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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】NFT処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20240219BHJP
   G06Q 20/36 20120101ALI20240219BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
G06Q20/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023128826
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2023-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316001065
【氏名又は名称】クチュールデジタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 修史
(72)【発明者】
【氏名】今尾 公二
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-075873(JP,A)
【文献】特開2023-098204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0271915(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0143854(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236143(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2544012(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を処理する方法であって、
コンピュータが、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に関連付けられている創作データを利用してなされた新たな創作データを関連付けるとともに、前記少なくとも1つのNFTの識別子を保持させた新たなNFTを発行することを、少なくとも1回行うことにより、
創作データが関連付けられた複数のNFTの間に、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とし、上位のNFTから下位のNFTを特定することを可能にするNFTの2層以上の階層構造を形成し、
前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを除く各NFTには、関連付けられた創作データの利用料又は利用料率が保持されており、
コンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記各NFTに保持された前記利用料又は利用料率に従って利用料を、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、前記各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に支払うことを更に含むNFT処理方法
【請求項2】
NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を処理する方法であって、
コンピュータが、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に関連付けられている創作データを利用してなされた新たな創作データを関連付けるとともに、前記少なくとも1つのNFTの識別子を保持させた新たなNFTを発行することを、少なくとも1回行うことにより、
創作データが関連付けられた複数のNFTの間に、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とし、上位のNFTから下位のNFTを特定することを可能にするNFTの2層以上の階層構造を形成し、
前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを除く各NFTには、関連付けられた創作データの利用料又は利用料率が保持されており、
コンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTを発行するのに際して、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記各NFTに保持された前記利用料又は利用料率に従って利用料を、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に支払う利用料支払プログラムを、スマートコントラクトとして、前記複数のNFTが記録されるブロックチェーンに実装することと、
コンピュータが、前記利用料支払プログラムを実行する命令を、前記ブロックチェーンに送ることにより、前記スマートコントラクトに、前記利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、前記各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に、前記利用料を支払わせることと、を更に含むNFT処理方法
【請求項3】
NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を処理する方法であって、
コンピュータが、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に関連付けられている創作データを利用してなされた新たな創作データを関連付けるとともに、前記少なくとも1つのNFTの識別子を保持させた新たなNFTを発行することを、少なくとも1回行うことにより、
創作データが関連付けられた複数のNFTの間に、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とし、上位のNFTから下位のNFTを特定することを可能にするNFTの2層以上の階層構造を形成し、
製造業者が管理するコンピュータが、前記製造業者のウォレットに、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを受け取ったときに、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた創作データを、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することを、さらに含むNFT処理方法
【請求項4】
前記製造業者が管理するコンピュータは、前記製造業者のウォレットに、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを受け取ったときに、前記最上位の階層に属するNFTが、特定の者のウォレットから発行されたものである場合に限り、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた創作データを、前記製品の製造に供する、請求項に記載のNFT処理方法。
【請求項5】
前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを発行するコンピュータは、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられる創作データの少なくとも一部を、前記製造業者の前記ウォレットの秘密鍵に対応する公開鍵により暗号化することを、更に含む請求項に記載のNFT処理方法
【請求項6】
前記新たなNFTを発行するコンピュータは、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に保持され、各NFTに関連付けられた創作データの利用の可否を表す利用可否情報を参照し、利用不可が表示されていないFTについてのみ、その識別子を保持させ、かつ前記新たなNFTに関連付けられた創作データの利用の可否を表す利用可否情報を保持させて、前記新たなNFTを発行し、
前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することは、
前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに保持される利用可否情報を取得し、取得した利用可否情報が利用不可を表示していない場合に限り、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供すること、を含む、請求項に記載のNFT処理方法。
【請求項7】
前記新たなNFTを発行するコンピュータは、既に発行されている前記少なくとも1つのNFTの各々の所有者により、当該NFTに関連付けられた創作データの利用許可またはその条件を、当該所有者の秘密鍵により暗号化した暗号化データを、保持させて前記新たなNFTを発行し、
前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することは、
前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記複数のNFTのいずれかが含む前記暗号化データを前記秘密鍵に対応する公開鍵により復号化することと、
前記製造業者が管理するコンピュータが、復号化により得られた前記創作データの利用許可またはその条件に適合する範囲内で、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することと、を含む、請求項に記載のNFT処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アート作品、動画コンテンツ、服飾デザインなどの創作データの唯一性、真正性(改ざんされていないこと)を保証しつつ、それらの流通を図る手段として、NFTが利用されている(非特許文献1参照)。創作データの購入者は、創作データが関連付けられた(すなわち、紐付けられた)NFTを、代価を支払って購入する。NFTの移転等に伴い、自動で代価を支払うことを可能にする「スマートコントラクト」の利用も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6804073号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】森川ミユキ著「NFTビジネス超入門」株式会社技術評論社 2022年4月26日発行(ISBN978-4-297-12717-6 C0036)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創作データには、原作の翻案のように、別の創作データを利用して新たに創作される場合がある。例えば、本願出願人の業務が属する服飾の分野では、白服データ、柄データなど、素材となる創作データが幾重にも積み上げられることにより、最終的な製品である被服の創作データが完成する。このように互いに利用・被利用の関係にある創作データに個別に関連付けられた複数のNFTに、利用・被利用の関係にあることを記録することができるならば、それらの創作データを一括して取り扱うことが容易となり、例えば、利用する創作データの創作者だけでなく、利用される創作データの創作者にも代価を支払うことが容易となるであろうし、それにより創作者のモチベーションを強化し、創作活動を盛り上げるのにも役立つであろう、と本願発明者は思い至った。なお、特許文献1には、借入と貸付とを管理するための方法として、第1のNFTの識別情報を第2のNFTが有する形態が記載されている。
