(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】野菜の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 22/15 20180101AFI20240219BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A01G22/15
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
(21)【出願番号】P 2020013644
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】301075569
【氏名又は名称】株式会社やまへい
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塩川 正徳
(72)【発明者】
【氏名】塩川 操子
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-206928(JP,A)
【文献】特開平09-216806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0168110(US,A1)
【文献】増井貞雄,軟弱そ菜の種類と作り方,牧草と園芸,1973年06月01日,Vol. 21, No. 6,pp. 1 - 6
【文献】漬物汁で酵母液を作ろう。,魚沼の散歩道,2009年03月14日,https://blog.goo.ne.jp/nori-3813/e/74fa5ecfaac4c7f1d770d990488a993b
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/15
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野沢菜の種が埋め込まれた土を収容する育苗容器をハウス内に配置することと、
前記
野沢菜の発芽前から前記ハウス内に配置された前記育苗容器の周辺温度を加熱することと、
前記ハウス内に配置された前記育苗容器内の前記土から発芽した
野沢菜に光を照射して光合成を促進することと、
前記ハウス内に配置された前記育苗容器内の前記土から発芽した前記
野沢菜の草丈が8cm以上になってから、
週に1から3回、前記土に液体肥料を加えることと、
前記ハウス内に配置された前記育苗容器内の前記土から生えた前記
野沢菜が所定の草丈になったら、前記
野沢菜を収穫することと、
を含み、
前記液体肥料が野沢菜漬けの漬け汁を含み、
前記
野沢菜が収穫されるまで、前記
野沢菜が前記育苗容器から除去されない、
野沢菜の栽培方法。
【請求項2】
前記ハウスが太陽光透過性のハウスである、請求項1に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項3】
前記ハウスがビニールハウス又はガラスハウスである、請求項1又は2に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項4】
前記土が、バーミキュライト、腐葉土、赤玉土、鹿沼土、及び貝化石生成土壌改良剤から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項5】
前記育苗容器の開口部の直径が2cm以上10cm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項6】
前記育苗容器の深さが2cm以上8cm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項7】
前記ハウス内に配置された光源の発光により、前記
野沢菜の発芽前から前記ハウス内に配置された前記育苗容器の周辺温度を加熱する、請求項1から6のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項8】
前記
野沢菜の発芽前から前記ハウス内に配置された前記育苗容器の周辺温度を3℃以上加熱する、請求項1から6のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項9】
前記ハウス内に配置された前記育苗容器内の前記土から発芽した
野沢菜に光を照射して光合成を促進することにおいて、日照時間外に2時間以上、前記
野沢菜に光を照射する、請求項1から8のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項10】
前記液体肥料が糖を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【請求項11】
前記液体肥料が野沢菜漬けの漬け汁を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の
