(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 305/06 20060101AFI20240216BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C07D305/06
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022557799
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021081186
(87)【国際公開番号】W WO2021197058
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202010261428.7
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110184193.0
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオチュン
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273093(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110698437(CN,A)
【文献】特開平11-012261(JP,A)
【文献】特開2011-020004(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032712(WO,A1)
【文献】特開2017-133039(JP,A)
【文献】特開2005-095876(JP,A)
【文献】Dexter B P.Pattison,Cyclic Ethers Made by Pyrolysis of Carbonate Esters,Journal of the American Chemical Society,1957年,No.231,3455-3456頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/00-329/00
C07B 61/00
B01J 19/00- 19/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
塩基性触媒の存在下、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとを前記マイクロ反応器に導入し、溶剤又は無溶剤の条件下、連続流マイクロ反応プロセスにより前記オキセタン化合物を合成
し、
前記塩基性触媒は、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒を含み、
前記マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法は、
前記第1の塩基性触媒、前記トリメチロールプロパン及び前記炭酸エステルを第1のマイクロ反応器内に連続的に搬送してエステル交換反応を行い、エステル化中間体含有反応生成物系を得る工程と、
前記エステル化中間体含有反応生成物系からエステル化中間体を抽出する工程と、
前記エステル化中間体と前記第2の塩基性触媒とを第2のマイクロ反応器内に搬送してクラッキング反応を行い、クラッキング反応生成物系を得る工程と、
前記クラッキング反応生成物系に対して気液分離処理を行い、前記オキセタン化合物を得る工程と、
を含み、
前記クラッキング反応の過程において、前記方法は、前記エステル化中間体に水を添加する工程をさらに含み、かつ、クラッキング反応の過程において系の含水量が10~100000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記溶剤は、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、アセトニトリルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項
1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1のマイクロ反応器の温度が50~300℃であり、滞留時間が1~60minであり、前記第2のマイクロ反応器の反応温度が150~400℃であり、滞留時間が1~8minであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項
3に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1のマイクロ反応器の温度が100~200℃であり、前記第2のマイクロ反応器の反応温度が200~300℃であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項
1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記トリメチロールプロパンと前記炭酸エステルとのモル比が1:(1~5)であり、前記塩基性触媒の含有量が100ppm~50000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記トリメチロールプロパンと前記炭酸エステルとのモル比が1:(1.5~3)であり、前記塩基性触媒の含有量が100ppm~10000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記炭酸エステルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル及び炭酸ジプロピルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、
前記塩基性触媒は、アルカリ金属の水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、アルカリ金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項
7に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1の塩基性触媒及び前記第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、アルカリ金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上
であることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項7に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1の塩基性触媒及び前記第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項7に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1の塩基性触媒の使用量が200~500ppmであり、前記第2の塩基性触媒の使用量が300~3000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項
1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1のマイクロ反応器の反応流路内径が、200~10000μmから選ばれ、前記第2のマイクロ反応器の反応流路内径が200~10000μmか
ら選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200~2000μmから選ばれ、前記第2のマイクロ反応器の反応流路内径が500~10000μmから選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項
1に記載のマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法であって、
前記抽出の過程で採用する装置が、薄膜蒸発器又は精留塔から選ばれることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成分野に関し、具体的に、マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン及びビス[1-エチル(3-オキセタニル)メチル]エーテルは、現在、光硬化性カチオン系において最も多く使用される単量体であり、光硬化性塗料、インク、接着剤などの分野に広く適用され、それらの構造式が以下に示す通りである。
【0003】
【0004】
工業上、一般的に、環状カーボナートクラッキング法によりオキセタン類製品を製造する。例えば、環状カーボナートクラッキング法により3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンを生産する反応過程は以下の通りである。
【0005】
【0006】
式中、Rはアルキル基であり、一般的にメチル基又はエチル基である。
プロセス流れは次の通りである。トリメチロールプロパンと炭酸エステルとを精留槽内でエステル交換反応させ、温度を80℃~120℃とし、反応過程において副生成物であるアルコールを分留し続け、反応終了後、蒸留により過剰の炭酸エステルを除去し、エステル交換工程に必要な時間が10h~12hであり、その後、クラッキング工程に移行し、温度160℃~200℃の条件下で12h~15hクラッキングして二酸化炭素を除去し、最後に、負圧下で精留して最終製品を得る。全工程の完了に必要な時間が30h~40hであり、生産効率が低い。クラッキング反応は、高温下で長時間行われるため、高沸点の副生成物を生成してしまうので、最終製品の収率が低く(65%~75%)、精留終了後、大量の蒸留残存物を生成し、固形廃棄物として処理せざるを得ない。
【0007】
上記問題の存在に鑑みて、収率が高く、かつ反応時間が短いオキセタン化合物の合成方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主な目的は、マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法を提供することにより、従来のオキセタン化合物の合成方法に存在する、収率が低く反応時間が長いという問題を解決し、これに加えて、反応過程における関連パラメータを制御することにより生成物の分布を調節する方法をさらに提供し、3種類のオキセタン化合物の併産を実現する。
【0009】
上記目的を実現するために、本発明が提供するマイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法は、塩基性触媒の存在下、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとをマイクロ反応器に導入し、溶剤又は無溶剤の条件下、連続流マイクロ反応プロセスによりオキセタン化合物を合成する工程を含む。
【0010】
さらなる態様として、塩基性触媒は、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒を含み、マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法は、第1の塩基性触媒と、トリメチロールプロパンと、炭酸エステルとを第1のマイクロ反応器内に連続的に搬送してエステル交換反応を行い、エステル化中間体含有反応生成物系を得る工程と、エステル化中間体含有反応生成物系からエステル化中間体を抽出する工程と、エステル化中間体と第2の塩基性触媒とを第2のマイクロ反応器内に搬送してクラッキング反応を行い、クラッキング反応生成物系を得る工程と、クラッキング反応生成物系に対して気液分離処理を行い、オキセタン化合物を得る工程と、を含む。
【0011】
さらなる態様として、溶剤は、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、アセトニトリルからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0012】
さらなる態様として、第1のマイクロ反応器の温度が50~300℃であり、滞留時間が1~60minであり、第2のマイクロ反応器の反応温度が150~400℃であり、滞留時間が1~8minである。
【0013】
さらなる態様として、第1のマイクロ反応器の温度が100~200℃であり、第2のマイクロ反応器の反応温度が200~300℃である。
【0014】
さらなる態様として、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:(1~5)であり、塩基性触媒の含有量が100ppm~50000ppmである。
【0015】
さらなる態様として、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:(1.5~3)であり、塩基性触媒の含有量が100ppm~10000ppmである。
【0016】
