(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電気化学電池、特に燃料電池のバイポーラプレートを検査するための方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0202 20160101AFI20240216BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20240216BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240216BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240216BHJP
G01N 21/91 20060101ALI20240216BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240216BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240216BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240216BHJP
【FI】
H01M8/0202
H01M8/0206
H01M10/04 Z
H01M4/04 Z
G01N21/91 A
G01N21/91 B
G06T7/00 350C
G06T7/00 610B
G06V10/82
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022550973
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 DE2021100195
(87)【国際公開番号】W WO2021185404
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】102020107779.3
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヒルデブラント
(72)【発明者】
【氏名】クリス ホウトカー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン アッハツェーン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-285934(JP,A)
【文献】特開2015-138745(JP,A)
【文献】特開2007-178384(JP,A)
【文献】特開2007-018176(JP,A)
【文献】特開2013-167596(JP,A)
【文献】特開2018-192524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 10/04
H01M 4/04
G01N 21/91
G06T 7/00
G06V 10/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電
池のバイポーラプレートを検査するための方法であって、バイポーラプレート(14)の表面のマッピング(12)が作成され、
前記マッピング(12)は、起こり得る欠陥(28)について自動画像処理支援評価システムによって試験され、
前記評価システムが、試験されたバイポーラプレート(14)を潜在的欠陥
を含む可能性があるプレートとして識別した場合、前記
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートの、潜在的欠陥として識別された領域の詳細検査(22)が実施され、
前記評価システムは、
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートを識別するために、非欠陥バイポーラプレート(14)および欠陥バイポーラプレート(14)から作成されるバイポーラプレート(14)の複数のマッピング(12)に基づいて訓練されるニューラルネットワーク(20)を有し、
前記ニューラルネットワーク(20)は、前記詳細検査(22)の結果を用いて継続的に訓練され、前記ニューラルネットワーク(20)は、強化学習を実施する、方法。
【請求項2】
前記詳細検査(22)において、少なくとも1つの非破壊検査は、前記
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートについて、前記潜在的欠陥として識別された領域で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非破壊検査として、浸透探傷試験および/または磁粉探傷試験および/または超音波検査および/または放射線透過検査および/または渦電流試験は、前記
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートについて、前記潜在的欠陥として識別された領域で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイポーラプレート(14)を製造するために、2枚以上のシートメタルの溶接が行われ、前記溶接中、前記溶接時に発生する溶接シームの複数のマッピング(12)が作成され、評価される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バイポーラプレート(14)を製造するために、前記溶接後、前記溶接シーム全体のマッピング(12)が作成され、評価される、請求
