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特許7438613ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置
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  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図1
  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図2
  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図3
  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図4
  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図5
  • 特許-ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ポリマー、前記ポリマーを含むフィルム、および前記フィルムを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/16 20060101AFI20240219BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240219BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240219BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08G73/16
G02B5/30
G02F1/13363
G02F1/1333 500
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019030511
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2019143141
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0021278
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】木内 敬二
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カリーニナ・ペドシア
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・アンドロソブ
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲ヒョン▼碩
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-131238(JP,A)
【文献】特開平01-139632(JP,A)
【文献】特開2015-215462(JP,A)
【文献】特開2013-174860(JP,A)
【文献】国際公開第01/032749(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0213739(US,A1)
【文献】特開平06-082794(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00 -73/26
G02B 5/30
G02F 1/13363
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1または下記化学式2で表されるポリマー:
【化1】

前記化学式1または化学式2で、
Arは、下記化学式4で表される基、あるいは、下記化学式4で表される基と、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基および下記化学式3で表される基の少なくとも一方との組み合わせであり、
【化2】

前記化学式3で、
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、またはこれらの組み合わせであり、
12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基、-OR201基(ここで、R201は、C1乃至C10脂肪族有機基)、または-SiR210211212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素またはC1乃至C10脂肪族有機基)基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0乃至3の整数のうちの一つである;
【化3】

前記化学式4で、
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC2乃至C30アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、またはこれらの組み合わせであり、
は、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基であり、
は、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至Cアリールアルキル基である)、または下記化学式5で表される基であり:
【化4】

前記化学式5で、
およびLは、それぞれ独立して、O、CO、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C30アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至3の整数であり;
kは、1乃至2の整数のうちの一つであり、
mは、0乃至3の整数のうちの一つであり、
nは、0乃至20の整数のうちの一つであり、
oおよびpは、それぞれ独立して、0乃至3の整数のうちの一つであり;
Arは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含み、前記置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基は、置換もしくは非置換の一つの芳香族環で存在するか;置換もしくは非置換の2以上の芳香族環が互いに接合されて縮合環を形成するか;または置換もしくは非置換の前記一つの芳香族環および/または2以上の芳香族環が接合された縮合環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC3乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基を含み;
は、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、C3乃至C20シクロアルキル基、C6乃至C20アリール基、またはこれらの組み合わせであり、
sは、1乃至30の整数のうちの一つであり;
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項2】
前記化学式3のR10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦3)、-(CF-(ここで、1≦q≦3)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで 1≦n≦10、1≦p≦3、および1≦q≦3)、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記化学式3のR10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)-、-C(CF-、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記化学式4のLは、Oであり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基であり、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ハロゲン基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であり、kは、1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1乃至3の整数のうちの一つである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記化学式4のLは、Oであり、Aは、置換もしくは非置換のC6芳香族有機基であり、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C20アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基、ハロゲン基、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C20アルキル基、C6乃至C20アリール基、またはC7乃至C20アリールアルキル基である)またはこれらの組み合わせであり、kは、1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