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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】受光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0232 20140101AFI20240219BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20240219BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H01L31/02 D
G02B5/10 A
H01L31/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023555825
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2022048201
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】磯村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008678(JP,A)
【文献】特開2017-103435(JP,A)
【文献】特表2009-528569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0232、31/10-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体基板の主面側にフォトダイオードが形成された半導体受光素子と、この半導体受光素子に向けて入射光を反射する凹面鏡を有する受光装置において、
前記凹面鏡は、入射光に対して透明な第2半導体基板の平坦な第1面と、この第1面に対向する第2面側に前記第1面と反対側に向かって凸状に形成された凸面と、この凸面に形成された反射膜を有し、且つ前記第1面側から入射する入射光を前記反射膜によって反射して前記第1面近傍の集光位置に集光し、
前記半導体受光素子は、前記集光位置に重なるように、前記第1半導体基板の前記主面に対向する裏面が、入射光に対して透明な接着樹脂を介して前記第2半導体基板の前記第1面に接着され、
前記接着樹脂は、前記凹面鏡で反射された光の反射を、光の干渉を利用して抑制する厚さに調整されたことを特徴とする受光装置。
【請求項2】
前記凹面鏡の前記凸面が放物面であることを特徴とする請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記凹面鏡の前記凸面が部分球面であることを特徴とする請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記第1半導体基板がInP基板であり、前記第2半導体基板がSi基板であることを特徴とする請求項1に記載の受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光信号を電気信号に変換して出力する半導体受光素子を有する光通信用の受光装置に関し、特に入射光を半導体受光素子に向けて集光するように反射する凹面鏡を備えた受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野では、通信量の急激な増加に対応するため、伝送速度を高速化する開発が行われている。光通信は、送信側から光ファイバケーブル等を介して光信号を送信し、受信側では半導体受光素子が受信した光信号を電気信号に変換している。
【0003】
受信側における伝送速度の高速化は、半導体受光素子の応答速度の高速化により実現される。そのためには、素子容量と素子抵抗で規定される応答速度の上限を向上させることが必要である。また、光ファイバケーブルを介さずにコリメートされた光を通信に利用する光衛星間通信及び光空間通信の分野においても、同様に高速化が要求されている。
【0004】
半導体受光素子の素子容量は、フォトダイオードの面積、即ち光を電気(電荷)に変換する光吸収層の直径が小さいほど小さくなる。例えば応答周波数帯域が5GHz程度の半導体受光素子を実現する場合、光吸収層の直径を100μm程度とすれば素子容量が十分小さくなる。
【0005】
一方、光吸収層の直径が小さくなるほどフォトダイオードの面積が小さくなるので、受光量が少なくなって感度が低下する。そのため、送信された光を集光して光吸収層に入射させることができる半導体受光素子が知られている。
【0006】
例えば特許文献1には、半導体基板の表面側が凸レンズ状に形成され、その中央にフォトダイオードが形成され、裏面側には平面鏡が形成された半導体受光素子が記載されている。この半導体受光素子は、凸レンズ状の表面側から入射するコリメート光を集光して平面鏡でフォトダイオードに向けて反射する。
