(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】温調家具
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20240219BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A47C27/00 F
A47C7/74 D
(21)【出願番号】P 2019152620
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509221135
【氏名又は名称】株式会社日建設計総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】308013540
【氏名又は名称】茶谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391004919
【氏名又は名称】株式会社コトブキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】長廣 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義康
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏行
(72)【発明者】
【氏名】寺口 信哉
(72)【発明者】
【氏名】深澤 幸郎
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-307680(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160642(JP,U)
【文献】特開昭61-276639(JP,A)
【文献】実開昭62-169657(JP,U)
【文献】特開平07-155240(JP,A)
【文献】米国特許第04979375(US,A)
【文献】特開2005-233527(JP,A)
【文献】特開平06-101934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
A47C 7/74
A47C 21/04
A47B 13/00
F24D 17/00
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に直接または間接に接触する面である伝熱面を有する家具と、
外部から供給される水と、液状の熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、
前記伝熱面と前記熱媒体との間で熱交換が行われるように、少なくとも一部が前記伝熱面に配設された前記熱媒体の流通管と、を有し、
前記家具は、椅子、長椅子、ソファー、ベッド、机、または、テーブルである、温調家具。
【請求項2】
前記外部から供給される水は、地下水、湧水、海水、または、河川水である未利用水である、請求項1記載の温調家具。
【請求項3】
前記外部から供給される水の温度は、前記伝熱面が冷却される場合には20℃以上である、請求項1または請求項2記載の温調家具。
【請求項4】
前記外部から供給される水の温度は、前記伝熱面が加熱される場合には45℃以下である、請求項1から請求項3のいずれか記載の温調家具。
【請求項5】
前記外部から供給される水、及び前記熱媒体の少なくとも一方の流量を調節するための調節部をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか記載の温調家具。
【請求項6】
前記家具が有する1個の前記伝熱面の複数の異なる領域に、または前記家具が有する複数の前記伝熱面に、複数の流通管がそれぞれ独立して配設されており、
前記流通管ごとに前記熱媒体の流量をそれぞれ調節するための複数の調節部をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか記載の温調家具。
【請求項7】
前記伝熱面の表面に設けられた、蓄熱性を有するシート状部材をさらに備えた、請求項1から請求項6のいずれか記載の温調家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具が有する伝熱面の温度を変化させることができる温調家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間全体について空調を行うのではなく、人のいるところだけを局所的に空調することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-127366号公報