項4に記載の方法。
【請求項6】
前記評価システムによる前記評価の結果を用いて、前記溶接のプロセス制御の適合が行われる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実施するための検査装置であって、
前記バイポーラプレート(14)の表面の少なくとも1つのマッピング(12)を作成するためのカメラ(26)と、
起こり得る欠陥(28)について前記マッピング(12)を試験するための自動画像処理支援評価システムと、
前記評価システムによって潜在的欠陥
を含む可能性があるプレートとして識別されたバイポーラプレートを詳細検査ステーションに誘導するための、前記評価システムによって操作可能な切替器と、を備え、
前記評価システムは、
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートを識別するために、非欠陥バイポーラプレート(14)および欠陥バイポーラプレート(14)から作成されるバイポーラプレート(14)の複数のマッピング(12)に基づいて訓練されるニューラルネットワーク(20)を有し、前記評価システムは、前記詳細検査(22)の結果を保存するための、前記ニューラルネットワーク(20)と連結された、前記詳細検査ステーションと通信するインターフェースを、前記詳細検査(22)の前記結果を用いる前記ニューラルネットワーク(20)の継続訓練の目的で有する、検査装置。
【請求項8】
評価ユニットは、前記バイポーラプレート(14)を製造するための少なくとも1つの生産ユニッ
トと連結可能な少なくとも1つの出力ポートを、前記評価システムによる評価の結果に応じて、前記生産ユニットのプロセス制御を適合するために有することを特徴とする、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの生産ユニットは、溶接装置および/または打ち抜き装置および/または成形装置であることを特徴とする、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記詳細検査ステーションは、前記
潜在的欠陥を含む可能性があるプレートの非破壊検査のための
、少なくとも1つの検査機器を有することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池などの電気化学電池の、バイポーラプレートを検査するための方法と、この目的のために企図された検査装置であって、その検査装置を使用して、燃料電池などの電気化学電池のバイポーラプレートは、製造中に欠陥について試験することができる、検査装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックまたは燃料電池積層体は、通常、積層構成の多数の燃料電池を含む。それぞれの燃料電池は、導電性プレートを介して接触する電解質および電極を含む。低温領域で動作するポリマー電解質燃料電池の場合、ポリマー膜電極ユニットが存在する。スタック内の個々のポリマー電解質燃料電池の分離のために、主に金属製の導電性バイポーラプレートが利用される。バイポーラプレートは、電極を電気的に接触させて、隣接する電池に電流を送るために使用されるだけではなく、燃料および冷媒を供給しかつ分配し、熱および反応生成物を排出するのにも役立つ。そのために、バイポーラプレートは、一般的にガス分配区画を有し、ガス分配区画は、その構造に基づいて膜表面に関して、主に水素および酸素であるガス状燃料の最適な分配をもたらす。その際、バイポーラプレートは、所望の電流経路、冷却チャネル、および/または開口部を形成する、相互に溶接された2枚以上の薄肉のメタルシートによって製造することができる。
【0003】
米国特許出願公開第2019/0296378(A1)号により、様々な電圧を印加して評価することによって、燃料電池を検査することが公知である。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0340747(A1)号は、燃料電池製造ラインの分野における品質監視システムおよび品質監視方法を開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2013/0230072(A1)号は、燃料電池構成要素、特にバイポーラプレートでの欠陥認識のための方法および装置を記載している。
【0006】
独国特許第10393273(B4)号は、膜電極アセンブリにおける電気的欠陥を検出するための方法を開示している。
【0007】
独国特許第3809221(A1)号は、プレス部品または他の被加工物における欠陥箇所、特に亀裂および/または狭窄を検出するための方法および装置を記載している。
【0008】
独国特許第102015221697(B3)号は、部品表面の表面特性、特に欠陥を特定するための構成体を開示している。
【0009】
独国特許第102016211449(A1)号は、携行可能な検査ユニットを備えた点検システム、および部品を検査するための方法を記載している。
【0010】
