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特許7438511レンズおよびレンズを含む超音波装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】レンズおよびレンズを含む超音波装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61N7/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546480
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 ES2019070713
(87)【国際公開番号】W WO2020084181
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P201831022
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】521171472
【氏名又は名称】ウニベルシタット・ポリテクニカ・デ・バレンシア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT POLITECNICA DE VALENCIA
(73)【特許権者】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ノエ・ヒメネス・ゴンサレス
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・カマレナ・フェメニア
(72)【発明者】
【氏名】セルヒオ・ヒメネス・ガンビン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・マリア・ベンリョチ・バビエラ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519915(JP,A)
【文献】特開昭62-277971(JP,A)
【文献】国際公開第2017/097417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア組織モデル(3)、前記バリア組織モデル(3)に囲まれた軟組織モデル(9)、および結合媒体モデル(10)を提供する工程であって、バリア組織モデル(3)が前記軟組織(9)の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを示す工程と、
前記結合媒体モデル(10)に配置されるソースポイント(6)を選択する工程と、
所定の波の周波数および波長を選択し、前記所定の周波数は100kHzから20MHzの間に含まれ、前記所定の波長は、前記結合媒体モデルにおける、前記所定の周波数および前記波の伝播速度によって決定される工程と、
前記バリア組織モデル(3)の内に位置する治療ボリューム(4)を提供する工程と、
前記治療ボリューム(4)内に分散された複数のノード(5)を提供する工程と、
前記複数のノードの各ノード(5)からの球面波(7)の放出をシミュレートし、前記球面波の重ね合わせから生じるシミュレートされた波面を作成し、各球面波(7)は振幅と位相を必要とし、振幅および/または位相が異なる少なくとも2つのノードがあり、各球面波は前記所定の周波数を有する工程と、
前記ソースポイント(6)を含む受信面(8)でシミュレートされた波面を受信して、結果を得る工程と、
前記受信面(8)で受信した結果を処理する工程と、
前記処理された結果に基づいて、ホログラフィックレンズ表面を設計し、前記ホログラフィックレンズ表面は、前記所定の波の周波数および波長で、前記ソースポイントにある平面の単一エレメントエミッタから波を受信したとき、シミュレートされた時間反転波面と同等の波パターンを生成できる工程と、
を含み、
前記受信した結果を処理する工程は、前記受信面をピクセルに分割する工程と、前記各ピクセル内で受信された波の振幅及び位相を分析する工程と、を含み、
前記ピクセルのサイズは、前記所定の波長に依拠し、
前記受信面の各ピクセルは、縦方向に共振してレンズの一片を生じさせることができるファブリペロー型共振器と見なされ、前記ホログラフィックレンズ表面を設計する工程で、前記受信面の各ピクセルで受信された前記波の前記振幅と前記位相に基づいて前記レンズの一片ごとに有効高さが選択される、超音波装置(1)用のレンズ(2)の製造方法。
【請求項2】
前記バリア組織モデル(3)は、骨組織モデル(3)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記複数のノード(5)は、前記治療ボリューム(4)内で、体積的に分散される、請求項1又2に記載の方法。
【請求項4】
各球面波の前記振幅または前記位相を自由パラメータとし、