さらなる態様として、炭酸エステルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル及び炭酸ジプロピルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、塩基性触媒は、アルカリ金属の水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド又はアルカリ金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0017】
さらなる態様として、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド又はアルカリ金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくは、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくは、第1の塩基性触媒の使用量が200~500ppmであり、第2の塩基性触媒の使用量が300~3000ppmである。
【0018】
さらなる態様として、クラッキング反応の過程において、合成方法は、エステル化中間体に水を添加する工程をさらに含み、かつ、クラッキング反応の過程において系の含水量が10~100000ppmである。
【0019】
さらなる態様として、第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200~10000μmから選ばれ、第2のマイクロ反応器の反応流路内径がそれぞれ独立に200~10000μmから選ばれ、好ましくは、第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200~2000μmから選ばれ、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が500~10000μmから選ばれる。
【0020】
さらなる態様として、抽出の過程において採用する装置が、薄膜蒸発器又は精留塔から選ばれる。
【0021】
本発明の技術案を採用することにより、通常の反応器に比べて、マイクロ反応器は、熱伝導係数および物質移動係数が高く、混合性能が良く、温度を制御しやすく、過程が安全で制御可能である等の利点を有する。マイクロ反応器の利点を利用して上記3種類のオキセタン製品の生産を行うことにより、反応系の物質移動性及び熱伝導性を大幅に向上させ、反応時間を減少して生産効率を向上させることができ、特に、クラッキング工程における高温過程が長時間となることを避け、高沸点の副生成物の生成を減少し、収率を向上させ、過程の連続化、自動化を実現し、過程の安全性を向上させることができる。なお、上記合成過程に必要な反応装置の体積が小く、生産拠点が占める面積が小さく、必要とする人的資源が少なく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の一部を構成する図面は、本発明をさらに理解するために提供され、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明を不適切に限定するものではない。図面において、
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る典型的な実施形態により提供されるオキセタン化合物の合成装置の構造概略図を示す。
【0024】
中でも、上記図面は以下の図面符号を含む。
10 原料貯蔵タンク
11 第1の供給ポンプ
20 第1のマイクロ反応器
30 薄膜蒸発器
40 エステル化中間体貯蔵タンク
41 第2の供給ポンプ
50 軽沸分収集タンク
60 第2のマイクロ反応器
70 マイクロ熱交換器
80 気液分離タンク
90 精留装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
なお、矛盾しない限り、本願における実施例、及び実施例における特徴は、互いに組み合わせられてもよい。以下、実施例に結び付いて本発明を詳しく説明する。
【0026】
背景技術で記載されている通り、従来のオキセタン化合物の合成方法には、収率が低く、反応時間が長いという問題が存在する。上記技術課題を解決するために、本願は、マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法を提供し、当該合成方法は、塩基性触媒の存在下、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとをマイクロ反応器に導入し、不活性溶剤又は無溶剤の条件下、連続流マイクロ反応プロセスによりオキセタン化合物を合成する工程を含む。
【0027】
通常の反応器に比べて、マイクロ反応器は、熱伝導係数および物質移動係数が高く、混合性能が良く、温度を制御しやすく、過程が安全で制御可能である等の利点を有する。マイクロ反応器の利点を利用して上記3種類のオキセタン製品の生産を行うことにより、反応系の物質移動性及び熱伝導性を大幅に向上させ、反応時間を減少して生産効率を向上させることができ、特に、クラッキング工程における高温過程が長時間となることを避け、高沸点の副生成物の生成を減少し、収率を向上させ、過程の連続化、自動化を実現し、過程の安全性を向上させることができる。なお、上記合成過程に必要な反応装置の体積が小く、生産拠点が占める面積が小さく、必要とする人的資源が少なく、安全性が高い。
【0028】
一つの好ましい実施例において、塩基性触媒は、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒を含み、マイクロ反応器によってオキセタン化合物を合成する方法は、第1の塩基性触媒と、トリメチロールプロパンと、炭酸エステルとを第1のマイクロ反応器内に連続的に搬送してエステル交換反応を行い、エステル化中間体含有反応生成物系を得る工程と、エステル化中間体含有反応生成物系からエステル化中間体を抽出する工程と、エステル化中間体と第2の塩基性触媒とを第2のマイクロ反応器内に搬送してクラッキング反応を行い、クラッキング反応生成物系を得る工程と、クラッキング反応生成物系に対して気液分離処理を行い、オキセタン化合物を得る工程と、を含む。
【0029】
上記気液分離を経過した後、得られた生成物が混合物であり、当業者はそれをさらに分離することができる。分離方法は、蒸留を含むが、これに限られない。
【0030】
上記合成方法において採用する溶剤としては、本分野で常用される種類のものを用いてもよい。一つの好ましい実施例において、溶剤は、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、アセトニトリルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むが、これらに限られない。コストの要素を併せて考慮すると、無溶剤の条件が好ましい。
【0031】
