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▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】分子内動力学的プローブ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6818 20180101AFI20240219BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240219BHJP
【FI】
C12Q1/6818 Z ZNA
G01N33/542 A
C12N15/113 Z
【請求項の数】 49
(21)【出願番号】P 2021504244
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019043022
(87)【国際公開番号】W WO2020023503
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】62/702,670
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン-バック,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】テワリ,ムネーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ニルス ジー.
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/139354(WO,A1)
【文献】特表2003-513271(JP,A)
【文献】特開2003-250600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046988(US,A1)
【文献】特表平09-504950(JP,A)
【文献】Nat. Biotechnol.,2015年,Vol.33, No.7,pp.730-732 (Author manuscript pp.1-8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉プローブ部分とクエリープローブ部分とを含むバイオセンサであって、
a)前記捕捉プローブ部分は第1の標識を含み、前記クエリープローブ部分は第2の標識を含み、
b)前記捕捉プローブ部分は標的分析物に安定的に結合し、前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合し、
c)前記バイオセンサは、デコイ部分であって、前記クエリープローブ部分に結合して前記クエリープローブ部分と前記デコイ部分とを含む複合体を形成し、前記捕捉プローブ部分の前記第1の標識と前記クエリープローブ部分の前記第2の標識との間の距離を増大させるデコイ部分を含む、バイオセンサ。
【請求項2】
前記第1の標識と前記第2の標識はFRET対である、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記第1の標識と前記第2の標識蛍光体-消光剤対である、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記捕捉プローブ部分は前記標的分析物に結合して、前記捕捉プローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成し、前記複合体はアッセイの測定温度より10℃を上回る高さの融解温度を有する、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記捕捉プローブ部分は前記標的分析物に結合して、前記捕捉プローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成し、前記複合体は観察期間の5倍を上回る長さの平均持続時間を有する、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成し、前記複合体はアッセイの測定温度から10℃以内の融解温度を有する、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成し、前記複合体は観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記捕捉プローブ部分と前記クエリープローブ部分とが共有結合的に連結される、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
共有結合的に付着されたアンカー部分をさらに含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記クエリープローブ部分と前記デコイ部分との前記複合体はアッセイの測定温度から10℃以内の融解温度を有する、請求項に記載のバイオセンサ。
【請求項11】
前記クエリープローブ部分と前記デコイ部分との前記複合体は観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する、請求項に記載のバイオセンサ。
【請求項12】
前記捕捉プローブ部分は抗体を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項13】
前記クエリープローブ部分は抗体を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項14】
前記捕捉プローブ部分は核酸を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項15】
前記クエリープローブ部分は核酸を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項16】
分析物を検出するための方法であって、前記方法は、
a)第1の標識を含む捕捉プローブ部分と第2の標識を含むクエリープローブ部分とを含むバイオセンサに分析物を接触させることと、
b)時間に応じてクエリープローブ部分の分析物との会合および解離を示す蛍光シグナルを記録して蛍光遷移データを生成すること
c)デコイ部分を前記クエリープローブ部分に結合させて前記クエリープローブ部分と前記デコイ部分との複合体を形成し、前記捕捉プローブ部分の前記第1の標識と前記クエリープローブ部分の前記第2の標識との距離を増大させること、を含む方法。
【請求項17】
前記捕捉プローブ部分と前記分析物との間に熱力学的に安定した複合体を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記クエリープローブ部分と前記分析物との間に一過性の複合体を反復して形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光遷移データにおける蛍光遷移を計数することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオセンサはアンカー部分を含み、前記方法は前記バイオセンサを表面に固定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
励起波長を供給することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
発光波長を検出することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
時間に応じて発光波長を記録することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
発光波長の時間依存シグナルを記録することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
固体支持体上の個々の位置で蛍光をモニターすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
結合事象を計数することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
蛍光遷移事象を計数することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
結合事象の滞留時間を測定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
取得時間中に少なくとも5つの遷移を含む時間依存蛍光シグナルから候補シグナルをさらに同定する、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
動態パラメータ、遷移の数の分布、および/または、分布を特徴付けるパラメータを算出することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
パターン認識を使用して前記蛍光遷移データを処理することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記蛍光遷移データを統計的に分析することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項33】
前記蛍光遷移データを使用して前記分析物を検出することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項34】
分析物を検出するためのシステムであって、前記システムは、
a)第1の標識を含む捕捉プローブ部分と第2の標識を含むクエリープローブ部分とを含むバイオセンサと、
b)時間に応じて、クエリープローブ部分の分析物との会合および解離を示す蛍光シグナルを記録するよう構成された要素とを含み、
c)前記バイオセンサは、デコイ部分であって、前記クエリープローブ部分に結合して前記クエリープローブ部分と前記デコイ部分とを含む複合体を形成し、前記捕捉プローブ部分の前記第1の標識と前記クエリープローブ部分の前記第2の標識との距離を増大させるデコイ部分を含む、システム。
【請求項35】
固体支持体をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
蛍光顕微鏡をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
励起源をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項38】
発光検出器をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項39】
蛍光遷移データを記録および/または分析するコンピュータをさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項40】
分析物をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項41】
前記捕捉プローブ部分は抗体を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項42】
前記捕捉プローブ部分は核酸を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項43】
前記クエリープローブ部分は抗体を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項44】
前記クエリープローブ部分は核酸を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項45】
前記デコイ部分は抗体を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項46】
前記デコイ部分は核酸を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項47】
分析物を検出するための、請求項1に記載のバイオセンサの使用。
【請求項48】
分析物を検出するための、請求項16に記載の方法の使用。
【請求項49】
分析物を検出するための、請求項34に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、分析物の検出に関する技術を提供する。特に、分析物を検出し、特徴付けし、同定し、および/または定量化するための方法、組成物、およびシステムを提供するが、これらに限定されない。
【0002】
本出願は、2018年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/702,670号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔連邦政府支援の研究開発に関する記載〕
本発明は、米国陸軍/陸軍研究所によって授与されたW911NF-12-1-0420、ならびに国立衛生研究所によって授与されたGM062357、CA204560、およびCA229023の下、政府支援によってなされた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
少量の分析物(例えば、限定されないが、タンパク質、核酸、脂質、および小分子(例えば、薬物、代謝物、補因子など)を含む)の高感度かつ特異的な検出は、インビトロ診断ならびに生物医学研究において重要な役割を果たす。このような検出は、一般に、対象の分析物に対して高い親和性および特異性を有し、標的分析物の存在下でのみ検出可能なシグナルを生成する分子試薬(例えば、抗体、ハイブリダイゼーションプローブ)を使用して実施される。しかし、親和性プローブは標的分析物に対して有限の特異性および親和性を有し(例えば、Zhang et al. (2012) “Optimizing the specificity of nucleic acid hybridization. Nat. Chem. 4, 208-214を参照のこと)、このことが非常に低い濃度の分析物を高い信頼度で検出することを困難にしている。これは、対象のバイオマーカーがしばしば、ゼロに近いほどに低い濃度で(例えば、サブフェムトモル濃度で(例えば、Lee et al. (2001) “Quantitation of genomic DNA in plasma and serum samples: higher concentrations of genomic DNA found in serum than in plasma.”Transfusion (Paris) 41, 276-282; Mitchell et al. (2008) Circulating microRNAs as stable blood-based markers for cancer detection”Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 105, 10513-18; Bettegowda et al. (2014) “Detection of Circulating Tumor DNA in Early- and Late-Stage Human Malignancies”Sci. Transl. Med. 6, 224ra24-224ra24; Husain et al. (2017) “Monitoring Daily Dynamics of Early Tumor Response to Targeted Therapy by Detecting Circulating Tumor DNA in Urine”Clin. Cancer Res. 23, 4716-23を参照のこと))存在するため、重大な問題である。
【0005】
感度は、シグナルを増幅するか、または分析物のコピーを多数生成することによって上げることができるが、疑似分析物(部分的に相同なアミノ酸配列またはペプチド配列など)またはイメージング表面へのプローブ試薬の結合は、一般に、約数千以上の分子のコピーで有限の検出限界を課す(例えば、Cohen (2017) “Digital direct detection of microRNAs using single molecule arrays”Nucleic Acids Res. 45, e137-e137を参照のこと)。
【発明の概要】
【0006】
よって、本明細書において、分析物の検出に関する技術を提供する。特に、分析物を検出し、特徴付けし、同定し、および/または定量化するための方法、組成物、およびシステムを提供するが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本技術は、少量および/または低濃度(例えば、サブフェムトモル濃度)で存在する分析物を検出し、特徴付けし、同定し、および/または定量化する。いくつかの実施形態では、本技術は、単一分子分解能で分析物を検出し、特徴付けし、同定し、および/または定量化する。
【0007】
動力学的フィンガープリンティングを用いてほぼ任意に高い特異性で分析物の単一分子を検出するための方法は、以前より説明されている(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids. Nat. Biotechnol. 33, 730-32; Walter et al. “Detection of nucleic acids”, U.S. Pat. App. Ser. No. 14/589,467(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);国際特許出願PCT/US2017/016977も参照のこと(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0008】
これらの既存の方法は、いくつかの実施形態では、クエリープローブをトランスで使用することを含み、これは、いくつかの分析物について、迅速なプローブの会合/解離動態を損ない、結果として、いくつかの実験においてデータ取得のスピードを制限する。本開示は、特定の分子分析物の存在下で特徴的な動態を伴う構造変化を受ける動的ナノマシンの使用を含む技術に関する。したがって、本技術はこれらの構造変化を観察し、記録し、そして分析して、分析物の有無を高い信頼度で判断することを含む。いくつかの実施形態はさらに、分析物を特徴付け、同定、および/または定量化することに関する。
【0009】
例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、個々の、共有結合または非共有結合されたナノ構造にいくつかの要素を組み込んだバイオセンサを提供する。例えば、ナノ構造としては、標的分析物(T)の1つのエピトープ、部分、または領域に高い熱力学的安定性で結合する捕捉プローブ部分(C)(例えば、測定温度より10℃を上回る高さの融解温度を有する、または、観察期間の10倍を上回る長さの平均持続時間の間Tと会合する)が挙げられる。
【0010】
また、中程度から低い熱力学的安定性でTの異なるエピトープ、部分、または領域に結合するクエリープローブ部分(Q)(例えば、測定温度から10℃以内の融解温度、または、観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間の間Tと会合する)が挙げられる。
【0011】
また、CのみがTによって結合されているときよりも、QおよびCの両方がTと会合されているときのほうが、相互距離が測定可能な程度に小さい、QおよびCとそれぞれ会合された標識L1およびL2が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、L1とL2は、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体のフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)対を含む。いくつかの実施形態では、L1およびL2は蛍光体および消光剤を含む。
【0012】
したがって、いくつかの実施形態では、標的Tがバイオセンサに結合する場合、TはCに安定的に(例えば、熱力学的に安定した時間スケールで)結合するが、Qには一過性にのみ(例えば、動力学的に一過性の時間スケールで)結合し、バイオセンサはQおよびCの両方がTに結合される状態1と、CのみがTに結合される第2の状態2との間で測定可能に遷移する(例えば、図1を参照のこと)。
【0013】
いくつかの実施形態では、バイオセンサは以下の任意の要素のうちの1つ以上を組み込んでいる:
Qに弱く結合し、これにより、Qの結合に関してTと競合し、そして状態1と比較して状態2の持続時間を延ばす、デコイ部分(D)。いくつかの実施形態では、Dは測定の間、常時、バイオセンサに共有結合的または非共有結合的に接続される(例えば、図1aを参照のこと)。いくつかの実施形態では、DがQに結合される場合にバイオセンサにだけ結合されるように、Dはトランスで(例えば、溶液中で)提供される(例えば、図2cを参照のこと)。
測定を容易にするために表面または他の界面に固定するためのアンカー部分(A)。例えば、いくつかの実施形態では、Aは例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、抗ジゴキシゲニン、クリック化学を介した固定のためのアジドもしくはアルキン部分、または表面もしくは界面との共有結合性または非共有結合性相互作用が可能な別の親和性タグもしくは官能基である。
【0014】
本明細書中に記載された技術の実施形態の開発中、バイオセンサが1組の設計された合成核酸配列を含み、かつデコイ配列およびビオチンアンカーの両方を組み込んだ(例えば、図3aを参照のこと)実験を行った。これらの実験中に、データを、単一分子FRET顕微鏡技術を用いて収集した(図3b)。
【0015】
本技術は、他の既存の分析物検出技術と比較して利点を有する。例えば、本技術は、高い信頼度で単一の分析物の分子を検出する。これは、他の技術で検出される非核酸分析物については一般的に達成不可能である。さらに、本技術は、(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、NASBA、RPA、Invaderなどの核酸増幅技術によって)標的分析物を増幅することを必要としない。いくつかの実施形態では、本技術は、代替の改善された取得時間を提供し、類似の技術よりも複数の分析物の多重検出により適している(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids. Nat. Biotechnol. 33, 730-32; Walter et al. “Detection of nucleic acids”、米国特許出願第14/589,467号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);国際特許出願PCT/US2017/016977も参照のこと(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。さらに、いくつかの実施形態では、本技術は、ELISA、マイクロアレイ、またはnCounterシステムに基づく他の技術よりもはるかに低い検出限界を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、バイオセンサを提供する。いくつかの実施形態では、バイオセンサは捕捉プローブ部分とクエリープローブ部分とを含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は第1の標識を含み、前記クエリープローブ部分は第2の標識を含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブは標的分析物に高い熱力学的安定性で結合し、前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合する。いくつかの実施形態では、前記第1の標識と前記第2の標識はFRET対である。いくつかの実施形態では、前記第1の標識と前記第2の標識は蛍光体-消光剤対である。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は前記標的分析物に結合して、前記捕捉プローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体はアッセイの測定温度より10℃を上回る高さの融解温度を有する。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は前記標的分析物に結合して、前記捕捉プローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体は観察期間の5倍を上回る長さの平均持続時間を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記観察期間は、数十秒~数百秒~数千秒(例えば、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒;例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、または60分;例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間)である時間間隔である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は、約1秒~10秒から1分~10分(例えば、約1秒~100秒、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、または100秒、例えば、1分~100分、例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、または100分)である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は0.1秒~20.0秒(例えば、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1.0秒、1.1秒、1.2秒、1.3秒、1.4秒、1.5秒、1.6秒、1.7秒、1.8秒、1.9秒、2.0秒、2.1秒、2.2秒、2.3秒、2.4秒、2.5秒、2.6秒、2.7秒、2.8秒、2.9秒、3.0秒、3.1秒、3.2秒、3.3秒、3.4秒、3.5秒、3.6秒、3.7秒、3.8秒、3.9秒、4.0秒、4.1秒、4.2秒、4.3秒、4.4秒、4.5秒、4.6秒、4.7秒、4.8秒、4.9秒、5.0秒、5.1秒、5.2秒、5.3秒、5.4秒、5.5秒、5.6秒、5.7秒、5.8秒、5.9秒、6.0秒、6.1秒、6.2秒、6.3秒、6.4秒、6.5秒、6.6秒、6.7秒、6.8秒、6.9秒、7.0秒、7.1秒、7.2秒、7.3秒、7.4秒、7.5秒、7.6秒、7.7秒、7.8秒、7.9秒、8.0秒、8.1秒、8.2秒、8.3秒、8.4秒、8.5秒、8.6秒、8.7秒、8.8秒、8.9秒、9.0秒、9.1秒、9.2秒、9.3秒、9.4秒、9.5秒、9.6秒、9.7秒、9.8秒、9.9秒、10.0秒、10.1秒、10.2秒、10.3秒、10.4秒、10.5秒、10.6秒、10.7秒、10.8秒、10.9秒、11.0秒、11.1秒、11.2秒、11.3秒、11.4秒、11.5秒、11.6秒、11.7秒、11.8秒、11.9秒、12.0秒、12.1秒、12.2秒、12.3秒、12.4秒、12.5秒、12.6秒、12.7秒、12.8秒、12.9秒、13.0秒、13.1秒、13.2秒、13.3秒、13.4秒、13.5秒、13.6秒、13.7秒、13.8秒、13.9秒、14.0秒、14.1秒、14.2秒、14.3秒、14.4秒、14.5秒、14.6秒、14.7秒、14.8秒、14.9秒、15.0秒、15.1秒、15.2秒、15.3秒、15.4秒、15.5秒、15.6秒、15.7秒、15.8秒、15.9秒、16.0秒、16.1秒、16.2秒、16.3秒、16.4秒、16.5秒、16.6秒、16.7秒、16.8秒、16.9秒、17.0秒、17.1秒、17.2秒、17.3秒、17.4秒、17.5秒、17.6秒、17.7秒、17.8秒、17.9秒、18.0秒、18.1秒、18.2秒、18.3秒、18.4秒、18.5秒、18.6秒、18.7秒、18.8秒、18.9秒、19.0秒、19.1秒、19.2秒、19.3秒、19.4秒、19.5秒、19.6秒、19.7秒、19.8秒、19.9秒、または20.0秒)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記捕捉クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体はアッセイの測定温度から10℃以内の融解温度を有する。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記捕捉クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体は観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分と前記クエリープローブ部分とが共有結合的に連結されている。いくつかの実施形態では、前記バイオセンサは共有結合的に付着されたアンカー部分を含む。いくつかの実施形態では、前記バイオセンサはデコイ部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記デコイ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記捕捉クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体はアッセイの測定温度から10℃以内の融解温度を有する。いくつかの実施形態では、前記デコイ部分は前記標的分析物に一過性に結合して、前記捕捉クエリープローブ部分と前記標的分析物とを含む複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記複合体は観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記デコイ部分は標識または消光剤を含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は抗体を含む。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は抗体を含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は核酸を含む。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は核酸を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本技術は、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、第1の標識を含む捕捉プローブ部分と第2の標識を含むクエリープローブ部分とを含むバイオセンサに分析物を接触させることと、時間に応じてクエリープローブの分析物との会合および解離を示す蛍光シグナルを記録して蛍光遷移データを生成すること、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記捕捉プローブと前記分析物との間に熱力学的に安定した複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記クエリープローブと前記分析物との間に一過性の複合体を反復して形成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記蛍光遷移データにおける蛍光遷移を計数することを含む。いくつかの実施形態では、前記バイオセンサはアンカー部分を含み、前記方法は前記バイオセンサを表面に固定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、サンプルを供給または得ることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、デコイ部分を供給することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記クエリープローブをデコイ部分に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、励起波長を供給することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、発光波長を検出することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、時間に応じて発光波長を記録することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、発光波長の時間依存シグナルを記録することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、固体支持体上の個々の位置で蛍光をモニターすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、結合事象を計数することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、蛍光遷移事象を計数することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、結合事象の滞留時間を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、取得時間中に少なくとも5つの遷移を含む時間依存蛍光シグナルから候補シグナルを同定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、動態パラメータを算出すること、遷移の数の分布を算出すること、および/または、分布を特徴付けるパラメータを算出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、パターン認識を使用して前記蛍光遷移データを処理することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記蛍光遷移データを統計的に分析することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記蛍光遷移データを使用して前記分析物を検出することを含む。
