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特許7438485樹脂硬化装置用光源装置及び樹脂硬化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】樹脂硬化装置用光源装置及び樹脂硬化装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/08 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
B29C35/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022207583
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2021105217の分割
【原出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2023029453
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】518302427
【氏名又は名称】株式会社USKテクノロジー
(72)【発明者】
【氏名】萩原 守
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503543(JP,A)
【文献】特開2016-105450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00,35/08
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光の照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に用いられる光源装置であって、
紫外光を照射する複数の発光ダイオードを搭載面上に配列して構成され、
前記各発光ダイオードの配光角が、50°未満、あるいは80°より大きく、
前記搭載面が平面であり、前記平面に垂直な中心軸を中心とした所定半径の光源領域は、全体として矩形状となるように等間隔に整列配置された前記複数の発光ダイオードを有し、
前記平面と平行な面であって前記各発光ダイオードからの光が照射される仮想の照射面において、少なくとも、前記中心軸からの距離を、前記光源領域の半径で除した値が-0.9以上0.9以下の範囲で、光量がピーク値の60%以上である、
樹脂硬化装置用光源装置。
【請求項2】
紫外光の照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に用いられる光源装置であって、
紫外光を照射する複数の発光ダイオードを搭載面上に配列して構成され、
前記各発光ダイオードの配光角が、50°未満、あるいは80°より大きく、
前記搭載面が平面であり、前記平面に垂直な中心軸を中心とした所定半径の光源領域は、全体として矩形状となるように等間隔に整列配置された前記複数の発光ダイオードを有し、
前記平面と平行な面であって前記各発光ダイオードからの光が照射される仮想の照射面において、少なくとも、前記中心軸からの距離を、前記光源領域の半径で除した値が-0.5以上0.5以下の範囲で、光量がピーク値の80%以上である、
樹脂硬化装置用光源装置。
【請求項3】
50°未満、あるいは80°より大きい配光角を有し、紫外光を照射する複数の発光ダイオードを含む光源装置を備え、
前記紫外光の照射によって樹脂を硬化するように構成されており、
前記光源装置は、
前記発光ダイオードの搭載面が平面であり、前記平面に垂直な中心軸を中心とした所定半径の光源領域は、全体として矩形状となるように等間隔に整列配置された前記複数の発光ダイオードを有し、
前記平面と平行な面であって前記各発光ダイオードからの光が照射される仮想の照射面において、少なくとも、前記中心軸からの距離を、前記光源領域の半径で除した値が-0.9以上0.9以下の範囲で、光量がピーク値の60%以上である、
樹脂硬化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂硬化装置用光源装置及び樹脂硬化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の発光ダイオードを平面上に配列した光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、紫外線を発光する発光ダイオードを用いた光源装置は、水等の流体を殺菌する(細菌を不活化する)流体殺菌装置や、紫外線硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5732157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の流体殺菌装置あるいは樹脂硬化装置に用いられる光源装置では、例えば、殺菌あるいは樹脂硬化をもれなく行う目的のために、発光ダイオードからの光を照射する照射面において、均一な光を照射することが望まれる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