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  • 特許-円柱状部材用の保持治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】円柱状部材用の保持治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
E02D9/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077375
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173044
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】512064619
【氏名又は名称】株式会社オトワコーエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】小島 一彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-251520(JP,A)
【文献】実開昭60-091626(JP,U)
【文献】特開2012-082576(JP,A)
【文献】特開2016-113773(JP,A)
【文献】特開昭50-068948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中に埋設された杭やケーシング等の円柱状部材を抜き取る際に該円柱状部材を保持するための治具であって、
前記円柱状部材の外周を取り囲む多角形状を成した環状の枠体を具備し、
前記枠体を構成する部材として、
屈曲形状を有し前記枠体の角部を構成する複数の固定長さ部材と、
前記枠体の直線部を構成し、前記円柱状部材と前記枠体とを仮止めさせる仮止め部材を保持する保持部材と、
前記固定長さ部材と前記保持部材との間に介在させる複数のスペーサと、を備え、
前記スペーサを介して連結される前記固定長さ部材と前記保持部材との間隔が調整可能に構成されている、
ことを特徴とする円柱状部材用の保持治具。
【請求項2】
前記スペーサは、前記固定長さ部材の端部及び/又は前記保持部材の端部と嵌合可能で、前記固定長さ部材及び/又は前記保持部材に対し、異なる嵌合深さで連結固定可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の円柱状部材用の保持治具。
【請求項3】
前記スペーサ、前記固定長さ部材及び/又は前記保持部材にはそれぞれ連結用の貫通孔が形成され、互いに重なり合うように位置合わせされたこれら貫通孔に棒状の固定具を挿通させることで、前記スペーサを介して前記固定長さ部材と前記保持部材とが連結固定されるように構成されるとともに、
前記スペーサには長手方向の異なる位置に前記貫通孔が複数設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の円柱状部材用の保持治具。
【請求項4】
前記固定長さ部材は120度で屈曲し、枠体は全体で六角形を構成する、請求項1~3のいずれかに記載の保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に埋設された杭やケーシング等の円柱状部材を抜き取る際に用いられる円柱状部材用の保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物の解体撤去等により土中に埋設された杭を引き抜く場合がある。このような場合、掘削用ケーシングによって杭の周囲を掘削した後、支持用のワイヤを杭の上部に巻着させ、杭を地面から所定高さ分だけ吊り上げ、その後、杭の上部を切断して順次撤去することが行われている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-197932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような引き抜き工法においては、地面から所定高さ分だけ吊り上げられた杭を、一旦、保持治具を用いて地盤に保持固定することが行われている。この際に用いられる保持治具は杭の外径に合わせた専用治具であるため、作業者は杭の外径毎に多くの種類の専用治具を準備しなければならず、作業が煩雑化して作業コストが増大する問題があった。