球面波の放出をシミュレートし、前記シミュレートされた波面を受信し、事前に設定されたターゲットを超える前記治療ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせる、ファブリペロー型共振器の長さの値を反復して得るまで、結果を処理する工程を反復することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記レンズ(2)を設計する工程において、時間反転タイプの方法が使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
いずれかのノード(5)の対は、前記所定の波長であるλを用いて、λ/2より短い距離で互いに離隔される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記球面波(7)の放出をシミュレートする工程において、少なくとも2つの球面波の振幅が異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
振幅は、前記球面波を放出する前記ノードと前記受信面(8)との間の距離に依拠する各球面波に課せられる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
各球面波の振幅は自由パラメータであり、
球面波の放出をシミュレートし、前記シミュレートされた波面を受信し、事前に設定されたターゲットを超える前記治療ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせる各球面波の反復振幅値によって得られるまで結果を処理する工程の反復を含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記球面波の放出をシミュレートする工程において、少なくとも2つの前記球面波(7)の前記位相は異なり、
前記球面波を放出する前記ノード(5)と前記受信面(8)との間の距離に依拠する各球面波(7)に、位相が課される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
各球面波の前記位相は自由パラメータであり、
球面波の前記放出をシミュレートし、前記シミュレートされた波面を受け取り、事前に設定されたターゲットを超える前記治療ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせる各球面波の値を反復位相することによって得られるまで結果を処理する工程の反復を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相当する工程において得られた前記レンズ(2)の設計を3次元製造する工程をさらに含み、
前記レンズを製造する工程において、圧電材料が使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって製造されるレンズ(2)を備える装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳との相互作用または脳疾患の治療に使用される装置の技術分野、及び前記装置を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液脳関門を開放し、可逆的かつ局所的な方法で薬剤を沈着させることを可能にするため、または神経学的刺激のために、脳のある部分における頭蓋壁を介して超音波を適用することは、本質的な震えの治療のための視床の一部の切除などのいくつかの治療を行うのに有用であることが見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの技術の欠点の1つは、超音波エネルギーが蓄積される脳内の正確な位置を正確に決定しようとするときに見られる。これは、超音波が頭蓋壁に当たったときに超音波が持続する強い反射、屈折、吸収によるもので、水や軟部組織よりもはるかに高い音響インピーダンスを示すだけでなく、非常に不均一な媒体でもある。この問題は、従来、多要素超音波エミッタを使用することによって解決されてきたが、これは非常に高価で複雑な方法である。
【0004】
米国特許出願2016/038770号明細書は、単一要素トランスデューサエミッタを使用して、脳の皮質領域に近い領域に高密度焦点式超音波(HIFU)を適用するための装置および方法を開示している。
【0005】
