IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 吉谷土木株式会社の特許一覧

特許7438516作付け支援方法と圃場作業支援システム等
<>
  • 特許-作付け支援方法と圃場作業支援システム等 図1
  • 特許-作付け支援方法と圃場作業支援システム等 図2
  • 特許-作付け支援方法と圃場作業支援システム等 図3
  • 特許-作付け支援方法と圃場作業支援システム等 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】作付け支援方法と圃場作業支援システム等
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240219BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240219BHJP
【FI】
A01B69/00 B
A01B69/00 303J
G05D1/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023110992
(22)【出願日】2023-07-05
(65)【公開番号】P2024007547
(43)【公開日】2024-01-18
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2022108164
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521002202
【氏名又は名称】吉谷土木株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148851
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 徳一
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 拓真
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143520(JP,A)
【文献】特開2011-155938(JP,A)
【文献】特許第6949417(JP,B2)
【文献】特開2019-007139(JP,A)
【文献】特開2020-123013(JP,A)
【文献】特許第6947659(JP,B2)
【文献】特許第6730501(JP,B2)
【文献】特開2020-159147(JP,A)
【文献】特開2016-156193(JP,A)
【文献】特許第6785018(JP,B2)
【文献】特開平05-069832(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111859(WO,A1)
【文献】特開2020-011593(JP,A)
【文献】特許第2731663(JP,B2)
【文献】特表2010-522293(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042873(WO,A1)
【文献】特許第6220961(JP,B2)
【文献】特開2014-048859(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223500(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンが測量した圃場の地形と高低差との地図データを受信して3D表示するモニターと、
全方位カメラと、傾斜計と、振動計または/及び加速度センサと、GPSまたは/及びGISと、ソナーと、ジャイロと、臭気計と、温度計と、湿度計と、暗視カメラと、音響マイクとを少なくとも含むモニタリング計装装置を備え、前記圃場に配置される遠隔操作可能農作業機械と、
前記モニタリング計装装置から送信されるデータに基づいて、前記遠隔操作可能農作業機械の位置と向きとをリアルタイムで前記3D表示された地図データに示す前記モニター、を視認可能に配置されるとともに、前記遠隔操作可能農作業機械の振動または/及び加速度と、騒音と、傾きとをリアルタイムで反映するように、少なくとも複数のアクチュエータとスピーカとを備えるオペレータ席と、を備え、
前記遠隔操作可能農作業機械は、前記オペレータ席に着席するオペレータによって遠隔操縦されるように構成され、
前記遠隔操作可能農作業機械はさらにAIを搭載し、
前記AIは、有人オペレータ操作時の運行記録として前記モニタリング計装装置で取得されたデータを予め蓄積することでその操縦・操作を予め学習しており、学習した前記データに基づいて、前記オペレータによる遠隔操縦をアシストするのかまたは自動操縦をするのか、を判定する
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記遠隔操作可能農作業機械は、進行方向の目前に前記モニタリング計装装置により障害物または動物が検知された場合には自動停止するとともに、前記オペレータに通知する
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記遠隔操作可能農作業機械の前記オペレータによる遠隔操縦は、無線による遠隔操縦である
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記3D表示するモニターは、
360度モニターとして前記オペレータの周囲頭上に配置されるモニターであるか、または3DのVRゴーグルまたはVR眼鏡であるか、両者の組み合わせか、である
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記モニターは半球状のドーム型モニターである
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の圃場作業支援システムを用いた支援方法において、
前記オペレータ席に着席するオペレータが、前記モニターを視認しながら、かつ前記遠隔操作可能農作業機械の状態のうち、振動または/及び加速度と、騒音と、傾きとを体感しながら体感シミュレーションゲーム感覚で現実の前記遠隔操作可能農作業機械を遠隔操作する工程を有する
ことを特徴とする支援方法。
【請求項7】
圃場土壌に含まれる有害物質または栄養素またはPHまたは水分濃度または土質または在来微生物の少なくともいずれか一つの圃場データを取得してAIに蓄積し、前記AIに蓄積された圃場データに基づいて、前記AIが前記圃場土壌の改良要否を判定し、前記AIが前記圃場土壌の改良が必要と判定した場合に、土壌改良作業機を用いて前記圃場土壌の改良を行った後に作付けする通知を発出するAIを用いた土壌改良または作付けにおいて、請求項6に記載の支援方法を用いる
ことを特徴とするAI判断に基づく圃場作業方法。
【請求項8】
請求項6に記載の支援方法において、
前記オペレータが前記遠隔操作可能農作業機械を遠隔操作する工程において、前記遠隔操作可能農作業機械の周囲の安全確認のために前記ドローンによる監視を行う
ことを特徴とする支援方法。
【請求項9】
請求項1に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記オペレータによる遠隔操縦をアシストするのか自動操縦をするのかの前記判定は、少なくとも一部分が機械学習に基づくモデルを用いた判定であって、
説明変数は、全方位カメラの映像データ、傾斜計、振動計、加速度センサのデータ、GPSデータ、ソナーデータ、温度計と湿度計のデータ、音響マイクのデータの少なくとも一つ以上を含み、
目的変数は、操縦アシストの場合としてオペレータによる遠隔操縦の支援が必要かどうかを示す二値変数、自動操縦の場合として自動操縦を行うかどうかを示す二値変数の少なくとも一つ以上を含み、
前記モデルへの入力値として前方に障害物があるかどうか又は作業領域内の作物の成長状況を示す全方位カメラの映像データ、機械の傾斜角度または機械の振動の強さを示す傾斜計・振動計・加速度センサのデータ、機械の現在位置の緯度と経度または機械の進行方向を示すGPSデータ、機械の前方に障害物との距離を示すソナーデータ、環境の温湿度を示す温度計と湿度計のデータ、機械の周囲の音の種類または騒音レベルを示す音響マイクのデータ、の少なくともいずれか一つ以上を含む
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項10】
請求項1または請求項9に記載の圃場作業支援システムにおいて、
前記オペレータによる遠隔操縦をアシストするのか自動操縦をするのかの前記判定は、少なくとも一部分がルールベースに基づく判定である
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項11】
請求項10に記載の圃場作業支援システムにおいて、
ルールベース部分による判定と機械学習部分による判定とが共に”自動操縦”で一致した場合にのみ自動操縦するものとする
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【請求項12】
請求項10に記載の圃場作業支援システムにおいて、
ルールベース部分による判定と機械学習部分による判定との少なくともいずれか一方が”自動操縦”と判定した場合に自動操縦する
ことを特徴とする圃場作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作付け支援方法と圃場作業支援システムとAIを用いた水産物養殖の支援方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
農業基本法(のうぎょうきほんほう、昭和36年6月12日法律127号施行の法律は農業生産性の引き上げと農家所得の増大を謳った法であり、高度経済成長とともに広がった農工間の所得格差の是正が最大の目的であった。この法律によって農業の構造改善政策や大型農機具の投入による日本農業の近代化を進めた。結果として生産性を飛躍的に伸ばすことと農家の所得を伸ばすことには成功したが、大部分の農家が兼業化したことや、農業の近代化政策による労働力の大幅削減で農村の労働力が東京、大阪などの都市部へ流失し、農業の担い手不足問題の引き金となり、食料自給率低下の要要因を作ってしまった。現在も新規農業参入者のうち35%が離農していくという現実の中、本件特許は新たな一次産業等への就労意欲を注ぐためにVR(Virtual Reality/仮想現実)・AR(Augmented Reality/拡張現実)・MR(Mixed Reality/複合現実)などの仮想空間デジタル情報網を実際の生産施設での機械作業をと環境管理などを遠隔で行うシステムを提供する。
【0003】
下記特許文献1には、土壌のサンプルなどを採取して分析する必要がなく、土壌から送出される気体を測定することで土壌の状態を推定する土壌診断システムを提供することを目的とし、植物が育成している土壌から送出される気体の種類及び量を走査手段により土壌全体を走査しながら測定する臭気センサ21と、臭気センサ21で測定された結果から測定対象となる土壌において発生している気体の分布を作成する分布作成部33とを備え、必要に応じて連作障害の発生の有無や土壌菌の有無を推定する推定処理部36を備える発明が開示されている。さらには、「測定装置2は、例えばトラクタやドローンなどの移動体の底部に装着され、移動体の移動に応じて図4(A)の畑上を走査しながら気体を測定する。測定装置2又は移動体には位置を測定するためのGPS(図示しない)が設置されており、そのGPSの位置情報と共に検出された気体の種類及び量の情報が送信部22により演算装置3に送信される。演算装置3では、測定装置2から送信された測定結果を元に気体の分布図を作成する。」(段落[0021])と記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、作業計画と誤差が生じた場合にも、多くのドローンが長時間稼働し、効率良く作業を遂行できるシステムを提供することを目的とし、作業エリアにおいて作業を実行する複数のドローン100a、100bと、複数のドローンの位置および状態を把握し、複数のドローンの動作を決定する動作決定装置40と、が互いに接続されているドローンシステム500であって、複数のドローンは、第1作業を行う第1ドローン100aと、第2作業を行う第2ドローン100bと、を含み、動作決定装置は、第1ドローンが第1作業を完了したことを検知する作業完了検知部42と、作業完了検知部による検知に基づいて、第2作業のうち少なくとも一部を第1ドローンの次作業に決定する、再分担部44と、を備える発明が開示されている。この発明においては、複数のドローンが協調して作業ができるように、基地局を備える移動体が当該複数のドローンを搭載して現場にまで運ぶとともに、複数のドローンの動作を決定する動作決定装置40を備えるシステムとすることが説明されている。また、複数のドローンには、6軸ジャイロセンサ505や磁気センサ506,気圧センサ507,レーザーセンサ508,ソナー509等の種々のセンサ(段落[0054][0055])を備えても良いことが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、圃場間移動を効率良く行うことができる作業車両の制御システムを提供することを目的とし、作業車両(1)の制御システム(100)が、測位装置(120)により測位しながら複数の圃場(F)を自律走行する複数の作業車両(1)と、複数の作業車両(1)それぞれの自律走行を制御する情報処理装置(130)と、を備え、作業車両(1)は、圃場間を移動する第1モードと、圃場(F)の出口(Fout)において第1モードへの切り換わりを待機する第2モードとを有し、情報処理装置(130)は、第2モードである作業車両(1)が複数存在する場合、第1モードに切り換わった場合に走行予定の走行ルートの所要時間が短い作業車両(1)から順に第1モードに切り換える技術思想が開示されている。この発明によれば、自律走行や自動走行をする作業車両が説明されているものの、オペレータはその走行状態を体感ゲーム間隔で体感できるような技術思想については一切言及されていない。
【0006】
また、下記特許文献4には、作業資材の補給を容易に行うと共に、自動走行可能な機体の制御をより簡略化できる圃場作業機を提供することを目的とする発明であって、走行可能な走行車体(1)と、自車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得装置(5)とを備え、前記位置情報取得装置(5)が取得した位置情報に基づいて前記走行車体(1)を自動走行させる制御装置(3)を備えた圃場作業機において、前記走行車体(1)が走行した経路を追従すると共に、前記圃場(100)に散布対象物を散布する散布装置(X)を設け、散布装置(X)は、走行車体(1)の進行方向に対して左右幅内に散布対象物を散布する技術思想が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-193894号公報
【文献】特開2022-055370号公報
【文献】特開2022-010873号公報
【文献】特開2020-000181号公報
【文献】特開2020-143520号公報
【文献】特開2011-155938号公報
【文献】特許第6949417号公報
【文献】特開2019-7139号公報
【文献】特開2020-123013号公報
【文献】特許第6947659号公報
【文献】特許第6730501号公報
【文献】特開2020-159147号公報
【文献】特開2016-156193号公報
【文献】特許第6785018号公報
【文献】特開平5-69832号公報
【文献】国際公開第2019/111859号
【文献】特開2020-11593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一次産業の就労は肉体労働を伴うほか、知識や豊富な経験が必要とされる。また、自然相手の産業であることから気候や天候に収穫が作用されるほか、作業施設において機械などの誤操作による労働災害などがリスクとなることから、熟練していない労働者にとっての過酷な環境下に起因する担い手となる労働者が不足してしまっている。
【0009】
特許文献1では、臭気センサで測定した気体の種類と量に関するマップ(分布図)を作成する技術思想が開示されているものの、そのような臭気マップデータを如何にして現実の作業に活用するのかについての技術思想については、従来の作業領域・方法の範囲内に留まるものである。
【0010】
特許文献2では、重量のある肥料などを1機のドローンではなく複数のドローンを使用しながら散布したり、その運行・発着を管理することが開示されているところ、害虫駆除用の農薬散布などにはドローンは使えるものの、農作業機械等の遠隔操作をサポートするため、地形や高低差を測量したり、そのデータを3D図形化してデータを蓄えて将来圃場内での任意箇所での自動運転に必要なデータベースを作成すること等については何ら言及されていない。
【0011】
さらに、特許文献3,4に開示される発明では、自律走行する車両の傾きや方向転換・振動、障害物・土壌の肥沃度等について、仮に電気的なデータとして各種センサが検知してデータ取得され得るものとしても当該データをオペレータが体感できるものではない。
【0012】
本発明は上述の問題点を解することを目的とし、作業車が作業を遂行する過酷な現場環境下とは異なる空調が効いて快適なオペレータ室(操舵室)等に居ながら、作業車が現場で遭遇する環境状態のうち振動や傾き・音等についてはオペレータが体感ゲーム感覚で体感しながら、まるで現場に居るかのような感覚で、遠隔作業を遂行できる作業システムを提案することを目的とする。特に、仮想空間を活用した農業や漁業など一次産業運営システムを提案することを目的とする。
また、好ましくはAIが、オペレータによる作業機械の運転をアシストするのか自動操縦するのかについて、機械学習した結果等に基づいて、判定することでスムースな作業着手と作業遂行を行える一次産業運営システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
好ましくは労働者の身体的能力や本来時間をかけて培う経験・熟練に関係なく就労することが可能であるように、圃場土壌に含まれる有害物質または栄養素またはPHまたは水分濃度または土質または在来微生物の少なくともいずれか一つの圃場データを取得してAIに蓄積する工程と、AIに蓄積された圃場データに基づいて、AIが圃場土壌の改良要否を判定して通知する工程と、AIが前記圃場土壌の改良が必要と判定した場合に、土壌改良作業機を用いて圃場土壌の改良を行った後に作付けする工程と、を有するAIを用いた作付け支援方法等とする。また、好ましくはAIは、有人オペレータ操作時の運行記録として前記モニタリング計装装置で取得されたデータを予め蓄積することでその操縦・操作を予め学習しており、学習した前記データに基づいて、前記オペレータによる遠隔操縦をアシストするのかまたは自動操縦をするのか、を判定するものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、作業車が作業を遂行する過酷な現場環境下とは異なる空調が効いて快適なオペレータ室(操舵室)等に居ながら、作業車が現場で遭遇する環境状態のうち振動や傾き・音等についてはオペレータが体感ゲーム感覚で体感しながら、まるで現場に居るかのような感覚で、遠隔作業を遂行できる作業システムを提案できる。また、仮想空間を活用した農業や漁業など一次産業運営システムを提案できる。
また、好ましくはAIが、オペレータによる作業機械の運転をアシストするのか自動操縦するのかについて、機械学習した結果等に基づいて、判定することでスムースな作業着手と作業遂行を行える一次産業運営システムを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の圃場支援システムにおける遠隔操作可能農作業機械に対する遠隔操作の構築概念を説明する概要図である。
図2】モニターに表示される画面と圃場の状態態様の典型例について説明する図である。
図3】Pythonのscikit-learnライブラリを用いたランダムフォレストアルゴリズムを使用した水質判定の例を説明する図である。
図4】AIに適用される決定木アルゴリズムの手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、日進月歩で進化をし続けるロボット技術、ドローン技術と水や土の成分を分析する機器を一次産業生産施設で使用し、モニタリングによる管理と飼育や栽培ノウハウを有するデータベース(AI等を含む)を用いて、仮想空間デジタル情報技術を利用しゲーム感覚でロボットやドローン等を遠隔操作するシステムを構築し、身体的能力、作業経験値や熟練度に関係なく就労することが可能とする支援システムを提案する。また、オペレータ席に着座しているオペレータによる遠隔操作での管理となる事から作業従事者の労働災害のリスクも低減する。
【0017】
例えば、生産土壌に含まれる有害物質、栄養素、PH、水分濃度、土質、在来する微生物などを生産地で分析を行い、モニタリング結果を生産基本データとし蓄積しながら土壌の改良や作付けの品種の判定を行うものとできる。そして、判定結果に基づき異常であった場合土壌は補正計画を行うものとしても良い。
【0018】
また、土壌の改良のデータが蓄積した場合、AIによる対策や補正の提案を受けて、オペレータは作業にはいることができる。農作業機械や水産物生産機械(ドローンを含む)に360度カメラ、傾斜計、振動計、GPS、GIS、ソナー、臭気計や温度計、湿度計、夜間作業に適した暗視カメラなどのモニタリングに必要な計装装置を備え付け、更にドローンにて地形や高低差を測量しデータを3D(立体)化した上で農作業機械等が接地する地面を把握してからオペレータが機械操縦を行うことを可能とする。ここで、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。
【0019】
また、遠隔操作される農業用機械の状態が把握できるよう傾斜や振動が体感できるようアクチュエータ等を備えるオペレータ席にリンクされ農業機械や周辺環境に異常事態の有無が把握できるよう監視することができる。またソナーにより目視ができない箇所の障害物や動物や人を感知し、危険があれば農作業機械は自動停止を行い、オペレータに警告を通知する。
【0020】
この時、周囲の安全確認のためのドローンによる監視を行うのも良い。また、安定した作業箇所では農作業を行う機械がAIを搭載することで無人で動作するとも可能であり、この場合、有人オペレータ操作の運行記録を蓄積させてAIに操縦操作を学習させる。ドローンは農業機械と一体化された充電施設からの離発着により、長時間の運行が可能となる。更に作付けの種や苗の運搬、収穫した作物の運搬にドローンを活用し、人的労力の削減を行う事で、就労者の労力を削減する。
【0021】
通信システムについては第五世代移動式通信など高速回線を使用し、このシステムを活用し農耕地の耕し、植付けや種まき、メンテナンス、収穫や収集作業を行うことで担い手の少ない農業などの一次産業への就労の推進を図るものとする。
【0022】
上記支援システムは農業、漁業、建設業、災害復旧時の人が入れない場所への作業や競技などのエンターテインメントゲームなどに広範囲に使用することができる。例えば、水産物養殖場の水に含まれる有害物質または栄養素またはPHまたは塩分濃度または水質または在来微生物の少なくともいずれか一つの水産物養殖場データを取得してAIに蓄積する工程と、AIに蓄積された水産物養殖場データに基づいて、AIが水産物養殖場水質の改良要否を判定して通知する工程と、AIが水産物養殖場の水質改良が必要と判定した場合に、水質改良作業機を用いて水産物養殖場水質の改良を行った後に水産物の養殖を開始または再開する工程と、を有するAIを用いた水産物養殖の支援方法として展開することも可能である。ここで、水質改良作業機とは、漁船やボートに水質改良剤散布機械を搭載して実現することも可能であるし、養殖場に隣接して設置された水質改良剤散布装置とすることも可能である。水質改良剤とは、塩素を除去する活性炭であっても良いし、カルキ抜きであっても良いし、各種中和剤やゼオライト・ヤシガラ・粉末貝殻等の各種吸着剤であってもよいし、サンゴや多孔質の微生物定着を促す岩石等のバルク固体であっても良い。また、薬剤等の散布をするのみではなく、養殖場の水を吸い上げて物理ろ過や生物ろ過や各種吸着作用を施したのちに養殖場に戻すような水質浄化装置であっても良い。
【0023】
臭気の分析には、例えばガスクロマトグラフィー等の検査機を使用してソフトウェアを通して分析した結果をデータベース化してAIが判断するものとしても良い。しかし、臭気分析は公知の光による分析としてもよく、土壌成分分析は作物の連作などの再現性には重要である。
【0024】
