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特許7438408パターンを適用する方法、および物品のためのセキュリティ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】パターンを適用する方法、および物品のためのセキュリティ素子
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/425 20140101AFI20240216BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240216BHJP
   G02B 5/128 20060101ALI20240216BHJP
   B42D 25/455 20140101ALI20240216BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20240216BHJP
   G02B 5/26 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
B42D25/425
G02B5/08 A
G02B5/128
B42D25/455
B42D25/36
G02B5/26
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022573460
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 GB2021051278
(87)【国際公開番号】W WO2021245373
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】2008165.9
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トリッグス-ラム, グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ, ペイマン
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-071953(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050517(JP,U)
【文献】特表2018-506446(JP,A)
【文献】特表2009-532745(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03203309(EP,A1)
【文献】特表2020-508899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
25/00-25/485
G02B 5/00- 5/136
5/20- 5/28
G09F 19/00-19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを適用する方法であって、前記方法は、
層状構造を有する受側部材を提供することであって、前記層状構造は、相変化材料層を備え、前記相変化材料は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能である、ことと、
エンボス加工部材を前記受側部材に押し付けることと
を含み、前記エンボス加工部材は、前記押付中、前記受側部材との接触を介して前記相変化材料層の選択された部分を加熱し、前記加熱は、前記選択された部分内の相変化材料を熱的に切り替え、それによって、異なる屈折率のパターンを前記相変化材料層に適用するようなものであり、
前記エンボス加工部材は、突起部のパターンを有する押付表面を備え、前記押付は、前記突起部が、対応するくぼみのパターンを前記受側部材内に形成することを引き起こし、
前記層状構造は、前記相変化材料の層の真下に反射層を備え、
前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記相変化材料の前記反射層と反対の側から、少なくとも1回、実施される、方法。
【請求項2】
前記くぼみのパターンは、前記相変化材料層における前記異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと整合させられる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと同一である、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記押付表面における前記突起部の外側にある前記押付表面の凹形領域の少なくとも一部は、前記押付中、前記受側部材と接触しない、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記押付表面は、前記押付中、均一な温度分布を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記突起部は、テーパ状要素を備える、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記突起部は、複数の同一の突起要素を備え、各突起要素は、相互の突起要素から離されている、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視されたとき、鏡面対称の断面を有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視されたとき、鏡面非対称の断面を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記相変化材料の前記反射層と同じ側から、少なくとも1回、実施される、