記化学式5のLおよびLは、それぞれ独立して、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基であり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であり、qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至2の整数であって、1≦q+r≦2である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記化学式1または化学式2のArは、置換もしくは非置換の二つの芳香族環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC3乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基である、請求項1~4、6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記化学式1または化学式2のArは、置換もしくは非置換の二つの芳香族環が単結合により連結された基である、請求項1~4、6、7のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記Rは、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、フェニル基、またはこれらの組み合わせである、請求項1~4、6~8のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記化学式1または化学式2のArは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項11】
前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基を1:99乃至99:1のモル比で含む、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
前記化学式1または化学式2のArは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせを含み、
前記化学式3のR10は、単結合、-C(CF-、またはこれらの組み合わせを含み、
前記化学式4のLは、Oであり、Aは、ベンゼン環であり、Rは、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、C7乃至C30アリールアルキル基、-F、-Cl、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であり、kは、1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1乃至3の整数のうちの一つである、請求項1~4、6~9のいずれかに記載のポリマー。
【請求項13】
前記ポリマーは、下記化学式8で表される酸二無水物、あるいは、下記化学式8で表される酸二無水物と、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物および下記化学式7で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と、下記化学式9で表されるジアミン、および下記化学式10で表されるモノアミンの反応生成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー:
【化5】

前記化学式7で、
10、R12、R13、n7およびn8は、それぞれ化学式3に対して定義したとおりであり、
【化6】

前記化学式8で、
、R、R、A、L、k、m、n、o、およびpは、それぞれ化学式4に対して定義したとおりであり、
[化学式9]
NH-Ar-NH
前記化学式9で、
Arは、化学式1および化学式2に対して定義したとおりであり、
[化学式10]
NH-(CH-R
前記化学式10で、
およびsは、それぞれ化学式1および化学式2に対して定義したとおりであり、ただし、R10、R12、R13、n7およびn8;R、R、R、A、L、k、m、n、o、およびp;Ar;ならびにRおよびsの定義は、従属する先の請求項によって決定される。
【請求項14】
前記ポリマーは、前記化学式8で表される酸二無水物、あるいは、前記化学式8で表される酸二無水物と、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物および前記化学式7で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と、前記化学式9で表されるジアミンを1:0.8乃至0.95のモル比で反応させて得られる、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
前記ポリマーは、前記化学式8で表される酸二無水物、あるいは、前記化学式8で表される酸二無水物と、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物および前記化学式7で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と、前記化学式10で表されるモノアミンを1:0.1乃至0.4のモル比で反応させて得られる、請求項13または14に記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に規定のポリマーを含むフィルム。
【請求項17】
ガラス転移温度(Tg)が160℃乃至200℃である、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
厚さ方向複屈折(△nth)が0.05を超える、請求項16または17に記載のフィルム。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に規定のフィルム、および偏光子を含む光学フィルム。
【請求項20】
請求項16~18のいずれか1項に規定のフィルム、または請求項19に規定の光学フィルムを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリマー、前記ポリマーを含む補償フィルム、光学フィルム、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無色透明材料は、光学レンズ、機能性光学フィルム、ディスク基板など多様な用途により多様に研究されているが、情報機器の急速な小型軽量化または表示素子の高細密化に伴い、材料そのものに要求される機能および性能も次第に精密化且つ高度化している。
【0003】
したがって、現在透明性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性に優れた無色透明材料に対する研究が活発に行われており、これら材料の加工性を高めるための研究も続いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】(M. Hasegawa, T Ishigami, J. Ishii. Polymer. 74, 1-15 (2015))
【文献】(X. Tian et al. Ind. J. Chem Technol. 19, 271-277 (2012))
【文献】(A. E. Eichstadt et al. J. Polym. Sci. B. 40, 1503-1512 (2002))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、優れた光学特性、高い熱安定性、高い厚さ方向複屈折、および優れた加工性を有する新規ポリマーを提供する。
他の実施形態は、前記ポリマーを含むフィルムを提供する。
また他の実施形態は、前記フィルムを含む光学フィルムを提供する。
また他の実施形態は、前記フィルムを含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、下記化学式1にまたは下記化学式2で表されるポリマーを提供する:
【0007】
【化1】
【0008】
前記化学式1または化学式2で、
Arは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基、下記化学式3で表される基、下記化学式4で表される基、またはこれらの組み合わせであり、
【化2】
前記化学式3で、
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで 1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、またはこれらの組み合わせであり、
12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基、-OR201基(ここで、R201は、C1乃至C10脂肪族有機基)、または-SiR210211212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素またはC1乃至C10脂肪族有機基)基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0乃至3の整数のうちの一つである。
【0009】
【化3】
前記化学式4で、
