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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240219BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20240219BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G9/02 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020089048
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021182876
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】512224729
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】594156020
【氏名又は名称】エスペックミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 信也
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙治
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-099062(JP,A)
【文献】特開2012-228241(JP,A)
【文献】特開2014-103876(JP,A)
【文献】特開2003-156273(JP,A)
【文献】特開2009-039002(JP,A)
【文献】特開2000-262161(JP,A)
【文献】特開2008-011850(JP,A)
【文献】特開2018-064461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口する容器と、
前記容器内を、植物を生育させる培地を収容する培地領域と、気体が流通可能な流通空間とに仕切る仕切り部材と、
前記培地領域に収容される培地に供給するための液体を前記容器内において貯留する液体貯留部と、
前記流通空間に気流を形成する気流形成手段であって、前記気流の形成により前記液体の気化を促進させ、前記液体の気化に伴う気化冷却により前記流通空間内の気体を冷却させる気流形成手段と、
冷却された気体を、前記流通空間のうち、前記培地領域と前記容器の側壁との間に形成された側方空間を通って、前記培地領域の上方に形成された生育空間に導く冷却気体案内手段と、を含む、栽培装置。
【請求項2】
前記液体貯留部に貯留されている液体を吸収して、この液体を、前記培地領域に収容される培地に供給する液体供給部であって、前記流通空間に形成される前記気流に接触可能な液体供給部をさらに含み、
前記気流形成手段が、前記液体供給部と前記気流とを接触させて、前記液体供給部に含まれる液体の気化を促進させる手段を含む、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記液体供給部が、前記培地領域に収容される培地の側面および底面の少なくとも一方を覆う給液シートを含む、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記仕切り部材が、前記給液シートと、前記培地領域に収容される培地との双方を支持する支持部材を含み、
前記給液シートが前記支持部材によって支持されている状態で、前記給液シートが前記気流に接触可能である、請求項3に記載の栽培装置。
【請求項5】
前記仕切り部材が、前記培地領域に収容される培地に接触して、当該培地を支持する支持部材を含み、
前記培地領域に収容される培地が前記支持部材によって支持されている状態で、当該培地領域に収容される培地の側面が前記気流に接触可能であり、
前記気流形成手段が、前記培地領域に収容される培地の側面と前記気流との接触により、前記培地領域に収容される培地に含まれる液体の気化を促進させる手段を含む、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項6】
前記支持部材が、支持網を含む、請求項4または5に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記支持部材が、前記側方空間において、前記気流の流通を許容しながら、前記培地領域に収容される培地の側壁と前記容器の側壁との間の間隔を規制するスペーサ部材を含む、請求項4または5に記載の栽培装置。
【請求項8】
前記気流形成手段が、送風機を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の栽培装置。
【請求項9】
前記送風機が前記容器の側壁に配置されており、
前記気流形成手段が、前記側方空間のうち前記送風機に対向する送風口対向領域に前記送風機から吹き出された気体を、下方に向けて案内する気流下ガイドをさらに含む、請求項8に記載の栽培装置。
【請求項10】
前記気流下ガイドが、
前記側方空間において前記送風口対向領域の上方、および前記容器の前記側壁に沿う横方向の両方を閉塞し、かつ前記送風口対向領域の下側を開放する、請求項9に記載の栽培装置。
【請求項11】