【0006】
本発明は本願発明者の上記考察に基づいてなされたもので、利用・被利用の関係にある創作データを一括して取り扱うことを容易にするNFT処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、NFT(ノン・ファンジブル・トークン;非代替性トークン)を処理する方法であって、コンピュータが、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に関連付けられている創作データを利用してなされた新たな創作データを関連付けるとともに、前記少なくとも1つのNFTの識別子を保持させた新たなNFTを発行することを、少なくとも1回行うことにより、創作データが関連付けられた複数のNFTの間に、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とし、上位のNFTから下位のNFTを特定することを可能にするNFTの2層以上の階層構造を形成する。
【0008】
この構成によれば、最上位のNFTから階層を順に辿ることにより、利用・被利用の関係にある創作データを辿ることができる。それにより、例えば、利用する創作データだけでなく利用される創作データにも、利用料(ロイヤルティ)の支払いが可能となるなど、利用・被利用の関係にある創作データを一括して取り扱うことが容易となる。「創作データ」は、創作物のデータであり、例えば、被服・装飾品・建築物・構造物の内装・建築物の外装のデザインデータを含む。「創作データの利用」とは、利用する創作データの全体又は一部として、利用される創作データの全体又は一部を、そのまま又は改変して取り込むことを意味する。「NFTに識別子を保持させる」ことは、識別子をNFT自身に記録することに限らず、識別子をオフチェーンのデータとしてNFTに関連付けることをも含む。なお、新たなNFTを発行することを複数回行う場合に、実行するコンピュータは互いに異なっていてもよい。
【0009】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様によるNFT処理方法であって、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを除く各NFTには、関連付けられた創作データの利用料又は利用料率が保持されている。そして、当該NFT処理方法は、コンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記各NFTに保持された前記利用料又は利用料率に従って利用料を、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、前記各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に支払うことを更に含んでいる。
【0010】
この構成によれば、階層構造をなす複数のNFTに関連付けられた一群の創作データを利用する者は、互いに利用・被利用の関係にある創作データのうち、利用される創作データが関連付けられた各NFTの所有者にも、利用料をもれなく支払うことができる。なお、利用料の支払を行うコンピュータと、新たなNFTを発行することを1回以上行うコンピュータとは、互いに異なっていてもよい。また、本構成は、最上位の階層に属するNFTをも含めた複数のNFTの所有者のウォレット又は預金口座に、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、利用料を支払う形態を排除するものではない。利用料を支払う対象に、最上位の階層に属するNFTを除く各NFTの所有者が含まれておれば足りる主旨である。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1の態様によるNFT処理方法であって、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを除く各NFTには、関連付けられた創作データの利用料又は利用料率が保持されている。そして、当該NFT処理方法は、コンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTを発行するのに際して、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記各NFTに保持された前記利用料又は利用料率に従って利用料を、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に支払う利用料支払プログラムを、スマートコントラクトとして、前記複数のNFTが記録されるブロックチェーンに実装することを更に含んでいる。加えて、当該NFT処理方法は、コンピュータが、前記利用料支払プログラムを実行する命令を、前記ブロックチェーンに送ることにより、前記スマートコントラクトに、前記利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、前記各NFTの所有者のウォレット又は預金口座に、前記利用料を支払わせることをも含んでいる。
【0012】
この構成によれば、階層構造をなす複数のNFTに関連付けられた一群の創作データを利用する者は、例えば、利用料支払プログラムを実行させるトランザクションをブロックチェーンに向けて発行することにより、互いに利用・被利用の関係にある創作データのうち、利用される創作データが関連付けられた各NFTの所有者にも、利用料をもれなく支払うことができる。なお、利用料の支払を行うコンピュータと、新たなNFTを発行することを1回以上行うコンピュータとは、互いに異なっていてもよい。また、本構成は、最上位の階層に属するNFTをも含めた複数のNFTの所有者のウォレット又は預金口座に、利用料を支払う者のウォレット又は預金口座から、利用料を支払う形態を排除するものではない。利用料を支払う対象に、最上位の階層に属するNFTを除く各NFTの所有者が含まれておれば足りる主旨である。
【0013】
本発明のうち第4の態様によるものは、第1から第3のいずれかの態様によるNFT処理方法であって、製造業者が管理するコンピュータが、前記製造業者のウォレットに、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを受け取ったときに、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた創作データを、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することを、さらに含んでいる。
【0014】
この構成によれば、最上位の階層に属するNFTの所有者は、自身のNFTを製造業者のウォレットに移動させることにより、製品の製造を製造業者に行わせることができる。製造業者は、自身のウォレットに格納された最上位のNFTに関連付けられた創作データに基づいて製品を製造するので、改ざんのおそれの無い創作データに基づいて、製品を製造することができる。製造を行わせたNFTの所有者は、誤りの無い製品を手にすることができる。
【0015】
本発明のうち第5の態様によるものは、第4の態様によるNFT処理方法であって、前記製造業者が管理するコンピュータは、前記製造業者のウォレットに、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを受け取ったときに、前記最上位の階層に属するNFTが、特定の者のウォレットから発行されたものである場合に限り、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた創作データを、前記製品の製造に供する。
【0016】
この構成によれば、製造業者は、自己のウォレットに受け取った最上位の階層に属するNFTが、製造業者にとって協力関係にあって信頼できる特定の者のウォレットから発行された信頼できるNFTである場合に限って、創作データを製品の製造に供することができる。それにより、信頼を欠く者からの依頼に基づく製造を回避することができる。
【0017】
本発明のうち第6の態様によるものは、第4又は第5の態様によるNFT処理方法であって、前記複数のNFTのうち最上位の階層に属するNFTを発行するコンピュータは、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられる創作データの少なくとも一部を、前記製造業者の前記ウォレットの秘密鍵に対応する公開鍵により暗号化することを、更に含んでいる。
【0018】
この構成によれば、最上位の階層に属するNFTに関連付けられた創作データの少なくとも重要な部分が、このNFTが格納されたウォレットの所有者である製造業者以外の者によって製品の製造に供されることを、防止することができる。
【0019】
本発明のうち第7の態様によるものは、第4から第6のいずれかの態様によるNFT処理方法であって、前記新たなNFTを発行するコンピュータは、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に保持され、各NFTに関連付けられた創作データの利用の可否を表す利用可否情報を参照し、利用不可が表示されていないNFTについてのみ、その識別子を保持させ、かつ前記新たなNFTに関連付けられた創作データの利用の可否を表す利用可否情報を保持させて、前記新たなNFTを発行する。さらに、前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することは、前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに保持される利用可否情報を取得し、取得した利用可否情報が利用不可を表示していない場合に限り、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供すること、を含んでいる。
【0020】
この構成によれば、製造業者は、NFTに利用不可の意思表示がなされている素材データ又は製品データを使って製品を製造することを回避することができる。
【0021】
本発明のうち第8の態様によるものは、第4から第6のいずれかの態様によるNFT処理方法であって、前記新たなNFTを発行するコンピュータは、既に発行されている前記少なくとも1つのNFTの各々の所有者により、当該NFTに関連付けられた創作データの利用許可またはその条件を、当該所有者の秘密鍵により暗号化した暗号化データを、保持させて前記新たなNFTを発行する。また、前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することは、前記製造業者が管理するコンピュータが、前記最上位の階層に属するNFTから、前記複数のNFTを前記識別子に基づいて順に辿ることにより、前記複数のNFTのいずれかが含む前記暗号化データを前記秘密鍵に対応する公開鍵により復号化することと、前記製造業者が管理するコンピュータが、復号化により得られた前記創作データの利用許可またはその条件に適合する範囲内で、前記最上位の階層に属するNFTに関連付けられた前記創作データに基づく製品の製造に供することと、を含んでいる。
【0022】