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC2乃至C30アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、またはこれらの組み合わせであり、
は、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基であり、
は、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至Cアリールアルキル基である)、または下記化学式5で表される基であり:
【化4】
前記化学式5で、
およびLは、それぞれ独立して、O、CO、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C30アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至3の整数であり;
kは、0乃至2の整数のうちの一つであり、
mは、0乃至3の整数のうちの一つであり、
nは、0乃至20の整数のうちの一つであり、
oおよびpは、それぞれ独立して、0乃至30の整数のうちの一つであり;
Arは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含み、前記置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基は、置換もしくは非置換の一つの芳香族環で存在するか;置換もしくは非置換の2以上の芳香族環が互いに接合されて縮合環を形成するか;または置換もしくは非置換の前記一つの芳香族環および/または2以上の芳香族環が接合された縮合環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC3乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基を含み;
は、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、C3乃至C20シクロアルキル基、C6乃至C20アリール基、またはこれらの組み合わせであり、
sは、1乃至30の整数のうちの一つであり;
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【0010】
前記化学式3で、
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦3)、-(CF-(ここで、1≦q≦3)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで 1≦n≦10、1≦p≦3、および1≦q≦3)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
前記化学式3で、
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)-、-C(CF-、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
前記化学式4のLは、Oであり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基であり、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ハロゲン基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であり、kは、0または1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1乃至3の整数のうちの一つであってもよい。
【0013】
前記化学式4のLは、Oであり、Aは、置換もしくは非置換のC6芳香族有機基であり、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C20アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基、ハロゲン基、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C20アルキル基、C6乃至C20アリール基、またはC7乃至C20アリールアルキル基である)またはこれらの組み合わせであり、kは、1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1であってもよい。
【0014】
前記化学式5のLおよびLは、それぞれ独立して、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基であり、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であり、qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至2の整数であって、1≦q+r≦2であってもよい。
【0015】
前記化学式1または化学式2のArは、置換もしくは非置換の二つの芳香族環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC3乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基であってもよい。
【0016】
前記化学式1または化学式2のArは、置換もしくは非置換の二つの芳香族環が単結合により連結された基であってもよい。
【0017】
前記Rは、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、フェニル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
前記化学式1または化学式2のArは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基を1:99乃至99:1のモル比で含んでもよい。
【0020】
前記ポリマーのArが前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせである場合、前記化学式3のR10は、単結合、-C(CF-、またはこれらの組み合わせを含み、前記化学式4のLは、Oであり、Aは、C6芳香族有機基であり、Rは、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、C7乃至C30アリールアルキル基、-F、-Cl、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であり、kは、0または1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1乃至3の整数のうちの一つであってもよい。
【0021】
前記ポリマーは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物、下記化学式7で表される酸二無水物、および下記化学式8で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と、下記化学式9で表されるジアミン、および下記化学式10で表されるモノアミンの反応生成物であってもよい:
【0022】
【化5】
【0023】
前記化学式7で、
10、R12、R13、n7およびn8は、それぞれ前記化学式3に対して定義したとおりであり、
【化6】
前記化学式8で、
、R、R、A、L、k、m、n、o、およびpは、それぞれ前記化学式4に対して定義したとおりであり、
[化学式9]
NH-Ar-NH
前記化学式9で、
Arは、前記化学式1および化学式2に対して定義したとおりであり、
[化学式10]
NH-(CH-R
前記化学式10で、
およびsは、それぞれ前記1および化学式2に対して定義したとおりである。
【0024】
前記ポリマーは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物、前記化学式7で表される酸二無水物、および前記化学式8で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と前記化学式9で表されるジアミンを1:0.8乃至0.95のモル比で反応させて得られてもよい。
【0025】
前記ポリマーは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含む酸二無水物、前記化学式7で表される酸二無水物、および前記化学式8で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と前記化学式10で表されるモノアミンを1:0.1乃至0.4のモル比で反応させて得られてもよい。
【0026】
他の一実施形態は、一実施形態に係るポリマーを含むフィルムを提供する。
前記フィルムのガラス転移温度(Tg)は、160℃乃至200℃であってもよい。
前記フィルムの厚さ方向複屈折(△nth)は、0.05を超えてもよい。
【0027】
また他の一実施形態は、前記実施形態に係るフィルム、および偏光子を含む光学フィルムを提供する。
【0028】
また他の一実施形態は、前記実施形態に係るフィルムを含む表示装置を提供する。
以下、前記実施形態について詳細に説明する。
【発明の効果】
【0029】
