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特許7438552注射用医薬品、注射用調製物、および注射用医薬品の製造における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】注射用医薬品、注射用調製物、および注射用医薬品の製造における使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240219BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20240219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240219BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/86 Z
A61K35/768
A61P35/00
A61K9/08
A61P35/02
C07K14/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021215459
(22)【出願日】2021-12-29
(62)【分割の表示】P 2018532498の分割
【原出願日】2016-09-09
(65)【公開番号】P2022061989
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】201510568718.5
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  V201520
(73)【特許権者】
【識別番号】518083755
【氏名又は名称】北京▲錘▼特生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウァン, ヤオフ
(72)【発明者】
【氏名】ウァン, ペンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ニック, レムイン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, ドンリン
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500021(JP,A)
【文献】特表2014-509197(JP,A)
【文献】Lieschke, G. J. et al.,Bioactive murine and human interleukin-12 fusion proteins which retain antitumor activity in vivo,Nature Biotechnology,1997年,Vol. 15(1),pp. 35-40
【文献】PASSER, B. J. et al.,Combination of vinblastine and oncolytic herpes simplex virus vector expressing IL-12 therapy increases antitumor and antiangiogenic effects in prostate cancer models,Cancer Gene Therapy,2013年,Vol. 20(1),pp. 17-24
【文献】Ho, M. et al.,Isolation of anti-CD22 Fv with high affinity by Fv display on human cells,Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.,2006年,Vol. 103(25),pp. 9637-9642,https://www.yonex.co.jp/company/pr/pdf/150116_02.pdf
【文献】Zhang, J. et al.,Mammalian cell display for rapid screening scFv antibody therapy,Acta Biochim. Biophys. Sin.,Vol. 46(10),2014年,pp. 859-866
【文献】Davis, M. J. et al.,Differential use of signal peptides and membrane domains is a common occurrence in the protein output of transcriptional units,PLoS Genet.,2006年,Vol. 2(4): e46,pp. 0554-0563
【文献】阪口 雅郎,膜タンパク質のトポロジー形成:小胞体系と小胞体標的化回避,生化学,2003年,NO. 6,pp. 1-8
【文献】Pan, Wen-Yu et al.,Cancer Immunotherapy Using a Membrane-bound Interleukin-12 With B7-1 Transmembrane and Cytoplasmic Domains,Molecular Therapy,2012年,Vol. 20(5),pp. 927-937
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p40-リンカー-p35の構造を有し、分泌シグナルペプチドを含まない非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列を含み、前記非分泌性IL-12を発現させることができる腫瘍溶解性ウイルスを含む注射用医薬品
【請求項2】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、凍結乾燥(lyophilizating)条件下で保存されている、請求項1に記載の注射用医薬品。
【請求項3】
請求項1に記載の注射用医薬品と、
水性および非水性の滅菌注射溶液と、
水性および非水性の滅菌懸濁液と、を含む注射用調製物。
【請求項4】
前記滅菌注射溶液は、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および被験体の血液と調製物との間の圧力を平衡させることができる溶質、を含み、
前記滅菌懸濁液は懸濁化剤および増粘剤を含む、請求項3に記載の注射用調製物。
【請求項5】
p40-リンカー-p35の構造を有し、分泌シグナルペプチドを含まない非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列を含み、前記非分泌性IL-12を発現させることができる腫瘍溶解性ウイルスの、対象におけるIL-12の毒性および副作用の抑制または排除のための注射用医薬品の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学バイオテクノロジーの分野に関し、特に、改変型インターロイキン12(以下、nsIL-12と称する)およびその遺伝子、組換えベクター、ならびに腫瘍の治療のための医薬品の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン12(IL-12)は、主に樹状細胞、単球、マクロファージおよびB細胞などの抗原提示細胞によって分泌される免疫調節サイトカインであり、ジスルフィド結合を介して連結する2つのサブユニットp35およびp40からなるヘテロ二量体である。IL-12の主な機能はT細胞の分化に関与し、T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化し、インターフェロンγを分泌するようにT細胞およびNK細胞を刺激し、NK細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を媒介し、先天性免疫および適応免疫に関与するので多機能性の強い免疫調節因子であるIL-12受容体、IL-12R-β1およびβ2の発現を促進する。
【0003】
現在、様々な方法でIL-12の抗腫瘍効果を研究する多くの研究室がある。例えば、IL-12含有プラスミドを用いたエレクトロポレーションによる腫瘍細胞の形質転換、生分解性ミクロスフェアに封入されたIL-12プラスミドを用いて腫瘍細胞を形質転換、組換えIL-12タンパク質、抗体およびIL-12のキメラ、IL-12を発現する免疫細胞、IL-12を含有するアデノウイルス/レトロウイルスベクターなどを用いて癌
治療を行うこと、化学療法、放射線療法および免疫療法と組み合わせてIL-12を使用することによって腫瘍療法を行うことを含む。これらの研究は、これらのIL-12が、ヒトおよびマウスの腫瘍細胞量の退縮および減少、ならびに腫瘍における血管新生の減少を引き起こし得ることを示した。しかしながら、上記の種々のIL-12のin vivo半減
期は非常に短く、治療効果を達成するためにはこれらのIL-12に対する持続投与および比較的大量(1から10μg/日)が通常必要であるのに対し、高用量のIL-12はしばしば重篤な全身性の副作用を招く。従って、in vivoでのIL-12の短い半減期お
よび毒性副作用の問題に対処することが急務である。
【0004】