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、異なる外径の円柱状部材であっても良好に保持することが可能な円柱状部材用の保持治具を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明に想到した。
この発明の第1の局面の円柱状部材用の保持治具は次のように規定される。即ち、
土中に埋設された杭やケーシング等の円柱状部材を抜き取る際に該円柱状部材を保持するための治具であって、
前記円柱状部材の外周を取り囲む多角形状を成した環状の枠体を具備し、
前記枠体を構成する部材として、
屈曲形状を有し前記枠体の角部を構成する複数の固定長さ部材と、
前記枠体の直線部を構成し、前記円柱状部材と前記枠体とを仮止めさせる仮止め部材を保持する保持部材と、
前記固定長さ部材と前記保持部材との間に介在させる複数のスペーサと、を備え、
前記スペーサを介して連結される前記固定長さ部材と前記保持部材との間隔が調整可能に構成されている。
【0007】
このように規定される第1の局面の円柱状部材用の保持治具によれば、固定長さ部材と保持部材との間に介在させたスペーサにより、枠体全体の大きさを円柱状部材の外径に合わせて調整することが可能となるため、外径が異なる複数の円柱状部材であっても一つの保持治具を用いて良好に保持することが可能である。
仮止め部材としては、円柱状部材と保持部材との間に締まり嵌めされる楔状部材の他、円柱状部材の周面に差し込まれるピン等を用いることができる。
固定長さ部材と保持部材との間隔を調整するスペーサとしては、固定長さ部材と保持部材と同じ横断面形状を持つ部材を準備し、これらに対して外側から当てるパッチをもってスペーサとすることができる。即ち、各種長さのスペーサを準備し、固定長さ部材とスペーサと、及びスペーサと保持部材とをそれぞれパッチを使って固定する。
固定長さ部材と保持部材に対して嵌合可能な部材をスペーサとすることもできる。この場合、嵌合量を調整することで保持具の径を調整できる。
【0008】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の保持治具において、前記スペーサは、前記固定長さ部材の端部及び/又は前記保持部材の端部と嵌合可能で、前記固定長さ部材及び/又は前記保持部材に対し、異なる嵌合深さで連結固定可能に構成されている。
固定長さ部材と保持部材との間隔を調整可能とするためには、スペーサ自体を伸縮可能に構成することも考えられるが、第2の局面の保持治具のように、固定長さ部材及び/又は保持部材に対するスペーサの嵌合深さを変化させることで、枠体全体の大きさを容易に調整することができる。
【0009】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第2の局面で規定の保持治具において、前記スペーサ、前記固定長さ部材及び/又は前記保持部材にはそれぞれ連結用の貫通孔が形成され、互いに重なり合うように位置合わせされたこれら貫通孔に棒状の固定具を挿通させることで、前記スペーサを介して前記固定長さ部材と前記保持部材とが連結固定されるように構成されるとともに、
前記スペーサには長手方向の異なる位置に前記貫通孔が複数設けられている。
このように規定される第3の局面の保持治具によれば、スペーサに設けられた複数の貫通孔に基づいて段階的に枠体の大きさを調整することができる。スペーサに設けられた複数の貫通孔の位置を、それぞれ外径の異なる円柱状部材に対応付けておけば、枠体を円柱状部材の外径に合わせた大きさに調整するための作業を簡便に行うことができる。
【0010】
かかる保持治具の枠体は全体で6角形を構成することが好ましい(第4の局面)。円柱状部材に対して対向するするように楔部材を配置できるからである。枠体を複数角形にすれば、楔部材は対向配置となるが、四角形では、屈曲した固定長さ部材が円柱状部材から大きく離れるので、専有面積の観点から好ましくない。また、各楔部材にかかる荷重が大きくなりすぎて、耐久性の確保も困難となる。他方、枠体が8角形以上となると、部品点数が多くなりすぎて好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る保持治具の斜視図である。
図2図2(A)は図1の枠体の平面図、図2(B)は図2(A)におけるB-B矢視線での保持部材の断面図である。
図3図3図2の枠体の一部を分解して示した斜視図である。
図4図4(A)、図4(B)、図4(C)はそれぞれ外径の異なる円柱状部材に合わせて大きさを調整した状態の枠体を示した図である。
