(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】熱音響機関及び熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023001388
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157072
【氏名又は名称】関東冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 愼一
(72)【発明者】
【氏名】神田 輝一
(72)【発明者】
【氏名】大下 浩
(72)【発明者】
【氏名】小山 亮
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207040(JP,A)
【文献】特開2018-044730(JP,A)
【文献】特開2020-183849(JP,A)
【文献】特開2005-351223(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102564(WO,A1)
【文献】特開2018-091580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F03G 7/00
H04R 23/00
C21D 1/00 ~ 11/00
F27B 1/00 ~ 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱から音波を発生させるように構成された第1変換部と、
前記第1変換部に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成された第2変換部と
を備え、
前記第1変換部は、
前記接続配管の一端が接続される環状の第1配管に設けられる第1蓄熱器と、
前記第1配管において前記第1蓄熱器の第1端部に連結される第1高温側熱交換器と、
前記第1配管において前記第1端部とは反対側の前記第1蓄熱器の第2端部に連結される第1低温側熱交換器と、
前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられる第1固体伝熱部材であって、前記第1配管の外部に位置する第1熱源の第1取付部に取り付けられる第1固体伝熱部材と
を備え、
前記第2変換部は、
前記接続配管の他端が接続される環状の第2配管に設けられる第2蓄熱器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の第1端部に連結される第2高温側熱交換器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の前記第1端部とは反対側の前記第2蓄熱器の第2端部に連結される第2低温側熱交換器と、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられる第2固体伝熱部材であって、前記第2配管の外部に位置する第2熱源の第2取付部に取り付けられる第2固体伝熱部材と
を備え、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器は、前記第2熱源から熱を受け取り、常温を超えた所定温度域にまで加熱され、
前記第2変換部の前記第2高温側熱交換器は、熱エネルギーを出力する、
熱音響機関。
【請求項2】
前記第1固体伝熱部材は、前記第1熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第1熱源の前記第1取付部に配置される第1伝熱仕切部材と接するように設けられる、
請求項1に記載の熱音響機関。
【請求項3】
前記第2固体伝熱部材は、前記第2熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第2熱源の前記第2取付部に配置される第2伝熱仕切部材と接するように設けられる、
請求項1又は2に記載の熱音響機関。
【請求項4】
前記第1固体伝熱部材は、前記第1熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第1熱源の前記第1取付部に配置される第1伝熱仕切部材と接するように設けられ、
前記第1固体伝熱部材は、棒状部材であり、
前記第1伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材である、
請求項1に記載の熱音響機関。
【請求項5】
前記第2固体伝熱部材は、前記第2熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第2熱源の前記第2取付部に配置される第2伝熱仕切部材と接するように設けられ、