IL-12の全身投与は、潜在的に致死毒性を引き起こすかもしれないことから、これまで臨床的使用を妨げていた。IL-12を臨床的に適用するために、IL-12の毒性を低下させるための多くの開発戦略が研究のホットスポットであり、一連のIL-12の改変方法が開発されている。例えば、IL-12の発現を制御するために経口リガンド薬物に依存するシステムは、IL-12によって誘導される毒性を有意に減少させることができるが、腫瘍細胞に効果的に形質導入することができず、同時に誘発される炎症応答が欠如し、このためこの方法の抗腫瘍適用を制限する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
IL-12の抗腫瘍効力を適用するために、本発明は、抗腫瘍能を保持または増強するが、その毒性は弱められまたは排除された新規再構成IL-12を開示する。これに関連して、N末端シグナルペプチドの欠失を有する改変型IL-12を新規の腫瘍標的化腫瘍溶解性ウイルスベクターに挿入して、非分泌性IL-12を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスを構築し、その治療効果およびIL-12機能も開示されている。これに基づいて、本発明は、改変型インターロイキン12(nsIL-12という)およびその遺伝子、組換えベクター、ならびに腫瘍の治療のための医薬品の製造における使用を提供する
【0006】
本発明の一実施形態においては、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなる改変型
インターロイキン12をコードするヌクレオチド配列が提供される。
【0007】
改変型インターロイキン12をコードするヌクレオチド配列は、ヒトインターロイキン12ヌクレオチド配列に由来するが、配列番号1のヌクレオチド配列とは異なるヌクレオチ
ド配列であってもよく、それによってコードされるタンパク質は抗腫瘍効果を示すか、または腫瘍退縮を引き起こす可能性があり、既存のIL-12と比較してより低い毒性および副作用を有する。
【0008】
本発明の他の実施形態において、上記ヌクレオチド配列にコードされる改変型インターロイキン12が提供される。
【0009】
好ましくは、改変型インターロイキン12は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなってもよい。
【0010】
改変型インターロイキン12はまた、ヒトIL-12に由来するが配列番号2に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列からなり、抗腫瘍効果を示すか、または腫瘍退縮を引き起こし、既存のIL-12と比較して低い毒性および副作用を有する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、改変型IL-12をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターが提供される。
【0012】
好ましくは、組換えベクターは、腫瘍細胞を標的とすることができる。より好ましくは、組換えベクターは、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターからなる群から選択されるベクターの構築によって得ることができる。
【0013】
好ましい実施形態では、組換えベクターは、サブクラスCのアデノウイルス血清型5であるが、E1A-CR2、E1B19K及びE3gp19Kの3つの遺伝子の欠失を有し、
E3gp19Kプロモーターを用いて改変型IL-12遺伝子の発現を制御する腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12(China Center for Type Culture Collection、中国、武漢市、Wuhan University、受入番号CCTCC 番号:V201520、寄託日:2015年5月21日、ヒトアデノウイルス血清型5変異体、Ad-TD-nsIL12としても知られている)である。
【0014】
本発明の他の実施形態では、改変型IL-12または改変型IL-12をコードする核酸配列またはベクターの、腫瘍の治療のための医薬の製造における使用が提供される。
【0015】
好ましくは、腫瘍は固形腫瘍、腹腔内に播種する腫瘍、または転移性腫瘍である。
【0016】
改変型インターロイキン12をコードするヌクレオチド配列は、改変型ヒトIL-12 p35サブユニット(ns-p35、配列番号3に示すヌクレオチド配列)をコードする遺伝子を、短い配列(GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGG TGGGC)を介して改変型ヒトIL-1
2 p40サブユニット(ns-p40、配列番号4に示すヌクレオチド配列)をコードする遺伝子に連結することによって得られる。
【0017】
腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12は、サブクラスCのアデ
ノウイルス血清型5であるが、E1A-CR2、E1B19K及びE3gp19Kの3つ
の遺伝子の欠失を有し、E3gp19Kプロモーターを用いて改変型IL-12遺伝子の発現を制御する。組換えアデノウイルスベクターは、腫瘍細胞で選択的に複製され、腫瘍への進入後に改変型ヒトIL-12を発現するため改変型IL-12の発現が腫瘍細胞に限定される。腫瘍細胞の溶解により、発現されたIL-12が放出され、腫瘍関連抗原が同時に放出され、放出された腫瘍関連抗原およびIL-12は、ウイルスに感染していない転移性小腫瘍病変を含む遠隔腫瘍細胞をさらに死滅させるためのin vivoで効率的で特
異的な抗腫瘍応答を誘導する相乗効果を示す。これらの腫瘍には、固形腫瘍、転移性腫瘍、および肉眼で観察することができるかまたは顕微鏡下で見ることができる浸潤性腫瘍が含まれる。組換えアデノウイルスベクターは、腹腔内に播種する腫瘍および同所性腫瘍に対してより強い腫瘍増殖抑制効果を有し、より低い毒性を有する。
【0018】
ヒト腫瘍の標的治療のための腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12を構築する方法は、以下の工程を含む:
(1)nsIL-12融合遺伝子のクローニング:培養したRPMI-8866細胞の全RNAを抽出してcDNAに逆転写し、改変型p35サブユニット遺伝子(ns-p35、配列番号3にヌクレオチド配列を示す)および改変型p40サブユニット遺伝子(プライマー:p40-F:CCTACGTAATGATATGGGAACTGAAGAAAG、p40-R:GCCCACCCCAGGTACCCCTACTCCAGGAACACTGCAGGGCACAGATGC、ns-p40、配列番号4にヌクレオチド配列を示す)をクロー二ングするために、SnaBI切断部位とエラスチン配列(GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGGTGGGC)を含むプライマー(p35-F: GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGGTGGGCGCCAGAAACCTCCCCGTG, p35-R: GCTACGTATTAGGAAGCATTCAGATA)を用いてPCRを行い、ns-p40サブユニット遺伝子断片およびns-p35サブユニット遺伝子断片をPCRで連結してnsIL-12全遺伝子断片を形成し、nsIL-12全遺伝子断片をクローニングベクターTベクターに連結し、これをT-nsIL-12とする。T-nsIL-12プラスミドをSnaBIで消化してnsIL-12遺伝子断片(配列番号1)を得る。
(2)pSSE3gp19Kシャトルベクターの構築:pSS-CHLのCHL上流のマルチクローニングサイト(図1参照)をSal1およびEcoRVで消化し、左腕として
使用するE3 6.7K遺伝子終止コドンの上流1091bp配列を両端にSal1およびEcoRV切断部位を含むプライマーを用いてクローニングし、pSS-CHLに連結してpSSE3gp19K-Lを形成する。pSSE3gp19K-LをSnaB1とXho1で消化し、E3gp19K遺伝子終止コドンの下流1146bp配列をその2つの末端にSnaB1とXho1切断部位を含むプライマーを用いてクローニングし、その両方をpS
SE3gp19Kシャトルベクターを形成するために連結する。
(3)pSSE3gp19K-nsIL-12ベクターの構築:pSSE3gp19KベクターをEcoRVで消化し、その末端リン酸基をホスファターゼで除去した後、nsIL-12遺伝子断片と連結してpSSE3gp19K-nsIL-12ベクターを作製し、その配列を配列解析によって決定する。
(4)Ad-TD-nsIL-12-CHLの構築:pSSE3gp19K-nsIL-12をPme1で線状化し、nsIL-12を含む大きな断片を回収し、BJ5183コンピテント細胞にエレクトロポレーションすることによってpAd-TDベクター(特許文献ZL200910066130.4参照)との相同組換えを行い、陽性クローンpAd-TD-nsIL-12-CHLを選別する。
