(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】水電解システムおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/28 20060101AFI20240219BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240219BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240219BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H02J3/28
C25B9/00 A
H02J3/00 170
H02J3/38 120
H02J3/38 130
(21)【出願番号】P 2020077303
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-01-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/CO2フリーの水素社会構築を目指したP2Gシステム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391017849
【氏名又は名称】山梨県
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 竜治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】外内 裕子
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 真
(72)【発明者】
【氏名】江口 智雄
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-226238(JP,A)
【文献】特開2006-161123(JP,A)
【文献】特開2020-058168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/28
H02J 3/38
H02J 3/00
C25B 15/02
C25B 9/00
C25B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置から出力された交流の発電電力に対し、前記発電電力の変動成分に相当する変動電力を入力し、前記変動電力を直流化して出力する電力変換部を備え、
前記発電電力から前記変動電力を差し引いた電力の少なくとも一部を商用電力系統に送電する水電解システムであって、
水電解装置と、
前記水電解装置との通信および前記電力変換部の制御を行う制御部と、を備え、
前記電力変換部は、前記制御部の制御下で、直流化した前記変動電力を前記水電解装置に出力することを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電力変換部を制御する電力変換制御部と、
前記水電解装置との通信を行うとともに、前記電力変換制御部に対してフィードバック制御を行う統括制御部と、
を備え、
前記統括制御部は、前記フィードバック制御において、前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を算出し、前記送電電力の電力値を前記目標値に近づけるための制御指令値を算出して、前記制御指令値を前記電力変換制御部に送信し、
前記電力変換制御部は、前記制御指令値に基づいて、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御することを特徴とする請求項1に記載の水電解システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電力変換部に対してフィードバック制御を行う電力変換制御部と、
前記水電解装置および前記電力変換制御部との通信を行う統括制御部と、
を備え、
前記統括制御部は、前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を算出し、前記目標値を制御指令値として前記電力変換制御部に送信し、
前記電力変換制御部は、前記フィードバック制御において、前記送電電力の電力値を所定の周期で取得しつつ、前記電力値が前記制御指令値に近づくように、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御することを特徴とする請求項1に記載の水電解システム。
【請求項4】
前記目標値は、前記統括制御部による不感帯処理が行われた前記発電電力の電力値から、所定の定値を差し引いて算出されたものであり、