Maimbourg, G., Houdouin, A., Deffieux, T., Tanter, M., & Aubry, J. F.著(2018年)「単一エレメントトランスデューサを使った経頭蓋超音波治療のための破壊的技術としての3D印刷されたアダプティブ音響レンズ」, Physics in Medicine & Biology, 63巻2号、025026ページは、単一エレメントエミッタによって生成される波面を構成するためのパッシブプラスチックレンズの使用を開示しており、レンズの出力部では、波面には、頭蓋壁によって導入された屈折、反射、および吸収のために修正されることが望ましい位相がすでに組み込まれている。このタイプのレンズは、脳への超音波エネルギーの導入を容易にし、頭蓋壁の異常を修正する。これは、多要素エミッタの使用に基づくシステムよりも費用効果の高いシステムだが、上記の焦点のボリュームよりも大きいボリュームを処理しようとする場合は効率的ではない。
【0006】
Ferri, M., Bravo, J. M., Redondo, J., & Sanchez-Perez, J. V.著(2018年)「単一エレメントの経頭蓋焦点式超音波の収差補正用の強化された3Dプリントによるホログラフィック音響レンズ」,arXiv preprint arXiv,1805巻、10007ページは、焦点式超音波の経頭蓋適用を改善するために3D印刷によって得られた音響レンズの使用を開示している。この研究は、頭蓋の表面によって引き起こされる吸収現象を克服するために必要な変更を提供する数値シミュレーションを改善することに焦点を当てている。しかしながら、これまでの方法に比べて大幅な改善は見られない。
【0007】
本発明は、現在の方法を最適化することを可能にし、適用範囲を拡大することさえも可能にするので、それらの方法に関して改善を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、請求項1に記載の超音波装置用レンズの製造方法及び請求項15に記載の超音波装置により解決される。従属項は、本発明の好ましい実施形態を規定する。
【0009】
このようにして、第1の発明の態様において、本発明は、超音波装置用のレンズを製造するための方法を提案し、該方法は、
骨組織モデル、骨組織モデルによって囲まれた軟組織モデル、及び結合媒体モデルを提供する工程と、
結合媒体モデル内に位置するソースポイントを選択する工程と、
100kHzと20MHzとの間である所定の周波数、および、所定の周波数と結合媒体モデルにおける波の伝播速度とによって決定される波長を選択する工程と
骨組織モデル内に配置された治療ボリュームを提供する工程と、
治療ボリューム内に分散された複数のノードを提供する工程と、
複数のノードの各ノードからの球面波の放出をシミュレートし、球面波の重ね合わせから生じるシミュレートされた波面を生成し、各球面波は振幅および位相を必要と、振幅および/又は位相が異なる少なくとも2つのノードがあり、各球面波は所定の周波数を有する工程と、
ソースポイントを含む受信面で、シミュレートされた波面を受信する工程と、
受信した結果を受信面で処理する工程と、
処理された結果に基づいて、ソースポイントに配置された平面である単一エレメントエミッタから、所定の周波数および波長を有する波を受信すると、シミュレートされ、時間反転された波面に相当する波パターンを生成することができるホログラムレンズ表面を設計する工程と、を含む。
【0010】
この方法により、単一要素超音波エミッタによって放出された波がレンズを通過するときに、ノードにおいて課せられた条件によって規定されるボリュームに対応する三次元音響ホログラムを再現し、可能な限り治療ボリュームと同一のパッシブレンズを設計することが可能である。したがって、治療される脳ボリュームの特定の領域に適合された超音波分布を達成することができる。
【0011】
複数のノードは、治療ボリューム内に配置される。治療ボリューム内に分散された複数のノードを使用することにより、例えば、脳疾患の治療において多くの用途を有する湾曲したビーム等の3次元変形を有する超音波ビームは、この方法のレンズ製品を使用することによって得ることができる。この製造方法のホログラフィックレンズ製品を使用しているため、複数の超音波処理で実行されたいくつかの処理は、単一エレメント超音波エミッタを使用して、単一超音波処理によって達成できる。プロセスと使用される材料のこの単純化により、より単純で、より効率的で、より速く、より費用効果の高い方法が得られる。
【0012】
主に治療基準に基づいて、方法を開始する前に所定の周波数が選択される。所定の周波数が設定され、ノードから生じる波をシミュレートするために使用される。周波数および軟組織モデルにおける波の速度に基づいて、軟組織モデルにおける波の伝播速度を周波数で割ることで生じる波長を計算することができる。
【0013】
異なる振幅および/または位相の波を生成するノードがあることにより、これらのパラメータを調整して、最終結果をよりシミュレートできる波面を得ることができる。
【0014】
特定の実施形態では、複数のノードは、治療ボリューム内で体積的に分散される。
【0015】
ノードがボリューム内に分布しているとき、ノードが曲面または平面に沿って配置されている場合には取得できない情報を提供できるため、ノードのボリューム分布により、十分に近似した方法ではるかに複雑な治療ボリュームを再現するレンズを取得でき、より適切に特徴付けられた治療ボリュームに至る。