請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記相変化材料の前記反射層と同じ側からの、前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記受側部材の前記押付と反対の側での表面トポグラフィの変更を引き起こすようなものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記くぼみの1つまたはそれより多くの中に透明部材を提供することをさらに含む、請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記透明部材は、再帰反射効果を提供するように形作られている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、複数回、実施される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記押付の少なくとも一部は、異なるエンボス加工部材を用いて実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エンボス加工部材の押付表面は、前記押付中、不均一な温度分布を有し、前記不均一な温度分布は、前記押付中に熱的に切り替えられる前記相変化材料層の前記選択された部分を少なくとも部分的に画定する、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記相変化材料は、
酸化バナジウム、
酸化ニオブ、
Ge、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
GeおよびTeを含む合金もしくは化合物、
GeおよびSbを含む合金もしくは化合物、
GaおよびSbを含む合金もしくは化合物、
Ag、In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
InおよびSbを含む合金もしくは化合物、
In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
InおよびSeを含む合金もしくは化合物、
SbおよびTeを含む合金もしくは化合物、
Te、Ge、Sb、およびSを含む合金もしくは化合物、
Ag、Sb、およびSeを含む合金もしくは化合物、
SbおよびSeを含む合金もしくは化合物、
Ge、Sb、Mn、およびSnを含む合金もしくは化合物、
Ag、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
Au、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、ならびに
AlおよびSbを含む合金もしくは化合物
のうちの1つもしくはそれより多くを含むか、または
それらのうちの1つもしくはそれより多くから成る、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記層状構造は、前記相変化材料層と前記反射層との間に提供されたスペーサ層を備え、前記スペーサ層は、単一の層から成るか、または、異なる屈折率を有する材料の複数の層を備える、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記層状構造は、キャッピング層を備え、前記相変化材料層は、前記キャッピング層と前記反射層との間に提供され、前記キャッピング層は、単一の層から成るか、または、異なる屈折率を有する材料の複数の層を備える、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記受側部材は、ポリマー被印刷体を備える、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
好ましくは、前記受側部材は、物品のためのセキュリティ素子の、好ましくは、法定通貨の物品のためのセキュリティ素子の全てまたは一部を形成する、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
物品のためのセキュリティ素子であって、
前記素子は、相変化材料層を備える層状構造を備え、前記相変化材料は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能であり、
前記相変化材料層は、前記安定状態のうちの一状態にある層内の前記相変化材料の選択された部分と、1つまたはそれより多くの他の安定状態にある前記相変化材料の残りの部分とによって少なくとも部分的に定められる異なる屈折率のパターンを備え、
前記層状構造は、前記層状構造の表面にくぼみのパターンを備え、前記くぼみのパターンは、前記相変化材料層における前記異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされ
前記層状構造は、前記相変化材料の層の真下に反射層をさらに備え、
前記くぼみのパターンは、前記相変化材料の前記反射層と反対の側に形成される
素子。
【請求項24】
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと整合させられる、請求項23に記載の素子。
【請求項25】
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと同一である、請求項23または請求項24に記載の素子。
【請求項26】
前記層状構造は、ポリマー被印刷体を備える、請求項2325のいずれかに記載の素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンを適用する方法に関し、特に、法定通貨等の物品(例えば、紙幣)内に組み込むためのセキュリティ素子での使用に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ポンド等の大量に取引される貨幣に関するプラスチック紙幣の増加した採択は、ポリマー被印刷体のために特別に設計されたセキュリティ製品に関する新しい契機をもたらした。偽造者に対する防衛の第一線としての一般の公的役割を考慮すると、公然の特徴は、特に着目に値する。市場で入手可能なほとんどのセキュリティ製品は、従来的なOVD(光学可変素子)ベースのインク、またはホログラフィックおよび/もしくはレンズベースのマイクロおよび/もしくはナノ構造である。長年にわたるその幅広い可用性を考慮すると、現在、複製またはシミュレートすることが困難であるセキュリティ特徴の新しい形態に関する必要性が、存在する。そのようなセキュリティ特徴は、理想的には、大規模に製造可能でもあるべきである。