前記統括制御部は、前記不感帯処理として、
前記発電電力が増加傾向にあるか、または前記発電電力が減少傾向にあるかを判定し、
前記増加傾向の場合は、前記発電電力が減少したときに不感帯を適用する一方、前記減少傾向の場合は、前記発電電力が増加したときに前記不感帯を適用し、
前記不感帯を適用する場合、前記不感帯処理前の電力値が不感帯幅の範囲内では、算出する電力値を前記不感帯処理前の電力値に追従させず、直前の電力値と同じ値にし、前記不感帯幅を超えた時点で前記不感帯処理前の電力値に追従させることを特徴とする請求項2または3に記載の水電解システム。
【請求項5】
水電解装置と、前記水電解装置と通信を行う統括制御部とを含み、発電装置から出力された交流の発電電力の一部を商用電力系統に送電する水電解システムにおいて用いられる電力変換装置であって、
前記発電電力の変動成分に相当する変動電力が入力され、前記変動電力を直流化して前記水電解装置に出力することで、前記発電電力から前記変動電力を差し引いた電力の少なくとも一部を前記商用電力系統に送電する電力変換部と、
前記統括制御部で算出された前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を制御指令値として受信し、前記電力変換部に対してフィードバック制御を行う電力変換制御部と、
を備え、
前記電力変換制御部は、前記フィードバック制御において、前記送電電力の電力値を所定の周期で取得しつつ、前記電力値が前記制御指令値に近づくように、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムおよび電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽光発電装置を備え、太陽光発電装置で発電した電力の一部を商用電力系統に送電する電源システムが知られている。太陽光発電装置は、天候により発電電力が大きく変動するため、商用電力系統の電圧変動や周波数変動を引き起こすおそれがある。
【0003】
その対策として、例えば、特許文献1に記載の電源システムでは、蓄電池を併設し、蓄電池を充放電させることで、太陽光発電装置の発電電力の変動を吸収し、商用電力系統に平滑化した電力を送電している。
【0004】
ところで、蓄電池には充放電容量が有限であるため、充電または放電の一方の動作のみを長時間継続させることはできない。したがって、上記特許文献1に記載の電源システムでは、蓄電池の充放電容量を常に監視し、例えば、充電動作を一定時間行ったら、放電動作を行う等の制御が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、蓄電池を用いることなく商用電力系統への送電電力を平滑化することが可能な水電解システムおよび電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る水電解システムは、
再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置から出力された交流の発電電力に対し、前記発電電力の変動成分に相当する変動電力を入力し、前記変動電力を直流化して出力する電力変換部を備え、
前記発電電力から前記変動電力を差し引いた電力の少なくとも一部を商用電力系統に送電する水電解システムであって、
水電解装置と、
前記水電解装置との通信および前記電力変換部の制御を行う制御部と、を備え、
前記電力変換部は、前記制御部の制御下で、直流化した前記変動電力を前記水電解装置に出力することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、発電装置の変動電力を吸収するために水電解装置を用いているので、蓄電池を用いなくても、商用電力系統に送電する電力(送電電力)を平滑化することができる。
【0009】
上記水電解システムにおいて、
前記制御部は、
前記電力変換部を制御する電力変換制御部と、
前記水電解装置との通信を行うとともに、前記電力変換制御部に対してフィードバック制御を行う統括制御部と、
を備え、
前記統括制御部は、前記フィードバック制御において、前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を算出し、前記送電電力の電力値を前記目標値に近づけるための制御指令値を算出して、前記制御指令値を前記電力変換制御部に送信し、
前記電力変換制御部は、前記制御指令値に基づいて、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御するよう構成できる。
【0010】
上記水電解システムにおいて、
前記制御部は、
前記電力変換部に対してフィードバック制御を行う電力変換制御部と、