、照射面での光量の均一性を向上させることが可能な樹脂硬化装置用装置用光源装置及び樹脂硬化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、紫外光の照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化装置に用いられる光源装置であって、紫外光を照射する複数の発光ダイオードを搭載面上に配列して構成され、前記各発光ダイオードの配光角が、50°未満、あるいは80°より大きく、前記搭載面が平面であり、前記平面に垂直な中心軸を中心とした所定半径の光源領域は、整列配置された前記複数の発光ダイオードを有し、前記平面と平行な面であって前記各発光ダイオードからの光が照射される仮想の照射面において、少なくとも、前記中心軸からの距離を、前記光源領域の半径で除した値が-0.9以上0.9以下の範囲で、光量がピーク値の60%以上である、樹脂硬化装置用光源装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照射面での光量の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る流体殺菌装置用光源装置の概略構成図である。
図2】(a),(b)は配光角20°の発光ダイオードの相対光度と角度との関係を示すグラフ図であり、(c).,(d)は配光角20°の発光ダイオードの相対光度と角度との関係を示すグラフ図である。
図3】(a)は発光ダイオードの配置を示す図であり、(b)~(d)は配光角毎の光量分布のシミュレーション結果を示す図である。
図4】光量がピーク値の60%あるいは80%となる中心からの距離と配光角との関係を示すグラフ図である。
図5】(a)~(e)は、配光角を20°とした場合において、発光ダイオードから照射面までの光学的距離を変化させた際の光量分布のシミュレーション結果を示す図である。
図6】(a)~(e)は、図5(a)~(e)のそれぞれにおいて、中心軸を通る断面での光量分布を示すグラフ図である。
図7】配光角を20°とした場合において、光量がピーク値の60%あるいは80%となる中心からの距離と、発光ダイオードから照射面までの光学的距離との関係を示すグラフ図である。
図8】(a)~(e)は、配光角を140°とした場合において、発光ダイオードから照射面までの光学的距離を変化させた際の光量分布のシミュレーション結果を示す図である。
図9】(a)~(e)は、図8(a)~(e)のそれぞれにおいて、中心軸を通る断面での光量分布を示すグラフ図である。
図10】配光角を140°とした場合において、光量がピーク値の60%あるいは80%となる中心からの距離と、発光ダイオードから照射面までの光学的距離との関係を示すグラフ図である。
図11】(a)~(e)は、LEDピッチを変化させた際の各発光ダイオードの配置を説明する図である。
図12】(a)~(e)は、配光角を20°とした場合において、LEDピッチを変化させた際の光量分布のシミュレーション結果を示す図である。
図13】(a)~(e)は、図12(a)~(e)のそれぞれにおいて、中心軸を通る断面での光量分布を示すグラフ図である。
図14】(a)は、配光角を20°とした場合において、光量がピーク値の60%あるいは80%となる中心からの距離と、LEDピッチとの関係を示すグラフ図であり、(b)は、LEDピッチと面内光量分布比との関係を示すグラフ図である。
図15】(a)~(e)は、配光角を140°とした場合において、LEDピッチを変化させた際の光量分布のシミュレーション結果を示す図である。
図16】(a)~(e)は、図15(a)~(e)のそれぞれにおいて、中心軸を通る断面での光量分布を示すグラフ図である。
図17】(a)は、配光角を140°とした場合において、光量がピーク値の60%あるいは80%となる中心からの距離と、LEDピッチとの関係を示すグラフ図であり、(b)は、LEDピッチと面内光量分布比との関係を示すグラフ図である。
図18】(a)~(g)は、発光ダイオードの使用数を変化させた際の各発光ダイオードの配置を説明する図である。
図19】(a)は、配光角を20°とした場合において、中心軸を通る断面での光量分布のシミュレーション結果を示すグラフ図であり、(b)は、(a)の横軸を光源領域の半径で規格化したグラフ図である。
図20】(a)は、配光角を140°とした場合において、中心軸を通る断面での光量分布のシミュレーション結果を示すグラフ図であり、(b)は、(a)の横軸を光源領域の半径で規格化したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置用(以下、光源装置)の概略構成図である。図1に示すように、光源装置1は、複数の発光ダイオード2を平面上に配列した装置である。
【0011】
ここでは、発光ダイオード2として、発光ダイオードチップを樹脂封止した樹脂封止型のものを用いる場合を示しているが、発光ダイオード2の具体的な構成はとくに限定されるものではない。例えば、発光ダイオード2は、発光ダイオードチップを中空パッケージにガラス等で蓋をすることにより封入したものであってもよいし、チップオンボードのようなチップを覆うものがないものであってもよい。また、発光ダイオード2の発光波長についても、特に限定されるものではない。