【文献】特開2002-081729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような局所的な空調を行ったとしても、温度調節後の空気が、温度調節のなされていない空間に流れていくことによって、人のいる空間の快適性が失われることがあった。また、そのような状況において、人のいる空間の温度環境の快適性を保つためには、より強力な空調を行う必要があり、省エネルギーにならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、快適な温度を効率よく人間に提供することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による温調家具は、伝熱面を有する家具と、外部から供給される水と、液状の熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、伝熱面と熱媒体との間で熱交換が行われるように、少なくとも一部が伝熱面に配設された熱媒体の流通管と、を有するものである。
このような構成により、外部から供給される水を用いることによって、例えば、椅子やベッドなどの家具の伝熱面を暖めたり冷やしたりすることができ、その伝熱面に触れている人体の箇所を暖めたり冷やしたりすることができる。また、空気を介さないため、伝熱面に接触している人体の箇所を効率よく暖めたり冷やしたりすることができ、省エネルギー化を実現することができる。また、例えば、その家具の置かれている空間の空調を弱めることもできるようになり、その観点からも省エネルギー化を促進することができるようになる。
【0007】
また、本発明による温調家具では、外部から供給される水は、地下水、湧水、海水、または、河川水である未利用水であってもよい。
このような構成により、通常、冷暖房に利用されない水を用いることによって、人間に快適な温度を提供することができるようになる。そのため、空調で用いるような熱源機器が不要になり、さらなる省エネルギー化を実現することができ、ヒートアイランドなどの抑制にも寄与することになる。
【0008】
また、本発明による温調家具では、外部から供給される水の温度は、伝熱面を冷却する場合には20℃以上であってもよい。
このような構成により、冷房時には用いることができないような高温の冷水を用いて、人体を冷やすことができる。空気を介さないで人体を冷やすため、空調で用いる冷水よりも高い温度でも問題ないからである。
【0009】
また、本発明による温調家具では、外部から供給される水の温度は、伝熱面を加熱する場合には45℃以下であってもよい。
このような構成により、暖房時には用いることができないような低温の温水を用いて、人体を暖めることができる。空気を介さないで人体を暖めるため、空調で用いる温水よりも低い温度でも問題ないからである。
【0010】
また、本発明による温調家具では、外部から供給される水、及び熱媒体の少なくとも一方の流量を調節するための調節部をさらに備えてもよい。
このような構成により、外部から供給される水や熱媒体の流量を調節することによって、伝熱面を所望の温度に調節することができるようになる。
【0011】
また、本発明による温調家具では、伝熱面には、複数の流通管が独立して配設されており、流通管ごとに熱媒体の流量をそれぞれ調節するための複数の調節部をさらに備えてもよい。
このような構成により、家具の部分ごとに異なる温度に調節することができる。例えば、ベッドの頭の部分と足の部分とを異なる温度に調節することもできるようになる。また、例えば、長椅子において、人の座っている部分のみを所望の温度に調節することもできるようになる。
【0012】
また、本発明による温調家具では、伝熱面の表面に設けられた、蓄熱性を有するシート状部材をさらに備えてもよい。
このような構成により、シート状部材を介して伝熱面に触れている人体の箇所の快適性を向上させることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による温調家具によれば、伝熱面に触れているユーザの箇所に効率よく快適な温度を提供することができ、ユーザの快適性を保つことができると共に、省エネルギー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による温調家具の構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態における温調家具の他の一例を示す透視斜視図
【
図3】同実施の形態におけるシート状部材を有する温調家具の一例を示す斜視図
【
図4】同実施の形態における熱媒体の複数の独立した流通管を有する温調家具の構成を示す模式図
【
図5】同実施の形態における温度調節の可能な複数の箇所を有する温調家具の一例を示す斜視図
【
図6】同実施の形態における温調家具の他の一例を示す透視斜視図
【
