(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】港湾用燃料油の脱硫剤混合システム
(51)【国際特許分類】
F02B 51/02 20060101AFI20240216BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20240216BHJP
B01F 25/25 20220101ALI20240216BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240216BHJP
【FI】
F02B51/02
B01F23/41
B01F25/25
B01F35/71
(21)【出願番号】P 2022542010
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2021008479
(87)【国際公開番号】W WO2023282361
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521358202
【氏名又は名称】ローカーボン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チョル・イ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-011479(JP,A)
【文献】特開2007-056813(JP,A)
【文献】特表2014-513747(JP,A)
【文献】特開平06-042734(JP,A)
【文献】特開2007-218238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 51/02
B01F 23/41
B01F 25/25
B01F 35/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油を保管する燃料油タンク;及び
脱硫剤を保管する脱硫剤タンク;を含み、
前記燃料油タンク及び前記脱硫剤タンクから前記燃料油及び前記脱硫剤の供給を受けて混合するラインミキサー;
前記ラインミキサーで混合された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物の液滴を形成する液滴微粒化ユニット;
前記液滴微粒化ユニットで液滴が形成された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を磁化させる磁化ユニット;
前記磁化ユニットで磁化された前記燃料油と前記脱硫剤混合物とを旋回反応させる旋回反応ユニット;
前記旋回反応ユニットから前記燃料油及び前記脱硫剤混合物内部の気体を分離するガス分離ユニット;
前記ガス分離ユニットで分離された液状の前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を衝突体に衝突させる衝突エマルジョンユニット;及び
前記衝突エマルジョンユニットで衝突した前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を保管するエマルジョンタンク;を含む、港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項2】
前記ラインミキサーは、前記燃料油100重量部に対して前記脱硫剤3~10重量部の供給を受けて混合することを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項3】
前記液滴微粒化ユニットに気体を供給する気体供給ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項4】
前記気体は空気(air)又は酸素(O
2)であることを特徴とする、請求項3に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項5】
前記気体は、前記燃料油中で1~500μmの大きさのバブル(bubble)を形成することを特徴とする、請求項3に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項6】
前記液滴微粒化ユニットは、複数の微細ホールが形成されて圧力によって液滴が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項7】
前記磁化ユニットは、
0.9~1.5テスラの磁場で磁化させることを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項8】
前記磁化ユニットは、磁場が前記燃料油及び前記脱硫剤混合物の移送方向の垂直に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項9】