【0012】
複数の発光ダイオード2は、複数の発光ダイオード2が配置されている平面に対して垂直な中心軸Cを中心として、周方向及び径方向に等間隔に配置されている。以下、径方向における発光ダイオードの配置ピッチをLEDピッチと呼称する。具体的な発光ダイオード2の数や、好適な配置ピッチ等については、後に検討する。
【0013】
また、光源装置1からの光が照射される照射面3は、複数の発光ダイオード2が配置されている平面に対して平行な面であるとする。以下、各発光ダイオード2から照射面3までの、上記平面に垂直な方向(照射面3に垂直な方向)に沿った光学的距離を、Dとする。光学的距離とは、光が進む経路に沿った距離をd、光が通過する媒体の屈折率をnとしたとき、D=d×nで表されるものである。光源装置1からの光が照射される対象物については、気体、液体のいずれであってもよい。
【0014】
(好適な配光角の検討)
本実施の形態に係る光源装置1では、各発光ダイオード2の配光角を、50°未満、あるいは80°より大きくする。以下、その理由について説明する。
【0015】
配光角は、指向角とも呼ばれるものであり、発光ダイオード2の光強度(光量)がピーク値あるいは最大値の半分以上となる角度範囲である。配光角の測定は、発光ダイオード2からの距離を一定に維持しつつ受光器を移動させ、各角度での光強度を測定することにより行う。例えば、図2(a),(b)に示すように、配光角20°の発光ダイオード2では、発光ダイオード2の正面を0°とした場合、プラスマイナス10°の角度範囲が、ピーク値の半分以上の光強度が得られる領域となる。同様に、図2(c),(d)に示すように、配光角140°の発光ダイオード2では、発光ダイオード2の正面を0°とした場合、プラスマイナス70°の角度範囲が、最大値の半分以上の光強度が得られる領域となる。なお、本明細書において、ピーク値は正面(0°)での光強度、最大値は光強度が最大となる値を表すものとする。
【0016】
なお、発光ダイオード2において、配光角を調整する手段については、特に限定するものではない。例えば、凹面鏡形状のリフレクタ等の反射機構を有していてもよいし、レンズ等の透過型の集光機構を有していてもよい。以下のシミュレーションでは、全ての発光ダイオード2の配光角が同じであると仮定するが、製造上の公差等による多少の誤差は許容される。
【0017】
以下、図3(a)に示すように、中心に1つの発光ダイオード2を配置すると共に、LEDピッチ(径方向における配置ピッチ)を10mmとし、直径60mmの範囲に発光ダイオード2を配置した場合について検討する。直径10mmの円周上には6個、直径20mmの円周上には12個、直径30mmの円周上には18個、直径40mmの円周上には24個、直径50mmの円周上には30個、直径60mmの円周上には36個の発光ダイオード2がそれぞれ周方向に等間隔に配置されており、合計127個の発光ダイオード2が用いられている。光源領域の半径、すなわち発光ダイオード2が配置されている領域の半径は、60mmとなる。
【0018】
図3(a)のように発光ダイオード2を配置した場合について、各発光ダイオード2の配光角を変化させて、照射面3での光量分布をシミュレーションした。配光角を20°、50°、及び140°とした場合における照射面での光量分布は、図3(b)~(d)のようになる。図3(b)~(d)では、光量分布を三次元表示したグラフと併せて、中心軸Cを通る断面における光量の分布のグラフも併せて示している。なお、発光ダイオード2と照射面3との光学的距離Dは100mmとした。また、配光角を異ならせた場合であっても、1つの発光ダイオード2の明るさ(発光される全体の光量)は一定であるとして、シミュレーションを行った。各配光角での演算結果をまとめて図4に示す。
【0019】
ここで、照射面3での光量分布の均一性を評価する指標について説明しておく。水殺菌(流体殺菌)などの光源の均一性が必要な応用において、紫外光の光出力を増加させると、殺菌性能(効果性能)は、単に光出力の増加に応じて向上するだけでなく、光が照射される領域(深度)が増すことにより光出力を増加させた以上に向上する。そのために、効果性能の均一性を67%(光量の均一性1.5倍以内)得ようとすると、光源には少なくとも80%以上の均一性が必要となり、効果性能の均一性を50%(光量の均一性2.0倍以内)得ようとすると、光源には少なくとも60%以上の均一性が必要となる。
【0020】
そこで、本実施の形態では、照射面3での光量分布の均一性を評価する指標として、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」、及び、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」を用いた。なお、ここでいう「中心」とは、発光ダイオード2が配置されている領域の中心、すなわち中心軸Cの位置を意味する。これらの距離の値が大きいほど、照射面3の広い範囲が均一に照射されていることとなり、照射面3にて良好な光量の均一性が得られていることになる。
【0021】