一実施形態に係るポリマーは、高い透過率、低い黄色指数、低いヘイズ、および高い厚さ方向複屈折のような優れた光学特性を有し、また、高い重量損失温度を示すことによって、高い熱安定性を有しながらも、低いガラス転移温度を有するフィルムなど成形品の製造に有利に利用可能であり、低いガラス転移温度による溶媒に対する高い溶解度および優れた加工性を示すことによって、補償フィルムなどの製造に有利に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係る光学フィルムの概略的な断面図である。
図2】光学フィルムの外光反射防止原理を示す概略図である。
図3】偏光フィルムの一例を示した概略図である。
図4】一実施形態に係る有機発光表示装置を概略的に示した断面図である。
図5】一実施形態に係る液晶表示装置を概略的に示した断面図である。
図6】実施例1で製造されたオクチルアミンで末端キャッピングされたポリ(エステル-イミド)のH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態について技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、実施形態は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
図面において、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって類似する部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時には、中間にまた他の部分がないことを意味する。
【0033】
本明細書で別途の定義がない限り、「置換された」とは、化合物または作用基のうちの少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、燐酸やその塩、C1乃至C20アルキル基、C2乃至C20アルケニル基、C2乃至C20アルキニル基、C6乃至C30アリール基、C7乃至C30アリールアルキル基、C1乃至C30アルコキシ基、C1乃至C20ヘテロアルキル基、C3乃至C20ヘテロアリールアルキル基、C3乃至C30シクロアルキル基、C3乃至C15のシクロアルケニル基、C6乃至C15シクロアルキニル基、C3乃至C30ヘテロシクロアルキル基およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0034】
また、本明細書で別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S、SeおよびPから選択されたヘテロ原子を1乃至3個含有したものを意味する。
【0035】
光学的に透明な耐熱性ポリマーは、多様な光電子素子、例えばイメージ画像装置、液晶配向膜、カラーフィルター、光学補償フィルム、光繊維、導光板、光学レンズなどに有用に適用されている材料である。これと関連して最近注目されている研究テーマは、画像装置内の壊れやすい無機ガラス基材(例えば、約300nm乃至700mm厚さ)をプラスチック基材(<50mm厚さ)に代替して顕著に軽く且つ柔軟なディスプレイパネルを実現することである。しかし、プラスチック基材の場合、光学透過度、耐熱性、デバイス組立工程中の熱サイクルに対する寸法安定性(熱的寸法安定性)、フィルム柔軟性、およびフィルム形成工程の互換性(溶液工程)を高い水準で同時に達成することは難しいため、まだ信頼性を確保することは難しい実情である。プラスチック基材は、柔軟性および薄膜形成性の側面から無機ガラス基材に比べて概して優れているが、耐熱性および熱的寸法安定性の側面から劣勢である。
【0036】
芳香族ポリイミド(PI)は、優れた耐熱特性とバランスが取れた機械的および電気的特性のような優れた特性を有しているとよく知られており、したがって光学電子装置用素材として有用な候補のうちの一つとして考慮されている。芳香族ポリイミドフィルムの他の興味深い特性は、構造的異方性(anisotropy)である。芳香族ポリイミド分子は、フィルムキャスティング工程の間にフィルム表面に対して平行に配列しようとする特性を有するため、面内屈折率(in-plane refractive index)が厚さ方向屈折率(out-of-plane refractive index)より大きい。面内配向程度とそれによる光学異方性は、面内および厚さ方向に沿った屈折率差を示す複屈折(birefringence)により評価され得る。ポリイミドフィルムのこの線形的な光学異方性は、液晶ディスプレーにおける補償器(compensator)として適宜に使用可能にする。
【0037】
しかし、通常ポリイミドは、強い分子内および分子間の電荷伝達体(Charge Transfer:CT)作用により引き起こされる色により適用が制限され、その不溶性は加工を困難にする。電荷伝達体形成を抑制する最も効率的な方法は、ジアミンまたはテトラカルボン酸無水物のうちの一つとして脂環族モノマーを用いることである。しかし、この方法は、ポリイミドの高温安定性を低下させる。全方向族ポリイミドとして最もよい特性を有するものとしては、モノマーにトリフルオロメチル基を併合したもの、つまり、例えば、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride:6FDA)と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル-4,4’-ジアミン(2,2’-bis(trifluoromethyl)biphenyl-4,4’-diamine:TFDB)などからポリイミドを製造することであるが、前記モノマーは価格が高い。ポリイミドの熱安定性を害しないながら、溶解度および加工性を増加させる他の成功的な方法としては、ポリ(エーテル-イミド)、ポリ(エステル-イミド)(PEI)、およびポリ(アミド-イミド)などのようなコポリマーを合成することである。しかし、ビス(エーテル無水物)に基づいたポリ(エーテル-イミド)は、柔軟なエーテル連結基の導入によりフィルムの複屈折が低くなる。一方、ポリイミドにエステル基を導入したポリ(エステル-イミド)(PEI)は、高い複屈折、低い水分吸水性、およびポリ(アミド-イミド)に比べて優れた溶解度を示す。
【0038】
Hasegawaらは、低い水分吸水および高い複屈折を有する一連のポリ(エステル-イミド)(PEI)を合成し、相異なるアルキル置換体の効果に対して研究した(M. Hasegawa, T Ishigami, J. Ishii. Polymer. 74, 1-15 (2015))。本願出願人は、本願に参照として全体が組み含まれる韓国特許出願第10-2017-0096550号で開示したような相異なる置換体を有する新規エステル含有酸二無水物を合成し、これらから製造されたPEIが優れた光学特性および高い厚さ方向複屈折を有することを確認した。一方、前記PEIポリマーは、嵩高な(bulky)置換体を導入することによってガラス転移温度(Tg:glass transition temperature)が低くなることが分かるが、この時、PEIフィルムの複屈折も低くなる傾向がある。
【0039】
ポリイミドのガラス転移温度を調節するための他の方法として、ポリマーの分子量を減少させることが知られている。しかし、この場合にもフィルムの複屈折は低くなる傾向がある。柔軟なイソプロピリデン単位は、ポリイミドの溶解度を増加させ、Tgを低くすると知られており、Tgは、ポリマー組成でイソプロピリデン含有モノマーの含有量を変化させて調節可能であることを確認した(X. Tian et al. Ind. J. Chem Technol. 19, 271-277 (2012))。長鎖アルキル置換体の導入もTgを減少させる効果があるが、これはポリイミドの熱安定性とCTE(coefficient of thermal expansion)に影響を与えると知られている。ポリイミドのTgを調節する他の方法として、ポリイミド主鎖内に柔軟なアルキル鎖を導入する方法が知られている。ドデシルジアミンを用いて部分的に脂肪族であるポリイミドを製造しており、この場合、ポリイミドの脂肪族含有量が増加するほどTg、熱安定性、屈折率、および比誘電率が減少したが、CTEが増加した(A. E. Eichstadt et al. J. Polym. Sci. B. 40, 1503-1512 (2002))。
【0040】
つまり、高い光学特性と熱安定性を維持しながら高い厚さ方向複屈折を有し、同時に低いガラス転移温度(Tg)を有して溶媒への溶解度および加工性の高いポリイミドを製造するための努力があったが、このような特性を全て充足する信頼性の高い材料を開発することは相当難しい。
【0041】
本願発明者らは、優れた光学特性と高い熱安定性を維持しながら高い厚さ方向複屈折を有し、また低いガラス転移温度を有することによって、溶媒に対する溶解性および加工性が改善された新たなポリマーを開発して本発明を完成した。つまり、一実施形態に係るポリマーは、下記化学式1または下記化学式2で表されるポリアミック酸またはポリイミドであって、前記ポリマーの両末端がRで置換されたアルキルアミノ基でキャッピングされたポリアミック酸またはポリイミドである(ここで、Rは、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、フェニル基、またはこれらの組み合わせである):
【0042】
【化7】
【0043】
前記化学式1または化学式2で、
Arは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基、下記化学式3で表される基、下記化学式4で表される基、またはこれらの組み合わせであり、