【0021】
さらなる実施形態は、分析物を検出するためのシステムに関する。いくつかの実施形態では、システムは、第1の標識を含む捕捉プローブ部分と第2の標識を含むクエリープローブ部分とを含むバイオセンサと、時間に応じてクエリープローブの分析物との会合および解離を示す蛍光シグナルを記録するよう構成された要素と、を含む。いくつかの実施形態では、システムは、固体支持体をさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、デコイ部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、蛍光顕微鏡をさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、励起源をさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、発光検出器をさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、蛍光遷移データを記録および/または分析するコンピュータをさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、分析物をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は抗体を含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は核酸を含む。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は抗体を含む。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は核酸を含む。いくつかの実施形態では、前記デコイ部分は抗体を含む。いくつかの実施形態では、前記デコイ部分は核酸を含む。
【0023】
本技術は、バイオセンサならびに関連する方法およびシステムの使用を提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、分析物を検出するための本明細書に記載のバイオセンサの使用を提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、分析物を検出するための本明細書に記載の方法の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、分析物を検出するための本明細書に記載のシステムの使用を提供する。
【0024】
さらなる実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術の当業者にとって明らかであろう。
【0025】
本技術のこれらおよび他の構成、態様、および利点は、以下の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】本明細書に記載の動力学的バイオセンサの実施形態を示す模式図である。バイオセンサはいくつかのモジュールを含む。すなわち、第1のエピトープを介した標的分析物(T)の安定的な結合のための捕捉プローブ(C)と、Tの第2の別個のエピトープの可逆的動力学的プロービング(例えば、一過性の結合)のためのクエリープローブ(Q)と、時間に応じた相対距離の変化が分析物の存在および同一性について報告する標識L1およびL2と、Qの結合に関してTと競合する任意のデコイ(D)部分と、検出を容易にするための表面または他の界面への固定のための任意のアンカー部分(A)とを含む。TがCに安定に結合すると、複合体は以下の2つの状態の間で一連の遷移を経る。状態1:QおよびCの両方がTに結合され、これにより、それらの標識が近接して保持される状態。状態2:CのみがTに結合され、標識L1とL2との間の距離が測定可能に大きくなる状態。いくつかの実施形態では、状態1および状態2の相対的な持続時間が、モジュール間の連結度、QのTへの結合の安定性、および/またはデコイモジュールDの存在および性質によって制御される。
図1B図1aのバイオセンサを使用した実験で観察されたデータの形跡を示す図である。分析物が存在しない場合、センサは主に状態2を占める。標的分析物Tの結合により、センサは、状態1と状態2を交互に繰り返す特異な動態パターンに入る。擬似分析物S(Tとは異なるが、QおよびCに対していくらかの親和性を有する)の結合により、状態1と2を異なるパターンで交互に繰り返す様子が観察され、TとSとの間の識別を可能にする。
図2A】本技術の例示的な実施形態および変形例を示す。図2Aは、標的核酸(例えば、DNAまたはRNA)を引き入れる核酸配列の複合体を使用して構成されたバイオセンサの実施形態の概略図を示す。この場合、クエリープローブおよび捕捉プローブは標的Tに対して部分的に相補性を有する低親和性および高親和性ハイブリダイゼーションプローブであり、デコイはQに結合するTの一部を模倣する核酸配列である。
図2B】本技術の例示的な実施形態および変形例を示す。図2Bは、クエリープローブおよび捕捉プローブがそれぞれ低親和性および高親和性抗体であるバイオセンサの実施形態を示す。
図2C】本技術の例示的な実施形態および変形例を示す。図2Cは、デコイDが残りのバイオセンサの要素に共有結合的に連結されず、トランスで導入されるバイオセンサの実施形態を示す。
図3A】バイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示す。図3Aは、標的核酸(T)、すなわち、マイクロRNA hsa-miR-141に加えて、3つの核酸鎖を含むバイオセンサ設計の実施形態を示す。捕捉プローブ(C)およびクエリープローブ(Q)は、T上の隣接する相補的領域に結合する長い核酸配列および短い核酸配列であり、CおよびQの両方がTに結合された場合、標識Alexa Fluor 647(AF647、L1)とCy3(L2)とが並列する。Cy3とAF647の並列は、2つの色素間でフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を可能にし、その結果、複合体からの蛍光シグナルのほぼ100%がAF647から放出される。QがTに結合されない場合、Qは代わりにデコイ配列Dに結合し、その結果、FRET効率が低くなり、複合体からの蛍光のほぼ100%がCy3から放出される。捕捉(C)配列は、Cプローブによる標的の結合のより大きな安定性のために、ロックド核酸(LNA)修飾を組み込む。
図3B】バイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示す。図3Bは、hsa-miR-141が結合された単一のバイオセンサ分子のFRET測定を示す。データは、FRET比としてプロット上に示される。FRET比はA/(A+D)によって算出される。ここで、Aはアクセプター蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度であり、Dはドナー蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度である。高FRET状態(主にCy5発光)と低FRET状態(主にCy3発光)との間の反復遷移は、例えば、t=14秒およびt=16秒で見られ、Tとの相互作用を動力学的に特徴付けすることを可能にし、これにより、Tの存在の明確なサインを提供する。高FRET状態および低FRET状態を生じるバイオセンサの構成は、シグナルとバイオセンサの構成とを接続する点線で右に示される。
図3C】バイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示す。図3Cは、Tが無い場合におけるFRET測定を示しており、低FRET状態のみを示し、したがって、Tが無いことを示す。
図4A】標的核酸、すなわち、miR-141に加えて3つの核酸鎖を含むバイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示し、左側の模式図は、バイオセンサ(例えば、デコイを含むバイオセンサ(下側模式図)または無デコイバイオセンサ(例えば、デコイを含まないバイオセンサ)(上側模式図))の組成を示す。中央のプロットは、個々のバイオセンサからの代表的な単一分子FRET軌跡を示し、一方、右のプロットは、非ゼロFRET効率の少なくとも1つのデータポイントを示す36個のバイオセンサ(各条件から)において観察されたFRET比のヒストグラムである。本明細書中において、用語「FRET比」はA/(A+D)によって算出される。ここで、Aはアクセプター蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度であり、Dはドナー蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度である。図4Aは、デコイ(D)が存在せず、1に近い安定したFRET効率をもたらすバイオセンサの単一分子FRET測定から得られたデータを示す。
図4B】標的核酸、すなわち、miR-141に加えて3つの核酸鎖を含むバイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示し、左側の模式図は、バイオセンサ(例えば、デコイを含むバイオセンサ(下側模式図)または無デコイバイオセンサ(例えば、デコイを含まないバイオセンサ)(上側模式図))の組成を示す。中央のプロットは、個々のバイオセンサからの代表的な単一分子FRET軌跡を示し、一方、右のプロットは、非ゼロFRET効率の少なくとも1つのデータポイントを示す36個のバイオセンサ(各条件から)において観察されたFRET比のヒストグラムである。本明細書中において、用語「FRET比」はA/(A+D)によって算出される。ここで、Aはアクセプター蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度であり、Dはドナー蛍光体からの蛍光発光の見かけの強度である。図4Bは、7-ヌクレオチドデコイ配列が存在し、約1と0.1のFRET効率間の動的遷移をもたらすバイオセンサの単一分子FRET測定からのデータを示す。したがって、デコイの存在は、デコイが存在しないバイオセンサでは観察されないFRET遷移をもたらす。
図5】TIRF顕微鏡法によって可視化される癌関連miRNA(miR-141)を検出するための、本明細書で提供される動力学的検出技術の実施形態の動作原理を示す模式図である。図に示されたデータによって示されるように、センサは、標的miRNAの存在下で、高FRET状態と低FRET状態との間で急速に遷移する。対照的に、データは、標的が存在しない場合、低FRET状態(例えば、高ドナー蛍光および低アクセプター蛍光)のみが観察されることを示す。
図6】ヌクレオチド(nt)におけるデコイのスペーサ(「競合物」)およびクエリープローブのスペーサ(「ループ長」)の長さに応じて、高FRET状態および低FRET状態の中央値持続時間の変化を示す棒グラフである。デコイ用の6ntスペーサ(「競合物」)およびクエリープローブ用の18ntスペーサ(「クエリーアームループ」)を含むセンサは、類似の持続時間を有する高FRET状態と低FRET状態との間で急速に遷移したことが観察された。すべての動態が、標的RNA、すなわち、miR-141の存在下で報告されている。
図7A】様々な濃度のホルムアミドにおける単一miR-141結合センサ(6ntデコイスペーサアーム、18ntクエリースペーサアームループ)のドナー(青色)蛍光およびアクセプター(赤色)蛍光の単一分子FRET形跡を示す。
図7B】ホルムアミド濃度に応じて、高FRET状態および低FRET状態の持続時間を示す。
図7C】10%ホルムアミドにおいて収集された最初の10秒間の形跡のみから構成された、分子当たりの結合事象および解離事象の数であるNb+dのヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、または図面中の物体は必ずしも互いに関連付けながら一定の縮尺で描かれているわけでもないことを理解されたい。図面は本明細書で開示される装置、システム、および方法の種々の実施形態を明確にし、理解することを意図した描写である。同一の参照番号は可能な限り、同一または類似の構成を表すように図面の全体を通して使用される。さらに、図面は、本教示の範囲を決して限定することを意図していないことを理解されたい。
【0028】
本明細書において、分析物の検出に関する技術を提供する。特に、分析物を検出し、特徴付けし、同定し、および/または定量化するための方法、組成物、およびシステムを提供するが、これらに限定されない。
【0029】
この種々の実施形態の詳細な説明において、説明の目的のため、開示される実施形態の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、当業者は、これら種々の実施形態が、これらの特定の詳細が有っても無くても実施され得ることを理解するであろう。他の例では、構造およびデバイスはブロック図形式で示される。さらに、当業者は、方法が提示されそして実行される具体的な順序が例示的なものであって、順序は変更可能であり、それでもなお、本明細書において開示される種々の実施形態の精神および範囲内にあることが意図されることを容易に理解することができる。
【0030】
特許、特許出願、論文、書籍、専門書、およびインターネットウェブページを含むがこれらに限定されない本出願において引用される全ての文献および類似の資料は、任意の目的のために、それらの全体が参照により明示的に組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書に記載される種々の実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。組み込まれた参考文献における用語の定義が、本教示において提供される定義と異なるように見える場合、本教示において提供される定義が支配するものとする。本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成目的のためだけのものであり、いかなる形でも記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0031】
〔定義〕
本技術の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記述される。
【0032】
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、以下の用語は、文脈が他に明確に指示しない限り、本明細書において明示的に関連付けられた意味をとる。本明細書で使用される「一実施形態では」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指さないが、同じ実施形態を指してもよい。さらに、本明細書で使用される「別の実施形態では」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指さないが、異なる実施形態を指してもよい。したがって、以下で説明するように、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の種々の実施形態を容易に組み合わせ得る。
【0033】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「または」は包含的「or」記号であり、文脈が他に明確に指示しない限り、用語「および/または」と同等である。用語「に基づく」は文脈が他に明確に指示しない限り、排他的ではなく、そして記載されていない追加の要素に基づくことを許容する。さらに、明細書の全体を通して、「a」、「an」および「the」の意味は複数の言及を含む。「おける(in)」の意味は、「中(in)」および「上(on)」を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「約」、「ほぼ」、「実質的に」、および「かなり」は、当業者によって理解され、そしてそれらが使用される文脈である程度変動する。それらが使用される文脈を考慮して、当業者に明らかでないこれら用語の使用が存在する場合、「約」および「ほぼ」は、特定の用語の10%以下のプラスまたはマイナスを意味し、そして「実質的に」および「かなり」は、特定の用語の10%を超えるプラス又はマイナスを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「対象」および「患者」は、植物、微生物、および動物(例えば、イヌ、ネコ、家畜、およびヒトのような哺乳動物)を含む任意の生物を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「分析物」は、試験、アッセイ、検出、イメージング、特徴付け、説明、および/または定量化される物質を指す。例示的な分析物としては、分子、原子、イオン、生体分子(例えば、本明細書に記載され、定義されるような核酸(例えば、DNA、RNA))、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質)、炭水化物、脂質、アミノ酸、小分子(薬物、生物活性剤、毒素、補因子、代謝物)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書および特許請求の範囲における用語「サンプル」は、その最も広い意味で使用される。いくつかの実施形態では、サンプルは、動物細胞または組織であるか、または動物細胞または組織を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、任意の供給源から得られた検体または培養物(例えば、微生物培養物)、ならびに生体サンプルおよび環境サンプルを含む。生体サンプルは、植物または動物(ヒトを含む)から得られ得、そして流体、固体、組織、および気体を包含する。環境サンプルは、表面物質、土壌、水、および工業サンプルのような環境物質を含む。これらの例は、本技術に適用可能なサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「生体サンプル」は、生体組織または流体のサンプルを指す。例えば、生体サンプルは、動物(ヒトを含む);流体、固体、または組織サンプル;ならびに液体および固体の食品および飼料製品および乳製品、野菜、肉や肉副産物、および廃棄物などの材料から得られるサンプルであり得る。生体サンプルは、家畜ならびに自然動物または野生動物(有蹄動物、クマ、魚、ウサギ類、げっ歯類などのような動物を含むがこれらに限定されない)の種々の科の全てから得られ得る。生体サンプルの例としては、組織、血液、血液画分、血漿、血清、尿、または他の末梢供給源もしくは細胞培養物、細胞コロニー、単細胞、あるいは単細胞の一群に由来するサンプルの一部分が挙げられる。さらに、生体サンプルは、上述のサンプルのプールまたは混合物を含む。生体サンプルは、対象から細胞のサンプルを取り出すことによって提供され得るが、以前に単離されたサンプルを使用することによっても提供され得る。例えば、組織サンプルは、従来の生検技術によって、疾患を有する疑いのある対象から取り出され得る。いくつかの実施形態では、血液サンプルは、対象から採取される。患者に由来する生体サンプルとは、疾患に罹患している疑いのある対象に由来するサンプルを意味する。
【0039】
環境サンプルの例としては、表面物質、土壌、水、および工業サンプルのような環境物質、ならびに食品および乳製品加工器械、装置、設備、用具、使い捨て品および非使い捨て品から得られるサンプルが挙げられる。これらの例は、本発明に適用可能なサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「生体液」は、生体流体(例えば、体液、身体の流体)を指す。例えば、いくつかの実施形態では、生体液は排出物(例えば、尿、汗、滲出液(例えば、植物滲出液を含む))であり、そしていくつかの実施形態では、生体液は、分泌物(例えば、母乳、胆汁)である。いくつかの実施形態では、生体液は、針を使用して得られる(例えば、血液、脳脊髄液、リンパ液)。いくつかの実施形態では、生体液は、病理学的プロセスの結果として産生される(例えば、水疱、嚢胞液)。いくつかの実施形態では、生体液は、別の生体液に由来する(例えば、血漿、血清)。例示的な生体液としては、羊水、房水、硝子体液、胆汁、血液、血漿、血清、母乳、脳脊髄液、耳垢、乳び、粥状物、内リンパ、外リンパ、滲出液、糞便、女性射精液、胃酸、胃液、リンパ液、粘液(例えば、鼻ドレナージ、痰)、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂(例えば、皮膚油)、漿液、精液、垢脂、痰、滑液、汗、涙、尿、膣分泌物、および嘔吐物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書中で使用される用語「標識」は、検出可能な(例えば、定量可能な)効果をもたらすために使用され得、かつ核酸またはタンパク質に付着され得る、任意の原子、分子、分子複合体(例えば、金属キレート)、またはコロイド粒子(例えば、量子ドット、ナノ粒子、微粒子など)を指す。標識としては、色素(例えば、光学的に検出可能な標識、蛍光色素または部分など);32Pのような放射性標識;ビオチンのような結合部分;ジゴキシゲニンのようなハプテン;発光性、リン光性、光学的に検出可能、または蛍光発生性部分;マスタグ;および蛍光色素単独または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって発光スペクトルを抑制またはシフトできる部分との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。標識は、蛍光、発光、放射能、比色分析、重量測定、X線回折または吸収、磁性、酵素活性、質量または質量によって影響される挙動の特徴(例えば、MALDI飛行時間型質量分析;蛍光偏光)などによって検出可能なシグナルを提供し得る。標識は、荷電部分(正または負の電荷)であってもよく、あるいは、電荷的中性であってもよい。標識を含む配列が検出可能である限り、標識は、核酸またはタンパク質配列を含み得るか、あるいは核酸またはタンパク質配列からなり得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「蛍光体」は蛍光体および発光団の両方、ならびに蛍光またはルミネセンス発光を消光する化学物質を指すと理解される。さらに、本明細書中で使用される場合、「蛍光体」は、適切に刺激された場合に蛍光特性を有する任意の種を指す。蛍光を誘発する刺激は典型的には照明である。しかしながら、他の種類の刺激(例えば、衝突)もまた、本明細書中で考慮される。用語「蛍光体」、「蛍光体(fluor)」、「蛍光部分」、「蛍光色素」、および「蛍光基」は、互換的に使用される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「FRET対」は、アクセプターおよびドナー蛍光体を指し、ここでドナー蛍光体の発光波長はアクセプター蛍光体の励起波長と重複する。
【0044】
本明細書で使用される「支持体」または「固体支持体」は、分析物がその上もしくは中で濃縮および/または固定され得る表面またはマトリックス(例えば、分析物が共有結合的にまたは非共有結合的に付着され得るか、あるいは、その中もしくはその上に分析物が部分的もしくは完全に包埋され得、分析物が互いに対して自由に拡散するかまたは移動することが大部分または全体的に防止される表面)を指す。いくつかの実施形態では、支持体はアンカー部分と相互作用する部分を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」は、ピリミジンおよび/またはプリン塩基、好ましくはそれぞれシトシン、チミン、およびウラシル、ならびにアデニンおよびグアニンのポリマーまたはオリゴマーを指す(Albert L. Lehninger, Principles of Biochemistry, 793-800 (Worth Pub. 1982)を参照のこと)。本技術は、任意のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはペプチド核酸成分、およびその任意の化学的変異体、例えば、これらの塩基のメチル化、ヒドロキシメチル化、またはグリコシル化形態などを意図する。ポリマーまたはオリゴマーは、組成が不均一または均一であってもよく、そして天然に生じる供給源から単離されてもよく、または人工的もしくは合成的に産生されてもよい。さらに、核酸は、DNAもしくはRNA、またはそれらの混合物であってもよく、そして一本鎖または二本鎖の形態で(ホモ二重鎖、ヘテロ二重鎖、およびハイブリッド状態を含む)永久的にまたは一過性に存在してもよい。いくつかの実施形態では、核酸または核酸配列は、例えば、DNA/RNAヘリックス、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ、ロックド核酸(LNA)、および/またはリボザイムのような、他の種類の核酸構造を含む。したがって、用語「核酸」または「核酸配列」はまた、天然ヌクレオチドと同じ機能を示し得る非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、および/または非ヌクレオチド構築ブロック(例えば、「ヌクレオチドアナログ」)を含む鎖を包含し得る。さらに、本明細書で使用される用語「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントまたは部分、ならびにゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNA(これらは一本鎖または二本鎖であり得、そしてセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得る)を指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「ヌクレオチドアナログ」は、7-デアザプリン(例えば、7-デアザ-dATPおよび7-デアザ-dGTP)のような変化した積み重なり相互作用を有するアナログ;代替的な水素結合配置を有する塩基アナログ(例えば、Iso-CおよびIso-G、ならびにS. Bennerに対する米国特許第6,001,983号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される他の非標準的塩基対);非水素結合アナログ(例えば、B. A. Schweitzer and E. T. Kool, J. Org. Chem., 1994, 59, 7238-7242、B. A. Schweitzer and E. T. Kool, J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 1863-1872(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される2,4-ジフルオロトルエンのような非極性芳香族ヌクレオシドアナログ);5-ニトロインドールおよび3-ニトロピロールのような「ユニバーサル」塩基;ならびにユニバーサルプリンおよびピリミジン(それぞれ、「K」および「P」ヌクレオチドなど;P. Kong, et al., Nucleic Acids Res., 1989, 17, 10373-10383, P. Kong et al., Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5149-5152)を含むが、これらに限定されない、修飾されたまたは天然に存在しないヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログとしては、糖部分に修飾を有するヌクレオチド、例えばジデオキシヌクレオチドおよび2’-O-メチルヌクレオチドが挙げられる。ヌクレオチドアナログとしては、デオキシリボヌクレオチドならびにリボヌクレオチドの修飾形態が挙げられる。
【0047】
「ペプチド核酸」は、ペプチド様ポリアミド骨格を組み込むDNA模倣物を意味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」または「相補性」は、塩基対合規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド捕捉プローブ、クエリープローブ、または核酸である標的分析物のようなヌクレオチドの配列)の関連で使用される。例えば、配列「5’-A-G-T-3’」については配列「3’-T-C-A-5’」に相補的である。相補性は「部分的」であり得る。この場合、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合規則にしたがってマッチする。または、核酸間に「完全」または「全体的」な相補性が存在し得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して有意な効果を有する。これは、増幅反応、ならびに核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。いずれの用語も、特にポリヌクレオチドの文脈内で、個々のヌクレオチドに関しても使用され得る。例えば、オリゴヌクレオチド内の特定のヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの残りと別の核酸鎖との間の相補性との対照または比較で、別の核酸鎖内のヌクレオチドに対するその相補性またはその欠如について知られ得る。
【0049】
いくつかの文脈において、用語「相補性」および関連する用語(例えば、「相補的」、「相補物」)は、水素結合を介して別の核酸配列に結合し得る核酸配列のヌクレオチド、例えば、塩基対合(例えば、ワトソン-クリック塩基対合または他の塩基対合による)をすることができるヌクレオチドを指す。塩基対を形成することができるヌクレオチド(例えば、互いに相補的である)は、以下の対である:シトシンおよびグアニン、チミンおよびアデニン、アデニンおよびウラシル、ならびにグアニンおよびウラシル。相補性百分率は、核酸配列の全長にわたって算出される必要はない。相補性の百分率は、塩基対合される核酸配列の特定の領域(例えば、最初の塩基対合されたヌクレオチドから開始し、そして最後の塩基対合されたヌクレオチドで終了する領域)に限定され得る。本明細書で使用される核酸配列の相補物は、一方の配列の5’末端が他方の配列の3’末端と対合するように核酸配列と並べた場合に、「逆平行会合」にあるオリゴヌクレオチドを指す。天然核酸において一般的に見出されない特定の塩基が本発明の核酸中に含まれ得、そして、それらは、例えば、イノシンおよび7-デアザグアニンを含み得る。相補性は完全である必要はなく、安定な二重鎖は、ミスマッチ塩基対または非マッチ塩基を含み得る。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度、ならびにミスマッチ塩基対の発生率を含む、いくつかの変数を考慮して、二重鎖安定性を経験的に決定することができる。