一つの好ましい実施例において、第1のマイクロ反応器の温度が50~300℃であり、滞留時間が1~60minであり、第2のマイクロ反応器の反応温度が150~400℃であり、滞留時間が1~8minである。生成物の組成が制御不可である一般的なプロセスに比べて、本願では、エステル交換反応及びクラッキング反応の過程のプロセス条件を上記範囲内に限定することにより、オキセタン生成物の総収率を向上させることができ、同時に、本願の方法により、異なる生成物分布を制御することを実現でき、3種類のオキセタン化合物の併産を実現でき、その経済価値を高めることができる。例えば、第1のマイクロ反応器の温度が、50℃、80℃、100℃、160℃、200℃、300℃であってもよく、第2のマイクロ反応器の反応温度が、150℃、200℃、260℃、300℃、400℃であってもよい。
【0032】
一つの好ましい実施例において、第1のマイクロ反応器の温度が100~200℃であり、第2のマイクロ反応器の反応温度が200~300℃である。第1のマイクロ反応器の温度及び第2のマイクロ反応器の温度は、上記範囲を含むが、これらに限られず、上記範囲内に限定することは、目標生成物の収率の向上、反応時間の短縮に有利である。
【0033】
一つの好ましい実施例において、エステル交換反応過程においてトリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:(1~5)であり、塩基性触媒含有量が100ppm~50000ppmである。トリメチロールプロパン、炭酸エステル及び塩基性触媒の使用量は、上記範囲を含むが、これらに限られず、上記範囲内に限定することは、反応原料の転化率の更なる向上に有利である。より好ましくは、トリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:(1.5~3)であり、塩基性触媒含有量が100ppm~10000ppmである。
【0034】
上記合成方法において、炭酸エステル、塩基性触媒としては、本分野で常用される種類のものを用いてもよい。一つの好ましい実施例において、炭酸エステルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル及び炭酸ジプロピルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むが、これらに限られない。
【0035】
一つの好ましい実施例において、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にアルカリ金属で形成される水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、アルカリ金属で形成される炭酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上である。より好ましくは、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0036】
触媒効果をさらに向上させ、反応時間を短縮するために、さらに好ましくは、第1の塩基性触媒及び第2の塩基性触媒は、それぞれ独立にナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、かつ、第1の塩基性触媒の使用量が200~500ppmであり、第2の塩基性触媒の使用量が300~3000ppmである。
【0037】
一つの好ましい実施例において、クラッキング反応の過程において、上記合成方法は、エステル化中間体に水を添加する工程をさらに含み、クラッキング反応の過程において系の含水量が10~100000ppmである。その他の範囲に比べて、クラッキング反応の過程において系の含水量を上記範囲内に限定することは、エステル化中間体のクラッキング率の向上に有利であるため、オキセタン化合物の収率の向上に有利である。
【0038】
一つの好ましい実施例において、第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200~10000μmから選ばれ、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が200~10000μmから選ばれる。その他の範囲に比べて、第1のマイクロ反応器の反応流路及び第2のマイクロ反応器の反応流路を上記範囲内に限定することは、目標生成物の収率の向上に有利である。例えば、第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200μm、500μm、1000μm、5000μm、10000μmから選ばれてもよく、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が200μm、500μm、1000μm、8000μm、10000μmから選ばれてもよい。より好ましくは、第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200~2000μmから選ばれ、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が500~10000μmから選ばれる。
【0039】
目標生成物の純度をさらに向上させ、合成法のエネルギー消耗を低減するために、好ましくは、上記合成方法は、クラッキング反応生成物系をマイクロ熱交換器中で熱交換し、気液分離装置により二酸化炭素を除去した後、精留を行い、所望の製品を得る工程をさらに含む。
【実施例】
【0040】
以下、具体的な実施例を組み合わせて本願をさらに詳しく説明し、これらの実施例は、本願の保護を求める範囲を制限するものではないと理解され得る。
【0041】
実施例1~5において採用するマイクロ流路装置システムは、上海替末流体技術有限公司により提供され、型番が上海替末TMP/S3047-32-3/A2000であり、第1のマイクロ反応器の流路の内径が1000μmであり、第2のマイクロ反応器の流路の内径が8000μmである。
【0042】
実施例では、
図1に示す装置を採用してオキセタン化合物を製造し、合成方法は以下のプロセスを含む。
エステル交換プロセス
トリメチロールプロパン(TMP)と、炭酸ジメチル(DMC)とを所定のモル比で混合し、TMPの重量に応じて計量した塩基性触媒を添加し、均一に混合して原料貯蔵タンク10に放置して予熱し、第1の供給ポンプ11により第1のマイクロ反応器20内に添加してエステル交換反応を行い、所定時間滞留し、エステル化中間体含有反応生成物系を得る。上記エステル化中間体含有反応生成物系を薄膜蒸発器30によりメタノール及び残りのDMCを分離し、回収した原料を軽沸分収集タンク50に放置し、エステル化中間体をエステル化中間体貯蔵タンク40に貯蔵する。