前記衝突エマルジョンユニットは、前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を噴射して衝突体と15°の角度で衝突させることを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【請求項10】
前記エマルジョンタンクは水位センサをさらに含み、前記エマルジョンタンクの水位に応じて混合モード又は再循環モードを選択することを特徴とする、請求項1に記載の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾用燃料油の脱硫剤混合システムに係り、より具体的には、港湾で使用される燃料油に、脱硫機能を有する脱硫剤を予め混合することができる、港湾用燃料油の脱硫剤混合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染を誘発する汚染源として、硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)が指摘されており、特に、硫黄酸化物は、硫黄成分を含有する化石燃料の燃焼から放出される産業排ガスに含まれており、酸性雨を誘発するなどの多様な環境汚染を引き起こすなどの問題を示している。
【0003】
このような産業排ガスから硫黄酸化物を除去する脱硫方法は、持続的に研究されてきた。工場又は化石燃料を使用する発電所では、一般に、燃焼後処理方法である排煙脱硫方法を使用してきた。
【0004】
排煙脱硫方法は、硫黄ガスを含有する化石燃料を燃焼させた後、その排ガスを脱硫処理することを意味し、このような排煙脱硫方法は湿式法と乾式法に分けられる。湿式法は、煤煙をアンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、石灰乳などを介して洗浄して硫黄酸化物を除去する方法であり、乾式法は、活性炭、炭酸塩などの粒子又は粉末を煤煙と接触させ、二酸化硫黄を吸着又は反応させることにより硫黄酸化物を除去する方法である。
【0005】
しかし、排煙脱硫方法を使用するためには、排ガスを処理する脱硫設備を別途構築しなければならず、脱硫設備の稼働時に人手と費用が多くかかり、脱硫過程が複雑であるという問題点を持っている。
【0006】
また、脱硫設備は、固定された場所で稼動が可能であるため、硫黄酸化物の排出が多いが、移動する装置、例えば港湾で使用されるコンテナ運搬車両のように排ガスを多量に排出する車両の場合、脱硫設備の適用が難しいという問題点を持っている。
【0007】
したがって、化石燃料の燃焼に関連する硫黄酸化物の排出量低減のために脱硫方法が単純で産業現場で適用しやすく、脱硫効果にも優れる脱硫方法及びこれを適用したシステムに関する研究が切実に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、化石燃料の燃焼時に硫黄酸化物(SOx)を除去することができる脱硫剤を燃料油に混合して車両又は船舶に注油することにより、簡単に硫黄酸化物を除去することができる、港湾用燃料油の脱硫剤混合システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料油を保管する燃料油タンク;及び脱硫剤を保管する脱硫剤タンク;を含み、前記燃料油タンク及び前記脱硫剤タンクから前記燃料油及び前記脱硫剤の供給を受けて混合するラインミキサー;前記ラインミキサーで混合された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物の液滴を形成する液滴微粒化ユニット;前記液滴微粒化ユニットで液滴が形成された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を磁化させる磁化ユニット;前記磁化ユニットで磁化された前記燃料油と前記脱硫剤混合物とを旋回反応させる旋回反応ユニット;前記旋回反応ユニットから前記燃料油及び前記脱硫剤混合物内部の気体を分離するガス分離ユニット;前記ガス分離ユニットで分離された液状の前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を衝突体に衝突させる衝突エマルジョンユニット;及び前記衝突エマルジョンユニットで衝突した前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を保管するエマルジョンタンク;を含む、港湾用燃料油の脱硫剤混合システムを提供する。
【0010】
また、前記ラインミキサーは、前記燃料油100重量部に対して前記脱硫剤3~10重量部の供給を受けて混合することを特徴とする。
【0011】