【0007】
また、例えば特許文献2には、半導体基板の表面側にフォトダイオードが形成され、裏面側には凹面鏡が形成された半導体受光素子が記載されている。この半導体受光素子は、表面側から入射するコリメート光を凹面鏡でフォトダイオードに向けて集光するように反射する。
【0008】
特許文献1,2では、フォトダイオードよりも面積が大きい凸レンズ又は凹面鏡で受けた光を集光してフォトダイオードに入射させている。このとき、フォトダイオードが形成された半導体基板の厚さに相当する距離またはその往復する距離で光を集光するので、凸レンズの直径又は凹面鏡の直径は半導体基板の厚さによって制限され、200~400μm程度になっている。
【0009】
しかし、光衛星間通信及び光空間通信では、微弱な光信号でも通信可能にするために、また、送信側と受信側の位置関係が変化する場合でも光信号を受信して通信可能にするために、光を受ける面積(受光面積)を一層大きくすることが要求されている。そのため、例えば特許文献3のように、半導体受光素子と凹面鏡を組合わせることにより、特許文献1,2よりも凹面鏡とフォトダイオードの間の距離を大きくして、受光面積を大きくした受光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平5-136446号公報
【文献】国際公開第2019/150533号
【文献】特開2013-201368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3では、リードによって支持された半導体受光素子が、凹面鏡の焦点の近傍に配設されている。そして、半導体受光素子と凹面鏡の間には透明なエポキシ樹脂が充填され、半導体受光素子がエポキシ樹脂で保護されている。入射するコリメートされた光信号は、エポキシ樹脂を透過し、凹面鏡で半導体受光素子に向けて集光するように反射される。このとき、半導体受光素子に入射する光の一部は半導体受光素子の入射面で反射されるので、入射面にはフッ化マグネシウムで形成された光の干渉を利用する反射防止膜を備えていることが記載されている。
【0012】
しかし、半導体受光素子の屈折率と反射防止膜の屈折率の差は大きいが、反射防止膜の屈折率とエポキシ樹脂の屈折率の差は小さい。それ故、この反射防止膜による反射防止効果は限定的であり、半導体受光素子に入射する光の反射率が大きくなり、フォトダイオードに入射する光が減少する。また、リードによって凹面鏡に入射する光が遮られるので、フォトダイオードに入射する光が減少する。
【0013】
そこで、本発明は、フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができるように構成した半導体受光素子と凹面鏡を有する受光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明の受光装置は、第1半導体基板の主面側にフォトダイオードが形成された半導体受光素子と、この半導体受光素子に向けて入射光を反射する凹面鏡を有する受光装置において、前記凹面鏡は、入射光に対して透明な第2半導体基板の平坦な第1面と、この第1面に対向する第2面側に前記第1面と反対側に向かって凸状に形成された凸面と、この凸面に形成された反射膜を有し、且つ前記第1面側から入射する入射光を前記反射膜によって反射して前記第1面近傍の集光位置に集光し、前記半導体受光素子は、前記集光位置に重なるように、前記第1半導体基板の前記主面に対向する裏面が、入射光に対して透明な接着樹脂を介して前記第2半導体基板の前記第1面に接着され、前記接着樹脂は、前記凹面鏡で反射された光の反射を、光の干渉を利用して抑制する厚さに調整されたことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、受光装置は、第1半導体基板の主面側にフォトダイオードを備えた半導体受光素子が、入射光に対して透明な第2半導体基板によって形成された凹面鏡に、その集光位置に重なるように固定されて形成されている。凹面鏡は、第2半導体基板の平坦な第1面に対向する第2面側の凸面に形成された反射膜によって、第1面側から入射する入射光を反射して第1面近傍の集光位置に集光する。受光面積が大きい凹面鏡によって集光した光をフォトダイオードに入射させることができるので、高速応答のためにフォトダイオードの面積を小さくすることができる。そして、半導体受光素子が凹面鏡の第2半導体基板の第1面に固定されるので、半導体受光素子を凹面鏡の集光位置に容易に位置合わせすることができると共に、遮られる入射光を少なくして入射光の大部分を凹面鏡に入射させることができる。従って、フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【0016】
【0017】