【0016】
特定の実施形態では、受信した結果を処理する工程は、受信面をピクセルに分割する工程と、各ピクセルで受信した波の振幅と位相を分析する工程を含む。特定の実施形態では、ピクセルサイズは所定の波長に依存し、特に各ピクセルのサイズは、一辺の5λ/6の正方形であり、λは所定の波長である。ピクセルサイズが大きすぎると、受信したすべての情報を正しく保存でき得ないため、波の大きさの分析には適さない。逆に、ピクセルサイズが小さすぎると、各ピクセルが列に対応し、列のベースが小さい場合、超音波の動作周波数で反射モードにおいて共振が発生する可能性があるため、生産時に問題が発生する可能性がある。
【0017】
より特定の実施形態では、受信面の各ピクセルは、縦方向に共振できるファブリペロー型共振器と見なされ、レンズの一片を生じさせ、ホログラフィックレンズ表面を設計する工程において、受信面の各ピクセルで受信された波の振幅と位相に基づいて、レンズの一片ごとに有効高さが選択される。
【0018】
このモデルは十分に正確であり、レンズの表面を正確に離散化してパッシブソースとして機能する多数の小さなピクセルを提供できるため、複雑な幾何学的形状を作成できる今日のような製造技術に適している。
【0019】
この方法の特定の実施形態では、本方法の特定の実施形態であるレンズを設計する工程は、時間反転によって実行される。
【0020】
時間反転法は当業者に知られている。基本的には、システムの相反性、時不変、線形性の原理に基づくこの方法は、時間反転受信面の記録された位相特徴で波が放出されると、ノードで元の特徴を持つ波を取得できるように、受信面で受信したデータに基づいて、ノードから波を放射し、受信面で受信することで構成される。
【0021】
単一のノードがある場合に生じるように、複数のノードによって作成された波面の場合、受信面はピクセルに分割される。波面の適切な位相を達成するために、各ピクセルはファブリペロー共振器と見なされる。有効コラム高さは、複素透過係数に基づいて計算できる。
【0022】
[式1]
【0023】
この式において、dはレンズの下部から受信面までの距離であり、Zは正規化されたインピーダンスZ/Z、Zはレンズを形成する材料のインピーダンスであり、Zは水またはレンズと頭蓋骨との間の結合媒体のインピーダンスである。h(x、y)の値は、ファブリペロー共振器の有効高さである。この式と各ピクセルに関連付けられたデータに基づいて、各ピクセルの有効高さを計算できる。
【0024】
特定の実施形態では、所定の波長を有することを特徴とする任意の対のノードは、λ/2未満の距離で互いに離隔されており、λは所定の波長である。
【0025】
この分布は、データを生成することを可能にする最小数のノードを提供するために十分であり、十分に正確な治療ボリュームが得られるレンズを設計することができる。
【0026】
この方法の特定の実施形態では、球面波の放出をシミュレートする工程において、少なくとも2つの球面波の振幅が異なる。この方法の特定の実施形態では、振幅は、前記球面波を放出するノードと受信面との間の距離に依拠する各球面波に課せられる。
【0027】
波の振幅は、他の理由の中でもとりわけ、放出点に関して測定された、前記波が移動した距離のために減衰される。本発明による方法の特定の実施形態では、前記距離が異なる可能性があり、したがって、放出された球面波の振幅を各ノードからの特定の距離に調整することにより、より信頼できる結果を得ることができる。
【0028】
この方法の特定の実施形態では、各球面波の振幅は自由パラメータであり、この方法は、球面波の放出をシミュレートし、シミュレートされた波面を受信し、事前に設定されたターゲットを超える治療ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせる各球面波の反復振幅値によって得られるまで結果を処理する工程の反復を含む。
【0029】
この方法の特定の実施形態では、球面波の放出をシミュレートする工程において、少なくとも2つの球面波の位相が異なる。この方法の特定の実施形態では、位相は、前記球面波を放射するノードと受信面との間の距離に依存する各球面波に課される。
【0030】
波の位相は、放出点に関して当該波が移動した距離の影響を受ける:同じ1つの起点の場合、異なる距離にある2つの点は、距離の差が波長に等しくない限り、異なる位相の波になる。各ノードから特定の距離に放出される球面波の位相を調整することで、より信頼性の高い結果を得ることができる。
【0031】
この方法の特定の実施形態では、各球面波の位相は自由パラメータであり、この方法は、球面波の放出をシミュレートし、シミュレートされた波面を受け取り、事前に設定されたターゲットを超える治療ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせる各球面波の値を反復位相することによって得られるまで結果を処理する工程の反復を含む。
