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特許7438512ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶およびその組成物
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  • 特許-ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶およびその組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶およびその組成物
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20240219BHJP
   C07D 213/79 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
C07D213/79
A61K31/706
A61K31/4409
A61P43/00 105
A61K8/60
A61K8/49
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022094952
(22)【出願日】2022-06-13
(65)【公開番号】P2023001065
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】202110677784.1
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522233728
【氏名又は名称】邦泰生物工程(深▲セン▼)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522235146
【氏名又は名称】中山市邦泰合盛生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チン ミン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047715(WO,A1)
【文献】J. Chromatogr.,1988年,457,403-408
【文献】ビタミン,1990年,64,19-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C07F
C07D
A61K 31/
A61P
A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα照射、2θ角で示されるX-線粉末回折を使用し、9.6±0.2°、13.3±0.3°、22.8±0.2°および36.5±0.2°で回折ピークを有することを特徴とする、ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミド共結晶。
【請求項2】
Cu-Kα照射、2θ角度で示されるX-線粉末回折を使用し、9.6±0.2°、9.8±0.2°、10.6±0.2°、13.3±0.3°、16.3±0.2°、21.3±0.2°、22.8±0.2°、32.1±0.2°および36.5±0.2°で回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミド共結晶。
【請求項3】
前記共結晶の示差走査熱量測定分析図において、55.8±3°Cと151.9±3°Cで吸熱ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミド共結晶。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミド共結晶を含むことを特徴とする、ニコチンアミドモノヌクレオチド組成物。
【請求項5】
前記医薬品またはヘルスケア製品の有効成分は、請求項1~3のいずれか一項に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミド共結晶を含むことを特徴とする、医薬品またはヘルスケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物結晶の技術分野に関し、特にニコチンアミドモノヌクレオチドの共結晶および該共結晶を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、略してNMNという)は生体細胞内の固有な生化学物質の一種であり、細胞内にニコチンアミドヌクレオチドアデノシルトランスフェラーゼによってアデニル化されて生体細胞の生存にとって重要物質であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(略してNAD、補酵素Iともいい、すべての細胞に存在し、数千の生体触媒反応に関与し、生物学的細胞エネルギーの生成に重要な役割を果たす)に変換される。NMNは、NADの直接的な前駆体であり、生体細胞内のNADの補充合成経路の重要な中間体として、その生体細胞内のレベルはNADの濃度に直接影響する。
【0003】
研究によると、NMNを体外から補充することは細胞内のNAD濃度を上げる最も理想的な方式であることがわかっている。さらに、NMNを体外から補充すると、老化の遅延、パーキンソン病などの老年病の治療、インスリン分泌の調節、mRNA発現への影響などのような多くの医療保健の効果を取得できることもわかっており、それにますます多くのNMNの新しい医学的使用が絶えず報告されている。さらに、李嘉誠がNMN「エリクサー」に投資したというニュースが速く広まり、NMNはしばらくの間人気が高くなり、多くの投資家から支持を集め、一般の人々もNMNの医薬品またはヘルスケア製品を追求するために急いでいる。市場には、NMN医薬品またはヘルスケア製品に対する需要量は日増しに増えている。
【0004】
NMNの安定性が十分でないため、NMNアモルファス粉末を使用して製造された医薬品またはヘルスケア製品は、保管および輸送中に薬剤活性を失いやすくなり、したがって、NMNの結晶が開発され、例えば、中国の特許出願CN108697722Aで開示された無水結晶(形態1)およびジメチルスルホキシド溶媒和物結晶(形態2)というβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドの2つの結晶形態がある。現在、関連企業は結晶形態のNMNを使用して、NMN医薬品またはヘルスケア製品を製造し、製品の安定性が大幅に向上されたが、NMNの流動性が低いなどの問題があり、製品の充填量/重量に大きな違いがあり、品質が不均一である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景技術に言及された欠点に鑑みて、本発明は、従来のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の流動性が低く、NMN薬品またはヘルスケア製品の充填量/重量に大きな違いがあり、品質が不均一な技術的問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶を提供し、該共結晶に対して、Cu-Kα照射、2θ角で示されるX-線粉末回折を使用して、約9.6±0.2°、約13.3±0.3°、約22.8±0.2°および約36.5±0.2°で回折ピークを有する。
【0007】
FDAが公布した『薬物共結晶の規制上分類のためのガイドライン(2011)』の定義によると、いわゆる共結晶とは、同じ結晶格子内に2つ以上の異なる分子を含む結晶性物質を指し、共結晶成分は非イオン相互作用によって中性状態になる。共結晶成分には2つの種類があり、1つは有効成分(Active pharmaceutical Ingredient、略してAPIという)で、もう1つは共結晶形成剤(Cocrystal Former、略してCCFという)であり、この2つの共結晶成分は、水素結合、π-πスタッキング、ファンデルワールス力、またはその他の非共有結合の作用下で一定の化学量論比で結合されて、新しい固体形態を形成する。
【0008】
本発明者らは、長期にわたって多くの実験模索および創造的労働を行って、本発明によって提供される共結晶の形態で示される上記ニコチンアミドモノヌクレオチドの新しい結晶形を最終的に開発した。実験によると、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶は、ニコチンアミドモノヌクレオチド自体の薬物活性に影響を及ぼさないだけでなく、従来の結晶よりもより高いかさ密度を有し、それにより、ニコチンアミドモノヌクレオチドの流動性を著しく向上させることがわかった。