また、農作業機械等の遠隔操作をサポートするため、地形や高低差を測量したり、そのデータを3D図形化してデータを蓄えて将来圃場内での任意箇所での自動運転に必要なデータベースを作成するものとしても良い。
【0025】
また、労働者の身体能力に拘泥されることなく、例えば車いすに乗る障害者が遠隔操縦で農作業を行うことができるものとすれば、身障者が農場を経営することが可能になることが期待でき、農作業車が無人運転の時もあるが、オペレータ席でのコックピットの中で有人遠隔操作としても良い。
【0026】
図1は、本発明の圃場支援システムにおける遠隔操作可能農作業機械1500に対する遠隔操作の構築概念を説明する概要図である。管理建屋や管理棟やオペレータ建屋の中に設けられたオペレータ室には、オペレータ席1600が設置されており、オペレータコックピットのオペレータ1700がモニター1300を見ながら、遠隔操作可能農作業機械1500を無線遠隔操縦できるように構成されている。モニター1300には、遠隔操作可能農作業機械1500が備える360度カメラの映像等が好ましくは3Dで描写されるものとできる。なお、モニター1300に替えて、またはモニター1300と共に、3DのVRゴーグルや3DのVR眼鏡を使用することもできる。
【0027】
オペレータコックピットには、予めドローン1100が測定した地形図や土壌の凹凸や遠隔操作可能農作業機械1500が備えるモニタリング計装装置1550で検知した振動や音や加速度・傾斜・臭気等の環境データに基づいて、遠隔操作可能農作業機械1500の動作状態・動作環境の少なくとも一つ以上の状態をリアルタイムでオペレータに体感的に伝えることが可能に構成されている。すなわち、オペレータ1700は、ゲーム感覚でありながらモニター1300を見ながら遠隔操作可能農作業機械1500の遠隔操作を現実に実行することができるものとする。
【0028】
オペレータコックピットの態様については、従来公知の運転シミュレータや運転シミュレータゲームに近い態様であるものの、一方でオペレータ1700の操作に基づいて、圃場等の現場では現実に遠隔操作可能農作業機械1500が操縦されて作業可能に構成されており、さらに当該現場の例えば振動や加速度がリアルにオペレータコックピットに反映されるものとなるよう、オペレータコックピットはアクチュエータ等を備えるものとする。オペレータコックピットは、体験アミューズメントパークの3D映像乗り物アトラクションや3D体験映画館における仕組み構成の一部又は全部を採用することとしても良い。
【0029】
また、図2は、モニター1300に表示される画面と圃場1000の状態の典型的態様例について説明する図である。図2に示すように、圃場1000において遠隔操作可能農作業機械1500の一例であるトラクタ1090がGPSや例えばモニタリング計装装置1550を備えて遠隔稼働される。トラクタ1090が収集した圃場データは別途の管理塔等に備えられるAI1080に無線送信してデータ蓄積されるとともに、蓄積された圃場データ1010に基づいて、土壌改良の要否や作付けに適した作物・作付けに適した時期等がAI1080で判断される。
【0030】
一方、圃場1000の上空をドローン1100が飛行して3D地形データを収集し、当該データを無線でAI1080に送信し、AI1080に3D地形データ1200が蓄積される。AI1080は、蓄積した3D地形データ1200とトラクタ1090のカメラから送られてくる映像とから、モニター1300上に、まるで仮想空間であるかのように3D映像として、トラクタ1090に現実に乗車しているかのような視野映像を作成する。オペレータ1700にはまるで仮想空間であるかのように体感される映像であるが、現実のトラクタ1090の前方にある岩や圃場1000の凹凸や状態及び周囲環境が忠実に反映された3D映像が、モニター1300に映し出されるものとする。
【0031】
作物1050は、AI1080が判断した最適作物をトラクタ1090等の農作業機で植え付けるものとしても良く、予め作付けが決まっている作物1050をAI1080の最適作付け時期の提示に基づいて作付けするものとしても良い。図2において、1300(1),1300(2)はモニター1300に表示される3D映像の一例をそれぞれ示すものである。
【0032】
モニター映像1300(1)では、圃場1000の全体状態とトラクタ1090の位置と岩の位置などその場に居合わせるかのようなリアル映像が、AI1080により作成・表示されている。また、モニター映像1300(1)では、圃場1000の全体状態のみならず背景の山々や池等も含めた広い視野角で、岩の位置と背景の位置関係も含めてトラクタ1090に乗車しているかのようなリアル映像が、AI1080により作成・表示されている。また、モニター映像としては、360度カメラ1400に対応して、図示していないが360度モニターとしてオペレータ1700の周囲頭上に配置してもよい。例えば、プラネタリウムのようにオペレータ1700の周囲・頭上に360度カメラ1400から観察できる全ての景色が3Dで表示されるようにしてもよい。オペレータ1700は、現実にはオペレータ席1600に着座しながら、あたかもトラクタ1090や遠隔操作可能農作業機械1500に乗車しているかのような視野を前後左右頭上の半球状に得られるものとなる。このようなドーム型シアターやドーム型モニターをオペレータ席1600の周囲に備えるものとしても良い。
【0033】
本発明のAIを用いた作付け支援方法は、圃場土壌に含まれる有害物質または栄養素またはPHまたは水分濃度または土質または在来微生物の少なくともいずれか一つの圃場データを取得してAIに蓄積する工程と、AIに蓄積された圃場データに基づいて、AIが圃場土壌の改良要否を判定して通知する工程と、AIが圃場土壌の改良が必要と判定した場合に、土壌改良作業機を用いて圃場土壌の改良を行った後に作付けする工程と、を有することを特徴とする。
【0034】
これにより、取得されて好ましくは蓄積圃場データにより、作付けに最適な土壌であるか否かがAIにより判定されるので極めて迅速かつ信頼性の高い作付けが可能となる。従来、作業者が土壌の状態を把握して直感も含めた判断を行っていたところ、好ましくは過去の作付け・収穫の実績データ等も含めて最も状態の良い圃場の土壌状態をAIが判断することも可能となる。AIは作付けするその年と季節の天候(気温や風の強弱・向き等を含む)や天気予報を勘案して判断することとしても良い。
【0035】
また、本発明のAIを用いた作付け支援方法は、好ましくはAIが圃場土壌の改良要否を判定する工程において、AIは圃場土壌で作付けする作物の種類を勘案して判定することを特徴とする。作付けする作物の種類や量によって、最適な土壌状態は異なるものと考えられる。このため、AIが圃場土壌の改良要否を判定する場合に、予め入力設定された作付け予定作物の種類や量を勘案して判断するものとできる。
【0036】
また、本発明のAIを用いた作付け支援方法は、好ましくはAIが圃場土壌の改良要否を判定する工程に替えて、AIは、AIに蓄積された圃場データに基づいて、圃場土壌での作付けに最適な作物の種類を決定して通知し、通知に基づいて作付けする工程を有することを特徴とする。作付けする作物が予め決まっておらず、土壌状態を見極めてから最適な作物を作付けすることを企図する場合も考えられる。このため、AIは現実の圃場土壌の状態を圃場データに基づいて把握し、その土壌状態に最適な作物の作付けを提案するものとできる。この場合に、AIはその年の気候や天気予報と共に作付け時期のデータを考慮して作付け作物を提案するものとしても良い。
【0037】
また、本発明の圃場作業支援システムは、ドローンが測量した圃場の地形と高低差との地図データを受信して3D表示するモニターと、全方位カメラと、傾斜計と、振動計または/及び加速度センサと、GPSとGISと、ソナーと、ジャイロと、臭気計と、温度計と、湿度計と、暗視カメラと、音響マイクとを少なくとも含むモニタリング計装装置を備え、圃場に配置される遠隔操作可能農作業機械と、モニタリング計装装置から送信されるデータに基づいて、遠隔操作可能農作業機械の位置と向きとをリアルタイムで3D表示された地図データに示すモニター、を視認可能に配置されるとともに、遠隔操作可能農作業機械の振動または/及び加速度と、騒音と、傾きとをリアルタイムで反映するように、少なくとも複数のアクチュエータとスピーカとを備えるオペレータ席と、を備え、遠隔操作可能農作業機械は、オペレータ席に着席するオペレータによって遠隔操縦されるように構成されることを特徴とする。
【0038】
オペレータ席は、遠隔操作可能農作業機械から離間した管理建屋等のオペレータ室に設けるものとできるので、遠隔操作可能農作業機械の作業現場の土埃や危険から回避しながら、リアルに限りなく近い体感遠隔操縦を実行することが可能となる。良く知られている体感ゲームや体感シミュレーション等においては、オペレータが画面(3D含む)を見ながら現実に操作しているかのような振動や音や加速度等をオペレータ席で体感できるように構成されているが、オペレータとしてはそのような操縦状態でありながら当該操縦によって現実のリアルの遠隔操作可能農作業機械が現実の圃場において遠隔操縦されることとなる。例えば、従来 農作業等が困難であって身体障害者等であってもオペレータ席に着席さえできればゲーム感覚で遠隔操縦することも可能となり、バリアフリーな作業環境を実現することも可能である。
【0039】
また、本発明の支援方法は、圃場作業支援システムを用いた支援方法において、オペレータ席に着席するオペレータが、モニターを視認しながら、かつ遠隔操作可能農作業機械の状態のうち、振動または/及び加速度と、騒音と、傾きとを体感しながら体感シミュレーションゲーム感覚で現実の遠隔操作可能農作業機械を遠隔操作する工程を有することを特徴とする。
【0040】
また、本発明のAI判断に基づく圃場作業方法は、上述したいずれかに記載の作付け支援方法による土壌改良または作付けにおいて、上述のオペレータがモニターを視認しながら体感する体感シミュレーションゲーム感覚での遠隔操作の支援方法を用いることを特徴とする。これにより、圃場現場に居合わせることなく、遠隔で操作・操縦をするものとしながら、現場の遠隔操作可能農作業機械に乗車等してその場操縦しているようにアクチュエータ等で作成された環境下で遠隔操縦を遂行できるものとなる。AI(人工知能)は他のデータべースや制御部や通信部・モニター表示部等とともに管理塔やオペレータ室等が設置される建屋に設けるものとしても良い。
【0041】
一般に圃場現場においては、例えば予期せぬ毒蛇や害獣・害虫(蚊やアブやカメムシ等々)に出くわしたり、予期せぬ雷雨が発生したり、遠隔操作可能農作業機械の不具合や操縦ミス等による暴走や転倒が生じるリスクと常に隣り合わせである。さらには、真夏の炎天下での作業や真冬の氷点下での風雪内での作業など極めて過酷な環境下となる場合も少なくない。人にとって不可欠な飲料水の補給をしようにも、近くに飲料用水場が存在しないケースもあり、飲料水や食事や簡易トイレ等を別途持参したり麦わら防止を被ったり防寒着を着込んだりといった対応も必要となる。
【0042】
このように圃場や農場・田畑や牧場等々の屋外は、ビルや建屋内のような人に快適かつ優しく必要な設備が安定的に整っている人工的な環境とは異なり、時には極めて厳しい環境条件を突きつけられることもある。そして、そのような過酷な現場で一定程度の時間だけ作業継続が可能な人も、健康である等の人に限られてしまうことも考えられる。管理建屋等のオペレータ室に設けられたオペレータ席にオペレータが着席するだけで、目前の3Dモニターを視認しながら、かつ遠隔操作可能農作業機械の状態のうち、振動または/及び加速度と、騒音と、傾きとを体感しながら体感シミュレーションゲーム感覚で現実の遠隔操作可能農作業機械を遠隔操作することができるので、上記した過酷な外部自然環境から解き放たれてオペレータとして遠隔操縦できる人の幅が広がるバリアフリーにも繋がるものとする。オペレータが体感する振動等の強度は、アクチュエータ等の動作強弱レベルを設定変更することで任意に調整可能とすることが好ましい。これにより、遠隔操作可能農作業機械に現実に乗車等しなくても、乗車等しているかのような体感で、かつオペレータに危害が加わらない程度の調整された体感で、ゲーム感覚で遠隔操縦を可能にする。オペレータの熱中症や低体温症なども防ぐことができる。
【0043】
また、本発明の圃場作業支援システムは好ましくは、上述した圃場作業支援システムにおいて、遠隔操作可能農作業機械は、進行方向の目前にモニタリング計装装置により障害物または動物が検知された場合には自動停止するとともに、オペレータに通知することを特徴とする。これにより、オペレータ席のオペレータが気付かないような障害物であってもこれと衝突して遠隔操作可能農作業機械が破損することや事故の発生を自動的に抑止できる。障害物は木や岩などの自然物であっても良く、コンクリート塊や廃タイヤ・鉄筋等の人工物であってもよく、人や動物等の生物であっても良い。
【0044】
また、本発明の運搬方法は、上述のいずれかに記載の作付け支援方法を用いて作付けした後収穫された作物の運搬方法において、ドローンを用いて作物を運搬することを特徴とする。これにより、運搬スピードが上がって運搬効率が増大するとともに、より新鮮な作物を痛めることなく目的地まで届けることが可能となる。路面を走行する運搬車等を利用した運搬に比較すると、ドローンで空中を運搬すれば、畝や石や路面凹凸など路面状態の影響を受けないので振動や衝撃が比較的少なく、果物や野菜等の作物を痛める懸念が少ない。ドローンには小型カメラを実装することも好ましい。さらに、圃場の近隣に駐車した農業機械と一体化された充電施設により充電することも可能であるため、充電の為の行程も最小限とすることができる。ドローンを利用した収穫のみではなく、資材や薬剤の補充についてもドローンの有人遠隔操作で行うこととしても良い。
【0045】
また、本発明の運搬方法は、上述した運搬方法において、ドローンは充電設備を備える農作業機械から離発着することを特徴とする。これにより、圃場近隣にまで自走した農作業機械において充電できるとともに、ドローンへの積込みまでの移動距離を最短にして短時間で積見込み開始することが可能となる。この農作業機械は遠隔操作可能農作業機械として、オペレータ席のオペレータがドローンと共に遠隔操作できるように構成することも好ましい。
【0046】
また、本発明の圃場作業支援システムは、上述の圃場作業支援システムにおいて、遠隔操作可能農作業機械はAIを備え、有人操作された場合にモニタリング計装装置から取得されたデータを予め蓄積し、蓄積したデータに基づいて、AIがオペレータによる遠隔操縦をアシストするか自動操縦をすることを特徴とする。これにより、AIが圃場の作業現場に位置する遠隔操作可能農作業機械内に実装されるものとなるので、AIに蓄積されるデータや各種センサにより取得される環境等データに基づくAIの判断が、より迅速かつ的確に行えるものとなる。通信インフラが何らかの理由により障害を受けたような場合であってもAIの学習及び判断それ自体は障害を受けることなく安定継続して行い得る。
【0047】
(AIによる水産物養殖場の水質の改良要否判断等について)
AIによる水産物養殖場の水質の判定には、水中の化学物質や微生物などを測定するための様々な技術が知られており、AIを用いることで、膨大な量のデータを高速に処理し、より正確な判定を行うことができる。例えば、水中の溶存酸素量やpH値などをリアルタイムにモニタリングし、AIによってそれらのデータを解析することで、水質の変化を早期に検出することができる。また、水質に異常があった場合には、AIが自動でアラートを発信したり、管理者に水質の改善必要性を報知することもできる。さらに、AIを用いることで、水中の微生物や有害物質などを検出するためのセンサ技術の開発も進み広く知られているので、この技術によって、養殖場の水質管理をより効率的に行い、より安全で高品質な水産物の生産を実現することができる。
【0048】
AIが水質の異常や水質の変化を検知するためにデータを解析する場合において、AIは具体的にどのようなアルゴリズム(エキスパートシステムやニューラルネットワーク等)により構築され、どのようなデータを用いて学習を行い、具体的にどのような入力情報を用いて水質判定を行うのかについては、水質の異常や変化を検知するためのAIのアルゴリズムは、様々なものがあり、例えば、ニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレスト、SVM(サポートベクターマシン)などを用いることができる。これらのアルゴリズムは、多数の入力データから特定のパターンを見つけ出すことができるため、水質の異常や変化を検知するための学習に適しており、入力データとしては、例えば水中の温度、溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などの情報が含まれる。
【0049】
AIによる水質判定では、まずは適切な各センサを使って水中のデータを取得し、そのデータを基に、学習用のデータセットを作成する。このデータセットには、正常な水質のデータと異常な水質のデータが含まれるものとし、その後、AIによる学習が行われ、該データセットを用いてモデルを訓練する。そして訓練されたモデルは、新たな水質データが入力された際に、正常な水質と異常な水質を判別することができる。
【0050】
具体的には、水中の温度、溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などのデータをAIに入力し、AIがそれらのデータを解析して、水質が正常か異常かを判定し、AIはこれらのデータの傾向や変化も学習し、異常が発生する前に異常を検知することができる。
【0051】
ニューラルネットワークにおいては、脳の神経回路を模した機械学習の一種であり、水質データを複数のニューロンで処理し、異常検知のためのパターンを学習することができる。例えば、水中の溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などのデータを入力し、異常検知を行うものとする。具体的には、ニューラルネットワークに使用されるアルゴリズムの一例として、多層パーセプトロン(MLP)があり、MLPは複数の隠れ層を持つニューラルネットワークであり、入力層、中間層、出力層の3つの層で構成される。各ニューロンの重みとバイアスが学習され、出力層のニューロンから得られる結果が出力として提供される。
【0052】
また、決定木では、データの分類に使用されるアルゴリズムの一種であり、水質データを複数の決定木で分割し、異常検知のためのパターンを学習する。例えば、水中の温度、溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などのデータを入力し、異常検知を行うものとする。また、決定木に使用されるアルゴリズムの一例として、ID3やC4.5がある。ID3は、情報利得を最大化するように分割することで決定木を作成し、C4.5は、ID3の拡張版で、分割の精度を向上させ、欠損値の扱いや数値データの扱いにも対応している。
【0053】
また、ランダムフォレストは、複数の決定木を組み合わせたアルゴリズムの一種であり、水質データを複数のランダムフォレストで分割し、異常検知のためのパターンを学習する。例えば、水中の温度、溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などのデータを入力し、異常検知をすることができる。また、ランダムフォレストに使用されるアルゴリズムの一例として、CART(Classification and Regression Trees)があり、該CARTは、分類木と回帰木を同時に学習できるアルゴリズムで、ランダムフォレストでは複数のCARTを組み合わせて使用する。
【0054】
また、SVM(サポートベクターマシン)は、分類問題や回帰問題に用いられるアルゴリズムの一種であり、水質データを複数のSVMで分類し、異常検知のためのパターンを学習する。例えば、水中の温度、溶存酸素量、pH値、濁度、水質汚染物質濃度、微生物数などのデータを入力し、異常検知を行うことができる。また、SVMに使用されるアルゴリズムの一例として、カーネル法があり、カーネル法は、高次元空間での分類を可能にする手法であって、線形カーネル、多項式カーネル、RBFカーネルなどが知られているが、該SVMは、カーネル法を用いた最適な境界線を学習することで、異常検知を行うことが可能である。
【0055】
さらに具体的には、Pythonのscikit-learnライブラリを用いたランダムフォレストアルゴリズムを使用した水質判定の例を図3に示す。このアルゴリズムは、水質の複数のパラメータを入力として受け取り、水質が異常かどうかを分類することができる。この例では、ランダムフォレストアルゴリズムを使用して水質の異常を判定するために、ランダムフォレスト分類器のインスタンスを作成し、水質データを入力として学習した。そして、新しい水質データを取得して分類を予測している。土壌のデータとAIによる解析・判定についても、取得/入力データや検知センサ等を適宜選択・調整すれば、水質判定等と同様に行うことができる。このようなAIによる判定を受けて、水質や土壌の改良や調整を経てから後に、養殖や作付けの開始または再開を行うものとできる。
【0056】
(AIが、「圃場土壌の改良要否を判定する」ことを判定するために、AIが具体的にどのようなアルゴリズム(エキスパートシステムやニューラルネットワーク等)により構築され、どのようなデータを用いて学習を行い、具体的にどのような入力情報を用いて上記判定を行うのかについての説明について)
圃場土壌の改良要否をAIが判定するために、例えば以下のようなアルゴリズムを使用することが知られている。まず、エキスパートシステムでは、人間の専門家が持っている知識や経験をプログラムに取り込んで、専門家と同じような判断を行うシステムであり、土壌改良に関する知識を専門家から収集し、その知識をシステムに取り込んで、入力された土壌の情報から改良要否を判定することができる。また、ニューラルネットワークは、複数のニューロンから構成される人工的な神経回路網を用いたアルゴリズムであり、土壌の化学成分、土壌の物理的性質、肥料の使用量、作物の種類など、複数のパラメータを入力として受け取り、これらのパラメータから土壌改良要否を判定することができる。そして、決定木は、分岐の枝で条件分岐を行い、最終的に結果を出力するアルゴリズムであり、土壌のpH値、含水率、有機物含有率、窒素含有率、リン含有率などのパラメータを入力として受け取り、これらのパラメータから改良要否を判定することができる。また、サポートベクターマシン(SVM)は、データを分類する線や曲線を引くことにより、データの分類を行うアルゴリズムであり、土壌の化学成分、土壌の物理的性質、肥料の使用量、作物の種類など、複数のパラメータを入力として受け取り、これらのパラメータから土壌改良要否を判定することができる。
【0057】
入力情報としては、土壌の化学成分、物理的性質、作物の種類、肥料の使用量、天候などの情報が使用される場合がある。これらの情報は、センサを使用して取得することができる。また、専門家が持つ知識や経験も学習に活用されるものとできる。さらに、圃場土壌の改良要否を判定するために、AIに適用されるアルゴリズムの具体例として図4に示しているが、決定木アルゴリズムの場合には以下の手順となる。
【0058】
データの収集(ステップ1):まず、圃場土壌のデータを収集する。任意の各種センサ等で検知・収集された土壌のpH値、窒素、リン、カリウム、有機物などの物理的、化学的、生物学的な特性が重要な指標となり、実際に作物を栽培し、収量や品質などの情報も収集する。
【0059】
データの前処理(ステップ2):収集したデータを整理し、欠損値や外れ値の処理を行う。また、必要に応じてカテゴリカルなデータを数値データに変換しても良い。
【0060】
特徴量の選択(ステップ3):収集したデータから、どの特徴量が圃場土壌の改良要否の予測に有用かを選択する。特徴量の重要度を決定するために、公知の種々の方法を用いることができる。
【0061】
モデルの学習(ステップ4):選択した特徴量を入力として、決定木アルゴリズムを使用してモデルを学習する。決定木アルゴリズムは、木構造を使用してデータを分割し、条件分岐を行って予測を行う。具体的には、データを分割する際に、特定の特徴量の値を閾値として選択し、その特徴量の値が閾値を超えた場合には左の枝に、閾値以下の場合には右の枝に分岐する。この手順を再帰的に繰り返し、木を深めていくものとする。
【0062】
モデルの評価(ステップ5):学習したモデルの性能を評価するために、評価データを使用する。評価データは、学習データとは異なる別のデータセットとなる。評価データを使用して、モデルの精度、再現率、適合率などの指標を評価する。
【0063】
モデルの適用(ステップ6):最後に、新しい圃場土壌データを入力として、学習済みの決定木モデルを使用して、改良要否を判定する。
【0064】
下記表1は、決定木のアルゴリズム具体例である。
【0065】
【表1】












