(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】超音波映像装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G01N29/06
(21)【出願番号】P 2023198836
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】北見 薫
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 幸太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215154(JP,A)
【文献】特開2005-351723(JP,A)
【文献】特開2010-107387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0043285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01H 1/00 - G01H 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を照射し、その透過波を取得して映像化する超音波映像装置であって、
水中において前記被検体を固定する試料台を備え、
前記試料台は、開口部を有し、
前記開口部の縁部には、前記被検体を把持する把持部材を備え、
前記開口部は、前記被検体より大きく構成され、前記把持部材によって前記被検体を把持することで前記被検体の外周部と前記開口部の縁部との間に気泡排出部が形成されることを特徴とする超音波映像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波映像装置であって、
前記気泡排出部は、前記把持部材の配設位置を除く位置に形成されることを特徴とする超音波映像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波映像装置であって、
前記把持部材は3個以上備え、かつ、当該把持部材が等間隔で前記開口部の縁部に配設されることを特徴とする超音波映像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波映像装置であって、
前記把持部材は、前記被検体の下側に配して前記被検体を載置する受け部材と、前記被検体の上側に配して前記被検体を押える押さえ部材と、によって構成されることを特徴とする超音波映像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波映像装置であって、
前記試料台は、試料台保持部に保持され、
前記試料台保持部は、前記試料台が浸水される水槽に固定されることを特徴とする超音波映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は気体には伝わりにくい性質があるため、超音波映像装置では、一般に、水を超音波伝達用媒質として用い、被検体および超音波探触子を水浸させて検査が行われる。この際、被検体に気泡が付着すると、気泡付着部の被検体内部の検査が困難になるという問題がある。また、超音波検査後に検査結果で気泡が確認された場合には、気泡を除去した後に再検査を実施する必要があるという問題がある。これらの問題を解決するために、以下の発明が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す超音波検査装置は、水を収容する水槽と、水槽内に配置され、被検体を載せる試料台と、上下方向に対向して配置され、被検体に向けて超音波を照射する第1超音波探触子および被検体を透過した超音波を受信する第2超音波探触子と、を有し、試料台の下面側に親水性被膜が形成されたものである。さらに、前記試料台の下面側には水を噴出する噴出部を有している。
【0004】
また、特許文献2に示す超音波検査装置は、超音波の照射及び受信を行う超音波探触子と、超音波による検査が行われる検査対象物(被検体)が載置される試料台と、試料台が浸漬される液体媒質(水)が貯留される水槽と、試料台に対して、液体媒質を吐出するノズルと、を有し、超音波探触子は検査範囲を移動し、ノズルは超音波探触子の移動に追従して移動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-215154号公報
【文献】特開2019-219234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の超音波検査装置は、被検体を載せる試料台の下面に残存する気泡に対し、液体を噴出することで気泡を排除するものである。この手法では、被検体を試料台に設置する際に被検体周囲に付着した細かい気泡を排出することが難しい。