前記第2固体伝熱部材は、棒状部材であり、
前記第2伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材である、
請求項1又は
4に記載の熱音響機関。
【請求項6】
請求項1に記載の熱音響機関を備えた熱処理炉。
【請求項7】
前記熱処理炉は炭化炉又は黒鉛化炉であり、上流側から下流側に向けて排気室、加熱室及び冷却室を備え、
前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられた前記第1固体伝熱部材は、前記第1配管の外部に位置する前記加熱室の前記第1取付部に取り付けられ、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられた前記第2固体伝熱部材は、前記第2配管の外部に位置する前記加熱室又は前記排気室の前記第2取付部に取り付けられ、
前記第2変換部の前記第2高温側熱交換器と前記排気室の排気管とは熱交換可能に構成されている、
請求項
6に記載の熱処理炉。
【請求項8】
熱から音波を発生させるように構成された第1変換部と、
前記第1変換部に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成された第2変換部と
を備え、
前記第1変換部は、
前記接続配管の一端が接続される環状の第1配管に設けられる第1蓄熱器と、
前記第1配管において前記第1蓄熱器の第1端部に連結される第1高温側熱交換器と、
前記第1配管において前記第1端部とは反対側の前記第1蓄熱器の第2端部に連結される第1低温側熱交換器と、
前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられる第1固体伝熱部材であって、前記第1配管の外部に位置する第1熱源の第1取付部に取り付けられる第1固体伝熱部材と
を備え、
前記第2変換部は、
前記接続配管の他端が接続される環状の第2配管に設けられる第2蓄熱器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の第1端部に連結される第2高温側熱交換器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の前記第1端部とは反対側の前記第2蓄熱器の第2端部に連結される第2低温側熱交換器と、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられる第2固体伝熱部材であって、前記第2配管の外部に位置する第2熱源の第2取付部に取り付けられる第2固体伝熱部材と
を備え、
前記第1固体伝熱部材は、前記第1熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第1熱源の前記第1取付部に配置される第1伝熱仕切部材と接するように設けられ、
前記第2変換部の前記第2高温側熱交換器は、熱エネルギーを出力する、
熱音響機関。
【請求項9】
熱から音波を発生させるように構成された第1変換部と、
前記第1変換部に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成された第2変換部と
を備え、
前記第1変換部は、
前記接続配管の一端が接続される環状の第1配管に設けられる第1蓄熱器と、
前記第1配管において前記第1蓄熱器の第1端部に連結される第1高温側熱交換器と、
前記第1配管において前記第1端部とは反対側の前記第1蓄熱器の第2端部に連結される第1低温側熱交換器と、
前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられる第1固体伝熱部材であって、前記第1配管の外部に位置する第1熱源の第1取付部に取り付けられる第1固体伝熱部材と
を備え、
前記第2変換部は、
前記接続配管の他端が接続される環状の第2配管に設けられる第2蓄熱器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の第1端部に連結される第2高温側熱交換器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の前記第1端部とは反対側の前記第2蓄熱器の第2端部に連結される第2低温側熱交換器と、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられる第2固体伝熱部材であって、前記第2配管の外部に位置する第2熱源の第2取付部に取り付けられる第2固体伝熱部材と
を備え、