【0003】
本発明の目的は、特にセキュリティ素子の文脈において、パターンを適用する新たな方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある局面によると、パターンを適用する方法が、提供され、方法は、層状構造を有する受側部材を提供することであって、層状構造は、相変化材料層を備え、相変化材料層は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能である、ことと、エンボス加工部材を受側部材に押し付けることとを含み、エンボス加工部材は、押付中、受側部材との接触を介して相変化材料層の選択された部分を加熱し、加熱は、選択された部分内の相変化材料を熱的に切り替え、それによって、異なる屈折率のパターンを相変化材料層に適用するようなものである。
【0005】
このアプローチは、公然および秘密のセキュリティ製品の両方に適用され得る(金属のような見た目を含む)視覚的に魅惑的な特徴が形成されることを可能にする。相変化材料層(PCM)を含む層状構造は、正確に調整可能な色および制御された視野角の変動性を可能にしながら、異なる状態の間で切り替えられることができる。高コントラストおよび高反射性が、達成されることができる。パターンは、効率的に、かつ大規模に、かつ特殊なインクまたはホログラフィック技術を要求することなく適用されることができる。層状構造およびエンボス加工部材の設計は、具体的な計測波長においてのみ(人間の眼または光学器具を介して)可視である効果を提供するように調整されることができ、これは、例えば、特別に選択された点検レーザ、または狭帯域LEDによって提供されることができる。これは、物品の真正性を点検するための堅固な方法を可能にし、模倣することは困難である。
【0006】
ある実施形態では、エンボス加工部材は、突起部のパターンを有する押付表面を備え、押付は、突起部が、対応するくぼみのパターンを受側部材内に形成することを引き起こす。したがって、押付プロセスは、2つの異なるタイプのパターンを受側部材に付与する。押付と関連付けられた加熱は、それらの領域において、PCMを異なる屈折率状態に切り替えることによって(例えば、それらの領域においてPCMを結晶化し、他の領域においてはPCMを非結晶状態において残すことによって)、局所領域における視覚的特性を変化させる。同時に、くぼみのパターンは、表面からの反射の方向を変更し、向上された視野角の変動性を提供する。再帰反射挙動が、達成されることができ、再帰反射挙動では、受側部材を特定の角度に傾斜させることが、異なる表面からの2つの競合する反射をもたらすことができ、色および輝度の差は、観察者の視野角への光に基づく。
【0007】
ある実施形態では、くぼみのパターンは、PCM層における異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる。空間的位置合わせは、押付プロセスの性質に起因して、効率的かつ正確に達成されることができ、これは、(PCMの切替およびくぼみを介して)同時に、同じ物理的構成要素(例えば、加熱された突起部)を使用して、両方のタイプのパターンを適用する。2つの従来的な切替可能でない別個のOVDインクを用いて同様の結果を達成することは、現在のところ、最新技術の印刷技法(例えば、数ミクロン以下)の能力を超える水準の特徴の位置合わせを要求する。同時に、この実施形態のアプローチは、少なくとも以下を要求するため、再現することが依然として困難である。
i.関係する材料に関する深い理解。適用可能なPCMは、複雑な組成を有し、典型的には、元素の厳密に定義された相対組成を伴う三元素カルコゲナイドガラスを含む。
ii.PCM材料ターゲットの信頼できるサプライヤへのアクセス。関係する化学物質は、ターゲット製造を非自明なタスクにし、少数のサプライヤのみが、高品質なターゲットを製造することが可能である。
iii.スタック構造および設計原理の完全な理解。これらのフィルムを設計する方法を理解するためには、専門のソフトウェアおよびエンジニアリングスキルが、要求される。
【0008】
ある実施形態では、押付表面における突起部の外側にある押付表面の凹形領域の少なくとも一部は、押付中、受側部材と接触しない。これは、押付表面が、均一に加熱されることができる一方、空間的に不均一な加熱が(突起部を介して)PCMに印加されることを依然として可能にすることを意味する。
【0009】
エンボス加工部材が受側部材に押し付けられる手法を変えること(例えば、受側部材の異なる側に、もしくは受側部材の両側にエンボス加工部材を押し付ける)、押付部材の形態を変えること(例えば、対称もしくは非対称の断面を伴う個々の突起要素を有するパターン等の突起部の異なるパターンを提供する)、異なる側から、および/もしくは異なる押付部材を使用して、異なる位置において、複数回、押付プロセスを反復すること、ならびに/または、再帰反射効果を与える透明部材等、押付によって形成されたくぼみ内にさらなる特徴を提供することによって、多種多様な光学効果が、達成されることができる。
【0010】
ある実施形態では、エンボス加工部材の押付表面は、押付中、不均一な温度分布を有し、不均一な温度分布は、押付中に熱的に切り替えられる相変化材料層の選択された部分を少なくとも部分的に画定する。このアプローチは、実装することがより複雑であるが、突起部によって定められたくぼみのパターンと異なる(例えば、より複雑な)、異なる屈折率のパターンが定められることを可能にする。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、物品のためのセキュリティ素子の全てまたは一部を形成するために使用される。物品は、紙幣等の法定通貨の物品を含んでもよく、または、他の公文書、価値の高い文書、および/もしくは医薬製品等の、セキュリティ素子が有用である任意の他の物品を含んでもよい。