【0007】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、試料台に搭載された被検体の周囲に付着した細かい気泡を簡易に排出できる超音波映像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被検体に超音波を照射し、その透過波を取得して映像化する超音波映像装置であって、水中において前記被検体を固定する試料台を備え、前記試料台は、開口部を有し、前記開口部の縁部には、前記被検体を把持する把持部材を備え、前記開口部は、前記被検体より大きく構成され、前記把持部材によって前記被検体を把持することで前記被検体の外周部と前記開口部の縁部との間に気泡排出部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料台に搭載された被検体の周囲に付着した細かい気泡を簡易に排出できる超音波映像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る超音波映像装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る超音波映像装置を示す斜視図である。
【
図3】試料台を試料台保持部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の試料台保持部から押さえ部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】試料台保持部に試料台を保持させた状態を示す斜視図である。
【
図7】ウェハが取り付けられた試料台を試料台保持部に取り付けた状態を示す上面図である。
【
図8】ウェハを把持した試料台を試料台保持部に装着する途中の状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波映像装置を示す構成図、
図2は、本発明の実施形態に係る超音波映像装置を示す斜視図である。
図1に示すように、超音波映像装置1は、超音波伝達用媒質としての水W中において、超音波により非破壊で被検体内部を測定し、その被検体の探査映像を表示したり、内部欠陥の合否を判定したりするものである。
【0013】
超音波映像装置1は、水槽10内に配置され、ウェハ2(被検体)を載せる試料台20と、ウェハ2の上側に設けられる第一超音波探触子40と、ウェハ2の下側に設けられる第二超音波探触子50と、を備えて構成されている。第一超音波探触子40と第二超音波探触子50とは、上下方向(Z方向)において対向する位置に配置される。なお、ウェハ2は、例えば、半導体集積回路の材料となる円形の薄板状のものである。
【0014】
第一超音波探触子40は、ウェハ2に向けて超音波を照射するもの(照射用プローブ)である。第二超音波探触子50は、ウェハ2を透過した超音波を受信するもの(受信用プローブ)である。なお、本実施形態とは逆に、第二超音波探触子50を照射用プローブ、第一超音波探触子40を受信用プローブとしてもよい。
【0015】
試料台20は、水槽10内において試料台保持部30によって保持されて水平に配置されている。なお、水槽10内の水は、純水に限定されるものではなく、水道水であってもよく、特に限定されるものではない。また、水槽10の形状は、本実施形態のように矩形箱状に限定されるものではなく、例えば有底円筒形状であってもよい。また、試料台20の構成と機能については、後に詳述する。
【0016】
第一超音波探触子40および第二超音波探触子50は、被検体であるウェハ2を間に挟んで上下に配置され、駆動装置(不図示)に接続された、X軸走査部61、Y軸走査部62(
図2参照)およびZ軸走査部63によって移動可能に構成されている。
【0017】
図2に示すように、X軸走査部61は、水槽10の上方に設けられ、第一超音波探触子40および第二超音波探触子50を共にX軸方向(左右方向)に動作させるものである。
【0018】
Y軸走査部62は、水槽10の外側のX軸方向の両側方に一対となって設けられ、第一超音波探触子40および第二超音波探触子50を共にY軸方向(前後方向)に動作させるものである。
【0019】
Z軸走査部63は、スライダ65を介してX軸走査部61に取り付けられ、第一超音波探触子40をZ軸方向(上下方向)に動作させるものである。なお、第一超音波探触子40は、プローブホルダ64を介してZ軸走査部63に取り付けられている。
【0020】
スライダ65には、第二超音波探触子50が取り付けられたアーム66が設けられている。アーム66は、Z軸方向の下方に向けて延び、Y軸方向(水平方向)に向けて延びている。アーム66の先端には、第一超音波探触子40と対向する位置に第二超音波探触子50が位置している。なお、第二超音波探触子50は、Z軸方向に動作しないようになっている。なお、本実施形態では、第二超音波探触子50がZ軸方向には固定された構成であるが、第二超音波探触子50が第一超音波探触子40と共にZ軸方向(上下方向)に動作する構成であってもよい。
【0021】
ウェハ2は、試料台20に保持され、水槽10内に溜められた水W中に配置される。また、第一超音波探触子40は、ウェハ2のZ軸方向の上側に配置され、第二超音波探触子50は、ウェハ2のZ軸方向の下側に配置される。
【0022】