図5図5図1の保持治具を用いて円柱状部材を保持した状態を示した図である。
図6図6(A)は本発明の第2実施形態に係る保持治具の平面図、図6(B)は図6(A)におけるB-B矢視線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る円柱状部材用の保持治具1の斜視図である。図1における上下方向は、保持治具1を実際に使用する際の上下方向と同じである。
保持治具1は、土中に埋設された杭やケーシング等の円柱状部材3(図5参照)を抜き取る際、円柱状部材3を一旦保持するために用いられるもので、図1に示すように、枠体5と複数の楔状部材4とを備えている。
【0014】
仮止め部材としての楔状部材4は、鋼鉄製で、第1平坦面11と第2平坦面12とを有し、上端部(基端部)から下端部(先端部)に向かうにつれて厚みが小さくなっており、側面視で略直角三角形をなしている。上下方向の長さ寸法Lは、後述する保持部材23の高さH(図2(B)参照)と略同一である。また、上端部における厚さTは後述する枠体5の内面から円柱状部材3の外面までの隙間寸法S(図2(A)参照)と略同一である。
【0015】
楔状部材4は、保持対象の円柱状部材3と枠体5との間に圧入された際、内向きの第1平坦面11を円柱状部材3の外面に当接させて、円柱状部材3に径方向内向きの力を作用させる。その際の反力は第2平坦面12が当接する保持部材23にて受け止められる。本実施形態の保持治具1においては、6つの楔状部材4を備えており、周方向異なる6箇所の位置から円柱状部材3を押圧するように構成されている。
尚、本発明における「楔状部材」とは円柱状部材3と枠体5との間に介在した状態で、楔と同様の効果が得られ、円柱状部材3に径方向内向きの押圧力を作用させることが可能な部材をいう。
円柱状部材3に対して枠体5を仮止め固定するには、上記の楔状部材の他、ピンを円柱状部材3の周面に打ち込んでもよい。このピンの先端部分が保持部材で保持される。
【0016】
枠体5は、多角形状の環状部材で、枠体5の内側の領域20に円柱状部材3が収容される。図2で示すように、本実施形態の枠体5は六角形状とされており、6箇所の角部と、隣接する角部の間に設けられた同じく6箇所の直線部を有している。
【0017】
枠体5は、固定長さ部材21、保持部材23、スペーサ25を構成部材として含んでいる。図3に示すように、固定長さ部材21、保持部材23、スペーサ25は、それぞれが別体で設けられており、ボルト・ナットより成る固定具27により連結固定されている。枠体5では、図2(A)に示すように、スペーサ25を介して固定長さ部材21と保持部材23とが間隔Pにて連結固定されているが、後述するように本実施形態では間隔Pが調整可能とされている。
【0018】
枠体5の角部を構成する固定長さ部材21は、一対の4角筒状の鋼材を用い平面視で屈曲形状となるように一体に溶接されたものである。固定長さ部材21の両端部には、それぞれスペーサ25の差込みを可能とする開口35,35が形成されており、対向する側壁(内側壁31及び外側壁32)には固定具27を挿通させるための貫通孔36が形成されている。
【0019】
枠体5の直線部を構成する保持部材23は、直線状に延びる直管部40と、直管部40の内側壁41から枠体5の内側方向に向けて突出する受け部本体50と、を備えている。
直管部40は4角筒状の鋼材から成り、直管部40の両端部には、それぞれスペーサ25の差込みを可能とする開口45,45が形成されている。この開口45は固定長さ部材21の開口35と同じ大きさで同一形状に形成されていることが望ましい。直管部40の端部における対向する側壁(内側壁41及び外側壁42)には固定具27を挿通させるための貫通孔46が形成されている。
【0020】
受け部本体50は、楔状部材4からの荷重を直接受ける部位であり、直管部40の内側壁41における長手方向の中央部に形成されている。受け部本体50には、直管部40の上面から下面に向かうにつれて内側壁41から離間する傾斜面52が形成されている。図2(B)に示すように、この傾斜面52は、楔状部材4の第2平坦面12が当接した状態で、楔状部材4の第1平坦面11が略鉛直となるようその傾きが規定されている。
【0021】