【0012】
代替局面によると、物品のためのセキュリティ素子が、提供され、素子は、相変化材料層を備える層状構造を備え、相変化材料は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能であり、相変化材料層は、安定状態のうちの一状態にある層内の相変化材料の選択された部分と、1つまたはそれより多くの他の安定状態にある相変化材料の残りの部分とによって少なくとも部分的に定められる異なる屈折率のパターンを備え、層状構造は、層状構造の表面にくぼみのパターンを備え、くぼみのパターンは、相変化材料層における異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
パターンを適用する方法であって、前記方法は、
層状構造を有する受側部材を提供することであって、前記層状構造は、相変化材料層を備え、前記相変化材料層は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能である、ことと、
エンボス加工部材を前記受側部材に押し付けることと
を含み、前記エンボス加工部材は、前記押付中、前記受側部材との接触を介して前記相変化材料層の選択された部分を加熱し、前記加熱は、前記選択された部分内の相変化材料を熱的に切り替え、それによって、異なる屈折率のパターンを前記相変化材料層に適用するようなものである、方法。
(項目2)
前記エンボス加工部材は、突起部のパターンを有する押付表面を備え、前記押付は、前記突起部が、対応するくぼみのパターンを前記受側部材内に形成することを引き起こす、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記くぼみのパターンは、前記相変化材料層における前記異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと整合させられる、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと実質的に同一である、項目3または項目4に記載の方法。
(項目6)
前記押付表面における前記突起部の外側にある前記押付表面の凹形領域の少なくとも一部は、前記押付中、前記受側部材と接触しない、項目2~5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記押付表面は、前記押付中、均一な温度分布を有する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記突起部は、テーパ状要素を備える、項目2~7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記突起部は、複数の同一の突起要素を備え、各突起要素は、相互の突起要素から離されている、項目2~8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視されたとき、鏡面対称の断面を有する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視されたとき、鏡面非対称の断面を有する、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記層状構造は、前記相変化材料層の真下に反射層を備え、
前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記相変化材料の前記反射層と反対の側から、少なくとも1回、実施される、
項目2~11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記層状構造は、前記相変化材料層の真下に反射層を備え、
前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記相変化材料の前記反射層と同じ側から、少なくとも1回、実施される、
項目2~12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記相変化材料の前記反射層と同じ側からの、前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、前記受側部材の前記押付と反対の側での表面トポグラフィの変更を引き起こすようなものである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記くぼみの1つまたはそれより多くの中に透明部材を提供することをさらに含む、項目2~14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記透明部材は、再帰反射効果を提供するように形作られている、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記受側部材への前記エンボス加工部材の前記押付は、複数回、実施される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記押付の少なくとも一部は、異なるエンボス加工部材を用いて実施される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記エンボス加工部材の押付表面は、前記押付中、不均一な温度分布を有し、前記不均一な温度分布は、前記押付中に熱的に切り替えられる前記相変化材料層の前記選択された部分を少なくとも部分的に画定する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記相変化材料は、
酸化バナジウム、
酸化ニオブ、
Ge、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