前記冷却気体案内手段が、前記側方空間の上面に達した冷却気体を前記生育空間に導く上面ガイドであって、前記側方空間の上面を覆う上面ガイドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、培地方式の栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器内に収容された培地に、貯留されている養液、水等の液体を供給する培地方式の栽培装置が知られている。たとえば、下記特許文献1には、培地と、培地に供給される液体を貯留する溶液貯留部とが、容器内に備えられた栽培装置が記載されている。
また、下記特許文献2には、植物栽培用の空調システムが開示されている。この空調システムは、培地を収容する複数のケースと、空気調和装置とを有している。この空気調和装置では、加熱または冷却された空気が、ケースの内部を通って、培地の上方の生育空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-178946号公報
【文献】特開2012-228241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の夏の猛暑により、栽培装置の培地の上方の生育空間の気温が高くなるおそれがある。生育空間の気温が高くなり過ぎると、植物(野菜・果実)を良好に生育させることができない、という懸念がある。生育空間の気温を下げるため、本願発明者らは、生育空間を冷却することを検討している。また、生育空間を冷却して生育空間の気温を大きく下げることができれば、本来、春や秋に栽培されるべき植物(たとえば、いちご、トマト、ナス、ホウレンソウ、シュンギク)を、夏に育てることができる。
【0005】
生育空間の気温を下げるために、特許文献2のように、空気調和装置からの冷却された空気を生育空間に送ることも考えられる。
しかしながら、空気調和装置を栽培装置に設ける場合、栽培装置が大型化したり大きくコストアップしたりするおそれがある。
そこで、この発明の目的の一つは、大型化やコストアップを抑制しながら生育空間を冷却できる栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上面が開口する容器と、前記容器内を、植物を生育させる培地を収容する培地領域と、気体が流通可能な流通空間とに仕切る仕切り部材と、前記培地領域に収容される培地に供給するための液体を前記容器内において貯留する液体貯留部と、前記流通空間に気流を形成する気流形成手段であって、前記気流の形成により前記液体の気化を促進させ、前記液体の気化に伴う気化冷却により前記流通空間内の気体を冷却させる気流形成手段と、冷却された気体を、前記流通空間のうち、前記培地領域と前記容器の側壁との間に形成された側方空間を通って、前記培地領域の上方に形成された生育空間に導く冷却気体案内手段と、を含む、栽培装置を提供する。
【0007】
この発明の一実施形態では、前記栽培装置が、前記液体貯留部に貯留されている液体を吸収して、この液体を、前記培地領域に収容される培地に供給する液体供給部であって、前記流通空間に形成される前記気流に接触可能な液体供給部をさらに含む。そして、前記気流形成手段が、前記液体供給部と前記気流とを接触させて、前記液体供給部に含まれる液体の気化を促進させる手段を含む。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記液体供給部が、前記培地領域に収容される培地の側面および底面の少なくとも一方を覆う給液シートを含む。
この発明の一実施形態では、前記仕切り部材が、前記給液シートと、前記培地領域に収容される培地との双方を支持する支持部材を含む。そして、前記給液シートが前記支持部材によって支持されている状態で、前記給液シートが前記気流に接触可能である。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記仕切り部材が、前記培地領域に収容される培地に接触して、当該培地を支持する支持部材を含む。そして、前記培地領域に収容される培地が前記支持部材によって支持されている状態で、当該培地領域に収容される培地の側面が前記気流に接触可能である。そして、前記気流形成手段が、前記培地領域に収容される培地の側面と前記気流との接触により、前記培地領域に収容される培地に含まれる液体の気化を促進させる手段を含む。
【0010】
この発明の一実施形態のように、前記支持部材が、支持網を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態のように、前記支持部材が、前記側方空間において、前記気流の流通を許容しながら、前記培地領域に収容される培地の側壁と前記容器の側壁との間隔を規制するスペーサ部材を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態では、前記気流形成手段が、送風機を含む。そして、前記気流形成手段が、前記側方空間のうち前記送風機に対向する送風口対向領域に前記送風機から吹き出された気体を、下方に向けて案内する気流下ガイドをさらに含む。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記気流下ガイドが、前記側方空間において前記送風口対向領域の上方、および前記容器の前記側壁に沿う横方向の両方を閉塞し、かつ前記送風口対向領域の下側を開放する。