(5)pAd-TD-nsIL-12の構築:ポジティブベクターpAd-TD-nsIL-12-CHLをSwa1で消化してCHL遺伝子を欠失させ、Swa1及びT4リガーゼを失活させた後、それを用いてTOP10コンピテント細胞を形質転換してpAd-TD-nsIL-12ベクターを得る。及び
(6)Ad-TD-nsIL-12ウイルスベクターの構築:組換えpAd-TD-nsIL-12ベクターをPac1で線状化し、293細胞に導入して組換えアデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12を作製する。
【0019】
本発明は、非分泌性の改変型IL-12を提供する。本発明によって提供される改変型IL-12は、N末端シグナルペプチドを欠くので、発現されたときに細胞から分泌されることはできない。本発明の改変型IL-12は、任意の天然のIL-12およびそのバリアント、例えば、遺伝子工学またはタンパク質工学によって得られた改変型IL-12を含むが、そのような改変型IL-12は、シグナルペプチドを含有しないが、抗腫瘍活性を保持する。本開示に基づいて、当業者は、本発明に記載されるような種々な改変型IL-12を得ることができ、それらの活性を確認することができる(例えば、Gene Therapy、2015 Sep; 22(9):696-706参照)。
【0020】
従って、本発明は、具体的には、非分泌性の改変型IL-12を提供する。
【0021】
好ましくは、本発明の改変型IL-12は、以下の構造を有する。
p40-リンカー-p35またはp35―リンカー-p40
非分泌性IL-12は分泌シグナルペプチドを含まない。好ましくは、上記構造中のp40もp35もシグナルペプチドを含まない。
「リンカー」については、当業者は、従来技術(例えば、Adv Drug DelivRev. 2013 October 15; 65 (10):1357-1369およびFront Immunol. 2015 Apr 7;6: 136)に従って、種々の既知のリンカーに由来する適切なリンカーを設計または選択することができる。好ましくは、リンカーは(GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGGTGGGC)の配列を有する。当業者であれば、本開示に基づいて、当業者は様々な他の配列(J Biomed Nanotechnol. 2015 Aug; 11
(8): 1418-30)を有するリンカーを設計することができる。
【0022】
もちろん、シグナルペプチドを含まないp35およびシグナルペプチドを含まないp40を腫瘍溶解性ウイルスを介して別々に発現させること、およびp35およびp40を細胞内で(例えばジスルフィド結合を介して)結合させ、分泌シグナルがないIL-12を産生することも可能である。
【0023】
p35およびp40には、天然のp35およびp40、ならびにそれらのバリアント、例えば、遺伝子工学またはタンパク質工学によって得られたバリアントが含まれ、バリアントが天然のp35およびp40の活性を保持していればよい。好ましくは、p35およびp40は、天然のヒトp35およびヒトp40、ならびにそのバリアントである。より好ましくは、p35は配列番号5の配列を有するまたはそれから構成される。p40は配列番号6の配列を有するかまたはそれから構成される。
【0024】
本発明のバリアントは、その天然のアミノ酸配列または親配列に基づいて1または複個のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加によって得られるアミノ酸配列を含むか、またはそれらから構成されてもよく、置換、欠失、挿入または付加前の活性を保持してもよい。
【0025】
一例として、p35は、その天然のアミノ酸配列または親配列に基づいて1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加によって得られるアミノ酸配列を含むか、またはそれらから構成されてもよく、置換、欠失、挿入または付加前の活性を保持してもよい。例えば、p35は、配列番号5に基づいて1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加によって得られるアミノ酸配列を含むか、またはそれらから構成されてもよく、置換、欠失、挿入または付加前の活性を保持していてもよい。
【0026】
一例として、p40は、その天然のアミノ酸配列または親配列に基づいて1または複数の
アミノ酸の置換、欠失、挿入または付加によって得られるアミノ酸配列を含むか、またはそれから構成されてもよく、置換、欠失、挿入または付加前の活性を保持してもよい。例えば、p40は、配列番号6に基づいて1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入また
は付加によって得られるアミノ酸配列を含むか、またはそれらから構成されてもよく、置換、欠失、挿入または付加前の活性を保持していてもよい。
【0027】
本発明において、アミノ酸配列における1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加とは、アミノ酸配列中の任意の1または複数の部位で1または複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個のアミノ酸)の置換、欠失、挿入または付加を意味し、置換、欠失、挿入または付加のいずれか2以上が同時に起こってもよい。
【0028】
アミノ酸配列中の1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加のための本発明における方法は、「Molecular Cloning 3」や、「Current Protocols in Molecular Biology」等に記載される部位特異的突然変異導入法によって行うことができる。
本発明に記載される置換において、アミノ酸残基の置換は、好ましくは以下の各群の中で行われる:
1:ロイシン、バリン、アラニン、メチオニン、セリン、グリシン
2:アスパラギン酸、グルタミン酸;
3:アスパラギン、グルタミン;
4:リジン、アルギニン;
5:プロリン、ヒドロキシプロリン;
6:セリン、スレオニン; そして
7:フェニルアラニン、チロシン。
【0029】
本明細書に記載の保守的置換、欠失、挿入または付加の前の活性に対して、置換、欠失、挿入または付加後のタンパク質またはアミノ酸配列の活性は、置換、欠失、挿入または付加前の活性の10%超、20%超、40%超、60%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超、または100%以上、である。
【0030】
上記の置換、欠失、挿入および/または付加のためのアミノ酸残基の数は、一般的には少
ないことが好ましい。バリアントは、親またはその天然のアミノ酸配列に対し約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%99.8%
以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列であり、親または天然のアミノ酸配列の活性を有する。一般に、上記の同一性は、大きな値を有することが好ましい。
【0031】
本発明の変異体はまた、その天然アミノ酸配列又は親配列に対して少なくとも約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%99.6%以上、99.7%以上、99.
8%以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、その天然アミノ
酸配列又は親配列の活性を有する。一般に、上記の同一性は、大きな値を有することが好ましい。
【0032】
例として、p35はまた、その天然アミノ酸配列又は親配列(例えば、配列番号5)に対して少なくとも約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%99.6%以上
、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配
列を含み、その天然アミノ酸配列又は親配列の活性を有する。一般に、上記の同一性は、大きな値を有することが好ましい。
【0033】
例として、p40はまた、その天然アミノ酸配列又は親配列(例えば、配列番号6)に対して少なくとも約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%99.6%以上
、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配
列を含み、その天然アミノ酸配列又は親配列の活性を有する。一般に、上記の同一性は、大きな値を有することが好ましい。
【0034】
好ましくは、本発明は、非分泌性であり、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するか、またはそれから構成される改変型IL-12を提供する。
【0035】