【化8】
前記化学式3で、
10は、単結合、O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで 1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、またはこれらの組み合わせであり、
12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基、-OR201基(ここで、R201は、C1乃至C10脂肪族有機基)、または-SiR210211212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素またはC1乃至C10脂肪族有機基)基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0乃至3の整数のうちの一つである。
【0044】
【化9】
前記化学式4で、
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC2乃至C30アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、またはC6乃至C30アリール基である)、またはこれらの組み合わせであり、
は、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基であり、
は、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC3乃至C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至Cアリールアルキル基である)、または下記化学式5で表される基であり:
【化10】
前記化学式5で、
およびLは、それぞれ独立して、O、CO、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C30アルキル基である)であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至3の整数であり;
kは、0乃至2の整数のうちの一つであり、
mは、0乃至3の整数のうちの一つであり、
nは、0乃至20の整数のうちの一つであり、
oおよびpは、それぞれ独立して、0乃至30の整数のうちの一つであり;
Arは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含み、前記置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基は、置換もしくは非置換の一つの芳香族環で存在するか;置換もしくは非置換の2以上の芳香族環が互いに接合されて縮合環を形成するか;または置換もしくは非置換の前記一つの芳香族環および/または2以上の芳香族環が接合された縮合環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC3乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基を含み;
は、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、C3乃至C20シクロアルキル基、C6乃至C20アリール基、またはこれらの組み合わせであり、
sは、1乃至30の整数のうちの一つであり;
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【0045】
前記化学式1で表されたポリアミック酸は、前記化学式2で表されたポリイミドの前駆体である。つまり、前記化学式1で表されるポリアミック酸に当該技術分野によく知られた熱またはイミド化剤のような化学的にイミド化することによって前記化学式2で表されたポリイミドを製造することができる。したがって、前記化学式1と化学式2で表されるポリマーは、イミド化の有無を除き、残りのポリマー内の組成がすべて同一であってもよい。
【0046】
前記のように、一実施形態に係る化学式1または化学式2で表されるポリアミック酸またはポリイミドは、両末端がR-(CH)s-NH-(ここで、Rは、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、フェニル基、またはこれらの組み合わせであり、sは、1乃至30の整数のうちの一つである)でキャッピングされたポリアミック酸またはポリイミドであって、前記ポリアミック酸またはポリイミドを硬化してフィルムなどの成形品を製造する場合、両末端がR-(CH)s-NH-でキャッピングされていない点を除いては、前記ポリアミック酸またはポリイミドと同一の組成からなるポリアミック酸またはポリイミドから製造した成形品に比べて、透過率、黄色度、ヘイズ、および厚さ方向複屈折などの光学特性および重量損失温度(Td)のような耐熱性は全て同等水準を維持しながらも、ガラス転移温度(Tg)が顕著に低くなることを確認した。つまり、一実施形態により両末端がR-(CH)s-NH-でキャッピングされた前記化学式1または化学式2で表されるポリアミック酸またはポリイミドは、優れた光学特性、高い熱安定性、高い厚さ方向複屈折を有すると共に、低いガラス転移温度(Tg)を有することによって、優れた加工性を実現することができる。
【0047】
一実施形態に係る前記ポリマーの低いガラス転移温度は、既存のポリイミドまたはポリ(エステル-イミド)が低いガラス転移温度を達成するために低い分子量を有したり、ポリマー主鎖の間に脂肪族基を導入したり、または主鎖に長鎖アルキル置換体を導入するなどの方法によりTが低くはなるが、この時、同時に厚さ方向複屈折が低くなるか、および/または重量損失温度Tも低くなることによって、フィルムの複屈折および/または熱的安定性を低下させたこととは異なり、既存のポリイミドの有利な光学特性と熱安定性および厚さ方向複屈折を全て維持しながら、ガラス転移温度Tgだけを減少させることによって優れた加工性を提供する顕著な効果を有する。このような顕著な効果は、本願出願日以前に当該技術分野における通常の知識を有する技術者が全く予想できなかったものであって、特定の理論に縛られず、これは前記ポリマーの両末端でキャッピングされたR-(CH)s-NH-基がまるで可塑剤(plasticizer)のような役割を果たしたためであると考えられる。このような一実施形態に係るポリマーは、後述する実施例を通じて立証されるように、既存のポリイミドまたはポリアミック酸と同一水準の分子量、例えば、重量平均分子量約1,000g/mole乃至約100,000g/moleを有する場合にも、溶媒に対する溶解度が高くて加工性に優れ、高い光学特性と熱安定性、および高い厚さ方向複屈折を有することによって、補償フィルムなどの製造に有利に利用可能である。
【0048】
一実施例において、前記化学式1または化学式2のArは、置換もしくは非置換のC6乃至C30の任意の芳香族有機基であるか、前記化学式3で示したように二つの置換もしくは非置換のベンゼン環の間が単結合または特定の連結基により連結された基であるか、または前記化学式4で示したように、二つの置換もしくは非置換のベンゼン環基の間に、それぞれエステル結合を通じて前記二つのベンゼン環と連結される特定の置換基で置換もしくは非置換された追加のベンゼン環を有する基であってもよく、前記ポリマー内の多数の繰り返し単位で、Arは全て同一であるか、または、それぞれの繰り返し単位で、Arは相異なる基が組合わせられていてもよい。Arが置換もしくは非置換のC6乃至C30の芳香族有機基、および/または化学式3で示す基だけからなる場合、前記ポリマーは通常のポリアミック酸またはポリイミドであり、Arが化学式4で表された基を含む場合、前記ポリマーはポリ(エステル-イミド)またはポリ(エステル-アミック酸)になる。
【0049】
前記化学式1または化学式2の構造から分かるように、Arは、ポリアミック酸またはポリイミド製造時に選択されるテトラカルボン酸酸二無水物に由来してもよく、Arが前記化学式4で表される場合、これは二つのベンゼン環の間にエステル基により連結された追加の芳香族環を含むテトラカルボン酸エステル-酸二無水物に由来してもよい。
【0050】
Arが置換もしくは非置換のC6乃至C30の芳香族有機基である場合、これはC6乃至C30の置換もしくは非置換の芳香族単一環であるか、または、置換もしくは非置換のC6乃至C30の芳香族縮合環であってもよい。
【0051】
一実施例において、前記化学式3のR10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦3)、-(CF-(ここで、1≦q≦3)、-C(C2n+1-、-C(C2n+1-、-(CH-C(C2n+1-(CH-、-(CH-C(C2n+1-(CH-(ここで 1≦n≦10、1≦p≦3、および1≦q≦3)、またはこれらの組み合わせであってもよく、例えば、R10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)-、-C(CF-、またはこれらの組み合わせであってもよく、例えば、R10は、単結合、-(CF-、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