前記第2固体伝熱部材は、前記第2熱源の内外を連通する貫通孔を閉じるように前記第2熱源の前記第2取付部に配置される第2伝熱仕切部材と接するように設けられ、
前記第2変換部の前記第2高温側熱交換器は、熱エネルギーを出力する、
熱音響機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱音響機関、及び、この熱音響機関を備えた熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の工場、発電所等において各種機械から排出される排熱を利用する構成が種々提案されていて、これらは省エネルギー化の観点から更なる発展が期待されている。例えば、特許文献1は、工業炉の炉設備の排気管に配置された高温側熱交換器、蓄熱器及び低温側熱交換器が順に接続された原動機が出力ループ配管に配置された第1変換部と、接続配管を介して第1変換部で生成された音波が伝達される第2変換部とを備えた、熱音響機関を開示する。第1変換部は、排気管の排熱から熱音響自励振動による音波を発生させる構成を有し、第2変換部は、接続配管から音波を入力して音波の振動から電力を発生させたり、冷熱を発生させたりするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場等において、各種機械の排熱を有効に取り出すために、例えば排ガスそのものを排気管から外部に取り出すことは、排気ガスの漏れの可能性などの点で改善の余地がある。一方で、上記特許文献1においては、排気管から排熱を取り出す構成については何ら記載されていない。
【0005】
また、熱処理炉には、窒素ガスなどの中性ガス又はアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で炭素材料を超高温に加熱して、その炭化又は黒鉛化を図るように構成された所謂炭化炉及び所謂黒鉛化炉がある。これらは、例えば、1000℃から3000℃の温度に材料を加熱するので、排熱も多く、その有効活用が望まれる。一方、この炭化炉又は黒鉛化炉内のガスは、材料由来のタール等を含むので、そのガスを取り出して排熱を回収することは更なる課題をもたらし得る。
【0006】
本開示の目的は、熱音響機関に関して、ガスを直接取り出すことなく、熱を取り出して、音波を発生させ、それによりエネルギーを発生させることを可能にする構成を提供することにある。
また、本開示の更なる目的は、炭化炉、黒鉛化炉などの熱処理炉において、排熱をより好適に回収することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様は、
熱から音波を発生させるように構成された第1変換部と、
前記第1変換部に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成された第2変換部と
を備え、
前記第1変換部は、
前記接続配管の一端が接続される環状の第1配管に設けられる第1蓄熱器と、
前記第1配管において前記第1蓄熱器の第1端部に連結される第1高温側熱交換器と、
前記第1配管において前記第1端部とは反対側の前記第1蓄熱器の第2端部に連結される第1低温側熱交換器と、
前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられる第1固体伝熱部材であって、前記第1配管の外部に位置する第1熱源の第1取付部に取り付けられる第1固体伝熱部材と
を備え、
前記第2変換部は、
前記接続配管の他端が接続される環状の第2配管に設けられる第2蓄熱器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の第1端部に連結される第2高温側熱交換器と、
前記第2配管において前記第2蓄熱器の前記第1端部とは反対側の前記第2蓄熱器の第2端部に連結される第2低温側熱交換器と、
前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられる第2固体伝熱部材であって、前記第2配管の外部に位置する第2熱源の第2取付部に取り付けられる第2固体伝熱部材と
を備えている
熱音響機関
を提供する。
【0008】
好ましくは、前記第1固体伝熱部材は、前記第1熱源と前記第1固体伝熱部材との間に介在するように前記第1熱源の前記第1取付部に配置される第1伝熱仕切部材と接するように設けられる。この場合、前記第1固体伝熱部材は、棒状部材であり、前記第1伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材であるとよい。
【0009】