【0066】
上記表1において決定木を学習するためのデータセットが必要であるが、以下のような情報が含まれるデータセットとすることができる。すなわち、土壌のpH値、土壌の養分量、土壌の水分量、土壌の種類、作物の種類、土地の利用履歴、土地の所有者の情報、土地の位置情報などを含む情報とし、例えばCSVファイルなどの形式で保存できる。
【0067】
次に、決定木アルゴリズムの実装として、Pythonのscikit-learnライブラリを使用して決定木アルゴリズムを実装するが、表1はサンプルコードの例である。上記のコードでは、決定木アルゴリズムを使用してIrisデータセットに対する分類問題を解決する例を示している。データの読み込みや学習の手順は、実際に使用するデータに合わせて変更することができる。
【0068】
また、入力情報に関して、決定木アルゴリズムを使用して圃場土壌の改良要否を判定する場合、入力情報としては、土壌のpH値、養分量、水分量、種類、作物の種類、土地の利用履歴、所有者の情報、位置情報などが考えられる。これらの情報を入力として、決定木アルゴリズムによって土壌の改良要否を判定することができる。
【0069】
また、決定木アルゴリズムを用いた圃場土壌改良要否判定AIの他の例を以下に示す。この場合にはデータセットとして、畑の土壌サンプルから得られた情報を使用するものとし、該データセットには、以下のような特徴量と対応するラベルが含まれる。すなわち、pH値、窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量、腐葉土含有量、石灰分含有量、改良が必要かどうかのラベル(必要:1,不必要:0)
【0070】
モデルの構築のため、決定木アルゴリズムを使用して、以下に示す[表2]のような決定木を構築する。
【0071】
【表2】

























