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  • 特許-消火設備及び弁装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】消火設備及び弁装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/62 20060101AFI20240219BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A62C35/62
A62C35/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020008381
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115083
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 辰基
(72)【発明者】
【氏名】東 瑞記
(72)【発明者】
【氏名】趙 明修
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096423(JP,A)
【文献】特開2004-298507(JP,A)
【文献】特開2019-218984(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填される一次側配管と、
消火ヘッドが設けられる二次側配管と、
前記一次側配管に接続される一次側接続口、前記二次側配管に接続される二次側接続口及び制御側接続口を有する制御室と、
前記制御室の内部において前記一次側配管と前記二次側配管との間を閉止する第1の弁と、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填されており、管内圧力が低減すると前記第1の弁を開放させる制御ラインと、
火災を感知すると前記制御ラインの前記管内圧力を低減させる感知ヘッドと、
前記制御室の外部において前記制御側接続口に取り付けられ、前記制御ラインから前記一次側配管への加圧水の流入を抑制しつつ、前記一次側配管から前記制御ラインへの加圧水の流入を許容する第2の弁と、
を具備すること
を特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記第2の弁は、前記第1の弁を前記制御ラインと接続すること、
を特徴とする請求項1に記載の消火設備。
【請求項3】
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填される一次側配管と、消火ヘッドが設けられる二次側配管と、の間に介在する制御室の内部において、前記一次側配管と前記二次側配管との間を閉止する第1の弁と、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填されており、管内圧力が低減すると前記第1の弁を開放させる制御ラインから前記一次側配管への加圧水の流入を抑制しつつ、前記一次側配管から前記制御ラインへの加圧水の流入を許容する、前記制御室の外部に取り付けられた第2の弁と、
を具備することを特徴とする弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備及び弁装置に関し、特に泡消火設備及び弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地下駐車場、工場、ビルなどの建物・施設には、火災時に水と泡消火原液を一定比率で混合して泡消火剤を生成し、泡消火剤を泡ヘッドから放出させる泡消火設備が設置されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような泡消火設備は、一般に、貯水槽などの水源と、水源から主配管を通じて水を圧送するためのポンプと、泡消火原液を貯蔵する泡消火薬剤貯蔵槽と、水源からの水と泡消火原液を一定比率で混合するための混合器と、泡消火剤を放出させる消火ヘッドと、を備える。
【0004】
そして、主配管には、一斉開放弁又は差圧開放弁(以下、単に一斉開放弁という。)が設けられるとともに、一斉開放弁には感知配管が分岐接続され、この感知配管に感知ヘッドが設けられている。火災時に感知ヘッドが開放すると、感知配管内が減圧し、一斉開放弁が開いて泡消火剤が消火ヘッドから放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-95897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような泡消火設備では、一斉開放弁の一次側には、泡消火剤が所定の圧力で充填されている。また、感知配管にも、泡消火剤が所定の圧力で充填されている。
【0007】
しかしながら、何らかの原因で一斉開放弁の一次側で漏水が起きた場合、感知配管の圧が抜ける。感知配管の圧が抜けると、一斉開放弁が開放され、流水検知装置が作動し、ポンプが回る。すると、再び感知配管が充圧されるまでは、一斉開放弁が開放されたままであるため、二次側配管に泡消火剤が流れ、消火ヘッドから泡消火剤が噴出する。その後、感知配管が充圧されると、一斉開放弁が閉止し、二次側配管への泡消火剤の流れが止まるが、それまでの間、防護区画内には泡消火剤が散布され続ける。
【0008】
そこで、本発明は、泡消火設備において一斉開放弁の一次側で漏水が生じても、二次側配管への泡消火剤などの加圧水の漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填される一次側配管と、