図7】同実施の形態における温調家具の他の一例を示す透視斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による温調家具について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による温調家具は、外部から供給される水を用いて、家具の伝熱面の温度を変化させ、その伝熱面に触れる人体の箇所を冷やしたり暖めたりすることができるものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による温調家具1の構成を示す模式図である。本実施の形態による温調家具1は、家具11と、熱交換器13と、液状の熱媒体の流通管14と、ポンプ15と、バルブ16とを備える。家具11は、例えば、屋内で用いられるものであってもよく、屋外で用いられるものであってもよい。
【0017】
家具11は、伝熱面11aを有する。伝熱面11aは、熱伝導率の高い材料によって構成されることが好適である。例えば、伝熱面11aは、金属によって構成されてもよい。また、伝熱面11aは、例えば、特に熱伝導率の高い銅や銅合金、アルミニウム合金などによって構成されてもよい。
【0018】
なお、
図1では、家具11が椅子であり、その伝熱面11aが椅子の背もたれである場合について示しているが、そうでなくてもよい。家具11は、人体に接触する箇所を有するものであることが好適であり、例えば、長椅子やソファー、ベッド、机、テーブルなどであってもよい。
【0019】
伝熱面11aは、家具11における人に接する部分に設けられていることが好適である。伝熱面11aを介して、伝熱面11aに直接または間接に接している人体の部分に快適な温度を提供するためである。例えば、家具11が椅子や長椅子、ソファーである場合には、伝熱面は、座面や背もたれなどに設けられていてもよく、座面や背もたれそのものが伝熱面であってもよい。また、例えば、家具11がベッドである場合には、伝熱面は、寝台面に設けられていてもよく、寝台面そのものが伝熱面であってもよい。また、例えば、家具11が机やテーブルである場合には、伝熱面は、天板に設けられていてもよく、天板そのものが伝熱面であってもよい。1個の家具11は、1個の伝熱面を有していてもよく、または、2個以上の伝熱面を有していてもよい。
【0020】
熱交換器13には、流通管12を介して、外部から水が供給される。その外部から供給される水は、特に限定されるものではないが、未利用水であってもよく、工業用水であってもよく、雨水などの中水であってもよく、上水であってもよく、空調での温度調整に用いられた後の冷水や温水であってもよく、温調家具1のために温度調整のなされた水であってもよい。未利用水は、地下水、湧水、海水、河川水、ため池の水などのいずれかであってもよい。ビルなどにおいては、湧水を溜める湧水槽を設けているところもあるため、その湧水槽に溜められている湧水を、温調家具1で用いてもよい。また、伝熱面11aの冷却や加熱に未利用水や、空調での温度調整に用いられた後の冷水や温水を用いた場合には、温調家具1に外部から供給される水の準備に余分なエネルギーを使用しないため、省エネルギー化を図ることができる。
【0021】
熱交換器13は、流通管12を介して外部から供給される水と、流通管14を流通する液状の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器13の種類は問わない。熱交換器13は、例えば、管形式のものでもよく、板形式のものでもよく、その他の形式のものでもよい。なお、外部から供給される水が海水である場合には、熱交換器13は、例えば、樹脂製のものであってもよい。熱媒体は、例えば、水や、不凍水、オイル等であってもよい。なお、流通管12を介して外部から供給された水は、熱交換器13における熱媒体との熱交換の後に、例えば、流通管12を介して、湧水槽や海、河川等に戻されてもよく、下水道に流されてもよい。
【0022】
流通管14は、熱交換器13と伝熱面11aとの間で熱媒体を循環させるための管であり、伝熱面11aと熱媒体との間で熱交換が行われるように、少なくとも一部が伝熱面11aに配設されている。なお、上記のように、伝熱面11aは、人体に接触する面であるため、流通管14は、伝熱面11aの人体に直接または間接に接触する面の反対側に配設されていることが好適である。以下、伝熱面11aの人体に直接または間接に接触する側を表面、流通管14が配設されている側を裏面と呼ぶことがある。
【0023】