その上、半導体受光素子は、入射光に対して透明な接着樹脂であって、凹面鏡で反射された光の反射を光の干渉を利用して抑制するように厚さが調整された接着樹脂を介して、第1半導体基板の主面に対向する裏面が第2半導体基板の第1面に接着されている。これにより、凹面鏡で反射されて半導体受光素子に入射する光が反射されないように、接着樹脂を光の干渉を利用する反射防止膜として機能させることができる。凹面鏡で反射されて第1半導体基板に入射する光の反射が接着樹脂によって低減されるので、フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【0018】
請求項の発明の受光装置は、請求項1の発明において、前記凹面鏡の前記凸面が放物面であることを特徴としている。
上記構成によれば、凹面鏡の凸面が放物面なので、この凸面に形成された反射膜によって、凹面鏡に入射する入射光として光通信で利用されるコリメート光を、放物面の焦点に相当する凹面鏡の集光位置に集光することができる。従って、凹面鏡で集光した光を半導体受光素子のフォトダイオードに入射させることができ、高速応答のために小さい面積に形成されたフォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【0019】
請求項の発明の受光装置は、請求項1の発明において、前記凹面鏡の前記凸面が部分球面であることを特徴としている。
上記構成によれば、凹面鏡の凸面が部分球面なので、この凸面に形成された反射膜によって、凹面鏡に入射する入射光として光通信で利用されるコリメート光を、部分球面の焦点に相当する凹面鏡の集光位置に集光することができる。従って、凹面鏡で集光した光を半導体受光素子のフォトダイオードに入射させることができ、高速応答のために小さい面積に形成されたフォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【0020】
請求項の発明の受光装置は、請求項の発明において、前記第1半導体基板がInP基板であり、前記第2半導体基板がSi基板であることを特徴としている。
上記構成によれば、小型の半導体受光素子をInP基板に形成し、受光面積が大きい凹面鏡をInP基板よりも安価なSi基板で形成して、受光装置の製造コストを低減することができる。その上、InP基板は光通信で利用される光に対して透明であり、入射光は半導体受光素子のフォトダイオードと電極以外の部分を透過して凹面鏡に入射するので、フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の受光装置によれば、フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係る受光装置の平面図である。
図2】放物面状の反射面による光の入射例を示す図1のII-II線断面図である。
図3】半導体受光素子を示す図2の要部拡大図である。
図4】部分球面状の反射面による光の入射例を示す断面図である。
図5】半導体受光素子と凹面鏡の固定態様の他の例を示す要部拡大図である。
図6】接着樹脂の厚さと半導体受光素子に入射する光の反射率の関係の計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0024】
図1図2に示すように、受光装置1は、半導体受光素子10と凹面鏡20を有する。半導体受光素子10は1対の電極11a,11bを有し、凹面鏡20は1対の出力端子部21a,21bを有する。そして、1対の電極11a,11bと対応する出力端子部21a,21bとが導電性ワイヤ2a,2bによって夫々接続されている。
【0025】
光通信で利用されるコリメートされた光信号である入射光Iは、凹面鏡20によって半導体受光素子10に向けて反射され、この反射光R1が半導体受光素子10に集光される。そして、反射光R1が半導体受光素子10に入射すると、光電変換により電流に変換されて出力端子部21a,21bを介して外部に出力される。電極11a,11bから対応する出力端子部21a,21bには、リードよりも細い導電性ワイヤ2a,2bによって接続されているので、凹面鏡20に入射する入射光Iのうち、遮られる光を少なくすることができる。入射光Iは、光通信用として一般に使用される波長が1300~1600nmの範囲の赤外光である。
【0026】
図3に示すように、半導体受光素子10は、第1半導体基板12の主面12a側に、第1半導体層13と光吸収層14と第2半導体層15が積層されて形成されたフォトダイオード16を備えている。そして、半導体受光素子10は、このフォトダイオード16の第1半導体層13に接続する電極11aと、第2半導体層15に接続する電極11bを有する。第1半導体基板12は例えばInP(リン化インジウム)基板であり、第1半導体層13は例えばn-InP層であり、光吸収層14は例えばInGaAs層であり、第2半導体層15は例えばp-InP層である。InP基板は、入射光Iに対して透明である。
【0027】