また、前記液滴微粒化ユニットに気体を供給する気体供給ユニットをさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また、前記気体は空気(air)又は酸素(O2)であることを特徴とする。
【0013】
また、前記気体は、前記燃料油内で1~500μmの大きさのバブル(bubble)を形成することを特徴とする。
【0014】
また、前記液滴微粒化ユニットは、複数の微細ホールが形成されて圧力によって液滴が形成されることを特徴とする。
【0015】
また、前記磁化ユニットは、9,000~15,000ガウス(gauss)(0.9~1.5テスラ)の磁場で磁化させることを特徴とする。
【0016】
また、前記磁化ユニットは、磁場が前記燃料油及び前記脱硫剤混合物の移送方向の垂直に形成されることを特徴とする。
【0017】
また、前記衝突エマルジョンユニットは、前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を噴射して衝突体と15°の角度で衝突させることを特徴とする。
【0018】
また、前記エマルジョンタンクは水位センサをさらに含み、前記エマルジョンタンクの水位に応じて混合モード又は再循環モードを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムは、オイル(oil)である燃料油を連続相とし、水(water)をベースとした脱硫剤を分散相として、燃料油中の脱硫剤をW/O(Water in Oil)エマルジョン化させることにより、これを港湾で使用される車両又は船舶に注油することにより、燃料油の燃焼時に燃料油と脱硫剤が一緒に燃焼して、燃焼過程から発生する硫黄酸化物が除去されるので、最終的に排出される硫黄酸化物を低減させるという効果がある。
【0020】
また、本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムを利用すると、固定された場所で排ガスの脱硫作業を行っていた従来の方法とは異なり、移動する車両に使用される燃料油に脱硫剤を混合して注油することにより、脱硫施設の追加なしに既存の車両エンジンを活用することができるので、単純で適用が容易であり、脱硫効果にも優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムの一実施形態を示す構成図である。
【
図2】本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムのラインミキサーを示す平面図である。
【
図3】本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムの旋回反応ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態によって詳細に説明する前に、本明細書及び請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的且つ辞典的意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきであることを明かしておく。
【0023】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0024】
以下では、本発明の港湾用燃料油の脱硫剤混合システム100についてより詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システムの一実施形態を示す構成図である。
【0026】
図1に示すように、本発明は、燃料油を保管する燃料油タンク110;及び脱硫剤を保管する脱硫剤タンク120;を含み、前記燃料油タンク110及び前記脱硫剤タンク120から前記燃料油及び前記脱硫剤の供給を受けて混合するラインミキサー130;前記ラインミキサー130で混合された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物の液滴を形成する液滴微粒化ユニット200;前記液滴微粒化ユニット200で液滴が形成された前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を磁化させる磁化ユニット300;前記磁化ユニット300で磁化された前記燃料油と前記脱硫剤混合物とを旋回反応させる旋回反応ユニット400;前記旋回反応ユニット400から前記燃料油及び前記脱硫剤混合物内部の気体を除去するガス分離ユニット500;前記ガス分離ユニット500で分離された液状の前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を衝突体に衝突させる衝突エマルジョンユニット600;及び前記衝突エマルジョンユニット600で衝突した前記燃料油及び前記脱硫剤混合物を保管するエマルジョンタンク700;を含む、港湾用燃料油の脱硫剤混合システム100を提供する。