流通管14の少なくとも一部と伝熱面11aとは、直に接触していてもよく、または、他の部材(例えば、後述する金属板など)を介して接触していてもよい。なお、伝熱面11aと、流通管14を流通する液状の熱媒体との間で効率的に熱交換が行われるようになっていることが好適である。そのため、例えば、流通管14は、熱伝導率の高い材料、例えば、金属、特に銅や銅合金、アルミニウム合金等で構成されていてもよい。なお、例えば、流通管14のうち、伝熱面11aに接触する箇所は、熱伝導率の高い材料によって構成され、それ以外の箇所は、伝熱面11aに接触する箇所よりも熱伝導率の低い材料(例えば、樹脂など)によって構成されていてもよい。また、流通管14を銅板などの熱伝導率の高い金属板に固定し、その金属板を伝熱面11aに面接触するように固定してもよい。また、例えば、流通管14の伝熱面11aに直接または間接に接触する箇所は、断面がD字形状であるD型パイプであってもよい。そして、流通管14の平面状の箇所を、伝熱面11aに直接または間接に面接触させることによって、熱媒体と伝熱面11aとの間で効率的に熱交換が行われるようにしてもよい。
【0024】
流通管14には、
図1で示されるように、内部の熱媒体を送るポンプ15や、熱媒体の送出量を調節するためのバルブ16が設けられている。例えば、ポンプ15の送出量を調節することによって、熱媒体の流量を調節してもよく、バルブ16の開閉の程度を調節することによって、熱媒体の流量を調節してもよく、その両方であってもよい。したがって、ポンプ15及びバルブ16の少なくとも一方が、熱媒体の流量を調節するための調節部として機能してもよい。この調節は、例えば、手動で行われてもよく、または、自動で行われてもよい。手動の場合には、例えば、ユーザが、熱媒体の流量を手動で増やしたり、減らしたりしてもよい。自動の場合には、図示しない温度制御部が、伝熱面11aの温度が設定された温度になるように、熱媒体の流量を自動的にフィードバック制御してもよい。この場合には、伝熱面11aの温度が、温度センサによって取得され、温度制御部に入力されてもよい。
【0025】
また、外部から供給される水の流量を調節するための調節部が、流通管12に設けられていてもよい。その調節部も、例えば、ポンプであってもよく、バルブであってもよく、その両方であってもよい。また、流通管12に調節部が設けられている場合には、その調節部によって、外部から供給される水の流量を調節することにより、熱媒体の温度を調節することもできる。したがって、流通管12に調節部が設けられている場合には、流通管14には、調節部が設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。すなわち、流通管12及び流通管14の少なくとも一方に、調節部が設けられていてもよい。
【0026】
ここで、外部から供給される水の温度について説明する。夏季などにおいて、伝熱面11aを冷却する場合には、外部から供給される水の温度は、20℃以上であってもよい。空調においては、20℃以上の冷水を用いて冷房を行うことはできないが、温調家具1のように、人体に直接または間接に接して冷やす場合には、20℃以上の冷水であっても、十分効果が得られるからである。なお、伝熱面11aの冷却時に外部から供給される水の温度は、家具11の周囲の温度より5℃以上、低い温度であってもよい。例えば、家具11の周囲が32℃である場合には、外部から供給される水の温度は、27℃以下であってもよい。このように、家具11の周囲の温度に依存しうるが、伝熱面11aの冷却時に外部から供給される水の温度の下限は、例えば、20℃以上であってもよく、23℃以上であってもよく、25℃以上であってもよい。また、伝熱面11aの冷却時に外部から供給される水の温度の上限は、例えば、30℃以下であってもよく、28℃以下であってもよく、25℃以下であってもよい。
【0027】
また、冬季などにおいて、伝熱面11aを加熱する場合には、外部から供給される水の温度は、45℃以下であってもよい。空調においては、45℃以下の温水を用いて暖房を行うことはできないが、温調家具1のように、人体に直接または間接に接して暖める場合には、45℃以下の温水であっても、十分効果が得られるからである。なお、伝熱面11aの加熱時に外部から供給される水の温度は、家具11の周囲の温度より5℃以上、高い温度であってもよい。例えば、家具11の周囲が10℃である場合には、外部から供給される水の温度は、15℃以上であってもよい。このように、家具11の周囲の温度に依存しうるが、伝熱面11aの加熱時に外部から供給される水の温度の上限は、例えば、45℃以下であってもよく、40℃以下であってもよく、35℃以下であってもよく、30℃以下であってもよく、25℃以下であってもよい。また、伝熱面11aの加熱時に外部から供給される水の温度の下限は、例えば、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよく、25℃以上であってもよい。
【0028】
次に、温調家具1の使用方法について説明する。まず、図示しないポンプを作動させることによって、外部からの水が流通管12を介して熱交換器13に供給されるようにする。また、バルブ16を開けてポンプ15を作動させることにより、熱媒体が流通管14を流れるようにし、熱交換器13によって熱交換された熱媒体が伝熱面11aに供給されるようにする。