第1半導体基板12は、1辺の長さが例えば500μm、厚さが例えば150μmに形成されている。フォトダイオード16は、例えば光吸収層14の直径が100μmのメサ型のフォトダイオードであるが、プレーナ型であってもよい。第1半導体層13、光吸収層14、第2半導体層15は、通常1~10μmの範囲の厚さに夫々設定され、例えば夫々2μmの厚さで形成されている。第1半導体基板12の主面12aに対向する裏面12bは研磨され、第1半導体基板12の厚さが調整されていると共に裏面12bが平坦化されている。
【0028】
図2に示すように、凹面鏡20は、第2半導体基板22によって形成されている。第2半導体基板22は、平坦な第1面22aと、第1面22aに対向する第2面22bと、第2面22b側の一部を凹入させることによって第1面22aと反対側に向かって凸状に形成された凸面22cと、この凸面22cに形成された反射膜23と、凸面22cの周囲に脚部22dを有する。第2半導体基板22は例えば厚さが1mmのSi(シリコン)基板であり、凸面22cの直径Dは例えば2.3mmである。脚部22dは、不図示の例えばプリント回路基板、基台等に固定される。Si基板は、入射光Iに対して透明である。
【0029】
第2半導体基板22の第1面22aには、誘電体膜(例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜)を介して、半導体受光素子10の1対の電極11a,11bに対応する出力端子部21a,21bが形成されている。これら出力端子部21a,21bは、凸面22cと重ならないように、脚部22dに対応する部位に形成されている。
【0030】
反射膜23は、凸面22c側から順に、誘電体膜として例えばシリコン酸化膜と、電極11a,11b及び出力端子部21a,21bにも使用される金属材料である例えばCr(クロム)膜とAu(金)膜を積層して形成されている。反射膜23には、半導体素子に通常用いられている例えばTi(チタン)、Al(アルミニウム)のような金属材料を使用することもできる。
【0031】
凸面22cは放物面になっており、この凸面22cに反射膜23が形成されたことによって、凸面22cが第1面22a側に対して凹面状の反射面になっている。この凸面22cは、公知の方法により例えば放物面の形状となるように厚さが調整されたエッチングマスクを第2半導体基板22の第2面22bに形成し、反応性イオンエッチング法(RIE法)によって第2半導体基板22をエッチングすることにより形成される。放物面の形状に形成された砥石等で研磨することによって凸面22cが形成されてもよい。
【0032】
第2半導体基板22の厚さ及び放物面は、放物面の焦点が第2半導体基板22の第1面22aの近傍外側になるように夫々設定されている。ここでは第2半導体基板22の厚さが1mm、放物面の焦点距離が1mmに設定されている。そして、放物面の焦点が、第2半導体基板22の外側であって、第1面22aから例えば0.1mmだけ離隔した位置になるように、凸面22cが第2面22bから凹入された位置に形成されている。
【0033】
図2図3に示すように、凹面鏡20の集光位置F1に半導体受光素子10が重なるように、半導体受光素子10と凹面鏡20とが固定されている。このとき、半導体受光素子10は、フォトダイオード16の中心軸線Aを、凹面鏡20の凸面22c(放物面)の対称軸線に一致させて固定される。この固定には例えばエポキシ樹脂のような入射光Iに対して透明な接着樹脂3が使用され、第2半導体基板22の第1面22aに第1半導体基板12の裏面12bを密着させた状態で、半導体受光素子10と凹面鏡20とが固定される。
【0034】
凹面鏡20は、第1面22a側から凸面22cに入射する凸面22cの対称軸線に平行なコリメート光を、放物面の焦点に相当する焦点位置F1に向けて反射、集光することができる。フォトダイオード16の光吸収層14全体に光が入射するように、半導体受光素子10の第1半導体基板12が集光位置F1に重なることが好ましいが、フォトダイオード16が集光位置F1に重なってもよい。凸面22cの直径Dが大きいので、対称軸線に対する入射光Iの光軸の径方向のずれをある程度許容することができ、例えば光空間通信において送信側と受信側の位置関係が変化する場合に通信が途切れ難くなる。また、低強度のコリメート光が入射する場合でも、受光面積が大きい凹面鏡20で集光するので受光感度が向上する。
【0035】
接着樹脂3は、凹面鏡20の第2半導体基板22の第1面22aに密着させた半導体受光素子10の外周に沿って塗布され、この接着樹脂3の硬化によって半導体受光素子10と凹面鏡20とが固定される。第1半導体基板12の裏面12b及び第2半導体基板22の第1面22aは平坦なので、これら裏面12bと第1面22aを隙間がないように密着させることができる。
【0036】