【0027】
本発明の燃料油タンク110及び脱硫剤タンク120は、それぞれ燃料油及び脱硫剤を保管する役目をする。
【0028】
本発明で使用される燃料油(Fuel Oil)は、主に車両用として使用されるガソリン及び軽油等を一括して意味し、本発明の一実施形態として、港湾でよく使用されるトレーラーの燃料である軽油を例示として挙げるが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、本発明の脱硫剤は、燃料油の燃焼時に発生する硫黄酸化物(SOx)を除去する液状触媒を使用することができる。
【0030】
本発明における脱硫剤は、SiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3よりなる群から選択された1種以上の酸化物を含むことができ、SiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3の酸化物を全て含んで使用することが好ましい。
【0031】
脱硫剤が酸化物としてSiO2、Al2O3、Fe2O3、TiO2、MgO、MnO、CaO、Na2O、K2O及びP2O3を全て含むときの基本化学式は、K0.8~0.9(Al,Fe,Mg)2(Si,Al)4O10(OH)2であって、一般にイライト(illite)と呼ばれる鉱物であり、イライトは、基本的に2つの四面体層の間に1つの八面体層が入って結合する2:1の構造を有し、八面体層は、結合構造内の陽イオンサイト3個のうち、2個だけ陽イオンで満たされる2八面体(dioctahedral)構造が特徴であって、陽イオンの不足により全体的に負(-)電荷を帯びており、これにより脱硫剤と混合された燃料油が燃焼するときに硫黄酸化物(SOx)を吸着することができる。
【0032】
脱硫剤は、各酸化物を、SiO215~90重量部、Al2O315~100重量部、Fe2O310~50重量部、TiO25~15重量部、MgO20~150重量部、MnO10~20重量部、CaO20~200重量部、Na2O15~45重量部、K2O20~50重量部、及びP2O35~20重量部で含むことができる。
【0033】
また、酸化物は、脱硫剤として形成される前に、微粉器によって粒子サイズ1~2μmの微粒子に混合及び微粉でき、2.5~3.0の比重を有し、条痕色及び銀白色を呈する粉末状に使用される。
【0034】
また、脱硫剤は、Li、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Cd及びPbよりなる群から選択された1種以上の金属を含むことができ、Li、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Cd及びPbの金属を全て含んで使用することが好ましい。
【0035】
脱硫剤は、各金属をLi0.0035~0.009重量部、Cr0.005~0.01重量部、Co0.001~0.005重量部、Ni0.006~0.015重量部、Cu0.018~0.03重量部、Zn0.035~0.05重量部、Ga0.04~0.08重量部、Sr0.02~0.05重量部、Cd0.002~0.01重量部、及びPb0.003~0.005重量部で含むことができる。
【0036】
また、前記酸化物のように、金属も微分器によって粒子サイズ1~2μmの微粒子に混合及び微粉でき、2.5~3.0の比重を有し、条痕色及び銀白色を呈する粉末状に使用される。
【0037】
脱硫剤は、四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O)、水酸化ナトリウム(NaOH)、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)及び過酸化水素(H2O2)よりなる群から選択された1種以上の液状組成物を含むことができ、溶媒としては、水(water、H2O)を使用することができ、四ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム及び過酸化水素の液状組成物を全て含んで使用することが好ましい。
【0038】
脱硫剤は、前述した酸化物、液状組成物が混合及び反応を行いながらキレート剤の役目をして、金属との配位結合を介してキレート化された金属キレート化合物を形成する。
【0039】
また、液状組成物は、燃焼物が燃焼するときに発生する灰分(ash)に吸着して、灰分中に存在する硫黄酸化物と反応して除去することができる。四ホウ酸ナトリウムであるNa2B4O7からNaBO2が誘導され、水素化を経てNaBH4が生成され、生成されたNaBH4が酸素と硫黄酸化物に出会って硫酸ナトリウム(Na2SO4)として反応して硫黄酸化物を除去し、反応過程は、下記の反応式1及び2のとおりである。