【0050】
したがって、いくつかの実施形態では、「相補的」は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれより多くの核酸塩基の領域にわたって、第2の核酸塩基配列の相補物と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一である第1の核酸塩基配列を指すか、またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で2つの配列がハイブリダイズすることを指す。「完全に相補的」とは、第1の核酸の各々の核酸塩基が、第2の核酸の対応する位置における各々の核酸塩基と対合することができることを意味する。例えば、特定の実施形態では、各々の核酸塩基が核酸に対して相補性を有するオリゴヌクレオチドは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれより多くの核酸塩基の領域にわたって核酸の相補物と同一である核酸塩基配列を有する。
【0051】
「ミスマッチ」は、第2の核酸の対応する位置における核酸塩基と対合することができない第1の核酸の核酸塩基を意味する。
【0052】
用語「ドメイン」は、ポリペプチドに関して使用される場合、特有の構造的および/または機能的特徴を保有するポリペプチドの小区分を指し、典型的には、この特徴は、多様なポリペプチドにわたって類似する。小区分は、典型的には、隣接するアミノ酸を含むが、小区分は、協調して作用するか、または折り畳みもしくは他の配置に起因して近接しているアミノ酸も含み得る。タンパク質ドメインの例としては、膜貫通ドメイン、グリコシル化部位などが挙げられる。
【0053】
用語「遺伝子」は、RNA、またはポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。機能的なポリペプチドは、完全長コード配列によって、または、ポリペプチドの所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、コード配列の任意の部分によって、コードされ得る。遺伝子に関して使用される場合、用語「部分」は、その遺伝子のフラグメントを指す。フラグメントのサイズは、数ヌクレオチドから、遺伝子配列全体から1ヌクレオチドを引いたものにまで及び得る。したがって、「遺伝子の少なくとも一部を含むヌクレオチド」は、遺伝子のフラグメントまたは遺伝子全体を含み得る。
【0054】
用語「遺伝子」はまた、構造遺伝子のコード領域を包含し、そして、5’末端および3’末端の両方にコード領域に隣接して位置し、遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、いずれの末端においても約1kbの距離にわたる配列を含む。コード領域の5’側に位置する配列であって、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列といわれる。コード領域の3’側または下流に位置する配列であって、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列といわれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される、遺伝子のセグメントである。イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写物から除去されるか、「スプライスアウト」される。それゆえ、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物中に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳中に機能する。
【0055】
イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形態はまた、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列を含み得る。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と呼ばれる(これらのフランキング配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’側または3’側に位置する)。5’フランキング領域は、遺伝子の転写を制御する、またはそれに影響を及ぼす、プロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含み得る。3’フランキング領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を指示する配列を含み得る。
【0056】
用語「野生型」は、天然に生じる供給源から単離された場合に、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察され、したがって遺伝子の「正常」または「野生型」形態と任意に指定される。対照的に、用語「修飾型」、「突然変異型」、「変異型」、または「多型」は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能的特性に修飾(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。なお、天然に生じる突然変異体は単離され得るが、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、これらが変化した特徴を有するということによって同定される。したがって、ヌクレオチド配列に関して使用される場合、用語「変異体」および「突然変異体」は、別の、通常関連するヌクレオチド酸配列と、1つ以上のヌクレオチドが異なる核酸配列を指す。「変異」は、2つの異なるヌクレオチド配列間の差異である。いくつかの実施形態では、1つの配列は参照配列である。
【0057】
用語「対立遺伝子」は、遺伝子における様々な変異を指す。変異は、変異体と突然変異体、多型遺伝子座と一塩基多型遺伝子座、フレームシフト突然変異およびスプライス突然変異を含むが、これらに限定されない。対立遺伝子は、集団において天然に生じ得、または、集団の任意の特定の個体の生存期間の間に生じ得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対合に関連して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(例えば、核酸間の会合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、および形成されるハイブリッドのTのような因子によって影響される。「ハイブリダイゼーション」方法は、ある核酸を、別の相補的な核酸(例えば、相補的ヌクレオチド配列を有する核酸)へアニーリングすることを含む。相補的配列を含む核酸の2つのポリマーが、互いを見出し、そして塩基対合相互作用を介してアニーリングする能力は、よく認識された現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:453 (1960)およびDoty et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:461 (1960)による「ハイブリダイゼーション」プロセスの最初の観察の後、このプロセスは、現代生物学の必須ツールに改良されている。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「T」は、「融解温度」に関して使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖に半分解離されるようになる温度である。核酸のTを算出するためのいくつかの式が、当該技術分野においてよく知られている。標準的な参考文献によって示されるように、T値の単純な概算は、核酸が1M NaClの水溶液中にある場合、次の式によって算出され得る。T=81.5+0.41*(%G+C)(例えば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照のこと)他の参考文献(例えば、Allawi and SantaLucia, Biochemistry 36: 10581-94 (1997))は、Tを算出するために構造、環境、および配列の特徴を説明する、より洗練された算出を含む。例えば、いくつかの実施形態では、これらの計算は、短い核酸プローブおよび標的(例えば、実施例において使用されるような)について改善されたTの概算を提供する。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「取得時間」、「観察期間」、「観察時間」、および類似の語句は、本技術の一実施形態を用いて、サンプルを観察し、および/またはデータを記録して、分析物がサンプル中に存在する場合、サンプル中の分析物を検出する時間をいう。特に、いくつかの実施形態では、「取得時間」、「観察期間」、「観察時間」、および類似の語句は、クエリープローブ結合事象を検出、記録、および/または計数する時間をいう。いくつかの実施形態では、「取得時間」、「観察期間」、「観察時間」、および類似の語句は、数十秒~数百秒~数千秒の時間(例えば、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒;例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、または60分;例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間)である。いくつかの実施形態では、「取得時間」、「観察期間」、「観察時間」、および類似の語句は、約1秒~10秒から1分~10分の時間(例えば、約1秒~100秒、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、または100秒、例えば、1分~100分、例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、または100分)である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は0.1秒~20.0秒(例えば、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1.0秒、1.1秒、1.2秒、1.3秒、1.4秒、1.5秒、1.6秒、1.7秒、1.8秒、1.9秒、2.0秒、2.1秒、2.2秒、2.3秒、2.4秒、2.5秒、2.6秒、2.7秒、2.8秒、2.9秒、3.0秒、3.1秒、3.2秒、3.3秒、3.4秒、3.5秒、3.6秒、3.7秒、3.8秒、3.9秒、4.0秒、4.1秒、4.2秒、4.3秒、4.4秒、4.5秒、4.6秒、4.7秒、4.8秒、4.9秒、5.0秒、5.1秒、5.2秒、5.3秒、5.4秒、5.5秒、5.6秒、5.7秒、5.8秒、5.9秒、6.0秒、6.1秒、6.2秒、6.3秒、6.4秒、6.5秒、6.6秒、6.7秒、6.8秒、6.9秒、7.0秒、7.1秒、7.2秒、7.3秒、7.4秒、7.5秒、7.6秒、7.7秒、7.8秒、7.9秒、8.0秒、8.1秒、8.2秒、8.3秒、8.4秒、8.5秒、8.6秒、8.7秒、8.8秒、8.9秒、9.0秒、9.1秒、9.2秒、9.3秒、9.4秒、9.5秒、9.6秒、9.7秒、9.8秒、9.9秒、10.0秒、10.1秒、10.2秒、10.3秒、10.4秒、10.5秒、10.6秒、10.7秒、10.8秒、10.9秒、11.0秒、11.1秒、11.2秒、11.3秒、11.4秒、11.5秒、11.6秒、11.7秒、11.8秒、11.9秒、12.0秒、12.1秒、12.2秒、12.3秒、12.4秒、12.5秒、12.6秒、12.7秒、12.8秒、12.9秒、13.0秒、13.1秒、13.2秒、13.3秒、13.4秒、13.5秒、13.6秒、13.7秒、13.8秒、13.9秒、14.0秒、14.1秒、14.2秒、14.3秒、14.4秒、14.5秒、14.6秒、14.7秒、14.8秒、14.9秒、15.0秒、15.1秒、15.2秒、15.3秒、15.4秒、15.5秒、15.6秒、15.7秒、15.8秒、15.9秒、16.0秒、16.1秒、16.2秒、16.3秒、16.4秒、16.5秒、16.6秒、16.7秒、16.8秒、16.9秒、17.0秒、17.1秒、17.2秒、17.3秒、17.4秒、17.5秒、17.6秒、17.7秒、17.8秒、17.9秒、18.0秒、18.1秒、18.2秒、18.3秒、18.4秒、18.5秒、18.6秒、18.7秒、18.8秒、18.9秒、19.0秒、19.1秒、19.2秒、19.3秒、19.4秒、19.5秒、19.6秒、19.7秒、19.8秒、19.9秒、または20.0秒)である。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「測定温度」は、本技術の一実施形態を用いて、サンプルを観察し、および/またはデータを記録して、分析物がサンプル中に存在する場合、サンプル中の分析物を検出する温度を指す。いくつかの実施形態では、「測定温度」は、能動加熱および能動冷却(例えば、サンプルの温度を、例えば、設定温度の0.1℃~0.5℃~1.0℃内に維持するためのヒートポンプ、ペルチェ素子、水浴、または、当技術分野で公知の他の技術)を用いて制御される。いくつかの実施形態では、測定温度は、10℃~110℃(例えば、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、または110℃)である。
【0062】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸を含む化合物を指し、これらは互換的に使用される。遺伝子によってコードされる「タンパク質」または「ポリペプチド」は、遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に限定されず、タンパク質の翻訳後修飾を含む。本明細書において用語「アミノ酸配列」がタンパク質分子のアミノ酸配列に言及するために記載される場合、「アミノ酸配列」および類似の用語、例えば「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸配列を、記載されたタンパク質分子に関連する完全なネイティブのアミノ酸配列に限定することを意味しない。さらに、「アミノ酸配列」は、タンパク質をコードする核酸配列から推定され得る。以下のように、従来の1文字および3文字のアミノ酸コードが本明細書中で使用される。アラニン:Ala、A;アルギニン:Arg、R;アスパラギン:Asn、N;アスパラギン酸塩:Asp、D;システイン:Cys、C;グルタミン酸塩:Glu、E;グルタミン:Gln、Q;グリシン:Gly、G;ヒスチジン:His、H;イソロイシン:Ile、I;ロイシン:Leu、L;リシン:Lys、K;メチオニン:Met、M;フェニルアラニン:Phe、F;プロリン:Pro、P;セリン:Ser、S;Xトレオニン:Thr、T;トリプトファン:Trp、W;チロシン:Tyr、Y;バリン:Val、V。本明細書で使用される場合、コードXaaおよびXは任意のアミノ酸を指す。
【0063】
用語「変異体」および「突然変異体」は、ポリペプチドに関して使用される場合、別の、通常関連するポリペプチドと、1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「融解」は、核酸に関して使用される場合、二本鎖核酸または核酸の領域の、一本鎖核酸または核酸の領域への解離を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「クエリープローブ」または「リーダープローブ」は、分析物を認識(例えば、分析物に結合(例えば、分析物に特異的に結合))する任意の物体(例えば、分子、生体分子など)である。例示的な実施形態では、クエリープローブは、分析物を認識するタンパク質である。いくつかの他の例示的な実施形態では、クエリープローブは、分析物を認識する核酸である。例えば、いくつかの実施形態では、クエリープローブは、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基間に修飾連結を含む核酸、例えば、上述のような核酸などを含む。いくつかの実施形態では、核酸クエリープローブは核酸アプタマーを含む。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、例えば、本明細書に記載されるような蛍光部分などの検出可能な標識で、標識される。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、2種類以上の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学リンカー、または化学部分のうちの2つ以上)を含む。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、FRET対の構成要素で標識される。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、消光剤で標識される。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、中程度から低い熱力学的安定性(例えば、測定温度から10℃以内の融解温度、または、観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間)で分析物に結合する。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、10nt~30nt(例えば、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、または30nt)を含むスペーサアームを含む。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、5nt~50nt(例えば、5nt、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、30nt、31nt、32nt、33nt、34nt、35nt、36nt、37nt、38nt、39nt、40nt、41nt、42nt、43nt、44nt、45nt、46nt、47nt、48nt、49nt、または50nt)を含む。
【0066】
本技術の実施形態は、分析物に一過性にそして反復して結合するクエリープローブ(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブ)、例えば、観察窓当たり数回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上を上回る回数)標的分析物に結合し、そしてそれから解離するクエリープローブを含む。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、アッセイ条件下で、分析物に対して、約1ナノモル濃度を上回る(例えば、0.5ナノモル濃度、0.6ナノモル濃度、0.7ナノモル濃度、0.8ナノモル濃度、0.9ナノモル濃度、1.0ナノモル濃度、1.1ナノモル濃度、1.2ナノモル濃度、1.3ナノモル濃度、1.4ナノモル濃度、1.5ナノモル濃度、1.6ナノモル濃度、1.7ナノモル濃度、1.8ナノモル濃度、1.9ナノモル濃度、2.0ナノモル濃度、2.1ナノモル濃度、2.2ナノモル濃度、2.3ナノモル濃度、2.4ナノモル濃度、2.5ナノモル濃度、2.6ナノモル濃度、2.7ナノモル濃度、2.8ナノモル濃度、2.9ナノモル濃度、3.0ナノモル濃度、3.1ナノモル濃度、3.2ナノモル濃度、3.3ナノモル濃度、3.4ナノモル濃度、3.5ナノモル濃度、3.6ナノモル濃度、3.7ナノモル濃度、3.8ナノモル濃度、3.9ナノモル濃度、4.0ナノモル濃度、4.1ナノモル濃度、4.2ナノモル濃度、4.3ナノモル濃度、4.4ナノモル濃度、4.5ナノモル濃度、4.6ナノモル濃度、4.7ナノモル濃度、4.8ナノモル濃度、4.9ナノモル濃度、または5.0ナノモル濃度、またはそれより高いナノモル濃度)解離定数(K)を有する。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、分析物に対して、約1分-1を上回る(例えば、0.5分-1、0.6分-1、0.7分-1、0.8分-1、0.9分-1、1.0分-1、1.1分-1、1.2分-1、1.3分-1、1.4分-1、1.5分-1、1.6分-1、1.7分-1、1.8分-1、1.9分-1、2.0分-1、2.1分-1、2.2分-1、2.3分-1、2.4分-1、2.5分-1、2.6分-1、2.7分-1、2.8分-1、2.9分-1、3.0分-1、3.1分-1、3.2分-1、3.3分-1、3.4分-1、3.5分-1、3.6分-1、3.7分-1、3.8分-1、3.9分-1、4.0分-1、4.1分-1、4.2分-1、4.3分-1、4.4分-1、4.5分-1、4.6分-1、4.7分-1、4.8分-1、4.9分-1、または5.0分-1、またはそれより多い分-1)結合定数および/または解離定数を有する。
【0067】
本技術は、クエリープローブについて限定されない。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、低親和性抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、ナノボディ、DNA結合タンパク質またはタンパク質ドメイン、メチル化結合ドメイン(MBD)、キナーゼ、ホスファターゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、酵素、またはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、標的分析物と相互作用するオリゴヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態では、クエリープローブは、標的分析物にハイブリダイズして、観察が行われる温度から約10℃以内である融解温度を有する二重鎖を形成するオリゴヌクレオチドである(例えば、室温で行われる観察に対して約7~12ヌクレオチド)。いくつかの実施形態では、クエリープローブはモノヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、小有機分子(例えば、約2000ダルトン未満、例えば、2100ダルトン、2050ダルトン、2000ダルトン、1950ダルトン、1900ダルトン、1850ダルトン、1800ダルトン、1750ダルトン、1700ダルトン、1650ダルトン、1600ダルトン、1550ダルトン、1500ダルトン、またはそれより小さな分子量を有する分子)である。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、医薬品、例えば、薬物または他の生物活性分子である。いくつかの実施形態では、クエリープローブは金属イオン錯体である。いくつかの実施形態では、クエリープローブはメチル結合ドメイン(例えば、MBD1)である。いくつかの実施形態では、クエリープローブは本明細書に記載されるような検出可能な標識で標識される。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、検出可能な標識に共有結合的に連結される。いくつかの実施形態では、クエリープローブは、検出可能な標識と間接的および/または非共有結合的に連結および/または会合される。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は蛍光性である。
【0068】
いくつかの実施形態では、クエリープローブは、マウスモノクローナル抗体である。
【0069】
分析物が炭水化物または多糖類を含むいくつかの実施形態では、クエリープローブは、レクチンまたは炭水化物結合抗体などの炭水化物結合タンパク質を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、「事象」は、例えば、クエリープローブが分析物へ結合すること、またはクエリープローブが分析物から解離することをいい、例えば、クエリープローブが分析物へ結合していること、および/またはクエリープローブが分析物から解離していることを示す検出可能な特性をモニターすることによって測定される。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「デコイ部分」は、クエリープローブに結合し、かつ、分析物ではない任意の物体(例えば、分子、生体分子など)である。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、分析物への結合に関してクエリープローブと競合し、クエリープローブが分析物に結合されていない状態にある時間を延ばす。したがって、いくつかの実施形態では、デコイ部分は、クエリープローブと分析物との相互作用(例えば、会合および解離)の制御を可能にする。例えば、クエリープローブが分析物と結合している「状態1」と、クエリープローブが分析物と結合していない「状態2」との間をクエリープローブが切り替わる動態を制御する。
【0072】
いくつかの実施形態では、デコイ部分は、分析物模倣物である。いくつかの実施形態では、デコイ部分とクエリープローブとは直接接続される(例えば、共有結合的に(例えば、化学結合、リンカーなどによって))。いくつかの実施形態では、デコイ部分とクエリープローブとは間接的に接続される(例えば、非共有結合性相互作用によって)。クエリープローブとデコイ部分とが直接的または間接的に接続される実施形態では、デコイ部分はクエリープローブに対して「シスで」提供される。いくつかの実施形態では、デコイ部分とクエリープローブとは互いに接続されない(例えば、デコイ部分がクエリープローブに対して「トランスで」存在する)。種々の実施形態では、分析物がクエリープローブに結合するよりも、デコイ部分はクエリープローブに弱く結合するか、またはクエリープローブに強く結合する。いくつかの実施形態では、クエリープローブが分析物に結合するのとほぼ同じ親和性で、デコイ部分はクエリープローブに結合する。例示的な実施形態では、デコイ部分は、クエリープローブに結合するタンパク質である。いくつかの他の例示的な実施形態では、デコイ部分は、クエリープローブに結合する核酸である。例えば、いくつかの実施形態では、デコイ部分は、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基間に修飾連結を含む核酸、例えば、上述のような核酸などを含む。いくつかの実施形態では、デコイ部分は核酸アプタマーを含む。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、例えば、本明細書に記載されるような蛍光部分などの検出可能な標識で、標識される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、2種類以上の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学リンカー、または化学部分のうちの2つ以上)を含む。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、FRET対の構成要素で標識される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、消光剤で標識される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、中程度から低い熱力学的安定性(例えば、測定温度から10℃以内の融解温度、または、観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間)でクエリープローブに結合する。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、4nt~20nt(例えば、4nt、5nt、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、または20nt)を含む核酸である。
【0073】
本明細書で使用される場合、「捕捉プローブ」は、分析物を認識(例えば、分析物に結合、例えば、分析物に特異的に結合)する任意の物体(例えば、分子、生体分子など)である。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、分析物を固体支持体に連結する。例示的な実施形態では、捕捉プローブは、分析物を認識するタンパク質である。いくつかの他の例示的な実施形態では、捕捉プローブは、分析物を認識する核酸である。例えば、いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基間に修飾連結を含む核酸、例えば、上述のような核酸などを含む。いくつかの実施形態では、核酸捕捉プローブは核酸アプタマーを含む。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、例えば、本明細書に記載されるような蛍光部分などの検出可能な標識で、標識される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、2種類以上の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学リンカー、または化学部分のうちの2つ以上)を含む。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、FRET対の構成要素で標識される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、消光剤で標識される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、高い熱力学的安定性(例えば、測定温度より10℃を上回る高さの融解温度、または観察期間の10倍を上回る長さの平均持続時間)で分析物に結合する。いくつかの実施形態では、捕捉プローブはアンカー部分を含む。いくつかの実施形態では、捕捉プローブはアンカー部分に直接(例えば、共有結合的に)接続される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブはアンカー部分に間接的に(例えば、非共有結合的に)接続される。
【0074】
本技術の実施形態は、分析物の捕捉を含む。いくつかの実施形態では、分析物は捕捉され、固定される。いくつかの実施形態では、分析物は、固体支持体に安定的に付着される。いくつかの実施形態では、固体支持体は、固体支持体に接触するバルク液相に対して不動である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、固体支持体に接触するバルク液相内で拡散可能である。
【0075】
いくつかの実施形態では、表面または他の固体基質への標的分析物の安定な付着は、高親和性または不可逆的相互作用によってもたらされる(例えば、本明細書において、「不可逆的相互作用」は、観察時間よりも長い解離半減期を有する相互作用をいい、例えば、いくつかの実施形態では、解離半減期は1分~10分(例えば、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒、130秒、140秒、150秒、160秒、170秒、180秒、190秒、200秒、210秒、220秒、230秒、240秒、250秒、260秒、270秒、280秒、290秒、300秒、310秒、320秒、330秒、340秒、350秒、360秒、370秒、380秒、390秒、400秒、410秒、420秒、430秒、440秒、450秒、460秒、470秒、480秒、490秒、500秒、510秒、520秒、530秒、540秒、550秒、560秒、570秒、580秒、590秒、または600秒以上)である)。本技術は、分析物の捕捉に使用される要素および/または方法について限定されない。例えば、安定した付着は、種々の方法によって提供される。種々の方法は以下のうち1つ以上を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、不可逆的相互作用は、高い熱力学的安定性(例えば、測定温度より10℃を上回る高さの融解温度、または観察期間の10倍を上回る長さの平均持続時間)を有する相互作用である。