この発明の一実施形態では、前記冷却気体案内手段が、前記側方空間の上面に達した冷却気体を前記生育空間に導く上面ガイドであって、前記側方空間の上面を覆う上面ガイドを含む。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、流通空間に形成される気流によって、培地供給用の液体の気化が促進される。そして、液体の気化に伴う気化冷却により、流通空間内の気体が冷却される。冷却された気体が側方空間を通って生育空間に導かれ、生育空間が冷却される。すなわち、培地供給用の液体の気化に伴う気化冷却によって冷却された気体によって、生育空間が冷却される。生育空間の冷却のために空調設備を設ける場合と比較して、大型化やコストアップを抑制しながら生育空間を冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る栽培装置の斜視図である。
図2図1を切断面線II-IIから見た断面図である。
図3図1を切断面線III-IIIから見た断面図である。
図4】長辺側構成部材の構成を示す斜視図である。
図5】第2の上網構成部材の構成を示す斜視図である。
図6図2を切断面線VI-VIから見た断面図である。
図7図7Aは、図2を切断面線VIIA-VIIAから見た断面図であり、図7Bは、図2を切断面線VIIB-VIIBから見た断面図である。
図8】実施例および比較例における、生育空間の一日の気温の推移を説明するためのグラフである。
図9】本発明の第2の実施形態に係る栽培装置の斜視図である。
図10】上網構成部材の要部の構成を示す斜視図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る栽培装置の断面図である。
図12】本発明の第4の実施形態に係る栽培装置の平面図である。
図13】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る栽培装置1の斜視図である。図2は、図1を切断面線II-IIから見た断面図である。図3は、図1を切断面線III-IIIから見た断面図である。図1では、植物Pの図示を省略している(図6についても同じ)。
図1図3に示すように、栽培装置1は、容器2と、容器2の内部を、植物Pを生育させる培地3を収容する培地領域Rと、空気(気体)が流通可能な流通空間SPと、に仕切る仕切り部材4と、流通空間SPに気流FLを形成するための送風機(気流形成手段)5と、培地領域Rの側方に形成される側方空間SP1を流通する空気を、培地領域Rの上方に形成される生育空間SP3に導く上面ガイド(冷却気体案内手段)6とを含む。側方空間SP1および上面ガイド6によって、冷却気体案内手段が構成されている。
【0015】
図2および図3に示すように、容器2は、上面2aの中央部が開口し、平面形状が略長方形をなす有底箱状である。容器2は、合成樹脂製であるが、セラミックス製であってもよい。合成樹脂製である場合には、発泡樹脂製であってもよい。容器2は、長方形状の底壁7と、底壁7の各辺から立ち上がる4つの側壁8とを有している。個々の側壁8は、上方に向かうに従って外側に向かうテーパー状をなしている。4つの側壁8は、底壁7の2つの長辺から立ち上がる2つの側壁8Aと、底壁7の2つの短辺から立ち上がる2つの側壁8Bとを含む。
【0016】
図2および図3に示すように、容器2の底部2bには、液体9が貯留されている。すなわち、容器2の底部2bが液体貯留部として機能する。液体9は、水、養液(養分を含む水)等を含む。容器2の底壁7には、排液口(図示しない)が形成されている。排液口は、機外の排液配管に接続されている。容器2の底部2bに液体9を貯留する際には排液口に栓(図示しない)がされている。容器2の底部2bから液体9を抜く際には、排液口から栓が取り外される。容器2の底部2bに貯留されている液体9の液位は、液位計ユニット(図示しない)によって測定される。液位計ユニット(図示しない)は、容器2の底部2bから鉛直上方に立ち上がる円筒(図示しない)と、円筒の内部に収容された水位計(図示しない)とを含む。
【0017】
図2および図3に示すように、培地領域Rは、容器2の下部分(底部2b寄りの部分)に設けられた下部分R1と、下部分R1よりも上方の上部分R2とを含む。平面視において、上部分R2の面積は下部分R1よりも大きい。下部分R1の底面は、底壁7に近接しているが、上部分R2の底面は、容器2の底壁7から上方に離れている。容器2の底部2bに貯留されている液体9が、仕切り部材4(支持網11および給液シート12を含む)を通して、培地領域Rの下部分R1に供給される。これにより、下部分R1に収容されている培地3が、容器2内の液体9の液面高さ位置まで浸水する。
【0018】
培地領域Rに収容される培地3は、土壌、砂、礫(れき)、多孔質セラミック材、ロックウール、椰子殻繊維、もみ殻くん炭、ピートモス、バーミキュライト、パミスサンド、ひゅうが土、粒状フェノール樹脂、粒状ポリエステル、ウレタンフォームのうちの少なくとも一つを含む。
仕切り部材4は、培地領域Rに収容されている培地3を支持する支持網(支持部材)11と、培地領域Rに収容されている培地3に液体9を供給する給液シート(液体供給部)12と、培地3に植えられた植物の根が通過するのを阻止する防根シート13とを含む。給液シート12および防根シート13は、支持網11の内面に、支持網11側から給液シート12および防根シート13の順に積層状態で配置される。