野沢菜の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業技術に関し、野菜の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野沢菜漬けは、野沢菜を塩漬けにしたものである。野沢菜は、塩漬けにされることによって、自己消化が活発になり、青臭さやアクが低下する。また、野沢菜が塩漬けにされることによって、細胞内の成分が漬け汁中に浸出する。漬け汁中に浸出した細胞内の成分は、乳酸菌や酵母の栄養素となり、乳酸菌や酵母からアミノ酸や有機酸が産生される。そのため、野沢菜漬けは、美味な健康食品として愛好されている(例えば、特許文献1から4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-17649号公報
【文献】特公平4-12932号公報
【文献】特許3699605号公報
【文献】特開2014-11979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
野沢菜の栽培時期は限られ、また栽培時間も長い。野沢菜に限らず、野菜全般について、手軽な栽培方法が求められている。そこで、本発明は、野菜を手軽に栽培可能な野菜の栽培方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施の態様によれば、野菜の種が埋め込まれた土を収容する育苗容器をハウス内に配置することと、野菜の発芽前からハウス内に配置された育苗容器の周辺温度を加熱することと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から発芽した野菜に光を照射して光合成を促進することと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から発芽した野菜の草丈が8cm以上になってから、土に液体肥料を加えることと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から生えた野菜が所定の草丈になったら、野菜を収穫することと、を含み、野菜が収穫されるまで、野菜が育苗容器から除去されない、野菜の栽培方法が提供される。
【0006】
上記の野菜の栽培方法において、ハウスが太陽光透過性のハウスであってもよい。
【0007】
上記の野菜の栽培方法において、ハウスがビニールハウス又はガラスハウスであってもよい。
【0008】
上記の野菜の栽培方法において、土が、バーミキュライト、腐葉土、赤玉土、鹿沼土、及び貝化石生成土壌改良剤から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0009】
上記の野菜の栽培方法において、育苗容器の開口部の直径が2cm以上10cm以下であってもよい。
【0010】
上記の野菜の栽培方法において、育苗容器の深さが2cm以上8cm以下であってもよい。
【0011】
上記の野菜の栽培方法において、ハウス内に配置された光源の発光により、野菜の発芽前からハウス内に配置された育苗容器の周辺温度を加熱してもよい。
【0012】
上記の野菜の栽培方法において、野菜の発芽前からハウス内に配置された育苗容器の周辺温度を3℃以上加熱してもよい。
【0013】
上記の野菜の栽培方法において、ハウス内に配置された育苗容器内の土から発芽した野菜に光を照射して光合成を促進することにおいて、日照時間外に2時間以上、野菜に光を照射してもよい。
【0014】
上記の野菜の栽培方法において、液体肥料が糖を含んでいてもよい。
【0015】
上記の野菜の栽培方法において、液体肥料が野沢菜漬けの漬け汁を含んでいてもよい。
【0016】
上記の野菜の栽培方法において、野菜がアブラナ科の野菜であってもよい。
【0017】
上記の野菜の栽培方法において、野菜がアブラナ属の野菜であってもよい。
【0018】
上記の野菜の栽培方法において、野菜が野沢菜であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、野菜を手軽に栽培可能な野菜の栽培方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、本開示の一部をなす記述は、本発明を限定するものであると理解するべきではない。本開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【0022】
本発明の実施形態に係る野菜の栽培方法は、野菜の種が埋め込まれた土を収容する育苗容器をハウス内に配置することと、野菜の発芽前からハウス内に配置された育苗容器の周辺温度を加熱することと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から発芽した野菜に光を照射して光合成を促進することと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から発芽した野菜の草丈が8cm以上になってから、土に液体肥料を加えることと、ハウス内に配置された育苗容器内の土から生えた野菜が所定の草丈になったら、野菜を収穫することと、を含む。本実施形態に係る野菜の栽培方法において、野菜が収穫されるまで、野菜が育苗容器から除去されない。