【0076】
いくつかの実施形態では、分析物は、分析物に対して約1ナノモル濃度(nM)より小さい(例えば、1.5ナノモル濃度、1.4ナノモル濃度、1.3ナノモル濃度、1.2ナノモル濃度、1.1ナノモル濃度、1.0ナノモル濃度、0.9ナノモル濃度、0.8ナノモル濃度、0.7ナノモル濃度、0.6ナノモル濃度、0.5ナノモル濃度の各値より小さい)解離定数(K)、および、分析物に対して約1分-1より小さい(例えば、約1.5分-1、1.4分-1、1.3分-1、1.2分-1、1.1分-1、1.0分-1、0.9分-1、0.8分-1、0.7分-1、0.6分-1、0.5分-1の各値より小さい)解離速度定数を有する表面結合捕捉プローブによって固定される。例示的な表面結合捕捉プローブとしては、例えば、抗体、抗体フラグメント、ナノボディ、または他のタンパク質;高親和性DNA結合タンパク質またはリボ核タンパク質複合体、例えば、Cas9、dCas9、Cpf1、転写因子、または転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);オリゴヌクレオチド;小有機分子;または金属イオン錯体が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、分析物は、表面への直接的な非共有結合的な付着によって(例えば、分析物と表面、例えば、ガラス表面またはナイロン、ニトロセルロース、またはポリビニリデンジフルオリド膜との間の相互作用によって)固定される。
【0078】
いくつかの実施形態では、分析物は、分析物の固体支持体への化学的連結によって(例えば、共有結合によって)固定される。いくつかの実施形態では、分析物は、例えば、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)エステル、マレイミド、ハロアセチル基、ヒドラジド、またはアルコキシアミンによって、固体支持体に化学的に連結される。いくつかの実施形態では、分析物は、表面へのおよび/または表面に付着した捕捉プローブへの標的分析物の放射線(例えば、紫外線)誘導架橋によって固定化される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、ウサギモノクローナル抗体である。分析物が炭水化物または多糖類を含むいくつかの実施形態では、捕捉プローブは、レクチンまたは炭水化物結合抗体のような炭水化物結合タンパク質を含む。
【0079】
あるいは、上述のように、固体支持体に接触するバルク相に対して相対的に静止している固体支持体に標的分析物を固定する代わりに、いくつかの実施形態では、標的分析物を、自由拡散粒子に接触しているバルク流体相内で拡散する自由拡散粒子と会合させる。したがって、いくつかの実施形態では、標的分析物は、自由拡散基質に共有結合または非共有結合される。いくつかの実施形態では、自由拡散基質は、例えば、コロイド粒子(例えば、約10nm~1000nm(例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、または1000nm)の直径を有する粒子)である。いくつかの実施形態では、自由拡散基質は、例えば、ポリスチレン、シリカ、デキストラン、金、またはDNAオリガミを含み、および/または、それらから作製される。いくつかの実施形態では、標的分析物は、クエリープローブの拡散と比較してゆっくりと拡散する自由拡散粒子と会合される。例えば、標的分析物は、クエリープローブの拡散係数の約10%未満(例えば、15%、14%、13%、12%、11%、10.5%、10.4%、10.3%、10.2%、10.1%、10.0%、9.9%、9.8%、9.7%、9.6%、9.5%、または9.0%以下)の拡散係数を有する。
【0080】
さらに、いくつかの実施形態では、標的分析物は自由拡散粒子と会合され、そして、標的分析物の位置はクエリープローブ結合の観察および/または記録とは独立して観察可能および/または記録可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検出可能な標識(例えば、蛍光体、蛍光タンパク質、量子ドット)は、例えば、標的分析物の検出および位置特定のために、標的分析物に共有結合的にまたは非共有結合的に付着される。したがって、いくつかの実施形態では、標的分析物の位置およびクエリープローブ結合事象の位置が同時にかつ独立して測定される。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「感度」は、サンプルが分析物を含む場合にアッセイが分析物について陽性結果を与える確率を指す。感度は、真陽性結果の数を、真陽性と偽陰性との合計で割ったものとして算出される。感度は、アッセイがいかに良好に分析物を検出するかの尺度である。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「特異性」は、サンプルが分析物を含まない場合にアッセイが陰性結果を与える確率を指す。特異性は、真陰性結果の数を、真陰性と偽陽性との合計で割ったものとして算出される。特異性は、本発明の方法が、分析物を含まないサンプルを、分析物を含むサンプルからいかに良好に排除するかの尺度である。
【0083】
本明細書で使用される場合、「平衡定数」(Keq)、「平衡会合定数」(K)、および「会合結合定数」(または「結合定数」(K))は、平衡状態にあるAおよびBの以下の結合反応について互換的に使用される。
【0084】
【化1】
【0085】
ここで、AとBは、互いに会合する2つの物体であり(例えば、捕捉プローブと分析物、クエリープローブと分析物、デコイ部分とクエリープローブ)、そしてKeq=[AB]/([A]×[B])である。解離定数は、K=1/Kである。Kはそれが会合するパートナーBに対する1つの結合パートナーAの親和性を説明するのに有用な方法である。例えば、数値Kは、かなりの量のABを生成するために必要とされるAまたはBの濃度を表す。Keq=koff/kon;K=koff/konである。
【0086】
本明細書で使用される場合、互いに会合する2つの物体の生成物(例えば、上記式に従ったAおよびBからのABの形成)の「かなりの量」は、AまたはBの遊離濃度(いずれか小さいほう)以上であるABの濃度を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ナノモル濃度親和性範囲」は、ナノモル範囲の平衡解離定数K(例えば、koff/konの比)、例えば、1×10-10M~1×10-5M(例えば、いくつかの実施形態では、1×10-9M~1×10-6M)の解離定数(K)を有する、2つの要素の会合を指す。解離定数はモル濃度単位(M)を有する。解離定数が小さければ小さいほど、2つの要素(例えば、捕捉プローブと分析物;クエリープローブと分析物;クエリープローブとデコイ部分)の間の親和性は高くなる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「弱い親和性」または「弱い結合」または「弱い会合」は、約100ナノモル濃度(例えば、約10ナノモル濃度、20ナノモル濃度、30ナノモル濃度、40ナノモル濃度、50ナノモル濃度、60ナノモル濃度、70ナノモル濃度、80ナノモル濃度、90ナノモル濃度、100ナノモル濃度、110ナノモル濃度、120ナノモル濃度、130ナノモル濃度、140ナノモル濃度、150ナノモル濃度、160ナノモル濃度、170ナノモル濃度、180ナノモル濃度、190ナノモル濃度、200ナノモル濃度、300ナノモル濃度、400ナノモル濃度、または500ナノモル濃度)および/または、いくつかの実施形態では、1ナノモル濃度~10マイクロモル濃度の範囲のKを有する会合を指す。
【0089】
用語「特異的結合」または「特異的に結合」は、互いに会合する2つの要素AおよびBの相互作用に関連して使用される場合、溶液中の他の類似の要素(例えば、AまたはBではない溶液中の少なくとも1つの他の分子種)とのAまたはBの相互作用に対するKより小さなKを有するAおよびBの会合を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、単語「存在」または「不在」(あるいは、「存在する」または「存在しない」)は、特定の物体(例えば、分析物)の量またはレベルを説明するために相対的な意味で使用される。例えば、分析物がサンプル中に「存在する」と言われる場合、この分析物のレベルまたは量が、所定の閾値を上回っていることを意味し;逆に、分析物がサンプル中に「存在しない」と言われる場合、この分析物のレベルまたは量が、所定の閾値を下回っていることを意味する。所定の閾値は、分析物を検出するために使用される特定の試験に関連する検出可能性についての閾値、または任意の他の閾値であり得る。分析物がサンプルにおいて「検出」される場合、分析物はサンプル中に「存在」し;分析物が「検出されない」場合、分析物はサンプルに「存在しない」。さらに、分析物が「検出される」かまたは分析物が「存在する」サンプルは、分析物について「陽性」であるサンプルである。分析物が「検出されない」かまたは分析物が「存在しない」サンプルは、分析物について陰性であるサンプルである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「増加」または「減少」は、変数の事前に測定された値に対する、事前に確立された値に対する、および/または標準対照の値に対する、変数の値の検出可能な(例えば、測定された)正または負の変化を指す。増加は、変数の事前に測定された値、事前に確立された値、および/または標準対照の値に対して、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは2倍、なおより好ましくは少なくとも5倍、そして最も好ましくは少なくとも10倍の正の変化である。同様に、減少は、変数の以前に測定された値、事前に確立された値、および/または標準対照の値の、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも90%の負の変化である。「より多い」または「より少ない」のような、定量的な変化または差異を示す他の用語は、本明細書において、前記と同じ様式で使用される。
【0092】
用語「検出アッセイ」は、分析物の存在もしくは不在、または分析物の活性もしくは効果を検出するための、あるいは分析物の変異体の存在もしくは不在を検出するためのアッセイを指す。
【0093】
「システム」は、各々の要素が全体内の少なくとも1つの他の要素と相互作用するか、またはそれに関係付けられる全体を含む、実在のまたは抽象的な、要素のセットを示す。
【0094】
いくつかの実施形態では、本技術は、抗体成分または部分、例えば、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」(「免疫グロブリン」(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)としても知られる)は、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの重鎖、および各々がジスルフィド結合によって重鎖に連結された2つの軽鎖を含む。抗体の特異性は、抗体の抗原結合部位(またはパラトープ)と抗原決定基(またはエピトープ)との間の構造的相補性にある。抗原結合部位は、主に超可変または相補性決定領域(CDR)由来の残基から構成される。時折、非超可変領域またはフレームワーク領域由来の残基が、全体的なドメイン構造に、したがって、結合部位に影響を及ぼす。いくつかの実施形態は、抗体のフラグメント、例えば、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含んで、例えば、前記分子と抗原との間の特異的相互作用を可能にする、任意のタンパク質またはポリペプチド含有分子を含む。免疫グロブリン分子の一部は、重鎖または軽鎖またはそのリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク領域、またはその任意の部分を含み得るが、これらに限定されない。そのようなフラグメントは、当該分野で知られているように、および/または本明細書に記載されるように、酵素切断、合成または組換え技術によって産生され得る。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが、天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、種々の切断形態で産生され得る。抗体の種々の部分は、従来の技術によって化学的に一緒に連結され得るか、または遺伝子工学技術を使用して連続的なタンパク質として調製され得る。
【0095】
抗体のフラグメントとしては、Fab(例えば、パパイン消化による)、F(ab’)(例えば、ペプシン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化および部分還元による)、およびFvまたはscFv(例えば、分子生物学的技術による)フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
Fabフラグメントは、抗体をプロテアーゼパパインで処理することによって得ることができる。また、原核発現系または真核発現系のためのベクター中に抗体のFabをコードするDNAを挿入し、そして原核生物または真核生物中にベクターを導入してFabを発現させることによって、Fabを産生してもよい。F(ab’)は、抗体をプロテアーゼペプシンで処理することによって得てもよい。また、F(ab’)は、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介してFab’を結合することによって産生することができる。Fabは、F(ab’)を還元剤、例えばジチオトレイトールで処理することによって得てもよい。また、Fab’は、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中に挿入し、そしてベクターをその発現のために原核生物または真核生物中に導入することによって産生することができる。Fvフラグメントは、ペプシンによる制限された切断(例えば、4℃およびpH4.0)によって産生してもよい(「冷ペプシン消化」と称する方法)。Fvフラグメントは、強い非共有相互作用によって一緒に保持された重鎖可変ドメイン(V)および軽鎖可変ドメイン(V)からなる。scFvフラグメントは、前述のように、VおよびVドメインをコードするcDNAを得、scFvをコードするDNAを構築し、原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中にDNAを挿入し、次いで、発現ベクターを原核生物または真核生物中に導入してscFvを発現させることによって産生してもよい。
【0097】
一般に、抗体は、通常、当該技術分野で現在よく知られている多くの従来の技術を使用して、任意の抗原に対して惹起させることができる。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「結合」は、1つの分子または薬剤が、別の分子または薬剤に、物理的または化学的に結合または接着されている場合を指す。結合の例としては、共有結合および静電複合体化が挙げられる。用語「複合体化される」、「と複合体化される」、および「結合される」は、本明細書において互換的に使用される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「安定な相互作用」または「安定的に結合した」相互作用との言及は、相互作用の熱力学的平衡条件下で比較的持続的である会合を指す。いくつかの実施形態では、「安定な相互作用」は、約10-9Mより小さなK、いくつかの実施形態では、約10-8Mより小さなKを有する2つの要素間の相互作用である。いくつかの実施形態では、「安定な相互作用」は、1時間あたり1より小さな解離速度定数koff、いくつかの実施形態では、1分あたり1より小さな解離速度定数koffを有する。いくつかの実施形態では、「安定な相互作用」は、「一過性の相互作用」ではないと定義される。いくつかの実施形態では、「安定な相互作用」は、典型的にはK値によっては記載されないが、各相互作用当たり約1分より長い(例えば、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、105秒、110秒、115秒、120秒、125秒、130秒、135秒、140秒、145秒、150秒、155秒、160秒、165秒、170秒、175秒、または180秒)2つの物体間の平均会合期間を含む、共有結合および他の相互作用によって媒介される相互作用を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、「安定な相互作用」と「一過性の相互作用」との区別は、Kおよび/またはkoffおよび/または会合を記載する別の動力学的または熱力学的値のカットオフ値によって決定される。ここで、カットオフは、Kおよび/またはkoffまたは会合を記載する別の動力学的または熱力学的値の絶対的な用語で記載される場合、そうでなければ異なって特徴付けられ得る安定な相互作用と一過性の相互作用とを区別するために使用される。例えば、K値によって特徴付けられる「安定な相互作用」はまた、さらにより安定である別の相互作用の文脈において「一過性の相互作用」として特徴付けられ得る。当業者は、安定な相互作用および一過性の相互作用の他の相対的な比較、例えば、K値によって特徴付けられる「一過性の相互作用」はまた、さらにより一過性である(より安定でない)別の相互作用の文脈において「安定な相互作用」として特徴づけられ得ることを理解する。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「安定な相互作用」、「安定な結合」、および「安定な会合」は互換的に使用される。本明細書で使用される場合、用語「一過性の相互作用」、「一過性の結合」、および「一過性の会合」は互換的に使用される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「部分」は、ある物が分割され得る2つ以上の部分、例えば、オリゴヌクレオチド、分子、化学基、ドメイン、プローブ、「R」基、ポリペプチドなどの種々の部分のうちの1つを指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、「シグナル」は、アッセイされるサンプルの1つ以上の特性(例えば、分析物へのクエリープローブの結合および/または分析物からのクエリープローブの解離)に関連する時間的に変動する量(例えば、観察可能、検出可能、および/または測定可能な量)である。シグナルは、時間領域で連続的であり得、または時間領域で離散的であり得る。数学的抽象概念として、連続時間シグナルの領域は、一組の実数(またはその間隔)であり、そして離散時間シグナルの領域は、一組の整数(またはその間隔)である。離散シグナルはしばしば、連続シグナルの「デジタルサンプリング」を介して生じる。例えば、音声シグナルは、規則的な間隔(例えば、50マイクロ秒毎)で線上の電圧レベルを読み取ることによってデジタル化され得る線上の断続的に変動する電圧からなる。結果として得られる数のストリームは、離散時間デジタルシグナルとして保存される。いくつかの実施形態では、シグナルは、空間の位置(例えば、x、y座標;例えば、x、y、z座標)に応じて記録される。いくつかの実施形態では、シグナルは、時間に応じて記録される。いくつかの実施形態では、シグナルは、時間および位置に応じて記録される。
【0104】
本明細書で使用される用語「実質的に」は、広義の用語であり、そしてその通常の意味(大部分は特定されるものではあるが、必ずしも完全にそうではないことを含むが、これに限定されない)で使用される。
【0105】
本明細書で使用される用語「アルゴリズム」は、広義の用語であり、そしてその通常の意味(例えば、コンピュータ処理を使用して、情報を1つの状態から別の状態に変換することに関与する計算プロセス(例えば、プログラム)を含むが、これに限定されない)で使用される。
【0106】
〔説明〕
本明細書における開示は特定の図で示した実施形態について言及するが、これらの実施形態は、例として与えられたものであって、制限する目的で与えられたものではないことを理解されたい。
【0107】
(SiMREPS)
本明細書中で使用される場合、用語「平衡ポアソンサンプリングによる単一分子認識」およびその略語「SiMREPS」は、動力学的フィンガープリンティングによってサンプル中の個々の分析物を同定および計数するための、増幅を行わない単一分子検出アプローチをいう。この技術は、例えば、米国特許出願第14/589,467;国際特許出願PCT/US2015/044650;国際特許出願PCT/US2017/016977;国際特許出願PCT/US2018/021356;米国仮出願第62/468,578、米国仮出願第62/692,001、および米国仮出願62/598,802に記載されており、それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids”Nature Biotechnology 33: 730-32も参照されたい(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0108】
手短に言えば、SiMREPS技術は、表面捕捉された分析物(例えば、核酸、タンパク質など)への蛍光プローブの反復結合を直接観察することを含み、特異的な(例えば、核酸、配列特異的な)動力学的フィンガープリントを生成する。動力学的フィンガープリントは、単一分子分解能で、高い信頼度で分析物を同定する。動力学的フィンガープリントは、熱力学的特異性バリアによって制限されるこれまでの技術を克服し、それによって偽陽性を最小化および/または排除する。よって、SiMREPS技術は、例えば、微量のまたは少量の突然変異型DNA対立遺伝子のような微量の分析物を検出する際に使用される、非常に高い特異性を提供する。従来の研究が、SiMREPSは単一ヌクレオチド識別を行うことが可能であることを示している(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids”Nat. Biotechnol. 33: 730-32; Su et al. (2017) “Single-Molecule Counting of Point Mutations by Transient DNA Binding”Sci Rep 7: 43824を参照のこと(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0109】
本技術は、例えば、類似の分析物の存在下での、および、いくつかの実施形態では、バックグラウンドノイズの存在下での、標的分析物の検出を提供する。いくつかの実施形態では、標的分析物へのクエリープローブの一過性の結合から生じるシグナルは、非結合クエリープローブによって生成されるシグナルと区別可能である(例えば、結合事象の間のシグナル強度の局所的変化を観察、モニター、および/または記録することによって)。いくつかの実施形態では、クエリープローブ(例えば、蛍光標識クエリープローブ)の標的分析物への一過性の結合の観察は、例えば、全反射蛍光(TIRF:total internal reflection fluorescence)または近TIRF顕微鏡法、ゼロモード導波路(ZMW:zero-mode waveguide)、光学シート顕微鏡法、誘導放出抑制(STED:stimulated emission depletion)顕微鏡法、または共焦点顕微鏡法などの技術によって提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される技術は、標的分析物に結合していないときに消光される蛍光発光、および/または標的分析物に結合しているときに脱消光(dequench)される蛍光発光を有するクエリープローブを使用する。
【0110】
本技術は、例えば、平面または体積内の特定の空間座標において観察される、面積の個々の領域および/または体積の個々の領域内の分析物へのクエリープローブの一過性の結合の位置を特定することおよび/または観察することを含む。いくつかの実施形態では、(例えば、限定されたシグナル、検出器ノイズ、または検出器における空間ビニングによる)結合または解離事象の空間座標を決定する際のエラーは、固定された(例えば、表面結合された)標的分析物間の平均間隔に対して小さい(例えば、最小化される、排除される)。広視野蛍光顕微鏡法の使用を含むいくつかの実施形態では、固定された(例えば、表面結合された)標的分析物間の平均距離より大きくない、検体平面における有効な検出器ピクセル寸法を使用することによって、測定エラーが最小化されるおよび/または排除され、多くの蛍光光子(いくつかの実施形態では100を上回る、例えば、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、もしくは130、あるいはそれ以上を上回る)が検出の時点ごとに収集される。
【0111】
いくつかの実施形態では、検出可能な(例えば、蛍光)クエリープローブは、それが固体支持体の表面に近い場合に(例えば、固体支持体の表面から約100nm以内)、蛍光発光シグナルを生成する。結合していない場合、クエリープローブは迅速に拡散し、その結果個々に検出されない。したがって、結合していない状態にある場合、クエリープローブは、低レベルの拡散バックグラウンド蛍光を生成する。その結果、いくつかの実施形態では、結合クエリープローブの検出は、全反射蛍光顕微鏡法(TIRF:total internal reflection fluorescence microscopy)、HiLo顕微鏡法(例えば、US20090084980、EP2300983 B1、WO2014018584 A1、WO2014018584 A1を参照のこと(これらは、参照により本明細書に組み込まれる))、共焦点走査顕微鏡法、または固体支持体の表面付近または表面上のそれらのクエリープローブ分子のみを照明する(例えば、励起する)照明スキームを含む他の技術の使用を含む。したがって、いくつかの実施形態では、表面付近または表面上で固定された標的に結合したクエリープローブのみが、単一分子に由来するものとして確認することができる点様発光シグナル(例えば、「スポット」)を生成する。
【0112】
いくつかの実施形態では、クエリープローブは、発光波長を有する蛍光標識を含む。蛍光標識の発光波長での蛍光発光の検出は、クエリープローブが固定された標的分析物に結合していることを示す。クエリープローブの標的分析物への結合は、「結合事象」である。本技術のいくつかの実施形態では、結合事象は、規定された閾値よりも大きい測定強度を有する蛍光発光を有する。例えば、いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を超える蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも1、2、3、4またはそれより大きい標準偏差上回る蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも2標準偏差上回る蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される平均蛍光強度)の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍である蛍光強度を有する。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が(例えば、標的分析物が固定されている固体支持体上の個々の位置で)起こったことを示す。また、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が開始したことを示す。したがって、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長での蛍光の欠如を検出することは、結合事象が終了した(例えば、クエリープローブが標的分析物から解離した)ことを示す。結合事象が開始した時点と結合事象が終了した時点との間の時間の長さ(例えば、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する蛍光プローブの発光波長での蛍光が検出される時間の長さ)は、結合事象の滞留時間(dwell time)である。「遷移」とは、クエリープローブの標的分析物への結合と解離(例えば、オン/オフ事象)、例えば、結合された状態から解離するクエリープローブまたは結合していない状態から標的分析物と会合するクエリープローブをいう。
【0114】
本技術に係る方法は、規定された時間間隔中に、固体支持体上の個々の位置(例えば、x、y座標によって同定される位置)で生じるクエリープローブ結合事象を計数することを含み、前記規定された時間間隔は、「取得時間」または「観察期間」であり、例えば、数十秒~数百秒~数千秒である時間間隔(例えば、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒;例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、または60分;例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間)である。いくつかの実施形態では、取得時間は、約1秒~10秒から1分~10分(例えば、約1秒~100秒、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、または100秒、例えば、1分~100分、例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、または100分)である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は0.1秒~20.0秒(例えば、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1.0秒、1.1秒、1.2秒、1.3秒、1.4秒、1.5秒、1.6秒、1.7秒、1.8秒、1.9秒、2.0秒、2.1秒、2.2秒、2.3秒、2.4秒、2.5秒、2.6秒、2.7秒、2.8秒、2.9秒、3.0秒、3.1秒、3.2秒、3.3秒、3.4秒、3.5秒、3.6秒、3.7秒、3.8秒、3.9秒、4.0秒、4.1秒、4.2秒、4.3秒、4.4秒、4.5秒、4.6秒、4.7秒、4.8秒、4.9秒、5.0秒、5.1秒、5.2秒、5.3秒、5.4秒、5.5秒、5.6秒、5.7秒、5.8秒、5.9秒、6.0秒、6.1秒、6.2秒、6.3秒、6.4秒、6.5秒、6.6秒、6.7秒、6.8秒、6.9秒、7.0秒、7.1秒、7.2秒、7.3秒、7.4秒、7.5秒、7.6秒、7.7秒、7.8秒、7.9秒、8.0秒、8.1秒、8.2秒、8.3秒、8.4秒、8.5秒、8.6秒、8.7秒、8.8秒、8.9秒、9.0秒、9.1秒、9.2秒、9.3秒、9.4秒、9.5秒、9.6秒、9.7秒、9.8秒、9.9秒、10.0秒、10.1秒、10.2秒、10.3秒、10.4秒、10.5秒、10.6秒、10.7秒、10.8秒、10.9秒、11.0秒、11.1秒、11.2秒、11.3秒、11.4秒、11.5秒、11.6秒、11.7秒、11.8秒、11.9秒、12.0秒、12.1秒、12.2秒、12.3秒、12.4秒、12.5秒、12.6秒、12.7秒、12.8秒、12.9秒、13.0秒、13.1秒、13.2秒、13.3秒、13.4秒、13.5秒、13.6秒、13.7秒、13.8秒、13.9秒、14.0秒、14.1秒、14.2秒、14.3秒、14.4秒、14.5秒、14.6秒、14.7秒、14.8秒、14.9秒、15.0秒、15.1秒、15.2秒、15.3秒、15.4秒、15.5秒、15.6秒、15.7秒、15.8秒、15.9秒、16.0秒、16.1秒、16.2秒、16.3秒、16.4秒、16.5秒、16.6秒、16.7秒、16.8秒、16.9秒、17.0秒、17.1秒、17.2秒、17.3秒、17.4秒、17.5秒、17.6秒、17.7秒、17.8秒、17.9秒、18.0秒、18.1秒、18.2秒、18.3秒、18.4秒、18.5秒、18.6秒、18.7秒、18.8秒、18.9秒、19.0秒、19.1秒、19.2秒、19.3秒、19.4秒、19.5秒、19.6秒、19.7秒、19.8秒、19.9秒、または20.0秒)である。