【0040】
[反応式1]
【0041】
NaBH4+O3→Na2O2+H2O+B
【0042】
[反応式2]
【0043】
1)Na2O2+SO3→Na2SO4+O
【0044】
2)Na2O2+SO2→Na2SO4
【0045】
3)Na2O2+SO→Na2SO3
【0046】
また、脱硫剤は、四ホウ酸ナトリウム20~130重量部、水酸化ナトリウム15~120重量部、ケイ酸ナトリウム50~250重量部及び過酸化水素10~50重量部で各液状組成物を含むことができる。
【0047】
脱硫剤は、400~1200℃の温度範囲で燃焼物と混合して燃焼させるときに硫黄酸化物の吸着効果が活性化できるが、600~900℃の温度範囲で燃焼させることが高い効率を示すことができる。
【0048】
本発明のラインミキサー130は、燃料油タンク110及び脱硫剤タンク120から燃料油及び脱硫剤の供給を受けて混合する役目をする。
【0049】
図2は本発明の一実施形態として使用されるラインミキサー130を示す平面図である。
【0050】
図2を参照すると、燃料油はラインミキサー130の
図2の矢印Aに投入され、
図2の矢印Bに脱硫剤が投入されて均一に混ぜられる過程(ラインミキシング)を経た後、燃料油と脱硫剤の混合物が
図2の矢印Cに抜け出る。
【0051】
ラインミキサー130に燃料油が一定の流速で供給される間、脱硫剤を燃料油100重量部に対して3~10重量部を供給して混合することができる。例えば、脱硫剤は、燃料油100重量部に対して、3~8重量部、3~6重量部、3~4重量部、4~10重量部、5~10重量部、又は8~10重量部を混合することができる。
【0052】
脱硫剤を3重量部未満で供給する場合には、燃料油の内部に分散する脱硫剤の量が少なくて脱硫効果が減少し、脱硫剤を10重量部超過で供給する場合には、燃料油と脱硫剤との混合状態の燃焼効率が減少するという問題点がある。
【0053】
システムに形成された制御部(図示せず)によって、燃料油及び脱硫剤混合物の投入流量が調節できる。
【0054】
本発明の液滴微粒化ユニット200は、ラインミキサー130で混合された燃料油及び脱硫剤混合物の液滴を形成する役割をする。
【0055】
液滴微粒化ユニット200は、燃料油及び脱硫剤をW/Oエマルジョン化させるために液滴を形成して燃料油中に脱硫剤を分散させることにより、エマルジョン化を進行させる。
【0056】
液滴微粒化ユニット200は、公知の様々な装置を使用することができるが、好ましくは、均質機(Homogenizer)を使用することができる。
【0057】
また、液滴微粒化ユニット200は、燃料油と脱硫剤との混合物に圧力又は剪断力を加えて液滴を形成するようにすることができる。
【0058】
液滴微粒化ユニット200の一実施形態として、混合物を移送する移送管内に管内径と同じ直径で形成された板を準備して固定し、板に微細径のホールを複数形成する。
【0059】
移送ポンプによって移送管内の燃料油及び脱硫剤の混合物が移送され、混合物は、液滴微粒化ユニット200にぶつかって圧力を受ける。液滴微粒化ユニット200によって移動を妨げられた混合物が、剪断力及び圧力によって、液滴微粒化ユニット200に形成された微細ホールを抜け出しながら微細に分散することにより、混合物の液滴が形成される。
【0060】
液滴微粒化ユニット200の一実施形態として、液滴微粒化ユニット200内に形成された微細ホールの直径は、1~500μmとすることができる。例えば、液滴微粒化ユニットのホールの直径は、1~400μm、1~300μm、1~200μm、1~100μm、1~50μm、50~500μm、100~500μm、200~500μm、300~500μm、400~500μm、50~400μm、100~300μm、又は200~300μmであり得る。前記ホールが1μm未満の直径である場合には、液滴微粒化装置を通過して液滴が形成される混合物の量が少ないため、全体工程上の流れが遅くなるという問題があり、前記ホールが500μm超過の直径である場合には、液滴形成効果が低下するという問題点がある。
【0061】
また、液滴微粒化部200に気体供給ユニット210をさらに含むことにより、燃料油及び脱硫剤混合物の液滴形成時に気体を一緒に供給して混合することができる。
【0062】
気体供給ユニット210が混合物の液滴形成中に供給する気体は、混合物内にエアバブル(air bubble)を形成させてエアバブルの発生と割れの繰り返しで燃料油及び脱硫剤の表面張力に衝撃を加えることにより、液滴形成を容易にすることができる。
【0063】