好ましくは、前記第2固体伝熱部材は、前記第2熱源と前記第2固体伝熱部材との間に介在するように前記第2熱源の前記第2取付部に配置される第2伝熱仕切部材と接するように設けられる。この場合、前記第2固体伝熱部材は、棒状部材であり、前記第2伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材であるとよい。
【0010】
本開示の第2態様は、
前述の熱音響機関を備えた熱処理炉
を提供する。
【0011】
好ましくは、前記熱処理炉は炭化炉又は黒鉛化炉である。このとき、その熱処理炉は、上流側から下流側に向けて排気室、加熱室及び冷却室を備えることができる。この場合、前記第1変換部の前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられた前記第1固体伝熱部材は、前記第1配管の外部に位置する前記加熱室の前記第1取付部に取り付けられ、前記第2変換部の前記第2低温側熱交換器から延出するように設けられた前記第2固体伝熱部材は、前記第2配管の外部に位置する前記加熱室又は前記排気室の前記第2取付部に取り付けられ、前記第2変換部の前記第2高温側熱交換器と前記排気室の排気管とは熱交換可能に構成されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上記第1態様によれば、上記構成を備えるので、熱音響機関に関して、ガスを直接取り出すことなく、熱を取り出して、音波を発生させ、よってエネルギーを発生させることが可能になる。
また、本開示の上記第2態様によれば、上記構成を備えるので、炭化炉、黒鉛化炉などの熱処理炉において、排熱をより好適に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示に係る基本構成例の熱音響機関を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る熱処理炉である黒鉛化炉の概略構成図である。
【
図3】
図3は、
図2の黒鉛化炉に設けられた熱音響機関及びその周囲の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
まず、本開示に係る基本構成例の熱音響機関12を
図1に基づき説明する。熱音響機関12は、熱から音波を発生させるように構成された第1変換部14と、第1変換部14に接続配管18を介して接続された第2変換部20とを備えている。第2変換部20は、第1変換部14で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成されている。
【0016】
第1変換部14は音波発生装置10を備え、熱音響用配管16とコア部22とを備える。熱音響用配管16は、環状つまりループ状の配管であり、環状の第1配管に相当する。接続配管18の一端は熱音響用配管16に連通し、接続配管18の他端には第2変換部20が設けられている。熱音響用配管16及び接続配管18は互いに連通し、所定の作動気体(ここではヘリウム(He))が所定圧力下で封入されている。なお、作動気体は、ヘリウムに限定されず、種々の気体で有り得、例えばヘリウム、窒素、アルゴン及び空気のうちの1つの気体又はそれらのうちの2つ以上を含む混合気体であってもよい。また、第2変換部20の後述する環状配管40(環状の第2配管)にも、熱音響用配管16及び接続配管18内と同じく、所定の作動気体が所定圧力下で封入される。
【0017】
第1変換部14つまり音波発生装置10は、前述のように、環状の熱音響用配管16と、コア部22とを備えている。コア部22は、原動機と称される場合もあり、蓄熱器24と、高温側熱交換器26と、低温側熱交換器28とを備えている。蓄熱器24と、高温側熱交換器26と、低温側熱交換器28とは、高温側熱交換器26と低温側熱交換器28とで蓄熱器24を挟むように熱音響用配管16に設けられる。高温側熱交換器26は、熱音響用配管16の流路方向FA1において蓄熱器24の一端(第1端部)に連結される。高温側熱交換器26は、蓄熱器24の第1端部を相対的に加熱するように構成されている。低温側熱交換器28は、熱音響用配管16の流路方向FA1において第1端部とは反対側の蓄熱器24の他端(第2端部)に連結される。低温側熱交換器28は、蓄熱器24の第2端部を相対的に冷却するように構成されている。
【0018】