消火ヘッドが設けられる二次側配管と、
前記一次側配管と前記二次側配管との間を閉止する第1の弁と、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填されており、管内圧力が低減すると前記第1の弁を開放させる制御ラインと、
火災を感知すると前記制御ラインの前記管内圧力を低減させる感知ヘッドと、
前記制御ラインから前記一次側配管への加圧水の流入を抑制しつつ、前記一次側配管から前記制御ラインへの加圧水の流入を許容する第2の弁と、
を具備することを特徴とする消火設備を提供する。
【0010】
ここで、第1の弁として例えば一斉開放弁及び差圧開放弁を想定し、第2の弁として例えば逆止弁を想定しているが、本発明はこれに限られない。また、加圧水として、泡消火剤を想定しているが、本発明はこれに限られない。
【0011】
上記構成を有する本発明では、前記第2の弁が、前記第1の弁を前記制御ラインと接続すること、が好ましい。
【0012】
また、本発明は、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填される一次側配管と、消火ヘッドが設けられる二次側配管と、の間に介在して、前記一次側配管と前記二次側配管との間を閉止する第1の弁と、
予め設定された圧力範囲で加圧水が充填されており、管内圧力が低減すると前記第1の弁を開放させる制御ラインから前記一次側配管への加圧水の流入を抑制しつつ、前記一次側配管から前記制御ラインへの加圧水の流入を許容する第2の弁と、
を具備することを特徴とする弁装置をも提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一斉開放弁の一次側で漏水が生じても、制御ラインの管内圧力を維持できる。したがって、流水検知装置の起動及びポンプ起動の後、すぐに一斉開放弁内の圧力が回復するため、一斉開放弁が速やかに閉じる。これにより、二次側配管への泡消火剤などの加圧水の漏れを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】消火設備1の概略図である。
図2】閉止状態の一斉開放弁5及び逆止弁8の断面図である。
図3】開放状態の一斉開放弁5及び逆止弁8の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る消火設備及び弁装置を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0016】
ここでは、消火設備の一例として、減圧開タイプの一斉開放弁を含む開放型泡消火設備を挙げて説明するが、本発明は、差圧開放弁を含む閉鎖型泡消火設備などの消火設備にも適用可能である。また、配管を、一斉開放弁を基準として一次側及び二次側と呼ぶこととする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る消火設備1は、一次側配管2、二次側配管3、一斉開放弁5、制御ライン6、感知ヘッド7及び逆止弁8を含む。ここで、一斉開放弁5は第1の弁に、逆止弁8は第2の弁に、それぞれ相当する。また、一斉開放弁5及び逆止弁8は弁装置を構成する。
【0018】
一次側配管2は、水源9から一斉開放弁5に至る配管であり、一次側配管2には、予め設定された圧力範囲で泡消火剤(加圧水の一例)が充填されている。一次側配管2には、消火ヘッド4に水を供給するためのポンプP、泡消火原液を含む貯蔵槽10、消火ヘッド4に供給される水に所定濃度で泡消火原液を混合して泡消火剤を生成する混合装置11が接続されている。
【0019】
二次側配管3は、一斉開放弁5から消火ヘッド4に至る配管である。二次側配管3には消火ヘッド4が取り付けられている。ここでは、二次側配管3には泡消火剤が充填されていないものとする。
【0020】
一斉開放弁5は、一次側配管2と二次側配管3との間を閉止しており、制御ライン6の減圧により開放して泡消火剤を一次側配管2から二次側配管3へ流す。
【0021】
具体的には、図2に示すように、一斉開放弁5は、本体51及びピストン52を含む。
本体51は、一次側接続口53、二次側接続口54、制御側接続口55、及び制御室56を備えており、各接続口は制御室56を通じて互いに繋がっている。
【0022】
制御室56には、ピストン52が図2及び図3に示す開放方向及び閉止方向に摺動可能に設けられており、制御室56は、ピストン52により、ピストン52よりも1次側の制御小室56aと、ピストン52よりも制御側の制御小室56bに隔てられている。ピストン52には、制御小室56aと制御小室56bを連通する通水口57が穿設されている。
【0023】
平時には、一次側配管2と二次側配管3には所定の圧力で泡消火剤が充填されている。すなわち、一斉開放弁5の内部においては、制御小室56a及び制御小室56bには通水口57を通じて所定の圧力がかかっている。この状態において、ピストン52は、ピストン52を一次側から押す力よりも、ピストン52を制御側から押す力が勝り、ピストン52は閉止方向に付勢される。そのため、平時には図2に示す様に一次側接続口53から二次側接続口54に向かう流路は、ピストン52によって閉止されている。
【0024】
火災時には、制御ライン6に設けられた感知ヘッド7が火災の熱を受けて開放すると、感知ヘッド7から泡消火剤の放射が開始されることで、制御ライン6が減圧する。これに伴い、通水口57を通じて一次側配管2内の泡消火剤が制御ライン6に流入してくるが、通水口57の口径は、感知ヘッド7の口径よりも小さいため、制御ライン6から感知ヘッド7を通じて流出する水量が、制御ライン6に通水口57を通じて流入してくる水量を上回る。そのため、制御ライン6には一次側配管2に比べて急激な減圧が起こる。