【0072】
上記表2の決定木は、pH値が6.5以上の場合、窒素含有量が2.0未満であれば改良が必要であると判定する。また、カリウム含有量が10.0未満であれば改良が必要であると判定する。また、pH値が6.5未満の場合、窒素含有量が3.0未満であれば改良が必要であると判定する。腐葉土含有量が2.0未満であれば改良が必要であると判定する。
【0073】
また、決定木の場合、特にモデルの学習が必要とまでは言えない。モデルの構築と同時に、決定木はデータに適合するように自動的に調整されるものとなる。
【0074】
また、入力情報に関して、ユーザーが入力する情報として、pH値、窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量、腐葉土含有量、石灰分含有量が必要であり、それぞれ土壌センサ等によって得られた検知値を利用することができる。以上が、決定木アルゴリズムを使用した圃場土壌改良要否判定AIの具体例である。
【0075】
(AIが、「圃場土壌で作付けする作物の種類を勘案して判定する」ことを判定するために、AIが具体的にどのようなアルゴリズム(エキスパートシステムやニューラルネットワーク等)により構築され、どのようなデータを用いて学習を行い、具体的にどのような入力情報を用いて上記判定を行うのかについての説明について)
【0076】
作付けする作物の種類を勘案して圃場土壌の改良要否を判定するために使用される決定木アルゴリズムの他の具体例を以下に示す。
<データセット>
土壌酸度(pH):数値データ
土壌の栄養状態:カテゴリーデータ(高、中、低)
土壌の水はけ:カテゴリーデータ(良好、普通、悪い)
作付けする作物の種類:カテゴリーデータ(小麦、米、大豆)
<決定木アルゴリズム>
1、根ノード:作付けする作物の種類を選択
2、作付けする作物が小麦の場合:
・1つ目の分岐:土壌の栄養状態が高いかどうかを確認
・高い場合:土壌の水はけを確認
・良好な場合:改良不要
・普通または悪い場合:改良が必要
・低い場合:改良が必要
・2つ目の分岐:土壌の栄養状態が中または低い場合、改良が必要
3、作付けする作物が米の場合:
・1つ目の分岐:土壌の栄養状態が高いかどうかを確認
・高い場合:改良不要
・低い場合:土壌の水はけを確認
・良好な場合:改良不要
・普通または悪い場合:改良が必要
・2つ目の分岐:土壌の栄養状態が中または低い場合、改良が必要
4、作付けする作物が大豆の場合:
・1つ目の分岐:土壌の栄養状態が高いかどうかを確認
・高い場合:土壌の水はけを確認
・良好な場合:改良不要
・普通または悪い場合:改良が必要
・低い場合:改良が必要
・2つ目の分岐:土壌の栄養状態が中または低い場合、改良が必要
以上のように、作付けする作物の種類によって判断基準を変えることができる。
【0077】
また、圃場土壌で作付けする作物の種類を勘案して圃場土壌の改良要否を判定するために使用される決定木アルゴリズムの他の例として以下に示すようにしても良い。
<データセット>
・土壌のph値(0-14)
・土壌の窒素含有量(%)
・土壌のリン含有量(%)
・作付けする作物の種類(トマト、キュウリ、ナス、ピーマンのいずれか)
<決定木アルゴリズム>
1、土壌のph値が6.5より高い場合、改良不要とする。
2、土壌のph値が6.5以下の場合、窒素含有量によって分岐する。
3、窒素含有量が1.0%より高い場合、作付けする作物によって分岐する。
4、トマトを作付けする場合、リン含有量によって分岐する。
5、リン含有量が0.5%より高い場合、改良不要とする。
6、リン含有量が0.5%以下の場合、改良必要とする。
7、キュウリ、ナス、ピーマンを作付けする場合、改良必要とする。
このような決定木アルゴリズムを、適切な学習アルゴリズムを使ってAIに覚えさせることができ、例えば、Decision Tree, Random Forest, XGBoostなどのアルゴリズムが利用可能である。データセットを学習アルゴリズムに与え、T適宜なパラメータを設定することで、AIは入力されたデータから土壌の改良要否を判定することができる。
【0078】
また、圃場土壌で作付けする作物の種類を勘案して圃場土壌の改良要否を判定するために使用される決定木のアルゴリズムとデータセットの他の例として以下のようにできる。
<決定木のアルゴリズム>
1、土壌のpH値が6.5以上であるかどうかを判定する
・はい: 2に進む
・いいえ: 3に進む
2、土壌の窒素含有量が0.2%以上であるかどうかを判定する
・はい: 土壌改良不要と判定する
・いいえ: 土壌改良必要と判定する
3、土壌のカリウム含有量が0.3%以上であるかどうかを判定する
・はい: 土壌改良不要と判定する
・いいえ: 4に進む
4、作付けする作物の種類がトマトであるかどうかを判定する
・はい: 土壌改良必要と判定する
・いいえ: 土壌改良不要と判定する
<データセットの例>
以下の表3のように、土壌のpH値、窒素含有量、カリウム含有量、作付けする作物の種類、および土壌改良要否を含むデータセットを用意する。
【0079】
【表3】