クラッキングプロセス
エステル化中間体に塩基性触媒を添加し、必要に応じて適量の水を添加し、均一に混合した後に第2の供給ポンプ41により第2のマイクロ反応器60内に添加し、所定時間滞留してクラッキング反応を行い、マイクロ熱交換器70により冷却した後に気液分離タンク80に入って二酸化炭素を分離し、粗製品を得る。
製品の分離
粗製品を精留装置90内に搬送して精留分離を行い、相応する製品を得る。
【0043】
実施例1~5におけるプロセスパラメータを表1に示す。
【0044】
【0045】
表1における生成物の構造は以下の通りである。
【0046】
【0047】
実施例6
エステル交換反応の反応温度が80℃であり、クラッキング反応の温度が300℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が83.4%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.7%、1.2%及び3.1%である。
【0048】
実施例7
エステル交換反応の反応温度が160℃であり、クラッキング反応の温度が260℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が90.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に92.0%、4.6%及び3.4%である。
【0049】
実施例8
トリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:1であり、エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が800ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が80.7%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に94.5%、3.3%及び2.2%である。
【0050】
実施例9
トリメチロールプロパンと炭酸エステルとのモル比が1:5であり、エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が100ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が84.7%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.1%、2.9%及び2.0%である。
【0051】
実施例10
エステル交換反応の反応温度が50℃であり、エステル交換反応の滞留時間が60minであり、クラッキング反応の温度が400℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が85.7%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に98.3%、1.3%及び0.4%である。
【0052】
実施例11
エステル交換反応の反応温度が300℃であり、エステル交換反応の滞留時間が1minであり、クラッキング反応の温度が200℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が86.2%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に39.5%、46.9%及び13.6%である。
【0053】
実施例12
エステル交換反応の反応温度が200℃であり、エステル交換反応の滞留時間が30minであり、クラッキング反応の温度が150℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が96.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に29.3%、50.1%及び20.6%である。
【0054】
実施例13
エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が50000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が91.3%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.2%、2.0%及び2.8%である。
【0055】
実施例14
エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が10000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が93.4%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に96.8%、1.2%及び2.0%である。
【0056】
実施例15
エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が30000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が91.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.3%、1.6%及び3.1%である。
【0057】
実施例16
エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が8000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が93.1%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に96.0%、1.8%及び2.2%である。
【0058】
実施例17
エステル交換反応の塩基性触媒の含有量が5000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が92.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に96.2%、1.9%及び2.3%である。
【0059】
実施例18
第1のマイクロ反応器の反応流路内径が100μmであり、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が100μmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が81.3%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.6%、1.0%及び3.4%である。