【0115】
さらに、結合事象の間にクエリープローブが標的分析物に結合したままである時間の長さは、結合事象の「滞留時間」である。取得時間中に検出された結合事象の数および/または結合事象について記録された滞留時間の長さは、標的分析物に結合しているクエリープローブの特徴であり、したがって、標的分析物が前記個々の位置で固定され、その結果、標的分析物がサンプル中に存在するという指標を提供する。
【0116】
クエリープローブの固定された標的分析物への結合および/またはクエリープローブの固定された標的分析物からの解離は、規定された時間間隔中(例えば、取得時間中)、(例えば、光源を使用して蛍光プローブを励起させ、結合クエリープローブからの蛍光発光を、例えば、蛍光顕微鏡を使用して検出することによって)モニターされ、および/または記録される。取得時間中にクエリープローブが核酸に結合する回数、および/または各結合事象中にクエリープローブが核酸に結合したままである時間の長さおよび各結合事象中にクエリープローブが核酸に結合しないままである時間の長さ(例えば、結合状態および非結合状態それぞれにおける「滞留時間」)は、(例えば、隠れマルコフモデルおよびポアソン統計を使用してデータを分析するために)例えば、コンピュータおよびソフトウェアを使用することで決定される。
【0117】
いくつかの実施形態では、陽性対照サンプルおよび/または陰性対照サンプルが測定される(例えば、標的を含むまたは含まないことが知られている対照サンプル)。陰性対照サンプルにおいて検出される蛍光は、「バックグラウンド蛍光」または「バックグラウンド(蛍光)強度」または「ベースライン」である。
【0118】
いくつかの実施形態では、クエリープローブの発光波長での蛍光強度の測定値を含むデータは、時間に応じて記録される。いくつかの実施形態では、結合事象の数および結合事象の滞留時間(例えば、各固定された分析物についての)は、データから決定される(例えば、蛍光強度が閾値バックグラウンド蛍光強度を超える回数および時間の長さを決定することによって)。いくつかの実施形態では、遷移(例えば、1つ以上のクエリープローブの結合および解離)は、標的分析物が固定される固体支持体上の各個々の位置について計数される。いくつかの実施形態では、遷移の閾値数を使用して、固体支持体上の個々の位置における標的分析物の存在と、バックグラウンドシグナル、非標的分析物、および/またはクエリープローブの偽結合を識別する。
【0119】
いくつかの実施形態では、各固定された標的について遷移の数の分布が決定される。例えば、観察される各固定された分析物について遷移が計数される。いくつかの実施形態では、ヒストグラムが生成される。いくつかの実施形態では、分布の特徴的なパラメータが決定される。例えば、分布の平均、中央値、ピーク、形状などが決定される。いくつかの実施形態では、データおよび/またはパラメータ(例えば、蛍光データ(例えば、時間領域における蛍光データ)、動力学的データ、分布の特性パラメータなど)は、例えば、人工知能、パターン認識、機械学習、統計的推論、神経網などを使用して、データにおけるパターンおよび規則性を認識するアルゴリズムによって分析される。いくつかの実施形態では、前記分析は頻度分析の使用を含み、いくつかの実施形態では、前記分析はベイズ分析の使用を含む。いくつかの実施形態では、パターン認識システムは、既知の「訓練」データを使用して(例えば、教師あり学習を使用して)訓練され、いくつかの実施形態では、アルゴリズムが、今まで知られていなかったパターンを発見するために使用される(例えば、教師なし学習)。例えば、Duda, et al. (2001) Pattern classification (2nd edition), Wiley, New York;Bishop (2006) Pattern Recognition and Machine Learning, Springerを参照されたい。
【0120】
特定のパターンが、分析物の検出、定量化、および同定で用いられる特定の分析物の「フィンガープリント」を提供するように、パターン認識(例えば、訓練セット、教師あり学習、教師なし学習、および未知のサンプルの分析を使用する)は、同定されたパターンを分析物と関連付ける。
【0121】
いくつかの実施形態では、標的分析物から生成される分布は、非標的分析物から生成される分布、または標的分析物の非存在下で生成される分布とはかなり異なる。いくつかの実施形態では、遷移の平均数が、複数の固定された標的分析物について決定される。いくつかの実施形態では、標的分析物を含むサンプルについて観察される遷移の平均数が、時間に応じてほぼ直線的に関連付けられ、正の勾配を有する(例えば、遷移の平均数は、時間に応じてほぼ直線的に増加する)。
【0122】
いくつかの実施形態では、固体支持体上の各個々の位置における時間に応じて生じる遷移の確率を決定するために、データは、統計(例えば、ポアソン統計)を使用して処理される。いくつかの特定の実施形態では、固体支持体上の個々の位置における時間に応じて生じる比較的一定の確率の遷移事象は、固体支持体上の前記個々の位置における標的分析物の存在を示す。いくつかの実施形態では、事象数および経過時間に関連する相関係数は、固体支持体上の個々の位置における時間に応じて生じる遷移事象の確率から算出される。いくつかの実施形態では、固体支持体上の個々の位置における時間に応じて生じる遷移事象の確率から算出される場合に0.95を上回る事象数および経過時間に関連する相関係数は、固体支持体上の前記個々の位置における標的分析物の存在を示す。
【0123】
いくつかの実施形態では、結合クエリープローブの滞留時間(τon)および非結合クエリープローブの滞留時間(τoff)は、サンプル中の標的分析物の存在を同定するために、ならびに/あるいは標的分析物を含むサンプルと、非標的分析物を含むサンプルおよび/または標的分析物を含まないサンプルとを区別するために、使用される。例えば、標的分析物についてのτonは非標的分析物についてのτonよりも大きく、標的分析物についてのτoffは非標的分析物についてのτoffよりも小さい。いくつかの実施形態では、陰性対照およびサンプルについてのτonとτoffとを測定することは、サンプル中の標的分析物の有無を示す。いくつかの実施形態では、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および標的分析物を含むことが疑われるサンプルについて、固体支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについて複数のτonおよびτoff値が決定される。いくつかの実施形態では、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および標的分析物を含むと疑われるサンプルについて、固体支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについて平均τonおよび/またはτoffが決定される。いくつかの実施形態では、全てのイメージングされたスポットについてのτon対τoffのプロット(例えば、平均τonおよびτoff、時間平均τonおよびτoffなど)は、サンプル中の標的分析物の有無を示す。
【0124】
本明細書中に記載されるように、本技術は、動力学的検出技術によって分析物を検出する。したがって、本技術の特定の実施形態は、クエリープローブと検出されるべき分析物との相互作用の動態を分析することによって分析物を検出することに関する。クエリープローブQ(例えば、平衡濃度[Q]における)と標的分析物T(例えば、平衡濃度[T]における)との相互作用について、反応速度定数konは、分析物TにハイブリダイズしたプローブQを含む複合体QTの時間依存的な形成を説明する。特定の実施形態では、QT複合体の形成は、クエリープローブの濃度に依存しかつM-1-1(または同様のもの)の単位を有する二次反応速度定数に関連するが、QT複合体の形成は、QT複合体の形成に関連する擬似一次反応速度定数であるkonによって十分に説明される。したがって、本明細書中で使用される場合、konは、見かけ上の(「擬似」)一次反応速度定数である。
【0125】
同様に、反応速度定数kOFFは、複合体QTのプローブQおよび分析物Tへの時間依存的な解離を説明する。反応速度(kinetic rate)は、本明細書中では通常、分-1または秒-1の単位で提供される。結合状態におけるクエリープローブQの「滞留時間」(τon)は、クエリープローブQが分析物Tに結合してQT複合体を形成する各事例の間に、プローブQが分析物Tにハイブリダイズされる時間間隔(例えば、時間の長さ)である。非結合状態(τoff)におけるクエリープローブQの「滞留時間」は、クエリープローブQが分析物に結合してQT複合体を形成する各事例の間に、プローブQが分析物Tにハイブリダイズされない時間間隔(例えば、時間の長さ)である(例えば、クエリープローブQの標的分析物Tへの連続的な結合事象の間に、クエリープローブQが標的分析物Tから解離される時間)。滞留時間は、多数の結合事象および非結合事象にわたって積分する平均または加重平均として提供されてもよい。
【0126】
さらに、いくつかの実施形態では、プローブ(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブ(例えば、蛍光プローブ))の標的分析物への反復の確率論的結合は、単位時間当たり一定の確率で起こるポアソンプロセスとしてモデル化され、単位時間当たりの結合事象および解離事象の回数における標準偏差(Nb+d)は、(Nb+d1/2として増加する。したがって、統計的ノイズは、観察時間が増加するにつれ、より小さい割合のNb+dになる。したがって、標的結合と標的外結合との間の識別を達成するために、いくつかの実施形態では、観察は必要に応じて延長される。また、取得時間が増加するにつれて、Nb+dヒストグラム中のシグナルピークとバックグランドピークとはますます分離され、シグナル分布の幅は、Nb+dの平方根として増加し、速度論的モンテカルロシミュレーション(kinetic Monte Carlo simulation)と一致する。
【0127】
さらに、いくつかの実施形態では、アッセイ条件は、標的分析物へのクエリープローブ結合事象をバックグラウンド結合と識別することを改善するために、動態挙動を調節するように制御される。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、例えば、標的分析物と弱く相互作用するように設計されたクエリープローブを使用すること(例えば、ナノモル濃度親和性範囲で);クエリープローブが標的分析物と弱く相互作用するように温度を制御すること;溶液条件、例えば、イオン強度、イオン組成、カオトロピック剤の添加、および競合プローブの添加を制御することなどのアッセイ条件の制御を含む。
【0128】
いくつかの実施形態は、反復性のクエリープローブ結合によって分析物を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、分析物を固体支持体に固定化することを含む。いくつかの実施形態では、固体支持体は、表面(例えば、実質的に平坦な表面、丸い表面)、例えば、バルク溶液(例えば、分析物を含むバルク溶液)と接触する表面である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、自由に拡散可能な固体支持体(例えば、ビーズ、コロイド粒子、例えば、約10nm~1000nm(例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、または1000nm)の直径を有するコロイド粒子)であり、当該固体支持体は、例えば、バルク溶液(例えば、分析物を含むバルク溶液)内で自由に拡散する。いくつかの実施形態では、分析物を固体支持体に固定することは、固体支持体と分析物との間の共有結合性相互作用を含む。いくつかの実施形態では、分析物を固体支持体に固定することは、固体支持体と分析物との間の非共有結合性相互作用を含む。いくつかの実施形態では、分析物(例えば、分子、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、脂質、代謝物、薬物などの分子)は表面に安定的に固定され、方法は、クエリープローブの標的分析物への反復性の(例えば、一過性、低親和性の)結合を含む。いくつかの実施形態では、方法は、クエリープローブの標的分析物への反復性の(例えば、一過性、低親和性の)結合を検出することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、分析物に結合するクエリープローブから生成されるシグナル(例えば、時間に応じたクエリープローブシグナルのデータセット)および分析物に結合するクエリープローブの表面上の空間位置を説明する情報(例えば、座標、例えば、x座標、y座標)を含むデータセットを生成することを含む。いくつかの実施形態では、前記データセットは、例えば、クエリープローブ結合事象の空間分解能を改善するために、処理される(例えば、操作される、変換される、視覚化されるなど)。例えば、特定の実施形態では、前記データセット(例えば、時間に応じたクエリープローブシグナルおよび分析物に結合するクエリープローブの表面上の空間位置を説明する情報(例えば、座標、例えば、x座標、y座標)を含む)は、処理に供される。いくつかの実施形態では、処理は、時系列データの各フレーム内のクエリープローブ結合事象または解離事象を示す示差強度プロファイル(differential intensity profile)を生成するためのフレーム毎の減算プロセスを含む。本明細書に記載される技術の開発中に収集されたデータは、示差強度プロファイルがクエリープローブ結合シグナル対位置マップよりも高い分解能を有することを示す。いくつかの実施形態では、各クエリープローブ結合事象および/または解離事象の空間位置(例えば、x座標、y座標)を決定した後、複数の事象を空間位置にしたがってクラスタ化し、各クラスタ内の事象の動態を統計的分析に供して、事象のクラスタが所与の標的分析物に由来するかどうかを決定する。
【0129】
例えば、1つ以上の表面固定されたまたは拡散している標的分析物を定量化するための方法のいくつかの実施形態は、例えば、単一分子感度で、固定された標的分析物に対する1つ以上の一過性に結合するクエリープローブのシグナルを測定することを含む、1つ以上のステップを包含する。いくつかの実施形態では、方法は、クエリープローブ結合とは独立して標的分析物を追跡すること(例えば、その位置を検出および/または記録すること)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、位置(例えば、x位置、y位置)に応じて、表面での時間依存性のプローブ結合シグナル強度変化を算出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、位置(例えば、x位置、y位置)に応じて、表面での時間依存性のクエリープローブ結合シグナル強度変化を算出することにより、分析物へのクエリープローブ結合についての「示差強度プロファイル」を生成する。いくつかの実施形態では、前記方法は、各クエリープローブ結合事象および解離事象(「事象」)の位置(例えば、x位置、y位置)を、示差強度プロファイルからサブピクセル精度で決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、例えば、単一の固定された標的分析物についての事象を関連付けるために、表面上の位置(例えば、x位置、y位置)によって、事象を局所的クラスタにグループ化することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、クラスタが特定の分析物、例えば、特定の分析物への一過性のプローブ結合に由来するかどうかを決定するために、事象の各局所クラスタからの動態パラメータを算出することを含む。
【0130】
方法の実施形態は、検出される分析物について限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、分析物はポリペプチド、例えば、タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、標的分析物は核酸である。いくつかの実施形態では、標的分析物は小分子である。
【0131】
いくつかの実施形態では、標的分析物とクエリープローブとの間の相互作用は、標的分析物の共有結合性修飾によって区別可能に影響される。例えば、いくつかの実施形態では、分析物は、翻訳後修飾を含むポリペプチド、例えば、翻訳後修飾を含むタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの翻訳後修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルはポリペプチドにおける翻訳後修飾の有無に応じたものである。例えば、いくつかの実施形態では、分析物は、エピジェネティック修飾を含む核酸(例えば、メチル化塩基を含む核酸)である。いくつかの実施形態では、分析物は、標的分析物の核酸塩基、リボース、またはデオキシリボース部分に対する共有結合性修飾を含む核酸である。
【0132】
いくつかの実施形態では、核酸の修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルは核酸における修飾の有無に応じたものである。
【0133】
いくつかの実施形態では、翻訳後修飾とクエリープローブとの間の一過性の相互作用は、化学的親和性タグ、例えば核酸を含む化学的親和性タグによって媒介される。
【0134】
いくつかの実施形態では、クエリープローブは、核酸またはアプタマーである。
【0135】
いくつかの実施形態では、クエリープローブは、低親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。
【0136】
いくつかの実施形態では、クエリープローブは、DNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、またはDNA結合リボ核タンパク質複合体である。
【0137】
いくつかの実施形態では、各結合事象または解離事象の位置、例えば(x,y)位置は、示差強度プロファイルを、重心決定(centroid determination)、ガウス関数への最小二乗フィッティング、エアリーディスク関数への最小二乗フィッティング、多項式関数(例えば、放物線)への最小二乗フィッティング、または最尤推定に供することによって決定される。
【0138】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、高親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、核酸である。いくつかの実施形態では、捕捉は、標的分析物を表面に架橋する共有結合によって媒介される。いくつかの実施形態では、標的分析物は、表面固定の前に、担体の存在下で熱変性に供される。いくつかの実施形態では、分析物は、表面固定の前に担体の存在下で化学変性に供され、例えば、分析物は、尿素、ホルムアミド、塩化グアニジニウム、高イオン強度、低イオン強度、高pH、低pH、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの変性剤で変性される。
【0139】
(組成物)
本技術の実施形態は、分析物を検出、特徴付け、同定、および/または定量化するための組成物に関する。本技術の実施形態は、クエリープローブ部分と捕捉プローブ部分とを含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は標識を含む。いくつかの実施形態では、前記クエリープローブ部分は標識を含む。いくつかの実施形態では、前記捕捉プローブ部分は第1の標識を含み、前記クエリープローブ部分は第2の標識を含む。いくつかの実施形態では、前記第1の標識と前記第2の標識はFRET対である。いくつかの実施形態では、前記第1の標識は蛍光部分を含み、前記第2の標識は消光剤部分を含む。捕捉プローブ部分およびクエリープローブ部分は、分析物と会合することができる。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分およびクエリープローブ部分は、同時に分析物と会合することができる(例えば、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分およびクエリープローブ部分は同時に分析物と会合する)。
【0140】
特に、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、高い熱力学的安定性で分析物(例えば、分析物の第1の領域)と会合(例えば、結合)する(例えば、測定温度より10℃を上回る高さの融解温度または観察期間の10倍を上回る長さの平均持続時間を有する、捕捉プローブ部分と分析物との複合体を形成する)。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、分析物(例えば、分析物の第1の領域)と会合(例えば結合)して、測定温度より5℃を上回る(例えば、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃を上回る)高さの融解温度、または、観察期間の5倍を上回る(例えば、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、または1000倍を上回る)長さの平均持続時間を有する、捕捉プローブ部分と分析物との複合体を形成する。
【0141】
さらに、いくつかの実施形態では、クエリープローブ部分は、中程度から低い熱力学的安定性で分析物(例えば、分析物の第2の領域)と会合する(例えば、測定温度から10℃以内の融解温度、または観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する、クエリープローブ部分と分析物との複合体を形成する)。いくつかの実施形態では、クエリープローブ部分は分析物(例えば、分析物の第2の領域)と会合して、測定温度から10℃以内(例えば、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、1.0℃、1.1℃、1.2℃、1.3℃、1.4℃、1.5℃、1.6℃、1.7℃、1.8℃、1.9℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、または10.0℃以内)の融解温度、または観察期間の1/5以下(例えば、0.01倍、0.02倍、0.03倍、0.04倍、0.05倍、0.06倍、0.07倍、0.08倍、0.09倍、0.10倍、0.11倍、0.12倍、0.13倍、0.14倍、0.15倍、0.16倍、0.17倍、0.18倍、0.19倍、0.20倍以下)の長さの平均持続時間を有する、クエリープローブ部分と分析物との複合体を形成する。
【0142】
いくつかの実施形態は、デコイ部分を任意に含む。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、中程度から低い熱力学的安定性で分析物と会合する(例えば、測定温度から10℃以内の融解温度、または観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有する、デコイ部分と分析物との複合体を形成するために)。いくつかの実施形態では、デコイ部分は分析物と会合して、測定温度から10℃以内(例えば、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、1.0℃、1.1℃、1.2℃、1.3℃、1.4℃、1.5℃、1.6℃、1.7℃、1.8℃、1.9℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、または10.0℃以内)の融解温度、または観察期間の1/5以下(例えば、0.01倍、0.02倍、0.03倍、0.04倍、0.05倍、0.06倍、0.07倍、0.08倍、0.09倍、0.10倍、0.11倍、0.12倍、0.13倍、0.14倍、0.15倍、0.16倍、0.17倍、0.18倍、0.19倍、0.20倍以下)の長さの平均持続時間を有する、クエリープローブ部分と分析物との複合体を形成する。いくつかの実施形態では、デコイ部分は標識を含む。いくつかの実施形態では、デコイ部分は消光剤部分を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブおよびクエリープローブの両方が分析物と会合される場合、組成物またはシステムは「状態1」にある。いくつかの実施形態では、状態1は、近接している捕捉プローブの標識とクエリープローブの標識とを含む(例えば、捕捉プローブの標識とクエリープローブの標識との間の距離は15nm未満(例えば、15nm、14nm、13nm、12nm、11nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、または1nm未満))。いくつかの実施形態では、クエリープローブが分析物と会合されていないとき、組成物またはシステムは「状態2」にある。いくつかの実施形態では、状態2は、遠く離れた捕捉プローブの標識とクエリープローブの標識とを含む(例えば、捕捉プローブの標識とクエリープローブの標識との間の距離は5nm~10nmを上回る(例えば、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nmまたはそれ以上を上回る))。
【0144】
いくつかの実施形態は、アンカー部分を任意に含む。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、捕捉プローブ部分を(例えば、固体支持体、表面、界面に)固定する。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分が分析物に結合されるとき、アンカー部分は捕捉プローブ部分および分析物を(例えば、固体支持体、表面、界面に)固定する。いくつかの実施形態では、アンカー部分は固体支持体(例えば、表面、ビーズ、粒子、界面など)に付着される。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、表面または界面と共有結合性または非共有結合性相互作用することが可能な親和性タグまたは官能基を含む(例えば、親和性タグまたは官能基を含む)。いくつかの実施形態では、表面または界面がアンカー基の部分に結合可能な親和性タグまたは官能基を含む(例えば、親和性タグまたは官能基を含む)。例えば、いくつかの実施形態では、アンカー部分は、ビオチン(例えば、アビジンおよび/またはストレプトアビジンに結合するための)、ストレプトアビジン(例えば、ビオチンに結合するための)、ジゴキシゲニン(例えば、抗ジゴキシゲニンに結合するための)、または抗ジゴキシゲニン(例えば、ジゴキシゲニンに結合するための)を含む。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、クリック化学を介した固定のためのクリック化学部分(例えば、アルキンと反応するためのアジド、アジドと反応するためのアルキン)を含む。いくつかの実施形態では、表面または界面が、ビオチン(例えば、アビジンおよび/またはストレプトアビジンに結合するための)、ストレプトアビジン(例えば、ビオチンに結合するための)、ジゴキシゲニン(例えば、抗ジゴキシゲニンに結合するための)、または抗ジゴキシゲニン(例えば、ジゴキシゲニンに結合するための)を含む。いくつかの実施形態では、表面または界面が、アンカー部分を表面、界面、固体支持体、ビーズなどにクリック化学を介して固定するためのクリック化学部分(例えば、アルキンと反応するためのアジド、アジドと反応するためのアルキン)を含む。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、抗体または抗体のエピトープ結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、抗体またはエピトープ結合抗体フラグメントによって特異的に認識され、かつ/または、抗体またはエピトープ結合抗体フラグメントによって特異的に結合されることができるエピトープを含む。いくつかの実施形態では、表面または界面は、抗体または抗体のエピトープ結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、表面または界面が、抗体またはエピトープ結合抗体フラグメントによって特異的に認識され、かつ/または、抗体またはエピトープ結合抗体フラグメントによって特異的に結合されることができるエピトープを含む。
【0145】
本技術は、クエリープローブ部分、捕捉プローブ部分、および/またはデコイ部分のうちの1つ以上が互いに対して(例えば、リンカーまたはスペーサによって)付着され、かつ/または、アンカー部分に(例えば、リンカーまたはスペーサによって)付着される、種々の実施形態を包含する。
【0146】
いくつかの実施形態では、例示的な共有結合性接続部は、核酸、ポリペプチド、および/または有機部分を含む。いくつかの実施形態では、当技術分野で理解されるような「リンカー」が、本技術の1つ以上の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、および/または任意のアンカー部分)を接続する。いくつかの実施形態では、以下のような「リンカー」または「スペーサ」が本技術の1つ以上の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、および/または任意のアンカー部分)を接続する。例えば、炭素、窒素、酸素などの原子の鎖を含有する任意の分子が本技術の1つ以上の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、および/または任意のアンカー部分)を接続する。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサは、例えば、1nm~250nm(例えば、約1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、150nm、155nm、160nm、165nm、170nm、175nm、180nm、185nm、190nm、195nm、200nm、205nm、210nm、215nm、220nm、225nm、230nm、235nm、240nm、245nm、または250nm)の長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサは、例えば、約5~2000C-C結合又は類似の結合(例えば、C-N、C-Oなど)を含むアルカン鎖を含む。いくつかの実施形態では、スペーサは、ポリアルデヒド、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリオレフィン、ポリ(ω-アルケン酸エステル)などを含む。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサは、5nt~50nt(例えば、5nt、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、30nt、31nt、32nt、33nt、34nt、35nt、36nt、37nt、38nt、39nt、40nt、41nt、42nt、43nt、44nt、45nt、46nt、47nt、48nt、49nt、または50nt)を含む核酸である。
【0147】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分とクエリープローブ部分とが互いに直接的または間接的に付着される。例えば、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、クエリープローブ部分に共有結合的に(例えば、1つ以上の共有結合によって)接続される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、クエリープローブ部分に非共有結合的に(例えば、1つ以上の非共有結合相互作用によって)接続される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、共有結合および非共有結合性相互作用の組み合わせによってクエリープローブ部分に接続される。