GeおよびTeを含む合金もしくは化合物、
GeおよびSbを含む合金もしくは化合物、
GaおよびSbを含む合金もしくは化合物、
Ag、In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
InおよびSbを含む合金もしくは化合物、
In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
InおよびSeを含む合金もしくは化合物、
SbおよびTeを含む合金もしくは化合物、
Te、Ge、Sb、およびSを含む合金もしくは化合物、
Ag、Sb、およびSeを含む合金もしくは化合物、
SbおよびSeを含む合金もしくは化合物、
Ge、Sb、Mn、およびSnを含む合金もしくは化合物、
Ag、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、
Au、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、ならびに
AlおよびSbを含む合金もしくは化合物
のうちの1つもしくはそれより多くを含むか、前記合金もしくは化合物のうちの1つもしくはそれより多くから本質的に成るか、または前記合金もしくは化合物のうちの1つもしくはそれより多くから成る、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記層状構造は、前記相変化材料層と反射層との間に提供されたスペーサ層を備え、前記スペーサ層は、単一の層から成るか、または、異なる屈折率を有する材料の複数の層を備える、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記層状構造は、キャッピング層を備え、前記相変化材料層は、前記キャッピング層と反射層との間に提供され、前記キャッピング層は、単一の層から成るか、または、異なる屈折率を有する材料の複数の層を備える、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記受側部材は、ポリマー被印刷体を備える、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
好ましくは、前記受側部材は、物品のためのセキュリティ素子の、好ましくは、法定通貨の物品のためのセキュリティ素子の全てまたは一部を形成する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
物品のためのセキュリティ素子であって、
前記素子は、相変化材料層を備える層状構造を備え、前記相変化材料は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能であり、
前記相変化材料層は、前記安定状態のうちの一状態にある層内の前記相変化材料の選択された部分と、1つまたはそれより多くの他の安定状態にある前記相変化材料の残りの部分とによって少なくとも部分的に定められる異なる屈折率のパターンを備え、
前記層状構造は、前記層状構造の表面にくぼみのパターンを備え、前記くぼみのパターンは、前記相変化材料層における前記異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる、
素子。
(項目26)
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと整合させられる、項目25に記載の素子。
(項目27)
前記くぼみのパターンは、前記異なる屈折率のパターンと実質的に同一である、項目25または項目26に記載の素子。
(項目28)
前記層状構造は、ポリマー被印刷体を備える、項目25~27のいずれかに記載の素子。
【0013】
ここで、本発明は、付随の図面の参照を伴って、例を用いてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、パターンが本開示の方法によって適用され得る層状構造の概略的側面断面図である。
図2図2~5は、異なる屈折率およびくぼみの位置合わせされたパターンを適用するための、図1の層状構造を備える受側部材へのエンボス加工部材の押付を描写している概略的側面断面図である。
図3図2~5は、異なる屈折率およびくぼみの位置合わせされたパターンを適用するための、図1の層状構造を備える受側部材へのエンボス加工部材の押付を描写している概略的側面断面図である。
図4図2~5は、異なる屈折率およびくぼみの位置合わせされたパターンを適用するための、図1の層状構造を備える受側部材へのエンボス加工部材の押付を描写している概略的側面断面図である。
図5図2~5は、異なる屈折率およびくぼみの位置合わせされたパターンを適用するための、図1の層状構造を備える受側部材へのエンボス加工部材の押付を描写している概略的側面断面図である。
図6図6は、図4の受側部材のくぼみのない部分からの反射を概略的に描写している側面図である。
図7図7は、図4の受側部材におけるくぼみからの反射を概略的に描写している側面図である。
図8図8は、再帰反射機能性を提供するための、受側部材におけるくぼみ内の透明部材を概略的に描写している、側面断面図である。
図9図9は、押付表面が複数の非対称な突起要素を有する例示的エンボス加工部材を描写している側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語「光学」および「光」は、電磁放射に関連する当該技術においては通常の用語であるため、本明細書全体を通してそれらの用語が使用されるが、本明細書の文脈において、それらは可視光に限定されないことを理解されたい。本発明は、赤外線および紫外線等の可視スペクトル以外の波長とともに使用され得ることも想定されている。
【0016】
図1~5に図示されているように、本開示は、受側部材10にパターンを適用する方法を提供する。受側部材10は、図1に描写されているような層状構造12を備える。いくつかの実施形態では、層状構造12は、被印刷体8上に形成された薄フィルムスタックを備える。被印刷体8は、ポリマー材料を含む。