独国特許第102009059765(A1)号は、バイポーラプレートを製造するための方法を開示している。バイポーラプレートは、第1のプレートおよび第2のプレートから段階的に形成され、この場合、各工程後、多数の直線からなる実際のパターンは、それぞれの工程を代表する中間製品上に投影することによって生じ、カメラを用いて撮影される。続いて、基準パターンと比較される。
【0011】
燃料電池または燃料電池積層体などの電気化学電池内の構成要素を別の部品と組み立てる前に、燃料電池などの電気化学電池の構成要素の検査を費用対効果が高くかつ信頼性高く実施するという必要性が常に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、電気化学電池、特に燃料電池の構成要素の費用対効果が高くかつ信頼性が高い検査を可能にする手段を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本課題は、請求項1の特徴を有する方法および請求項7の特徴を有する検査装置によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項および以下の説明において提示されており、これらはそれぞれ単独でまたは組み合わせて、本発明の態様を形成することができる。
【0014】
一実施形態は、電気化学電池、特に燃料電池のバイポーラプレートを検査するための方法であって、バイポーラプレートの表面のマッピングが作成され、マッピングは、起こり得る欠陥について自動画像処理支援評価システムによって試験され、評価システムが、試験されたバイポーラプレートを潜在的欠陥の疑念があるプレートとして識別した場合、疑念があるプレートの、潜在的欠陥として識別された領域の詳細検査が実施され、評価システムは、疑念があるプレートを識別するために、非欠陥バイポーラプレートおよび欠陥バイポーラプレートから作成されるバイポーラプレートの複数のマッピングに基づいて訓練されるニューラルネットワークを有し、ニューラルネットワークは、詳細検査の結果を用いて継続的に訓練され、ニューラルネットワークは、強化学習を実施する、方法、に関する。
【0015】
これに関して以下の2019年4月11日付けの「So funktioniert Reinforcement Learning(そのように強化学習は機能する)」という表題の記事も参照されたい。https://www.alexanderthamm.com/de/blog/einfach-erklaert-so-funktioniert-reinforcement-learning/
【0016】
バイポーラプレートとは、本発明の意味では、電極および導電性素子の機能を備える、電気化学電池の部品であると理解される。その部品は、例えば、燃料電池もしくは電解装置のバイポーラプレートであるか、またはレドックスフロー電池の電極プレートでもある。
【0017】
バイポーラプレート検査に関連して、特にバイポーラプレート製造時に関連する強化学習のための別の検査結果またはプロセスデータの結果は、強化学習のためにラベル情報または報酬情報として追加される。そのようにして、緻密性試験の好ましい結果、溶接加工のインラインプロセスデータ、サーモグラフィー詳細検査、溶接シームの品質を特定するトポグラフィー検査、または対応する溶接シームに関するX線/CT情報が収集される。詳細検査は、インラインで100%まで、またはより遅い加工時間ではランダムサンプリングでも組み込むことができる。この場合、溶接シームで詳細に検査された量は、機械学習法の訓練データセットにおいて考慮され、その訓練データセットは、バイポーラプレート生産の間に増大し、精度が時間と共にさらに向上する。
【0018】
燃料電池、特にポリマー電解質燃料電池の製造時の重要な製造工程は、バイポーラプレートの作製であり、特に2つ以上の金属プレートまたはメタルシートの溶接によって行われる。溶接時に生じる溶接シームは、目視検査によって十分に点検することができる。ただし、この目視検査は、バイポーラプレートの表面、特にバイポーラプレートの両方の平坦な側面をカメラを用いてマッピングに記録し、自動評価システムの画像処理を施すことによって、自動的に実施される。評価システムは、マッピングを処理して、例えば、光学パラメータに基づいて特定の形状および/または色および/または輝度および/またはコントラストを識別し、これらが特定の規定値内にあるかどうかを点検することができる。上述の点検作業は、十分に自動化可能であり、評価システムの評価ソフトウェアを用いて実施可能である。この場合さらに、溶接シームが、例えば、ガス分配区画の領域において、例えば、媒体が流れるチャネルを形成する特徴的形状または構造に関して正しい相対位置に延びているかどうかを点検することができる。この場合、溶接されたバイポーラプレートの特徴的形状または構造は、バイポーラプレートの表面のマッピングにおいて識別され、例えば、溶接シームの正しい位置決めのための基準として使用することができる。
【0019】
バイポーラプレートでの溶接接続に関する欠陥に加えて、さらに、プレートおよびその構造、特にガス分配区画の領域における3次元構造、プレート端部およびガス分配区画の領域における開口部の形成などの寸法偏差を点検して、不規則性を識別し、選別し、偏差が潜在的に発生するそれぞれの方法工程の範囲内で修正するように介入することができる。
【0020】