ウェハ2が取り付けられた試料台20は、該試料台20を保持する試料台保持部30に保持される。この試料台保持部30は、水W中に位置し、脚部22を介して水槽10の底部に固定されている。また、試料台保持部30と水槽10の底面との間には、第二超音波探触子50がX軸方向およびY軸方向に移動するためのスペースが形成されている。なお、脚部22を試料台保持部30の四隅に設けた場合を例に挙げて説明したが、試料台保持部30を水槽10に固定できる構成であれば本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図3は、試料台を試料台保持部に取り付けた状態を示す斜視図、
図4は、
図3の試料台保持部から押さえ部材を取り外した状態を示す斜視図、
図5は、
図4の受け部材の拡大図である。なお、
図3ないし
図5は、いずれも試料台20にウェハ2が取り付けられていない状態を図示している。
図3および
図4に示すように、試料台20は、薄板に円形の開口部21が形成されたものである。また、試料台20の厚さは、ウェハ2を載せた場合に安定的に支持可能な剛性を確保できる厚さであり、例えば2~10mm程度の厚さに設定される。また、試料台20の材料としては、アルミニウム、ステンレス等の強度がある部材が好ましい。このような材料を使用することで、水W中で第一超音波探触子40および第二超音波探触子50(プローブ)が動く際の振動の影響を受けにくくすることができる。また、試料台20の形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば楕円形状であってもよい。
【0024】
試料台20は、開口部21にウェハ2を保持するための受け部材71が設けられている。また、試料台20は、開口部21の上面側の縁部にウェハ2を押さえるための押さえ部材72が設けられている。この受け部材71と押さえ部材72とによってウェハ2の縁が挟み込まれることによって、ウェハ2が開口部21内において保持される。開口部21の縁部には、ウェハ2を安定して把持するように、3個の対となる受け部材71および押さえ部材72(以下、まとめて把持部材という。)を配設する。なお、把持部材は、少なくとも3個設けられていればウェハ2を安定して保持できるが、ウェハ2の大きさに合わせて2個以下であっても、4個以上であってもよい。
【0025】
また、押さえ部材72は、開口部21の縁に沿って細長く形成され、受け部材71と上下方向に対向する位置に配置される。また、押さえ部材72は、試料台20の開口部21の縁部にねじ固定されている。本実施形態では、押さえ部材72の長手方向の両端において固定されている。
【0026】
試料台保持部30は、試料台20を保持するものであり、試料台20の下側を押さえる試料台下側押さえ31と、試料台20の上側を押さえる試料台上側押さえ32と、を備えて構成されている。このように、試料台保持部30は、コの字状に形成され、試料台20のX軸方向の両側が保持される。すなわち、試料台下側押さえ31は、試料台20のX軸方向の両側の縁に沿って配置される下側押さえ部31aと、下側押さえ部31aのY軸方向の一端(奥側の端部)同士を繋ぐ繋ぎ部31bと、を有している。試料台上側押さえ32は、試料台20のX軸方向の両側の縁に沿って設けられるとともに、下側押さえ部31aに重ねて設けられる。また、試料台上側押さえ32は、下側押さえ部31a上にねじ固定されている。また、試料台保持部30の繋ぎ部31bの上面には、試料台20の後端が当接して該試料台20の挿入位置を決める位置決め部材33が設けられている。
【0027】
図5に示すように、受け部材71は、開口部21の周壁面21aから径方向内側に向けて突出して形成されている。また、受け部材71は、台形状に形成され、内径側の先端にウェハ2の外周が当接する当接部71aが形成されている。また、受け部材71には、当接部71aの下端に径方向内側に突出してウェハ2を支持する支持部71bが形成されている。支持部71bは、つば形状であり、ウェハ2の縁部の下面に当接して支持するようになっている。このように3つの受け部材71を設けることによって開口部21に対するウェハ2の位置決めが行われ、ウェハ2の外周と開口部21の周壁面21aとの間に隙間S(
図1参照)が形成される。
【0028】
図6は、試料台保持部に試料台を保持させた状態を示す斜視図である。なお、
図6では、試料台保持部30のX軸方向の一方をY軸方向の手前側から見た状態を図示している。
図6に示すように、試料台20は、Y軸方向の両端を除く部分が凹状に切り欠かれ、Y軸方向の両端に、試料台保持部30によって保持される被保持部20a,20aが形成されている。
【0029】
試料台上側押さえ32は、Y軸方向の両端を除く部分が凹状に切り欠かれ、Y軸方向の両端に前記被保持部20aに重なるように配置される押さえ部32aが形成されている。この押さえ部32aの内側には、試料台20の被保持部20aがスライド可能に案内される切欠き32bが形成されている。すなわち、被保持部20aは、Y軸方向の手前側から挿入され、スライドしながら試料台保持部30の所定の位置まで挿入されるようになっている。なお、本実施形態では、X軸方向の一方のみを図示して説明したが、他方についても同様に構成されている。
【0030】