【0029】
そのようにすることで、例えば、伝熱面11aの冷却時には、外部から供給される水によって熱媒体を冷却することができ、その熱媒体と伝熱面11aとの間で熱交換が行われることによって、伝熱面11aを冷やすことができる。したがって、椅子である家具11に座っているユーザの背中を冷却することができ、例えば、夏季に家具11が屋外に置かれている場合であっても、ユーザの温度環境を快適に保つことができるようになる。
【0030】
また、例えば、伝熱面11aの加熱時には、外部から供給される水によって熱媒体を加熱することができ、その熱媒体と伝熱面11aとの間で熱交換が行われることによって、伝熱面11aを暖めることができる。したがって、椅子である家具11に座っているユーザの背中を暖めることができ、例えば、冬季に家具11が屋外に置かれている場合であっても、ユーザの温度環境を快適に保つことができるようになる。
【0031】
熱交換器13等は、家具11と別の位置に配置されていてもよく、または、家具11の裏側などに配置されていてもよい。
図2は、長椅子(ベンチ)である家具21の座面下に熱交換器13が配置されている温調家具1を示す透視斜視図である。
図2で示される家具21の伝熱面21aは、座面と背もたれとが一体になったものであり、その背面側に、熱媒体の流通管14が配設されている。なお、
図2において、外部から供給される水の流通管12や、流通管14の熱媒体の流量を調節するための調節部は省略している。このように、熱交換器13を家具21の背面に設けることによって、全体としてコンパクトな温調家具1を構成することができるようになる。
【0032】
以上のように、本実施の形態による温調家具1によれば、家具11、21の伝熱面11a、21aに触れる人間に対して、快適な温度を提供することができるようになる。その結果、例えば、家具11、21が屋外に置かれている場合であっても、ユーザの快適性を向上させることができるようになる。例えば、駅などの開放空間に長椅子である家具21が配置されている場合に、その長椅子に座っている人の温度に関する快適性を保つことができるようになる。また、空気を介さないで、伝熱面11a、21aに直接または間接に接触している人体の部分を暖めたり冷やしたりすることができるため、効率性を高めることができる。そのため、外部から供給される水を、ボイラーや冷凍機などの熱源機器を用いて生成したとしても、空調よりも効率よく人体を暖めたり冷やしたりすることができることになる。
【0033】
また、空気を介さないで、人体を暖めたり冷やしたりするため、空調で用いる冷水よりも高い温度の水や、空調で用いる温水よりも低い温度の水を用いることができる。そのため、外部から供給される水として、未利用水や、空調での温度調整に用いられた後の冷水や温水を用いることもできるようになる。例えば、長椅子である家具21が配置されている環境の温度が30℃を超えるような場合には、外部から供給される水が25℃のような高温の冷水であっても、人体を冷やすことができるため、通常であれば冷暖房に利用されないような温度の水を用いることができるようになる。外部から供給される水として、未利用水や、空調での温度調整に用いられた後の冷水や温水を用いることによって、ボイラーや冷凍機などの熱源機器が不要になり、省エネルギー化を実現することができる。その結果、ヒートアイランドなどの抑制にも寄与することになる。
【0034】
また、外部から供給される水や、熱媒体の流量を調節できることによって、伝熱面11a、21aが所望の温度となるようにすることもできる。そのため、例えば、ユーザは、快適な温度となるように、熱媒体の流量を調節することができる。
【0035】
なお、温調家具1は、伝熱面11a等を暖めるものであってもよく、伝熱面11a等を冷やすものであってもよく、または、伝熱面11a等を暖めることも冷やすこともできるものであってもよい。
【0036】
次に、本実施の形態による温調家具1の変形例について説明する。
[蓄熱性を有するシート状部材]
図3で示されるように、温調家具1は、伝熱面21aの表面に設けられたシート状部材22をさらに備えていてもよい。シート状部材22は、蓄熱性を有するものである。蓄熱性とは、例えば、高温を保つことができる保温性であってもよく、低温を保つことができる保冷性であってもよい。温調家具1が人体を暖めるために用いられる場合(例えば、伝熱面21aが加熱される場合)には、シート状部材22は、保温性を有していることが好適であり、温調家具1が人体を冷やすために用いられる場合(例えば、伝熱面21aが冷却される場合)には、シート状部材22は、保冷性を有していることが好適である。なお、シート状部材22は、例えば、蓄熱シートであってもよい。また、シート状部材22は、弾性力を有しているものであり、例えば、弾力性のないシート状部材と比較して、人体が接触することによって、人体との接触面積が増えるものであってもよい。