ここで、一般的に光は、屈折率が異なる媒体に入射する際に、その界面で光の一部が反射され、界面において屈折率の差が大きいほど反射率が大きくなる傾向がある。空気の屈折率を1としたときに、第1半導体基板12の屈折率(InP基板の場合は3.2)と第2半導体基板22の屈折率(Si基板の場合は3.5)の差は、第1、第2半導体基板12,22の屈折率と空気の屈折率の差よりも小さい。また、第1半導体基板12の屈折率と第2半導体基板22の屈折率の差は、第1、第2半導体基板12,22の屈折率と接着樹脂3の屈折率(エポキシ樹脂の場合は通常1.5程度)の差よりも小さい。第1半導体基板12と第2半導体基板22の屈折率の差が小さいので、凹面鏡20の凹面状の反射面で反射された反射光R1が第2半導体基板22から第1半導体基板12に入射する際の反射を抑制することができる。
【0037】
図4に示すように、放物面の凸面22cの代わりに部分球面の凸面22eに反射膜23を形成して、凹面鏡20の凹面状の反射面を形成することもできる。第2半導体基板22の厚さと部分球面は、部分球面の焦点が第2半導体基板22の外側であって、第2半導体基板22の第1面22aの近傍になるように夫々設定されている。ここでは、第2半導体基板22の厚さが1.6mmに設定され、半径が3.4mmの球面の一部(部分球面)が凸面22eになっている。
【0038】
この部分球面(凸面22e)の焦点は、第2半導体基板22の外側であって、第1面22aから0.1mmだけ離隔した位置になる。この焦点に相当する凹面鏡20の集光位置F2に半導体受光素子10が重なるように、半導体受光素子10と凹面鏡20とが接着樹脂3によって固定されている。半導体受光素子10は、フォトダイオード16の中心軸線Aを凸面22eの対称軸線に一致させ、且つ第2半導体基板22の第1面22aに第1半導体基板12の裏面12bを密着させた状態で、凹面鏡20に固定される。
【0039】
凸面22eの対称軸線に平行な入射光Iが凹面状の反射面で反射された反射光R2は、集光位置F2に向けて集光されて半導体受光素子10に入射する。凸面22eの直径Dは例えば2.3mmであり、凸面22eの直径Dが大きいので、対称軸線に対する入射光Iの光軸の径方向のずれをある程度許容することができ、例えば光空間通信において送信側と受信側の位置関係が変化する場合に通信が途切れ難くなる。また、低強度のコリメート光が入射する場合でも、受光面積が大きい凹面鏡20で集光するので受光感度が向上する。
【0040】
図5に示すように、入射光Iに対して透明な接着樹脂3によって、凹面鏡20の第2半導体基板22の第1面22aと半導体受光素子10の第1半導体基板12の裏面12bとを接着することもできる。この場合には、接着樹脂3の厚さを、凹面状の反射面で反射された光が反射し難い厚さに調整する。
【0041】
図6に示すように、例えば屈折率が1.45である接着樹脂3の厚さに対して、第2半導体基板22から第1半導体基板12に入射する光の反射率が周期的に変動することが計算されている。接着樹脂3の厚さが0,540,1080,1620nmの場合に反射率が最低になるので、反射率が低くなる厚さ(例えば540nm)に調整した接着樹脂3によって半導体受光素子10と凹面鏡20とを接着して固定する。尚、反射膜23と半導体受光素子10の間がエポキシ樹脂で充填された場合の反射率は14.4%、空気の場合は27%と計算される。
【0042】
反射率が低くなる厚さに調整した接着樹脂3は、光の干渉を利用する反射防止膜として機能し、第2半導体基板22から第1半導体基板12に入射する際の反射を抑制することができる。それ故、凹面鏡20で反射した光の大部分を半導体受光素子10に入射させることができる。
【0043】
上記の受光装置1の作用、効果について説明する。
受光装置1は、第1半導体基板12の主面12a側にフォトダイオード16を備えた半導体受光素子10が、入射光Iに対して透明な第2半導体基板22によって形成された凹面鏡20に、その集光位置F1,F2に重なるように固定されて形成されている。凹面鏡20は、第2半導体基板22の平坦な第1面22aに対向する第2面22b側の凸面22c,22eに形成された反射膜23によって、第1面22a側から入射する入射光Iを反射して第1面22a近傍の集光位置F1,F2に集光する。
【0044】
受光面積が大きい凹面鏡20によって集光した反射光をフォトダイオード16に入射させることができるので、高速応答のためにフォトダイオード16の面積を小さくすることができる。そして、半導体受光素子10は、リードを使用せずに凹面鏡20の第2半導体基板22の第1面22aに固定されるので、凹面鏡20の集光位置F1,F2に容易に位置合わせすることができると共に、遮られる入射光Iを少なくして入射光Iの大部分を凹面鏡20に入射させることができる。従って、フォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0045】