ただし、マッピングの画像処理評価時に、例えば、ガス分配区画の領域における特徴的形状または構造の正確な実施が必要な確実性で識別することが不可能であるとされた場合、これは、製造欠陥に起因する可能性があるため、評価システムはまた、バイポーラプレートの上述の欠陥を点検することができる。
【0021】
評価システムによって「異常」の可能性があるとして見出されたバイポーラプレートは、疑念のあるプレートとして詳細検査を受け、詳細検査では、場合により明白により高い費用で検査が実施される。ただし、疑念のあるプレートのみが詳細検査を受けるため、検査費用を低減することができる。それにより、例えば、各バイポーラプレートにおいて渦電流試験が実施されるのではなく、自動目視検査時に評価システムによって疑念があるとして注目されたその疑念のあるプレートにおいてのみ実施される。その場合、光学的にほぼ完璧に見える溶接シームは、経験上問題がない一方で、不完全に見える溶接シームでは、確かにまだ十分な、特に十分に緻密な接続が存在し得るが、これは、すべての場合に純粋な目視検査によって保証することができないという知見が利用される。自動画像処理時に問題がないと評価されたバイポーラプレートは、それにより、さらなる詳細検査なしにさらに加工することができる一方で、疑念のあるプレートのうち、詳細検査後に所定の基準に実際に対応しないプレートのみが不良品として選別され、設定された基準にまだ対応するそのような疑念のあるプレートを再びさらなる加工に供給することができる。実際の理由に基づいて、疑念のあるプレートの不良品としての不要な選別が回避されるため、不要なコストが回避されている。マッピングの画像処理時に自動評価システムにおいて使用される評価方法によって、著しい追加のコストをかけることなく、燃料電池の検査時に検査品質を高めることができるため、費用対効果が高くかつ信頼性が高い燃料電池の検査が可能である。
【0022】
特に、詳細検査では、少なくとも1つの非破壊検査、特に浸透探傷試験および/または磁粉探傷試験および/または超音波検査および/または放射線透過検査および/または渦電流試験は、疑念があるプレートについて、潜在的欠陥として識別された領域で実施される。それにより、詳細検査時の疑念のあるプレートの破壊を回避することができる。詳細検査を行うべきであるが、疑念のあるプレートが要求プロファイルを満たしている場合では、疑念のあるプレートは、通常のバイポーラプレートとして再び後続の製造工程に供給することができる。それにより、燃料電池の製造時の不要なコストを低減することができる。同時に、純粋な目視検査と比較して、疑念のあるプレートの内部に存在する状態を測定することができ、それにより、特に信頼性が高い検査が達成される。詳細検査は、自動的に、かつ/またはそのために教育された検査員によって実施することができる。
【0023】
その際、要求プロファイルは、溶接シームの緻密性および位置、ガス分配区画の領域における構造の透過性および位置、燃料ガス供給のための開口部の配置、シーリングの形成および位置などに関係してもよい。
【0024】
本発明によれば、評価システムは、疑念のあるプレートを識別するために、非欠陥バイポーラプレートおよび欠陥バイポーラプレートから作成されるバイポーラプレートの複数のマッピングに基づいて訓練されるニューラルネットワークを有する。ニューラルネットワークは、機械学習によって訓練することができるため、評価システムでのマッピングの画像評価を改善することができる。それにより、特に、多数の多様な、場合より異なる強度で重みづけされたパラメータをマッピングの評価時に考慮に入れることが可能である。その際、パラメータの重みづけは、ニューラルネットワークの学習中、上述の外見を有するバイポーラプレートが正常または異常であるかどうかが事前に既知である、訓練用に使用されるマッピングの画像処理時に、正しいマッピングが「正常」または「異常」として評価されるように、自動的に適合される。これは、複雑なジオメトリの場合であっても、複雑な損傷パターンを自動的に認識することを可能にする。それにより、検査品質が改善されることとなる。
【0025】
ニューラルネットワークは、本発明によれば、詳細検査の結果を用いて継続的に訓練される。疑念のあるプレートの詳細検査は、バイポーラプレートの評価時に追加の知見取得をもたらし、この場合、追加の訓練データは、恒常的に評価システムにフィードバックされる。これは、特にニューラルネットワークの複数の中間層を有するディープラーニング構造の一部として、ニューラルネットワークの強化学習をもたらす。「ディープラーニング(Deep Learning)」(ドイツ語では、mehrschichtiges Lernen(多層学習)、tiefes Lernen(深層学習)、tiefgehendes Lernen(深層学習))は、機械学習の方法を指し、入力層と出力層との間の多数の中間層、いわゆる「隠れ層」を有する人工ニューラルネットワークを使用する。それにより、広範囲の内部構造が形成される。これは情報処理の方法である。機械学習は、自己適応型アルゴリズムである。ディープラーニングは、機械学習の一部分であり、機械学習のプロセスを実施するために、一連の階層または概念のヒエラルキーを利用する。それにより、検査品質は、時間の経過と共になおさらに向上する。強化学習は、連続的に、または漸増的に行うことができる。
【0026】