蓄熱器24は、例えばハニカムのような細かい流路が設けられた構造体であり、セラミック又は金属から作製され得、ステンレス鋼製ハニカム状構造体を有してもよい。蓄熱器24は、熱音響用配管16の流路方向FA1に直交する断面において複数の流路つまり孔を有して構成され、例えば、その複数の孔の各々は、1mm未満のサイズ、例えば1mm未満の内径を有するとよい。高温側熱交換器26及び低温側熱交換器28は、それぞれ高い熱伝導率を有するとよく、それぞれ金属製であり得、例えば銅製である。高温側熱交換器26及び低温側熱交換器28は、それぞれ、蓄熱器24と同様に細かい流路を備え、熱音響用配管16に封入された作動気体を自励振動させるために蓄熱器24の複数の流路の両端部間に温度勾配が生じるように作動気体との間で熱交換を行う熱交換器を構成している。
【0019】
高温側熱交換器26から固体伝熱部材(以下、第1固体伝熱部材)30が延出するように第1固体伝熱部材30は設けられている。第1固体伝熱部材30は、耐熱性に優れるとともに、高い熱伝導率を有するとよい。第1固体伝熱部材30はここでは、グラファイト製の棒状部材であるが、他の材料、例えば炭化ケイ素(SiC)製であってもよく、また棒状以外の形状を有してもよい。第1固体伝熱部材30は、熱音響用配管16の外部に位置する熱源(以下、第1熱源)32に設けられた取付部34に取り付けられる。
【0020】
図1に示すように、第1熱源32の取付部34に伝熱仕切部材(以下、第1伝熱仕切部材)36が配置されている。この第1伝熱仕切部材36は、第1熱源32の温度などに応じて選定された材料で作製され得、例えば鉄製、ニッケル基合金製であり得、伝熱に優れるとよい。第1伝熱仕切部材36は、熱音響用配管16の外部に位置する第1熱源32と、第1固体伝熱部材30との間に介在するように第1熱源32に配置される。そして、第1伝熱仕切部材36に接するように、第1固体伝熱部材30は設けられる。例えば、第1固体伝熱部材30は、機械的接続手段により、第1伝熱仕切部材36に着脱可能に接続されて、これにより第1伝熱仕切部材36に接してもよい。具体的には、第1固体伝熱部材30は雌ねじ部又は雄ねじ部を有し、第1伝熱仕切部材36の対応する雄ねじ部又は雌ねじ部に着脱自在に螺合されてもよい。これにより、高温側熱交換器26は、第1伝熱仕切部材36及び第1固体伝熱部材30を介して第1熱源32からの熱を受け取り、常温を超えた所定温度域(第1所定温度域)にまで加熱され得る。なお、第1伝熱仕切部材36が設けられずに、第1熱源32の取付部34に、第1固体伝熱部材30が接するように設けられ、例えば第1固体伝熱部材30が直接取り付けられてもよい。例えば、取付部34に第1固体伝熱部材30が機械的接続手段により着脱自在に取り付けられてもよく、具体的には、取付部34が雌ねじ孔であるとき、第1固体伝熱部材30に雄ねじ部が設けられて、螺合されてもよい。
【0021】
一方、低温側熱交換器28は、入熱無しに保たれることができ、又は水などの冷却液体を用いた冷却設備を有することができる。これにより、低温側熱交換器28は、高温側熱交換器26よりも低い所定温度域(第2所定温度域)の温度を有するようにされる。
【0022】
したがって、蓄熱器24の両端では温度差が生じ、蓄熱器24では作動流体の流通方向FA1に温度勾配が形成される。よって、第1変換部14の熱音響用配管16では、内部に存在する作動気体の加熱による膨張と、冷却による収縮が行われ、熱音響自励振動が生じ、それにより音波が発生する。このように、音波発生装置10を備えた第1変換部14において、蓄熱器24を備えたコア部22では、入力された熱から音波への変換が行われる。
【0023】
第1変換部14で生成された音波は、熱音響用配管16に接続された接続配管18に伝わり、第2変換部20に伝達される。熱音響用配管16において、接続配管18が接続することで、接続配管18と熱音響用配管16とにより略T字状部17が形成されている。接続配管18が滑らかにつながる熱音響用配管16の流路部16A側に蓄熱器24の高温側熱交換器26が向き、接続配管18と熱音響用配管16との略T字状部17に突き当たるように延びる熱音響用配管16の流路部16B側に蓄熱器24の低温側熱交換器28が向くようにコア部22は熱音響用配管16に配置されている。そして、ここでは、低温側熱交換器28から相対的に遠く、かつ、高温側熱交換器26に相対的に近い箇所に、接続配管18の一端が接続されている。接続配管18の他端には第2変換部20が設けられている。第2変換部20は、第1変換部14で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成されていて、より具体的には、第1変換部14で生成された音波から熱エネルギーを発生させるように構成されている。
【0024】