半導体受光素子10と凹面鏡20は、入射光Iに対して透明な接着樹脂3によって、第1半導体基板12の裏面12bと第2半導体基板22の第1面22aとを密着させた状態に固定されている。第1半導体基板12と第2半導体基板22が密着しているので、凹面鏡20で反射された反射光R1,R2は、第1半導体基板12よりも屈折率が低い他の媒体を介さずに第2半導体基板22から第1半導体基板12に入射する。そして、第2半導体基板22から第1半導体基板12へ入射する際に屈折率の差が小さいので、第1半導体基板12に入射する光の反射が抑制され、反射防止膜がなくてもフォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0046】
入射光Iに対して透明な接着樹脂3であって、凹面鏡20で反射された反射光R1,R2が反射されないように厚さが調整された接着樹脂3によって、半導体受光素子10の第1半導体基板12の裏面12bと凹面鏡20の第2半導体基板22の第1面22aとが、接着されて固定されてもよい。接着樹脂3を反射防止膜として機能させることにより、凹面鏡20で反射されて第1半導体基板12に入射する光の反射が低減され、フォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0047】
凹面鏡20が放物面である凸面22cを有する場合には、凹面鏡20に入射する入射光Iとして光通信で利用されるコリメート光を、放物面の焦点に相当する凹面鏡20の集光位置F1に集光することができる。従って、受光面積が大きい凹面鏡20で受けて反射、集光した反射光R1をフォトダイオード16に入射させることができ、高速応答のために小さい面積に形成されたフォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0048】
凹面鏡20が部分球面である凸面22eを有する場合には、凹面鏡20に入射する入射光Iとして光通信で利用されるコリメート光を、部分球面の焦点に相当する凹面鏡20の集光位置F2に集光することができる。従って、受光面積が大きい凹面鏡20で受けて反射、集光した反射光R2をフォトダイオード16に入射させることができ、高速応答のために小さい面積に形成されたフォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0049】
第1半導体基板12はInP基板であり、第2半導体基板22はSi基板である。小型の半導体受光素子10をInP基板に形成し、受光面積が大きい凹面鏡20をInP基板よりも安価なSi基板で形成して、受光装置1の製造コストを低減することができる。また、InP基板の屈折率とSi基板の屈折率の差が小さいので、反射光R1,R2が半導体受光素子10に入射する際の反射を低減することができ、フォトダイオード16に入射する光の減少を抑えることができる。その上、InP基板は光通信で利用される光に対して透明であり、入射光Iは半導体受光素子10のフォトダイオード16と電極11a,11b以外の部分を透過して凹面鏡20に入射するので、フォトダイオード16に入射する光の減少を抑制することができる。
【0050】
第2半導体基板22の第1面22aには、半導体受光素子10を固定する領域以外に反反射防止膜が形成され、第1面22a側から入射する入射光Iの反射を低減するようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0051】
1 :受光装置
2a,2b:導電性ワイヤ
3 :接着樹脂
10 :半導体受光素子
11a,11b:電極
12 :第1半導体基板
12a:主面
12b:裏面
13 :第1半導体層
14 :光吸収層
15 :第2半導体層
16 :フォトダイオード
20 :凹面鏡
21a,21b:出力端子部
22 :第2半導体基板
22a:第1面
22b:第2面
22c,22e:凸面
22d:脚部
23 :反射膜
I :入射光
R1,R2:反射光
【要約】
【課題】フォトダイオードに入射する光の減少を抑制することができるように構成した半導体受光素子と凹面鏡を有する受光装置を提供すること。
【解決手段】第1半導体基板(12)の主面(12a)側にフォトダイオード(16)が形成された半導体受光素子(10)と、この半導体受光素子(10)に向けて入射光(I)を反射する凹面鏡(20)を有する受光装置(1)において、凹面鏡(20)は、入射光(I)に対して透明な第2半導体基板(22)の平坦な第1面(22a)と、この第1面(22a)に対向する第2面(22b)側に第1面(22a)と反対側に向かって凸状に形成された凸面(22c)と、この凸面(22c)に形成された反射膜(23)を有し、且つ第1面(22a)側から入射する入射光(I)を反射膜(23)によって反射して第1面(22a)近傍の集光位置(F1)に集光し、半導体受光素子(10)は、凹面鏡(20)の集光位置(F1)に重なるように第2半導体基板(22)の第1面(22a)に固定された。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図5
図6