このようなデータセットを使用して、決定木のアルゴリズムを学習させることができ、学習には、機械学習ライブラリやフレームワークを使用して、実装を行っても良い。
【0080】
また、圃場土壌で作付けする作物の種類を勘案して圃場土壌の改良要否を判定するために使用される決定木アルゴリズムと、AIに覚えさせるためのデータセットの他の例として以下のようにしても良い。
<決定木アルゴリズム>
1、圃場土壌のpH値が7.0以上であるかどうかを判定する
・Yes:2へ進む
・No:3へ進む
2、土壌中の主要栄養素(窒素、リン、カリウム)が不足しているかどうかを判定する
・Yes:改良必要
・No:改良不要
3、土壌中の主要栄養素のうち、少なくとも1つが過剰であるかどうかを判定する
・Yes:改良必要
・No:4へ進む
4、土壌中の微量栄養素のうち、少なくとも1つが不足しているかどうかを判定する
・Yes:改良必要
・No:改良不要
<データセット>
下記表4に示すように、作物の種類、pH値、窒素、リン、カリウム、亜鉛、ボラン、銅、マンガンのデータを含む、圃場土壌のデータセットとすることができる。
【0081】
【表4】






【0082】
(AIが、「予め入力設定された作付け予定作物の種類や量を勘案して判断する」ことを判定するために、AIが具体的にどのようなアルゴリズム(エキスパートシステムやニューラルネットワーク等)により構築され、どのようなデータを用いて学習を行い、具体的にどのような入力情報を用いて上記判定を行うのかについての説明について)
圃場土壌の改良要否を判断するために使用されるAIの一例として以下のようにしても良い。
<データセット>
・圃場土壌の性質(pH、有機物含有量、窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量など)
・圃場土壌の種類(砂質土壌、粘質土壌、礫質土壌など)
・作物の種類(例:トマト、キャベツ、ジャガイモなど)
・圃場の地理的位置情報
<決定木アルゴリズム>
1、圃場土壌の性質のうち、最も影響を与える因子を選択する。
2、選択した因子の値によって、データを二つのグループに分ける。
3、各グループの中で最も影響を与える因子を選択し、2の手順を繰り返す。
4、分割ができなくなった場合、そのグループに含まれるデータの平均値を用いて、改良要否を判断する。
<入力情報の例>
・圃場土壌の性質(pH、有機物含有量、窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量)
・圃場土壌の種類
・作物の種類と量
具体的には、以下の示す具体例のようにしても良い。
・圃場土壌の性質:pH=6.5、有機物含有量=2.5%、窒素含有量=0.1%、リン含有量=0.08%、カリウム含有量=0.2%
・圃場土壌の種類:粘質土壌
・作物の種類と量:トマト10株、キャベツ5株、ジャガイモ20kg
このような情報をAIに入力し、決定木アルゴリズムを適用することで、圃場土壌の改良要否を判断することができる。
【0083】
さらに他の例として、圃場土壌での作付け予定作物の種類や量を勘案して圃場土壌の改良要否を判断するために、以下のような手順でAIを構築するものとできる。
<データセット>
・圃場土壌の性状(例えば、pH、有機物含量、窒素、リン、カリウム、カルシウム等)
・作付け予定作物の種類や量
・圃場土壌改良方法(例えば、石灰、堆肥、化学肥料、微生物肥料、有機物質等)
・圃場土壌の性状に基づく作物生育情報(例えば、育成期間中のpH、生育速度、収穫量等)
<決定木アルゴリズム>
以下のような決定木アルゴリズムを使用して、圃場土壌の改良要否を判断することができる。
・圃場土壌の性状が、作付け予定作物の生育に適しているかどうかを判断する。
・圃場土壌のpHが、作付け予定作物の適正pH範囲内にあるかどうかを判断する。
・圃場土壌の窒素、リン、カリウム、カルシウムが、作付け予定作物の必要量を満たしているかどうかを判断する。
・圃場土壌の性状が、作付け予定作物の生育に適していない場合、改良方法を決定する。
・圃場土壌のpHが適正でない場合、石灰の添加が必要かどうかを判断する。
・圃場土壌の窒素、リン、カリウム、カルシウムが不足している場合、化学肥料や堆肥の添加が必要かどうかを判断する。
・圃場土壌の有機物含量が不足している場合、有機物質の添加が必要かどうかを判断する。
<入力情報の例>
・圃場土壌の性状データ(pH、有機物含量、窒素、リン、カリウム、カルシウム等)
・作付け予定作物の種類や量
・圃場土壌改良方法の選択(石灰、堆肥、化学肥料、微生物肥料、有機物質等)
以上のように構成してAIが判定を行うものとしても良い。
【0084】
さらに他の例として、圃場土壌の特徴とその改良要否を表すデータセットの例として下記表5に示すように、圃場土壌の特徴として1?5の5つの値を用い、改良要否を0(不要)または1(必要)の2値で表すものとし、このようなデータセットを用いて、決定木アルゴリズムによる学習を行っても良い。
【0085】
【表5】










そして、決定木アルゴリズムは、IF-THEN規則に基づいた分類器であるから、学習データセットを用いて、条件分岐によって分類を行う木構造のモデルをScikit-learnライブラリを用いた決定木アルゴリズムとして下記のように構成しても良い。
from sklearn.tree import DecisionTreeClassifier
# データセットの読み込み
X = [[1.0], [2.0], [3.0], [4.0], [5.0]]
y = [0, 0, 1, 1, 1]
# 決定木モデルの生成
clf = DecisionTreeClassifier()
clf.fit(X, y)
上記したコードでは、DecisionTreeClassifierクラスを用いて決定木モデルを生成し、fitメソッドで学習を行うものとする。
そして、入力情報としては、以下のような圃場土壌の特徴を用いることができる。
# 圃場土壌の特徴
X_test = [[2.5], [4.5]]
上記のコードでは、圃場土壌の特徴として2.5と4.5の2つの値を持つデータを生成している。
そして、判定結果の具体例として、生成された決定木モデルを用いて、入力情報から圃場土壌の改良要否を判断することができ、例えば、以下のようなコードを用いて判定を行うことができる。
# 判定結果の取得
y_pred = clf.predict(X_test)
# 判定結果の表示
print(y_pred) # => [0, 1]
上記したコードでは、predictメソッドを用いて入力情報から圃場土壌の改良要否を行うものとする。
【0086】
また、決定木アルゴリズムを使用した具体的なデータセット、決定木アルゴリズム、および入力情報の他の例として以下に説明する。
<データセット>
・土壌の養分量 (高: 1, 中: 0, 低: -1)
・土壌の水分量 (多: 1, 普通: 0, 少: -1)
・土壌の酸性度 (酸性: 1, 中性: 0, アルカリ性: -1)
・作付け予定の作物 (トマト: 1, じゃがいも: 0, キャベツ: -1)
・土壌改良要否 (必要: 1, 不要: -1)
また、実際のデータ例として下記表6のようにできる。
【表6】









<決定木アルゴリズム>
そして、以下のような決定木アルゴリズムを使用するものとする。
if 作物 = 1:
if 養分量 = -1:
土壌改良要否 = 1
elif 酸性度 = 1:
土壌改良要否 = 1
else:
土壌改良要否 = -1
elif 作物 = 0:
if 水分量 = -1:
土壌改良要否 = 1
else:
土壌改良要否 = -1
else:
土壌改良要否 = -1
<入力情報の具体例>
そして、以下に示すような具体的な入力情報としても良い。
養分量: 1
水分量: 0
酸性度: 0
作物: 1
このような入力情報を決定木アルゴリズムに入力すると、土壌改良要否は-1となる。
【0087】
さらに、他の例として、圃場土壌の改良要否を判断するための下記のデータセットを用意することでも本発明を実行できる。
・土壌のpH値
・土壌の水分量
・土壌の栄養状態
・土壌の質
・作付け予定作物の種類
・作付け予定作物の量
次に、このデータセットを用いて決定木アルゴリズムを構築するが、以下のようにPythonのscikit-learnライブラリを用いた決定木アルゴリズムとしても良い。
from sklearn.tree import DecisionTreeClassifier
# データセットの読み込み
data = [[pH, water, nutrient, quality, crop, amount, improvement] for pH, water, nutrient, quality, crop, amount, improvement in dataset]
# 特徴量とラベルに分割
X = [d[:-1] for d in data]
y = [d[-1] for d in data]
# 決定木アルゴリズムの学習
clf = DecisionTreeClassifier()
clf.fit(X, y)
そして、上記した決定木アルゴリズムを用いて、以下のような入力情報を用いて圃場土壌の改良要否を判断することができる。
・土壌のpH値
・土壌の水分量
・土壌の栄養状態
・土壌の質
・作付け予定作物の種類
・作付け予定作物の量
すなわち具体的には、以下のように入力情報を指定する。
# 土壌のpH値が6.5、水分量が50、栄養状態が高、土壌の質が良好、作付け予定作物がトマト、作付け予定作物の量が10の場合
input_data = [[6.5, 50, 'high', 'good', 'tomato', 10]]
# 決定木アルゴリズムによる予測
prediction = clf.predict(input_data)
# 圃場土壌の改良要否を出力
if prediction[0] == 1:
print("圃場土壌の改良が必要です。")
else:
print("圃場土壌の改良は不要です。")
上記した例では、決定木アルゴリズムが出力する「1」と「0」がそれぞれ、「圃場土壌の改良が必要」と「圃場土壌の改良は不要」と対応する。
【0088】
また、他の例として圃場土壌での作付け予定作物の種類や量を勘案して圃場土壌の改良要否を判断するために、決定木アルゴリズムを用いたAIの具体的な構築方法として下記のようにしても良い。
1、データセットは下記表7のように用意する。
【表7】