そのように、蓄熱性のあるシート状部材22によって保温または保冷が行われることによって、シート状部材22に触れる人間に対して、快適な温度を安定して提供することができるようになる。なお、通常、蓄熱性のあるシート状部材22が、熱媒体によって温められたり、冷やされたりするには時間が掛かることになるが、シート状部材22に人体が接触する前から、熱交換器13による熱交換を行い、熱媒体と伝熱面21aとの間での熱交換によってシート状部材22を所望の温度に保つことにより、人体がシート状部材22に接触する際には、シート状部材22が所望の温度になっているようにすることができ、人体を効率的に温めたり、冷やしたりすることができるようになる。シート状部材22としては、例えば、市販のシート状の保冷剤や保温剤を用いてもよい。
【0037】
[伝熱面に独立して配設された複数の流通管]
図4で示される家具11は、背もたれである伝熱面11aと共に、座面である伝熱面11bも有しているものとする。そして、伝熱面11a、11bには、複数の流通管14a、14bがそれぞれ独立して配設されている。複数の流通管14a、14bが独立して配設されているとは、各流通管14a、14bを流れる熱媒体を独立して調節できることであってもよい。そのため、
図4で示されるように、流通管14aには、ポンプ15a及びバルブ16aが設けられており、流通管14bには、ポンプ15b及びバルブ16bが設けられていてもよい。このように、伝熱面11a、11bに複数の流通管14a、14bが独立して配設されている場合には、温調家具1は、流通管14a、14bごとに、熱媒体の流量をそれぞれ調節するための複数の調節部を備えていることが好適である。なお、
図4においては、ポンプ15a及びバルブ16aの少なくとも一方が、流通管14aの熱媒体の調節部となり、ポンプ15b及びバルブ16bの少なくとも一方が、流通管14bの熱媒体の調節部となる。また、複数の流通管14a、14bはそれぞれ、熱交換器13に接続されており、複数の流通管14a、14bを流通する熱媒体はそれぞれ、熱交換器13によって、外部から供給される水との熱交換が行われることになる。
【0038】
このようにすることで、流通管14a、14bをそれぞれ流通する熱媒体の流量を独立して調節でき、伝熱面11a、11bの温度をそれぞれ独立して調節することができるようになる。例えば、伝熱面11a、11bの冷却時には、座面である伝熱面11bの冷却の程度を弱くすると共に、背もたれである伝熱面11aの冷却の程度を強くすることもできる。
【0039】
なお、
図4では、2個の独立した伝熱面11a、11bにそれぞれ、流通管14a、14bが設けられる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図5で示されるように、1個の伝熱面21aに、熱媒体の複数の流通管がそれぞれ独立して設けられてもよい。
図5では、伝熱面21aの3個の領域21a-1、21a-2、21a-3に、熱媒体の3個の流通管(図示せず)がそれぞれ独立して設けられているものとする。また、その3個の流通管を流通する熱媒体はそれぞれ、流通管ごとに独立して設けられた調節部(図示せず)によって流量を調節できるものとする。このようにすることで、例えば、領域21a-1にのみ人が座る場合には、その領域21a-1に設けられている流通管についてのみ、熱媒体を流通させることができるようになる。したがって、人の存在する箇所についてのみ、温度調節を行うことができるようになり、省エネルギー化を図ることができる。なお、一つの伝熱面21aに、熱媒体の複数の流通管がそれぞれ独立して配設される場合には、その複数の流通管は、上記のように、伝熱面21aの異なる領域にそれぞれ配設されることが好適である。領域ごとに、熱媒体の流量を変更できることが好適だからである。
【0040】
また、上記のように、伝熱面に、熱媒体の複数の流通管がそれぞれ独立して配設されており、各流通管に調節部が設けられている場合において、各流通管の熱媒体の流量を自動的に制御するようにしてもよい。この場合には、例えば、熱媒体の独立した流通管が設けられている箇所(例えば、伝熱面11a、11bや、領域21a-1、21a-2、21a-3)ごとに、それぞれ圧力を検出する圧力センサを設けておき、その圧力センサによって人体の接触を検出した場合に、圧力センサの設けられている箇所の流通管の調節部を調節することによって、熱媒体が流通するように制御し、そうでない場合に、その圧力センサの設けられている箇所の流通管の調節部を調節することによって、熱媒体が流通しないように制御してもよい。このようにすることで、例えば、
図5の温調家具1において、領域21a-2に人が座った場合には、領域21a-2について加熱や冷却が行われ、領域21a-1、21a-3に人が座っていない場合には、領域21a-1、21a-3については、加熱や冷却が行われないようにすることができる。