この構成によれば、製造業者は、受け取った複数のNFTのいずれかが暗号化データを含んでいる場合に、暗号化データが表現する創作データの利用許可またはその条件に適合しない形態で、誤って製品の製造に進むことを回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、利用・被利用の関係にある創作データを一括して取り扱うことを容易にするNFT処理方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態によるNFT処理方法を実現するシステムの構成を例示するブロック図である。
図2】NFTの周知のデータ構造を例示するブロック図である。
図3図1のシステムにより実現されるNFTの階層構造の例を示すブロック図である。
図4図1のシステムによる処理手順のうち、素材データ制作・製品データ制作の事前準備の手順を例示するシーケンス図である。
図5図1のシステムによる処理手順のうち、素材データ制作の手順を例示するシーケンス図である。
図6図5の処理手順のうち、素材データ利用の可否をチェックする手順を例示するシーケンス図である。
図7図1のシステムによる処理手順のうち、製品データ制作の手順を例示するシーケンス図である。
図8図1のシステムによる処理手順のうち、製品発注から製品製造までの手順を例示するシーケンス図である。
図9図8の処理手順のうち、利用料算出の手順を例示するシーケンス図である。
図10図1のシステムによる処理手順のうち、信頼に欠く者による製品発注があった場合の処理の手順を例示するシーケンス図である。
図11】本発明の別の実施の形態によるNFT処理方法における素材NFTの内容を例示する概略説明図である。
図12】スマートコントラクトを実行することにより、利用料算出及び利用料分配を遂行する処理手順を例示するシーケンス図である。
図13】本発明の更に別の実施の形態によるNFT処理方法における利用料算出の手順を例示するシーケンス図である。
図14】本発明の更に別の実施の形態によるNFT処理方法において、スマートコントラクトを実行することにより、利用料算出及び利用料分配を遂行する処理手順を例示するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態によるNFT処理方法を実現するシステムの構成を例示するブロック図である。このNFT処理システム101は、服飾の分野での使用を一例として、白服データ、柄データなど、素材となる創作データ(「素材データ」と仮称する)の制作と、それらを利用した最終的な製品である被服の創作データ(「製品データ」と仮称する)の制作とを支援するとともに、それらの創作データが制作される過程で、各創作データに対応するNFTを発行し、更に、発行されたNFTを用いて、被服の製造、制作者への利用料の分配等を行う。
【0026】
この機能を実現するために、NFT処理システム101の構成要素には、制作支援サーバ1、素材データ制作者端末3、製品データ制作者端末5、製品発注者端末7、ブロックチェーン9、分散ストレージ11、NFT管理サーバ13、及び工場端末15が含まれる。これらの構成要素1,3,5,7,9,11,13,15は、いずれも、CPU(中央演算処理装置)、記憶媒体、入出力装置、通信ユニット等を含むコンピュータ装置を有しており、インターネット等のネットワーク17を通じて、相互に接続される。
【0027】
制作支援サーバ1は、素材データ及び製品データの制作を支援する制作支援業者が提供するサーバである。素材データ制作者端末3は、素材データを制作する者(「素材データ制作者」と称する)が使用する端末である。製品データ制作者端末5は、製品データを制作する者(「製品データ制作者」と称する)が使用する端末である。製品発注者端末7は、製品である被服の製造を発注する者(「製品発注者」と称する)が使用する端末である。ブロックチェーン9は、発生順に並ぶブロックのデータ構造を生成し続け、イーサリアム(Ethereum)等のプラットフォームを提供するマイナーノードの集合体である。ブロックチェーン9に記録されるデータには改ざんが無いことが、ブロックチェーン9の仕組みにより保証される。
【0028】
分散ストレージ11は、ブロックチェーン9とは異なり、ブロックが連鎖したデータ構造は生成しないが、同様にP2Pネットワーク等により相互接続され、データファイルを保存する複数のノードの集合体である。図1には、あたかも、ブロックチェーン9及び分散ストレージ11においては、ネットワーク17とは別途のネットワークにより、ノード集合体が相互接続されているかのように描かれるが、ノード集合体を相互接続するP2Pネットワーク等も、一例として、インターネットなどのネットワーク17の一部である。
【0029】
NFT管理サーバ13は、NFTの発行・移動など、NFTに対する処理を、素材データ制作者等のユーザに代わって行うNFT管理業者が提供するサーバであり、既存のNFTマーケットプレイス(NFT取引所)はその一例である。工場端末15は、製品である被服の製造の発注を受け、代価と引き換えに被服を製造する業者が管理する端末である。
【0030】
構成要素1,3,5,7,9,11,13,15の機能の詳細については、図4以下のシーケンス図を参照しつつ後述する。
【0031】
図2は、NFTの周知のデータ構造を例示するブロック図である。図示例は、イーサリアムを実現するブロックチェーン9が取り扱い可能なERC-721(Ethereum Request for Comments 721)に準拠したNFTのデータ構造を、簡略化して示している。図示例のNFT20には、トークンID21,所有者アドレス23、メタデータアドレス25等のデータが記録される。トークンID21は、NFT20に固有の(唯一無二の)識別子である。トークンID21により、NFT20の唯一無二性が保証される。所有者アドレス23は、NFT20の所有者のブロックチェーン9上でのアドレス(「アカウント」と称される)である。所有者のウォレットが持つ秘密鍵から公開鍵が生成され、公開鍵から所有者アドレス23が生成される。
【0032】
メタデータアドレス25は、ブロックチェーン9の外部(「オフチェーン」と称される)、例えば分散ストレージ11に置かれるメタデータ27のウェブ上のアドレスである。メタデータ27にはデータアドレス29等が記録される。データアドレス29は、同じく分散ストレージ11等に置かれる画像、テキスト等のデータ30のウェブ上のアドレスである。素材データ、製品データ等の創作データは、データ30としてオフチェーンに置きつつ、メタデータ27を介してNFT20に関連付ける(すなわち紐付ける)ことができる。
【0033】
図3は、NFT処理システム101により実現されるNFTの階層構造の例を示すブロック図である。図示例のように、NFT処理システム101は、様々な素材データが個別に関連付けられるNFT(「素材NFT」と仮称する)及び製品データが関連付けられるNFT(「製品NFT」と仮称する)の間に、階層構造を形成する。
【0034】
一例として、白服(柄の無い被服)の素材データ31と柄Bの素材データ41とを利用することにより、テンプレートの素材データ35が制作される。テンプレートの素材データ35は、白服に様々な柄を配置するときの柄の大きさ・位置などの条件を定めた素材データであり、他の素材データと同様に創作データの一種である。テンプレートの素材データ35が関連付けられる素材NFTであるテンプレートNFT37には、白服の素材データ31が関連付けられる素材NFTである白服NFT33のトークンID21(図2参照)、及び柄Bの素材データ41が関連付けられる素材NFT49のトークンID21が記録される。
【0035】
テンプレートの素材データ35に、例えば柄Aの素材データ39を組み合わせることにより、製品データ43が制作される。製品データ43が関連付けられるNFTである製品NFT45には、テンプレートNFT37のトークンID21のほかに、柄Aの素材データ39が関連付けられる素材NFT47のトークンID21が記録される。
【0036】
このように、創作データを利用して新たな創作データが制作されるときに、利用する創作データが関連付けられるNFTには、利用される創作データが関連付けられるNFTのトークンID21が記録される。それにより、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とする、NFTの2層以上の階層構造が形成される。記録されたトークンID21を手がかりに、最上位のNFTから階層を順に辿ることができ、利用・被利用の関係にある創作データを全て拾い上げることができる。それにより、例えば、利用する創作データだけでなく利用される創作データに対しても、利用料(ロイヤルティ)の支払いが可能となるなど、利用・被利用の関係にある創作データを一括して取り扱うことが容易となる。
【0037】
なお、上位のNFTに下位NFTのトークンID21が記録される代わりに、上位のNFTのメタデータ27又はデータ30として記録されるなど、上位のNFTに関連付けられてもよい。この場合でも同様に、NFTの階層構造が形成される。
【0038】
図4は、NFT処理システム101による処理手順のうち、素材データ制作・製品データ制作の事前準備の手順を例示するシーケンス図である。素材データ又は製品データの制作者(まとめて「制作者」と略記する)は、自身の素材データ制作者端末3又は製品データ制作者端末5(まとめて、制作者端末3,5と略記する)を使用して、まず、制作支援サーバ1にアプリケーションを要求する(S1)。要求するアプリケーションは、制作支援サーバ1により提供され、制作支援業者のウォレット51の使用を可能にするウォレットアプリケーションである。制作支援サーバ1は要求を受けると、ウォレットアプリケーションを制作者端末3,5に送信する(S2)。制作者は、制作者端末3,5に、受信したアプリケーションをインストールする(S3)。
【0039】
次に、制作者は、制作者端末3,5に、インストールしたアプリケーションを起動させる(S4)。次に制作者は、アプリケーション上において、制作者登録画面を選択する(S5)。次に制作者は、制作者登録画面上において、制作者登録データを入力する。制作者登録データには、例えば、制作者の住所、氏名、メールアドレスが含まれる。入力された制作者登録データは制作支援サーバ1に送信される(S6)。制作支援サーバ1は、受信した制作者登録データをデータベースに登録する(S7)。制作者は、登録が完了するとアプリケーションを終了させる(S8)。以上により、事前準備は終了する。
【0040】
図5は、NFT処理システム101による処理手順のうち、素材データ制作の手順を例示するシーケンス図である。例示する手順では、素材データ制作者が、素材データ制作者端末3を使って素材データを制作する。素材データ制作者は、まず、素材データ制作者端末3にアプリケーションを起動させる(S11)。起動するアプリケーションは、インストール済みのウォレットアプリケーションである(図4のS3参照)。以下に述べる素材データ制作者端末3による処理(S12からS28まで)は、アプリケーション上で行われる。
【0041】
次に素材データ制作者は、アプリケーション上においてログイン画面を選択する(S12)。素材データ制作者が、登録済みのユーザ識別子、パスワード等を入力すると、ログイン要求が制作支援サーバ1へ送られる(S13)。入力されたデータが正当であれば、制作支援サーバ1は、ログインを承認する(S14)。これにより、素材データ制作者は、アプリケーション上において、素材データの制作のための作業を進めることが可能となる。
【0042】