2、決定木アルゴリズム
上記した表7のデータセットを用いて、以下のような決定木アルゴリズムを構築する。
if 過去の作付け作物 = トマト:
if 土壌pH > 6.2:
改良要否 = 不要
else:
改良要否 = 必要
elif 過去の作付け作物 = トウモロコシ:
if 土壌酸性度 = 酸性 or 有機物含有量 = 低:
改良要否 = 必要
else:
改良要否 = 不要
else:
改良要否 = 不要
3、入力情報
そして、決定木アルゴリズムの入力情報としては、以下のようになる。
・土壌pH:数値
・土壌酸性度:非酸性 or 酸性
・有機物含有量:低 or 中 or 高
・過去の作付け作物:トマト or トウモロコシ or その他
4、入力実例として下記のような入力情報が与えられた場合、改良要否が「必要」と判定されることとなる。
・土壌pH:5.6
・土壌酸性度:酸性
・有機物含有量:高
・過去の作付け作物:小麦
【0089】
(AIが「オペレータによる遠隔操縦をアシストするか自動操縦をする」ための判定を行うために、AIが具体的にどのようなアルゴリズム(エキスパートシステムやニューラルネットワーク等)により構築され、どのようなデータを用いて学習を行い、具体的にどのような入力情報を用いて上記判定を行うのかについての説明)
農作業機械の自動操縦をするかどうかを判断するためには、以下のようなアルゴリズムが考えられる。
1、ニューラルネットワーク
入力層:作業機械の種類、天候、時間帯、農作業の種類、敷地の地形や形状など
中間層:隠れ層1, 隠れ層2, ...
出力層:自動操縦するかどうかの判定(Yes or No)
2、決定木
データセット:農作業機械の種類、天候、時間帯、農作業の種類、敷地の地形や形状などの各要素を組み合わせたデータセット
決定木アルゴリズム:各要素を分岐として判定を行い、最終的に自動操縦するかどうかの判定をする。
3、サポートベクターマシン (SVM)
データセット:農作業機械の種類、天候、時間帯、農作業の種類、敷地の地形や形状などの各要素を組み合わせたデータセット
4、SVMアルゴリズム:各要素を特徴空間上にマッピングし、自動操縦するかどうかの境界線を決定する。
具体例としては、以下のようなデータセットが考えられる。
【表8】







5、入力情報としては、例えば以下のようなものが考えられる。
農作業機械の種類:トラクタ、コンバイン、田植え機など
天候:晴れ、曇り、雨など
時間帯:朝、昼、夕方など
農作業の種類:耕うん、収穫、灌水など
敷地の地形:平坦、斜面など
【0090】
また、他の例として、農作業機械を自動操縦するか、またはオペレータによる遠隔操縦をアシストするかを判定するために、以下のような決定木アルゴリズムを利用することが考えられる。
1、農作業機械の種類を入力情報として受け取る。
2、農作業機械の種類に応じて、以下の情報を入力として受け取る。
・圃場の形状や大きさ
・圃場に生えている作物の種類や密度
・土壌の種類や含水量
・天候や気象条件
・作業の時間帯やスケジュール
3、上記の入力情報をもとに、以下の判定を行う。
3-1、農作業機械の自動操縦が可能な場合:
・圃場の形状が単純で障害物が少ない
・圃場に生えている作物の密度が低く、作物の種類が一種類である
・土壌の状態が均一で、含水量が一定範囲内に収まる
・天候や気象条件が安定しており、視界が良好である
・作業スケジュールがあらかじめ設定されており、時間的な余裕がある
3-2、農作業機械の自動操縦が不可能な場合:
・圃場の形状が複雑で、障害物が多い
・圃場に生えている作物の密度が高く、作物の種類が複数種類ある
・土壌の状態が不均一で、含水量が範囲外にある
・天候や気象条件が不安定で、視界が悪い
・作業スケジュールが厳密に決まっておらず、時間的な余裕がない
上記した決定木アルゴリズムに対して、以下のようなデータセットを用いて学習を行う。
【表9】

























表9のデータセットでは、機械、圃場、作物、土壌、天候、作業スケジュール、および自動操縦の可否を入力情報として使用している。
そして、データセットの各要素に対する具体例としては以下のようになる。
・農作業機械: トラクタ
・圃場の形状: 正方形、100m x 100m
・圃場に生えている作物の密度: 200本/m2
・土壌の状態: pH 6.5、窒素 100kg/ha、リン 50kg/ha、カリウム 150kg/ha
・含水量: 30%
・天候・気象条件: 晴れ、気温25℃、湿度60%
・作業スケジュール: 8時から17時まで、1時間ごとに作業予定あり
・自動操縦の可否: 可能
これらのデータを数値、数式、またはプログラムに変換する場合に、各要素に対して適切な変換方法を適用する必要があるが、たとえば、天候・気象条件は数値に変換することができ、気温25℃は数値25に、湿度60%は数値0.6に変換されても良い。また、作業スケジュールはプログラムによって表現することができるので、8時から17時までの時間帯を10個の時間帯に分割し、各時間帯の作業予定を1または0の値で表現することができる。
【0091】
また、他の例として農作業機械を自動操縦するかどうかを判定するために、以下のような決定木アルゴリズムを使用することができる。
1、作業内容によって、機械を自動操縦するかどうかを判断する。
・作業内容が定型的な場合は、機械を自動操縦する。
・作業内容が非定型的な場合は、オペレータによる遠隔操縦をアシストする。
2、地形や障害物の有無によって、機械を自動操縦するかどうかを判断する。
・地形や障害物がない場合は、機械を自動操縦する。
・地形や障害物がある場合は、オペレータによる遠隔操縦をアシストする。
3、天候状況によって、機械を自動操縦するかどうかを判断する。
・天候状況が良好な場合は、機械を自動操縦する。
・天候状況が悪い場合は、オペレータによる遠隔操縦をアシストする。
上記の決定木アルゴリズムにおいて、学習に使用するデータセットは、機械の自動操縦が適切であるかどうかを判断するための基準となる作業内容、地形や障害物の有無、天候状況、そして機械の自動操縦が適切であったかどうかを判断するための評価データが必要となるところ、具体的な入力情報としては、以下のようなものが考えられる。
・作業内容:畑の草刈り、畑の耕耘、稲作の水やりなど
・地形や障害物:平地、斜面、岩、木など
・天候状況:晴れ、曇り、雨、雪など
・機械の状態:作業幅、速度、燃料残量、エラーコードなど
また、具体的なデータセットや決定木アルゴリズムの作成には、実際の農場でのデータや専門家の知見を活用することも有効であるが、例えば以下のように作成できる。
<データセットの例>
【表10】




















<決定木アルゴリズムの例>
上記表10のデータセットを用いた決定木アルゴリズムの具体例としては以下のようになる。
1、草丈が40cm以下の場合は自動操縦とする
2、草丈が40cmよりも大きく、かつ濡れた土壌でない場合はオペレータによる遠隔操縦をアシストとする
3、草丈が40cmよりも大きく、かつ濡れた土壌で、かつ丘陵地帯でない場合はオペレータによる遠隔操縦をアシストとする
4、草丈が40cmよりも大きく、かつ濡れた土壌で、かつ丘陵地帯の場合は自動操縦とする
この決定木アルゴリズムに従って、草丈が50cmで、濡れた土壌で、山地にある場合、オペレータによる遠隔操縦をアシストすることが適切な操縦方式と判断される。
さらに、この場合のデータセットと決定木アルゴリズム及び入力データは下記(例1)乃至(例3)のようにしても良い。
(例1)
<データセット>
以下のような特徴量とラベルを持つデータセットを用意する。

特徴量

・作業区画の面積(単位:ha)
・作業内容(耕うん、田植え、草刈り、収穫など)
・作業時間(単位:時間)
・天候(晴れ、曇り、雨)
・土壌湿度(乾燥、普通、湿り気がある)
・傾斜度(平坦、やや傾斜、急傾斜)
ラベル
・自動操縦可(1)
・オペレータによる遠隔操縦をアシストすることが必要(0)
<決定木アルゴリズム>
このようなデータセットを用いて決定木アルゴリズムを構築する。以下のようなルールを持つ決定木を考えることができる。
・作業区画の面積が100ha以上の場合は、自動操縦可(1)とする。
・作業区画の面積が100ha未満かつ、作業内容が耕うん、田植え、草刈りのいずれかである場合は、天候に関係なく自動操縦可(1)とする。
・作業区画の面積が100ha未満かつ、作業内容が収穫である場合は、以下の条件に基づいて判断する。
・作業時間が12時間以上で、天候が晴れか曇りである場合は自動操縦可(1)とする。
・作業時間が12時間以上で、天候が雨であっても、土壌湿度が普通以上であれば自動操縦可(1)とする。
・上記以外の場合は、オペレータによる遠隔操縦のアシストが必要(0)とする。
・作業区画の面積が100ha未満かつ、作業内容が収穫以外である場合は、傾斜度に関係なく自動操縦可(1)とする。
<入力情報の具体例>
・作業区画の面積:80ha
・作業内容:収穫
・作業時間:10時間
・天候:晴れ
・土壌湿度:湿り気がある
・傾斜度:急傾斜・・・
(例2)
<データセット>
・地形の起伏 (低い、やや低い、中程度、やや高い、高い)
・作業幅 (狭い、やや狭い、普通、やや広い、広い)
・作物の種類 (小麦、米、トウモロコシ、大豆、その他)
・天候 (晴れ、曇り、雨、雪、その他)
・作業時間帯 (昼間、夕方、夜間、その他)
・オペレータの経験年数 (1年未満、1年以上3年未満、3年以上5年未満、5年以上)
<決定木アルゴリズム>
・最初に、地形の起伏を分類するノードを設定
・その後、作業幅、作物の種類、天候、作業時間帯、オペレータの経験年数を順番に分類するノードを設定
・最終的に、オペレータの経験年数によって、自動操縦か遠隔操縦のアシストかを決定する
より具体的にPythonでの決定木アルゴリズムとしては下記表11のようになる。
【表11】


