一例として、本発明の改変型非分泌性IL-12は、配列番号2に基づいて1または複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらから構成されてもよく、配列番号2の活性を保持していてもよい。
【0036】
例として、本発明の改変型非分泌性IL-12は、配列番号2に対して少なくとも約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%99.6%以上、99.7%以上、9
9.8%以上、または99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、配
列番号2の活性を有してもよい。一般に、上記の同一性は、大きな値を有することが好ましい。
【0037】
本発明において、「非分泌」とは、標的タンパク質をコードする遺伝子がシグナルペプチドをコードする断片を欠いているため、合成されたタンパク質を分泌関連小胞体-ゴルジ-原形質膜系に輸送することができず、従って、細胞外に分泌することができないことを意味する。
【0038】
また、本発明は、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列をも提供する。好ましくは、それは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはその相補
的配列を含むか、またはそれから構成される。
【0039】
好ましくは、本発明による改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列は、
以下の配列を含むか、またはそれから構成される:
a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列;
b)配列番号1のヌクレオチド配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズすること
が可能で、非分泌性IL-12活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;または
c)上記a)またはb)の相補的配列。
【0040】
本明細書において、非分泌性IL-12活性を有するとは、特定のタンパク質またはアミノ酸配列が、非分泌性IL-12(配列番号2)に対して10%以上、20%以上、40%以上、60%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%以上の活性を有することを意味する。
【0041】
本発明による改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列は、以下の配列を含むか、またはそれから構成されることがさらに好ましい:
a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列;
b)配列番号1のヌクレオチド配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズすること
が可能で、非分泌性IL-12活性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;または
c)上記a)またはb)の相補的配列。
【0042】
本明細書に記載の「ストリンジェント条件」とは、低度ストリンジェント条件、中度ストリンジェント条件、または高度ストリンジェント条件のいずれかであってもよく、好ましくは高度ストリンジェント条件であってもよい。具体的には、「低度ストリンジェント条件」は、30℃、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件であってもよく、「中度ストリンジェント条件」とは、40℃、5×SSC、デンハルト溶液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件であってもよく、「高度ストリンジェント条件」とは、50℃、5×SSC、5×デンハルト液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件であってもよい。当業者であれば、温度が高いほど、得られるポリヌクレオチドの同一性が高いことを理解するであろう。さらに、当業者は、対応するストリンジェンシーを達成するためのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える温度、プローブ濃度、プローブ長、イオン強度、時間、塩濃度などの因子の組み合わせを選択することができる。
【0043】
また、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアでデフォルトパラメーターを用いて同一性計算を行う場合、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドは、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするポリヌクレオチド配列に対して約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0044】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の同一性は、BLASTのKarlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. ScL USA 90: 5873, 1993)で決定することができる。BLASTアルゴリズムに基づくプログラムBLASTNおよびBLASTXが開発されている(Altschul SF,
et al: J MoI Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを使用してアミノ酸配列を分析す
る場合、パラメーターはスコア=100、語長=12、さらにBLASTXを使用してア
ミノ酸配列を分析する場合、パラメーターはスコア=50、語長=3、BLASTおよびGapped BLASTを使用する場合、各プログラムのパラメーターはそれらのデフォルトパラメーター値であってもよい。
【0045】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列を含むか、または本発明の改変型非分泌性IL-12を発現し得る、組換えベクター、例えばプラスミドベクターまたはウイルスベクターを提供する。また、本発明は、本発明の組換えベクターまたは本発明のヌクレオチド配列が導入された微生物(例えば、細菌)又は細胞、例えば大腸菌及び酵母を提供する。本発明の組換えベクターを導入する細胞としては、ヒト由来の細胞であることが好ましく、ヒト組織または器官に由来する細胞であって、ヒトの肝臓、腎臓、膵臓、胃、大腸、小腸、より好ましくは癌細胞または幹細胞に由来する細胞または幹細胞のような細胞である。
【0046】
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列を含む組換えベクターは、アデノウイルス血清型5ベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルス血清型11ベクター、ヘルペスウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルスなどが含まれる。
【0047】
より好ましくは、本発明のヌクレオチド配列を含むベクターは、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12(China Center for Type
Culture Collection、中国、武漢市、Wuhan University、受入番号CCTCC 番号:V201520、寄託日:2015年5月21日、ヒトアデノウイルス血清型5変異体)である。
【0048】
また、本発明は、本発明の改変型非分泌性IL-12、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列、本発明の改変型非分泌性IL-12を発現することができるベクター、または本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを含むキットまたは薬剤を提供する。好ましくは、キットまたは薬剤は、IL-12に関連する疾患の治療または予防のために使用される。
【0049】
本発明はまた、対象におけるIL-12に関連する疾患(例えば、癌)の治療のためのキットまたは医薬品の製造における本発明の改変型非分泌性IL-12、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列、本発明の改変型非分泌性IL-12を発現することができるベクター、または本発明のヌクレオチド配列を含むベクターの使用を提供する。
【0050】
本発明はまた、対象におけるIL-12に関連する疾患(例えば、癌)の治療のための方法であって、有効量の本発明の改変型非分泌性IL-12、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列、本発明の改変型非分泌性IL-12を発現することが