【0041】
[椅子以外の家具]
温調家具1が有する家具11は、上記のように、椅子以外のものであってもよい。例えば、
図6で示されるように、家具31はベッドであってもよく、
図7で示されるように、家具41は机であってもよい。ベッドである家具31については、寝台面である伝熱面31aの裏面側に、熱媒体の流通管14が設けられていてもよい。また、机である家具41については、天板である伝熱面41aの裏面側に、熱媒体の流通管14が設けられていてもよい。また、熱交換器13も同様に、伝熱面31a、41aの裏面側に配置されていてもよい。このようにすることで、例えば、ベッドである家具31で寝ている人の体全体を暖めたり冷やしたりすることができ、また、机である家具41を使用している人の天板に載せられた腕の部分を暖めたり冷やしたりすることができるようになる。なお、
図6、
図7において、外部から供給される水の流通管12や、流通管14の熱媒体の流量を調節するための調節部は省略している。
【0042】
[熱交換器の配置]
上記のように、熱交換器13は、伝熱面の裏面側などのように、家具11、21、31、41の一部に装着されていてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、家具とは別に熱交換器13が配置されており、その熱交換器13と、家具とが、流通管14を介して繋がっていてもよい。熱交換器13と家具との距離が離れている場合には、熱交換器13と家具との間の流通管14は、適宜、断熱材等で囲まれていてもよい。また、家具とは別に、熱交換器13が配置されている場合には、1つの熱交換器13によって、複数の家具に対する熱媒体の供給が行われてもよい。
【0043】
なお、本実施の形態では、ポンプ15やバルブ16などの調節部を備えた温調家具1について説明したが、伝熱面11a等を所望の温度に調節する必要がない場合には、温調家具1は、調節部を備えていなくてもよい。その場合であっても、流通管14の熱媒体と伝熱面11a等との間での熱交換が行われることによって、伝熱面11a等を冷やしたり暖めたりすることができ、伝熱面11a等の温度を変化させることができるため、温調家具1において、広い意味での温度調節(例えば、温度の上昇や温度の下降)は行われることになる。また、熱媒体の流量の調節を行わない場合であっても、熱媒体の流通管14には、熱媒体を送るポンプ15が存在することが好適である。流量の調節を行わない場合には、ポンプ15は、一定の流量で熱媒体を送るものであってもよい。
【0044】
また、上記実施の形態において、外部から供給される水の温度と、家具11等の周囲の温度とに基づいて、外部から供給される水の流量を制御してもよい。具体的には、温調家具1は、外部から供給される水の温度と、家具11等の周囲の温度とを受け付ける受付部と、両温度の差の絶対値が小さいほど、外部から供給される水の量がより多くなるように、外部から供給される水の流量を制御する制御部とをさらに備えてもよい。両温度の差の絶対値が小さい場合には、熱媒体を冷却したり、加熱したりするのにより多くの水が外部から供給される必要があるからである。なお、外部から供給される水の温度に対して、家具11等の周囲の温度が、温度調節方向の目的側にある場合には、制御部は、外部から供給される水及び熱媒体の流量が0になるように制御してもよい。すなわち、制御部は、温調家具1による温度調節が行われないように制御してもよい。その場合には、伝熱面11a等の温度を温度調節方向の目的側に変化させることができないからである。なお、温度調節方向の目的側とは、人体を冷やすことを目的としている場合には、温度の低い側であり、人体を暖めることを目的としている場合には、温度の高い側である。具体的には、人体を冷やすことを目的としている場合に、外部から供給される水の温度よりも、家具11等の周囲の温度が低いときには、外部から供給される水の温度に対して、家具11等の周囲の温度が、温度調節方向の目的側にあることになる。家具11等の周囲の温度は、例えば、伝熱面11a等の温度であってもよく、伝熱面11a等の近傍の温度であってもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0046】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上より、本発明による温調家具によれば、温調家具に触れている人に効率よく快適な温度を提供できるという効果が得られ、椅子やベッドなどの家具等として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 温調家具
11、21、31、41 家具
11a、11b、21a、31a、41a 伝熱面
14、14a、14b 流通管
13 熱交換器
15、15a、15b ポンプ
16、16a、16b バルブ
22 シート状部材