前記水電解装置および前記電力変換制御部との通信を行う統括制御部と、
を備え、
前記統括制御部は、前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を算出し、前記目標値を制御指令値として前記電力変換制御部に送信し、
前記電力変換制御部は、前記フィードバック制御において、前記送電電力の電力値を所定の周期で取得しつつ、前記電力値が前記制御指令値に近づくように、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御するよう構成できる。
【0011】
従前の蓄電池を用いた対策では、充電動作と放電動作を繰り返すことにより生じる蓄電残量を統括制御部で監視し制御することが必要であることなどから、蓄電池が処理すべき変動電力を制御指令値として電力変換部に向け提供するため、統括制御部による制御指令値の計算過程及び通信伝送による制御の遅れを回避することはできない。一方、この構成によれば、制御の遅れを回避することができ、さらに、電力変換制御部がフィードバック制御を行うので、前記のとおり統括制御部がフィードバック制御を行う場合と比較して、統括制御部にかかる負荷を軽減し、かつフィードバック制御の大幅な高速化とそれに併せて生じる変動電力の吸収能力の高速化により、送電電力の大幅な品質向上を図ることができる。
【0012】
上記水電解システムにおいて、
前記目標値は、前記統括制御部による不感帯処理が行われた前記発電電力の電力値から、所定の定値を差し引いて算出されたものであり、
前記統括制御部は、前記不感帯処理として、
前記発電電力が増加傾向にあるか、または前記発電電力が減少傾向にあるかを判定し、
前記増加傾向の場合は、前記発電電力が減少したときに不感帯を適用する一方、前記減少傾向の場合は、前記発電電力が増加したときに前記不感帯を適用し、
前記不感帯を適用する場合、前記不感帯処理前の電力値が不感帯幅の範囲内では、算出する電力値を前記不感帯処理前の電力値に追従させず、直前の電力値と同じ値にし、前記不感帯幅を超えた時点で前記不感帯処理前の電力値に追従させるよう構成できる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換装置は、
水電解装置と、前記水電解装置と通信を行う統括制御部とを含み、発電装置から出力された交流の発電電力の一部を商用電力系統に送電する水電解システムにおいて用いられる電力変換装置であって、
前記発電電力の変動成分に相当する変動電力が入力され、前記変動電力を直流化して前記水電解装置に出力することで、前記発電電力から前記変動電力を差し引いた電力の少なくとも一部を前記商用電力系統に送電する電力変換部と、
前記統括制御部で算出された前記商用電力系統に送電する送電電力の目標値を制御指令値として受信し、前記電力変換部に対してフィードバック制御を行う電力変換制御部と、
を備え、
前記電力変換制御部は、前記フィードバック制御において、前記送電電力の電力値を所定の周期で取得しつつ、前記電力値が前記制御指令値に近づくように、前記電力変換部に入力される前記変動電力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄電池を用いることなく商用電力系統に送電する送電電力を平滑化することが可能な水電解システムおよび電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水電解システムのブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る水電解システムのブロック図である。
【
図3】統括制御部のアクティブ制御を説明するための図であって、(A)は不感帯処理を示す図、(B)は変化率制限処理を示す図、(C)は送電電力の目標値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る水電解システムおよび電力変換装置の実施形態について説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る水電解システム1Aを示す。水電解システム1Aは、発電装置10に接続され、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置20Aと、水電解装置30と、統括制御部40Aとを備える。
【0018】
発電装置10は、電力ラインL1を介して商用電力系統に接続され、電力ラインL1および電力ラインL1から分岐した電力ラインL2を介して電力変換装置20Aに接続される。発電装置10から出力される発電電力は、一部が電力変換装置20Aに入力され、残りが送電電力として商用電力系統に送電される。