ログインが成功するとアプリケーションは、既存の素材データを利用するのか否かについての選択を、素材データ制作者に求める(S15)。素材データ制作者は、既存の素材データの利用を選択すると(S15においてYes)、既存の素材データを閲覧することができる(S16)。閲覧は、既存の素材データの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し、それに応答してNFT管理サーバ13から素材データが返送されることにより、可能となる(S17)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、分散ストレージ11にアクセスし、既存の素材データを探索し取得する(S18)。
【0043】
図示例では、既存の素材データはそれぞれ、素材NFTに関連付けられており、素材NFTはブロックチェーン9に記録されているものとしている。アプリケーションが送信する閲覧要求として、初めに既存の素材データのリストについての閲覧要求を送信し、リストが返送され、素材データ制作者がリストの中から所望の素材データを選択すると、選択された素材データについての閲覧要求を、アプリケーションが送信しても良い。
【0044】
次に、素材データ制作者は、閲覧請求に基づき返送された既存の素材データについて、利用の可否をチェックする(S19)。閲覧要求された既存の素材データが複数あれば、それぞれについて利用可否チェックが行われる。利用可否のチェックは、アプリケーションが、素材データが関連付けられる素材NFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し、それに応答してNFT管理サーバ13から、素材NFTの内容が返送されることにより、可能となる(S20)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象である素材NFTの内容を探索し取得する(S21)。
【0045】
アプリケーションは、返送された素材NFTに記録される利用可否データを読み取り、利用の可否を、例えば自動で判断し、その結果を素材データ制作者端末3の画面に表示する。利用可否データは、既存の素材データを制作した素材データ制作者が、素材NFTを発行するときに記録したものである。新たな素材データを制作する素材データ制作者は、画面の表示を目視することにより、閲覧する既存の素材データが、利用可能であるか否かを認識することができる。あるいは、素材データ制作者は、素材NFTに記録される内容を画面上において直接目視することにより、利用の可否を自身で判断してもよい。
【0046】
素材データ制作者は、次に、新たな素材データを制作する(S22)。このとき、素材データ制作者は、閲覧した既存の素材データのうち、利用可能な素材データから1以上の素材データを選び、それらを利用しつつ新たな素材データを制作することができる。素材データ制作者は、ステップS15において、既存の素材データの利用を選択しない場合には(S15においてNo)、ステップS22において、既存の素材データを利用することなく、新たな素材データを制作する。制作された新たな素材データは、NFT管理サーバ13を通じて分散ストレージ11にストアされる(S23)。
【0047】
素材データ制作者は、制作した素材データの公開可否、利用可否を、自己の希望に応じて設定することができる(S24)。設定は、例えば、アプリケーションが設定のフォームを画面に表示し、素材データ制作者が所望する選択肢を選択することにより行われる。次に、素材データ制作者は、制作した新たな素材データが関連付けられる素材NFTを発行する(S25)。例えば、素材データ制作者が、画面上のNFT発行ボタンをクリックするなどにより、NFT発行を指示すると、アプリケーションは、既に分散ストレージ11にストアされた素材データを関連付けた形態で、素材NFTの発行を求める要求をNFT管理サーバ13に送信する(S26)。
【0048】
アプリケーションは、制作された素材データが既存の素材データを利用している場合には、利用している素材データが関連付けられている素材NFTのトークンID21を記録した形態で、素材NFTを発行するように要求する。また、アプリケーションは、ステップS24において公開可否、利用可否が設定されている場合には、これらの可否情報を記録した形態で、素材NFTを発行するように要求する。
【0049】
発行要求は、制作支援サーバ1を経由し、制作支援サーバ1のウォレット51を用いて行われる。NFT管理サーバ13は、発行要求に応じて、ブロックチェーン9にNFT発行のためのトランザクションを送る(S27)。その結果、ブロックチェーン9においてNFT発行が記録される(S28)。素材NFTの発行は、制作支援サーバ1のウォレット51を用いて行われるので、発行された素材NFTは、ウォレット51に属する。すなわち、発行された素材NFTは、制作支援サーバ1の管理者の所有となる。
【0050】
【表1】
【0051】
表1は、ステップS25において発行された素材NFTに記録される内容を例示している。例示する内容には、素材NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)、所有者識別子(所有者アドレス23)、素材データ識別子(メタデータアドレス25又はデータアドレス29)のほかに、公開可否情報、利用可否情報、利用料率(利用料比率)又は利用料(利用料の金額)、下位の素材NFTの固有識別子(1)、下位の素材NFTの固有識別子(2)が含まれている。素材NFTに公開可否情報、利用可否情報を含めるか否かは任意である。例示では、自身の一層下の下位素材NFTが2つ存在する場合を想定している。例示するように、素材NFTには、素材NFTを利用する者に利用料(ロイヤルティ)の支払を求めることを明記することができる。利用料比率・金額は、ステップS24において、利用可否情報などと併せて設定することができる。
【0052】
素材データ制作者は、次に、発行した素材NFTを制作者自身のウォレットに移動させる(S29)。すなわち制作支援サーバ1の管理者の所有である素材NFTを、素材データ制作者自身の所有に移す。この処理は、素材データ制作者の操作に基づきアプリケーションが、NFT移動要求をNFT管理サーバ13に送信することにより行われる(S30)。移動要求に応じてNFT管理サーバ13は、NFTを移動させるトランザクションをブロックチェーン9に送る(S31)。その結果、ブロックチェーン9において、該当するNFTの移動が記録される(S32)。
【0053】
素材データ制作者は、以上の処理が終了すると、アプリケーションをログオフする(S33)。これにより、図5に例示する処理手順は終了する。
【0054】
図6は、図5の処理手順のうち、ステップS19の詳細な手順を例示するシーケンス図である。既に述べたように、閲覧要求された既存の素材データが複数あれば、各々についてステップS19の利用可否チェックが行われる。ステップS19の処理が始まると(S40)、既存の素材NFTの閲覧要求が、アプリケーションによってなされる(S41)。すなわちアプリケーションは、既存の素材データが関連付けられる素材NFTの閲覧要求を、NFT管理サーバ13に送信する(S42)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求(S42)に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象である素材NFTの内容を探索し(S43)、取得し(S44)、素材データ制作者端末3に返送する(S45)。
【0055】
アプリケーションは、返送された素材NFTに記録される利用可否データを読み取り、利用の可否を、例えば自動で判断する。ステップS46において利用可能と判断されると(S46において可)、アプリケーションは、閲覧した素材NFTの下位の素材NFTが存在するか否かを、閲覧した素材NFTに下位のトークンID21が記録されているか否かに基づいて判断する(S47)。下位の素材NFTが存在すれば(S47においてYes)、下位の素材NFTの閲覧要求が、アプリケーションによってなされる(S48)。すなわち、処理は、ステップS42に戻り、下位の素材NFTについて、ステップS42~S45の処理が行われる。次に再びステップS46の処理が行われる。
【0056】
ステップS46において、利用不可と判断されると(S46において否)、ステップS19における利用可否判断の対象である素材データ、言い換えると、ステップS41において閲覧請求した素材NFTに関連付けられている素材データは、アプリケーションにより、利用不可と判断され(S50)、ステップS19の処理は終了する(S51)。ステップS47において、下位の素材NFTが存在しなければ(S47においてNo)、ステップS19における利用可否判断の対象である素材データは、アプリケーションにより、利用可能と判断され(S49)、同じくステップS19の処理は終了する(S51)。ステップS49、S50において、アプリケーションは、判断結果を素材データ制作者端末3の画面に表示する。素材データ制作者は、画面の表示を目視することにより、閲覧する既存の素材データが、利用可能であるか否かを認識することができる。
【0057】
図7は、NFT処理システム101による処理手順のうち、製品データ制作の手順を例示するシーケンス図である。図示例の手順では、製品データ制作者が、製品データ制作者端末5を使って製品データを制作する。以下に述べる製品データ制作者端末5による処理(S12からS59まで)は、アプリケーション上で行われる。また図7において、図5に例示した素材データ制作者端末3による処理と同等の処理については、同一の符号を付して、その詳細な説明を略する。
【0058】
製品データ制作者は、まず、製品データ制作者端末5にアプリケーションを起動させる(S11)。起動するアプリケーションは、図5の手順と同じく、インストール済みのウォレットアプリケーションである(図4のS3参照)。次に製品データ制作者は、アプリケーション上においてログイン画面を選択し(S12)、ログインを行う。ログインに成功すると、製品データ制作者は、製品データへの利用を意図して、既存の素材データを閲覧する(S16)。次に、製品データ制作者は、閲覧した素材データについて、利用の可否をチェックする(S19)。ステップS19の利用可否のチェックは、一例として図6の手順により行われる。チェックすべき素材データが複数あれば、それぞれについて、図6の手順に沿った利用可否チェックが行われる。
【0059】
製品データ制作者は、次に、製品データを制作する(S52)。このとき、製品データ制作者は、閲覧した既存の素材データのうち、利用可能な素材データから1以上の素材データを選び、それらを利用しつつ製品データを制作することができる。制作された製品データは、NFT管理サーバ13を通じて分散ストレージ11にストアされる(S53)。
【0060】
製品データ制作者は、制作した製品データの公開可否、利用可否、個数限定の有無、限定する場合の個数を、自己の希望に応じて設定することができる(S54)。設定は、例えば、アプリケーションが設定のフォームを画面に表示し、製品データ制作者が所望する選択肢を選択することにより行われる。次に、製品データ制作者は、制作した製品データが関連付けられる製品NFTを発行する(S55)。例えば、製品データ制作者が、画面上のNFT発行ボタンをクリックするなどにより、NFT発行を指示すると、アプリケーションは、既に分散ストレージ11にストアされた製品データを関連付けた形態で、製品NFTの発行要求をNFT管理サーバ13に送信する(S56)。
【0061】