【0019】
支持網11は、培地領域Rの下部分R1に収容されている培地3を側方から支持し、かつ培地領域Rの上部分R2に収容されている培地3を下方から支持する下網11aと、培地領域Rの上部分R2に収容されている培地3を側方から支持し、かつ側壁8との間に間隔を規制する上網11bとを含む。支持網11は、たとえば金属製(たとえば鉄製)であるが、合成樹脂製であってもよい。合成樹脂製である場合には、発泡樹脂製であってもよい。
【0020】
下網11aは、容器2の下部分において、2つの側壁8Aおよび底壁7に対向する2つの下網構成部材15を含む。
上網11bは、容器2の上部分において、側壁8Aに対向する2つの第1の上網構成部材16を含む。
上網11bは、容器2の上部分において、側壁8Bに対向する2つの第2の上網構成部材17を含む。
【0021】
この実施形態では、下網構成部材15および第1の上網構成部材16が互いに結合され、長辺側構成部材18として、一体に取り扱い可能に設けられている。
図4は、長辺側構成部材18の構成を示す斜視図である。
個々の下網構成部材15は、容器2の底部2bから上方に立ち上がる上下方向部15aと、上下方向部15aの上端から側壁8Aに向けて横方向に延びる横方向部15bとを含む。
【0022】
個々の第1の上網構成部材16は、横方向部15bの先端縁から上方に立ち上がる上下方向部16aを備えている。上下方向部16aは、側壁8Aに沿うテーパー状である。個々の第1の上網構成部材16は、さらに、側壁8Aに当接して上下方向部16aと側壁8Aとの間の間隔を規制するスペーサ部16bを備えている。スペーサ部16bは、上下方向部16aの先端縁から横方向に延びている。
【0023】
図5は、第2の上網構成部材17の構成を示す斜視図である。
個々の第2の上網構成部材17は、側壁8Aに沿って立ち上がるテーパー状の上下方向部17aを備えている。個々の第1の上網構成部材16は、さらに、側壁8Bに当接して上網11bと側壁8Bとの間の間隔を規制するスペーサ部17bを備えている。スペーサ部17bは、上下方向部17aの先端縁から横方向に延びている。
【0024】
図2および図3に示すように、長辺側構成部材18および第2の上網構成部材17が容器2内に収容されている状態で、スペーサ部16bおよびスペーサ部17bが、側壁8と当接する。これにより、上網11bと側壁8とによって、四角環状の側方空間SP1が区画されている。また、この状態で、下網11aの側面部(上下方向部15a)および下網11aの上面部(横方向部15b)と、容器2の下部に貯留されている液体9の液面と、側壁8とによって、四角環状の下方空間SP2が区画されている。側方空間SP1および下方空間SP2は、互いに連通している。側方空間SP1および下方空間SP2は、流通空間SPに含まれる。
【0025】
図2および図3に示すように、給液シート12は、たとえば親水性の高い素材(吸水性の優れる素材)をシート状にしたものである。給液シート12として、たとえば不織布が用いられる。給液シート12は、培地領域Rに収容されている培地3の側面の全域および培地3の底面の全域を覆う。給液シート12のうち下網11aに配置されている部分の一部が、容器2の底部2bに貯留されている液体9に浸漬している。
【0026】
図2および図3に示すように、防根シート13は、培地領域Rに収容されている培地3に接する。防根シート13は、培地領域Rに収容される培地3の側面の全域および培地3の底面の全域を覆う。防根シート13は、多数の微細孔を有し、透水性を有している。防根シート13として、たとえば、目の細かいメリヤス生地などが用いられる。
容器2の底部2bに貯留されている液体9は、毛細管現象により給液シート12を上方に移動し、給液シート12の全域へと広がる。この液体9は、透水性の防根シート13を透過して、培地3に供給される。
【0027】
前述のように、支持網11、給液シート12および防根シート13は、培地3が収容されている培地領域Rを区画する。一対の下網11aの側面部(上下方向部15a)および容器2の底壁7によって収容溝が構成される。収容溝の内側に配置される給液シート12および防根シート13、ならびに下網11aの側面部(上下方向部15a)によって、培地領域Rの下部分R1が区画されている。また、上網11bおよびこの上網11bの内側に配置される給液シート12および防根シート13によって、培地領域Rの上部分R2が区画されている。培地領域Rに培地3が収容された状態で、支持網11、給液シート12および防根シート13によって培地3が支持される。
【0028】
支持網11、給液シート12および防根シート13によって構成された仕切り部材4は、その内外を液体9が容易に透過可能である。そのため、容器2の底部2bに貯留されている液体9が、支持網11の下網11a、および、それに対応する給液シート12および防根シート13を通して、培地領域Rの下部分R1に容易に供給される。
図2および図3に示すように、給液シート12は、支持網11の下網11aの内側の略全域、および支持網11の上網11bの内側の略全域に配置されている。給液シート12は、支持網11に内側から接し、支持網11によって支持されている。支持網11の全域において、給液シート12は、支持網11の多数の開口14を介して、空間(側方空間SP1および下方空間SP2)に対向している。そのため、側方空間SP1および下方空間SP2を流れる気体が、支持網11の開口14を介して給液シート12の表面に接触可能である。