【0032】
レンズの設計を解決する別の方法は、各球面波の振幅または位相を自由パラメータとして残し、球面波の放出をシミュレートし、シミュレートされた波面を受信し、事前に設定されたターゲットを超える処理ボリューム内の音響エネルギーの分布を生じさせるファブリペロー型共振器の長さの値を反復して得るまで結果を処理する工程を反復することである。反復の各工程で小さな変更を加えることに基づいて、より正確な結果を得ることができる。
【0033】
この方法の特定の実施形態では、前記方法は、対応する工程で得られたレンズの設計を三次元的に印刷する工程をさらに含む。
【0034】
現在の三次元印刷技術は、製造された部品が超音波放射装置に組み込まれて使用されるのに十分に適した方法で応答できるように、十分に狭い公差を有するレンズの製造を可能にする。
【0035】
特定の実施形態では、圧電材料は、本発明のレンズ物体を製造するために使用される。これにより、各ピクセルへの異なる電圧の印加に敏感な形状のレンズを得ることができ、したがって、その形状は、一度構築されると、その動作中であっても、制限内で変化する可能性がある。
【0036】
第2の本発明の態様では、本発明は、先の発明の態様による方法によって製造されたレンズを含む装置を提供する。
【0037】
この装置は、超音波ビームを修正して、患者の頭蓋腔内の以前に選択されたボリュームに焦点を合わせるように設計されたレンズを提示する。これにより、これまで開示されていなかった医療用途をさらに可能にする、より単純でより費用効果の高い装置が得られた。
【0038】
この装置は、局所領域で血液脳関門を開くために、超音波ビームの典型的なボリュームと比較して大きなボリュームを有する海馬などの構造の低中出力治療に最適である可能性がある。また、神経細胞の興奮を目的とした脳の領域の治療、神経学的効果の生成、またはHIFU(高密度焦点式超音波)治療にも最適である。この装置は、超音波による膝蓋骨を介した膝の内部領域の治療など、超音波がバリアを通過してターゲットボリュームに到達する必要がある用途にも最適である。このバリアは、音響インピーダンスがターゲットボリュームの音響インピーダンスと異なる場合、骨バリアまたは他の材料媒体からなるバリアであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
説明を完了し、本発明をよりよく理解するために、本発明を説明する以下の図面が提供されるこれらの図は、詳細な説明に組み込まれた一部であり、1つ以上の特定の例を示し、本発明の保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではないが、単に本発明をどのように実施することができるかの特定の例に過ぎない。この図面は以下の図を含む。
図1図1は、本発明の装置が使用される治療方法の一部である要素を示す図である
図2図2は、本発明による方法の特定の実施形態の工程の概略を示す図である
図3図3は、本発明による方法によって設計されたレンズの一例を示す図である
図4a図4aは、本発明のエミッタ及びレンズによって生成されたビームの可能な形態を示す。
図4b図4bは、本発明のエミッタ及びレンズによって生成されたビームの可能な形態を示す。
図4c図4cは、本発明のエミッタ及びレンズによって生成されたビームの可能な形態を示す。
図5図5は、本発明による方法の特定の実施形態の実験結果を示す図である。
図6a図6aは、実験結果に関するグラフを示す図である。
図6b図6bは、実験結果に関するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明に係る装置が使用される治療方法に関する一般的なアプローチを示す図である。
【0041】
この図では、超音波エミッタ1、レンズ2、及び頭蓋骨モデル3が示されている。
【0042】
超音波エミッタ1は、頭蓋3によって囲まれた頭蓋腔内の脳腫瘤9に位置する治療領域4を標的とする超音波ビームを放出するのに適した平面または集束単一エレメントエミッタからなる。超音波エミッタ1によって放出された超音波ビームを治療領域4に適合させるために該超音波ビームを修正するレンズ2は、エミッタ1と治療領域4との間に挿入される。レンズは、水性結合媒体10の内部に配置されている。これまでに知られている装置および方法では、治療領域4は、従来の超音波ビームの焦点の典型的な形状である楕円体に縮小され、焦点を複雑な治療ボリュームに成形または適合させることができる方法または装置は知られていなかった。
【0043】
図2は、結果として生じる超音波場が、治療領域と一致するボリュームにおいて十分な強度を有するように、超音波ビームの修正を可能にするレンズを得ることを目的とする、本発明に係る方法の特定の実施形態の工程の図を示す。