できるベクター、または本発明のヌクレオチド配列を含むベクター、または本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを対象に投与することを含む。
【0051】
好ましくは、対象は哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0052】
本明細書で使用されているように、「IL-12に関連する疾患」とは、好ましくは、IL-12の使用によって治療または予防することができる癌などの疾患を指す。
【0053】
本発明は、膵臓癌、頭頸部癌、肺癌、食道癌、卵巣癌、結腸直腸癌、結腸癌および胃癌を例示するが、「癌」という用語は、原発性黒色腫、転移性黒色腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、扁平上皮腺細胞癌、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸癌、多発性骨髄腫、神経芽腫、NPC(鼻咽頭癌)、膀胱
癌、子宮頸癌、腎臓癌、脳腫瘍、骨肉腫、胃癌、食道癌、結腸直腸癌(直腸癌および十二指腸癌)、肝臓癌、肺癌、骨癌、膀胱癌、卵巣癌、リンパ腫、血液癌、乳癌、頭頚部癌、子宮癌、メラノーマおよび他の癌、ならびに癌の症状を含むが、これらに限定されない固形腫瘍、腹腔内に播種する腫瘍または転移性腫瘍であってもよい。好ましくは、本発明により治療される癌は、好ましくは、膵臓癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、食道癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌または胃癌およびそれらの関連症状である。
【0054】
有効成分として作用する本発明の改変型非分泌性IL-12、本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列、本発明の改変型非分泌性IL-12を発現することができるベクター、または本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを、薬学的に許容される担体と共に使用してもよい。有効成分に加えて、本発明の方法、使用および製品は、活性成分の製剤への加工を容易にする賦形剤およびアジュバントを含む適切な薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0055】
例えば、注射または注入に適した調製物は、水性および非水性の滅菌注射溶液および水性および非水性の滅菌懸濁液を含み、滅菌注射溶液は、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤および被験体の血液と調製物との間の圧力を平衡させることができる溶質を任意に含んでもよく、滅菌懸濁液は懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい。製剤は、密封アンプルなどの単位用量または複数用量容器中に存在してもよく、使用直前に注射用の水のような滅菌液体担体を加えるだけでよい凍結乾燥(lyophilizating)条件下で保存されてもよい。
【0056】
本発明の活性成分は、固体賦形剤と任意に組み合わされてもよく、得られる混合物は任意に粉砕されてもよく、所望であれば、適切なアジュバントの添加後に、粒子の混合物を処理して所望の剤形を得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖、セルロースまたはデンプン調製物、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの充填剤である。所
望であれば、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。所望であれば、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。
【0057】
本発明の有効成分の有効量は、癌を治療する、または癌症状を緩和するか、または癌細胞を阻害することができる任意の用量であればよく、活性成分の約0.1~15mg、好ましくは活性成分の0.2~12mgに対応する投薬単位であってもよい。より好ましくは、投与単位は約2~5mgの活性成分を含む。最も好ましくは、投与単位は約3~4mgの活性成分を含む。有効量の決定は、特に本明細書で提供される開示に照らし合わせて、当業者の手腕の範囲内である。
【0058】
本発明によれば、本発明の医薬品(薬剤またはキット)は有効量の用量を対象に投与することができる。好ましくは、本発明の医薬品(薬剤またはキット)は、複数回投与することができ、例えば約2~15回投与、より好ましくは約4~10回投与、最も好ましくは約6回投与することができる。特に好ましい実施形態では、本発明の医薬品(薬剤またはキット)は、投与中に1日おきに約1回の頻度で、例えば注射、注入または経口投与によって対象に投与される。特に好ましい実施形態では、投与は、注射または注入、最も好ましくは腫瘍内注射によって行われる。
【0059】
本発明の医薬品(薬剤またはキット)は、任意の適切な経路を介した投与のための任意の適切な方法で処方され得ることが理解されるべきである。
【0060】
本発明の医薬品(薬剤またはキット)の投与単位は、対象の慣用の投与に基づく。例えば、投薬単位は、1日に1回、2日に1回、週に1回、月に1回などより多く投与することができる。投薬単位は、2回/週、すなわち週に2回、例えば3日に1回投与することが
できる。
【0061】
また、本発明は、本発明の組換えベクターを調製する方法を提供し、それは非分泌性IL-12を発現することができる組み換えベクターを得るため本発明の改変型非分泌性IL-12をコードするヌクレオチド配列をベクターに挿入すること、組換えベクターの細胞へのトランスフェクションを行って、本発明の組換えウイルスを産生すること、を含む。
【0062】
本文中で使用されているように、「comprising」は、「including」、「containing」ま
たは「being characterized in」と類義語であり、包括的またはオープンであり、記載されていない追加の要素または方法ステップを排除するものではない。「含む」という用語が、本明細書中の任意の表現において、特に本発明の方法、使用または製品を記載する際に使用される場合、その方法、使用または製品は、実質的に構成成分または要素またはステップからまたはこれらによって構成される製品、方法および使用、および構成成分または要素またはステップからまたはこれらによって構成される製品、方法および使用、を包含することを理解されるべきである。本発明の例示的に記載された実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない、1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限が存在しない場合に実行されてもよい。
【0063】
本発明の医薬品において、医薬品に関する説明書には、適応症(癌、例えば膵臓癌)、投与量(例えば、上記に例示したもの)、副作用等の内容が含まれていてもよい。
【0064】
本発明の組換えベクター(例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルス)は、腫瘍細胞または癌細胞で選択的に複製され、腫瘍または癌細胞に入った後に改変型非分泌性IL-12を発現し、改変型非分泌性IL-12の発現は、シグナルペプチド配列の欠如のために腫瘍細胞または癌細胞に閉じ込められる。腫瘍細胞または癌細胞の溶解と共に、発現されたIL-12が放出され、同時に腫瘍関連抗原または癌関連抗原が放出されるため、このように放出された腫瘍関連抗原または癌細胞関連抗原は、IL-12と相乗的に作用し、ウィルスに感染していない微小転移または癌性病変を含む遠隔腫瘍細胞または癌細胞をさらに死滅させるために、体内で効率的で特異的な抗腫瘍または抗癌応答を生成する。これらの腫瘍または癌には、肉眼で見ることができる、または顕微鏡下で見ることができる固形腫瘍、転移性腫瘍および拡散した腫瘍が含まれる。本発明者らは、驚くべきことに、シグナルペプチドを含まないIL-12をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクター(例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルス)が、IL-12タンパク質を安定して持続的かつ低レベルで発現することができ、これにより、既存のIL-12タンパク質の短い半減期および高レ
ベルの発現によって引き起こされる毒性および副作用のような欠点を克服することを見いだした。加えて、それはより強い腫瘍増殖阻害効果を有し、有意に毒性を有さない。さらに、シグナルペプチドを含まないIL-12をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクター(例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルス)は、腫瘍または癌(例えば、腹腔内に播種する腫瘍およびin situの腫瘍)に対してより強い腫瘍増殖阻害効果と弱い毒性を有す