【0029】
図6は、図2を切断面線VI-VIから見た断面図である。
図1図2および図6を参照しながら、送風機5およびその周囲の構成について説明する。
図2の例では、送風機5は、2つ設けられている。図2の例では、送風機5は、相対向する一対の側壁8Aのそれぞれに配置されている。個々の側壁8Aには、送風口21が形成されている。個々の側壁8Aには、送風口21に対向して、送風機5が取り付けられている。送風機5は、ファン22と、ファン22を回転駆動する電動モータ23と、送風ハウジング20とを有する。ファン22は、回転軸まわりの回転により、回転軸に沿う前方に気体を送り出す。電動モータ23は、たとえば直流モータである。送風ハウジング20は、送風口21に連通する内部空間を有し、ファン22および電動モータ23を収容する。栽培装置1は、直流電源(図示しない)を備えている。この直流電源によって、電動モータ23が回転によって駆動される。
【0030】
送風口21は、支持網11の上網11b、およびその上網11bに収容されている給液シート12に横方向に対向している。送風機5は、側方空間SP1の送風口対向領域25に向けて送風口21から斜め下向きに気体を吹き出す。送風機5による気体の吹き出しにより、流通空間SPに気流FLが形成される。気流FLの形成により、液体9の気化が促進し、液体9の気化に伴う気化冷却により流通空間SP内の気体が冷却される。送風機5が、斜め下向きでなく、横向きに気体を吹き出してもよい。
【0031】
栽培装置1は、個々の送風機5に一対一に対応する気流下ガイド(気流形成手段)24をさらに含む。気流下ガイド24は、送風機5から吹き出された気体を下方に向けて案内する。気流下ガイド24は、側方空間SP1において送風口21に対向する送風口対向領域25の周囲を取り囲むコ字状である。気流下ガイド24の下側は閉塞されていない。気流下ガイド24は、側方空間SP1において送風口対向領域25の上方を閉塞する上閉塞壁26と、側方空間SP1において、送風口対向領域25の、側壁8Aに沿う横方向の両方を閉塞する一対の側方閉塞壁27とを含む。送風口対向領域25の下側は開放されている。送風口対向領域25に送風機5から吹き出された気体が、上閉塞壁26および一対の側方閉塞壁27によって下方に向けて案内される。
【0032】
図2および図3に示すように、上面ガイド6は、容器2の上面の周縁部の全域を覆う。すなわち、上面ガイド6は、側方空間SP1の上面の全域を覆う。上面ガイド6は、四角環状の平坦な板状であり、樹脂材料等を用いて形成されている。上面ガイド6は、側方空間SP1の上面に達した気体を生育空間SP3に導く。具体的には、上面ガイド6は、生育空間SP3のうち、培地3の地表面と、地表面から、数~十数cm上方との間の空間に向けて、気体を導く。上面ガイド6は、水平面に対し、内側が高くなるように傾斜していてもよい。
【0033】
図7Aは、図2を切断面線VIIA-VIIAから見た断面図である。図7Bは、図2を切断面線VIIB-VIIBから見た断面図である。
図1図2図3図6図7Aおよび図7Bを参照しながら、栽培装置1における気体(空気)の流れを説明する。
個々の送風機5において、電動モータ23が回転駆動することによりファン22が回転する。これにより、送風口対向領域25に送風機5から気体が吹き出される。送風口対向領域25に吹き出された気体は、気流下ガイド24によって下方に向けて案内され、気流下ガイド24の下端から、側方空間SP1における送風口対向領域25の外部に吹き出される。また、この気体は、下方空間SP2にも流入する。気流下ガイド24の下端から流出した気体は、側方空間SP1のうち側壁8Aに対向する空間を、上方に向けて移動したり、横方向に移動したり、下方に移動したり、と様々な方向に向けて移動する。
【0034】
側方空間SP1のうち側壁8Aに対向する空間を横方向に移動する気体は、側方空間SP1のうち側壁8Bに対向する空間に流入する。側方空間SP1のうち側壁8Aに対向する空間を下方に移動する気体は、下方空間SP2に流入する。すなわち、気流下ガイド24の下端から流出した気体は、側方空間SP1および下方空間SP2の少なくとも一方を移動する。
【0035】
送風機5による気体の送り出しに伴い、流通空間SP(側方空間SP1および下方空間SP2の少なくとも一方)に気流FLが形成される。流通空間SPが陽圧にならないように、気流FLは、最終的に容器2の上面に向かう。
気流FLは、たとえば、側方空間SP1のうち側壁8Aに対向する空間を上方に向けて流れる第1の気流FL1と、側方空間SP1を横方向に向けて流れる第2の気流FL2と、側方空間SP1のうち側壁8Bに対向する空間を上方に向けて流れる第3の気流FL3と、下方空間SP2を横方向に向けて流れる第4の気流FL4とを含む。
【0036】
