作演算部63)は、ショベル姿勢演算部65で演算されるフロント作業機1Aの姿勢の時間変化(角速度)に基づいて、実際にフロント作業機1Aに生じる速度ベクトルである実速度ベクトルを演算する。なお、フロント作業機1Aの角速度は、ブーム8、アーム9、バケット10のそれぞれにIMUを取り付け、各IMUで測定した値を利用しても良い。
【0101】
ステップS302では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、ステップS300で演算した推定速度ベクトル(オペレータ操作によってフロント作業機1Aに生じる速度ベクトル)と、ステップS301で演算した実速度ベクトル(フロント作業機1Aの各部の角速度から演算したフロント作業機1Aに生じる速度ベクトル)とが、ともに協働作業者に向かうか否か判定する。2つの速度ベクトルがともに協働作業者に向かわない場合にはステップS303に進む。2つの速度ベクトルのうち少なくとも1つが協働作業者に向かう場合にはステップS107へ進む。
【0102】
ステップS303では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、協働作業用の許容速度テーブルとに基づいて、許容アクチュエータ速度を算出する。
【0103】
第2に、監視領域71内に協働作業者のみが存在すると判定された場合であって、操作装置22,23に対して走行操作のみが入力された場合には、ステップS304に進む。
【0104】
ステップS304では、コントローラ40(動作演算部63)は、旋回角度センサ19で検出される旋回角θswと操作量センサ53e,53fで検出される操作量とに基づいて、オペレータの走行操作によって油圧ショベル1(下部走行体11)に生じる走行の向き(油圧ショベル1が走行操作によって進む進行方向)を演算する。
【0105】
ステップS305では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、ステップS304で演算したオペレータ操作によって油圧ショベル1に生じる走行の向きが、協働作業者に向かうか否かを判定する。当該走行の向きが協働作業者に向かう場合にはステップS107へ進む。協働作業者に向かわない場合にはステップS306へ進む。
【0106】
ステップS306では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、操作装置23に入力される走行の操作量が閾値以下であるかを判定する。閾値以下である場合にはステップS307へ進む。閾値を超える場合にはステップS107へ進む。なお、ステップS306は省略可能である。
【0107】
ステップS307では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、協働作業用の許容速度テーブルとに基づいて、許容アクチュエータ速度を算出する。
【0108】
図16において、ステップS200、ステップS201、S202、S203、S205、S206、S207、S208、S209、S210、S211は図11と共通である。
【0109】
第3に、油圧ショベル1の停止中に監視領域71内に協働作業者のみが存在すると判定された後に、操作装置22,23に対して走行操作以外の操作が入力された場合には、ステップS400に進む。
【0110】
ステップS400では、コントローラ40(動作演算部63)は、オペレータに操作によってフロント作業機1Aに生じる速度ベクトルである推定速度ベクトルを演算する。
【0111】
ステップS401では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、ステップS400で演算した推定速度ベクトル(オペレータ操作によってフロント作業機1Aに生じる速度ベクトル)が、協働作業者に向かうか否かを判定する。推定速度ベクトルが協働作業者に向かわない場合にはステップS402へ進む。速度ベクトルが協働作業者に向かう場合にはステップS209へ進む。
【0112】
ステップS402では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、協働作業用の許容速度テーブルとに基づいて、許容アクチュエータ速度を算出する。
【0113】
第4に、油圧ショベル1の停止中に監視領域71内に周囲作業者のみが存在し、かつ、油圧ショベル1の停止中に監視領域71内に非協働作業者が含まれると判定された後に、操作装置22,23に対して走行操作のみが入力された場合には、ステップS403に進む。
【0114】
ステップS403では、コントローラ40(動作演算部63)は、旋回角度センサ19で検出される旋回角θswと操作量センサ53e,53fで検出される操作量とに基づいて、オペレータの走行操作によって油圧ショベル1(下部走行体11)に生じる走行の向き(油圧ショベル1が走行操作によって進む進行方向)を演算する。