【0009】
さらに、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶に対して、Cu-Kα照射、2θ角度で示されるX-線粉末回折を使用し、約9.6±0.2°、約9.8±0.2°、約10.6±0.2°、約13.3±0.3°、約16.3±0.2°、約21.3±0.2°、約22.8±0.2°、約32.1±0.2°および約36.5±0.2°で回折ピークを有する。
【0010】
よりさらに、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶は、実質的に図1に示されるX-線粉末回折パターンを有する。
【0011】
さらに、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶の示差走査熱量測定分析図において、55.8±3°Cと151.9±3°Cで吸熱ピークを有する。
【0012】
よりさらに、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶は、実質的に図2に示される示差走査熱量測定分析図を有する。
【0013】
また、本発明は、本発明によって提供される上記ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶を含むニコチンアミドモノヌクレオチド組成物をさらに提供する。
【0014】
最後に、本発明は、医薬品またはヘルスケア製品をさらに提供し、該医薬品またはヘルスケア製品の有効成分は、本発明によって提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶を含む。該医薬品またはヘルスケア製品は錠剤またはカプセル剤であってもよく、該医薬品またはヘルスケア製品の有効成分は、本発明によって提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶、または本発明によって提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶または他の有効成分との組み合わせである。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比べると、本発明は、共結晶の形態で示されるニコチンアミドモノヌクレオチドの新しい結晶形を提供し、ニコチンアミドモノヌクレオチド共結晶のブランクを充填する。最も重要なことは、実験によると、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶は、ニコチンアミドモノヌクレオチド自体の薬物活性に影響を及ぼさないだけでなく、従来の結晶よりもより高いかさ密度を有し、ニコチンアミドモノヌクレオチドの流動性を大幅に向上させ、企業の生産におけるNMN薬品またはヘルスケア製品の充填量/重量に大きな違いがあり、品質が不均一である技術的問題を解決できることがわかることである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶のX-線粉末回折パターンである。
図2】本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶の示差走査熱量測定分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明について添付の図面および具体的な実施例を参照してさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明に対する説明であり、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
【0018】
以下の実施例で使用される原料と試薬は、特記しない限り、市場から購入されるものである。
【0019】
中国特許出願CN108697722Aの実施例1に開示される方法を参照して、ニコチンアミドモノヌクレオチド無水結晶(形態1)を調製する。
【0020】
中国特許出願CN108697722Aの実施例4に開示される方法を参照して、ニコチンアミドモノヌクレオチドジメチルスルホキシド溶媒和物結晶(形態2)を調製する。
【実施例1】
【0021】
本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶の調製
67gのβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドおよび24gのイソニコチンアミドを2Lの水に溶解し、そしてその中に2Lのアセトンを徐々に滴下し、滴下しながら攪拌し、滴下過程において溶液の温度を30℃に保ち、滴下完了した後に、溶液の温度を8℃に下げ、結晶が析出するように静置して、結晶の析出が終わった後、溶液を濾過して、本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶を得る。
【0022】
調製された上記ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶に対して、X-線粉末回折を行う。
【0023】
パナリティカルX’PertEmpyreanX-線粉末回折計(PW3040/60、PANalytical B.V(オランダ))を使用して、Cu-Kα照射を行い、そのうち、波長が1.54Åで、発散スリットが1°で、X-線管の電圧が45kVで、X線管の電流が40mAで、走査範囲が2~40°(2θ)で、ステップサイズが0.0130°で、ステップ時間が78.7950秒である。粉末サンプルを平らにしてマイクロサンプルパンに置いて検出する。本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶のX-線粉末回折パターンを図1に示し、回折角2θに対応するピークおよび強度を表1に示す。
【表1】
【0024】
調製された上記ニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶に対して、示差走査熱量曲線(DSC)を測定する。
【0025】
DSC測定は、TA Instruments Q2000内に密閉されたパン装置で行われる。サンプル(約1~3mg)をアルミニウム製のパンに秤量し、Tzeroで蓋をして、100分の1ミリグラムまで正確に記録し、サンプルを機器に移して測定する。機器を50mL/minで窒素ブローをする。10°C/minの加熱速度で室温~220°Cの間でデータを収集する。吸熱ピークを下向きにプロットし、データをTA Universal Analysisで分析する。本発明によって提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチンアミドアミド共結晶の示差走査熱量測定分析図を図2に示し、横軸に温度(Temperature、°C)を表し、縦軸に単位質量あたりの物質から放出された熱流(Heat Flow、W/g)を表す。
【実施例2】
【0026】
かさ密度の測定
それぞれ形態1の結晶、形態2の結晶および実施例1~4で調製したニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶の適量なサンプルを取って、スクリーン(1.00mm番号18)を通過して、正確に秤量し、ガラス製メスシリンダーにゆっくりと注ぎ、トップを平に擦って、見かけの体積を記録し、かさ密度を算出し、実験結果を表2に示す。
【表2】
【実施例3】
【0027】
充填量差異の測定
それぞれ形態1の結晶、形態2の結晶、および実施例1~4で調製されたニコチンアミドモノヌクレオチド-イソニコチノイド共結晶を適量取り、200メッシュのスクリーンを通過し、カプセルシェルをカプセルプレートに固定し、ボディプレートに粉末製剤を充填し、ボディプレートに粉末を注ぎ、スクレーパで往復にこすり、カプセルシェルが粉末で満たされた後、ボディプレートの余分な粉末をこすり落とし、カプセルを得る。次に、「中華人民共和国薬典」(2020年版)を参照して、0103カプセル剤通則において、カプセル剤[充填量の差異]の検査方法については、充填されたカプセルを測定し、それぞれ形態1の結晶、形態2の結晶および実施例1~4の共結晶の各グループに対応する各粒の充填量を平均充填量と比較した後の充填量の差異平均値X(%)を算出し、各充填量の差異値の絶対値を求め、各グループの平均値 ̄Xを、式 ̄X=(X+X+…X)/nで算出し、結果を表3に示す。ここで、平均値を示すバー付きXを ̄Xで表す。
【表3】
図1
図2