【0044】
この図では、一連のノード5とソースポイント6が示される。このソースポイント6は、超音波エミッタが中央に配置され場所を示し、ノード5は治療領域と一致させることを意図したボリュームを表す点に対応する。
【0045】
この場合、治療領域は海馬であることが意図されている。しかしながら、ノード5は矢状面に位置し、λ/6の距離だけ互いに分離されており、λは所定の波長である。次に、超音波ビームを回すレンズの能力をチェックするために、ソースポイント6は頭蓋の矢状面の近くに配置されている。
【0046】
ソースポイント6と所定の周波数が選択されると、この方法の次の工程は、ノード5のそれぞれから既述の周波数で球面波7を放出することをシミュレートする工程からなり、球面波7の重ね合わせから生じるシミュレートされた波面を作成する。
【0047】
球面波の振幅は、対応するノードと受信面8との間の距離に基づいて選択され、各球面波の位相もまた、対応するノードと受信面8との間の距離に基づいて選択される。
【0048】
このシミュレートされた波面は、ソースポイント6を含む受信面8で受信される。この受信面8で受信された波面が分析され、この場合、該受信面は1mm×1mmのピクセルに分割される。受信面の各ピクセルで受信された波面のデータが収集および処理されると、前記レンズがソースポイントで中心とされた単一エレメントエミッタの前に配置されたときに対応する音響ホログラムが得られるように、ファブリペロー共振器の計算などの方法により、レンズ表面を設計することが可能であり、受信面が分割された各ピクセルに対応するレンズの各一片の有効高さが選択される。
【0049】
波の重ね合わせから生じる体積ホログラムを計算する場合、不均一なボリュームがある場合に対応するように、音響の線形化された構成方程式を数値積分するためのk空間散乱補正を使用した疑似スペクトルシミュレーション法が使用される。これを解決するために、各ノード間の空間パッセージがλ/6であるメッシュが正確に選択される。
【0050】
図3は、本発明による方法によって設計されたレンズ2の一例を示す。
【0051】
このレンズ2は、以前に定義された治療領域を中心として、所望のパターンを確立するために超音波ビームに必要な補正を行うことを担う複数の一片21を含む。これらの一片21のそれぞれは前述のモデルの列に対応し、各列の基部は1ピクセルのサイズを有し、各列の高さは前述のファブリペロー共振器に対応する。
【0052】
このようにして製造されたレンズは、超音波ホログラムを再現するために必要なすべての振幅および位相情報を保存し、超音波放射装置に組み込むことができるように、現在の3Dプリンティング技術により、非常に厳しい製造公差が要求される、このタイプのレンズの製造が可能になる。
【0053】
図4aから図4cは、本発明に係る放出およびレンズアセンブリによって生成される、3つの可能なビームの形状を示している。
【0054】
図4aは、ビームが2点に集中する第1のオプションを示しており、図4bは、ビームが曲線に沿って伸びる第2のオプションを示しており、図4cは、ビームが先に選択された明確な3次元ボリュームをカバーする第3のオプションを示している。これらの分布それぞれを達成するために、球面波の放出がシミュレートされるノードが慎重に選択される。
【0055】
図5は、本発明による方法の特定の実施形態の実験結果を示している。
【0056】
これらの結果では、エミッタが配置されているソースポイント6、レンズ2の位置、および頭蓋3によって囲まれた頭蓋腔31に配置されている治療領域4が見られる。
【0057】
示されるように、超音波エネルギーの密度は、治療領域4と実質的に一致する領域では非常に高く、頭蓋腔31の残りの部分では非常に低い。最も明るい色は超音波圧が高いことを示し、このレベルは治療領域4内でかなり高くなっている。
【0058】
図6aおよび図6bは、この事実を確認するグラフを示している。図6aは、x軸に沿った圧力波の振幅のグラフを示しており、図6bは、z軸に沿った圧力波の振幅のグラフを示している。どちらのグラフでも、コンピュータシミュレーションの結果は実線で表され、実験結果は点線で表される。実験ステップで測定された圧力が、数値シミュレーションについて前述されたものとどのようにとりわけ適合するかを観察することができる。
【0059】
両方の軸の治療領域4の寸法は、「ターゲット」ラベルの付いたセグメントによってマークされている。両方の軸x、軸zにおいて、前記領域の内側の圧力波の強度が、前記領域の外側の強度よりもはるかに高いことが示され得る。
【0060】
特定の実施形態では、圧電材料は、本発明のレンズ物体を製造するために使用される。これにより、各ピクセルへの異なる電圧の印加に敏感な形状のレンズを得ることができ、したがって、その形状は、一度構築されると、そしてその動作中にさえも、制限内で変化し得る。
図1
図2
図3
図4A-4C】
図5
図6A
図6B