【0115】
ステップS404では、コントローラ40(協働作業判定部61)は、ステップS403で演算したオペレータ操作によって油圧ショベル1に生じる走行の向きが、協働作業者に向かうか否かを判定する。協働作業者に向かわない場合にはステップS405へ進む。協働作業者に向かう場合にはステップS209へ進む。
【0116】
ステップS405では、コントローラ40(動作制限部64)は、検知された人物と領域境界との距離と、協働作業用の許容速度テーブルとに基づいて、許容アクチュエータ速度を算出する。
【0117】
なお、図15のフローチャートでは、フロント作業機1Aの動作の演算精度を向上する観点から、ステップS300とステップS301を実行したが、ステップS300とステップS301のいずれか一方で演算される速度ベクトルのみを利用してステップS302の判定を行っても良い。また、協働作業者と油圧ショベル1が接触する可能性を低減する観点からステップ306の処理を実行したが、ステップS306は省略可能である。
【0118】
(効果)
本実施形態では、操作装置22,23に入力される操作だけでなく、油圧ショベル1の動作方向(速度ベクトル)を考慮して許容速度テーブルを選択しているので、油圧ショベル1の実際の動作を反映した速度制限を行うことができる。油圧ショベル1の実際の動作を考慮することによって、油圧ショベル1と協働作業者が接触する可能性をさらに低減できる。また、油圧ショベル1の動作から判断して両者が接触しないことが明白な場合には速度制限が行われず、それによりオペレータは自分の意図通りに油圧ショベル1を動作させることができるので、作業時にオペレータに生じる違和感を低減できる。
【0119】
(その他)
なお、周囲作業者の動作に基づく人の判別に関し、所持者の生体情報(歩数、脈拍、体温など)を取得可能なウェアラブル端末を利用しても良い。例えば、油圧ショベルと通信可能なウェアラブル端末を各周囲作業者に所持させ、当該端末によって所持者(周囲作業者)の生体情報を逐次取得・送信する。そして、送信された当該生体情報に基づいて周囲作業者の体調に異常が検出されたときには、たとえ当該周囲作業者の目線が油圧ショベル1を向いていたとしても、非協働作業者または無関係者として分類する。このように周囲作業者の生体情報を考慮することにより、周囲作業者が油圧ショベルと接触する可能性をさらに低減できる。
【0120】
なお、上記の各実施形態では、監視装置51や周囲作業者検出装置52が油圧ショベル1に搭載されたコントローラ40と通信する構成を例に挙げて説明したが、複数の油圧ショベルの制御信号を生成するサーバを利用したシステムを構築しても良い。すなわち、電磁比例弁47に出力する制御信号を生成又は送信する制御装置は、油圧ショベル1に搭載する必要は無く、油圧ショベル1から離れた場所に設置しても良い。
【0121】
上記の各実施形態では、1つのアクチュエータにつき2つの許容速度テーブル(第1及び第2許容速度テーブル)を利用して許容速度を決定したが、1つのアクチュエータにつき3つ以上の許容速度テーブルを利用して許容速度を決定しても良い。また、油圧ショベル(境界線)からの距離と許容速度との数学的関係を規定したものは図9に示したテーブル(相関図)に限られず、例えば両者の数学的関係を規定した相関表、各種演算・関数なども利用可能である。
【0122】
また、上記のコントローラ40に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記のコントローラ40に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該コントローラ40の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
【0123】
また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0124】
1…油圧ショベル,1A…フロント作業機,2…油圧ポンプ,3…走行油圧モータ,4…旋回油圧モータ,5…ブームシリンダ,6…アームシリンダ,7…バケットシリンダ,8…ブーム,9…アーム,10…バケット,11…下部走行体,12…上部旋回体,19…旋回角度センサ,22…操作装置,23…操作装置,30…ブーム角度センサ,31…アーム角度センサ,32…バケット角度センサ,40…コントローラ(制御装置),47…電磁比例弁,51…監視装置,52…周囲作業者検出装置,53…操作量センサ,54…姿勢検出装置,55…報知装置,60…周囲作業者判定部,61…協働作業判定部,62…オペレータ操作速度推定部,63…動作演算部,64…動作制限部,65…ショベル姿勢演算部,71…監視領域,72…減速領域,73…停止領域,74…通常領域,721…減速領域境界線,731…停止領域境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16