図4に示すように、配光角が小さい領域、及び大きい領域については良好な結果が得られている。しかし、その中間領域、すなわち配光角を50°、60°、及び80°とした場合には、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」が低下し、照射面3での光量の均一性が低下していることが分かる。
【0022】
本実施の形態では、光源領域の半径が60mmである場合、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」が44mm以上となる場合に、照射面3での光量の均一性について合格であるとする。図4に示すように、配光角が50°未満、もしくは80°より大きい場合に、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」が44mm以上となり、照射面3における光量の均一性が向上している。そこで、本実施の形態に係る光源装置1においては、各発光ダイオード2の配光角を、50°未満、あるいは80°より大きく設定した。
【0023】
また、図4のグラフより、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」が44mm以上となる場合、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」は、配光角50°未満の領域では58mm以上、配光角80°超の領域では60mm以上に対応することになる。よって、配光角が50°未満の場合には、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」が58mm以上であること、配光角が80°より大きい場合には、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」が60mm以上であることを、合格の基準に設定した。
【0024】
(発光ダイオード2と照射面3との光学的距離Dの検討)
まず、発光ダイオード2の配光角を50°未満とした場合において、好適な光学的距離Dについて検討する。発光ダイオード2の配光角を20°とし、発光ダイオード2と照射面3との光学的距離Dを50mm、80mm、100mm、150mm、及び200mmとした場合の照射面3での光量分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図5(a)~(e)に示す。また、それぞれの場合の中心軸Cを通る断面での光量分布を図6(a)~(e)に示す。
【0025】
また、図6(a)~(e)より、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」を演算した結果を、図7にまとめて示す。図7に示すように、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」は、いずれの場合も合格基準の58mm以上となっている。また、図7に示すように、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」についても、いずれの場合も合格基準の44mm以上となっている。ただし、図7の傾向から、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」は、光学的距離Dが増加するほど低下しており、光学的距離Dが200mmを超えると、合格基準を下回ると考えられる。
【0026】
よって、各発光ダイオード2の配光角が50°未満である場合、各発光ダイオード2から照射面3までの光学的距離Dは、200mm以下であることが望ましい。
【0027】
次に、発光ダイオード2の配光角を80°より大きくした場合において、好適な光学的距離Dについて検討する。発光ダイオード2の配光角を140°とし、発光ダイオード2と照射面3との光学的距離Dを50mm、80mm、100mm、150mm、及び200mmとした場合の照射面3での光量分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図8(a)~(e)に示す。また、それぞれの場合の中心軸Cを通る断面での光量分布を図9(a)~(e)に示す。
【0028】
また、図9(a)~(e)より、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」を演算した結果を、図10にまとめて示す。図10に示すように、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」は、光学的距離Dが50mmの場合に不合格となっており、光学的距離Dが80mm以上の場合に合格となっている。
【0029】
よって、各発光ダイオード2の配光角が80°より大きい場合、各発光ダイオード2から照射面3までの光学的距離Dは、80mm以上であることが望ましい。
【0030】
(LEDピッチの検討)