【0060】
実施例19
第1のマイクロ反応器の反応流路内径が10000μmであり、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が10000μmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が91.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に95.5%、2.0%及び2.5%である。
【0061】
実施例20
第1のマイクロ反応器の反応流路内径が200μmであり、第2のマイクロ反応器の反応流路内径が200μmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が90.7%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に94.9%、2.1%及び3.0%である。
【0062】
実施例21
クラッキング反応の触媒がナトリウムメトキシドであり、含有量が1000ppmであり、クラッキング反応の含水量が100000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が93.5%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に97.2%、2.0%及び0.8%である。
【0063】
実施例22
エステル交換反応の触媒がナトリウムメトキシドであり、含有量が10000ppmであり、クラッキング反応の触媒がナトリウムメトキシドであり、含有量が1000ppmであり、クラッキング反応の含水量が100000ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が95.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に97.5%、1.9%及び0.6%である。
【0064】
実施例23
エステル交換反応の触媒がナトリウムメトキシドであり、含有量が10000ppmであり、クラッキング反応の触媒がナトリウムメトキシドであり、含有量が300ppmであり、クラッキング反応の含水量が10ppmである点で実施例1と異なる。
製品の総収率が96.5%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に3.5%、94.6%及び1.9%である。
【0065】
実施例24
クラッキング反応の温度が100℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が66.8%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に3.9%、1.7%及び94.4%である。
【0066】
実施例25
クラッキング反応の温度が450℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が82.9%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に43.4%、56.5%及び0.1%である。
【0067】
実施例26
エステル交換の温度が30℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が78.6%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に94.1%、2.4%及び3.5%である。
【0068】
実施例27
エステル交換の温度が350℃である点で実施例1と異なる。
製品の総収率が79.0%であり、生成物A、B及びCの割合(%)が順次に94.5%、2.6%及び2.9%である。
【0069】
比較例では、一般的な反応装置を採用してオキセタン化合物を製造し、合成方法は以下のプロセスを含む。
(1)エステル交換プロセス
精留塔と凝縮器とを備えたステンレス撹拌槽内にTMPと、DMCと、トルエンとを投入し、撹拌により均一に混合し、触媒を添加し、昇温して反応させ、生成したメタノールを塔頂で収集し、塔頂からメタノールを留出できなくなった後、引き続き昇温して蒸留し、溶剤であるトルエン及び残りのDMCを除去し、エステル化中間体を得る。
(2)クラッキングプロセス
塩基性触媒を添加し、必要に応じて適量の水を添加し、所定の温度及び負圧下でクラッキングを行いながら蒸留し、製品を得る。比較例1~5におけるプロセスパラメータを表2に示す。
【0070】
【0071】
実施例との比較結果からわかるように、一般的な槽型反応器を採用して製造する場合、収率がマイクロ流路装置システムを採用した場合の収率より低く、かつ、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)メチル]エーテルの選択性が明らかに予期より低く、生成物分布の設計要求に達することができない。
【0072】
以上の記述からわかるように、実施例1~27と比較例1~5を比較してわかるように、本発明の上記実施例が以下の技術効果を実現した。本願が提供する合成方法は、3種類のオキセタン化合物の収率を大幅に向上させ、反応時間を短縮することができ、同時に、3種類のオキセタン化合物の併産を実現することもできる。
【0073】
実施例1、6、7、10~12、24~27を比較してわかるように、エステル交換反応とクラッキング反応の温度を本願の好ましい範囲内に限定することは、3種類のオキセタン化合物の総収率の向上に有利であり、同時に、クラッキング温度を制御することにより3種類の生成物の割合を制御することもできる。
【0074】
実施例1、8、9、13~17、21及び23を比較してわかるように、トリメチロールプロパンと前記炭酸エステルとのモル比、エステル交換反応において使用する塩基性触媒の含有量、及びクラッキング反応において使用する塩基性触媒の含有量を本願の好ましい範囲内に限定することは、3種類のオキセタン化合物の総収率の向上に有利である。
【0075】
実施例1、18、19及び20を比較してわかるように、第1のマイクロ反応器の流路の内径と第2のマイクロ反応器の流路の内径を本願の好ましい範囲内に限定することは、3種類のオキセタン化合物の総収率の向上に有利である。
【0076】
以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変更及び変化を有することができる。本発明の趣旨及び原則内で行った如何なる修正、均等置換、改進等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。