【0017】
層状構造12の層のうちの少なくとも1つは、PCMの層2である。PCMは、相互に対して異なる屈折率を有する複数の状態の間で熱的に切替可能である。異なる屈折率は、異なる虚数成分を含み得、したがって、異なる吸光度を含み得る。異なる屈折率は、PCM2が異なる状態において異なる色を有し、および/または異なる光学効果を提供することを引き起こし得る。
【0018】
層状構造12における全ての層は、典型的には、固体状態であり、PCMの異なる状態が、異なる(すなわち、目視可能および/または測定可能に区別される)反射スペクトルをもたらすように、それらの厚さだけでなく屈折率および吸収性質が組み合わさるように構成されている。このタイプの光学素子は、Nature 511, 206-211(2014年7月10日)、第WO2015/097468A1号、第WO2015/097469A1号、第EP3203309A1号、および第WO2017/064509A1号に説明されている。
【0019】
ある実施形態では、PCMは、(任意の安定化学量論における以下の化合物/合金、すなわち、GeSbTe、VOx、NbOx、GeTe、GeSb、GaSb、AgInSbTe、InSb、InSbTe、InSe、SbTe、TeGeSbS、AgSbSe、SbSe、GeSbMnSn、AgSbTe、AuSbTe、およびAlSbを含む)酸化バナジウム(Voxとも称され得る)、酸化ニオブ(NbOxとも称され得る)、Ge、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、GeおよびTeを含む合金もしくは化合物、GeおよびSbを含む合金もしくは化合物、GaおよびSbを含む合金もしくは化合物、Ag、In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、InおよびSbを含む合金もしくは化合物、In、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、InおよびSeを含む合金もしくは化合物、SbおよびTeを含む合金もしくは化合物、Te、Ge、Sb、およびSを含む合金もしくは化合物、Ag、Sb、およびSeを含む合金もしくは化合物、SbおよびSeを含む合金もしくは化合物、Ge、Sb、Mn、およびSnを含む合金もしくは化合物、Ag、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、Au、Sb、およびTeを含む合金もしくは化合物、ならびにAlおよびSbを含む合金もしくは化合物のうちの1つもしくはそれより多くを含むか、それらから本質的に成るか、またはそれらから成る。好ましくは、PCMは、GeSbTeおよびAgInSb76Te17のうちの1つを含む。これらの材料の種々の化学量論的形態、例えば、GeSbTeが可能であり、別の好適な材料はAgInSb76Te17(AISTとしても公知である)であることも理解されたい。さらに、上記の材料のうちの任意のものが、CまたはN等の1つまたはそれより多くのドーパントを含むことができる。他の材料が、使用されてもよい。
【0020】
非結晶相と結晶相との間で切り替えられたときに実屈折率および虚屈折率の両方において劇的な変化を受けるPCMは、公知である。そのPCMは、各状態において安定である。切替は、任意の形態の加熱によって達成されることができ、原則として、優れた高速性を伴って、事実上無限の回数、実施されることができる。下記に説明される実施形態では、切替は、エンボス加工部材5と受側部材10との間の接触によって、エンボス加工部材5からの熱をPCMに伝達することによって達成される。
【0021】
本明細書に説明されるいくつかの実施形態はPCMが結晶相および非結晶相等の2つの状態の間で切替可能であると述べているが、その変換は、任意の2つの固相間であり得、これは、限定ではないが、結晶相から別の結晶相もしくは準結晶相へ、またはその逆、および非結晶から結晶もしくは準結晶/半順序結晶へ、またはその逆、および中間の全ての形態を含む。実施形態が2つの状態のみに限定されることもない。
【0022】
ある実施形態では、PCMは、200nm未満の厚さの層におけるGeSbTe(GST)を含む。別の実施形態では、PCMは、100nm未満の厚さの層におけるGeTe(必ずしも同比率の合金ではない)を含む。
【0023】
再び図1を参照すると、いくつかの実施形態では、層状構造12は、反射層4を備える。反射層4は、高反射性にされ得、または部分的にのみ反射性にされ得る。反射層4は、省略され得る。ある実施形態では、反射層4は、金属等の反射性材料を含む。金属は、(十分に厚いとき)良好な反射性を提供することが公知であり、また、高い熱的および電気的伝導性も有する。反射層4は、可視光、赤外光、および/または紫外線光に対して50%またはそれを上回る反射率を有し得、随意に、90%またはそれを上回る反射率を有し得、随意に、99%またはそれを上回る反射率を有し得る。反射層4は、例えば、Au、Ag、AlまたはPtから成る薄い金属フィルムを備え得る。この層が部分的に反射性を有するべきである場合、5~15nmの範囲の厚さが、選択され得、そうでなければ、実質的に全体的に反射性を有するように、100nm等、より厚く作製される。
【0024】
いくつかの実施形態では、層状構造12は、スペーサ層3をさらに備える。スペーサ層3は、PCM2と反射層4との間に存在する。
【0025】
いくつかの実施形態では、層状構造12は、キャッピング層1をさらに備える。PCM2は、キャッピング層1と反射層4との間に存在する。キャッピング層1の上側表面は、受側部材の目視表面を表し得、反射層4は、後面反射体として作用する。光は、目視表面としてのキャッピング層1を通過して受側部材10に入射し、受側部材10から出る。PCM2の屈折率およびスペーサ層3の厚さに依存する干渉効果は、反射性が波長の関数として有意に変動することを引き起こす。スペーサ層3およびキャッピング層1は、ともに光学的透過性を有し、理想的には、可能な限り透明である。