表11の例では、sklearnライブラリを使用し、DecisionTreeClassifierクラスを使用して、決定木のモデルを作成し、criterionパラメータで不純度の計算方法を、max_depthパラメータで決定木の深さを指定している。
データセットは、pandasライブラリを使用してCSVファイルから読み込むものとし、また、ilocメソッドを使用して、特徴量とラベルを取得している。
新しいデータを予測する場合は、predictメソッドを使用する。new_dataには、予測したい新しいデータが含まれている。
<入力情報の具体例>
・地形の起伏:中程度
・作業幅:普通
・作物の種類:トウモロコシ
・天候:晴れ
・作業時間帯:昼間
・オペレータの経験年数:3年以上5年未満
上記の入力情報を決定木アルゴリズムに入力すると、オペレータの経験年数が3年以上5年未満であるため、オペレータによる遠隔操縦のアシスト操縦を行うものと判断される可能性が高くなる。
(例3)
<データセット>
・地形の情報(平地、斜面、段々畑など)
・作業する田んぼの形状や大きさ
・田んぼの土質情報(例えば、粘土、砂質、泥土など)
・作付けする作物の情報(例えば、種類、密度、作付け期間、栽培方法など)
・作業機械の情報(例えば、種類、サイズ、能力など)
・天候情報(例えば、晴天、雨天、積雪など)
<決定木アルゴリズム>
1、地形が平地かつ田んぼの形状が正方形または長方形の場合、自動操縦を行う。
2、地形が斜面または段々畑で、かつ田んぼの形状が正方形または長方形の場合、オペレータのアシスト操縦を行う。
3、田んぼの土質情報が砂質で、かつ作物が稲の場合、自動操縦を行う。
4、田んぼの土質情報が粘土で、かつ作物が小麦の場合、オペレータのアシストを行う。
5、作業機械の種類が田植え機で、かつ作付け期間が5月中旬から6月上旬の場合、自動操縦を行う。
6、天候が雨天で、かつ作物が大豆の場合、オペレータのアシストを行う。
7、上記以外の場合は、オペレータの判断により自動操縦またはオペレータのアシストを行う。
具体的には、Pythonで実装された決定木アルゴリズムは下記表12のようになる。
【表12】

























表12のプログラムでは、CSVファイルからデータセットを読み込み、特徴量とラベルを分割し、決定木アルゴリズムを作成してモデルを学習する。そして、新しいデータを予測し、予測結果を出力する。新しいデータには、地形の情報、作業する田んぼの形状や大きさ、田んぼの土質情報、作付けする作物の情報、作業機械の情報、天候情報が含まれる。
このようなAI入力情報として下記表13に示すものとできる。ここで、表13の各情報の意味は以下の通りとなる。
terrain: 地形の情報。flat(平地)、slope(斜面)、terraced(段々畑)のいずれか。
field_shape: 田んぼの形状や大きさ。square(正方形)、rectangle(長方形)、irregular(不規則)のいずれか。
soil_type: 土質情報。clay(粘土)、sandy(砂質)、loam(泥土)のいずれか。
crop: 作付けする作物の情報。rice(米)、wheat(小麦)、soybean(大豆)のいずれか。
crop_density: 作付け密度の情報。low(低密度)、medium(中密度)、high(高密度)のいずれか。
crop_season: 作付け期間の情報。spring(春)、summer(夏)、autumn(秋)のいずれか。
cultivation_method: 栽培方法の情報。dry-field farming(乾田)、paddy-field farming(水田)のいずれか。
machine_type: 使用する農作業機械の情報。tractor(トラクタ)、combine harvester(コンバイン)のいずれか。
machine_size: 農作業機械のサイズの情報。small(小型)、medium(中型)、large(大型)のいずれか。
machine_capacity: 農作業機械の能力の情報。low(低能力)、medium(中能力)、high(高能力)のいずれか。
weather: 天候情報。sunny(晴天)、rainy(雨天)、snowy(積雪)のいずれか。
【表13】



















【0092】
(オペレータによる農作業機械の遠隔操縦をAIがアシストについて)
例えば、作業機械の自動制御機能の実行をAIが行うものとし、AIが農作業機械が自動的に行うべき作業や走行操舵を予測し、自動制御機能を実行することができる。これにより、オペレータは、より高度なタスクに集中することができる。また、モニタリングとデータ収集をAIが行うものとし、作業機械のセンサからのデータをモニタリングし、データを収集することができる。これにより、オペレータは、農作業機械の状態を把握し、必要に応じて遠隔操作することができる。また、作業プロセスの最適化をAIが行うものとし、作業機械が最適な方法で作業を行うためのアドバイスを提供することができる。たとえば、作物の密度や作付け期間などの情報を基に、作業機械が最適な速度や深度で作業を行うようアシストすることができる。エラー検出と診断をAIが行うものとし、作業機械のエラーを検出し、原因を特定することができる。これにより、オペレータは、作業機械の修理やメンテナンスに必要な情報を得ることができる。さらに、次の作業の準備をAIが行うものとし、次の作業に必要な作業機械の設定や準備を行うことができる。たとえば、作業機械の部品の交換や充電などを自動的に行うことができる。上記した事項の全てまたはいずれか任意の機能をAIによる操縦アシストの典型例として理解することができる。
【0093】
また、オペレータによる農作業機械の遠隔操縦をAIがアシストするための最も簡単なアルゴリズムの他の具体例としては、以下のようなものが考えられる。まず、カメラやセンサで収集した画像やデータをAIに送信する。AIは画像処理や機械学習によって、農作業機械の現在位置や周辺環境を判断する。AIは操作指示を作成し、オペレータに提示する。この操作指示は、例えば「直進する」「右に曲がる」「スピードを落とす」などが含まれる。オペレータはAIが提示した操作指示を確認し、必要に応じて修正する。最終的な操作指示を農作業機械に送信し、AIがアシストする遠隔操縦を実現する。このアルゴリズムでは、AIが農作業機械の現在位置や周辺環境を判断して、操作指示を作成することでオペレータの作業をアシストしている。しかし、このアルゴリズムではオペレータが最終的な操作指示を行う必要がある。より高度なアルゴリズムでは、AIが自動的に最適な操作指示を生成することができるようにすることもできる。
【0094】
上記段落[0093]で示したアルゴリズムをAIに実行させるためのプログラムの具体例として、Pythonで実装されたオペレータによる農作業機械の遠隔操縦をAIがアシストするための簡単なプログラム例を以下に説明する。このプログラムでは、距離と角度の2つの情報を基に、AIが操作する農作業機械の方向と速度を決定する。表14は、AIが操縦をアシストするための簡単なアルゴリズム例である。
【表14】




