アプリケーションは、制作された製品データが既存の素材データを利用していることから、利用している素材データが関連付けられている素材NFTのトークンID21を記録した形態で、製品NFTを発行するように要求する。また、アプリケーションは、ステップS54において公開可否、利用可否等の条件が設定されている場合には、これらの条件を記録した形態で、製品NFTを発行するように要求する。
【0062】
発行要求は、制作支援サーバ1を経由し、制作支援サーバ1のウォレット51を用いて行われる。NFT管理サーバ13は、発行要求に応じて、ブロックチェーン9にNFT発行のためのトランザクションを送る(S57)。その結果、ブロックチェーン9においてNFT発行が記録される(S58)。製品NFTの発行は、制作支援サーバ1のウォレット51を用いて行われるので、発行された製品NFTは、ウォレット51に属する。すなわち、発行された製品NFTは、制作支援サーバ1の管理者の所有となる。
【0063】
【表2】
【0064】
表2は、ステップS55において発行された製品NFTに記録される内容を例示している。例示する内容には、表1に例示した素材NFTの内容と同様に、製品NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)、所有者識別子(所有者アドレス23)、製品データ識別子(メタデータアドレス25又はデータアドレス29)、公開可否情報、利用可否情報、利用料率(利用料比率)又は利用料(利用料の金額)、下位の素材NFTの固有識別子(1)、下位の素材NFTの固有識別子(2)が含まれるほか、製造個数限定情報又は製造個数非限定情報が含まれる。製品NFTに公開可否情報、利用可否情報を含めるか否かは任意である。
【0065】
例示では、製品NFT自身の一層下の下位素材NFTが2つ存在する場合を想定している。製造個数限定情報は、製品NFTに関連付けられた製品データに基づいて製造される製品の個数を、何個に限定するかを表している。製造個数非限定情報は、製造される製品の個数を限定しないことを表している。利用料比率・金額は、ステップS54において、利用可否情報などと併せて設定することができる。
【0066】
製品データ制作者は、次に、発行した製品NFTを制作者自身のウォレットに移動させる(S59)。すなわち制作支援サーバ1の管理者の所有である製品NFTを、製品データ制作者自身の所有に移す。この処理は、製品データ制作者の操作に基づきアプリケーションが、NFT移動要求をNFT管理サーバ13に送信することにより行われる(S60)。移動要求に応じてNFT管理サーバ13は、NFTを移動させるトランザクションをブロックチェーンに送る(S61)。その結果、ブロックチェーン9において、該当するNFTの移動が記録される(S62)。
【0067】
製品データ制作者は、以上の処理が終了すると、アプリケーションをログオフする(S63)。これにより、図7に例示する処理手順は終了する。
【0068】
図8は、NFT処理システム101による処理手順のうち、製品発注から製品製造までの手順を例示するシーケンス図である。例示する手順では、製品発注者が製品発注者端末7を使って、製品の製造を工場端末15に発注する。製品発注者は、まず、製品発注者端末7にアプリケーションを起動させる(S70)。起動するアプリケーションは、製品発注者のウォレット53を使用できるウォレットアプリケーションである。以下に述べる製品発注者端末7による処理(S71から「アプリ終了」まで)は、このアプリケーション上で行われる。
【0069】
次に、製品発注者は製品データを閲覧する(S71)。閲覧は、製品発注者の指示によりアプリケーションが、製品データの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し、それに応答してNFT管理サーバ13から製品データが返送されることにより、可能となる(S72)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、分散ストレージ11にアクセスし、製品データを探索し取得する(S73)。
【0070】
図示例では、図7に例示した手順に従い、製品データはそれぞれ、製品NFTに関連付けられており、製品NFTはブロックチェーン9に記録されている。アプリケーションが送信する閲覧要求として、初めに製品データのリストについての閲覧要求を送信し、リストが返送され、製品発注者がリストの中から所望の製品データを選択すると、選択された製品データについての閲覧要求を、アプリケーションが送信しても良い。
【0071】
次に、製品発注者は、閲覧請求に基づき返送された製品データの中から、所望の製品データを選択する(S74)。次に、製品発注者は、選択した製品データが関連付けられる製品NFTを購入する(S75)。製品発注者は、一例として、購入に際して必要な代価を仮想通貨により支払う。製品NFTの購入は、アプリケーションが、NFT移転要求を仮想通貨の移転要求とともに、NFT管理サーバ13へ送信し(S76)、それに応じてNFT管理サーバ13が、ブロックチェーン9に所定のトランザクションを送ること(S77)により行われる。
【0072】
トランザクションの結果、製品NFTが元の所有者のウォレットから製品発注者のウォレット53に移転し、製品発注者が支払う所定額の仮想通貨が、製品発注者のウォレット53から製品NFTの元の所有者のウォレットに移転する。ブロックチェーン9には、これらの移転の事実が記録される(S78)。製品発注者が、購入に先立って、製品NFTの価格を知ることを可能にするためには、例えば、製品発注者が購入を希望する製品NFTの閲覧要求を、アプリケーションがNFT管理サーバ13に送り、NFT管理サーバ13から製品NFTの内容が返送されるようにしても良い。
【0073】
次に、製品発注者は、発注メッセージを工場端末15に送信する(S79)。発注メッセージの送信は、電子メールその他の情報交換プラットフォームを使用してもよく、NFTの発行により行ってもよい。工場端末15は、送信された発注メッセージを受信する(S80)。
【0074】
【表3】
【0075】
表3は、発注メッセージの内容を例示している。例示する内容には、発注メッセージであること、発注者連絡先(例えば、製品発注者のブロックチェーン9上のアドレス)、製品NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)が含まれる。
【0076】
次に、製品発注者は、工場端末15を管理する製造業者のウォレット55に製品NFTを移動させる(S81)。すなわち、製品発注者の所有である製品NFTを、製造業者の所有に移す。この処理は、製品発注者の操作に基づきアプリケーションが、NFT移動要求をNFT管理サーバ13に送信することにより行われる(S82)。移動要求に応じてNFT管理サーバ13は、NFTを移動させるトランザクションをブロックチェーンに送る(S83)。その結果、ブロックチェーン9において、該当するNFTの移動が記録される(S34)。
【0077】
工場端末15は、発注メッセージを受信すると(S80)、製品NFTの移動(S84)がなされるまで、移動の確認がなされたか否かのチェック(S85)を繰り返す(S85においてNo)。移動確認のチェック(S85)は、工場端末15が、製品NFTの所有者情報の閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S86)、NFT管理サーバ13が、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象である製品NFTの所有者情報を探索し取得し(S87)、工場端末15に返送する(S88)ことにより、可能となる。
【0078】
工場端末15は、製品NFTの移動を確認すると(S85においてYes)、製品NFTが所定の条件を満たしているか否かを判定する(S89)。所定の条件は、例えば、製品NFTが制作支援サーバ1由来であること、公開可能であること、利用可能であることなどである。この処理は、工場端末15が、製品NFTの所有者情報等の閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S90)、NFT管理サーバ13が、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象である製品NFTの所有者情報等を探索し取得し(S91)、工場端末15に返送する(S92)ことにより、可能となる。工場端末15は、一例として、ステップS89の判定を自動で行う。「製品NFTが制作支援サーバ1由来である」とは、製品NFTが制作支援業者のウォレットから発行されたことを意味する。
【0079】
工場端末15は、製品NFTが所定の条件を満たしていると判定すると(S89においてOK)、受注メッセージを製品発注者端末7に送信する(S93)。
【0080】
【表4】
【0081】
表4は、受注メッセージの内容を例示している。例示する内容には、受注メッセージであること、製品NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)が含まれる。
【0082】
工場端末15は、その後、製品製造の代金の請求を製品発注者端末7に送信する(S94)。一方、工場端末15は、製品NFTが所定の条件を満たしていないと判定すると(S89においてNG)、受注拒否メッセージを製品発注者端末7に送信する(S95)。
【0083】
【表5】
【0084】
表5は、受注拒否メッセージの内容を例示している。例示する内容には、受注拒否メッセージであること、製品NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)のほか、拒否理由が含まれる。拒否理由は、例えばステップ89の判定において、どの条件が満たされていないかを表示すれば足りるので、受注拒否メッセージも、工場端末15が自動で作成し、送信することができる。
【0085】
製品発注者端末7は、製品NFTを製造業者のウォレット55に移した(S81)後に,受注メッセージ又は受注拒否メッセージのいずれかが受信されるまで、受注メッセージ受信のチェック(S96)及び受注拒否メッセージ受信のチェック(S97)を反復する(S96、S97においてNo)。製品発注者端末7は、受注メッセージを受信すると(S96においてYes)、代金請求を受信するまで、代金請求受信のチェック(S98)を反復する(S98においてNo)。
【0086】
製品発注者端末7は、代金請求を受信すると(S98においてYes)、製品発注者の指示に基づいて、代金を製造業者に送金する(S99)。製品発注者は、一例として、代価を仮想通貨により支払う。代価の支払いは、アプリケーションが、仮想通貨の移転要求をNFT管理サーバ13へ送信し(S121)、それに応じてNFT管理サーバ13が、ブロックチェーン9に所定のトランザクションを送ること(S122)により行われる。トランザクションの結果、製品発注者が支払う所定額の仮想通貨が、製品発注者のウォレット53から製造業者のウォレット55に移転する。ブロックチェーン9には、この移転の事実が記録される(S123)。
【0087】
工場端末15は、代金請求の送信(S94)の後、製品発注者からの入金があるまで、入金のチェック(S124)を繰り返す(S124においてNo)。入金のチェックは、工場端末15が、入金確認要求をNFT管理サーバ13に送信し(S125)、NFT管理サーバ13が、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、代替性トークンである仮想通貨の移動履歴を探索して取得し(S126)、工場端末15に返送することにより可能となる。