【0026】
キャッピング層1およびスペーサ層3の各々は、単一の層から成り得、または相互に対して異なる屈折率を有する材料の複数の層を備え得る(すなわち、キャッピング層1またはスペーサ層3が複数の層から成る場合、それらの層のうちの少なくとも2つは、相互に対して異なる屈折率を有する)。キャッピング層1および/またはスペーサ層3を形成する材料また複数の材料の厚さおよび屈折率は、(干渉および/または吸収を介して)所望のスペクトル応答を生み出すように選定される。キャッピング層1および/またはスペーサ層3を形成するために使用され得る材料は、(限定ではないが)ZnO、TiO、SiO、Si、TaO、ITO、およびZnS-SiOを含み得る。
【0027】
層状構造12における任意または全ての層が、スパッタリングによって形成され得、これは、100℃の比較的低い温度で実施されることができる。層は、リソグラフィからの公知の従来の技法を使用してパターン化されることもでき、または、例えば印刷からの他の技法を使用してパターン化されることもできる。
【0028】
特定の実施形態では、PCMの層2は、GSTを含み、100nm未満の厚さであり、好ましくは、6または7nmの厚さ等の10nm未満の厚さである。スペーサ層3は、要求される色および光学性質に応じて、典型的には、10nm~250nmの範囲の厚さを有するように成長させられる。キャッピング層1は、例えば、20nmの厚さである。
【0029】
図2~5に描写されているように、パターンを形成する方法は、受側部材10にエンボス加工部材5を押し付けることを含む。図2は、エンボス加工部材5が受側部材10に向かって下方に移動しているが、まだ受側部材10と接触していないときの押付プロセスのある段階を示している。図3は、エンボス加工部材5が受側部材10と接触しているときの押付プロセスの後半段階を示している。図4は、エンボス加工部材5が受側部材10から離れるように移動しているときの押付プロセスの最終段階を示している。図5は、代替押付プロセスのある段階を描写し、これは、押付が受側部材10の反対側から実施されることを除いて、図3と同等である。
【0030】
エンボス加工部材5は、図3に描写されているように、押付中、エンボス加工部材5と受側部材10との間の接触を介してPCMの層2の選択された部分2Aを加熱する。したがって、エンボス加工部材5は、押付が行われる前のPCM2より高温である。加熱は、選択された部分2A内のPCMを熱的に切り替える。PCMの層2の残りの部分(部分2B)は、もとの屈折率状態において残される。(相互に対して異なる屈折率を有する)部分2Aおよび2Bの組み合わせは、PCMの層2への押付によって適用された異なる屈折率のパターンを定める。
【0031】
ある実施形態では、図2に描写されているように、PCMの層2の全てが、押付に先立って、同じ初期状態で提供される。したがって、PCMの層2は、この段階ではパターン化されていない。ある実施形態では、初期状態は、非結晶状態である。ある実施形態では、エンボス加工部材5の押付(図3)が、部分2Aが(例えば、結晶状態へ)状態を変化させることを引き起こす一方、PCMの層2の残りの部分は、初期状態(例えば、非結晶)のままである。
【0032】
ある実施形態では、エンボス加工部材5は、押付表面(図2~4ではエンボス加工部材5の下側表面、および、図5ではエンボス加工部材5の上側表面)を備える。押付表面は、複数の突起部6を有する。幅広い範囲の形状が、光学効果の対応する範囲を達成するために、突起部6に関して使用され得る。しかしながら、一般には、それらが過剰な力を伴わずに受側部材10の中へと貫通し得るように突起部6を構成することが、好ましくあり得る。したがって、突起部6は、テーパ状であり得る(例えば、テーパ状の点および/または隆起部等のテーパ状要素を備える)。
【0033】
いくつかの実施形態では、突起部6は、(例に示されているような)複数の同一の突起要素を備える。図2~5では、突起部6は、3つのそのような突起要素を伴って示されている。突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視された(例えば、図において、ページの平面に対して垂直方向に目視された)とき、鏡面対称の断面を有し得る。鏡面対称の例示的直線16が、図2中の突起要素のうちの1つに対してラベル付けされている。このアプローチは、結果として生じる受側部材10において、同じ視覚的パターンが複数の方向から観察されることを可能にし得る。代替として、突起要素は、押付の方向に対して垂直方向に目視されたとき、非対称な断面を有し得る。そのような配列の例が、図9に描写されている。このアプローチは、観察者に対する物品の選択された向きの狭い範囲に対してのみ観察可能である特殊な視覚的パターンを提供するために使用されてもよく、これは、セキュリティ用途に関して有用であり得る。
【0034】
押付は、突起部6が、受側部材10におけるくぼみ7(図4中でラベル付けされている)の対応するパターンを形成することを引き起こす。くぼみ7は、受側部材10からの光の反射を変更し、視野角の関数として、光学効果を生み出すための増加した自由度、および/または光学効果の変動、および/または観察可能パターンの変動を提供する。図6および図7は、図2~4に描写されている方法で形成されたタイプのくぼみ7が、再帰反射挙動(図7)を提供するために反射をどのように変更し得るかを概略的に示し、再帰反射挙動では、ある角度から入射した光が、反射表面が単なる平面(図6)であった場合より大きい範囲まで、光源に向かって戻るように反射される。再帰反射挙動は、例えば、伸長された隆起状のくぼみを用いて、単一軸についての視野角の変動(2D再帰反射)に関して達成されることができ、または、例えば、直方体の内側角のように形成されたくぼみを用いて、複数の軸についての視野角の変動(3D再帰反射)に関して達成されることができる。いくつかの実施形態では、図8に図示されているように、透明部材14が、押付によって形成されたくぼみ7のうちの1つまたはそれより多くの中に提供される。