前述のように、側方空間SP1および下方空間SP2を流れる気体が、支持網11の開口14を介して給液シート12の表面に接触可能である。そのため、流通空間SPに形成される第1~第4の気流FL1~FL4に含まれる気体が、支持網11の開口14を介して給液シート12の表面に接触する。これにより、給液シート12に含まれる液体9が気化される。液体9の気化に伴って、給液シート12から気化熱が奪われることにより給液シート12が冷却され(気化冷却)、それに伴って、その周囲の気体が冷却される。第1~第4の気流FL1~FL4が形成されているため、給液シート12の表面と気体との接触回数が多く、これにより、給液シート12に含まれる液体9の気化が促進される。これにより、流通空間SPを流れる気体が冷却される。また、給液シート12の気化冷却により、培地3の側面および底面が冷却される。これにより、培地領域R(とくに上部分R2)に収容されている培地3を冷却することができる。
【0037】
図2に示すように、側方空間SP1のうち側壁8Aに対向する空間を上方に向けて流れる第1の気流FL1が、冷却された気体(以下、単に「冷却気体」という場合がある。)を含むようになる。そして、側方空間SP1の上面に達した冷却気体が上面ガイド6に干渉し、上面ガイド6にガイドされて、生育空間SP3に導かれる。これにより、生育空間SP3が冷却される。
【0038】
また、図3に示すように、側方空間SP1のうち側壁8Bに対向する空間を上方に向けて流れる第3の気流FL3が、冷却気体を含むようになる。そして、側方空間SP1の上面に達した冷却気体が上面ガイド6に干渉し、上面ガイド6にガイドされて、生育空間SP3に導かれる。これにより、生育空間SP3が冷却される。すなわち、液体9の気化に伴う気化冷却によって冷却気体によって、生育空間SP3が冷却される。
【0039】
図8は、実施例および比較例における、生育空間SP3の一日の気温の推移を説明するためのグラフである。
夏の晴天日において、生育空間SP3の一日の気温を計測し、その気温の推移を図8に示した。栽培装置1を実施例とし、栽培装置1から気化冷却機能を削除した構成(側方空間SP1、送風機5、上面ガイド6等を廃止した構成)を比較例とする。実施例および比較例の気温は、培地3の地表面から2cm上方の位置における気温である。
【0040】
図8の記載から、いずれの時間帯でも、比較例と比べて実施例の気温が低いことがわかる。また、図8の記載から、とくに、日中の時間帯(9時~17時)において、冷却幅が大きい(約4~5℃)ことがわかる。
また、本願発明者らは、実施例および比較例を用いて夏にホウレンソウを栽培し、その生育状況を目視で観測した。播種後約40日経過後の時点で、比較例では、葉が少しのみしか生育していなかったのに対し、実施例では、ホウレンソウの葉が大きく成長し、生育空間SP3を覆い茂っていた。
【0041】
以上によりこの実施形態によれば、流通空間SPに形成される気流FL(第1~第4の気流FL1~FL4)によって、液体9の気化が促進される。そして、液体9の気化に伴う気化冷却により、流通空間SP内の気体が冷却される。冷却気体が側方空間SP1を通って生育空間SP3に導かれ、生育空間SP3が冷却される。液体9の気化に伴う気化冷却による冷却気体によって生育空間SP3を冷却するので、生育空間SP3の冷却のために空調設備を設ける場合と比較して栽培装置1の大型化やコストアップを抑制しながら、生育空間SP3を冷却できる。
【0042】
生育空間SP3を冷却できるので、近年の夏の猛暑においても、生育空間SP3の気温における気温上昇を抑制できる。また、生育空間SP3を冷却して生育空間SP3の気温を下げることにより、本来、春や秋に栽培されるべき植物(たとえば、いちご、トマト、ナス、ホウレンソウ、シュンギク)を夏に育てることができる。
また、流通空間SPに形成される気流FLに含まれる気体が、給液シート12と接触することにより、液体9の気化が促進される。そして、給液シート12に含まれる液体9の気化に伴う気化冷却により、流通空間SP内の気体が冷却される。給液シート12に含まれている液体9を気化させるので、液体9の気化を効率良く行うことができる。これにより、流通空間SPを効果的に冷却できる。
【0043】
また、給液シート12が、上部分R2に収容される培地3の側面および底面を覆うものであるから、給液シート12と、流通空間SPに形成される気流FLとの接触面積が大きい。そのため、給液シート12と気流FLに含まれる気体との接触回数が多く、これにより、液体9の気化量をより増大させることができる。ゆえに、流通空間SPを、より一層効果的に冷却できる。
【0044】
また、培地領域Rに収容される培地3が、支持網11および給液シート12を含む仕切り部材4によって支持される。そして、給液シート12が支持網11によって支持されている状態で、給液シート12が気流FLに接触可能である。
ところで、支持部材によって支持されている給液シート12を気流FLに含まれる気体に接触可能にするには、支持部材に開口や空隙を設ける必要がある。この実施形態では、支持部材として、開口14を有する支持網11が設けられている。しかしながら、支持網11によって培地3を支持しようとすると、培地3の一部が開口14から支持網11の外に脱落するおそれがある。
【0045】
この実施形態では、培地領域Rに収容される培地3が、支持網11だけでなく、給液シート12によっても支持される。これにより、支持網11の開口14からの培地3の脱落を防止できる。
また、側方空間SP1の送風口対向領域25に送風機5から吹き出された気体が、気流下ガイド24によって、下方に向けて案内される。側方空間SP1の送風口対向領域25に送風機5から吹き出された気体の一部が、仮に、吹き出された直後に上方に向かうとすると、側方空間SP1を含む流通空間SPにおける気体の滞留期間が短く、そのため、流通空間SPの広範囲に気流FLを行き渡らせることができない。その結果、流通空間SPにおいて液体9の気化量が低減し、流通空間SP内の気体を効果的に冷却できないおそれがある。