【0148】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分とクエリープローブ部分とは互いに(例えば、直接的でも、間接的でも)付着されない。したがって、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分とクエリープローブ部分とは、溶液中で、互いとは本質的に、実質的に、事実上独立して移動する。
【0149】
いくつかの実施形態では、任意のデコイ部分は、クエリープローブ部分に(例えば、本明細書中に記載されるようなリンカーまたはスペーサによって)直接付着される。いくつかの実施形態では、クエリープローブ部分、捕捉プローブ部分、および/または任意のデコイ部分のうちの1つ以上は(例えば、本明細書中に記載されるようなスペーサまたはリンカーによって)アンカー部分に直接接続される。
【0150】
いくつかの実施形態では、任意のデコイは、クエリープローブに(例えば、直接的でも、間接的でも)付着されない。したがって、いくつかの実施形態では、デコイ部分とクエリープローブ部分とは、溶液中で、互いとは本質的に、実質的に、事実上独立して移動する。
【0151】
本技術は、クエリープローブ部分、捕捉プローブ部分、および/またはデコイ部分のうちの1つ以上が互いに対して(例えば、リンカーまたはスペーサによって)付着され、かつ/または、アンカー部分に(例えば、リンカーまたはスペーサによって)付着される、種々の実施形態を包含する。したがって、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分がアンカー部分に付着され、クエリープローブ部分が溶液中にある。したがって、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分がアンカー部分に付着され、クエリープローブが溶液中にあり、デコイ部分が溶液中にある。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分がアンカー部分に付着され、クエリープローブが溶液中にあり、デコイ部分が捕捉プローブ部分に付着される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分がアンカー部分に付着され、クエリープローブが捕捉プローブ部分に付着され、デコイ部分が溶液中にある。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分がアンカープローブ部分に付着され、クエリープローブが捕捉プローブ部分に付着され、デコイ部分が捕捉プローブ部分に付着される。
【0152】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分はアンカー部分に付着され、クエリープローブ部分はデコイ部分に付着されるが、クエリープローブ部分もデコイ部分も捕捉プローブ部分に結合されず、クエリープローブ部分もデコイ部分もアンカー部分に結合されない。
【0153】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、クエリープローブ部分に付着される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、デコイ部分に付着される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、クエリープローブ部分に付着される。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、およびデコイ部分の全てが互いに付着される。
【0154】
これらの種々の実施形態では、種々の付着が直接的付着、間接的付着、または直接的付着と間接的付着の組合せであり得る。すなわち、種々の実施形態では、種々の付着される要素が直接的または間接的に互いに付着される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)は第2の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)に(例えば、1つ以上の共有結合によって)共有結合的に接続される。いくつかの実施形態では、第1の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)は第2の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)に(例えば、1つ以上の非共有結合相互作用によって)非共有結合的に接続される。いくつかの実施形態では、第1の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)は第2の要素(例えば、捕捉プローブ部分、クエリープローブ部分、任意のデコイ部分、任意のアンカー部分)に、共有結合と非共有結合相互作用との組み合わせにより接続される。
【0155】
いくつかの実施形態では、組成物はイメージング緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は、pH緩衝液、1つ以上の塩、および水を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液はイオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は非イオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は塩酸グアニジン、ホルムアミド、または尿素を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は約10%のホルムアミド(例えば、約7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、または20.0%のホルムアミド)を含む。
【0156】
(FRET対および蛍光体-消光剤対)
フェルスターまたは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、その励起状態にあるドナー蛍光体がその励起エネルギーを隣接するアクセプター蛍光体に非放射的に移動させ、それによってアクセプターにその特徴的な蛍光を放出させる物理現象である。
【0157】
本明細書で使用される場合、「FET」は、「蛍光エネルギー移動」を指す。本明細書で使用される場合、「FRET」は「蛍光共鳴エネルギー移動」を指す。これらの用語は、本明細書において、放射的エネルギー移動プロセスおよび非放射的エネルギー移動プロセスの両方を指すために使用される。例えば、光子が放出されるプロセスおよび長距離電子移動を伴うプロセスは、これらの用語に包まれる。いくつかの実施形態では、これらの現象の両方は、一般的な用語「ドナー-アクセプターエネルギー移動」に包含される。
【0158】
本明細書中で使用される場合、「FRET対」は、第1の標識がその励起波長で励起される場合に第2の標識の励起波長で発光し、それにより、2つの標識が近接していれば第2の標識をその発光波長で発光させる、一対の蛍光標識を指す。したがって、FRET対は、第1の標識の励起波長で励起されると、第2の標識の発光波長で発光する。FRETは当業者によく知られている。例えば、Ishikawa-Ankerhold et al. (2012) “Advanced fluorescence microscopy techniques - FRAP, FLIP, FLAP, FRET and FLIM”Molecules 17(4): 4047-132; Shrestha et al. (2015) “Understanding FRET as a research tool for cellular studies”Int J Mol Sci 16(4): 6718-56;Bajar et al. (2016) “A Guide to Fluorescent Protein FRET Pairs”Sensors (Basel) 16(9);およびBunt and Wouters (2017) “FRET from single to multiplexed signaling events”Biophys Rev 9(2): 119-129を参照のこと(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0159】
いくつかの実施形態は、FRET対の使用に関する。例えば、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分はFRET対の第1の構成要素(例えば、第1の蛍光色素)を含み、クエリープローブ部分はFRET対の第2の構成要素(例えば、第2の蛍光色素)を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、蛍光体は有機蛍光体である。いくつかの実施形態では、有機蛍光体は、例えば、荷電(例えば、イオン性)分子(例えば、スルホネート基またはアンモニウム基)、非荷電(例えば、中性)分子、飽和分子、不飽和分子、環状分子、二環式分子、三環式分子、多環式分子、非環式分子、芳香族分子、および/または複素環式分子(例えば、窒素、酸素、および硫黄から選択される1つ以上のヘテロ原子によって環置換されることによって)を含む。不飽和蛍光体の特定の場合において、蛍光体は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の炭素-炭素および/または炭素-窒素の二重結合および/または三重結合を含む。特定の実施形態では、蛍光体は、蛍光体中に存在し得る任意の芳香族基以外に、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)の共役二重結合を含む。他の実施形態では、蛍光体は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの環(例えば、ナフタレン、ピレン、アントラセン、クリセン、トリフェニレン、テトラセン、アズレン、およびフェナントレン)を含有する縮合多環芳香族炭化水素(PAH)であり、PAHは1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有基によって任意に環置換または誘導体化され得る。
【0161】
本明細書で考慮される蛍光体は、任意の波長の光を吸収および発光することができる。しかしながら、異なる実施形態では、特定の吸収特性および発光特性を有する蛍光体を選択することが望ましい場合がある。例えば、異なる実施形態では、蛍光体は、好ましくは、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nm、480nm、490nm、500nm、510nm、520nm、530nm、540nm、550nm、560nm、570nm、580nm、590nm、600nm、610nm、620nm、630nm、640nm、650nm、660nm、670nm、690nm、680nm、700nm、710nm、720nm、730nm、740nm、750nm、760nm、770nm、780nm、790nm、もしくは800nmのナノメータ(nm)波長において、または上記値のうち任意の2つによって境界を定められた範囲内において吸収する。異なる実施形態では、蛍光体は、好ましくは、上記波長のいずれかにおいて、または上記値のうち任意の2つによって境界を定められた範囲内において発光し、蛍光体は一般に、吸収される波長よりも高い波長で発光することが理解される。(例えば、蛍光体によって吸収される)衝突する電磁放射線は分散した形態であってもよく、あるいはレーザのような集束した形態であってもよい。さらに、吸収または放出される放射線は例えば、遠赤外線、赤外線、近赤外線、可視光線、近紫外線又は紫外線の形態をとることができる。2つ以上の蛍光体が使用される(例えば、FRET法およびsmFRET法におけるように、生体分子に付着される)場合、蛍光体の一方はドナー蛍光体として機能し、他方はアクセプター蛍光体として機能する。
【0162】
本技術は、蛍光部分の種類、構造、または組成について限定されない。蛍光部分の非限定的な例には、合成され得るかまたは商業的に入手され得る色素が含まれる(例えば、Operon Biotechnologies, Huntsville, Alabama)。多数(50を上回る個数)の色素が、蛍光励起用途への適用に利用可能である。これらの色素としては、フルオレセイン色素系統、ローダミン色素系統、AlexaFluor色素系統、Bodipy色素系統、クマリン色素系統、およびシアニン色素系統の色素が挙げられる。蛍光体の具体例としては、FAM、TET、HEX、Cy3、TMR、ROX、VIC(例えば、Life Technologies)、Texas red、LC red 640、Cy5、およびLC red 705が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、発光極大が410nm(例えば、Cascade Blue)~775nm(例えば、Alexa Fluor 750)である色素が入手可能であり、使用することができる。もちろん、当業者であれば、これらの範囲外の発光極大を有する色素を使用してもよいことを認識するであろう。いくつかの場合において、500nm~700nmの範囲の色素は、可視スペクトルにあるという利点を有しており、当該色素を既存の光電子増倍管を使用して検出することができる。いくつかの実施形態では、広範囲の利用可能な色素のおかげで、検出範囲にわたって広がる発光波長を有する色素の組の選択が可能である。多くの色素を識別することができる検出システムが、当技術分野で知られている。
【0163】
したがって、いくつかの実施形態では、有機蛍光体は、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、Oregon green、エオシン、およびTexas Red)、シアニンまたはその誘導体もしくはサブクラス(例えば、ストレプトシアニン、ヘミシアニン、閉鎖シアニン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン、およびフタロシアニン)、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシル誘導体およびプロダン誘導体)、クマリンおよびその誘導体、オキサジアゾールおよびその誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール、およびベンゾオキサジアゾール)、ピレンおよびその誘導体、オキサジンおよびその誘導体(例えば、Nile Red、Nile Blue、およびクレシルバイオレット)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、およびマラカイトグリーン)、およびテトラピロール誘導体(例えば、ポルフィリンおよびビリルビン)である。本明細書で考慮されるいくつかの特定の色素系統は、CY色素系統(例えば、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7)、ALEXA色素系統(例えば、ALEXA Fluor 350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、647、660、680、700、750、および790)、ATTO色素系統(例えば、ATTO 390、425、465、488、495、520、532、550、565、590、594、601、615、619、629、635、645、663、680、700、729、および740)、およびDY色素系統(例えば、DY 530、547、548、549、550、554、556、560、590、610、615、630、631、631、632、633、634、635、636、647、648、649、650、651、652、675、676、677、680、681、682、700、701、730、731、732、734、750、751、752、776、780、781、782、および831)である。ATTO色素は特に、クマリン系、ローダミン系、カルボピロニン系、およびオキサジン系の構造モチーフを含む、いくつかの構造モチーフを有することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、蛍光色素としては、Cy5、ジクロロ[R110]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、ジクロロ[ROX]などを含むd-ローダミンアクセプター色素、フルオレセイン、6-FAMなどを含むフルオレセインドナー色素;アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、プロフラビン、pH7などを含むアクリジン;2-メチルベンゾオキサゾール、エチルp-ジメチルアミノベンゾエート、フェノール、ピロール、ベンゼン、トルエンなどを含む芳香族炭化水素;オーラミンO、クリスタルバイオレット、HO、クリスタルバイオレット、グリセロール、マラカイトグリーンなどを含むアリールメチン色素;7-メトキシクマリン-4-酢酸、クマリン1、クマリン30、クマリン314、クマリン343、クマリン6などを含むクマリン色素;1,1’-ジエチル-2,2’-シアニンヨウ化物、クリプトシアニン、インドカルボシアニン(C3)色素、インドジカルボシアニン(C5)色素、インドトリカルボシアニン(C7)色素、オキサカルボシアニン(C3)色素、オキサジカルボシアニン(C5)色素、オキサトリカルボシアニン(C7)色素、ピナシアノールヨージド、Stains all、チアカルボシアニン(C3)色素、エタノール、チアカルボシアニン(C3)色素、n-プロパノール、チアジカルボシアニン(C5)色素、チアトリカルボシアニン(C7)色素などを含むシアニン色素;N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-(4-イオドフェニル)-ジピリン、N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-[(4-(2-トリメチルシリルエチニル)、N,N’-ジフルオロボリル-1,9-ジメチル-5-フェニルジピリンなどを含むジピリン色素;4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、アセトニトリル、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、メタノール、4-ジメチルアミノ-4’-ニトロスチルベン、メロシアニン540などを含むメロシアニン;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ジメチルスルホキシド、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール、ダンシルグリシン、HO、ダンシルグリシン、ジオキサン、Hoechst 33258、DMF、Hoechst 33258、HO、ルシファーイエローCH、ピロキシカム、硫酸キニーネ、0.05M HSO、硫酸キニーネ、0.5M HSO、スクアリリウム色素IIIなどを含むその他の色素;2,5-ジフェニルオキサゾール(PPO)、ビフェニル、POPOP、p-クアテルフェニル、p-テルフェニルなどを含むオリゴフェニレン;クレシルバイオレットパークロレート、Nile Blue、メタノール、Nile Red、Nile blue、エタノール、オキサジン1、オキサジン170などを含むオキサジン;9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、アントラセン、ナフタレン、ペリレン、ピレンなどを含む多環芳香族炭化水素;1,2-ジフェニルアセチレン、1,4-ジフェニルブタジエン、1,4-ジフェニルブタジイン、1,6-ジフェニルヘキサトリエン、ベータカロチン、スチルベンなどを含むポリエン/ポリイン;アントラキノン、アゾベンゼン、ベンゾキノン、フェロセン、リボフラビン、トリス(2,2’-ビピリジル)ルテニウム(II)、テトラピロール、ビリルビン、クロロフィルa、ジエチルエーテルクロロフィルa、メタノール、クロロフィルb、ジプロトン化テトラフェニルポルフィリン、ヘマチン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン(MgOEP)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、PrOH、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、ピリジン、マグネシウムテトラメシチルポルフィリン(MgTMP)、マグネシウムテトラフェニルポルフィリン(MgTPP)、オクタエチルポルフィリン、フタロシアニン(Pc)、ポルフィン、Rox、TAMRA、テトラ-t-ブチルアザポルフィン、テトラ-t-ブチルナフタロシアニン、テトラキス(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン、テトラキス(o-アミノフェニル)ポルフィリン、テトラメシチルポルフィリン(TMP)、テトラフェニルポルフィリン(TPP)、ビタミンB12、亜鉛オクタエチルポルフィリン(ZnOEP)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、ピリジン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン(ZnTMP)、亜鉛テトラメシチルポルフィリンラジカルカチオン、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)などを含む酸化還元活性発色団;エオシンY、フルオレセイン、塩基性エタノール、フルオレセイン、エタノール、ローダミン123、ローダミン6G、ローダミンB、ローズベンガル、スルホローダミン101などを含むキサンテン、などの色素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
別の実施形態において、蛍光体は無機組成を有する。例えば、蛍光体は、蛍光遷移金属または希土類(例えば、ランタニド)金属種または粒子(例えば、ナノ粒子または微粒子)を含み得る。遷移金属または希土類金属種は、例えば、金属-リガンド複合体であり得る。リガンドは、例えばアセチルアセトナート系、シッフ塩基(例えば、サレン)系、アミン系、ホスフィン系、チオール系、フェナントロリン系、ビピリジン系、またはフェノレート系リガンドなどの、任意の適切なリガンドであり得る。「遷移金属」とは、周期律表のIB~VIIIB族の金属のいずれかを意味する。「希土類金属」とは原子番号がそれぞれ57~71および90~103のランタニドおよびアクチニドのうちいずれかを意味する。本明細書で考慮されるいくつかの特定の希土類金属としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、およびハフニウム、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0166】
一実施形態において、蛍光ナノ粒子が、非蛍光マトリックス(例えば、ポリマー、セラミック、または金属)を含み、その中に、(例えば、ナノ粒子の表面内または表面上に)有機蛍光種または無機蛍光種が含まれる。特定の実施形態では、粒子は、有機ポリマー(例えば、ポリスチレン)または(例えば、シリカ系またはシロキサン系の)無機ポリマーを含む。別の実施形態において、粒子は、金属(例えば、銅、銀、金、パラジウム、もしくは白金、またはそれらの組み合わせをベースとするナノ粒子)を含む。別の実施形態において、蛍光粒子は半導体(例えば、量子ドット)組成を有する。量子ドット粒子は、典型的には、IB族元素(例えば、CuまたはAg)、II族元素(例えば、ZnまたはCd)、またはIII族元素(例えば、B、Al、Ga、またはIn)、またはこれらの元素の組み合わせの、硫化物、セレン化物、テルル化物、窒化物、リン化物、ヒ化物、および/またはアンチモン化物を含む。さらに、量子ドットは、本質的に均質な構造を有してもよく、あるいは、層状(例えば、コア-シェル量子ドット)であってもよい。このような量子ドットのコアおよびシェルは独立して、上記の半導体組成のいずれか(例えば、ZnS:CdSe、ZnSe:CdSe、ZnS:CdS、ZnSe:CdS、CdS:ZnSe、CdSe:ZnSe、CdS:ZnS、またはCdSe:ZnSの「コア:シェル」組成)で構成することができる。いくつかの実施形態では、量子ドットは、量子ドットのコアまたはシェルに組み込まれることによって、または量子ドットの表面またはパッシベーションシェルに吸着または連結されることによって、上記の希土類金属または有機蛍光種のいずれかなどのドーパント蛍光種をさらに含む。
【0167】
異なる実施形態では、粒子(特に、量子ドット)は、例えば、1nm、2nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、または120nmのサイズ(例えば、直径)、または上記の値のうちの任意の2つによって境界付けられる範囲内のサイズを有する。量子ドットでない金属粒子は、上記のサイズのいずれかであってもよく、これよりもかなり大きなサイズ(例えば、約、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、もしくは500nm以上または以下)であってもよく、または上記の値のいずれか2つによって境界付けされる範囲内のサイズであってもよい。ポリマー粒子は、上記のサイズのいずれかであってもよく、これよりもかなり大きなサイズ(例えば、約、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、2000nm、3000nm、4000nm、もしくは5000nm以上または以下)であってもよく、または上記の値のいずれか2つによって境界付けされる範囲内のサイズであってもよい。
【0168】
いくつかの実施形態は、蛍光色素および消光剤部分の使用に関する。例えば、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は蛍光色素を含み、クエリープローブ部分は消光剤部分を含み、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は消光剤部分を含み、クエリープローブ部分は蛍光色素を含む。本明細書で使用される場合、「消光基」または「消光部分」および同様の用語は、蛍光色素によって放出されるエネルギー(例えば、光)を少なくとも部分的に減衰させることができる任意の蛍光修飾基を指す。この減衰を本明細書では「消光」と呼ぶ。したがって、消光基の存在下で蛍光色素を照射すると、蛍光色素からの発光シグナルは予想よりも弱くなるか、または全く存在しなくなる。消光は、典型的には蛍光色素と消光基との間のエネルギー移動によって生じる。
【0169】
さらに、本技術は、消光部分の種類、構造、または組成について限定されない。例示的な消光部分には、Black Hole Quencher、Iowa Black Quencher、およびその誘導体、修飾体、ならびに関連部分が含まれる。例示的な消光部分としては、BHQ-0、BHQ-1、BHQ-2、およびBHQ-3が挙げられる。
【0170】
いくつかの実施形態では、蛍光色素-消光剤の対としては、例えば、DLO-FB1(5’-FAM/3’-BHQ-1)DLO-TEB1(5’-TET/3’-BHQ-1),DLO-JB1(5’-JOE/3’-BHQ-1),DLO-1-HB1(5’-HEX/3’-BHQ-1),DLO-C3B2(5’-Cy3/3’-BHQ-2),DLO-TAB2(5’-TAMRA/3’-BHQ-2),DLO-RB2(5’-ROX/3’-BHQ-2),DLO-C5B3(5’-Cy5/3’-BHQ-3),DLO-C55B3(5’-Cy5.5/3’-BHQ-3),MBO-FB1(5’-FAM/3’-BHQ-1),MBO-TEB1(5’-TET/3’-BHQ-1),MBO-JB1(5-JOE/3’-BHQ-1),MBO-HB1(5’-HEX/3’-BHQ-1),MBO-C3B2(5’-Cy3/3’-BHQ-2),MBO-TAB2(5’-TAMRA/3’-BHQ-2),MBO-RB2(5’-ROX/3’-BHQ-2);MBO-C5B3(5’-Cy5/3’-BHQ-3),MBO-C55B3(5’-Cy5.5/3’-BHQ-3)、またはBiosearch Technologies, Inc. of Novato, Calif.より入手可能な類似のFRET対が挙げられる(米国特許出願公開第20100317005号を参照のこと(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0171】
(デコイ)
いくつかの実施形態は、任意のデコイ部分を含む。デコイ部分はクエリープローブ部分に弱く結合し、よって、クエリープローブ部分への結合に関して分析物と競合する。したがって、デコイ部分の存在下でのクエリープローブ部分と分析物との相互作用の動態は、デコイ部分の非存在下でのクエリープローブ部分と分析物との相互作用の動態とは異なる。特に、デコイ部分は、状態1(分析物と会合されたクエリープローブ)と比較して、状態2(分析物から解離したクエリープローブ)の持続時間を延長する。本明細書中に記載されるように、デコイ部分は、いくつかの実施形態では、(図1aに示されるように)クエリープローブおよび/または本技術の他の要素に共有結合的にまたは非共有結合的に接続される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は、(図2cに示されるように)「トランスで」(例えば、溶液中で)導入される。いくつかの実施形態では、デコイ部分は分析物に類似しており、例えば、分析物と類似した構造、一次配列、エピトープ、クエリープローブに対する親和性などを有するタンパク質;分析物と類似した構造、一次配列、エピトープ、クエリープローブに対する親和性などを有する核酸;分析物と類似した構造、一次配列、エピトープ、クエリープローブに対する親和性などを有する小分子である。例えば、いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の一次アミノ酸配列と90%以上同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一)である一次アミノ酸配列を有するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の一次ヌクレオチド配列と90%以上同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一)である一次ヌクレオチド配列を有する核酸である。いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の一次アミノ酸配列に対して1つ以上の置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の置換)を含む一次アミノ酸配列を有するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の一次ヌクレオチド配列に対して1つ以上の突然変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の突然変異)を含む一次ヌクレオチド配列を有する核酸である。いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の一次ヌクレオチド配列および/または一次アミノ酸配列に対して1つ以上の修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の修飾)を含む一次ヌクレオチド配列および/または一次アミノ酸配列を有する核酸および/またはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、デコイは、分析物の構造の置換基(例えば、「R」基)とは異なる1つ以上の置換基(例えば、「R」基)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なる置換基(例えば、「R」基))を含む構造を有する分子である。