前記化学式4のLは、O(酸素)であってもよく、Aは、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族有機基であってもよく、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30アリールアルキル基、ハロゲン基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であってもよく、kは、0または1であってもよく、mは、0乃至2の整数のうちの一つであってもよく、nは、1乃至3の整数のうちの一つであってもよい。
【0053】
一実施例において、前記化学式4のLは、Oであり、Aは、置換もしくは非置換のC6 芳香族有機基であり、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C20アリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基、ハロゲン基、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C20アルキル基、C6乃至C20アリール基、またはC7乃至C20アリールアルキル基である)またはこれらの組み合わせであり、kは、1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1であってもよい。
【0054】
前記化学式5のLおよびLは、それぞれ独立して、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)であってもよく、AおよびAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族環、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基であってもよく、qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至2の整数であって、1≦q+r≦2であってもよい。
【0055】
前記化学式1または化学式2の構造から分かるように、Arは、ポリアミック酸またはポリイミド製造時に選択されるジアミンに由来してもよく、一実施例でArは、置換もしくは非置換の二つの芳香族環が単結合、またはフルオレニレン基、置換もしくは非置換のC1乃至C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6乃至C15アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、-C(=O)NH-、またはこれらの組み合わせである作用基により連結された基であってもよく、例えば、置換もしくは非置換の二つのベンゼン環が単結合により連結された基であってもよく、例えば、それぞれトリフルオロメチル基で置換された二つのベンゼン環が単結合により連結された基であってもよい。
【0056】
一実施例において、前記化学式1または化学式2のArは、前記化学式3で表される基と前記化学式4で表される基の組み合わせを含んでもよい。前記のように、前記化学式3は、二つの芳香族環の間に単結合または特定の連結基が連結されたテトラカルボン酸二無水物であって、ポリイミド製造で主に用いられるテトラカルボン酸二無水物から選択され得る。前記化学式4は、二つの芳香族環の間にエステル結合を通じて追加の置換もしくは非置換のベンゼン環を含み、このようなエステル基包含酸二無水物を含んで製造されるポリイミドは、通常ポリ(エステル-イミド)と呼ばれる。したがって、一実施形態に係るポリマーが前記化学式4で表される基を含む場合、ポリ(エステル-アミック酸)またはポリ(エステル-イミド)になることができ、この場合、エステル基を含まないポリアミック酸またはポリイミドから製造される成形品に比べてより高い厚さ方向複屈折を有することができる。
【0057】
Arが化学式3で表される基と化学式4で表される基の組み合わせを含む場合、化学式3で表される基と化学式4で表される基を1:99乃至99:1のモル比で含んでもよい。一実施例において、化学式3で表される基と化学式4で表される基は、10:90乃至90:10のモル比、例えば、15:85乃至85:15のモル比、例えば、20:80乃至80:20のモル比、例えば、25:75乃至75:25のモル比で含まれてもよいが、これらに制限されず、所望の用途により前記モル比を調節することができる。
【0058】
Arが化学式3で表される基と化学式4で表される基の組み合わせを含む場合、化学式3のR10は、単結合、-C(CF-、またはこれらの組み合わせを含み、化学式4のLは、Oであり、Aは、ベンゼン環であり、Rは、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、C7乃至C30アリールアルキル基、-F、-Cl、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、または前記化学式5で表される基であり、kは、0または1であり、mは、0乃至2の整数のうちの一つであり、nは、1乃至3の整数のうちの一つであってもよく、これらに制限されない。
【0059】
前記化学式1および化学式2で、前記xおよびyは、それぞれ当該ポリマーを形成するアミック酸またはイミド構造単位の数を意味する。したがって、前記xおよびyは、それぞれ1以上の整数であってもよく、例えば、10以上の整数、例えば、100以上の整数、例えば、1,000以上の整数であってもよく、これらに制限されない。
【0060】
一実施例において、前記化学式1または前記化学式2によるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約1,000乃至約100,000g/mole、例えば、約1,500乃至約100,000g/mole、例えば、約2,000乃至約80,000g/mole、例えば、約2,500乃至約70,000g/mole、例えば、約3,000乃至約60,000g/mole、例えば、約3,000乃至約50,000g/mole、例えば、約4,000乃至約50,000g/mole、例えば、約5,000乃至約50,000g/mole、例えば、約6,000乃至約50,000g/mole、例えば、約7,000乃至約50,000g/mole、例えば、約8,000乃至約50,000g/mole、例えば、約9,000乃至約50,000g/mole、例えば、約10,000乃至50,000g/mole、例えば、約10,000乃至約45,000g/mole、例えば、約10,000乃至約40,000g/mole、例えば、約10,000乃至約35,000g/mole、例えば、約12,000乃至約35,000g/mole、例えば、約13,000乃至約35,000g/mole、例えば、約14,000乃至約35,000g/mole、例えば、約15,000乃至約35,000g/moleであってもよく、これらに制限されない。
【0061】
または、前記化学式1または前記化学式2によるポリマーの数平均分子量(Mn)は、約1,000乃至約50,000g/mole、例えば、約1,500乃至約40,000g/mole、例えば、約2,000乃至約40,000g/mole、例えば、約2,500乃至約40,000g/mole、例えば、約2,500乃至約35,000g/mole、例えば、約2,500乃至約30,000g/mole、例えば、約3,000乃至約30,000g/mole、例えば、約3,500乃至約30,000g/mole、例えば、約3,500乃至約25,000g/mole、例えば、約3,500乃至約20,000g/mole、例えば、約3,500乃至約18,000g/mole、例えば、約3,500乃至約17,000g/mole、例えば、約3,500乃至約15,000g/mole、例えば、約3,500乃至約13,000g/mole、例えば、約3,500乃至約12,000g/mole、例えば、約4,000乃至約12,000g/moleであってもよく、これらに制限されない。
【0062】
一実施形態に係る化学式1または化学式2のポリマーの重量平均分子量または数平均分子量が前記範囲内にある時、優れた光学特性、優れた熱安定性、高い厚さ方向複屈折、および適切な溶媒に対する溶解度を実現することができる。
【0063】
一実施形態に係るポリマーは、通常のポリイミド製造方法、つまり、ジアミンと酸二無水物を極性有機溶媒内で約1:1のモル比で縮合重合させて製造する方法を用いて製造することができるが、ここに追加的に、前記ポリマーの両末端が前記R-(CH)s-NH-(ここで、Rはおよびsは、前記で定義したとおりである)でキャッピングされるように、ジアミンと酸二無水物の他、R-(CH)s-NH(ここで、Rはおよびsは、前記で定義したとおりである)で表されるモノアミンを追加的に反応させて製造することができる。具体的に、一実施形態に係るポリアミック酸またはポリイミドは、ジアミンを先に極性有機溶媒に溶かした後、ここに酸二無水物を添加して縮合重合させるが、これから製造されたポリアミック酸の両末端がアンハイドライド末端を有するように、前記ジアミンより酸二無水物の含有量が多くなるようにジアミンと酸二無水物の含有量を調節して反応させる。前記ジアミンと酸二無水物の縮合重合反応が終了されると、それから両末端にアンハイドライド基を有するポリアミック酸が製造され、ここにR-(CH)s-NHで表されるモノアミン、つまり、「末端キャッパー(end-capper)」を添加して追加反応させることによって、前記化学式1で表される、両末端が置換もしくは非置換のアルキルアミノ基でキャッピングされたポリアミック酸を製造することができる。また、前記得られたポリアミック酸を熱または化学的イミド化剤を用いてイミド化することによって、前記化学式2で表される、両末端が置換もしくは非置換のアルキル基でキャッピングされたポリイミドを製造することができる。