【0046】
この実施形態によれば、側方空間SP1の送風口対向領域25に送風機5から吹き出された気体が、気流下ガイド24によって、下方に向けて案内される。これにより、流通空間SPにおける気流FLの滞留期間を長く保つことができ、かつ流通空間SPの広範囲に気流を行き渡らせることができる。これにより、液体9の気化量を増大させることができ、ゆえに、流通空間SP内の気体を効果的に冷却できる。
【0047】
また、側方空間SP1の上面に達した冷却気体が、当該上面を覆う上面ガイド6によって生育空間SP3に導かれる。これにより、側方空間SP1を流れる冷却気体を、生育空間SP3に良好に導くことができる。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る栽培装置201の断面図である。図10は、スペーサ部材202の要部の構成を示す斜視図である。図10では、スペーサ部材202の一部のみを取り出して、部分的に示している。
【0048】
図9および図10の実施形態において、図1図8の実施形態に共通する部分には、それぞれ、図1図8の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
この実施形態に係る栽培装置201が、図1図8の実施形態に係る栽培装置1と相違する点は、上網11bに相当する上支持部材として、上網構成部材16、17に代えて、スペーサ部材202を設けた点にある。この実施形態では、支持部材211が、下網11aと、上支持部材としてのスペーサ部材202とによって構成されている。
【0049】
スペーサ部材202は、互いに連通する多数の空隙を有する。スペーサ部材202は、四角環状の側方空間SP1に収容される四角環状である。
図10に示すように、スペーサ部材202は、たとえば、多数のリング203を連結して一平面状に並べたリング部205と、個々のリング203の一部から、リング部205に対して交差(直交)する一方に突出する直線部204とを組み合わせた立体格子状である。気流下ガイド24(図6参照)は、たとえばスペーサ部材202の多数の空隙に収容され、リング203および直線部204の少なくとも一方によって保持される。
【0050】
互いに連通する多数の空隙をスペーサ部材202が有しているので、側方空間SP1を気流FL(第1~第3の気流FL1~FL3)が流通可能である。気流FLの流通が、スペーサ部材202によって阻害されることはない。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る栽培装置301の断面図である。
図11の実施形態において、図1図8の実施形態に共通する部分には、それぞれ、図1図8の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
【0051】
この実施形態に係る栽培装置301が、図1図8の実施形態に係る栽培装置1と相違する点は、給液シート12および防根シート13を廃止した点である。また、支持網として支持網11よりも目の細かな(個々の開口314の小さな)支持網311が設けられている。支持網311の開口314が、培地3が通過しない程度の細かさに設けられており、そのため、培地3の一部が開口314から支持網311の外に脱落することはない。
【0052】
この場合、培地領域Rの下部分R1に収容されている培地3が、容器2の底部2bに貯留されている液体9に浸漬されている、液体9は、下部分R1に収容されている培地3を介して、上部分R2に収容されている培地3へと広がる。そのため、上部分R2に収容されている培地3の側面、および上部分R2に収容されている培地3の底面は、液体9を含んでいる。
【0053】
この実施形態では、側方空間SP1および下方空間SP2を流れる気体が、支持網311の開口314を介して、培地領域Rに収容されている培地3の側面および下面の少なくとも一方に接触可能である。そのため、流通空間SPに形成される第1~第4の気流FL1~FL4に含まれる気体が、支持網311の開口314を介して培地3の側面および下面の少なくとも一方に接触する。これにより、培地領域Rに収容されている培地3の側面および下面に面する培地3に含まれる液体9が気化される。液体9の気化に伴って、培地3から気化熱が奪われることにより培地3の側面および底面が冷却され(気化冷却)、それに伴って、その周囲の気体が冷却される。
【0054】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る栽培装置401の平面図である。
図12の実施形態において、図1図8の実施形態に共通する部分には、それぞれ、図1図8の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
この実施形態に係る栽培装置401が、図1図8の実施形態に係る栽培装置1と相違する点は、送風機5の電動モータ23(図2等参照)の駆動源として、直流電源(図示しない。)の上面に配置される。太陽光発電ユニット402によって発生された電力が電動モータ23に与えられる。また、太陽光発電ユニット402が、発生した電力を蓄えておくための蓄電部(図示しない)をさらに含んでおり、蓄電された電力が電動モータ23に与えられてもよい。