第2変換部20は、第1変換部14に接続配管18を介して接続する。第2変換部20は、環状配管40及び、蓄熱器42と高温側熱交換器44と低温側熱交換器46とを備えるコア部47を備える。環状配管40は、環状つまりループ状の配管であり、環状の第2配管に相当する。コア部47は、環状配管40に設けられている。蓄熱器42は上記蓄熱器24と同じ構成を備え、同様の変更が可能である。高温側熱交換器44は、上記高温側熱交換器26と同じ構成を備え、同様の変更が可能であり、環状配管40の流路方向FA2において蓄熱器42の一端(第1端部)に連結される。低温側熱交換器46は、上記低温側熱交換器28と同じ構成を備え、同様の変更が可能であり、環状配管40の流路方向FA2において第1端部とは反対側の蓄熱器42の他端(第2端部)に連結される。
【0025】
低温側熱交換器46から固体伝熱部材(以下、第2固体伝熱部材)48が延出するように第2固体伝熱部材48は設けられている。第2固体伝熱部材48は、耐熱性に優れるとともに、高い熱伝導率を有するとよい。第2固体伝熱部材48はここでは、第1固体伝熱部材30と同様の構成を備え、ここではグラファイト製の棒状部材であるが、他の材料、例えば炭化ケイ素(SiC)製であってもよく、また棒状以外の形状を有してもよい。第2固体伝熱部材48は、環状配管40の外部に位置する熱源(以下、第2熱源)50に設けられた取付部52に取り付けられる。
【0026】
図1に示すように、第2熱源50の取付部52に伝熱仕切部材(以下、第2伝熱仕切部材)54が配置されている。この第2伝熱仕切部材54は、第2熱源50の温度などに応じて選定された材料で作製され得、例えば鉄製、ニッケル基合金製であり得、伝熱に優れるとよい。第2伝熱仕切部材54は、環状配管40の外部に位置する第2熱源50と、第2固体伝熱部材48との間に介在するように第2熱源50に配置される。そして、第2伝熱仕切部材54に接するように、第2固体伝熱部材48は設けられる。例えば、第2固体伝熱部材48は、機械的接続手段により、第2伝熱仕切部材54に着脱可能に接続されて、これにより第2伝熱仕切部材36に接してもよい。具体的には、第2固体伝熱部材48は雌ねじ部又は雄ねじ部を有し、第2伝熱仕切部材54の対応する雄ねじ部又は雌ねじ部に着脱自在に螺合されてもよい。これにより、低温側熱交換器46は、第2伝熱仕切部材54及び第2固体伝熱部材48を介して第2熱源50からの熱を受け取り、常温を超えた所定温度域、例えば上記第1所定温度域にまで加熱され得る。なお、第2伝熱仕切部材54が設けられずに、第2熱源50の取付部52に、第2固体伝熱部材48が接するように設けられ、例えば第2固体伝熱部材48が直接取り付けられてもよい。例えば、取付部52に第2固体伝熱部材48が機械的接続手段により着脱自在に取り付けられてもよく、具体的には、取付部52が雌ねじ孔であるとき、第2固体伝熱部材48に雄ねじ部が設けられて、螺合されてもよい。
【0027】
第2変換部20の環状配管40に、接続配管18の他端(熱音響用配管16に接続する接続配管18の一端と反対側の端部)は接続されて連通している。環状配管40に接続配管18が接続することで、接続配管18と環状配管40とにより略T字状部41が形成されている。接続配管18が滑らかにつながる環状配管40の流路部40A側に蓄熱器42の低温側熱交換器46が向き、接続配管18と環状配管40との略T字状部41に突き当たるように延びる環状配管40の流路部40B側に蓄熱器42の高温側熱交換器44が向くようにコア部47は環状配管40に配置されている。したがって、第2変換部20の高温側熱交換器44は第2変換部20の低温側熱交換器46よりも高い温度を有することができる。前述のように、低温側熱交換器46は、第2熱源50からの熱を受け取り、常温を超えた所定温度域、例えば上記第1所定温度域にまで加熱され得、このように第1変換部14の高温側熱交換器26と同様に熱が入力される。よって、第2変換部20の高温側熱交換器44は、低温側熱交換器46を超える温度を生じさせることができ、熱エネルギーを出力することができる。
【0028】
以上説明した熱音響機関12によれば、上記構成を備えるので、熱音響機関12に関して、仮に第1熱源32及び第2熱源50が高温のガスを有するものであっても、そのガスを直接取り出すことなく、第1固体伝熱部材30を介して熱を取り出して、第1変換部14で音波を発生させ、その音波が伝達された第2変換部20では、第2固体伝熱部材48を介して熱を取り出して、高温側熱交換器44で熱エネルギーを発生させることができる。
【0029】
次に、
図1に示す熱音響機関12の構成が適用された、本開示の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図2に、一実施形態に係る熱処理炉60の概略構成図を示し、
図3に、