図7は、ウェハが取り付けられた試料台を試料台保持部に取り付けた状態を示す上面図である。
図7に示すように、開口部21の直径R1は、ウェハ2の直径R2より大きく形成されている。これにより、試料台20に形成され開口部21の(縁部)とウェハ2の外周との間に気泡を排除するための隙間S(気泡排出部)が形成されるようになっている。この隙間Sは、開口部21の軸方向(紙面に対して垂直方向)に貫通して形成される円弧形状の孔である。なお、受け部材71が設けられる位置と押さえ部材72が設けられる位置は、上下方向(Z軸方向)に貫通する孔が塞がれている。つまり、開口部21は、ウェハ2を把持することで把持部材の配置位置を除くウェハ2の外周部に隙間Sを有している。隙間Sが大きいほど気泡の排除が容易になる一方、ウェハ2を保持するために、把持部材を大きめに構成する必要がある。
【0031】
また、ウェハ2は、受け部材71の当接部71a(
図5参照)に当接することで、開口部21内においてウェハ2の位置決めが行われ、開口部21とウェハ2との間に隙間Sを確実に確保することができる。なお、隙間Sの寸法(開口部21の縁部とウェハ2の外周部との間の半径方向の距離)は、効果を損なわない範囲にて、目的等に応じて適宜設定される。
【0032】
また、ウェハ2は、押さえ部材72によって押さえられることで、ウェハ2が開口部21から脱落しないようになっている。この押さえ部材72は、周方向に延びて形成される細長い板形状であり、径方向の内側にウェハ2の外周の曲率に沿った形状の湾曲部72aが形成されている。これにより、ウェハ2と押さえ部材72とがZ軸方向(紙面に対して垂直方向)において重なる領域を減らすことができ、ウェハ2の検査範囲を広げることができる。
【0033】
なお、受け部材71および押さえ部材72の材質は、ウェハ2を傷つけないものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、アクリルなどの樹脂部材を挙げることができる。また、図示していないが、押さえ部材72をネジ固定する際のねじ穴をウェハ2(被検体)の方向に長い長孔とすることで、押さえ部材72が長孔の範囲で移動可能となるので、ウェハ2を設置する際の作業が容易になる。
【0034】
また、試料台上側押さえ32の押さえ部32aには、試料台20を保持するための板ばね80が設けられている。試料台20の被保持部20a(
図6参照)が押さえ部32aの位置に挿入されることで、板ばね80によって被保持部20aが保持される。これによって、試料台20が試料台保持部30に安定して保持される。なお、本実施形態では、板ばね80が試料台20の四隅に設けた場合を例に挙げて説明したが、試料台20を保持できる構成であれば、手前側の2箇所であってもよく、奥側の2箇所であってもよく、板ばね80の個数や位置は限定されない。
【0035】
図8は、ウェハを把持した試料台を試料台保持部に装着する途中の状態を示す上面図である。
図8に示すように、ウェハ2を試料台20に保持させた後、試料台20を試料台保持部30のY軸方向の手前側に水平に配置し、試料台保持部30の手前側から奥側の被保持部20aを挿入してY軸方向の奥側に向けてスライドさせる。これにより、被保持部20aは、下側押さえ部31aと手前側の押さえ部32aとの間をY軸方向の奥側に向けて案内されながら挿入される。そして、被保持部20aが押さえ部32aを通過した後、奥側の被保持部20aがY軸方向の奥側の下側押さえ部31aと押さえ部32aとの間に到達するとともに、Y軸方向告の手前側の被保持部20aが手前側の押さえ部32aに到達する。この状態から試料台20をさらに奥側にスライドさせて押し込むことで、四隅のすべての被保持部20aが下側押さえ部31aと押さえ部32aとの間に挿入され、それぞれ板ばね80によって被保持部20aが保持される。
【0036】
次に、ウェハ2を試料台20に設置する手順から試料台20を試料台保持部30に設置する手順までを示す。
まず、ウェハ2を試料台20の開口部21に載置する。これにより、ウェハ2の縁部が受け部材71に支持され、ウェハ2の外周面が当接部71aに当接することで、ウェハ2の外周と開口部21との間に隙間Sが形成された状態でウェハ2が開口部21に位置決めされる(
図5、
図7参照)。そして、開口部21の縁部に押さえ部材72がウェハ2の縁に重なるように配置して、ねじを用いて押さえ部材72を試料台20に固定する。このようにして、ウェハ2を把持部材(受け部材71と押さえ部材72)によって試料台20に固定する。
【0037】
そして、ウェハ2を固定した試料台20を水槽10の水W中に浸し、試料台20を傾斜等させてウェハ2の下面に滞った気泡を排除する。なお、前記の手順でも排除できずに残った気泡が確認された場合には、気泡が確認された箇所に水流をブローすることで気泡を排除する。とりわけ、ウェハ2と開口部21との間に滞った細かい気泡は、水流により隙間S(気泡排出部)を通して排除する。なお、隙間Sが狭い方が、ブローした際の水流は速くなり、隙間Sが広い方がブローした際の水流は遅くなる。
【0038】