【0055】
この実施形態によれば、太陽電池モジュール403を用いて電動モータ23が駆動される。そのため、直流電源を設けることなく、電動モータ23を良好に駆動させることが可能である。
また、直流電源を削除せずに、電動モータ23の駆動源として、直流電源と、太陽光発電ユニット402との双方を設けるようにしてもよい。この場合、搭載されている直流電源の小型化を実現することが可能である。
【0056】
また、とくに夏において、送風機5による生育空間SP3(図2等参照)の冷却が必要になる。夏の日照時間が相対的に長いため、太陽光発電ユニット402により多量の電力を発生させることができる。ゆえに、送風機5を良好に駆動させることにより、生育空間SP3を良好に冷却できる。
また、複数の太陽電池モジュール403を上面ガイド6に配置するので、上面ガイド6を有効活用でき、太陽電池モジュール403の配置スペースを他に設ける必要がない。ゆえに、栽培装置401の大型化を抑制できる。しかも、上面ガイド6のうち上面に、太陽光が主として照射される。太陽光発電ユニット402の太陽電池モジュール403をこの上面に配置するので、太陽光発電ユニット402の発電量を多く確保することが可能である。
【0057】
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の実施形態で実施することも可能である。
たとえば、図13に示すように、容器2の底部に貯留されている液体9を培地3に供給する液体供給部として、給液シート12に代えて、または給液シート12に併せて、帯状の給液帯501を設けるようしてもよい。
【0058】
給液帯501は、たとえば親水性の高い素材(吸水性の優れる素材)を帯状にしたものであり、給液帯501としてたとえば不織布が用いられる。給液帯501の下端部が、容器2の底部2bに貯留されている液体9に浸漬している。給液帯501の上端部が、培地3に接続されている。給液帯501は、側方空間SP1および下方空間SP2の少なくとも一方に配置されている。そのため、流通空間SPに形成される気流FLに含まれる気体が、給液帯501の表面に接触することにより、給液帯501に含まれる液体9が気化される。液体9の気化に伴って、給液帯501から気化熱が奪われることにより給液帯501が冷却され(気化冷却)、それに伴って、その周囲の気体が冷却される。これにより、流通空間SPを流れる気体が冷却される。
【0059】
また、たとえば第2の実施形態において、上網11bに相当する上支持部材だけでなく、下網11aに相当する下支持部材も、スペーサ部材202によって構成されていてもよい。
また、第2の実施形態において、スペーサ部材202は図10で説明したような形状に限られず、多数の空隙を有する立体格子状を広く適用できる。
【0060】
また、前述の各実施形態において、気流下ガイド24に代えて、気流ガイドを設けてもよい。この気流ガイドは、気流下ガイド24において一対の側方閉塞壁27を廃止した構成である。気流ガイドは、送風口対向領域25に送風機5から吹き出された気体を、側壁8Aに沿う横方向の両方および/または下方に向けて案内する。
また、この気流ガイドや気流下ガイド24を含め、送風口対向領域25に関連するガイドを廃止してもよい。
【0061】
また、前述の各実施形態において、容器2の上面の周縁部を覆う上面ガイド6に代えて、その他の部材を用いて、側方空間SP1の上面に達した冷却気体を生育空間SP3に導くようにしてもよい。たとえば、縦断面が半円形のドーム状のカバー(たとえば塩ビ製)によって生育空間SP3とその他の空間とを仕切ることにより、側方空間SP1の上面に達した冷却気体を生育空間SP3に導くようにしてもよい。
【0062】
また、前述の第1、第2および第4の実施形態において、防根シート13を省略するようにしてもよい。
また、前述の各実施形態において、4つの側壁8のうち互いに対向する2つの側壁8Aに送風機5を設けるものとして説明したが、4つの側壁8の全て(2つの側壁8Aおよび2つの側壁8B)に送風機5を設けてもよいし、側壁8Aではなく側壁8Bに送風機5を設けてもよい。また、1つの側壁8(8A、8B)のみに送風機5を設けてもよい。
【0063】
また、前述の各実施形態では、容器2の内部に気流FLを形成する気流形成手段として送風機5を例に挙げて説明したが、ダクトを介して容器2に気体が付与されることにより、容器2の内部に気流FLが形成されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
【符号の説明】
【0064】
1 :栽培装置
2 :容器
2b :底部(液体貯留部)
3 :培地
4 :仕切り部材
5 :送風機(気流形成手段)
6 :上面ガイド(冷却気体案内手段)
8 :側壁
11 :支持網(支持部材)
12 :給液シート(液体供給部)
24 :気流下ガイド(気流形成手段)
25 :送風口対向領域
201 :栽培装置
202 :スペーサ部材(支持部材)
301 :栽培装置
401 :栽培装置
501 :給液帯(液体供給部)
P :植物
R :培地領域
SP :流通空間
SP1 :側方空間(冷却気体案内手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13