透明部材14は、再帰反射効果を提供するように構成され得る。透明部材14は、例えば、球状であり得、かつ/または1を上回る屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、透明部材14は、押付が実施された後に別個のプロセスにおいて適用される。他の実施形態では、透明部材14は、押付と同時に適用される。例えば、エンボス加工部材5は、透明部材14のうちの1つまたはそれより多くを含む突起部6のパターンを具備し得る(例えば、透明部材14は、突起部のパターン内の個々の突起要素のそれぞれの先端に位置している)。この場合における押付プロセスは、押付中、透明部材14を受側部材10内へと圧接させる。透明部材14とエンボス加工部材5との間の接続は、透明部材14と受側部材10との間の接続より弱いように配列され、それによって、エンボス加工部材5が後ろに引かれると、透明部材14は、受側部材10内に取り残される。
【0035】
くぼみ7のパターンは、PCMの層2における異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる。示される例では、空間的位置合わせは、くぼみと同じ位置(すなわち、高温の突起部が受側部材10の中へと貫通させられる場所)に位置している切り替えられたPCM2の部分2Aの局所領域から成る。したがって、くぼみ7のパターンは、(切り替えられたPCM2の部分2Aによって定められる)異なる屈折率のパターンと整合させられ得る。くぼみ7のパターンは、異なる屈折率のパターンと実質的に同一であってもよい。この場合、2つのタイプのパターンが、ともに、同じエンボス加工部材5と受側部材10との間の接触によって形成されるため、この空間的位置合わせおよび/またはパターンの同一性は、異なるタイプのパターンを形成するための代替アプローチと比べて効率的に達成されることができる。
【0036】
ある実施形態では、押付表面における突起部6の外側にある凹形領域9の少なくとも一部は、押付中、受側部材10と接触しない(図3および図5を参照)。これは、押付表面が均一に加熱されることができる一方、空間的に不均一な加熱が(突起部6を介して)PCM2に印加されることを依然として可能にすることを意味する。
【0037】
他の実施形態では、エンボス加工部材5の押付表面は、押付中、不均一な温度分布を有する。この場合、不均一な温度分布は、押付中に熱的に切り替えられるPCMの層2の選択された部分を少なくとも部分的に画定し得る。不均一な温度分布は、例えば、複数の局所加熱要素を介して提供され得る。加熱要素の異なる組み合わせに取り組むことによって、および/または、それらによって出力されるパワーを変動させることによって、異なる空間的および/または時間的加熱プロファイルを定め、それによって、突起部6によって定められるくぼみ7のパターンと異なる(例えば、より複雑な)、異なる屈折率のパターンが定められることを可能にすることが、可能である。いくつかの実施形態では、エンボス加工部材5は、突起部6の(例えば、異なる個々の突起部の)パターンの異なる部分の温度の個々の制御を可能にするように構成されてもよい。
【0038】
受側部材10内へのエンボス加工部材5の押付は、(異なる時間に、または同時に)受側部材10の片側または両側から実施されることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、下記に詳細に説明されるように、層状構造12は、PCMの層2の真下に反射層4を備え、受側部材10内へのエンボス加工部材5の押付は、PCM2の反射層4と反対の側から(すなわち、図2~4の配列に示されているように、上方から)、少なくとも1回、実施される。代替として、または加えて、図5に図示されているように、いくつかの実施形態では、受側部材10内へのエンボス加工部材5の押付は、PCM2の反射層4と同じ側から(すなわち、図の向きにおいて下方から)、少なくとも1回、実施される。この場合、受側部材10内へのエンボス加工部材5の押付は、受側部材10の押付と反対の側での表面トポグラフィの変更を引き起こすようなものである(例えば、図5に示されているように、エンボス加工部材5の突起部6との空間的位置合わせにおいて、持ち上げられた領域18を形成する)。
【0040】
いくつかの実施形態では、受側部材10内へのエンボス加工部材5の押付は、複数回、実施される。押付の少なくとも一部は、異なるエンボス加工部材5(例えば、異なる突起部のパターンを伴う押付表面を有するエンボス加工部材5)を用いて実施され得る。複雑な光学効果を提供するために、および/または、異なる時間に視覚的効果を調節するために(例えば、アップグレードまたは差し迫った満了等のステータスの変化を示すようにセキュリティ素子を変更するために)、(異なるエンボス加工部材5を用いるかどうかを問わず、)複数の押付の使用が、行われ得る。
【0041】
受側部材10は、物品のためのセキュリティ素子の全てまたは一部を形成し得る。物品は、法定通貨の物品(例えば、紙幣)であり得、または別の物品であり得る。したがって、セキュリティ素子は、層状構造12を備え得る。層状構造12は、PCMの層2を備える。PCM2は、相互に対して異なる屈折率を有する複数の安定状態の間で熱的に切替可能である。PCMの層2は、安定状態のうちの一状態にある層内のPCM2の選択された部分2Aと、1つまたはそれより多くの他の安定状態にあるPCM2の残りの部分2Bとによって少なくとも部分的に定められる異なる屈折率のパターンを備える。層状構造12は、層状構造12の表面にくぼみ7のパターンを備える。くぼみ7のパターンは、PCMの層2における異なる屈折率のパターンと空間的に位置合わせされる。異なる屈折率のパターンは、図1~9の参照を伴って、上記に議論される方法のいずれかを使用して形成され得る。くぼみ7のパターンは、図1~9の参照を伴って、上記に議論される方法のうちの任意のものを使用して形成され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9