図2の熱処理炉60に設けられた熱音響機関12及びその周囲の拡大図を示す。熱処理炉60は、所謂黒鉛化炉であり、熱処理炉60に搬入された例えば炭素材料である被処理物Wに対して、加熱手段の一例であるヒータ62により所定の温度(例えば1000℃~3000℃)に設定された高温下の窒素ガスなどの中性ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で熱処理が行われる。なお、熱処理炉60は炭化炉であってもよく、この場合、熱処理炉60は、黒鉛化炉であるときと同じ構成を備え、黒鉛化炉であるときと異なる温度に、ヒータ62による加熱が行われ得る。
【0031】
熱処理炉60は、上流側から下流側に向けて、入口シール室64、排気室66、加熱室68、冷却室70及び出口シール室72が順に配置されている。入口シール室64から出口シール室72にかけて駆動装置で駆動される無端環状の搬送ベルト74が設けられていて、これらにより、被熱処理物Wは、入口シール室64から出口シール室72まで搬送される。あるいは、搬送ベルト74を有さず、炉外に存在する巻取装置などによって、被熱処理物Wが移動されてもよい。この巻取装置は、例えば被熱処理物Wが糸状の場合に用いられ得る。
【0032】
入口シール室64は、炉内の雰囲気に炉外の大気が侵入しづらくするように、複数のカーテン76を備える。この複数のカーテン76は、ラビリンス構造を有するように配置されるとよい。同様に、出口シール室72も、炉内の雰囲気に炉外の大気が侵入しづらくするように、複数のカーテン78を備える。この複数のカーテン78も、ラビリンス構造を有するように配置されるとよい。
【0033】
加熱室68は、複数のヒータ62を備え、被熱処理物Wを加熱するように構成されている。冷却室70は、ここでは、ヒータ62などの加熱設備に加えて、冷却設備も有さず、投入雰囲気ガスによる冷却を促すように構成されている。しかし、水冷冷却装置、例えば水冷ジャケットなどが冷却室70に設けられてもよい。
【0034】
中性ガス又は不活性ガスを供給するように構成された図示しないガス供給装置は、炉内雰囲気ガスとなるガス(
図2の矢印A1参照)を冷却室70から炉内に入れ、上流側の加熱室68側に向けて流すように構成されている。したがって、冷却室70は、供給されたガスで一定温度以下の冷却状態に維持され、加熱室68ではヒータ62により炉内雰囲気ガスは加熱される。こうして加熱された炉内雰囲気ガスは、排気室66に流れることになる。
【0035】
排気室66は、ヒータ62などの加熱設備を備えないが、加熱されたガスにより加熱された状態にされる。このように、加熱室68に加えて、排気室66も、その炉内に高温の炉内雰囲気ガスが流れ、これら加熱室68及び排気室66はそれぞれ加熱部Hに相当する。
【0036】
そして、排気室66には排気管80、つまり煙突に相当する構成が設けられ、その排気管80の先に二次燃焼室82が設けられている。排気管80には加熱室68を通過して排気室66に至った炉内雰囲気ガスが排ガスとして流入する。二次燃焼室82は、ヒータ62を備え、そこに排気管80を介して流入した排ガス中の不純物、例えばタール成分、一酸化炭素などを燃焼させて排出させるように構成されている。
【0037】
ここで、排気管80内を通過する過程で、排ガスの温度が下がると、タール成分が排気管66の内壁面に付着し、固化する可能性がある。このような現象の発生は、排ガスの好適な処理及び熱処理炉60の連続運転を確保するため、抑制する又は防ぐことが望まれる。そこで、本実施形態では、熱音響機関12の第2変換部20の高温側熱交換器44で発生させた熱エネルギーで、排気管80つまりそこを流れる排ガスを加熱する。この加熱を可能にするように、高温側熱交換器44と排気管80とは熱交換可能に構成され、例えば排気管80は鉄製又は銅製である。
【0038】
第1変換部14のコア部22の高温側熱交換器26から延出する第1固体伝熱部材30の先端は、熱処理炉60の加熱室68の貫通孔84に配置された第1伝熱仕切部材36に接するように設けられている。貫通孔84は、熱処理炉60の加熱室68の取付部34に、加熱室68の外壁86及びその外壁86の内側の断熱壁88を貫通するように形成され、加熱室68の内外を連通する。貫通孔84は、第1伝熱仕切部材36の一例である管部材90が隙間がないように取り付けられている。管部材90の閉じられた一端部つまり閉端部90Aは、加熱室68内に露出するように設けられ、炉内雰囲気ガスの熱を第1固体伝熱部材30に伝達することができる。なお、取付部34に設けられるのは貫通孔84に限定されず、凹部等であってもよく、管部材90は、加熱室68内に露出しないように設けられてもよい。これは、加熱室68の炉内温度、第1伝熱仕切部材36又は管部材90の材料特性などに応じて設計されるとよい。これは、取付部34に第1固体伝熱部材30が直接取り付けられる場合にも、同様である。