この状態において、ピストン52は、ピストン52を一次側から押す力が、ピストン52を制御側から押す力よりも勝り、ピストン52は開放方向に付勢されて移動し(図3参照)、一次側配管2の泡消火剤が一気に二次側配管3へ流れ出す。この流水現象を流水検知装置12が検知し、消火設備1が起動すると、ポンプPが起動し、水源9から圧送されてきた水と貯蔵槽10内の泡消火原液が混合装置11において混合され、泡消火剤が一次側配管2、二次側配管3を通り、消火ヘッド4から散布される。
【0025】
ここで、例えば、火災が起きていない状態で、一次側配管2に車両等が衝突するなどして一次側配管2が破損し、一次側配管2から漏水が起きた場合を考える。一次側配管2内は漏水により急激に減圧する。仮に逆止弁8が取り付けられていないとすると、通水口57を通じて制御ライン6から一次側配管2への流水が起きることで、制御ライン6もまた次第に減圧していく。この時点ではまだピストン52は、ピストン52を一次側から押す力よりも、ピストン52を制御側から押す力が勝り、ピストン52は閉止方向に付勢されているため、一斉開放弁5は閉止しており、二次側配管3には泡消火剤は流れ込まない。しかし、一次側配管2の漏水を流水検知装置12が検知し、消火設備1が起動すると、ポンプPが起動し、一次側配管2内の圧力は急激に回復する。しかし、通水口57の口径は小さく、一次側配管2から制御ライン6への泡消火剤の流入は非常に遅いので、制御ライン6内の圧力の回復が一次側配管2内の圧力の回復よりも大幅に遅延する。
この状態においては、ピストン52を一次側から押す力が、ピストン52を制御側から押す力よりも勝るので、ピストン52は開放方向に付勢されて移動し、一斉開放弁5が開放し、一次側配管2の泡消火剤が一気に二次側配管3へ流れ出し、非火災にもかかわらず、消火ヘッド4から泡消火剤が散布されることとなる。しかし、火災ではないため、感知ヘッド7は開放しておらず、制御ライン6からの泡消火剤の流出は無いので、制御ライン6は通水口57からの泡消火剤の流入により、やがて一次側配管2内と同圧まで回復し、ピストン52は閉止方向に移動し、一斉開放弁5が閉止し、消火ヘッド4からの泡消火剤の放水は止まる。
【0026】
本実施形態においては、制御側接続口55には逆止弁8が取り付けられている。逆止弁8は、制御ライン6から一次側配管2への泡消火剤(加圧水)の流入(漏れ)を抑制しつつ、一次側配管2から制御ライン6への加圧水の流入を許容する。ここでは、逆止弁8は、全体として筒状を呈しており、一斉開放弁5側の開口83を閉止する弁体81と、弁体81を開口83に向けて押圧する弾性体82(例えばバネ)と、を含んでいる。ただし、逆止弁8はこのタイプに限られない。
【0027】
図1に戻って、逆止弁8の制御ライン6側の開口84には、制御ライン6が接続されている。制御ライン6は、予め設定された圧力範囲で泡消火剤が充填された配管であり、管内圧力が低減すると一斉開放弁5を開放させる。制御ライン6には感知ヘッド7が取り付けられており、感知ヘッド7は、火災を感知すると、泡消火剤を放出して制御ライン6の管内圧力を低減させる。なお、制御ライン6の末端には、制御ライン6を手動で開放するための操作弁13が取り付けられている。
【0028】
上述した構成を有する消火設備1では、人が操作弁13を操作するか、又は、感知ヘッド7が火災を感知し感知ヘッド7から泡消火剤が放出されることにより制御ライン6の管内圧力が減少し、一斉開放弁5のピストン52が開いて、一次側配管2と二次側配管3とが導通する。そして、流水検知装置12が作動し、混合装置11において、水と泡消火原液が混合されて泡消火剤が生成される。泡消火剤は、一次側配管2及び二次側配管3を経て消火ヘッド4から放出されることとなる。
【0029】
また、平時では、制御ライン6の管内圧力は所定の範囲に保たれており、ピストン52は二次側接続口54を閉止している。一次側配管2もまた所定の圧力範囲に保たれている。したがって、一次側から二次側に泡消火剤は流れない。
【0030】
このとき、もし一次側配管2が何らかの原因で損傷して漏水を生じさせると、一次側配管2内は漏水により急激に減圧し、続いて通水口57を通じて制御小室56bから一次側配管2への流水が起き、制御小室56b内の減圧は起きるが、逆止弁8が機能するため、制御ライン6の減圧は起こらない。その後、一次側配管2からの漏水を流水検知装置12が検知し、消火設備1が起動すると、ポンプPが起動し、一次側配管2内の圧力は急激に回復する。このとき、ピストン52を一次側から押す力が、ピストン52を制御側から押す力よりも勝り、ピストン52が瞬間的に開く可能性はあるが、通水口57から制御小室56bに泡消火剤が流入し、制御小室56b内の圧力が回復した段階でピストン52は直ちに閉止するため、泡消火剤の二次側配管3への流入を防止、あるいはごく短時間に食い止めることができる。
【0031】
この点、もし逆止弁8が設置されていなければ、一次側配管2の漏水時に、制御小室56bだけでなく制御ライン6内の圧力も減圧してしまうため、消火設備1が起動した際、制御小室56bだけでなく制御ライン6内の圧力も再び所定の圧力に回復するまで一斉開放弁5は閉止せず開きっ放しのため、その間二次側配管3に泡消火剤が流れ続け、消火ヘッド4からは長時間泡消火剤が誤放射され、水損、泡消火原液の損失、泡消火剤が放射された区画の養生や復旧作業、誤放射された泡消火剤の産廃処理などの各損失が大規模なものとなる。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・消火設備
2・・・一次側配管
3・・・二次側配管
4・・・消火ヘッド
5・・・一斉開放弁
6・・・制御ライン
7・・・感知ヘッド
8・・・逆止弁
図1
図2
図3