気体は、混合物が液滴微粒化ユニットを通過する前、通過する途中、又は通過した後のいずれのときも気体を供給することができ、又は、それぞれの過程に連動又は独立して供給するように構成することができる。
【0064】
気体は、公知の様々な気体を使用することができるが、本発明で供給される気体は、燃料油及び脱硫剤のエマルジョン化を助け、後で燃焼時に完全燃焼できるように空気(air)又は酸素(O2)を使用することができる。
【0065】
気体は、燃料油中で1~500μmのバブルを形成することができる。例えば、前記バブルの大きさは、1~400μm、1~300μm、1~200μm、1~100μm、1~50μm、50~500μm、100~500μm、200~500μm、300~500μm、400~500μm、50~400μm、100~300μm、又は200~300μmであり得る。1μm未満の大きさのバブルを形成する場合には、混合物の内部にエアバブルが形成され難く、500μm超過の大きさのバブルを形成する場合には、バブルの安定性が低下して破壊されやすく、外部へ離脱することができる。
【0066】
本発明の磁化ユニット300は、液滴微粒化ユニット200で液滴が形成された燃料油及び脱硫剤混合物を磁化させる役目をする。
【0067】
磁化ユニット300は、移送配管を介して燃料油及び脱硫剤の混合物が移送される間に、配管の外側又は内側に形成された磁性物体によって形成された磁場を通過して磁化される。
【0068】
燃料油は疎水性を帯びており、脱硫剤は親水性を帯びているため、磁場を通過した混合物は、磁力によって電荷又は磁気モーメントが形成されるので、エマルジョンとしての分散効果が極大化される。
【0069】
磁場は9,000~15,000ガウス(gauss)(0.9~1.5テスラ)である。例えば、前記磁場は、9,000~13,000ガウス(0.9~1.3テスラ)、9,000~11,000ガウス(0.9~1.1テスラ)、9,000~10,000ガウス(0.9~1.0テスラ)、10,000~15,000ガウス(1.0~1.5テスラ)、又は12,000~15,000ガウス(1.2~1.5テスラ)である。この範囲外の磁場では、混合物に電荷又は磁気モーメントの形成が発生しないか或いは弱く発生して分散効果に劣る。
【0070】
また、磁化ユニット300は、磁石又は電磁石のように磁場を形成することができる公知の様々な方法を使用することができるが、好ましくは、永久磁石を活用して形成することができ、永久磁石は、配管ラインに1つ以上設置できる。
【0071】
磁化ユニット300が形成する磁場は、混合物の移送方向と同じ方向に流れるように構成してもよく、移送方向の垂直方向に磁場が形成されるように構成してもよい。
【0072】
本発明の旋回反応ユニット400は、磁化された燃料油及び脱硫剤混合物を旋回反応させる役目をする。
【0073】
磁化ユニット300によって磁化された燃料油及び脱硫剤の混合物をポンプで旋回反応ユニット400に供給してユニット内で回転させることにより、燃料油と脱硫剤が強力に分散及び混合されるようにする。
【0074】
旋回反応ユニット400は、混合物が回転によって混合できるように、内部が円形又は楕円形である容器に投入して、旋回回転によって混合させることができる。
【0075】
また、異なる大きさの多段円筒からなる旋回反応ユニット400に流入させて回転させることにより、混合物中の燃料油及び脱硫剤の分散がより上手く行われるようにする。
【0076】
図3は旋回反応ユニット400の一実施形態を示す斜視図である。
図3を参照すると、旋回反応ユニット400は、外部円筒410と内部円筒420で形成される。外部円筒410の一側には、混合物が投入される投入口412が形成されており、内部円筒420の中央を貫通するホールによって、混合物が噴出される排出口422が形成されている。
【0077】
投入口が形成された方向を内部円筒420の上面としたとき、内部円筒420の上面は外部円筒410の上面と同じ位置に形成されており、下面は離れて一定の空間を置いている。
【0078】
旋回反応ユニット400の旋回反応方法をより詳細に説明すると、磁化された燃料油及び脱硫剤は、ポンプの圧力(static pressure)を受けた状態で旋回反応ユニット400の投入口412に流入し(
図3の矢印A)、混合物は、内部円筒420の外側と外部円筒410の内側との間に形成された空間で強い回転力を有する状態で動的(dynamic)回転をしながら強く混せられる。
【0079】
圧力によって数回回転する混合物は、内部円筒420の下面に形成された排出口422に沿って外部へ排出(
図3の矢印B)される。
【0080】
本発明のガス分離ユニット500は、旋回反応ユニット400で旋回反応によって混合、分散された燃料油及び脱硫剤混合物の内部に含まれている気体を分離させる役目をする。
【0081】