【0064】
一実施例において、前記実施形態に係るポリマーを製造するために用いられる酸二無水物とジアミンの総モル比は、約1:0.8乃至0.95の比率であってもよい。
【0065】
一実施例において、前記実施形態に係るポリマーは、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族環を含むテトラカルボン酸酸二無水物、下記化学式7で表される酸二無水物、および下記化学式8で表される酸二無水物のうちの一つ以上を含む酸二無水物と、下記化学式9で表されるジアミン、および下記化学式10で表されるモノアミンを極性非プロトン性有機溶媒内で縮合重合させて製造することができる:
【0066】
【化11】
【0067】
前記化学式7で、
10、R12、R13、n7およびn8は、それぞれ前記化学式3に対して定義したとおりであり、
【化12】
前記化学式8で、
、R、R、A、L、k、m、n、o、およびpは、それぞれ前記化学式4に対して定義したとおりであり、
(化学式9)
NH-Ar-NH
前記化学式9で、
Arは、前記化学式1および化学式2に対して定義したとおりであり、
(化学式10)
NH-(CH-R
前記化学式10で、
は、水素、ハロゲン、ビニル基、エチニル基(ethynyl group)、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、C3乃至C20シクロアルキル基、C6乃至C20アリール基、またはこれらの組み合わせであり、
sは、1乃至30の整数のうちの一つである。
【0068】
一実施例において、前記化学式7で表された酸二無水物は、下記化学式7-1で表された酸二無水物および下記化学式7-2で表された酸二無水物のうちの一つ以上を含んでもよい:
前記化学式7-1および化学式7-2で、
12、R13、n7、およびn8は、それぞれ前記化学式3で定義したとおりである。
【0069】
一実施例において、前記化学式7-1および化学式7-2で、n7およびn8は同時に0であってもよい。
【0070】
一実施例において、前記化学式8で表された酸二無水物は、下記化学式8-1乃至化学式8-4で表された酸二無水物のうちの一つ以上を含んでもよい:
【0071】
【化13】
【0072】
前記化学式8-1乃至8-4で、
、R、R、A、L、m、n、o、およびpは、それぞれ前記化学式4に対して定義したとおりである。
【0073】
前記化学式8-1で表される酸二無水物または前記化学式8-2で表される酸二無水物は、コアを中心に両側酸二無水物基が中心ベンゼン環とエステル結合を通じて連結されて全体的に固い(rigid)平面(planar)構造を有しながらも、中心ベンゼン環の側鎖に嵩高な(bulky)置換体を含んでより高い分子体積および非対称構造を有することによって、これから製造されるポリマーの溶解度を改善し、また分子間積層構造および電荷伝達体(CT)形成を抑制して光学的特性も改善させることができると考えられる。
【0074】
一実施例において、前記化学式8-1乃至8-4のoおよびpは、同時に0であってもよく、
は、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)、例えば、OまたはNHであってもよく、例えば、Oであってもよく、
は、C6乃至C30芳香族有機基、例えば、C6乃至C20芳香族有機基、例えば、C6乃至C12芳香族有機基、例えば、C6乃至C10芳香族有機基、例えば、ベンゼン環であってもよく、
は、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C20アルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C20アルコキシ基、置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基、ハロゲン基、-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-CO-NR’R”(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1乃至C30アルキル基、C6乃至C30アリール基、またはC7乃至C30アリールアルキル基である)、-SiR’R”R”’(ここで、R’、R”、およびR”’は、それぞれ独立して、水素またはC1乃至C20アルキル基である)、または下記化学式5で表される基であってもよい:
【0075】
【化14】
【0076】
前記化学式5で、
およびLは、それぞれ独立して、O、CO、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)、例えば、COO、C≡C、またはCONR(ここで、Rは、水素またはC1乃至C20アルキル基である)、例えば、COO、C≡C、またはCONHであってもよく、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族環基、例えば、置換もしくは非置換のC6乃至C16芳香族環、例えば、置換もしくは非置換のC6乃至C12芳香族環、例えば、ベンゼン環であるか、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキレン基、例えば、置換もしくは非置換のフェニルアルキレン基、例えば、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、またはフェニルペンチレン基であってもよく、
は、置換もしくは非置換のC6乃至C20芳香族環基、例えば、置換もしくは非置換のC6乃至C16芳香族環、例えば、置換もしくは非置換のC6乃至C12芳香族環、例えば、ベンゼン環であるか、置換もしくは非置換のフルオレン環、または置換もしくは非置換のC7乃至C20アリールアルキル基、例えば、置換もしくは非置換のフェニルアルキル基、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、またはフェニルペンチル基であってもよく、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至2の整数であって、1≦q+r≦2であってもよく、
mは、0乃至2、例えば、0または1であってもよく、
nは、0乃至10の整数、例えば、0乃至5の整数、例えば、0乃至3の整数、例えば、0乃至2の整数であってもよい。
【0077】
前記化学式8-1および8-2で表される酸二無水物の具体的な例として、下記化合物M-1乃至M-20で表された化合物が挙げられるが、これらに制限されるのではない:
【0078】
【化15】
【0079】
前記化学式8で表された酸二無水物の具体的な製造方法は、前記韓国特許出願第10-2017-0096550号に詳細に記述されており、前記酸二無水物は、商業的に低廉に入手できる出発物質を利用して当該技術分野における通常の知識を有する技術者が前記韓国特許出願の明細書に記載した方法により容易に製造することができる。したがって、本願明細書では前記化学式8で表される酸二無水物の製造方法に対する記載は省略する。
【0080】
前記化学式9で表されたジアミンは、下記化学式11乃至化学式13のうちの一つ以上で表され得る:
【0081】
【化16】
【0082】
前記化学式11で、
は、下記化学式からなる群より選択され:
【化17】

およびRは、同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR200、ここで、R200は、C1乃至C10脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR201202203、ここで、R201、R202およびR203は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、またはC1乃至C10脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、またはC6乃至C20芳香族有機基であり、
n1およびn2は、それぞれ独立して、0乃至4の整数である;
【0083】
【化18】
【0084】
前記化学式12で、
26およびR27は、同一または異なり、それぞれ独立して、-CF、-CCl、-CBr、-CI、-NO、-CN、-COCHまたは-COから選択される電子求引基(electron withdrawing group)であり、
28およびR29は、同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR204、ここで、R204は、C1乃至C10脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR205206207、ここで、R205、R206およびR207は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、またはC1乃至C10脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、またはC6乃至C20芳香族有機基であり、
n3は、1乃至4の整数であり、n5は、0乃至3の整数であり、n3+n5は、1乃至4の整数であり、