スペーサ25は、固定長さ部材21と保持部材23との間に介在し、固定長さ部材21と保持部材23との間隔Pを調整するための部材である。スペーサ25は、図3に示すように、直線状に延びるH型鋼からなり、スペーサ25の一方の端部は固定長さ部材21の端部開口35に、また他方の端部は保持部材23の端部開口45に差込み可能とされている。図3に示すように、一対のフランジ61,61の対向する位置には、固定具27を通孔させるための貫通孔65が長手方向に沿って複数形成されている。スペーサ25における、固定長さ部材21の内部に内嵌状態に保持される部位には長手方向に沿って貫通孔65a,65b,65cが形成されている。また保持部材23の内部に内嵌状態に保持される部位にも同様に長手方向に沿って貫通孔65a,65b,65cが形成されている。これら貫通孔65a,65b,65cの位置は、それぞれ外径の異なる円柱状部材3A,3B,3C(図4参照)を保持するために好適な大きさの枠体5が得られるように定められている。
【0022】
以上のように、固定長さ部材21、保持部材23、スペーサ25を構成部材として含む枠体5は、スペーサ25の一端を固定長さ部材21の内部に内嵌状態に保持させた状態で、重なり合ったスペーサ25及び固定長さ部材21のそれぞれの貫通孔65及び36に固定具27を挿通させるとともに、スペーサ25の他端を保持部材23の内部に内嵌状態に保持させた状態で、重なり合ったスペーサ25及び保持部材23のそれぞれの貫通孔65及び46に固定具27を挿通させることで、これら固定長さ部材21、保持部材23、スペーサ25が相互に連結され、枠体5の周長、即ち枠体5の大きさが規定される。
【0023】
ここで、枠体5の大きさは保持対象の円柱状部材3との関係で決定される。円柱状部材3を良好に保持するためには、図2(A)で示す枠体5(詳しくは枠体5の保持部材23)の内面から円柱状部材3の外面までの隙間寸法Sが楔状部材4の厚さTと略同一であることが重要である。
【0024】
ここで本実施形態では、スペーサ25の複数の貫通孔65a,65b,65cの位置が、それぞれ外径の異なる円柱状部材3A,3B,3Cに対応するように定められているため、スペーサ25の嵌合深さを変更して連結固定時に使用する貫通孔を変更することで、固定長さ部材21と保持部材23との間隔Pが調整される。これにより、枠体5の周長をそれぞれ円柱状部材3A,3B,3Cに対応可能な周長に変化させることができる。
【0025】
図4は保持対象となる円柱状部材3A、3B、3Cの外径に合わせて枠体5の周長、即ち大きさを変化させた状態を示した図である。保持対象となる円柱状部材3A、3B、3Cの外径は、それぞれD1、D2、D3(D1<D2<D3)とする。
【0026】
図4(A)に示すように、外径D1の円柱状部材3Aを保持する際には、スペーサ25に形成された貫通孔65a(図3参照)を用いて固定長さ部材21及び保持部材23を連結固定することで、枠体5の内面から円柱状部材3Aの外面までの隙間寸法Sを好適に確保することができる。
【0027】
また図4(B)に示すように、円柱状部材3Aよりも外径寸法が大きい円柱状部材3Bを保持する際には、スペーサ25の嵌合深さを図4(A)の場合よりも浅くして、スペーサ25に形成された貫通孔65bを用いて固定長さ部材21及び保持部材23を連結固定することで、枠体5の周長が長くなり(枠体全体が拡径され)、枠体5の内面から円柱状部材3Bの外面までの隙間寸法Sを好適に確保することができる。
【0028】
円柱状部材3Bよりも更に外径寸法が大きい円柱状部材3Cを保持する際には、図4(C)に示すように、スペーサ25の嵌合深さを図4(B)の場合よりも更に浅くして、スペーサの貫通孔65cを用いて固定長さ部材21及び保持部材23を連結固定することで、枠体5の内面から円柱状部材3Cの外面までの隙間寸法Sを好適に確保することができる。
【0029】
次に本実施形態の保持治具1を用いて円柱状部材3を保持する作業について説明する。
上記のように円柱状部材3の外径に合わせて大きさを調整した枠体5を、図5に示すように、円柱状部材3の外周を取り囲むように地面Gに載置した上で、6つの楔状部材4をそれぞれ周方向異なる位置において枠体5の保持部材23と円柱状部材3との間に押し込むと、楔効果により円柱状部材3は、各楔状部材4により径方向内向きに押圧され、強固に固定保持される。
【0030】
以上のように本実施形態の保持治具1では、スペーサ25を介して連結される固定長さ部材21と保持部材23との間隔Pが調整可能に構成されているため、枠体5全体の大きさを円柱状部材3の外径に合わせて調整することができる。このため、外径が異なる複数の円柱状部材3A、3B、3Cであっても一つの保持治具1を用いて良好に保持することが可能である。
【0031】