【0088】
工場端末15は、入金を確認すると(S124においてYes)、製品データ、素材データの利用料を算出する(S127)。利用料は、製品NFTに記録される利用料に関するデータ、製品NFTの下位に属する素材NFTに記録される利用料に関するデータに基づいて算出される。工場端末15は、これらNFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し、それに応答してNFT管理サーバ13から、NFTの内容が返送されることにより(S128)、利用料の算出が可能となる。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象であるNFTの内容を探索することにより、NFTの内容を取得する(S129)。利用料算出の処理(S127)の詳細については、後述する。
【0089】
工場端末15は、利用料を算出すると(S127),利用料を各NFTの所有者に分配する(S130)。利用料の分配は、一例として仮想通貨によって行われる。工場端末15が、例えば、仮想通貨の移転要求をNFT管理サーバ13へ送信し(S131)、それに応じてNFT管理サーバ13が、ブロックチェーン9に所定のトランザクションを送ること(S132)により行われる。トランザクションの結果、製品発注者のウォレット53から製造業者のウォレット55に支払われた製品代価のうちの所定額の仮想通貨が、製造業者のウォレット55から各NFTの所有者のウォレットに移転する。ブロックチェーン9には、この移転の事実が記録される(S133)。
【0090】
工場端末15は、次に、製品NFTに個数制限が記録されているか否かを判定する(S134)。この判定は、例えば、ステップS89において取得された製品NFTの内容を参照することにより、することができる。工場端末15は、製品NFTに個数制限が無いと判定すると(S134において「無し」)、製品NFTを製品発注者のウォレット53に返却する(S135)。この処理は、工場端末15が、NFT移動要求をNFT管理サーバ13に送信することにより行われる(S136)。移動要求に応じてNFT管理サーバ13は、NFTを移動させるトランザクションをブロックチェーンに送る(S137)。その結果、ブロックチェーン9において、該当するNFTの移動が記録される(S138)。
【0091】
その後、工場端末15は、製品NFTに関連付けられている製品データを製造ラインに転送することにより、製品データに基づく製品の製造を可能にする(S139)。その後、製品発注者端末7からの製品発注に関する工場端末15の処理は終了する。
【0092】
工場端末15は、ステップS134において、個数制限が有ると判定すると(S134において「有り」)、製品NFTをバーンさせる(消滅させる)よう要求する(S140)。要求はNFT管理サーバ13に送られ(S141)、NFT管理サーバ13は、要求に応じて、NFTをバーンさせるトランザクションをブロックチェーン9に送る(S142)。その結果、製品NFTはバーンされる(S138)。ステップS138では、トランザクションの内容に応じて、製品NFTの移動、バーンのいずれかが行われる。このように個数制限は、制限された個数の製品NFTが発行され、それぞれの製品NFTが製品製造時にバーンされることにより、達成される。工場端末15は、バーン要求(S140)の後、処理をステップ139に移し、製品データを製造ラインに転送する。
【0093】
工場端末15は、ステップS95において受注拒否メッセージを製品発注者端末7に送信した後、ステップS135と同様に、製品NFTを製品発注者のウォレット53に返却する(S143)。その後、製品発注者端末7からの製品発注に関する工場端末15の処理は終了する。
【0094】
製品発注者端末7のアプリケーションは、送金(S99)が終了すると、製品NFTに個数制限が記録されているか否かを判定する(S144)。この処理は、例えば、工場端末15がステップS89において行ったように、製品発注者端末7のアプリケーションがNFT管理サーバ13に製品NFTの内容の閲覧要求を送ることにより、行うことができる(図示略)。
【0095】
アプリケーションが、個数制限無しと判定すると(S144において「無し」)、工場端末15からの製品NFTの返却を確認する(S145)まで、確認のチェック(S146)を反復する(S146においてNo)。この処理(S145)は、アプリケーションが、製品NFTの所有者情報の閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S151)、NFT管理サーバ13が、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、要求の対象である製品NFTの所有者情報を探索して取得し(S152)、工場端末15に返送する(S153)ことにより、可能となる。
【0096】
アプリケーションが製品NFTの返却を確認すると(S146においてYes)、製品発注者はアプリケーションを終了させる(S147)。アプリケーションが、ステップS144の判定において、個数制限有りと判定すると(S144において「有り」)、製品NFTの返却はあり得ないことから、製品発注者はアプリケーションを終了させる(S147)。アプリケーションが、受注拒否メッセージを受信した場合には(S97においてYes)、アプリケーションは、処理をステップ145に移す。
【0097】
図9は、図8の処理手順のうち、利用料算出の手順(S127)を例示するシーケンス図である。工場端末15は、ステップS127のデータ利用料算出処理を開始すると(S160)、売上高から原資額を決定する(S161)。売上高は、製品データを用いて製造した製品の販売によって得られることが想定される収入の額であり、例えば販売価格である。原資額は、例えば売上高の10%に定められる。
【0098】
次に工場端末15は、製品NFTに記録される利用料に関するデータを取得する(S162)。この処理のために、工場端末15は、製品NFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S163)、それに応答してNFT管理サーバ13から、製品NFTの内容が返送される(S164)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、製品NFTの内容を探索することにより(S165)、製品NFTの内容を取得する(S166)。
【0099】
次に工場端末15は、例えば、製品NFTに記録される利用料率(表2:「利用料比率」参照)に基づいて、利用料を決定する(S167)。この場合、利用料は次の数式(1)に従って算出される。
【0100】
(利用料)=(原資額)x(利用料率)・・・数式(1)
【0101】
次に工場端末15は、一層下位の素材NFTに関連付けられる素材データの利用料の計算の元となる原資額に改めるように、現在の原資額を更新する(S168)。更新された原資額は、ステップS161において決定された原資額から、ステップ167において決定された利用料を差し引いた額に相当する。次に工場端末15は、製品NFTの一層下位の素材NFTがあるか否かを判定する(S169)。この判定は、例えば、ステップ162において取得された製品NFTの内容に、素材NFT識別子(表2参照)が記録されているか否かに応じて行うことができる。
【0102】
工場端末15は、製品NFTの一層下位の素材NFTがあると判定すると(S169において「有り」)、素材NFTに記録される利用料に関するデータを取得する(S170)。この処理のために、工場端末15は、素材NFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S171)、それに応答してNFT管理サーバ13から、素材NFTの内容が返送される(S172)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、製品NFTの内容を探索することにより(S173)、素材NFTの内容を取得する(S174)。
【0103】
次に工場端末15は、例えば、素材NFTに記録される利用料率(表1:「利用料比率」参照)に基づいて、利用料を決定する(S175)。この場合、利用料は上記の数式(1)に従って算出される。ステップ170~S175の処理は、同一層の素材NFTが複数有る場合には、それぞれの素材NFTについて行われる。ステップ175の処理が終了すると、工場端末15は、現在の原資額を、更に一層下位の素材NFTに関連付けられる素材データの利用料の計算の元となる原資額に更新する(S176)。更新された原資額は、ステップS168において更新された原資額から、ステップ175において決定された利用料(但し、同一層の素材NFTが複数個あった場合には、各決定額の和)を差し引いた額に相当する。
【0104】
その後、工場端末15は、処理をステップS169に戻し、さらに一層下位の素材NFTが有るか否かを判定する。工場端末15は、ステップ169の判定において、下位の素材NFTがもはや無いと判定すると(S169において「無し」)、ステップS127のデータ利用料算出処理を終了する(S177)。
【0105】
図8の利用料分配処理(S130)において、利用料は、製品NFTの所有者には分配せず、素材NFTの所有者にのみ分配してもよい。この場合には、図9に例示した処理手順において、ステップS162~S168の処理を省くことができる。製品NFTの所有者への利用料の分配は、製品NFTの所有者であった製品発注者から製造業者が受け取った代価(S124)から一部を、製造業者自身に還元することと同等であることから、省いてもよい。また、算出された利用料(S127)の総額が、最初に設定した原資額(図9;S161)に対して少額となることにより、原資額に余りが生じた場合には、余りの額は、例えば製造業者に還元される。
【0106】
図10は、NFT処理システム101による処理手順のうち、信頼に欠く者による製品発注があった場合の処理の手順を例示するシーケンス図である。図10に例示する処理手順は、図8に例示した処理手順において、製品発注者端末7によるステップS71,S74,S75の処理が、ステップS181,S184,S187の処理に置き換えられ、それに伴い、ブロックチェーン9によるステップS78の処理が、ステップS190の処理に置き換えられている。
【0107】
製品発注者は、まず、製品発注者端末7にアプリケーションを起動させる(S70)。図8の処理手順と同様に、起動するアプリケーションは、製品発注者のウォレット53を使用できるウォレットアプリケーションである。次に、製品発注者は素材データを閲覧する(S181)。閲覧は、アプリケーションが、素材データの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し、それに応答してNFT管理サーバ13から素材データが返送されることにより、可能となる(S182)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、分散ストレージ11にアクセスし、素材データを探索し、取得する(S183)。アプリケーションが送信する閲覧要求として、初めに素材データのリストについての閲覧要求を送信し、リストが返送され、製品発注者がリストの中から所望の製品データを選択すると、選択された製品データについての閲覧要求を、アプリケーションが送信しても良い。閲覧要求する製品データは複数であっても良い。
【0108】