次に、LEDピッチ、すなわち発光ダイオード2の径方向における配置ピッチについて検討する。ここでは、図11(a)~(e)に示すように、LEDピッチを8.5mm、10mm、12mm、15mm、及び20mmとした場合について検討を行った。いずれの場合も、発光ダイオード2を配置する領域(光源領域)は直径60mmで一定とし、配置する発光ダイオード2の数を増減して密度を調整することによって、LEDピッチを調整した。発光ダイオード2の使用数は、LEDピッチ8.5mmの場合169個、LEDピッチ10mmの場合127個、LEDピッチ12mmの場合91個、LEDピッチ15mmの場合61個、LEDピッチ20mmの場合37個である。これらは発光ダイオード2の総数が異なるため、シミュレーションは総光量が同じとして行った。
【0031】
まず、発光ダイオード2の配光角を50°未満とした場合について検討する。発光ダイオード2の配光角を20°とし、LEDピッチを8.5mm、10mm、12mm、15mm、及び20mmとした場合の照射面3での光量分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図12(a)~(e)に示す。また、それぞれの場合の中心軸Cを通る断面での光量分布を図13(a)~(e)に示す。
【0032】
また、図13(a)~(e)より、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」を演算した結果を、図14(a)にまとめて示す。図14(a)に示すように、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」は、いずれの場合も合格基準の58mm以上となっている。また、図14(a)に示すように、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」についても、いずれの場合も合格基準の44mm以上となっている。また、図14(a)の傾向から、LEDピッチが8.5mm未満となると、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」が合格値である58mmを下回ると考えられる。よって、各発光ダイオード2の配光角が50°未満である場合、LEDピッチは8.5mm以上であることが望ましいといえる。
【0033】
ここで、図12(a)~(e)のシミュレーション結果を参照すると、LEDピッチが大きくなるほど照射面3内での光量のばらつきが大きくなっていることがわかる。そこで、この光量のばらつきを評価するために、評価基準として照射面3の面内光量分布比を用いた。面内光量分布比は、図13(a)~(e)の光量分布において、ピーク値と、ピーク直近の光量の落ち込みにおけるボトム値を用い、ボトム値/ピーク値により演算した。本実施の形態では、面内光量分布比が80%(0.8)以上であることを、合格基準とした。
【0034】
面内光量分布比の演算結果をまとめて図14(b)に示す。図14(b)に示すように、LEDピッチを20mmとした場合には、面内光量分布比が80%を下回っていることが分かる。よって、LEDピッチは、20mm未満、より好ましくは15mm以下とすることが望ましいといえる。
【0035】
以上の結果より、各発光ダイオード2の配光角が50°未満である場合、LEDピッチは8.5mm以上20mm未満、より好ましくは8.5mm以上15mm以下とすることが望ましい。
【0036】
次に、発光ダイオード2の配光角を80°より大きくした場合について検討する。発光ダイオード2の配光角を140°とし、LEDピッチを8.5mm、10mm、12mm、15mm、及び20mmとした場合の照射面3での光量分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図15(a)~(e)に示す。また、それぞれの場合の中心軸Cを通る断面での光量分布を図16(a)~(e)に示す。
【0037】
また、図16(a)~(e)より、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」を演算した結果を、図17(a)にまとめて示す。図17(a)に示すように、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」は、いずれの場合も合格基準の60mm以上となっている。また、図17(a)に示すように、「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」についても、いずれの場合も合格基準の44mm以上となっている。また、図17(a)の傾向から、LEDピッチが8.5mmを大きく下回ると、「光量がピーク値の60%となる中心からの距離」、及び「光量がピーク値の80%となる中心からの距離」が合格値を下回ると考えられる。よって、各発光ダイオード2の配光角が80°より大きい場合、LEDピッチは8.5mm以上であることが望ましいといえる。
【0038】
また、図16(a)~(e)の各光量分布において、面内光量分布比を求めた。面内光量分布比の演算結果をまとめて図17(b)に示す。図17(b)に示すように、この例では、LEDピッチにかかわらず良好な結果が得られている。また、図17(b)の傾向から、LEDピッチが20mmを大きく上回ると、面内光量分布比が合格値を下回ると考えられる。よって、LEDピッチは、20mm以下とすることが望ましいといえる。
【0039】
以上の結果より、各発光ダイオード2の配光角が80°より大きい場合、LEDピッチは8.5mm以上20mm以下とすることが望ましい。