本実施形態の保持治具1は、スペーサ25が固定長さ部材21の端部及び保持部材23の端部と嵌合可能で、更にスペーサ25が固定長さ部材21及び保持部材23に対し、異なる嵌合深さで固定可能に構成されている。
このため保持治具1によれば、固定長さ部材21及び保持部材23に対するスペーサ25の嵌合深さを変化させることで、枠体5全体の大きさを容易に調整することができる。
【0032】
また本実施形態の保持治具1では、スペーサ25、固定長さ部材21及び保持部材23にそれぞれ連結用の貫通孔65、36及び46が形成され、更にスペーサ25には長手方向の異なる位置に貫通孔65が複数設けられている。このため保持治具1によれば、スペーサ25に設けられた複数の貫通孔に基づいて段階的に枠体の大きさを調整することができる。スペーサ25に設けられた複数の貫通孔65a,65b,65cの位置を、それぞれ外径の異なる円柱状部材に対応付けておけば、保持治具1の枠体5の大きさを調整するための作業を容易に行うことができる。
【0033】
(第2実施形態)
図6に本発明の第2実施形態に係る保持治具1Bを示す。保持治具1Bは、六角形状の枠体5Bを具備し、枠体5Bは固定長さ部材21と、保持部材23Bと、スペーサ25とを構成部材として含んでいる。そして、第1実施形態の楔状部材4に代えて複数の押圧片75を備えている。なお、保持治具1Bの構成各部のうち、第1実施形態に係る保持治具1の構成と共通する構成については同じ符号を用いて示すとともに、その説明を省略する。
【0034】
保持治具1Bでは、保持部材23Bにおける直管部40の上面に立設する一対の支持板70,70にて軸体72が支持され、この軸体72周りに円板状の押圧片75が回転可能に取り付けられている。押圧片75は、軸体72の軸心Xに対して偏心した状態で取り付けられており、図6(B)で示すように、押圧片75を軸体72周りに回転させると、円柱状部材3と保持部材23Bとの間に介在する押圧片75の厚みtが増大して、第1実施形態の楔状部材4と同様に円柱状部材3に対して径方向内向きの押圧力を作用させることができる。即ち、この押圧片75もまた本発明の楔状部材に相当するものである。尚、76は押圧片75を回転させるための操作軸である。
【0035】
このように構成された本実施形態の保持治具1Bにおいても、スペーサ25を介して連結される固定長さ部材21と保持部材23Bとの間隔Pが調整可能に構成されているため、枠体5B全体の大きさを円柱状部材3の外径に合わせて調整することができ、外径が異なる複数の円柱状部材であっても一つの保持治具1Bを用いて良好に保持することが可能である。
【0036】
上記の実施例では、固定長さ部材と保持部材とに角材を採用し、スペーサにH鋼を採用して、後者を前者へ挿入する形態である。
固定長さ部材と保持部材とにH鋼を採用し、スペーサに角材を採用して、後者へ前者を挿入する形態としてもよい。
また、固定長さ部材と保持部材として角材(若しくはH鋼)を最小し、スペーサにも同じ径(横断面形状)の角材(若しくはH鋼)を採用することができる。かかる構成を採用した場合、固定長さ部材の端部とスペーサの一端の外側面に鋼板(パッチ)をあてつけてボルト等で固定し、同じくスペーサの他端と保持部材の端部の鋼板(パッチ)をあてつけてボルト等で固定する。
【0037】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。例えば本発明の保持治具が具備する環状の枠体は、六角形状に限定されるものではなく、三角以上であれば六角以外の多角形状とすることも可能である。また上記実施形態では、スペーサを固定長さ部材及び保持部材とは別体に設けているが、スペーサを固定長さ部材又は保持部材の何れか一方と一体に接合し、固定長さ部材又は保持部材の何れか他方の端部に対し嵌合可能に構成することも可能である。また上記実施形態では、スペーサを固定長さ部材及び保持部材に対して内嵌可能としているが、スペーサを固定長さ部材及び保持部材に対して外嵌可能に構成することも可能である等、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1,1B 保持治具
3,3A,3B,3C 円柱状部材
4 楔状部材
5,5B 枠体
21 固定長さ部材
23,23B 保持部材
25 スペーサ
27 固定具
36 固定長さ部材の貫通孔
46 保持部材の貫通孔
65,65a,65b,65c スペーサの貫通孔
75 押圧片(楔状部材)
P 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6