【0039】
一方、第2変換部20のコア部47の低温側熱交換器46から延出する第2固体伝熱部材48の先端は、熱処理炉60の排気室66の貫通孔92に配置された第2伝熱仕切部材54に接するように設けられている。貫通孔92は、熱処理炉60の排気室66の取付部52に、排気室66の外壁94を貫通するように形成され、排気室66の内外を連通する。貫通孔92は、第2伝熱仕切部材54の一例である管部材96が隙間がないように取り付けられている。管部材96の閉じたれた一端部つまり閉端部96Aは、排気室66内に露出するように設けられ、炉内雰囲気ガスの熱を第2固体伝熱部材48に伝達することができる。なお、取付部52及びそこに形成される貫通孔92は、取付部34及びそこに形成される貫通孔84と同様に、加熱室68に設けられてもよい。このように、ここでは第1熱源32は加熱室68又はそこを流れる炉内雰囲気ガスであり、第2熱源50は排気室66又は加熱室68、そしてそれらを流れる炉内雰囲気ガスである。これにより、第1変換部14の高温側熱交換器26への入熱と、第2変換部20の低温側熱交換器46の入熱をほぼ等しくされるとよい。ただし、取付部52に設けられるのは貫通孔92に限定されず、凹部等であってもよく、管部材96は、排気室66内に露出しないように設けられてもよい。これは、排気室66又は加熱室68の炉内温度、第2伝熱仕切部材54又は管部材96の材料特性などに応じて設計されるとよい。これは、取付部52に第2固体伝熱部材48が直接取り付けられる場合にも、同様である。
【0040】
上記構成を備える熱処理炉60によれば、加熱室68又はそこを流れる炉内雰囲気ガスの熱が第1伝熱仕切部材36及び第1固体伝熱部材30を介して第1変換部14の高温側熱交換器26に伝達され、蓄熱器24の両端に温度勾配を生じさせ、よって第1変換部14で熱音響自励振動により熱音響用配管16内において音波を発生させることができる。第1変換部14の音波は、接続配管18を介して、第2変換部20の環状配管40に伝達される。第2変換部20の低温側熱交換器46には、第2伝熱仕切部材54及び第2固体伝熱部材48を介して排気室66又はそこを流れる炉内雰囲気ガス(あるいは、加熱室68又はそこを流れる炉内雰囲気ガス)の熱が伝達される。したがって、第2変換部20では音波が蓄熱器42に入力されることで、蓄熱器42内にて低温側から高温側へ熱が移動し、具体的には低温側熱交換器46の熱が高温側熱交換器44へ汲み上げられるため、高温側熱交換器44において低温側熱交換器46よりも高い温度を有する熱エネルギーを出力することができる。この熱エネルギーは排気管66及びそこを流れる排ガスの加熱に用いられる。
【0041】
以上、本開示に係る基本構成例、実施形態及びその変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、熱音響用配管16に設けられるコア部22の数は1つであったが、複数であってもよい。また、第2変換部20のコア部47の数も、1つでも複数でもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、熱処理炉60は黒鉛化炉(又は炭化炉)であったが、本開示の技術は黒鉛化炉、炭化炉以外の熱処理炉にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 音波発生装置
12 熱音響機関
14 第1変換部
16 熱音響用配管
18 接続配管
20 第2変換部
22 コア部
24 蓄熱器
26 高温側熱交換器
28 低温側熱交換器
30 固体伝熱部材
34 取付部
36 伝熱仕切部材
40 環状配管
42 蓄熱器
44 高温側熱交換器
46 低温側熱交換器
47 コア部
48 固体伝熱部材
54 伝熱仕切部材
60 熱処理炉
【要約】
【課題】熱音響機関に関して、ガスを直接取り出すことなく、熱を取り出して、音波を発生させ、それによりエネルギーを発生させることを可能にする構成を提供する。
【解決手段】本開示の第1態様の熱音響機関12は、熱から音波を発生させるように構成された第1変換部14と、前記第1変換部14に接続配管を介して接続され、エネルギーを発生させるように構成された第2変換部とを備える。前記第1変換部14は、第1配管に配置された第1蓄熱器24と、第1高温側熱交換器26と、第1低温側熱交換器28と、前記第1高温側熱交換器から延出するように設けられる第1固体伝熱部材30とを備える。前記第2変換部20は、第2配管に配置された第2蓄熱器42と、第2高温側熱交換器44と、第2低温側熱交換器46と、前記第2高温側熱交換器から延出するように設けられる第2固体伝熱部材48とを備える。
【選択図】
図1