次に、製品発注者は、閲覧請求に基づき返送された素材データの中から、1以上の所望の素材データを選択し、選択した製品データを利用しつつ、製品データを制作する(S184)。制作された製品データは、NFT管理サーバ13を通じて分散ストレージ11にストアされる(S185)。
【0109】
次に、製品データ制作者は、制作した製品データが関連付けられる製品NFTを発行する(S187)。例えば、製品データ制作者が、画面上のNFT発行ボタンをクリックするなどにより、NFT発行を指示すると、アプリケーションは、既に分散ストレージ11にストアされた製品データを関連付けた形態で、製品NFTの発行要求をNFT管理サーバ13に送信する(S188)。制作された製品データが既存の素材データを利用していることから、アプリケーションは、利用している素材データが関連付けられている素材NFTの識別子(トークンID21)を記録した形態で、製品NFTを発行するように要求する。
【0110】
発行要求は、製品発注者のウォレット53を用いて行われる。NFT管理サーバ13は、発行要求に応じて、ブロックチェーン9にNFT発行のためのトランザクションを送る(S189)。その結果、ブロックチェーン9においてNFT発行が記録される(S190)。製品NFTの発行は、製品発注者のウォレット53を用いて行われるので、発行された製品NFTは、ウォレット53に属する。すなわち、発行された製品NFTは、製品発注者の所有となる。以下の処理手順は、図8に例示した処理手順と同じである。
【0111】
図8の例とは異なり、ステップS81により製造業者のウォレット55に移された製品NFTは、制作支援サーバ1由来のものではない。その結果、工場端末15によるステップ89の判定の結果は、必ず「NG」となり、受注拒否メッセージが工場端末15から発注者端末7に送られることとなる(S95)。その後の処理は、図10に表される太線に沿って進行し、製造業者のウォレット55に移された製品NFTは、製品発注者のウォレット53に戻される(S143)。
【0112】
このように、製造業者のウォレット55に移された製品NFTが、製造業者にとって協力関係にあって信頼できる制作支援業者のウォレット51から発行されたNFTではない場合には、受注が拒否される。一方、図8のステップS75に例示したように、製品発注者が、制作支援業者のウォレット51から製品NFTを購入した場合、あるいは製品発注者が、図7のステップS55に例示するように、制作支援サーバ1が提供するアプリケーション上で製品NFTを発行した場合には、図8のステップS89において、製品NFTが制作支援サーバ1由来のものではない、という理由により受注が拒否されることはない。このようにして、信頼性有る者からの製造依頼のみが受け入れられ、信頼性を欠く者からの依頼に基づく製造が回避される。
【0113】
(別の実施の形態1)
図5に例示した処理手順では、ステップS25において新たに発行される素材NFTに関連付けられる素材データの利用可否情報が、ステップS24において設定された。これに対して、新たに発行される素材NFTに識別子が記録される一層下位の素材NFTの利用可否情報等の利用条件に関する情報を、新たに発行される素材NFTに記録しても良い。図11は、このような形態で新たに発行される素材NFTの内容を例示する概略説明図である。
【0114】
例示する内容には、素材NFTの固有識別子(図2に例示するトークンID21)、所有者識別子(所有者アドレス23)、素材データ識別子(メタデータアドレス25又はデータアドレス29)のほかに、下位の素材NFTに関連付けられた素材データの権利所有者(例えば、原作版権元)の氏名又は名称、当該素材データの利用目的の範囲を定める情報、利用を許可する期間を定める情報、公式ライセンス認証フレーズが含まれている。
【0115】
公式ライセンス認証フレーズには、新たに発行される素材NFTの内容(公式ライセンス認証フレーズ自身を除く)のハッシュ値のほか、例えば、下位の素材NFTに関連付けられた素材データの権利所有者(例えば、原作版権元)の識別子と名称が含まれる。公式ライセンス認証フレーズは、下位の素材NFTの所有者の秘密鍵により暗号化される。
【0116】
新たに発行される素材NFTに関連付けられる素材データを利用しようとする者は、下位の素材NFTの所有者の秘密鍵に対応する公開鍵により、新たに発行される素材NFTに記録された公式ライセンス認証フレーズを復号化し、新たに発行される素材NFTに記録された内容(公式ライセンス認証フレーズ自身を除く)をハッシュ化し、得られたハッシュ値が復号化された公式ライセンス認証フレーズに含まれるハッシュ値と一致することを確認することにより、新たに発行される素材NFTの内容の真正性の証明を得ることができる。
【0117】
例えば、図5に例示するステップS19の素材データ利用可否チェックにおいて、素材データ制作者端末3のアプリケーションは、素材NFTに含まれる公式ライセンス認証フレーズの復号化を実行することにより、下位の素材データの利用条件に関する情報の真正性を確認することができる。それにより、素材データ制作者は、下位の素材データを利用するか否かを決定することができる。
【0118】
図7に例示したステップS54においても、新たに発行される製品NFTについて、新たに発行される素材NFTと同様に、図11の例示と同様の内容を設定することができる。また、図7に例示するステップS19の素材データ利用可否チェックにおいても、製品データ制作者端末5のアプリケーションは、素材NFTに含まれる公式ライセンス認証フレーズの復号化を実行することにより、下位の素材データの利用条件に関する情報の真正性を確認することができる。それにより、製品データ制作者は、素材データを利用するか否かを決定することができる。
【0119】
さらに、図8に例示した処理手順のステップS89において、工場端末15は、製品NFTに含まれる公式ライセンス認証フレーズを復号化することにより、素材NFTに関連付けられた素材データの利用条件に関する情報の真正性を確認することができる。それにより、工場端末15は、製品製造依頼の受注または受注拒否を決定することができる。
【0120】
図5に例示するステップS19の素材データ利用可否チェックにおいて、利用不可と判定された素材データの利用を排除しないという処理手順を採ることも可能である。同様に、図7に例示するステップS19の素材データ利用可否チェックにおいても、利用不可と判定された素材データの利用を排除しないという処理手順を採ることが可能である。この場合には、工場端末15は、図8に例示するステップS89の利用可否等の確認において、図6に例示した手順に準じて、製品NFTから下位の素材NFTの順に辿り、いずれかのNFTに利用不可情報が無いか、あるいは、最も厳しい利用条件は何かを把握し、それに従って、製品製造依頼の受注または受注拒否を決定することができる。
【0121】
(別の実施の形態2)
図8に例示した処理手順では、利用料算出(S127)及び利用料分配(S130)の処理は、製品NFT又は素材NFTに記録される利用料または利用料率に基づいて、工場端末15によって行われた。これに対して、ブロックチェーン9が、例えばイーサリアム仕様である場合のように、スマートコントラクトの機能を提供するものである場合には、製品NFTを発行するのに伴って、各NFTに関連付けられた製品又は素材データの利用料を算出し、算出した利用料を各NFTの所有者に分配するプログラムを、スマートコントラクトとして、ブロックチェーン9に実装しておくことが可能である。
【0122】
この場合には、工場端末15は、スマートコントラクトを実行させるのみで、利用料算出(S127)及び利用料分配(S130)の処理を遂行することができる。スマートコントラクトを実行させるには、工場端末15は、例えば、NFT管理サーバ13に所定の要求を送ることにより、ブロックチェーン9にスマートコントラクトを実行させるためのトランザクションを、ブロックチェーン9に向けて発行させれば足りる。なお、スマートコントラクトは、各NFTに関連付けられて、分散ストレージ11に記憶されても良い。
【0123】
図12は、スマートコントラクトを実行することにより、利用料算出(S127)及び利用料分配(S130)を等価的に遂行する処理手順を例示するシーケンス図である。図示例では、まず、製造業者(工場端末15の管理者)のアカウント(ブロックチェーン9上のアドレス)61から、メッセージコール(イーサリアム上のトランザクション)と所定額の暗号資産(仮想通貨)が、ブロックチェーン9上の製品NFTのスマートコントラクト62に送られる(S301)。その結果、製造業者のウォレット55(図8参照)から製品NFTのスマートコントラクト62に、分配額の暗号資産が移転する。分配される暗号資産の額は、例えば、図9に例示したステップS161において決定される原資額に相当する。図8に例示したステップS131,S132のように、トランザクションはNFT管理サーバ13を通じてブロックチェーン9に向けて発行されても良いが、図12では簡素化のため、NFT管理サーバ13を介しない形態を例示する。
【0124】
製品NFTのスマートコントラクト62は、メッセージコールにより起動し、製品NFTの所有者のアカウント63に分配すべき利用料の分配額を計算する(S302)。スマートコントラクト62は、次に、計算した分配額の暗号資産を、スマートコントラクト62から製品NFTの所有者のアカウント63に分配する(S303)。すなわち、スマートコントラクト62から製品NFTの所有者のウォレットに、分配額の暗号資産が移転する。次に、スマートコントラクト62は、分配を受けた暗号資産(S301)の額から分配によって失った暗号資産(S303)の額を差し引いた額の暗号資産を、メッセージコールとともに最上位の素材NFTのスマートコントラクト64に送る(S304)。送られる差額は、例えば、図9に例示したステップS168において更新された後の原資額に相当する。
【0125】
最上位の素材NFTのスマートコントラクト64は、メッセージコールにより起動し、最上位素材NFTの所有者のアカウント65に分配すべき分配額を計算する(S305)。スマートコントラクト64は、次に、計算した分配額の暗号資産を、スマートコントラクト64から最上位素材NFTの所有者のアカウント65に分配する(S306)。すなわち、スマートコントラクト64から最上位素材NFTの所有者のウォレットに、分配額の暗号資産が移転する。次に、スマートコントラクト64は、分配を受けた暗号資産(S304)の額から分配によって失った暗号資産(S306)の額を差し引いた額の暗号資産を、メッセージコールとともに第2位の素材NFTのスマートコントラクトに送る(S307)。送られる差額は、例えば、図9に例示したステップS176において、最初に更新された後の原資額に相当する。以下同様にして、最下位の素材NFTの所有者のアカウント67にまで、暗号資産が分配される(S308)。
【0126】
(別の実施の形態3)
図13は、図8の処理手順のうち、利用料算出の手順(S127)の別の例を示すシーケンス図である。図示例の手順では、図9に例示した手順とは異なり、最上位の製品NFTから最下位の素材NFTに至る階層構造をなすNFTの各々に記録される利用料率を、全て把握した後に、利用率の総額が、当初に設定される原資額に一致するように、各NFT所有者に分配すべき利用料が定められる。具体的な手順は、以下の通りである。
【0127】