ガス分離ユニット500の一実施形態として、加圧が可能なチャンバに、旋回反応された混合物を充填して加圧し、加圧によって、混合物の内部に存在していた気体と、燃料油及び脱硫剤の液体とに分離されることができる。
【0082】
分離された液体(混合物)は、後述する衝突エマルジョンユニット600に移送され、気体は、外部へ排出されるか或いは後述のエマルジョンタンク700へ移送されることができる。
【0083】
本発明の衝突エマルジョンユニット600は、液状の燃料油及び脱硫剤混合物を衝突体に衝突させる役目をする。
【0084】
衝突エマルジョンユニット600は、燃料油及び脱硫剤混合物をスプレー等の噴射機によって噴射させ、これを衝突体と強く衝突させてより微小な液滴に形成させる。
【0085】
衝突体は、噴射される燃料油及び脱硫剤混合物と衝突する物体を意味し、例えば壁や配管など、衝突エネルギーを付与することができる公知の多様な物体を使用することができる。
【0086】
衝突エマルジョンユニット600では、燃料油及び脱硫剤混合物を壁又は配管などのように衝突可能な構造物である衝突体にぶつかるようにして、混合物に微細な液滴を形成することにより分散が上手く行われ、エマルジョン化状態を長らく維持させることができる。
【0087】
衝突エマルジョンユニット600で噴射された燃料油及び脱硫剤混合物を衝突させるとき、衝突する衝突体は、壁や配管などの公知の様々な構造物を使用することができ、衝突させる角度は、様々な角度とすることができるが、噴出される流れ方向の15°角度とすることができる。
【0088】
本発明のエマルジョンタンク700は、衝突エマルジョンユニット600で衝突した燃料油及び脱硫剤混合物を保管する役目をする。
【0089】
エマルジョンタンク700は、オイル(oil)である燃料油に水(water)ベースの脱硫剤を供給してW/O(Water in Oil)エマルジョン化された燃料油及び脱硫剤混合物を保管する役目をし、保管中に注油器800の作動に応じて、港湾で使用される車両又は船舶Aに注油されて使用される。
【0090】
本発明のエマルジョンタンク700は、内部に水位センサをさらに含むことができ、水位センサは、エマルジョンタンク700内に存在する、エマルジョン化された燃料油及び脱硫剤混合物の水位を測定する。
【0091】
エマルジョンタンク700の水位が所定の数値以上である場合、システムに形成された制御部(図示せず)が、燃料油タンク110とラインミキサー130との間に連結された第1バルブ710を閉鎖し、エマルジョンタンク700とラインミキサー130との間に連結された第2バルブ720を開放するように信号を送って制御することにより、エマルジョンタンク700内の燃料油及び脱硫剤をラインミキサー130からエマルジョンタンク700まで再び循環させる再循環モードに設定する。
【0092】
エマルジョンタンク700の水位が所定の数値以下である場合、第1バルブ710を開放し、第2バルブ720を閉鎖するように信号を送って制御することにより、燃料油タンク110と脱硫剤タンク120からそれぞれ燃料油及び脱硫剤混合物の供給を受け、エマルジョンタンク700内の所定の数値以上となるようにシステムを稼動させて、エマルジョン化された燃料油及び脱硫剤を混合する混合モードに設定する。
【0093】
本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システム100は、オイル(oil)である燃料油を連続相とし、水(water)をベースとした脱硫剤を分散相として燃料油中の脱硫剤をW/O(Water in Oil)エマルジョン化させた後、これを港湾で使用される車両又は船舶に注油することにより、燃焼時に燃料油と脱硫剤が一緒に燃焼して、燃焼過程から発生する硫黄酸化物が除去されるので、最終的に排出される硫黄酸化物を低減させるという効果がある。
【0094】
また、本発明による港湾用燃料油の脱硫剤混合システム100を利用すると、固定された場所で排ガスの脱硫作業を行っていた従来の方法とは異なり、移動する車両に使用される燃料油に脱硫剤を混合して一緒に燃焼させることにより、脱硫施設の追加なしに既存の車両エンジンを活用することができるため、単純で適用が容易であり、脱硫効果にも優れるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、脱硫剤混合システムに広範囲に使用できる。
【符号の説明】
【0096】
100 港湾用燃料油の脱硫剤混合システム
110 燃料油タンク
120 脱硫剤タンク
130 ラインミキサー
200 液滴微粒化ユニット
210 気体供給ユニット
300 磁化ユニット
400 旋回反応ユニット
410 外部円筒
412 投入口
420 内部円筒
422 排出口
500 ガス分離ユニット
600 衝突エマルジョンユニット
700 エマルジョンタンク
800 注油器