表14のプログラムでは、assist_operator関数がAIによるアシストを担当している。距離と角度の2つの入力情報を受け取り、それに基づいて農作業機械の速度と方向を決定する。具体的には、距離が一定以下の場合は停止し、角度が一定範囲外の場合は旋回し、それ以外の場合は前進する。テスト用の距離と角度を設定し、assist_operator関数を呼び出して、結果を出力する。この例では、距離が15で角度が-5の場合、AIが前進することを判断し、速度は1、方向は0となる。
【0095】
また、上記した例示に拘わらずアルゴリズムの構築方法として、公知のニューラルネットワーク、決定木、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰及びそれらの任意組み合わせを使用しても良い。また、使用するデータとして、土壌中の栄養素(窒素、リン、カリウムなど)の含有量、土壌の酸性・アルカリ度、土壌中の微生物数、土壌の含水率、土壌の温度、土壌の光合成効率、作物の種類や生育状態などの任意の一つ以上を用いるものとして良い。
【0096】
また、学習方法としては、土壌サンプルからのデータ収集、土壌サンプルの測定値とその土壌が持つ作物の品質を関連付けたラベル付け、のデータ等を用いて、アルゴリズムを学習させることができる。そして、入力情報として、土壌中の栄養素含有量、土壌の酸性・アルカリ度、微生物数、含水率、温度、光合成効率、作物の種類や生育状態などの任意の一つ以上の情報をAIに入力できる。以上のように、AIによる圃場土壌の改良要否の判定は、複数のパラメータを入力として受け取り、それらのパラメータを基にして学習を行い、最終的に改良が必要かどうかを判断するアルゴリズムを使用することができる。
【0097】
<その他の追加的実施態様~オペレータへの操縦アシストか自動操縦かの判断>
遠隔操作可能農作業機械が、自身が備える全方位カメラと、傾斜計と、振動計または/及び加速度センサと、GPSと、ソナーと、ジャイロと、臭気計と、温度計と、湿度計と、暗視カメラと、音響マイクとを少なくとも含むモニタリング計装装置から取得されたデータを用いて、オペレータへの操縦アシストとするか自動操縦とするかを判断・判定するために、以下のような実施態様とすることができる。
【0098】
例えば、全方位カメラは、農作業機械の周囲の状況や障害物の検出に使用され、傾斜計は、地形の傾斜や坂道の角度を測定することができ、振動計または/及び加速度センサは、機械の振動や加速度を計測し、異常や不安定な動作を検出するのに役立ち、GPSは、農作業機械の位置情報を提供し、正確な位置情報に基づいて作業を行うことができ、ソナーは、障害物の距離や位置を検出するために使用され、ジャイロは、農作業機械の傾きや方向の変化を測定し、姿勢制御や正確な操作を補助し、臭気計は、異常な臭いやガスの検出に使用され、温度計と湿度計は、環境条件を監視し、農作業に適した条件で作業するための情報を提供し、暗視カメラは、夜間や低照度下での視界を向上させ、作業の安全性を確保し、音響マイクは、周囲の音や異常音を検知するために使用され、故障の早期検知や作業状況の把握に役立つ。そして、これらのデータを活用して、オペレータへの操縦アシストや自動操縦を判断・判定する方法は種々考えられる。
例えば、オペレータへの操縦アシストをする場合として、センサーデータを解析し、オペレータに対してリアルタイムな情報や警告を提供して安全な操作をサポートする。例えば、障害物を検知した場合には、障害物の有無や大きさ、検知された方角・方位・距離等をオペレータに通知することも可能である。
【0099】
また、ビジョンベースの判定(視覚情報に基づく判定)として、全方位カメラや暗視カメラからの映像データを解析し、異常や障害物の検出、作業領域の認識、作物の成長状況の把握などを行える。また、画像処理や機械学習アルゴリズムを使用して、リアルタイムに情報を抽出できる。さらに、傾斜計、振動計、加速度センサの利用として、農作業機械の傾斜や振動のデータを収集し、異常な動作や地形の変化を検出する。異常な振動や傾斜が検知された場合、自動的に安全な状態に遷移するなどの処理を行うことができる。そして、GPSとジャイロの組み合わせを利用する一態様として、GPSデータを使用して、農作業機械の位置や進行方向を把握するとともに、好ましくはさらにジャイロスコープを使用して、機械の姿勢や角度の変化を監視することができる。これにより、正確な位置制御や軌道補正が可能となる。また、ソナーと臭気計の利用態様として、ソナーセンサを使用して、障害物や他の物体との距離を検出し、また、臭気計を使用して、異常な臭いやガスの漏れを検知することができる。これにより、安全性や作業環境の評価が行われる。また、温度計と湿度計の監視効果として、農作業機械周辺の温度と湿度を計測し、異常な上昇や過湿を検知することにより、機械の過熱や作業環境の制御が可能となる。また、音響マイクの利用態様としては、農作業機械の周囲の音を監視し、異常な騒音や異音を検出することにより、故障の早期発見やメンテナンスの予兆となる音を検知することができる。これらのデータをリアルタイムに解析し、予め設定された閾値やアルゴリズムに基づいて、安全性や作業効率を判断することができます。データの統合や複数センサの組み合わせによって、より正確な判断と判定が可能となる。また、機械学習や人工知能の技術を活用して、より高度な自動操縦機能を実現することも考えられる。
【0100】
(「オペレータによる遠隔操縦をアシストするか自動操縦をするか」を判定するために、機械学習することによって作成されたモデルを用いる場合について)
説明変数の一例として、全方位カメラの映像データ(すなわち農作業機械の周囲の状況や障害物の検出に使用する)、傾斜計・振動計・加速度センサのデータ(機械の傾斜や振動の状態を把握するために使用する)、GPSデータ(機械の位置や進行方向を特定するために使用する)、ソナーデータ(前方の障害物との距離を検出するために使用する)、温度計と湿度計のデータ(環境の温度と湿度を把握するために使用する)、音響マイクのデータ(異常な音や振動を検出するために使用する)、を利用することができる。
また、目的変数の一例として、操縦アシストの場合としてオペレータによる遠隔操縦の支援が必要かどうかを示す二値変数(例:0=アシスト不要、1=アシスト必要)、自動操縦の場合として自動操縦を行うかどうかを示す二値変数(例:0=自動操縦不可、1=自動操縦可)とすることが可能である。
そして、具体的なモデルの例として、ランダムフォレスト(Random Forest)アルゴリズムを使用した分類モデルの場合を下記表15に示す。
【表15】
表15に示す例では、6つの説明変数と目的変数を用いてランダムフォレストモデルを構築し、新しいデータに対してアシストの必要性や自動操縦の可否を予測している。具体的なデータやモデルの設計は、問題の性質や利用するセンサの種類に応じて任意かつ適宜に選択するものとしても良い。
【0101】
(機械学習で作成されたモデルに入力されるデータの詳細な追加説明)
このようなモデルに入力するデータは、遠隔操縦をアシストするか自動操縦をするかを判定するための情報を含んでいる必要があり、以下に具体的なデータとその詳細を説明する。
1.全方位カメラの映像データ:
前方に障害物があるかどうか(例:0=障害物なし、1=障害物あり)
作業領域内の作物の成長状況(例:0=成長していない、1=成長している)
2.傾斜計、振動計、加速度センサのデータ:
機械の傾斜角度(例:-10°から+10°の範囲)
機械の振動の強さ(例:0から100の範囲)
3.GPSデータ:
機械の現在位置の緯度と経度(例:35.12345,139.67890)
機械の進行方向(例:北、南、東、西)
4.ソナーデータ:
機械の前方に障害物との距離(例:0から1メートルの範囲)
5.温度計と湿度計のデータ:
環境の温度(例:20℃)
環境の湿度(例:50%)
6.音響マイクのデータ:
機械の周囲の音の種類(例:エンジン音、異音)
機械の周囲の騒音レベル(例:0から100の範囲)
これらのデータをモデルに入力し、遠隔操縦をアシストするか自動操縦をするかの判定を行うことができる。具体的なデータは、実際のセンサや計装装置から取得される情報であることが好ましく、また、それぞれのデータの範囲や値は、利用するセンサやシステムの仕様に合わせて設定されることができる。
【0102】
<その他の追加的実施態様2~オペレータへの操縦アシストか自動操縦かの判断>
遠隔操作可能な農作業機械において、オペレータによる操縦へのアシストまたは自動操縦を判断・判定するために、以下のような他の具体的な手法や態様が考えられる。
1、ルールベースのアルゴリズム:
センサデータのしきい値や条件を予め設定し、それに基づいて操縦アシストまたは自動操縦を判断する。例えば、振動計や加速度センサのデータが一定の範囲を超えた場合、自動操縦に切り替えるなどの判定ルールを設けることができる。
2、機械学習アルゴリズム:
モニタリング計装装置から取得されたデータを用いて機械学習モデルを構築し、操縦アシストまたは自動操縦の判定を行う。データとしては、全方位カメラの映像データ、傾斜計や振動計のデータ、GPSデータ、ソナーデータ、温度計や湿度計のデータ、臭気計のデータ、音響マイクのデータなどを使用する。モデルの構築には、分類アルゴリズム(例:ランダムフォレスト、サポートベクターマシン)やニューラルネットワークなどが利用され得る。
3、ルールベースと機械学習の組み合わせ:
ルールベースのアルゴリズムと機械学習アルゴリズムを組み合わせて利用することも可能である。例えば、一部の判定ルールは予め設定し、それ以外の複雑な判断は機械学習モデルに委ねるなどの組み合わせが可能である。利用するセンサやデータの特性、システムの要件、利用環境などによって具体的な態様が最適になるように適宜調整・選択等されるものとしても良い。
【0103】
(ルールベースのアルゴリズム)
いくつかのセンサデータと条件を組み合わせた例として以下のように構成しても良い。
1、振動計のデータと条件の例:
振動計のデータが一定の閾値以上の場合、自動操縦に切り替えるルールとできる。
例えば、振動計の値が50以上の場合に自動操縦に切り替えるという条件を設定できる。
2、ソナーデータと条件の例:
ソナーデータが一定の距離以内に障害物を検出した場合、自動操縦に切り替えるルールとできる。
例えば、ソナーデータが10メートル以内に障害物を検出した場合に自動操縦に切り替えるという条件を設定できる。
3、温度計と湿度計のデータと条件の例:
温度が高く、湿度が低い場合、オペレータの負担が大きいため操縦アシストを行うルールとできる。
例えば、温度が30℃以上かつ湿度が20%以下の場合に操縦アシストを行うという条件を設定できる。
このような単純なルールとしても良いし、実際のシステムではさまざまなセンサデータや条件を考慮するものとしても良い。ルールベースのアルゴリズムは、特定の条件を満たす場合に特定のアクションを実行するため、シンプルなルールから複雑なルールまで様々な条件判定が可能となる。
上記した例においてフローチャートで示すと、
ステップ1:開始
ステップ2:センサデータを取得
ステップ3:もし振動計のデータ>閾値なら
ステップ4:自動操縦に切り替える
そうでなければ
ステップ5:もしソナーデータの距離<障害物距離閾値なら
ステップ6:自動操縦に切り替える
そうでなければ
ステップ7:遠隔操縦アシストを継続する
終わり
終わり
と示すことができる。
このフローチャートでは、まず振動計のデータが一定の閾値を超えるかどうかを判定し、もし振動が閾値を超えていれば、自動操縦に切り替える。振動が閾値を超えていない場合、次にソナーデータを判定し、ソナーデータが一定の距離以内に障害物を検出した場合、自動操縦に切り替える。上記の条件に該当しない場合は、遠隔操縦アシストを継続する。このフローチャートは、振動計のデータとソナーデータの二つの条件を組み合わせて判断を行っているものであるが、もちろん、具体的な条件や閾値は実際のシステムや要件に合わせて任意に適宜設定することができる。
【0104】
(機械学習アルゴリズム)
機械学習アルゴリズムに関して以下のように構成しても良い。
1、データ収集と前処理:
全方位カメラの映像データ、傾斜計や振動計のデータ、GPSデータ、ソナーデータ、温度計や湿度計のデータ、臭気計のデータ、音響マイクのデータなどを収集し、特徴量として抽出する。例えば、全方位カメラの映像データから画像特徴量を抽出したり、センサデータの値を正規化したりする。
2、ラベル付け:
データに対して、それぞれの状態(操縦アシストまたは自動操縦)を示すラベルを付ける。例えば、人手で遠隔操縦中へのアシストはラベル1、自動操縦中はラベル2などとする。
3、モデルの選択とトレーニング:
適切な機械学習アルゴリズム(例:ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク)を選択し、トレーニングデータを用いてモデルを訓練する。特徴量とラベルのペアを使用してモデルを学習させる。
4、モデルの評価と予測:
テストデータを用いて訓練されたモデルを評価する。予測の正確さや性能を評価指標(例:正解率、精度、再現率)を用いて測定する。評価が十分に高い場合、モデルを実稼働に移行する。
5、リアルタイムの予測:
モデルを実際の運用環境で使用し、リアルタイムのセンサデータを入力としてアシストまたは自動操縦の判定を行う。モデルは新しいデータポイントを受け取り、それに基づいて適切な判定結果を出力する。
また、具体的な機械学習アルゴリズムやモデルの選択は、問題の性質やデータの特徴に応じて異なるものとしても良い。上記した手順における、実際のシステムではデータの収集や前処理、モデルの選択や調整、評価などのステップを適宜・適切に行うものとできる。
【0105】
(ルールベースと機械学習の組み合わせ)
例えば以下のように構成しても良い。
1、ルールベースのアルゴリズムによる条件判定:
センサデータのうち、特定の条件に基づいて操縦アシストまたは自動操縦の判定を行うことができる。具体的には例えば、振動計のデータが一定の閾値を超える場合に自動操縦に切り替える、または/及びソナーデータが一定の距離以内に障害物を検出した場合に自動操縦に切り替えるというようなルールを設定できる。
2、機械学習アルゴリズムによる判定補完:
モニタリング計装装置から取得されたデータを用いて機械学習モデルを構築する。モデルは、センサデータのパターンや特徴を学習し、操縦アシストまたは自動操縦の判定を行う。
3、ルールベースと機械学習の組み合わせ:
ルールベースのアルゴリズムによる条件判定と、機械学習アルゴリズムによる判定補完を組み合わせて利用することができる。ルールベースによる判定では明確な条件が設定されているが、一部の複雑な判断を機械学習モデルに委ねることで、より柔軟な判定が可能となる。具体的な例としては、ルールベースのアルゴリズムによって振動計のデータやソナーデータの条件判定を行い、それ以外のセンサデータを機械学習モデルに入力し、モデルが状態を予測するという組み合わせとすることができる。このような組み合わせにより、ルールベースのアルゴリズムだけではカバーしきれない複雑な判定を機械学習によって補完することが可能となる。
例えば、ルールベース部分による判定と機械学習部分による判定とが共に”自動操縦”で一致した場合にのみ自動操縦するものとしても良いし、ルールベース部分による判定と機械学習部分による判定との少なくともいずれか一方が”自動操縦”と判定した場合に自動操縦するものとしても良い。また、モニタリング計装装置から取得されたデータのいずれをルールベース部分に用いて、いずれを機械学習部分に用いるか、は任意であり、モニタリング計装装置から取得された任意の一データをルールベース部分と機械学習部分とに共に利用するものとしても良い。
【0106】
(機械学習モデルの他の例)
ランダムフォレストを使用して、オペレータによる遠隔操縦をアシストするか自動操縦をするかを判定する機械学習モデルを作成する例を以下に示す。

*******************
python
from sklearn.ensemble import RandomForestClassifier
import pandas as pd

# モデルに入力する特徴量とラベルのデータを準備
# 特徴量はセンサデータやモニタリングデータから抽出した数値や特徴量エンジニアリングによって得られた特徴量です
features = pd.DataFrame({
'vibration': [0.15, 0.3, 0.08, 0.12, 0.25],
'sonar_distance': [10, 5, 12, 8, 4],
'temperature': [25, 27, 26, 24, 28],
'humidity': [60, 65, 62, 58, 70]
})

# ラベルは各データポイントに対応する状態(0: 操縦アシスト, 1: 自動操縦)を示します
labels = pd.Series([0, 1, 1, 0, 0])

# ランダムフォレストモデルの作成とトレーニング
model = RandomForestClassifier()
model.fit(features, labels)

# 新しいデータをモデルに入力して予測を行う
new_data = pd.DataFrame({
'vibration': [0.2],
'sonar_distance': [7],
'temperature': [26],
'humidity': [63]
})

predictions = model.predict(new_data)
print(predictions)
*******************
上記した例では、ランダムフォレストを使って特徴量とラベルのデータをトレーニングし、新しいデータに対してモデルの予測を行っている。モデルは操縦アシスト(0)または自動操縦(1)のいずれかを予測する。
【0107】
本実施形態で説明した上述の構成態様や各種方法はあくまで説明の便宜上例示した具体例に過ぎず、記載内容に限定されることなく当業者に自明な範囲で、かつ本発明の技術思想の射程の範囲内で、適宜 構成・素材や原材料・工程・方法・構造・作業手順等を変更しアレンジし、また追加し・削除し・修正することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、仮想空間を活用した農業や漁業など一次産業運営システムに広く展開し適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1000・・圃場、1100・・ドローン、1200・・3D地形図データ、1300・・モニター、1400・・360°カメラ、1500・・遠隔操作可能農作業機械、1600・・オペレータ席、1700・・オペレータ。
図1
図2
図3
図4