【0172】
(方法)
方法の実施形態が、本技術に従って提供される。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、捕捉プローブ部分(例えば、蛍光部分および/または消光剤部分を含む)およびクエリープローブ部分(例えば、蛍光部分および/または消光剤部分を含む)を供給することを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、捕捉プローブ部分(例えば、第1の蛍光部分を含む)およびクエリープローブ部分(例えば、第2の蛍光部分を含む)を供給することを含む。いくつかの実施形態では、前記第1の蛍光部分と前記第2の蛍光部分はFRET対である。いくつかの実施形態では、蛍光部分と消光剤部分は蛍光体-消光剤対である。いくつかの実施形態は、本明細書に記載の任意のデコイ部分および/または本明細書に記載の任意のアンカー部分をさらに供給する。
【0173】
いくつかの実施形態は、(例えば、1つ以上の共有結合によって)アンカー部分と直接的に相互作用するか、または(例えば、1つ以上の非共有結合相互作用によって)アンカー部分と非共有結合的に相互作用する表面、基質、および/または界面を供給することを含む。したがって、いくつかの実施形態は、アンカー部分を、例えば、表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面に固定することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面を供給すること、および表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面にアンカー部分を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、アンカー部分を表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面と反応させて、アンカー部分を共有結合によって(例えば、アンカー部分の反応基と表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面の反応基との間に共有結合を作り出す化学反応によって(例えば、クリック化学反応によって))表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面に付着させることを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、アンカー部分を表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面に接触させて、アンカー部分と表面、基質、ビーズ、固体支持体、および/または界面との間に熱力学的に安定した非共有結合相互作用を形成することを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、アンカー部分は、捕捉プローブに付着される。いくつかの実施形態では、アンカー部分は、捕捉プローブ、クエリープローブ、および/または任意のデコイのうちの1つ以上に付着される。
【0175】
いくつかの実施形態では、本技術は、捕捉プローブをサンプルと接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、分析物を含むことが疑われる。いくつかの実施形態では、サンプルは分析物を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、本技術は、イメージング緩衝液を供給することを含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は、pH緩衝液、1つ以上の塩、および水を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液はイオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は非イオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は塩酸グアニジン、ホルムアミド、または尿素を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は約10%のホルムアミド(例えば、約7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、または20.0%のホルムアミド)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、イメージング緩衝液中の標的へのクエリープローブの結合を検出することを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本技術は、分析物を捕捉プローブに接触させることを含む。特に、いくつかの実施形態では、捕捉プローブ部分は、高い熱力学的安定性で分析物(例えば、分析物の第1の領域)と会合する(例えば、結合する)。例えば、いくつかの実施形態は、測定温度より10℃を上回る高さの融解温度を有するか、または観察期間の10倍を上回る長さの平均持続時間を有する、捕捉プローブおよび分析物を含む複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、測定温度より5℃を上回る(例えば、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃を上回る)高さの融解温度を有するか、または観察期間の5倍(例えば、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、または1000倍)を上回る長さの平均持続時間を有する捕捉プローブおよび分析物を含む複合体を形成することを含む。
【0178】
次いで、いくつかの実施形態は、分析物を供給することおよび/または分析物をクエリープローブに接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、中程度から低い熱力学的安定性で分析物(例えば、分析物の第2の領域)と会合するクエリープローブに、分析物を接触させることを含む。いくつかの実施形態は、測定温度から10℃以内の融解温度を有するか、または観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有するクエリープローブおよび分析物を含む複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態は、測定温度から10℃以内(例えば、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、1.0℃、1.1℃、1.2℃、1.3℃、1.4℃、1.5℃、1.6℃、1.7℃、1.8℃、1.9℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、または10.0℃以内)の融解温度を有するか、または観察期間の1/5以下(例えば、0.01倍、0.02倍、0.03倍、0.04倍、0.05倍、0.06倍、0.07倍、0.08倍、0.09倍、0.10倍、0.11倍、0.12倍、0.13倍、0.14倍、0.15倍、0.16倍、0.17倍、0.18倍、0.19倍、0.20倍以下)の長さの平均持続時間を有するクエリープローブ部分および分析物を含む複合体を形成することを含む。
【0179】
さらに、いくつかの実施形態は、デコイ部分を供給することを含む。いくつかの実施形態は、デコイ部分をクエリープローブと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本技術は、デコイ部分と中程度から低い熱力学的安定性で会合するクエリープローブに、デコイ部分を接触させることを含む。いくつかの実施形態は、測定温度から10℃以内の融解温度を有するか、または観察期間の1/5以下の長さの平均持続時間を有するクエリープローブおよびデコイ部分を含む複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態は、測定温度から10℃以内(例えば、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、1.0℃、1.1℃、1.2℃、1.3℃、1.4℃、1.5℃、1.6℃、1.7℃、1.8℃、1.9℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、または10.0℃以内)の融解温度を有するか、または観察期間の1/5以下(例えば、0.01倍、0.02倍、0.03倍、0.04倍、0.05倍、0.06倍、0.07倍、0.08倍、0.09倍、0.10倍、0.11倍、0.12倍、0.13倍、0.14倍、0.15倍、0.16倍、0.17倍、0.18倍、0.19倍、0.20倍以下)の長さの平均持続時間を有するクエリープローブ部分およびデコイ部分を含む複合体を形成することを含む。
【0180】
本技術のいくつかの実施形態は、分析物および捕捉部分を含む熱力学的に安定した複合体を形成すること、および中程度から低い熱力学的安定性で分析物(例えば、分析物の第2の領域)と会合するクエリープローブ部分に、分析物を接触させることを含む。よって、本技術は、分析物、捕捉プローブ部分、およびクエリープローブ部分を含む一過性の複合体を形成することを含む。言い換えれば、本技術は、クエリープローブ部分に一過性に会合する分析物および捕捉プローブ部分を含む複合体を形成することを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、(分析物、捕捉プローブ部分、およびクエリープローブ部分を含む)一過性の複合体の形成時、捕捉プローブ部分の第1の蛍光部分およびクエリープローブ部分の第2の蛍光部分を互いに近接させ、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分との間にFRETをもたらす。いくつかの実施形態では、(分析物、捕捉プローブ部分、およびクエリープローブ部分を含む)一過性の複合体の形成時、捕捉プローブ部分の蛍光部分およびクエリープローブ部分の消光剤部分を互いに近接させ、蛍光部分の蛍光を消光させる。いくつかの実施形態では、(分析物、捕捉プローブ部分、およびクエリープローブ部分を含む)一過性の複合体の形成時、捕捉プローブ部分の消光剤部分およびクエリープローブ部分の蛍光部分を互いに近接させ、蛍光部分の蛍光を消光させる。蛍光の変化(例えば、発光極大の増加、減少、および/または変化(例えば、1つの発光波長における、または発光波長の範囲にわたる増加および/または減少))は、第1および第2の蛍光部分または蛍光部分および消光剤部分の空間における相対位置の変化を示す。FRETの検出または消光は、クエリープローブと分析物との一過性の会合を示す。
【0182】
よって、いくつかの実施形態では、本技術は、励起波長を供給すること、例えば、捕捉プローブまたはクエリープローブの蛍光部分(例えば、第1の蛍光部分)を、蛍光部分(例えば、第1の蛍光部分)を励起する波長を有する光子と接触させることを含む。いくつかの実施形態は、捕捉プローブの蛍光部分を励起することを含み、いくつかの実施形態は、クエリープローブの蛍光部分を励起することを含む。実施形態は、捕捉プローブまたはクエリープローブの蛍光部分(例えば、第2の蛍光部分)の発光を検出すること、例えば、発光蛍光部分(例えば、第2の蛍光部分)に特徴的な波長を有する光子を検出することを含む。いくつかの実施形態では、クエリープローブの蛍光部分は光子によって励起され、捕捉プローブの蛍光部分は検出される光子を放出する。いくつかの実施形態では、捕捉プローブの蛍光部分は光子によって励起され、クエリープローブの蛍光部分は検出される光子を放出する。したがって、いくつかの実施形態は、励起波長(第1の波長)を供給すること、および発光波長(第2の波長)を検出することを含む。いくつかの実施形態は、例えば発光波長の時間依存シグナルを供給する(例えば、発光波長の強度の時間依存シグナルを供給する)ために、発光波長を時間に応じて記録することを含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、クエリープローブの蛍光部分が捕捉プローブの蛍光部分に近い(例えば、捕捉プローブの蛍光部分とクエリープローブの蛍光部分との間の距離が15nm未満(例えば、15nm、14nm、13nm、12nm、11nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、または1nm未満)である)場合、蛍光発光シグナルが生成される。クエリープローブが分析物と会合していない場合(例えば、捕捉プローブの蛍光部分とクエリープローブの蛍光部分との間の距離が5nm~10nmを上回る(例えば、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、またはそれ以上を上回って離れている)場合)、FRETシグナルは観察されない。
【0184】
いくつかの実施形態では、本技術は、以下の点を除いては同様である:蛍光部分および消光部分が遠く離れている場合、蛍光部分がその発光波長において高い蛍光強度を有し、蛍光部分および消光部分が互いに近接している場合、蛍光部分がその発光波長において低い蛍光強度を有するように、蛍光部分および消光剤が使用される点。
【0185】
よって、いくつかの実施形態では、本技術は、多数の個々の位置において(例えば、分析物が固定されている固体支持体上において)、例えば、点滅する(例えば、「オン」および「オフ」状態にあり得る)多数の蛍光「スポット」において、蛍光発光をモニターすることを含む。蛍光発光の存在(スポットは「オン」である)および蛍光発光の不在(スポットは「オフ」である)が、各個々の位置において(例えば、固体支持体上の各「スポット」において)記録される。各スポットは、「点滅」する。例えば、スポットは、クエリープローブがそのスポットにおいて固定された標的分析物に結合する時、およびクエリープローブがそのスポットにおいて固定された標的分析物から解離する時、「オン」状態と「オフ」状態との間をそれぞれ行ったり来たりし(FRET法の場合)、そして、スポットは、クエリープローブがそのスポットにおいて固定された標的分析物に結合する時、およびクエリープローブがそのスポットにおいて固定された標的分析物から解離する時、「オフ」状態と「オン」状態との間をそれぞれ行ったり来たりする(消光法の場合)。
【0186】
よって、消光法において、蛍光標識の発光波長での蛍光発光の検出は、クエリープローブが固定された分析物に結合していないことを示す。あるいは、FRET法において、FRET対の蛍光標識の発光波長での蛍光発光の検出は、クエリープローブが分析物に結合していることを示す。クエリープローブの標的分析物への結合は、「結合事象」である。本技術のいくつかの実施形態では、結合事象は、規定された閾値よりも大きいかまたは小さい測定強度を有する蛍光発光を有する。
【0187】
例えば、いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を超える蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも1、2、3、4またはそれより大きい標準偏差である蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも2標準偏差上回る蛍光強度を有する。いくつかの実施形態では、結合事象は、バックグラウンド蛍光強度(例えば、分析物の非存在下で観察される平均蛍光強度)の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍である蛍光強度を有する。
【0188】
したがって、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が起きたことを示す。また、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が開始したことを示す。したがって、いくつかの実施形態では、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する蛍光プローブの発光波長で蛍光の不在を検出することは、結合事象が終了したことを示す。結合事象が開始した時点と結合事象が終了した時点との間の時間の長さ(例えば、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンド強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する蛍光プローブの発光波長での蛍光が検出される時間の長さ)は、結合事象の滞留時間(dwell time)である。「遷移」とは、クエリープローブの標的分析物への結合と解離(例えば、オン/オフ事象)をいう。
【0189】
本技術に係る方法は、規定された時間間隔中に、クエリープローブの結合事象を計数することを含み、前記規定された時間間隔は、「取得時間」または「観察期間」であり、例えば、数十秒~数百秒~数千秒である時間間隔(例えば、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒;例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、または60分;例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間)である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は、約1秒~10秒から1分~10分(例えば、約1秒~100秒、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、または100秒、例えば、1分~100分、例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、または100分)である。いくつかの実施形態では、前記取得時間は0.1秒~20.0秒(例えば、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1.0秒、1.1秒、1.2秒、1.3秒、1.4秒、1.5秒、1.6秒、1.7秒、1.8秒、1.9秒、2.0秒、2.1秒、2.2秒、2.3秒、2.4秒、2.5秒、2.6秒、2.7秒、2.8秒、2.9秒、3.0秒、3.1秒、3.2秒、3.3秒、3.4秒、3.5秒、3.6秒、3.7秒、3.8秒、3.9秒、4.0秒、4.1秒、4.2秒、4.3秒、4.4秒、4.5秒、4.6秒、4.7秒、4.8秒、4.9秒、5.0秒、5.1秒、5.2秒、5.3秒、5.4秒、5.5秒、5.6秒、5.7秒、5.8秒、5.9秒、6.0秒、6.1秒、6.2秒、6.3秒、6.4秒、6.5秒、6.6秒、6.7秒、6.8秒、6.9秒、7.0秒、7.1秒、7.2秒、7.3秒、7.4秒、7.5秒、7.6秒、7.7秒、7.8秒、7.9秒、8.0秒、8.1秒、8.2秒、8.3秒、8.4秒、8.5秒、8.6秒、8.7秒、8.8秒、8.9秒、9.0秒、9.1秒、9.2秒、9.3秒、9.4秒、9.5秒、9.6秒、9.7秒、9.8秒、9.9秒、10.0秒、10.1秒、10.2秒、10.3秒、10.4秒、10.5秒、10.6秒、10.7秒、10.8秒、10.9秒、11.0秒、11.1秒、11.2秒、11.3秒、11.4秒、11.5秒、11.6秒、11.7秒、11.8秒、11.9秒、12.0秒、12.1秒、12.2秒、12.3秒、12.4秒、12.5秒、12.6秒、12.7秒、12.8秒、12.9秒、13.0秒、13.1秒、13.2秒、13.3秒、13.4秒、13.5秒、13.6秒、13.7秒、13.8秒、13.9秒、14.0秒、14.1秒、14.2秒、14.3秒、14.4秒、14.5秒、14.6秒、14.7秒、14.8秒、14.9秒、15.0秒、15.1秒、15.2秒、15.3秒、15.4秒、15.5秒、15.6秒、15.7秒、15.8秒、15.9秒、16.0秒、16.1秒、16.2秒、16.3秒、16.4秒、16.5秒、16.6秒、16.7秒、16.8秒、16.9秒、17.0秒、17.1秒、17.2秒、17.3秒、17.4秒、17.5秒、17.6秒、17.7秒、17.8秒、17.9秒、18.0秒、18.1秒、18.2秒、18.3秒、18.4秒、18.5秒、18.6秒、18.7秒、18.8秒、18.9秒、19.0秒、19.1秒、19.2秒、19.3秒、19.4秒、19.5秒、19.6秒、19.7秒、19.8秒、19.9秒、または20.0秒)である。
【0190】
さらに、結合事象の間にクエリープローブが分析物に結合したままである時間の長さは、結合事象の「滞留時間」である。取得時間に検出された結合事象の数および/または結合事象について記録された滞留時間の長さは、分析物に結合しているクエリープローブの特徴であり、したがって、分析物がサンプル中に存在するという指標を提供する。
【0191】
クエリープローブの固定された分析物への結合および/またはクエリープローブの固定された分析物からの解離は、規定された時間間隔中(例えば、取得時間中)、(例えば、光源を使用して第1の蛍光部分を励起させ、第2の蛍光部分からの蛍光発光を検出して)モニターされ、および/または記録される。取得時間中にクエリープローブが分析物に結合する回数、および/または各結合事象中にクエリープローブが分析物に結合したままである時間の長さおよび各結合事象中にクエリープローブが分析物に結合しないままである時間の長さ(例えば、結合状態および非結合状態それぞれにおける「滞留時間」)は、(例えば、隠れマルコフモデルおよびポアソン統計を使用してデータを分析するために)例えば、コンピュータおよびソフトウェアを使用することで決定される。
【0192】
いくつかの実施形態では、対照サンプルを測定する(例えば、分析物の非存在下で)。対照サンプルにおいて検出される蛍光は、「バックグラウンド蛍光」または「バックグラウンド(蛍光)強度」または「ベースライン」である。
【0193】
いくつかの実施形態では、発光波長での蛍光強度の測定値を含むデータは、時間に応じて記録される。いくつかの実施形態では、結合事象の数および結合事象の滞留時間は、データから決定される(例えば、蛍光強度が閾値バックグラウンド蛍光強度を超える回数および時間の長さを決定することによって)。いくつかの実施形態では、遷移(例えば、クエリープローブの結合および解離)が計数される。いくつかの実施形態では、遷移の閾値数を使用して、サンプル内における分析物の存在と、バックグラウンドシグナル、非標的分析物、および/またはクエリープローブの偽結合を識別する。いくつかの実施形態では、取得時間中に記録された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20を上回る遷移の数は、サンプル中における分析物の存在を示す。いくつかの実施形態では、取得時間中に記録された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20を上回る遷移の数は、蛍光発光を時間に応じて表現するデータが、サンプル中の分析物に関連することを示す候補シグナルであることを示す。
【0194】
いくつかの実施形態では、動態パラメータが決定される。いくつかの実施形態では、動態パラメータが計算される。例えば、いくつかの実施形態では、動態パラメータが、蛍光発光を時間に応じて表現するデータから決定および/または計算される。
【0195】
いくつかの実施形態では、分析物についての遷移の数の分布が決定され、例えば、観察される各分析物について遷移が計数される。いくつかの実施形態では、ヒストグラムが生成される。いくつかの実施形態では、(例えば、ヒストグラムの)分布の特徴的なパラメータが決定され、例えば、分布の平均、中央値、ピーク、形状などが決定される。いくつかの実施形態では、データおよび/またはパラメータ(例えば、蛍光データ(例えば、時間領域における蛍光データ)、動力学的データ、分布の特性パラメータなど)は、例えば、人工知能、パターン認識、機械学習、統計的推論、神経網などを使用して、データにおけるパターンおよび規則性を認識するアルゴリズムによって分析される。いくつかの実施形態では、前記分析は頻度分析の使用を含み、いくつかの実施形態では、前記分析はベイズ分析の使用を含む。いくつかの実施形態では、パターン認識システムは、既知の「訓練」データを使用して(例えば、教師あり学習を使用して)訓練され、いくつかの実施形態では、アルゴリズムが、今まで知られていなかったパターンを発見するために使用される(例えば、教師なし学習)。例えば、Duda, et al. (2001) Pattern classification (2nd edition), Wiley, New York;Bishop (2006) Pattern Recognition and Machine Learning, Springerを参照されたい。
【0196】
特定のパターンが、分析物の検出、定量化、および同定で用いられる特定の分析物の「フィンガープリント」を提供するように、パターン認識(例えば、訓練セット、教師あり学習、教師なし学習、および未知のサンプルの分析を使用する)は、同定されたパターンを分析物と関連付ける。
【0197】
いくつかの実施形態では、分析物から生成される分布は、非分析物から生成される分布、または分析物の非存在下で生成される分布とは大幅に異なる。いくつかの実施形態では、複数の分析物(例えば、サンプル中における同じ分析物の、複数の個々の事例)について、遷移の平均数が決定される。いくつかの実施形態では、分析物を含むサンプルについて観察される遷移の平均数が、時間に応じてほぼ直線的に関連付けられ、正の勾配を有する(例えば、遷移の平均数は、時間に応じてほぼ直線的に増加する)。
【0198】
いくつかの実施形態では、時間に応じて生じる遷移の確率を決定するために、データは、統計(例えば、ポアソン統計)を使用して処理される。いくつかの特定の実施形態において、時間に応じて生じる比較的一定の確率の遷移事象は、分析物の存在を示す。いくつかの実施形態では、事象数および経過時間に関連する相関係数は、時間に応じて生じる遷移事象の確率から算出される。いくつかの実施形態では、時間に応じて生じる遷移事象の確率から算出される場合に0.95を上回る事象数および経過時間に関連する相関係数は、分析物が存在することを示す。
【0199】
いくつかの実施形態では、結合クエリープローブの滞留時間(τon)および非結合クエリープローブの滞留時間(τoff)は、サンプル中の分析物の存在を同定するために、ならびに/あるいは分析物を含むサンプルと、非分析物を含むサンプルおよび/または分析物を含まないサンプルとを区別するために、使用される。例えば、分析物についてのτonは非分析物(例えば、デコイ)についてのτonよりも大きく、分析物についてのτoffは非分析物(例えば、デコイ)についてのτoffよりも小さい。いくつかの実施形態では、陰性対照およびサンプルについてのτonとτoffとを測定することは、サンプル中の分析物の有無を示す。いくつかの実施形態では、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および分析物を含むことが疑われるサンプルについて、固体支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについて複数のτonおよびτoff値が決定される。いくつかの実施形態では、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および分析物を含むと疑われるサンプルについて、固体支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについて平均τonおよび/またはτoffが決定される。いくつかの実施形態では、全てのイメージングされたスポットについてのτon対τoffのプロット(例えば、平均τonおよびτoff、時間平均τonおよびτoffなど)は、サンプル中の分析物の有無を示す。
【0200】
(システム)
本技術のいくつかの実施形態は、分析物の検出および定量化のためのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、本技術に係るシステムは、例えば、固体支持体(例えば、顕微鏡スライド、カバースリップ、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)結合顕微鏡スライドまたはカバースリップ、ゼロモード導波路アレイを含む固体支持体など)および本明細書に記載の組成物の1つ以上の実施形態(例えば、クエリープローブ部分および捕捉プローブ部分を含み、任意にデコイ部分および/またはアンカー部分を含む)を含む。組成物は、本明細書中の種々の実施形態に記載されるように、溶液中で互いに連結および/または遊離したこれらの様々な要素を含み得る。システムのいくつかの実施形態は、イメージング緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は、pH緩衝液、1つ以上の塩、および水を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液はイオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は非イオン性カオトロピック剤を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は塩酸グアニジン、ホルムアミド、または尿素を含む。いくつかの実施形態では、イメージング緩衝液は約10%のホルムアミド(例えば、約7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、または20.0%のホルムアミド)を含む。
【0201】
いくつかの実施形態は、結合クエリープローブを刺激するための照明構成を備える蛍光顕微鏡(例えば、プリズム型全反射蛍光(TIRF:total internal reflection fluorescence)顕微鏡、対物型TIRF顕微鏡、近TIRFまたはHiLo顕微鏡、共焦点レーザ走査顕微鏡、ゼロモード導波路、および/または表面近傍の空間の小さい領域に照明を制限しつつ、スライドまたはカバースリップの広い領域(>100μm)の並列監視が可能な照明構成)をさらに含む。いくつかの実施形態は、蛍光検出器、例えば、増強型電荷結合素子(ICCD:intensified charge coupled device)、電子増倍型電荷結合素子(EM-CCD:electron-multiplying charge coupled device)、相補型金属-酸化物-半導体(CMOS:complementary metal-oxide-semiconductor)、光電子増倍管(PMT:photomultiplier tube)、アバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)、および/または単一発色団からの蛍光発光を検出することができる別の検出器を含む検出器を含む。いくつかの実施形態は、コンピュータ、およびコンピュータが実行するための命令をコードしているソフトウェアを含む。
【0202】
いくつかの実施形態は、例えば、特定の波長範囲内または複数の波長範囲内において蛍光を選択的に検出するために、レンズ、ミラー、ダイクロイックミラー、光学フィルターなどの光学素子を含む。
【0203】
実施形態は蛍光部分を励起するための光子源(例えば、レーザーまたは他の電磁放射線源)を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、検出アッセイによって生成された生データ(例えば、1つ以上の分析物の存在、不在、または量)を、臨床医の予測値のデータに変換するために、コンピュータに基づく分析ソフトウェアが使用される。臨床医は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。
【0205】