る。
【0065】
対照的に、組換えベクター(例えば、腫瘍溶解性ウイルス)で発現されたIL-12がシグナルペプチドを含有する場合、シグナルペプチドを有する発現されたIL-12は腫瘍細胞または癌細胞から分泌され、身体は大容量のIL-12の投与に苦しみ、身体へのより強い毒性および副作用が生じるであろう。さらに、組み換えベクターによって発現されるIL-12は、腫瘍細胞または癌細胞から早期に分泌されるため、組換えベクター(例
えば、腫瘍溶解性ウイルス)が腫瘍細胞または癌細胞を溶解し、腫瘍関連抗原または癌細胞関連抗原を放出する場合に、身体は放出された腫瘍関連抗原または癌細胞関連抗原と相乗的に作用するための有効量のIL-12を体内に有効に補充することができない。したがって、シグナルペプチドを含まないIL-12をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクター(例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルス)と比較して、シグナルペプチドを含むIL-12をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えベクター(例えば組換え腫瘍溶解性ウイルス)は、より強い毒性および副作用を引き起こし、身体に効率的で特異的な抗腫瘍または抗癌応答を生じさせることはできない。
【0066】
本明細書に列挙された用語および表現は限定的ではなく説明的な用語として使用され、本明細書に記載された特徴およびその部分の等価物は除外されることを意図したものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示された概念の変更および変形を採用することができ、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内である。本発明を以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の単なる例示であり、本出願を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明の効果】
【0067】
本発明の有利な効果は以下の通りである:
1.既存のIL-12と比較して、本発明の改変型IL-12は主に局所腫瘍組織に分布しており、腫瘍細胞に対する特異性を高め、IL-12の全身性副作用を減少させる。
2.本発明の方法は、IL-12タンパク質を安定で持続的かつ低レベルで発現させることができる改変型IL-12を発現させるために腫瘍標的化ウイルスベクターを利用し、短い半減期および高レベルの発現によって引き起こされる毒性および副作用のような既存のIL-12タンパク質の欠点を克服する。
3.既存のIL-12と比較して、本発明の改変型IL-12は、腹腔内に播種した腫瘍およびin situの腫瘍に対してより強い腫瘍増殖阻害効果を有し、重大な毒性はない。
【0068】
本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスAd-TD-nsIL-12は、腫瘍内注射のみならず、腹腔内および胸腔内注射に用いることができ、投与の困難性を低減し、治療可能な患者の範囲を広げる。異なる部位に腫瘍を有する全ての患者が、良好な治療効果を得ることができ、有意な副作用を被ることはない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】pSS-CHLプラスミドマップ
図2】pVV-TKプラスミドマップ
図3】pVV-TK-nsIL-12プラスミドマップ
図4】アデノウイルス血清型5ベクターAd-TD-nsIL-12、ワクシニアウイルスベクターVV-TK-nsIL-12及び11型アデノウイルスベクターAd11-Tel-nsIL-12の模式図。
図5】細胞内におけるAd-TD-nsIL-12のIL-12の発現。
図6】細胞内におけるVV-TK-nsIL-12のIL-12の発現。
図7】異なるタイプの固形腫瘍に対するAd-TD-nsIL-12の抗腫瘍効果。
図8】異なるタイプの固形腫瘍に対するVV-TK-nsIL-12の抗腫瘍効果。
図9】様々なウイルスベクターを注射した腫瘍担持シリアンハムスターの末梢血におけるIL-12の発現。
図10】シリアンハムスターに皮下移植された膵臓癌腫瘍モデルにおけるAd-TD-nsIL-12、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
図11】シリアンハムスター皮下移植された膵臓癌腫瘍モデルにおけるAd-TD-nsIL-12、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12の腫瘍フリーレートの比較。
図12】シリアンハムスターの膵臓癌の同所性モデルにおけるAd-TD-nsIL-12、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
図13】シリアンハムスターの腹腔内播種性膵癌腫瘍モデルにおけるAd-TD-nsIL-12、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
図14】シリアンハムスターの腹腔内播種性膵癌腫瘍モデルにおけるAd-TD-nsIL-12、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12の肝毒性の比較。
図15】シリアンハムスターに皮下移植された頭頸部癌腫瘍モデルにおけるAd-TD-nsIL-12の抗腫瘍効果の比較。
図16】シリアンハムスターの腹腔内播種性膵癌腫瘍モデルにおけるVV-TK-nsIL-12と、VV-TK-RFPおよびVV-TK-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
図17】シリアンハムスターの腹腔内播種性膵癌腫瘍モデルにおけるAd11-Tel-nsIL-12と、Ad11-Tel-GFPおよびAd11-Tel-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本出願は、2015年9月9日に出願された中国特許出願第201510568718.5号「改変型インターロイキン12および腫瘍の治療のための医薬品の製造におけるその使用」の優先権の利益を主張するものであり、その内容はここに参考文献として援用される。
【0071】
発明を実施するための特定モデル:
本発明を実施例によってさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、類似のまたは同じ結果を得るために、本発明の教示に照らしてこれらの実施形態を改変することができ、これらの改変はすべて本発明の範囲内にある。
【実施例
【0072】
実施例1:ヒト腫瘍の標的治療のための腫瘍溶解性アデノウイルス血清型5ベクターAd-TD-nsIL-12の構築方法であって、以下のステップを含む。
(1)nsIL-12融合遺伝子のクローニング:培養したRPMI-8866細胞の全RNAを抽出し、cDNAに逆転写し、改変型p35サブユニット遺伝子(ns-p35、配列番号3にヌクレオチド配列を示す)および改変型p40サブユニット遺伝子(プライマー:p40-F:CCTACGTAATGATATGGGAACTGAAGAAAG、p40-R:GCCCACCCCAGGTACCCCTACTCCAGGAACACTGCAGGGCACAGATGC、ns-p40、配列番号5にヌクレオチド配列を示す)をクロー二ングするために、SnaBI切断部位とエラスチン配列(GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGGTGGGC)を含むプライマー(p35-F:GTTCCTGGAGTAGGGGTACCTGGGGTGGGCGCCAGAAACCTCCCCGTG、p35-R:GCTACGTATTAGGAAGCATTCAGATA)を用いてPCRを行い、ns-p40サブユニット遺伝子断片およびns-p35サブユニット遺伝子断片をPCRで連結してnsIL-12全遺伝子断片を形成し、nsIL-12全遺伝子断片をクローニングベクターTベクターに連結し、これをT-nsIL-12とした。T-nsIL-12プラスミドをSnaBIで消化して、nsIL-12遺伝子断片(配列番号1)を得て使用のためにスタンバイした。
(2)pSSE3gp19Kシャトルベクターの構築:pSS-CHLのCHL上流のマ
ルチクローニングサイト(図1参照)をSal1およびEcoRVで消化し、左腕として
使用するE3 6.7K遺伝子終止コドンの上流1091bp配列を両端にSal1およびEcoRV切断部位を含むプライマーを用いてクローニングし、pSS-CHLに連結してpSSE3gp19K-Lを形成した。pSSE3gp19K-LをSnaB1とXho1で消化し、E3gp19K遺伝子終止コドンの下流1146bp配列をその2つの末端にSnaB1とXho1切断部位を含むプライマーを用いてクローニングし、その両方をpSSE3gp19Kシャトルベクターを形成するために連結した。