特に、バイポーラプレートを製造するために、2枚以上のメタルシートの溶接が行われ、溶接中、溶接時に生じる溶接シームの複数のマッピングが作成されて評価される、かつ/または溶接後、溶接シーム全体のマッピングが作成されて評価される。評価システムでの画像評価は、溶接工程中に事前に行うことができるため、溶接する領域の溶融時に生じる溶融ゾーンもまた評価時に考慮することができる。しかし、評価を溶接工程の終了後に初めて行うことも可能であり、それにより、評価時に考慮すべきデータ量、特にマッピングの数を低減することができる。加えて、バイポーラプレートの照明およびカメラを用いるマッピングの作成を、溶接プロセスとは無関係に、かつ/または溶接時に生じる光の影響および/もしくは可逆的熱膨張効果とは無関係に実施することが可能である。
【0027】
好適には、評価システムによる評価の結果を用いて、溶接のプロセス制御の適合が行われる。評価システムは、特に、バイポーラプレートが「異常」として評価された場合には、この目的のために援用される基準に基づいて、起こり得る欠陥の分類を行うことができる。その基準により、特定の識別された欠陥を、特定の分類に、または場合により特定された原因に割り当てることが可能になる。特定のクラスの欠陥に割り当てられた、疑念のあるプレートの欠陥を、溶接時の欠陥があるプロセス管理に割り当てることができる場合、溶接のプロセス管理を有する評価システムによる評価の結果をフィードバックすることによって、そのような欠陥を今後回避するようにプロセス管理を適合させることが可能である。評価システムは、例えば、制御パラメータの様々な適合を行うために、溶接のプロセス管理用の制御回路の一部であり得る。それにより、溶接時の製造欠陥は、非常に早期に認識され、自動的に修正することができるため、不要な不良品および不要なコストが回避されている。
【0028】
さらなる実施形態は、本発明の方法を使用して燃料電池のバイポーラプレートを検査するための検査装置であって、バイポーラプレートの表面の少なくとも1つのマッピングを作成するためのカメラと、起こり得る欠陥についてマッピングを試験するための自動画像処理支援評価システムと、評価システムによって潜在的欠陥の疑念があるプレートとして識別されたバイポーラプレートを詳細検査ステーションに誘導するための、評価システムによって操作可能な切替器と、を備える、検査装置、に関する。検査装置は、上述の方法を実施するために設けられている。その際、検査装置は、方法に関して上述したように形成され、かつ開発されている。
【0029】
評価システムによって「異常」の可能性があるとして見出されたバイポーラプレートは、疑念のあるプレートとして詳細検査を受け、詳細検査では、場合により明白により高い費用で検査が実施される。ただし、疑念のあるプレートのみが詳細検査ステーションで詳細検査を受けるため、検査費用を低減することができる。評価システムでの自動画像処理時に問題がないと評価されたバイポーラプレートは、それにより、さらなる詳細検査なしにさらに加工することができる一方で、疑念のあるプレートのうち、詳細検査後に所定の基準に実際に対応しないプレートのみが不良品として選別される。設定された基準にまだ対応するその疑念のあるプレートは、再びさらなる加工に供給される。疑念のあるプレートの不良品としての不要な選別が回避されるため、不要なコストが回避されている。マッピングの画像処理時に自動評価システムにおいて使用される評価方法によって、著しい追加のコストをかけることなく、バイポーラプレートの検査時に検査品質を高めることができるため、費用対効果が高くかつ信頼性が高い検査が可能である。
【0030】
本発明の検査装置の評価システムは、疑念があるプレートを識別するために、非欠陥バイポーラプレートおよび欠陥バイポーラプレートから作成されるバイポーラプレートの複数のマッピングに基づいて訓練されるニューラルネットワークを有し、この場合、評価システムは、詳細検査の結果を保存するための、ニューラルネットワークと連結された、詳細検査ステーションと通信するインターフェースを、詳細検査の結果を用いるニューラルネットワークの継続訓練の目的で有する。詳細検査ステーションでの疑念のあるプレートの詳細検査は、バイポーラプレートの評価時に、評価システムのインターフェースを介して訓練データとして評価システムにフィードバックされる追加の知見取得をもたらす。これは、特にニューラルネットワークの複数の中間層を有するディープラーニング構造の一部として、ニューラルネットワークの強化学習をもたらす。それにより、検査品質は、時間の経過と共になおさらに向上する。
【0031】
特に、評価ユニットは、バイポーラプレートを製造するための生産ユニットと連結可能な出力ポートを、評価システムによる評価の結果に応じて生産ユニットのプロセス制御を適合させるために有する。そのような生産ユニットは、例えば、レーザ溶接装置、打ち抜き装置、成形装置などである。評価システムは、特に、バイポーラプレートが「異常」として評価された場合には、この目的のために援用される基準に基づいて、起こり得る欠陥の分類を行うことができる。その基準により、特定の識別された欠陥を、特定の分類に、または場合により特定された原因に割り当てることが可能になる。特定のクラスの欠陥に割り当てられた、疑念のあるプレートの欠陥を、生産ユニットでの欠陥があるプロセス管理に割り当てることができる場合、生産ユニットを有する評価システムの出力ポートを介して評価の結果をフィードバックすることによって、そのような欠陥を今後回避するようにプロセス管理を適合させることが可能である。評価システムは、例えば、制御パラメータの様々な適合を行うために、生産ユニットのプロセス管理用の制御回路の一部であり得る。それにより、製造欠陥は、非常に早期に認識され、自動的に修正することができるため、不要な不良品および不要なコストが回避される。