【0019】
電力ラインL1と電力ラインL2との分岐点X1よりも発電装置10側の電力ラインL1には、第1電流検出手段C1(本実施形態では、カレントトランス)が設けられている。分岐点X1よりも商用電力系統側の電力ラインL1には、第2電流検出手段C2(本実施形態では、カレントトランス)が設けられている。第1電流検出手段C1および第2電流検出手段C2の検出結果は、統括制御部40Aに送信される。
【0020】
なお、電流検出手段の位置はこれに限定されず、適宜変更することができる。例えば、設備形成上、第2電流検出手段C2を設置できない場合は、電力ラインL2に設置した電流検出手段により電流を検出し、第1電流検出手段C1と電力ラインL2に設置した電流検出手段により検出した検出結果を統括制御部40Aに送信してもよい。
【0021】
発電装置10は、発電部11と、発電電力変換部12と、発電電力制御部(図示略)とを備える。発電部11は、再生可能エネルギーを利用して発電し、直流の発電電力を出力する。発電部11は、本実施形態では、太陽光発電設備で構成される。発電電力変換部12は、発電電力制御部の制御下で、発電部11から出力された直流の発電電力を交流化して出力する。
【0022】
電力変換装置20Aは、電力変換部21と、電力変換制御部22Aとを備える。電力変換部21は、電力変換制御部22Aの制御下で、発電電力の変動成分に相当する変動電力が入力され、当該変動電力を直流化して水電解装置30に出力する。
【0023】
水電解装置30は、電気エネルギー(本実施形態では、電力変換部21から出力される直流の変動電力)により水を分解して水素を生成する。水電解装置30によって生成された水素は、水素貯蔵装置等の1または複数の負荷に出力される。水電解装置30には、蓄電池の充電容量に相当するものは存在しないので、電力変換部21は、直流化した変動電力を水電解装置30に供給し続けることができる。
【0024】
統括制御部40Aは、例えば、EMSコントローラで構成され、ネットワークを介して、電力変換装置20A、水電解装置30および水電解装置30に接続された負荷との通信を行う。また本実施形態では、統括制御部40Aは、電力変換装置20Aの電力変換制御部22Aに対してフィードバック制御を行う。
【0025】
統括制御部40Aのフィードバック制御について説明する。統括制御部40Aは、第1電流検出手段C1で検出された電流値および不図示の第1電圧検出手段で検出された電圧値(発電装置10の出力電圧の第1電圧値)に基づいて、発電装置10から出力される発電電力の電力値を算出し、発電電力の電力値に基づいて送電電力(平滑化された発電電力)の目標値を算出する。
【0026】
統括制御部40Aは、発電電力の電力値が所定値以上の場合に、電力変換部21に常に変動電力が入力され、かつ送電電力が平滑化されるように、送電電力(平滑化された発電電力)の目標値を算出する。例えば、統括制御部40Aは、変動電力を含む発電電力の電力値の移動平均を算出し、移動平均から所定のバイアス値を差し引いて送電電力の目標値を算出する。
【0027】
次いで、統括制御部40Aは、第2電流検出手段C2で検出された電流値および不図示の第2電圧検出手段で検出された電圧値(商用電力系統に送電される電圧の第2電圧値)に基づいて送電電力の電力値を算出しつつ、送電電力の電力値が上記目標値に近づくように、電力変換部21に入力される変動電力の制御指令値を算出する。統括制御部40Aは、算出した制御指令値を電力変換制御部22Aに送信する。第1電圧値と第2電圧値とが同じ値の場合、第2電圧検出手段は省略できる。以下では、第1電圧値=第2電圧値とし、単に電圧値と表記する。
【0028】
また、第2電流検出手段C2が設置できない場合は、電力ラインL2に設置した電流検出手段による検出結果と上記電圧値から電力変換装置20Aに流入する変動電力を算出し、第1電流検出手段C1による検出結果と上記電圧値から送電すべき送電電力を算出する。
【0029】
電力変換制御部22Aは、受信した制御指令値に基づいて、電力変換部21に入力される変動電力(換言すれば、水電解装置30が吸収すべき電力)を制御する。変動電力が制御されると、商用電力系統に送電される送電電力が変動し、第2電流検出手段C2で検出された電流値(あるいは電力ラインL2に設置した電流検出手段で検出された電流値)および上記電圧値が統括制御部40Aにフィードバックされる。統括制御部40Aは、フィードバックされた値に基づいて、上記のとおり変動電力の制御指令値を算出する。このようなフィードバック制御により、送電電力が平滑化される。
【0030】