(3)pSSE3gp19K-nsIL-12ベクターの構築:pSSE3gp19Kベ
クターをEcoRVで消化し、その末端リン酸基をホスファターゼで除去した後、nsIL-12遺伝子断片と連結してpSSE3gp19K-nsIL-12ベクターを作製し、その配列を配列解析によって決定した。
(4)Ad-TD-nsIL-12-CHLの構築:pSSE3gp19K-nsIL-12をPme1で線状化し、nsIL-12を含む大きな断片を回収し、BJ5183コンピテント細胞にエレクトロポレーションすることによってpAd-TDベクター(特許文献ZL200910066130.4参照)との相同組換えを行い、陽性クローンpAd-TD-nsIL-12-CHLを選別した。
(5)pAd-TD-nsIL-12の構築:ポジティブベクターpAd-TD-nsIL-12-CHLをSwa1で消化してCHL遺伝子を欠失させ、Swa1及びT4リガーゼを失活させた後、それを用いてTOP10コンピテント細胞を形質転換してpAd-TD-nsIL-12ベクターを得た。そして
(6)Ad-TD-nsIL-12ウイルスベクターの構築:組換えpAd-TD-nsIL-12ベクターをPac1で線状化し、293細胞に導入して組換えアデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12を作製した。
3.組換えAd-TD-nsIL-12ベクターをPac1で線状化し、293細胞に導入して、Ad-TD-nsIL12としても知られている組換えアデノウイルスベクターAd-TD-nsIL-12(ヒトアデノウイルス血清型5変異体、China Center for Type Culture Collection、武漢市、中国、Wuhan University、受入番号CCTCC 番号:V201520、寄託日:2015年5月21日)を作製した。
【0073】
実施例2:ヒト腫瘍の標的治療のための腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのベクターVV-TK-nsIL-12の構築方法であって、以下のステップを含む。
1.シャトルベクターpVV-TK-nsIL-12の構築
実施例1に記載したように、Sal1およびNheI切断部位を含むプライマーでnsI
L-12遺伝子をクローニングし、対応する酵素で消化して利用するためにスタンバイし、pVV-TKプラスミドをSal1およびNheIで消化(図2参照、構築は本発明者らによって公開された方法によって行われた、Mol Ther Methods Clin Dev. 2015 Sep 16;2:15035. doi: 10.1038/mtm.2015.35. eCollection 2015)し、nsIL-12遺伝子はpVV-TK-nsIL-12ベクターを構築するためにpVV-TKと連結した(図3)。
【0074】
2.VV-TK-nsIL-12ウイルスベクターの組換え
CV1細胞を培養し、次いでCV1を96ウェルプレートに接種した。細胞が90%コンフルエントになったら、CRISP-cas9およびgRNAプラスミドでトランスフェクションし、24時間後にワクシニアウイルスVVL15に感染させ、2時間後にpVV-TKでトランスフェクトした。24時間後、それらを蛍光顕微鏡下で観察し、VV-TK-nsIL-12ウイルスベクター(図4)がうまく組換えられたことを示す赤色蛍光細胞クローンを選別した。
【0075】
3.VV-TK-nsIL-12ウイルスベクターのスクリーニング
採取した赤色蛍光クローンを1度凍結および解凍した後、再びCV1細胞に感染させ、赤色蛍光クローンを採取し、このスクリーニングプロセスを5回繰り返し、CV1細胞を感染させてウイルスを産生した。そのゲノムを配列決定のために抽出した。
【0076】
実施例3:ヒト腫瘍の標的治療のための腫瘍溶解性アデノウイルス血清型11のベクター
Ad11-Tel-nsIL-12の構築方法であって、以下のステップを含む。
1.nsIL-12を含むシャトルベクターpSSE3-18.5K-nsIL-12の構築
(1)pSSE3-18.5Kの構築:pSS-CHL(pBR322プラスミドに基づ
いて構築、図1参照)のマルチクローニングサイトをSnaB1およびXho1で消化し
、左腕として使用するE3 16.1K遺伝子終止コドンの上流535bp配列を両端にSnaB1およびXho1切断部位を含むプライマーを用いてクロー二ングし、pSS-CHLに連結してpSSE3-18.5K-Lを形成した。pSSE3-18.5K-LをSal1およびEcoRVで消化し、2つの末端にSal1およびEcoRV切断部位を含むプライマーを用いてE3-18.5K遺伝子終止コドンの下流584bp配列をその2つの末端にSal1およびEcoRV切断部位を含むプライマーを用いてクローニングし、その両方をpSSE3-18.5Kシャトルベクターを形成するために連結した。(2)pSSE3-18.5K-nsIL-12ベクターの構築:pSSE3-18.5KベクターをSnaB1で消化し、ホスファターゼを用いて末端リン酸基を除去した後、nsIL-12遺伝子断片と連結してpSSE3-18.5K-NsIL-12ベクターを作製し、その配列解析を行った。
(3)pSS3gp19K-nsIL-12をPme1で線状化し、nsIL-12を含む大きな断片を回収し、BJ5183コンピテント細胞にエレクトロポレーションすることによってAd11-Tel-GFP(特許文献ZL20110143385.3の構築方法を参照)との相同組換えを行い、陽性クローンAd11-Tel-nsIL-12(図4参照)を選別した。
【0077】
2.組み換えAd11-Tel-nsIL-12ベクターをNot1で線状化し、293
細胞に導入して組換えアデノウイルスベクターAd11-Tel-nsIL-12を作製した。
【0078】
実施例4:腫瘍細胞におけるAd-TD-nsIL-12およびVV-TK-nsIL-12のIL-12発現
培養ヒト膵癌Suit2およびCapan1、頭頸部腫瘍EC9706、肺癌A549およびH1299、食道癌EC9706およびZZB、卵巣癌SKOV3、結腸直腸癌SW620およびHCT116ならびに胃癌AGS細胞をトリプシンで消化し、計数し、6ウェルプレートに2×105細胞/ウェルで播種し、Ad-TD-nsIL-12およびVV-TK-nsIL-12で別々に感染させ、上清および細胞混合物をそれぞれ回収し、それらのIL-12発現レベルをELISAによって検出した。図5および図6にその結果を示す。
【0079】
図5は、Ad-TD-nsIL-12が腫瘍細胞においてIL-12を発現したことを示し、図6は、VV-TK-nsIL-12が腫瘍細胞においてIL-12を発現したことを示す。
【0080】
実施例5:種々な固形腫瘍に対するAd-TD-nsIL-12の抗腫瘍効果
培養膵癌SUIT2およびCapan1、頭頸部腫瘍EC9706、肺癌A549およびH1299、食道癌EC9706およびZZB、卵巣癌SKOV3、結腸直腸癌SW620およびHCT116ならびに胃癌AGS細胞をトリプシンで消化し、2%FBSを含むDMEMで細胞懸濁液にし、B1~G1が無細胞培地であり、他の3つがPBSである9
6ウェルプレートの中央に接種した。
【0081】
14時間~18時間後、ウイルスVV-TK/Ad-TD-nsIL-12、VV-TK/Ad-TD-IL-12(全長ヒトIL-12)およびAd-TD-LUC(LUC、ルシフェラーゼ)またはVV-TK-RFPの複数の割合の希釈を行った。初期濃度1×104pfu/細胞として、これらのウイルス溶液に10倍希釈を適用して9段階の希釈
勾配を形成し、最後の列の細胞にはウイルスを加えなかった。複数の割合の希釈の後、10μl/ウェルずつ各列において同じウイルス勾配になるよう、バレーピペッターを用い
てウイルスを96ウェルプレートの中心に加えた。
【0082】
ウイルス感染細胞を37℃のインキュベーターに戻した。6日後、MTSとPMSの混合溶液20μl、20:1(MTS:PMS)を、PBSを添加したウェル以外の各ウェル
に添加した。1~4時間後、溶液を取り出し、490nmの波長における吸光度を決定するためマイクロプレートリーダーで測定した。それに応じてEC50を計算し、結果を図7および8に示した。
【0083】
図7および8に、Ad-TD-nsIL-12およびVV-TK-nsIL-12が様々な固形腫瘍細胞を死滅させる能力を有することを示している。
【0084】
実施例6:腫瘍を有するシリアンハムスターに一回腹腔内注射後のAd-TD-nsIL-12と、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12のIL-12発現の変化の比較。
5~6週齢シリアンハムスターの腹腔内に、1×107SHPC6細胞(セントルイス大
学のWSM Wold提供、シリアンハムスター膵臓癌細胞)を接種し、そして動物は4日後にグループごとに9匹ずつ4つのグループに分けた。動物は、500μlのPBS、
1×109PFUのAd-TD-LUC(LUCは、実施例1でのAd-TD-nsIL