【0032】
好適には、詳細検査ステーションは、疑念があるプレートの非破壊検査のための、特に浸透探傷試験および/または磁粉探傷試験および/または超音波検査および/または放射線透過検査および/または渦電流試験のための、少なくとも1つの検査機器を有する。それにより、詳細検査時の疑念のあるプレートの破壊を回避することができる。詳細検査を行うべきであるが、疑念のあるプレートが要求プロファイルを満たしている場合では、疑念のあるプレートは、通常のバイポーラプレートとして再び後続の製造工程に供給することができる。それにより、燃料電池の構成要素の製造時の不要なコストを低減することができる。同時に、純粋な目視検査と比較して、疑念のあるプレートの内部に存在する状態を測定することができ、それにより、特に信頼性が高い検査が達成される。詳細検査は、自動的に実施され、この場合、検査品質が恒常的に改善されることに基づいて、検査員がいなくてもよい。
【0033】
本発明の方法および本発明の検査装置は、特に、燃料電池、特にポリマー電解質燃料電池で使用するためのバイポーラプレートの点検に適しており、バイポーラプレートは、2枚以上のメタルシートから形成されている。
【0034】
以下では本発明を、好ましい実施形態に基づく添付の図面を参照して例示的に説明し、以下に示す特徴は、それぞれ個別でだけではなく組み合わせても、本発明の態様を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】バイポーラプレートの検査を実施するための例示的な手順の図である。
【
図2】バイポーラプレートにおいて検査を実施するための検査装置の一部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示した手順10では、第1の工程において複数のマッピング12が提供され、複数のマッピング12は、特に、溶接工程後のバイポーラプレート14の表面を示す。第2の工程では、マッピング12は、例えば、2つのカテゴリに分類され、そのカテゴリでは、一方のカテゴリ16は、バイポーラプレート14が「正常」(OK)であることを示すマッピング12用に提供され、他方のカテゴリ18は、バイポーラプレート14が「異常」(NOK)であることを示すマッピング12用に提供されている。特に、欠陥バイポーラプレート14用に提供されたカテゴリ18は、複数の下位カテゴリを有してもよく、複数の下位カテゴリに、様々な原因が様々な欠陥パターンに対して割り当てられている。第3の工程では、ニューラルネットワーク20は、カテゴリ16、18に分類されたマッピング12を用いて訓練される。次いで、ニューラルネットワーク20は、第4の工程では、燃料電池14の製造プロセス中に独立して評価「OK」または「NOK」を与えることとなる。「正常」として見出されたバイポーラプレート14は、さらなる仕上げ工程に供給される。「異常」の可能性があるとして評価された疑念のあるプレートは、ニューラルネットワーク20によって与えられた「NOK」の評価を確認するか、または修正するために、第5の工程で詳細検査22を受ける。詳細検査22では、結果が自動的に生じ、その結果では、非常に高い信頼性を伴ってニューラルネットワーク20によって、少なくとも疑わしい事例としてさらに、「NOK」カテゴリに区分されたマッピング12において、実際に「NOK」として、または反対に「OK」として分類される。これは、ニューラルネットワーク20用の訓練データが生成された第2の工程後の状態に相当する。詳細検査22の結果として自動的に生成されたこのデータは、ニューラルネットワーク20の強化学習を達成するために、追加の訓練データとしてニューラルネットワーク20にフィードバックされる。
【0037】
図2に示すように、検査装置24は、特に溶接されたバイポーラプレート14の表面からマッピング12を生成するカメラ26を有する。カメラ26はまた、複数のマッピング12またはさらに動画を生成することができる。バイポーラプレート14は、そのために適切に照明されていてもよく、それにより、マッピング12では、関連する全ての特徴を見ることができ、起こり得る欠陥28は、ニューラルネットワーク20が有する評価システムによって光学的評価により認識することができる。
【0038】
バイポーラプレートでの溶接接続に関する欠陥に加えて、さらに、プレートおよびその構造、特にガス分配区画の領域における3次元構造、プレート端部およびガス分配区画の領域における開口部の形成などの寸法偏差を点検して、不規則性を識別し、選別し、偏差が潜在的に発生するそれぞれの方法工程の範囲内で修正するように介入することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 手順
12 マッピング
14 バイポーラプレート
16 一方のカテゴリ
18 他方のカテゴリ
20 ニューラルネットワーク
22 詳細検査
24 検査装置
26 カメラ
28 起こり得る欠陥