なお、本実施形態では、統括制御部40Aは、送電電力の電力値が目標値に近づくように、電力変換部21が出力する電力の制御指令値を算出してもよい。この場合、電力変換制御部22Aは、制御指令値に基づいて電力変換部21の出力電力を制御することで、電力変換部21に入力される変動電力を間接的に制御する。
【0031】
結局、本実施形態に係る水電解システム1Aでは、発電装置10の変動電力を吸収するために水電解装置30を用いているので、蓄電池を用いる場合と比較して管理が容易になり、統括制御部40Aにかかる負荷を軽減することができる。
【0032】
[第2実施形態]
図2に、本発明の第2実施形態に係る水電解システム1Bを示す。水電解システム1Bは、発電装置10に接続され、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置20Bと、水電解装置30と、統括制御部40Bとを備える。発電装置10および水電解装置30は、第1実施形態と共通する。
【0033】
電力変換装置20Bは、電力変換部21と、電力変換制御部22Bとを備える。電力変換部21は、電力変換制御部22Bの制御下で、発電電力の変動成分に相当する変動電力が入力され、当該変動電力を直流化して水電解装置30に出力する。
【0034】
統括制御部40Bは、例えば、EMSコントローラで構成され、ネットワークを介して、電力変換装置20B、水電解装置30および水電解装置30に接続された負荷との通信を行う。
【0035】
統括制御部40Bは、第1電流検出手段C1で検出された電流値および不図示の電圧検出手段で検出された電圧値(発電装置10の出力電圧の電圧値)に基づいて、発電装置10から出力される発電電力の電力値を算出し、発電電力の電力値に基づいて送電電力の目標値を算出する。
【0036】
統括制御部40Bは、発電電力の電力値が所定値以上の場合に、電力変換部21に常に変動電力が入力され、かつ送電電力が平滑化されるように、所定の周期で送電電力の目標値を算出する。
【0037】
統括制御部40Bは、算出した送電電力の目標値を制御指令値として電力変換制御部22Bに送信する一方、電力変換制御部22Bは、受信した制御指令値に基づき、電力変換部21に対してフィードバック制御を行う。
【0038】
電力変換制御部22Bは、フィードバック制御時に、送電電力の電力値を所定の周期で取得する。具体的には、電力変換制御部22Bは、第2電流検出手段C2で検出された電流値および不図示の電圧検出手段で検出された電圧値(商用電力系統に送電される電圧の電圧値)に基づいて、所定の周期で送電電力の電力値を算出する。
【0039】
電力変換制御部22Bは、送電電力の電力値が制御指令値(送電電力の目標値)に近づくように、電力変換部21に入力される変動電力を制御する。これにより、水電解装置30で変動電力(厳密には、直流化された変動電力)が吸収され、送電電力が平滑化される。なお、電力変換制御部22Bは、電力変換部21の出力電力を制御することで、電力変換部21に入力される変動電力を間接的に制御してもよい。
【0040】
結局、本実施形態に係る水電解システム1Bでは、発電装置10の変動電力を吸収するために水電解装置30を用いているので、蓄電池を用いる場合と比較して管理が容易になり、統括制御部40Bにかかる負荷を軽減することができる。
【0041】
また、電力変換制御部22Bが送電電力の電力値を算出する周期(フィードバック制御の周期)は、統括制御部40Bが制御指令値を送信する周期に比べて、数十~数百分の1に短縮される。このため、本実施形態に係る水電解システム1Bによれば、第1実施形態よりも、フィードバック制御の高速化を図ることができる。例えば、統括制御部40Bが移動平均により被制御対象の動きを解析し、制御指令値を生成後、その値を送信し実際の制御が行われるには、0.5秒から数秒を要するが、本実施形態においては数ミリ秒から10ミリ秒にて制御を行うことができる。
【0042】
以上、本発明に係る水電解システムおよび電力変換装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
[変形例]
統括制御部40A、40Bは、発電装置10から出力される発電電力の電力値を算出し、発電電力の電力値に基づいて送電電力の目標値を算出する際に、上記電力値および目標値を逐次算出するアクティブ制御を行ってもよい。アクティブ制御時の統括制御部40A、40Bは、平滑化処理、不感帯処理、変化率制限処理を行い、処理後の電力値から定値(バイアス値)を差し引くことで、送電電力の目標値を算出する。
【0044】
平滑化処理では、統括制御部40A、40Bは、発電電力の電力値に対して移動平均等を用いて平滑化を行い、新たな電力値を算出する。平滑化処理の移動平均時間は、適宜設定・変更することができる。平滑化処理のみを行った電力値は、短周期で不安定に変動することになるので、さらに不感帯処理を行う。
【0045】