-12の構築方法に従って構成されるpGL3ベクタールシフェラーゼに由来する)、Ad-TD-IL-12(全長ヒトIL-12、実施例1に記載のAd-TD-nsIL-12の構築方法に従って構築)、またはAd-TD-nsIL-12を別々に1回腹腔内
注射した。注射後1日目、3日目および5日目に、血清試料を採取し、末梢血中のIL-12発現の変化を分析し、その結果を図9に示した。
【0085】
図9の結果は、Ad-TD-IL-12グループの動物においてウイルスベクター注射後1日目のIL-12の発現が高く、3日目および5日目のIL-12の発現は有意に減少し、IL-12発現レベルの有意な変化を示した。Ad-TD-nsIL-12グループの動物においては、それぞれの日でIL-12の発現が低レベルで一定であること、すなわちIL-12の発現が1日目から5日目まで有意な差を示さなかったことから、Ad-TD-nsIL-12はin vivoで毒性および副作用を引き起こすであろう大量のIL-12を産生する可能性が低いことを示している。
【0086】
実施例7:腫瘍標的化アデノウイルスAd-TD-nsIL-12の抗腫瘍適用、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12とのそれらの比較。
5~6週齢の各シリアンハムスターの背中の右上に、1×107HPD1-NR(セント
ルイス大学のWSM Wold提供、シリアンハムスター膵臓癌細胞)を接種した。各グループの動物の平均腫瘍体積は約330mm3であった。PBS、Ad-TD-LUC、
Ad-TD-IL-12およびAd-TD-nsIL-12を用いて、それぞれの腫瘍内注射を行った。ウイルスベクターを1×109PFUの用量で1日1回、合計6回注射し
、腫瘍増殖曲線および腫瘍フリーレートを観察した。結果を図10および図11に示した。
【0087】
図10は、Ad-TD-nsIL-12およびAd-TD-IL-12がコントロールベクターAd-TD-LUCおよびPBSよりも強い抗腫瘍効果を示したことを示す。図11は、Ad-TD-nsIL-12およびAd-TD-IL-12処置したグループが最大100%の非常に高い腫瘍フリーレートを有し、一方、Ad-TD-LUCのグループは42.8%しか腫瘍フリーレートを有さないことを示す。
【0088】
実施例8:シリアンハムスターにおける膵臓癌のin situモデルに対するAd-TD-nsIL-12の治療効果、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12とのそれらの比較。
10%抱水クロラールを用いて4~5週齢のシリアンハムスターの麻酔を行い、シリアンハムスターの左腹部を開き、脾臓に接続する膵臓を見つけ、3×106個のHapT1細
胞(セントルイス大学のWSM Wold提供、シリアンハムスター膵臓癌細胞)を膵臓実質に接種した。6日後、腫瘍を有する動物をグループごとに7匹ずつ4グループに分けた。1日おきに合計6回、500μlのPBS、1×109PFUのAd-TD-LUC、Ad-TD-IL-12またはAd-TD-nsIL-12をそれぞれ腹腔内注射した。動物の生存時間を観察し、その結果を図12に示した。
【0089】
図12の結果は、Ad-TD-nsIL-12がAd-TD-LUCおよびAd-TD-IL-12よりも優れた治療効果を有し、腫瘍保有動物の生存時間を有意に延長することができることを示す。Ad-TD-IL-12グループの全ての動物の死亡率は、PBSのグループおよび他のグループの動物の死亡より有意に早く、全長IL-12がその毒性のために動物に死を引き起こすことが示唆された。
【0090】
実施例9:シリアンハムスターの腹膜播種PaCaに対するAd-TD-LUC、Ad-TD-IL-12およびAd-TD-nsIL-12の治療効果。
4~5週齢の各シリアンハムスターの腹腔に1×107個のSHPC6細胞を接種した。
4日後、動物はグループごとに10匹ずつ4つのグループに分けた。治療のために1日おきに計3回、500μlのPBS、1×109PFUのAd-TD-LUC、Ad-TD-IL-12またはAd-TD-nsIL-12を別々に腹腔内注射した。動物の生存時
間を観察し、その結果を図13に示した。
【0091】
図13の結果は、Ad-TD-nsIL-12処置したグループの動物は、観察期間中(最初の処置後から200日)の生存率が100%であったが、Ad-TD-LUCグループ、Ad-TD-IL-12グループの動物の生存率はそれぞれ30%および10%であり、Ad-TD-IL-12グループの動物の死亡率はPBSのグループおよび他のグループの動物よりも早かった。全長IL-12は、その毒性のために動物に死を引き起こすことが示唆された。
【0092】
実施例10:シリアンハムスターにおけるAd-TD-nsIL-12とAd-TD-IL-12の腹腔内注射後の肝毒性の比較。
5~6週齢の各シリアンハムスターの腹腔に1×107個のSHPC6細胞を接種し、4
日後、動物はグループごとに9匹ずつ分けた。500μlのPBS、1×109PFUのAd-TD-LUC、Ad-TD-nsIL-12または5×108PFUのAd-TD-
IL-12の腹腔内注射を1回行い、注射後1日目、3日目および5日目に、血清試料を
採取した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)を検出し、その結果を図14に示す。
【0093】
図14の結果は、Ad-TD-nsIL-12によって誘導されるALT、ASTおよびALPの増加が、Ad-TD-IL-12のそれより有意に低く、Ad-TD-nsIL
-12の肝毒性がAd-TD-IL-12のそれより有意に低いことを示す。
【0094】
実施例11:頭頸部腫瘍の皮下ハムスター腫瘍モデルに対するAd-TD-nsIL-12の抗腫瘍効果の比較。
5~6週齢の各シリアンハムスターの背部の右上部に1×107のHCPC1細胞(シリ
アンハムスター頭頸部腫瘍細胞)を接種した。各グループの平均腫瘍体積が約330mm3であるとき、PBS、Ad-TD-LUCおよびAd-TD-nsIL-12をそれぞ
れ腫瘍内注射した。ウイルスベクターを5×107PFUの用量で1日1回、合計6回注
射した。腫瘍増殖曲線および腫瘍フリーレートを観察し、その結果を図15に示した。
【0095】
図15の結果は、Ad-TD-nsIL-12がコントロールウイルスベクターAd-TD-LUCおよびPBSよりも強い抗腫瘍効果を示したことを示す。
【0096】
実施例12:シリアンハムスターの腹膜播種PaCaに対するVV-TK-nsIL-12と、VV-TK-RFPおよびVV-TK-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
4~5週齢の各シリアンハムスターの腹腔に1×107個のSHPC6細胞を接種した。
4日後、動物はグループごとに10匹ずつ4つのグループに分けた。治療のために1日おきに計3回、500μlのPBS、4×107PFUのVV-TK-RFP(赤色蛍光タンパク質を挿入。VV-TK-nsIL-12の構築方法に従って構築される。)、VV-TK-IL-12(全長ヒトIL-12遺伝子を挿入。VV-TK-nsIL-12の構築方法に従って構築される。)またはVV-TK-nsIL-12を腹腔内注射した。動物の生存時間を観察し、その結果を図16に示す。
【0097】
図16の結果は、VV-TK-nsIL-12が、VV-TK-RFPおよびVV-TK-IL-12よりも優れた治療効果を有し、腫瘍を有する動物の生存時間を有意に延長することができたことを示す。
【0098】
実施例13:シリアンハムスターの腹膜播種PaCaに対するAd11-Tel-nsIL-12と、Ad11-Tel-GFPおよびAd11-Tel-IL-12の抗腫瘍効果の比較。
4~5週齢の各シリアンハムスターの腹腔に1×107個のSHPC6細胞を接種した。
4日後、動物はグループごとに10匹ずつ4つのグループに分けた。治療のために1日おきに計3回、500μlのPBS、1×109PFUのAd11-Tel-GFP(緑色蛍光タンパク質を挿入。Ad11-Tel-nsIL-12の構築方法に従って構築される。)、Ad11-Tel-IL-12(全長ヒトIL-12遺伝子を挿入。Ad11-Tel-nsIL-12の構築方法に従って構築される。)またはAd11-Tel-nsIL-12を腹腔内注射した。動物の生存時間を観察し、その結果を図17に示す。
【0099】
図17の結果は、Ad11-Tel-nsIL-12が、Ad11-Tel-GFPおよびAd11-Tel-IL-12よりも優れた治療効果を有し、腫瘍を有する動物の生存期間を有意に延長することができたことを示す。
【0100】
最後に、上記の実施形態は、本発明の技術的側面の単なる例示であり、限定するものではないことに留意すべきである。本発明を好ましい実施形態を参照して詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の技術的解決策は、技術的解決策の精神および範囲から逸脱することなく変更または同等に置き換えることができ、これらの変更の全ては、本発明の請求項の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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