そして、ウェハ2が把持された試料台20を試料台保持部30の手前側において水平にした状態で、試料台保持部30の手前側からスライドして嵌め込むことで、試料台20を試料台保持部30に固定する。なお、試料台保持部30は、水槽10内に固定されている(
図2参照)。
【0039】
このように、水槽10の外で試料台20にウェハ2を固定してから、試料台20を水W中に入れて、試料台保持部30にスライドしてはめ込んで固定することができるので、ウェハ2を固定する際の作業性が向上する。
【0040】
次に、超音波映像装置1の動作および作用について説明する。
水W中に検査対象となるウェハ2(被検体)が投入されると、ウェハ2の内部の検査のために、第一超音波探触子40および第二超音波探触子50が、試料台20に対して水平移動してウェハ2上を走査する。なお、検査前は、第一超音波探触子40が第二超音波探触子50に対して上方に離れて退避しており、ウェハ2が所定の位置に配置されると、第一超音波探触子40を原点位置から焦点位置まで下降させる。
【0041】
超音波映像装置1は、ウェハ2(被検体)の各部の音響インピーダンスによりウェハ2を透過した後の超音波の強弱が異なる性質を利用して、受信した超音波の強弱を画像化する。これにより、ウェハ2内部の状態を非破壊で検査することができる。
【0042】
次に、超音波映像装置1の運用方法について説明する。
本実施形態の気泡排出機構を有する超音波映像装置1において所望の効果が得られるようにするためには、超音波映像装置1を本運用する前段階においてテスト運用を行う。
このテスト運用では、試料台20に設ける開口部21の面積および形状を、検査対象となる被検体(ウェハ2)の面積および形状に応じて設定する。つまり、被検体(ウェハ2)を把持部材(受け部材71および押さえ部材72)によって把持した際に、被検体(ウェハ2)と開口部21との間に気泡を排出できる十分な大きさの隙間S(気泡排出部)が形成されるように開口部21の面積および形状を設定する。このテスト運用を経ることで、本運用においても気泡が被検体(ウェハ2)の周囲に留まるのを防ぐことが可能となり、運用効率の向上が可能となる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の超音波映像装置1は、ウェハ2に超音波を照射し、その透過波を取得して映像化する超音波映像装置1であって、水W中においてウェハ2を固定する試料台20を備える。試料台20は、開口部21を有し、開口部21の縁部には、ウェハ2を把持する把持部材(受け部材71および押さえ部材72)を備える。開口部21は、ウェハ2より大きく構成され、把持部材によってウェハ2を把持することでウェハ2の外周部と開口部21の縁部との間に隙間S(気泡排出部)が形成される。これによれば、試料台20に搭載されたウェハ2の周囲に付着した細かい気泡を隙間Sから簡易に排出できる。
【0044】
また、本実施形態では、隙間S(気泡排出部)が把持部材の配設位置を除く位置に形成される。これによれば、ウェハ2を安定して把持できるように把持部材を構成できる。
【0045】
また、本実施形態は、把持部材(受け部材71および押さえ部材72)は3個以上備え、かつ、当該把持部材が等間隔で開口部21の縁部に配設されている。これによれば、ウェハ2を試料台20に安定して保持できる。
【0046】
また、本実施形態は、把持部材は、ウェハ2の下側に配してウェハ2を載置する受け部材71と、ウェハ2の上側に配してウェハ2を押える押さえ部材72と、によって構成される。これによれば、ウェハ2の縁で上下で押さえることで、ウェハ2を試料台20に安定して保持できる。
【0047】
また、本実施形態は、試料台20は、試料台保持部30に保持され、試料台保持部30は、試料台20が浸水される水槽10に固定される。これによれば、ウェハ2を水槽10の外側に試料台20に固定するので、ウェハ2を水槽10内で固定する場合に比べて作業性が向上する。
【0048】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、本実施形態では、円形の開口部21の場合を例に挙げて説明したが、円形に限定されるものではなく、開口部の把持部材の部分を除いた形状が外側に膨らむ形状とし、開口部とウェハ2の外周との隙間が本実施形態よりも大きくなるような形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 超音波映像装置
2 ウェハ(被検体)
10 水槽
20 試料台
21 開口部
30 試料台保持部
40 第一超音波探触子
50 第二超音波探触子
71 受け部材
72 押さえ部材
S 隙間(気泡排出部)
W 水
【要約】
【課題】試料台に搭載されたウェハの周囲に付着した細かい気泡を簡易に排出できる超音波映像装置を提供する。
【解決手段】ウェハ2に超音波を照射し、その透過波を取得して映像化する超音波映像装置1であって、水W中においてウェハ2を固定する試料台20を備え、試料台20は、開口部21を有し、開口部21の縁部には、ウェハ2を把持する把持部材を備え、開口部21は、ウェハ2より大きく構成され、把持部材によってウェハ2を把持することでウェハ2の外周部と開口部21の縁部との間に気泡排出部である隙間Sが形成される。
【選択図】
図2