不感帯処理では、統括制御部40A、40Bは、発電電力が増加する傾向にあるか、発電電力が安定する傾向にあるか、発電電力が減少する傾向にあるかを判定する。統括制御部40A、40Bは、時間帯、日射量予測データ等の少なくとも1つの情報に基づいて上記判定を行う。例えば、統括制御部40A、40Bは、朝方の時間帯を増加傾向と判定し、昼中の時間帯を安定傾向と判定し、夕方の時間帯を減少傾向と判定することができる。
【0046】
下記の表1に示すように、増加傾向の場合、統括制御部40A、40Bは、平滑化処理後の電力値が増加したときは不感帯を適用することなく電力値を算出する一方、平滑化処理後の電力値が減少したときは不感帯を適用して新たな電力値を算出する。安定傾向の場合は、統括制御部40A、40Bは、平滑化処理後の電力値の増減にかかわらず不感帯を適用して電力値を算出する。減少傾向の場合、統括制御部40A、40Bは、平滑化処理後の電力値が増加したときは不感帯を適用して新たな電力値を算出する一方、平滑化処理後の電力値が減少したときは不感帯を適用することなく電力値を算出する。
【0047】
【0048】
不感帯を適用する場合、統括制御部40A、40Bは、平滑化処理後の電力値が不感帯幅の範囲内では、算出する電力値を平滑化処理後の電力値に追従させず、直前の電力値と同じ値にし、不感帯幅を超えた時点で平滑化処理後の電力値に追従させる。
【0049】
例えば、発電電力が増加傾向にあると判定した統括制御部40A、40Bは、
図3(A)に示すように、時刻T1において平滑化処理後の電力値が減少し始めると、不感帯幅の範囲内では算出する電力値を直前の電力値(T1の時点の電力値)と同じ値にし、不感帯幅の下限を超えたT2の時点で平滑化処理後の電力値に追従させる。T2以降、平滑化処理後の電力値が減少しても、不感帯幅の範囲内では算出する電力値を直前の電力値(T2の時点の電力値)と同じ値にする。不感帯幅は、適宜設定・変更することができる。
【0050】
統括制御部40A、40Bは、不感帯処理後の電力値に対して変化率制限処理を行う。変化率制限処理では、統括制御部40A、40Bは、
図3(B)に示すように、不感帯処理後の電力値の変化率([kW/秒])が所定の制限値を超えないように新たな電力値を算出する。制限値は、適宜設定・変更することができる。
【0051】
統括制御部40A、40Bは、
図3(C)に示すように、変化率制限処理後の電力値から定値(バイアス値)を差し引くことで、送電電力の目標値を算出する。定値は、水電解装置30の定格電力よりも小さい値(例えば、定格電力の1/2)に設定する。発電電力の変動がプラス側に大きくなれば水電解装置30の定格電力を超えない範囲で定値を大きくしてもよいし、発電電力の変動がマイナス側に大きくなれば定値を小さくしてもよい。
【0052】
なお、平滑化処理、不感帯処理、変化率制限処理を行うアクティブ制御時について説明したが、発電電力の変動の度合いに応じて、少なくとも1つの処理(例えば、不感帯処理)を行ってもよい。
【0053】
[その他の変形例]
本発明に係る水電解システムは、電力変換部と、水電解装置と、水電解装置との通信および電力変換部の制御を行う制御部とを備え、電力変換部に発電電力の変動成分に相当する変動電力が入力され、発電電力から変動電力を差し引いた電力の少なくとも一部が送電電力として商用電力系統に送電され、電力変換部で直流化された変動電力が水電解装置に入力されるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0054】
本発明に係る水電解システムにおいて、統括制御部は、送電電力(平滑化された発電電力)の用途に合わせて、変電電力を含む発電電力の移動平均を算出し、あるいは、変動電力を含む発電電力の急変に対する一次遅れ特性との差分を算出し、あるいは、変動電力を含む発電電力の変化率に閾値を設け出力変化率が閾値を超えないよう所定時間ごとに算出し、あるいは、計画目標値を設け平滑化された発電電力が計画目標値と一致するように算出し、あるいは、バーチャルパワープラントまたはデマンドレスポンス対応装置としての外部からの電力を用いて算出することで、送電電力の目標値を算出するよう構成できる。
【0055】
発電装置は、再生可能エネルギーを利用して発電し、交流の発電電力を出力するのであれば、適宜構成を変更できる。発電装置の発電部は、太陽電池以外の手段(例えば、風力発電手段)で構成できる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B 水電解システム
10 発電装置
11 発電部
12 発電電力変換部
20A、20B 電力変換装置
21 電力変換部
22A、22B 電力変換制御部
30 水電解装置
40A、40B 統括制御部