例えば、いくつかの実施形態は、本技術の実施形態を実施することができるコンピュータシステムを含む。種々の実施形態において、コンピュータシステムは、情報を伝達するためのバスまたは他の通信メカニズムと、情報を処理するためのバスに結合されたプロセッサとを含む。種々の実施形態において、コンピュータシステムは、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)または他の動的記憶装置とすることができ、バスに結合されたメモリと、プロセッサによって実行される命令とを含む。メモリは、プロセッサによって実行される命令の実行中に、テンポラリ変数または他の中間情報を保存するために使用することもできる。種々の実施形態において、コンピュータシステムは、プロセッサのための静的情報および命令を記憶するために、バスに結合された読み出し専用メモリ(ROM:read only memory)または他の静的記憶装置をさらに含むことができる。情報および命令を保存するために、磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置を設け、バスに結合することができる。
【0206】
種々の実施形態において、コンピュータシステムは、コンピュータユーザに情報を表示するために、カソード線管(CRT:cathode ray tube)または液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)のようなディスプレイにバスを介して結合されている。情報およびコマンド選択をプロセッサに伝達するために、英数字および他のキーを含む入力装置は、バスに結合され得る。別のタイプのユーザ入力装置は、プロセッサに方向情報およびコマンド選択を伝達し、ディスプレイ上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御である。この入力装置は、通常、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1軸(例えば、x)および第2軸(例えば、y)の2つの軸における2つの自由度を有する。
【0207】
コンピュータシステムは、本技術の実施形態を実行することができる。本技術の特定の実装と一致して、結果は、メモリに含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシークエンスを実行するプロセッサに応答して、コンピュータシステムによって提供され得る。このような命令は、記憶装置のような別のコンピュータ読み取り可能な媒体からメモリに読み込むことができる。メモリに含まれる命令のシーケンスを実行することにより、本明細書に記載する方法をプロセッサに実行させることができる。あるいは、本教示を実施するために、ハードワイヤード回路は、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用され得る。したがって、本技術の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアのいかなる特定の組合せにも限定されない。
【0208】
本明細書で使用される場合、用語「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体をいう。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例としては、記憶装置などの光ディスクまたは磁気ディスクが挙げられるが、これらに限定されない。揮発性媒体の例としては、ダイナミックメモリが挙げられるが、これに限定されない。伝送媒体の例としては、バスを含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバが挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0210】
コンピュータ読み取り可能な媒体の種々の形態は、1つ以上の命令の1つ以上のシークエンスを、実行のためにプロセッサに運ぶことに関与することができる。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上に搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をそのダイナミックメモリにロードし、命令をネットワーク接続(例えば、LAN、WAN、インターネット、電話回線)を介して送ることができる。ローカルコンピュータシステムは、データを受信し、それをバスに送信することができる。バスは、データをメモリに運ぶことができ、そこからプロセッサが命令を取り出して実行する。メモリによって受信された命令は、プロセッサによって実行される前または後のいずれかで、任意選択的に記憶装置に保存され得る。
【0211】
種々の実施形態によれば、方法を実行するためにプロセッサによって実行されるように構成された命令は、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶する装置であってもよい。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ソフトウェアを保存するための当該技術分野で公知のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM:compact disc read-only memory)を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体は、実行されるように構成された命令を実行するのに適したプロセッサによってアクセスされる。
【0212】
そのようなコンピュータシステムによれば、本明細書で提供される技術のいくつかの実施形態は、データ(例えば、核酸の存在、不在、濃度)を収集、保存、および/または分析するための機能をさらに備える。例えば、いくつかの実施形態は、例えば、命令を保存および実行し、蛍光、画像データを分析し、データを使用して計算を実行し、データを変換し、データを保存するための、プロセッサ、メモリ、および/またはデータベースを備えるシステムを検討する。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、統計モデル(例えば、ポアソンモデルまたは隠れマルコフモデル)をデータに適用する。
【0213】
多くの診断は、1つ以上の分析物の存在または1つ以上の分析物のヌクレオチド配列を決定することを含む。いくつかの実施形態では、複数の分析物の存在、不在、濃度、量、または配列特性を表す変数を含む式は、診断において、または核酸の存在または質の評価において用いられる値を生成する。したがって、いくつかの実施形態では、この値は、デバイスによって、例えば、結果に関連するインジケータ(例えば、LED、ディスプレイ上のアイコン、サウンドなど)によって提示される。いくつかの実施形態では、装置は、値を保存するか、値を送信するか、または追加の計算のために値を使用する。いくつかの実施形態では、式は、1つ以上の分析物の存在、不在、濃度、量、または配列特性を表す変数を含む。
【0214】
したがって、いくつかの実施形態では、本技術は、遺伝学または分子生物学において訓練される可能性が低い臨床医は生データを理解する必要がない、というさらなる利益を提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接提示される。その後、臨床医は、被験者のケアを最適化するために情報を利用することができる。本発明は、アッセイを行う研究所、情報提供者、医療関係者、および/または被験者との間で情報の受信、処理、および送信を行うことができる任意の方法を検討する。例えば、本技術のいくつかの実施形態では、サンプルは、被験者から取得され、生データの生成のために、世界の任意の地域(例えば、被験者が居住する国または情報が最終的に使用される国とは異なる国)にあるプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリングビジネスなど)に提出される。サンプルが組織または他の生体サンプルを含む場合、被験者は、医療センターを訪れて、サンプルの取得およびプロファイリングセンターへの送付を行わせてもよく、または、被験者自身でサンプルを収集してプロファイリングセンターに直接送付してもよい。サンプルが以前に決定された生体情報を含む場合、情報は、被験者によってプロファイリングサービスに直接送信されてもよい(例えば、情報を含む情報カードをコンピュータによってスキャンし、当該データを、電子通信システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信してもよい)。プロファイリングサービスによって受信されると、サンプルは処理され、被験者にとって望ましい診断情報または予後情報に特異的なプロファイルが生成される。次いで、プロファイルデータは、治療する臨床医による解釈に適したフォーマットにて作成される。例えば、作成されたフォーマットは、生の発現データを提供するのではなく、特定の治療選択肢についての推奨と共に、被験者についての診断またはリスク評価を示していてもよい。データは、任意の適切な方法によって臨床医に表示され得る。例えば、いくつかの実施形態では、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、ケアの時点で)印刷され得るか、またはコンピュータモニタ上で臨床医に提示され得るレポートを生成する。いくつかの実施形態では、情報は、最初に、ケアの時点で、または地域施設で分析される。その後、生データは、さらなる分析のために、および/または生データを臨床医または患者にとって有用な情報に変換するために、中央処理施設に送られる。中央処理施設は、データ分析のプライバシー(全てのデータが均一なセキュリティプロトコルで中央施設に保存される)、速さ、および均一性という利点を提供する。次いで、中央処理施設は、被験者の治療後のデータの運命を制御することができる。例えば、電子通信システムを使用して、中央施設は、臨床医、被験者、または研究者にデータを提供することができる。いくつかの実施形態では、被験者は、電子通信システムを使用してデータにアクセスすることができる。被験者は、結果に基づいて、さらなる介入またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態では、データは、研究用途に使用される。例えば、データは、疾患に関連する特定の状態を示す有用な指標としてのマーカーの含有または排除をさらに最適化するために使用され得る。
【0215】
(サンプル)
いくつかの実施形態では、分析物は、生体サンプルから単離される。分析物は、動物、植物、細菌、古細菌、真菌、または任意の他の生物から得られる、任意の材料(例えば、細胞材料(生細胞または死細胞)、細胞外材料、ウイルス材料、環境サンプル(例えば、メタゲノムサンプル)、合成材料(例えば、PCRまたは他の増幅技術によって提供されるようなアンプリコン))から得ることができる。本技術において使用するための生体サンプルには、ウイルス粒子またはその調製物が含まれる。分析物は、生物から直接得るか、または生物から得られる生体サンプルから、例えば、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、喀痰、糞便、毛髪、汗、涙、皮膚、および組織から、得ることができる。例示的なサンプルとしては、全血、リンパ液、血清、血漿、頬側細胞、汗、涙、唾液、喀痰、毛髪、皮膚、生検、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)、羊水、精液、膣排出物、漿液、滑液、心膜液、腹膜液、胸膜液、滲出液、浸出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、糞便サンプルおよび塗抹標本、吸引液(例えば、骨髄、細針など)、洗浄液(例えば、口腔、鼻咽頭、気管支、気管支肺胞、視神経、直腸、腸、膣、表皮など)、呼気凝縮液(breath condensate)、および/または他の検体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
法医学的検体、保管された検体、保存された検体、および/または長期間保存された検体(例えば、新鮮凍結、メタノール/酢酸固定、またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE:formalin-fixed paraffin embedded)検体およびサンプル)を含む、任意の組織または体液検体は、本技術において使用するための分析物の供給源として使用され得る。分析物はまた、初代細胞培養物または細胞株などの培養細胞から単離することもできる。分析物が得られる細胞または組織は、ウイルスまたは他の細胞内病原体に感染させることができる。サンプルはまた、生物学的検体、cDNAライブラリー、ウイルス、またはゲノムDNAから抽出された全RNAであり得る。サンプルはまた、非細胞起源から単離されたDNA、例えば、フリーザーに保存された増幅/単離されたDNAであってもよい。
【0217】
分析物(例えば、核酸分子、ポリペプチド、脂質、代謝産物、糖など)は、例えば、生体サンプルからの抽出によって、例えば、Maniatis, et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(例えば、280~281頁を参照のこと)によって記載されるような様々な技法によって得ることができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、本技術は、例えば、標的分析物を含む分子の規定されたサイズ範囲を提供するために、分析物のサイズ選択を提供する。
【0219】
いくつかの実施形態では、単細胞(例えば、ヒト、哺乳類、脊椎動物、真核生物、または原核生物の細胞)、単一オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、核、ゴルジ体)、細胞内小胞(例えば、エキソソーム)、および/または細胞内凝集粒子(例えば、無細胞膜オルガネラ(例えば、細胞内エキソソーム、タンパク質凝集体))が単離される(例えば、別個のウェル、マイクロウェル、マイクロ流体チャネル、サンプルチャンバ、試験管、マイクロ遠心分離管、または他の容器もしくは区画において、あるいは同じ区画の別個の領域において)。いくつかの実施形態では、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、生きているまたは化学的に固定された細胞、組織、コロニー、または生体液から物理的抽出によって(例えば、吸引、流体力、または光学トラッピングを使用して)単離される。いくつかの実施形態では、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から単離される。いくつかの実施形態では、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、流体操作(例えば、蛍光励起細胞分取、FACS:fluorescence-activated cell sorting)もしくはマイクロ流体操作によって、または培養皿、顕微鏡スライドもしくはカバースリップの別々のウェルもしくは領域への分離によって、または3D細胞培養培地もしくはマトリックスの異なる領域において、懸濁液から単離される。いくつかの実施形態では、電場および/または磁場を使用して、他の生物学的構成要素からの、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子の分離を達成する。すなわち、いくつかの実施形態では、電場および/または磁場は、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子を単離するために使用される。
【0220】
いくつかの実施形態では、単細胞(例えば、ヒト、哺乳類、脊椎動物、真核生物、または原核生物の細胞)、単一オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、核、ゴルジ体)、細胞内小胞(例えば、エキソソーム)、および/または細胞内凝集粒子(例えば、無細胞膜オルガネラ(例えば、細胞内エキソソーム、タンパク質凝集体))は、(例えば、細胞溶解緩衝液;SDS、Triton X-100、またはデオキシコール酸などの界面活性剤;および/またはプロテアーゼ、リパーゼ、またはヌクレアーゼなどの酵素で)処理されて、各単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子から分析物を放出する。いくつかの実施形態では、単細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、固体支持体の近くの領域で捕捉するために分析物を遊離させるために、固体支持体上またはその近くでin situで処理される。
【0221】
いくつかの実施形態では、分析物は、単一分子検出方法(例えば、SiMREPS)によって検出される。
【0222】
(使用)
種々の実施形態は、広範囲の分析物の検出に関する。例えば、いくつかの実施形態では、本技術は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、特定の標的配列を含む核酸の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、特定の突然変異(例えば、一塩基多型、挿入、欠失、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、遺伝子再編成、遺伝子融合など)を含む核酸の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、ポリペプチド(例えば、タンパク質、ペプチド)の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、突然変異を含む核酸によってコードされるポリペプチド(例えば、置換を含むポリペプチド、切断型ポリペプチド、突然変異型または変異型ポリペプチド)の検出において用いられる。
【0223】
いくつかの実施形態では、本技術は、ポリペプチドに対する翻訳後修飾(例えば、リン酸化、メチル化、アセチル化、グリコシル化(例えば、O-結合型グリコシル化、N結合型グリコシル化)、ユビキチン化、官能基の付加(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、イソプレニル化、プレニル化、ファルネシル化、ゲラニル化、ゲラニルゲラニル化、グリピエーション(glypiation)、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI:glycosylphosphatidylinositol)アンカー形成)、ヒドロキシル化、ビオチン化、ペグ化、酸化、SUMO化(SUMOylation)、ジスルフィド架橋形成、ジスルフィド架橋切断、タンパク質切断、アミド化、硫酸化、ピロリドンカルボン酸形成)の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、これらの特徴、例えば、脱リン酸化、脱メチル化、脱アセチル化、脱グリコシル化、脱アミド化、脱ヒドロキシル化、脱ユビキチン化などの欠失の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、DNAまたはRNAに対するエピジェネティック修飾(例えば、メチル化(例えば、CpG部位のメチル化)、ヒドロキシメチル化)の検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、これらの特徴、例えば、DNAまたはRNAの脱メチル化などの欠失を検出する際に使用される。いくつかの実施形態では、本技術は、クロマチン構造、ヌクレオソーム構造、ヒストン修飾などの変化の検出、および核酸に対する損傷の検出において用いられる。
【0224】
いくつかの実施形態では、本技術は、例えば、少量の検体体積を有するサンプル(例えば、郵送サービスのための、例えば、血液の液滴)を分析するための、分子診断アッセイとしての使用を見出す。いくつかの実施形態では、本技術は、少量の分析物バイオマーカーの高感度検出を使用して、癌または感染性疾患の早期検出を提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、タンパク質バイオマーカーのエピジェネティック修飾(例えば、翻訳後修飾)を分析するための分子診断において用いられる。
【0225】
いくつかの実施形態では、本技術は、多分子複合体、例えば、多タンパク質複合体、核酸/タンパク質複合体、分子機械、オルガネラ(例えば、血漿中の無細胞ミトコンドリア)、細胞、ウイルス粒子、生物、組織、または捕捉され得て、本明細書中に記載される技術による分析に従う任意の巨大分子構造または物体の特徴付け(例えば、多分子複合体の1つ以上の構成要素の特徴付け)において用いられる。例えば、いくつかの実施形態では、多分子複合体が単離され、本技術は、当該多分子複合体に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出において用いられる。いくつかの実施形態では、細胞外小胞が単離され、本技術は、当該小胞に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出において用いられる。いくつかの実施形態では、本技術は、小胞内に存在するタンパク質(例えば、表面タンパク質)および/または分析物(例えば、本明細書中に記載されるタンパク質、核酸、または他の分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出において用いられる。いくつかの実施形態では、小胞は、分析前に固定され、透過処理される。
【0226】
本明細書における開示は特定の図で示した実施形態について言及するが、これらの実施形態は、例として与えられたものであって、制限する目的で与えられたものではないことを理解されたい。
【実施例
【0227】
実施例1
本明細書に記載された技術の実施形態の開発中、標的核酸(例えば、miR-141)に加えて3つの核酸鎖を含むバイオセンサの実施形態を試験するための実験を行った。
【0228】
図3aは、標的核酸(T)、すなわち、マイクロRNA hsa-miR-141に加えて、3つの核酸鎖を含むバイオセンサ設計の実施形態を示す。捕捉プローブ(C)およびクエリープローブ(Q)は、T上の隣接する相補的領域に結合する長い核酸配列および短い核酸配列であり、CおよびQの両方がTに結合された場合、標識Alexa Fluor 647(AF647、L1)とCy3(L2)とが並列する。
【0229】
図3bおよび図3cは、バイオセンサの実施形態の実験的実証から収集されたデータを示す。Cy3とAF647の並列は、2つの色素間でフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を可能にし、その結果、複合体からの蛍光シグナルのほぼ100%がAF647から放出される。QがTに結合されない場合、Qは代わりにデコイ配列Dに結合し、その結果、FRET効率が低くなり、複合体からの蛍光のほぼ100%がCy3から放出される。捕捉(C)配列は、Cプローブによる標的の結合のより大きな安定性のために、ロックド核酸(LNA)修飾を組み込む。図3bは、hsa-miR-141が結合された単一のバイオセンサ分子のFRET測定を示す。高FRET状態(主にCy5発光、赤)と低FRET状態(主にCy3発光、青)との間の反復遷移は、t=19秒およびt=47秒で見られ、Tとの相互作用を動力学的に特徴付けすることを可能にし、これにより、Tの存在の明確なサインを提供する。図3cは、Tが無い場合におけるFRET測定を示しており、低FRET状態のみを示し、したがって、Tが無いことを示す。
【0230】
図4aおよび図4bは、上記の分子内センサから得られたシグナルに対するデコイの影響を試験するために行った実験中に収集された、さらなるデータを示す。特に、デコイ(D)の存在下および非存在下において(例えば、標的核酸、すなわち、miR-141に加えて3つの核酸鎖を含む)上記のバイオセンサの実施形態を試験するための実験を行った。
【0231】
図4aおよび図4bにおける左側のプロットは、個々のバイオセンサからの代表的な単一分子FRET軌跡を示し、一方、図4aおよび図4bにおける右側のプロットは、非ゼロFRET効率の少なくとも1つのデータポイントを示す36個のバイオセンサ(各条件から)において観察されたFRET比のヒストグラムである。
【0232】
図4aは、デコイ(D)が存在せず、1に近い安定したFRET効率をもたらすバイオセンサの単一分子FRET測定から得られたデータを示す。図4bは、7-ヌクレオチドデコイ配列が存在し、約1と0.1のFRET効率間の動的遷移をもたらすバイオセンサの単一分子FRET測定からのデータを示す。したがって、デコイの存在は、デコイが存在しないバイオセンサでは観察されなかった、観察し得るFRET遷移をもたらす。
【0233】
実施例2
本明細書に記載の技術の実施形態の開発中、本技術のイメージング時間を1標的核酸分子あたり約10秒へと改善するための実験を行った。特に、miRNA標的の検出における、長さの異なるスペーサおよび/または長さの異なるスペーサを含むクエリープローブ(クエリーアームループ)を含むデコイ(D)についてのFRET状態を特徴付けるデータを収集するための実験を行った。これらの実験において、標的分析物(T)、クエリープローブ(Q)、およびデコイ(D、「競合物」)は核酸であった(例えば、図5を参照のこと)。データを収集して、クエリー-標的複合体(QT)の時間依存的な持続時間(高FRETシグナル(「高FRET状態」)により検出可能)、およびクエリー-デコイ(QD)または遊離クエリープローブ状態の時間依存的な持続時間(低FRETシグナル(「低FRET状態」)により検出可能)、ならびに高FRET状態と低FRET状態との間でのシステムの切り替わりを特徴付けた(例えば、図5を参照のこと)。理論に束縛されるものではないが、デコイを含むリンカーの長さは低FRET状態における滞留時間を調節するであろうこと、および、クエリーアームループの長さはクエリーアームの柔軟性を調節し、したがって、高FRET状態と低FRET状態との間での切り替わりの動態および熱力学の両方に影響を及ぼすであろうと考えられた。
【0234】
これらの実験中に収集されたデータは、6つのヌクレオチドのより短いスペーサを含むデコイほど、より速い切り替わりの動態、および高FRET状態への増加したバイアスを生じることを示した(図6を参照のこと)。しかしながら、驚くべきことに、データは、より長いスペーサを含むクエリープローブほど、高FRET状態へのより強いバイアスをもたらすことを示した(図6)。理論に束縛されるものではないが、クエリーアームの平衡長を変化させることにより、標的miRNAへのクエリープローブ結合の熱力学的安定性が増加すると考えられた。上記データは、検証された設計のバリエーション群のうち最良の設計(最良の設計は、6ntを含むデコイと、18ntのクエリーアームループを含むクエリープローブとを使用した。)により、高FRET状態と低FRET状態との急速な切り替わりの動態および等しいサンプリングが提供されることを示した。このシステムは、1分あたり約14回の遷移を示し、わずか1分~2分(例えば、50秒、55秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、105秒、110秒、115秒、120秒、125秒、または130秒)の取得時間で未増幅のmiRNA標的を検出する技術の実施形態を提供する。
【0235】
実施例3
上記の実験で収集されたデータに基づくと、クエリープローブと標的miRNAとの間に形成される塩基対の数を減らすことによりイメージング時間のさらなる短縮が提供されると考えられた。しかしながら、これには、標的miRNAに対するクエリープローブの特異性を低下させるリスクもあり、クエリープローブは、他の非標的核酸に結合し得る。したがって、本明細書に記載の技術の実施形態の開発中、クエリープローブと標的miRNAとの間の相補的塩基対の数を減らすことなく切り替わりの動態を加速させるために、異なるイメージング緩衝液の条件を用いて試験するための実験を行った。データは、イオン強度を約600mMから150mMに低下させても、切り替わりの動態の有意な加速はもたらされなかったことを示した。しかしながら、データは、1%~10%のホルムアミドをイメージング緩衝液に添加すると、標的miRNAを検出する高FRET状態と低FRET状態との間の切り替わりの動態が増加することを示した(図7Aおよび図7B)。重要なことに、このデータは、本技術が、10%ホルムアミドを含む実施形態について1秒の中央値滞留時間を達成したことを示した(図7Aおよび図7B)。約10%のホルムアミド(例えば、約7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、または20.0%のホルムアミド)を含むイメージング緩衝液を用いて収集されたデータの最初の10秒のみを分析した結果、ほとんどの分子が、この時間間隔内に約10回~25回のFRET遷移を行うことが明らかになった(図7C)。したがって、いくつかの実施形態では、本技術は、標的の存在、量、および/または濃度の測定を提供し、当該測定は1標的分析物(例えば、miRNA標的)あたりわずか約10秒(例えば、約1.00秒、1.10秒、1.20秒、1.30秒、1.40秒、1.50秒、1.60秒、1.70秒、1.80秒、1.90秒、2.00秒、2.10秒、2.20秒、2.30秒、2.40秒、2.50秒、2.60秒、2.70秒、2.80秒、2.90秒、3.00秒、3.10秒、3.20秒、3.30秒、3.40秒、3.50秒、3.60秒、3.70秒、3.80秒、3.90秒、4.00秒、4.10秒、4.20秒、4.30秒、4.40秒、4.50秒、4.60秒、4.70秒、4.80秒、4.90秒、5.00秒、5.10秒、5.20秒、5.30秒、5.40秒、5.50秒、5.60秒、5.70秒、5.80秒、5.90秒、6.00秒、6.10秒、6.20秒、6.30秒、6.40秒、6.50秒、6.60秒、6.70秒、6.80秒、6.90秒、7.00秒、7.10秒、7.20秒、7.30秒、7.40秒、7.50秒、7.60秒、7.70秒、7.80秒、7.90秒、8.00秒、8.10秒、8.20秒、8.30秒、8.40秒、8.50秒、8.60秒、8.70秒、8.80秒、8.90秒、9.00秒、9.10秒、9.20秒、9.30秒、9.40秒、9.50秒、9.60秒、9.70秒、9.80秒、9.90秒、10.00秒、10.10秒、10.20秒、10.30秒、10.40秒、10.50秒、10.60秒、10.70秒、10.80秒、10.90秒、11.00秒、11.10秒、11.20秒、11.30秒、11.40秒、11.50秒、11.60秒、11.70秒、11.80秒、11.90秒、12.00秒、12.10秒、12.20秒、12.30秒、12.40秒、12.50秒、12.60秒、12.70秒、12.80秒、12.90秒、13.00秒、13.10秒、13.20秒、13.30秒、13.40秒、13.50秒、13.60秒、13.70秒、13.80秒、13.90秒、14.00秒、14.10秒、14.20秒、14.30秒、14.40秒、14.50秒、14.60秒、14.70秒、14.80秒、14.90秒、15.00秒、15.10秒、15.20秒、15.30秒、15.40秒、15.50秒、15.60秒、15.70秒、15.80秒、15.90秒、16.00秒、16.10秒、16.20秒、16.30秒、16.40秒、16.50秒、16.60秒、16.70秒、16.80秒、16.90秒、17.00秒、17.10秒、17.20秒、17.30秒、17.40秒、17.50秒、17.60秒、17.70秒、17.80秒、17.90秒、18.00秒、18.10秒、18.20秒、18.30秒、18.40秒、18.50秒、18.60秒、18.70秒、18.80秒、18.90秒、19.00秒、19.10秒、19.20秒、19.30秒、19.40秒、19.50秒、19.60秒、19.70秒、19.80秒、19.90秒、または20.00秒)以内に行われる。
【0236】
前記明細書に記載された全ての刊行物および特許は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。記載された組成物、方法、および技術の使用の種々の改変およびバリエーションは、記載された技術の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本技術は特定の例示的な実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
【配列表】
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