工場端末15は、ステップS127のデータ利用料算出処理を開始すると(S401)、売上高から原資額を決定する(S161)。次に工場端末15は、製品NFTに記録される利用料に関するデータを取得する(S162)。この処理のために、工場端末15は、製品NFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S163)、それに応答してNFT管理サーバ13から、製品NFTの内容が返送される(S164)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、製品NFTの内容を探索することにより(S165)、製品NFTの内容を取得する(S166)。これらのステップS161~S166の処理は、図9に例示した同一のステップS161~S166の処理と、同等である。
【0128】
次に工場端末15は、製品NFTの一層下位の素材NFTがあるか否かを判定する(S169)。この判定は、例えば、ステップ162において取得された製品NFTの内容に、素材NFT識別子(表2参照)が記録されているか否かに応じて行うことができる。工場端末15は、製品NFTの一層下位の素材NFTがあると判定すると(S169において「有り」)、素材NFTに記録される利用料に関するデータを取得する(S170)。この処理のために、工場端末15は、素材NFTの閲覧要求をNFT管理サーバ13に送信し(S171)、それに応答してNFT管理サーバ13から、素材NFTの内容が返送される(S172)。NFT管理サーバ13は、閲覧要求に基づき、ブロックチェーン9にアクセスし、製品NFTの内容を探索することにより(S173)、素材NFTの内容を取得する(S174)。これらのステップS169~S174の処理は、図9に例示した同一のステップS169~S174の処理と、同等である。
【0129】
その後、工場端末15は、処理をステップS169に戻し、さらに一層下位の素材NFTが有るか否かを判定する。工場端末15は、ステップ169の判定において、下位の素材NFTがもはや無いと判定すると(S169において「無し」)、取得した各NFTの利用料率の総和を算出する(S402)。次に工場端末15は、利用料の総和が、当初に定めた原資額(S161)に一致するように、かつ各NFTの利用料(すなわち利用料の額)が、対応するNFTの利用料率に比例するように、各NFTの利用料を決定する(S403)。この場合、利用料は次の数式(2)に従って算出される。
【0130】
(利用料)=(原資額)x(利用料率)/(利用料率の総和)・・・数式(2)
例えば、原資額が1万円であり、利用料率の総和が25%であり、あるNFTの利用料率が10%だとすると、このNFTの利用料は、次の計算式(3)により定められる。
(利用料)=1万円x10%/25%=4千円・・・数式(3)
工場端末15は、ステップS403の処理が終了すると、ステップS127のデータ利用料算出処理を終了する(S404)。
【0131】
図13に例示する処理によれば、算出された利用料(S127)の総額が、最初に設定した原資額(図9;S161)に対して少額となることも、超過することもなく、原資額に一致する。既に述べたように、図8の利用料分配処理(S130)において、利用料は、製品NFTの所有者には分配せず、素材NFTの所有者にのみ分配してもよい。この場合には、図13に例示した処理手順において、ステップS162~S166の処理を省くことができる。
【0132】
(別の実施の形態4)
図13に例示した利用料算出(S127)の処理、及び図8に例示した利用料分配(S130)の処理を、工場端末15によって行う代わりに、図12に例示した処理と同様に、ブロックチェーン9のスマートコントラクト機能により行うことも可能である。図14は、ブロックチェーン9にあらかじめ実装されるスマートコントラクトを実行することにより、図13に例示した利用料算出(S127)の処理、及び図8に例示した利用料分配(S130)の処理を、等価的に遂行する処理手順を例示するシーケンス図である。
【0133】
図示例では、まず、製造業者(工場端末15の管理者)のアカウント(ブロックチェーン9上のアドレス)61から、所定額の暗号資産(仮想通貨)が、ブロックチェーン9上の製造業者のスマートコントラクト60に送られる(S501)。その結果、製造業者のウォレット55(図8参照)から製造業者のスマートコントラクト60に、分配額の暗号資産が移転する。分配される暗号資産の額は、例えば、図13に例示したステップS161において決定される原資額に相当する。図8に例示したステップS131,S132のように、トランザクションはNFT管理サーバ13を通じてブロックチェーン9に向けて発行されても良いが、図14では図12と同様に、簡素化のため、NFT管理サーバ13を介しない形態を例示する。
【0134】
ステップS501と前後して、製品NFTのスマートコントラクト62は、製造業者のアカウント61からのメッセージコール(S502)により起動し、製品NFTに記録される利用料率を取得する(S503)。製品NFTのスマートコントラクト62は、取得した利用料率を、メッセージコール(S505)により製造業者のスマートコントラクト60に伝える。ステップS505と前後して、最上位の素材NFTのスマートコントラクト64は、製品NFTのスマートコントラクト62からのメッセージコール(S504)により起動し、最上位の素材NFTに記録される利用料率を取得する(S506)。最上位の素材NFTのスマートコントラクト64は、取得した利用料率を、メッセージコール(S508)により製造業者のスマートコントラクト60に伝える。最上位の素材NFTのスマートコントラクト64は、ステップS508と前後して、メッセージコール(S507)を第2位の素材NFTのスマートコントラクトに送る。
【0135】
以下同様にして、最下位の素材NFTのスマートコントラクト66は、一層上位の素材NFTのスマートコントラクトからのメッセージコールにより起動し、最下位の素材NFTに記録される利用料率を取得する(S509)。最下位の素材NFTのスマートコントラクト66は、取得した利用料率を、メッセージコール(S510)により製造業者のスマートコントラクト60に伝える。
【0136】
次に、製造業者のスマートコントラクト60は、分配額を計算する(S511)。一例として、分配額の計算(S511)は、図13に例示したステップS402及びS403に従って行われる。すなわち、製造業者のスマートコントラクト60に送られた各NFTの利用料率が集計され、数式(2)に従って、各NFTに分配すべき利用料が決定される。次に、製造業者のスマートコントラクト60は、決定した額の利用料を、各NFTの所有者アカウント63,65,67に暗号資産として分配する(S512,S513,S514)。すなわち、原資額の供給を受けた製造業者のスマートコントラクト60から各NFTの所有者のウォレットに、分配額の暗号資産が移転する。分配額の総額は原資額に一致する。
【0137】
(別の実施の形態5)
図7に例示する処理手順において、製品データ制作者端末5は、ステップS52により制作された製品データを、製造業者(工場端末15の管理者)のウォレット55の秘密鍵に対応する公開鍵によって暗号化した上で、分散ストレージ11にアップロードしてもよい(S53)。この場合、図8に例示する処理手順のうちステップS139において、工場端末15は、自己の秘密鍵によって製品データを復号化した上で、製造ラインに転送することができる。このような暗号化及び復号化の手順を採ることにより、製品データが製造業者(工場端末15の管理者)以外の者によって製品の製造に供されることを防止することができる。暗号化は、製品データの全てを対象としてもよく、秘密を要する部分のみを対象としても良い。
【0138】
(その他の実施の形態)
(1) 図8に例示した処理手順において、工場端末15は、製造発注者からの送金(S99)を受け、入金を確認した後に(S124においてYes)、制作支援業者(制作支援サーバ1の管理者)に、所定の額の報酬を支払ってもよい。例えば、利用料分配(S130)の処理において、製造業者のウォレット55から制作支援業者のウォレット51に、所定額の仮想通貨を移転させる処理を追加して実行してもよい。また、図8に例示した処理手順において、工場端末15は、利用料算出(S127)により利用料の総額を確定した後に代金請求(S94)を行うことにより、確定した利用料の総額を考慮した代金を、製品発注者に請求しても良い。
【0139】
(2) 以上に例示した実施の形態では、代金、利用料等の支払は、ブロックチェーン9を利用する上で利便性の高い暗号資産(仮想通貨)を、支払側のウォレットから受取側のウォレットに移転することによって行われる例を示した。これに対し、例えば、ネットワーク17に接続される決済サーバ(図示略)を通じて、支払側の銀行口座から受取側の銀行口座に法定通貨を移転することによって、代金、利用料等の支払が行われてもよい。
【0140】
(3) 以上に例示した実施の形態では、図12に例示した形態を除いて、NFTの発行、NFTの移転、NFTの内容の閲覧などのためのブロックチェーン9及び分散ストレージ11へのアクセスは、NFT管理サーバ13を通じて行われた。これに対し、図12に例示したように、NFT管理サーバ13を介在することなく、制作支援サーバ1、素材データ制作者端末3、製品データ制作者端末5、工場端末15から、ブロックチェーン9、分散ストレージ11に直接にアクセスがなされても良い。また、制作支援サーバ1が、素材データ制作者端末3、製品データ制作者端末5、工場端末15の登録ユーザに対して、NFT管理サーバ13の機能を果たしても良い。
【0141】
(4) 以上に例示した実施の形態では、製品の一例として被服を取り上げた。これに対して、製品は、被服に限られず、例えば、装飾品・建築物・構造物の内装・建築物などであっても良い。
【符号の説明】
【0142】
1 制作支援サーバ、 3 素材データ制作者端末、 5 製品データ制作者端末、 7 製品発注者端末、 9 ブロックチェーン、 11 分散ストレージ、 13 NFT管理サーバ、 15 工場端末、 17 ネットワーク、 20 NFT、 21 トークンID(固有識別子、NFT識別子)、 23 所有者アドレス(所有者アカウント、所有者識別子)、 25 メタデータアドレス、 27 メタデータ、 29 データアドレス、 30 データ、 31 白服の素材データ、 33 白服NFT、 35 テンプレートの素材データ、 37 テンプレートNFT、 39 柄Aの素材データ、 41 柄Bの素材データ、 43 被服(製品)データ、 45 被服(製品)NFT、 51、53、55 ウォレット、 60 製造業者のスマートコントラクト、 61 製造業者アカウント、 62 製品NFTのスマートコントラクト、 63 製品NFTの所有者アカウント、 64 最上位素材NFTのスマートコントラクト、 65 最上位素材NFTの所有者アカウント、 66 最下位素材NFTのスマートコントラクト、 67 最下位素材NFTの所有者アカウント、 101 NFT処理システム。
【要約】
【課題】 利用・被利用の関係にある創作データを一括して取り扱うことを容易にするNFT処理方法を提供する。
【解決手段】 本開示によるNFTを処理する方法は、コンピュータが、既に発行されている少なくとも1つのNFTの各々に関連付けられている創作データを利用してなされた新たな創作データを関連付けるとともに、前記少なくとも1つのNFTの識別子を保持させた新たなNFTを発行することを、少なくとも1回行うことにより、創作データが関連付けられた複数のNFTの間に、利用する創作データが関連付けられたNFTを上位とし、利用される創作データが関連付けられたNFTを下位とし、上位のNFTから下位のNFTを特定することを可能にするNFTの2層以上の階層構造を形成する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14