【0040】
(発光ダイオード2の使用数の検討)
次に、LEDピッチを一定とし、使用する発光ダイオード2の数を変えた場合について検討する。ここでは、図18(a)~(g)に示すように、LEDピッチを10mmで一定とし、中心の発光ダイオード2の周囲に円状に配置する発光ダイオード2を、1周、2周、3周、4周、5周、6周、及び7周とした場合について検討した。使用される発光ダイオード2の数は、1周の場合7個、2周の場合19個、3周の場合37個、4周の場合61個、5周の場合91個、6周の場合127個、7周の場合169個である。
【0041】
配光角を20°とした場合について、中心軸Cを通る断面での光量分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図19(a)にまとめて示す。なお、図19(a)では、縦軸をピーク値で規格化した光量としている。
【0042】
図19(a)のシミュレーション結果では、光源について実際のシミュレーションに用いた直径を用いてプロットした。これを、図19(a)の横軸である中心からの距離を、光源領域の半径(発光ダイオード2を配置する領域の半径)で除することにより、横軸の規格化を行った。なお、図18(a)~(g)に示されるように、光源領域の半径は、1周の場合10mm、2周の場合20mm、3周の30mm、4周の場合40mm、5周の場合50mm、6周の場合60mm、7周の場合70mmである。
【0043】
横軸の規格化を行ったシミュレーション結果を図19(b)に示す。図19(b)に示すように、発光ダイオードの使用数にかかわらず、光量がピーク値の60%となる距離(中心からの距離/光源領域の半径)はほぼ一定となっていることが分かる。
【0044】
同様に、配光角を140°とした場合のシミュレーション結果を図20(a)に示し、その横軸を規格化したグラフを図20(b)に示す。図20(b)に示すように、配光角を140°とした場合には、規格化された光量と距離(中心からの距離/光源領域の半径)との関係がほぼ一致することが分かる。
【0045】
以上より、LEDピッチが一定である場合には、使用する発光ダイオード2の数は、照射面3の光量の均一性に寄与しないことが分かった。換言すれば、本実施の形態による評価は、使用する発光ダイオード2の数によらず有効であることが分かった。
【0046】
(より望ましい条件)
以上のシミュレーション結果をまとめると、照射面3での光量の均一性をより向上させるためには、以下の(1),(2)のいずれかの条件を満たすことが望ましいといえる。
【0047】
(1)各発光ダイオードの配光角が50°未満であり、かつ、各発光ダイオード2から照射面3までの光学的距離Dが200mm以下であり、かつ、LEDピッチが8.5mm以上20mm未満である。
【0048】
(2)各発光ダイオードの配光角が80°より大きく、かつ、各発光ダイオード2から照射面3までの光学的距離Dが80mm以上であり、かつ、LEDピッチが8.5mm以上20mm以下である。
【0049】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る光源装置1は、複数の発光ダイオード2を平面上に配列した装置であって、各発光ダイオード2の配光角が、50°未満、あるいは80°より大きい。これにより、照射面3での光量の均一性を向上させることが可能になる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0051】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、各発光ダイオード2の配光角が一定であると仮定してシミュレーションを行ったが、発光ダイオード2の配光角が一定であることは必須ではない。
【0052】
また、上記実施の形態では、照射面3の位置(発光ダイオード2から照射面3までの光学的距離D)を規定したが、対象物への光の照射は、照射面3を含んだ位置で行われていればよく、例えば、照射面3の前後の領域においても対象物への光の照射が行われていてもよい。一例として、流水に発光ダイオード2からの紫外光を照射して殺菌(あるいは細菌の不活化)を行う場合、設定した照射面3の前後においても流水に紫外光が照射されることになるが、このような場合も本発明に含まれる。この例では、設定したある照射面3において紫外光の光量を均一にすることで、殺菌のもれを抑制することが可能になる。
【0053】
上記実施の形態では、複数の発光ダイオード2が周方向及び径方向に等間隔に配置する場合について説明したが、必ずしも発光ダイオード2を等間隔に配置することは必須ではなく、上記実施の形態で述べたように、照射面3での光量の均一性を維持できる範囲で発光ダイオードのピッチを適宜変化させても構わない。また、発光ダイオード2は全体として円形状に配置されている必要はなく、例えば全体として矩形状に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…光源装置
2…発光ダイオード
3…照射面
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