【0023】
野菜は、例えば、アブラナ科の野菜である。野菜は、例えば、アブラナ属の野菜である。野菜は、例えば、野沢菜、アブラナ、ミズナ、及びコマツナから選択される。
【0024】
野菜の種がまかれた土を収容している育苗容器を用意する。土は、バーミキュライト、培土(腐葉土)、赤玉土、鹿沼土、及びシェルホード(貝化石生成土壌改良剤)から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。育苗容器の例としては、育苗ポット、育苗トレイ、及び育苗箱が挙げられる。育苗容器は、例えば、ポリエチレン、又はポリ塩化ビニルからなる。育苗容器の開口部の直径は、例えば、2cm以上10cm以下、3cm以上9cm以下、あるいは4cm以上8cm以下である。また、育苗容器の深さは、例えば、2cm以上8cm以下、3cm以上7cm以下、あるいは4cm以上6cm以下である。土の酸性度は中性が好ましく、pHは例えば6.5以上7.0以下である。土は、以前に野菜の栽培に使用していない土であることが好ましい。
【0025】
育苗容器をハウス内に配置する。ハウスは、例えば、太陽光透過性のハウスである。太陽光透過性のハウスは、例えば、壁面及び屋根の少なくとも一部が、太陽光透過性の材料からなる。太陽光透過性のハウスの例としては、ビニールハウス及びガラスハウスが挙げられる。ハウスは、ハウス外の風がハウス内に吹き込むことを抑制する。ハウス内の温度は、例えば、15℃以上25℃以下、16℃以上24℃以下、あるいは17℃以上23℃以下である。
【0026】
育苗容器をハウス内に配置した後、野菜の発芽前から育苗容器の周辺温度を加熱する。これにより、野菜の発芽と、発芽後の成長が促進される。例えば、ハウス内に配置された光源の発光により、育苗容器の周辺温度を加熱する。光源の例としては、発光ダイオード(LED)及び白熱電球が挙げられる。育苗容器の周辺温度を、例えば、3℃以上、4℃以上、あるいは5℃以上加熱する。
【0027】
土から野菜が発芽した後、野菜に光を照射して、光合成を促進する。発芽前から育苗容器の周辺温度の加熱のために、育苗容器に向けて光源から光を照射していた場合は、発芽後も、そのまま光源から光を発芽した野菜に照射すればよい。ただし、発芽した野菜への照射時間は、光合成促進の観点から、日照時間外の2時間以上、3時間以上、あるいは4時間以上でよく、日照時間内に、太陽以外の光源から光を照射しなくともよい。
【0028】
発芽した野菜の草丈が8cm以上、9cm以上、あるいは10cm以上になってから、土に液体肥料を加える。液体肥料は、例えば、糖及びアミノ酸を含む。液体肥料を、例えば、週に1から3回、土にまく。液体肥料を土にまかない日に、水を土にまく。なお、肥料焼けの原因になるため、発芽した野菜の草丈が8cm以上、9cm以上、あるいは10cm以上になる前に、液体肥料を土にまかないことが好ましい。
【0029】
液体肥料として、野沢菜漬けの漬け汁を使用することが可能である。トレハロース等の糖類と、アミノ酸と、を含む野沢菜漬けの漬け汁は、野菜の育成を促進する。
【0030】
土から生えた野菜が所定の草丈になったら、野菜を収穫する。例えば、野菜が野沢菜である場合、草丈が30cm以上、40cm以上、50cm以上、あるいは60cm以上になったら、野沢菜を収穫する。収穫するまで、野菜はハウス内に配置された育苗容器から除去されない。
【0031】
本実施形態に係る野菜の栽培方法によれば、野菜を収穫するまで、野菜を育苗容器で栽培するため、野菜の栽培前に畑の土壌の整備が不要である。そのため、畑の土壌の整備の経験がない者でも、ハウスさえあれば、手軽に野菜を栽培することが可能である。
【0032】
(実施例)
野沢菜の種をまいた土を収容する育苗トレイを、
図1に示すビニールハウス内に配置した。土は、バーミキュライト、培土(腐葉土)、赤玉土、鹿沼土、及びシェルホード(貝化石生成土壌改良剤)を含んでいた。
図2に示すように、野沢菜の発芽前から、育苗トレイに向けてLEDから光を照射し、育苗トレイの周辺温度を5℃上昇させた。種をまいてから1週間で野沢菜が発芽した。発芽した野沢菜の写真を
図3に示す。野沢菜が発芽した後も、日照時間外の2時間、野沢菜に向けてLEDから光を照射し、野沢菜の光合成を促進した。栽培中の野沢菜の写真を
図4から
図6に示す。種をまいてから10日間で野沢菜の草丈が10cmになった。野沢菜の草丈が10cmになってから、育苗トレイ中の土に液体肥料として野沢菜漬けの漬け汁を週2回まいた。野沢菜漬けの漬け汁をまかない日には、育苗トレイ中の土に水をまいた。
図7に示すように、収穫できるようになるまで、ビニールハウス内の育苗トレイで、野沢菜を栽培した。ビニールハウス内には風が吹き込まないため、軸がしっかりした野沢菜を栽培することができた。