n4は、1乃至4の整数であり、n6は、0乃至3の整数であり、n4+n6は、1乃至4の整数である;
【0085】
【化19】
【0086】
前記化学式13で、
14は、O、S、C(=O)、CH(OH)、S(=O)、Si(CH、(CH(ここで、1≦p≦10)、(CF(ここで、1≦q≦10)、C(CH2、C(CF2、C(=O)NH、または、置換もしくは非置換のC6乃至C30芳香族有機基を含み、前記芳香族有機基は、単独で存在するか;二つ以上が互いに接合されて縮合環を形成するか;二つ以上が単結合、またはフルオレニレン基、OC(=O)CH(OH)S(=O)2、Si(CH2、(CH(ここで1≦p≦10)、(CF(ここで、1≦q≦10)、C(CH2、C(CFまたはC(=O)NHの作用基により連結されており、
16およびR17は、同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR212、ここで、R212は、C1乃至C10脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR213214215、ここで、R213、R214およびR215は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、C1乃至C10脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1乃至C10脂肪族有機基、またはC6乃至C20芳香族有機基であり、
n9およびn10は、それぞれ独立して、0乃至4の整数である。
【0087】
一実施例において、前記化学式9で表されるジアミンは、前記化学式12で表されるジアミンを含んでもよく、前記化学式12で、R26とR27は同時に-CFであり、n3とn4は同時に1であり、n5およびn6は同時に0であってもよい。つまり、一実施例において、前記ジアミンはTFDBであってもよい。
【0088】
一方、前記化学式10で表されるモノアミンの具体的な例としては、n-ブチルアミン、アリールアミン、フェニルブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンなどが挙げられ、これらに制限されない。前記モノアミンは、単独で、または任意の2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
前述のように、一実施形態に係るポリマーを製造するための酸二無水物全体とジアミンのモル比は、約1:0.8乃至0.95の範囲であり、例えば、1:0.8乃至0.9の範囲であってもよい。
【0090】
また、一実施形態に係るポリマーを製造するための酸二無水物全体と前記化学式10で表されるモノアミンのモル比は、約1:0.1乃至0.4のモル比、例えば、約1:0.15乃至0.35、例えば、約1:0.2乃至0.3の範囲であってもよい。
【0091】
前記範囲内にジアミンと酸二無水物、およびモノアミンの含有量を調節して反応させることによって、一実施形態により両末端がR-(CH)s-NH-基でキャッピングされたポリアミック酸またはポリイミドを製造することができる。このように製造されたポリアミック酸またはポリイミドから製造されるポリマーは、優れた光学特性、高い熱安定性、および高い厚さ方向複屈折を有しながらも、ガラス転移温度が低くて溶媒への溶解度が高く、加工性に優れている。したがって、一実施形態に係るポリマーは、補償フィルムなど光学フィルムの製造に有利に利用可能である。
【0092】
一実施形態に係るポリマーから製造されるフィルムの全波長(360nm乃至700nm)範囲での透過率は89%以上であってもよく、450nmでの透過率も88%以上に非常に高い。前記フィルムの黄色度は1.5以下、例えば、1.0以下などに非常に低く、ヘイズも0.5%以下に非常に低い。
【0093】
一実施形態に係るポリマーから製造されるフィルムのガラス転移温度は、熱機械分析器(TMA:thermal mechanicalan alyzer Q400、TA Instrumetns)を用いて0.05Nの引張強度で50℃乃至400℃まで5℃/minuteの昇温速度で昇温しながら測定した時、約160℃乃至約200℃であってもよい。ガラス転移温度が前記範囲にある場合、当該ポリマーは溶媒への溶解度が高く、コーティング性など加工性に優れる。
【0094】
また、前記ポリマーから製造されるフィルムは、100μm以下、例えば、90μm以下、例えば、80μm以下、例えば、70μm以下、例えば、60μm以下、例えば、50μm以下、例えば、40μm以下、例えば、30μm以下、例えば、20μm以下の薄いフィルム厚さで高い厚さ方向複屈折(△nth)、例えば、0.05を超える高い光学異方性を示し、これによって補償フィルムなどとして有利に利用可能である。
【0095】
前記実施形態に係るフィルムを補償フィルムとして用いる場合、補償フィルムは、屈折率およびフィルムの厚さを変化させて所定の位相差を有することができる。
【0096】
補償フィルムの位相差(R)は、面内位相差(R)と厚さ方向位相差(Rth)で示すことができる。補償フィルムの面内位相差(R)は、補償フィルムの面内方向に発生する位相差で、R=(n-n)dで表され得る。補償フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、補償フィルムの厚さ方向に発生する位相差で、Rth={[(n+n)/2]-n}dで表され得る。ここでnは、補償フィルムの面内屈折率が最も大きい方向(以下、「遅相軸(slow axis)」という)での屈折率であり、nは、補償フィルムの面内屈折率が最も小さい方向(以下、「進相軸(fast axis)」という)での屈折率であり、nは、補償フィルムの遅相軸および進相軸に対する垂直方向の屈折率であり、dは、補償フィルムの厚さである。
【0097】
補償フィルムは、n、n、nおよび/または厚さ(d)を変化させて所定範囲の面内位相差および厚さ方向位相差を有するように調節することができる。
補償フィルムの位相差は、波長により同一でも、異なっていてもよい。
【0098】
一例として、前記補償フィルムは、短波長の光に対する位相差が長波長の光に対する位相差より大きい正波長分散位相遅延を有することができ、550nm波長が基準波長という時、例えば450nm、550nmおよび650nm波長に対する補償フィルムの位相差(R)は下記関係式1または2を満たすことができる。
【0099】
[関係式1]
R(450nm)≧R(550nm)>R(650nm)
[関係式2]
R(450nm)>R(550nm)≧R(650nm)
一例として、前記補償フィルムは、長波長の光に対する位相差と短波長の光に対する位相差が実質的に同一なフラット分散位相遅延を有することができ、例えば450nm、550nmおよび650nm波長に対する補償フィルムの位相差(R)は、下記関係式3を満たすことができる。
[関係式3]
R(450nm)=R(550nm)=R(650nm)
一例として、補償フィルムは、長波長の光に対する位相差が短波長の光に対する位相差より大きい逆波長分散位相遅延を有することができ、例えば450nm、550nmおよび650nm波長に対する補償フィルムの位相差(R)は、下記関係式4または5を満たすことができる。
[関係式4]
R(450nm)≦R(550nm)<R(650nm)
[関係式5]
R(450nm)<R(550nm)≦R(650nm)
【0100】
前記関係式1乃至5で、
R(450nm)は、450nm波長に対する補償フィルムの面内位相差または厚さ方向位相差であり、
R(550nm)は、550nm波長に対する補償フィルムの面内位相差または厚さ方向位相差であり、
R(650nm)は、650nm波長に対する補償フィルムの面内位相差または厚さ方向位相差である。
【0101】
前記補償フィルムは、波長により所望の位相差を有するように調節することができる。
【0102】
前記補償フィルムは、高い複屈折率を有することができるため、比較的に薄い厚さを有することができる。前記補償フィルムは、例えば約3μm乃至200μmの厚さを有することができ、前記範囲内で、例えば約5μm乃至150μmの厚さを有することができ、前記範囲内で、例えば約5μm乃至100μmの厚さを有することができる。
【0103】
前記補償フィルムは、実質的に透明な重合体を含むため、基板(substrate)として用いられることもでき、これによって前記補償フィルム下部に別途の基板が省略されてもよい。したがって、より一層補償フィルムの厚さを減らすことができる。これによってフォルダブル(foldable)表示装置またはベンダブル(bendable)表示装置のようなフレキシブル表示装置にも効果的に適用されて光学特性および表示特性を改善することができる。
【0104】
前記補償フィルムは、例えば、一実施形態に係るポリマーを準備する段階、前記ポリマーをフィルムとして準備する段階、および前記フィルムを延伸する段階により製造され得る。
【0105】
前記補償フィルムは、例えば、50℃乃至500℃の温度で、約110%乃至約1,000%の延伸率に延伸され得る。ここで、延伸率は、補償フィルムの延伸前の長さと延伸後の長さの比率をいい、一軸延伸後に補償フィルムが伸びた程度を意味する。例えば、前記補償フィルムは一軸延伸されていてもよい。
【0106】
前述した補償フィルムは、単独で用いられてもよく、他の補償フィルムと共に用いられてもよい。
【0107】
前記補償フィルムは、偏光子と共に用いられて表示装置の外部光の反射を防止する光学フィルムとして用いられてもよい。光学フィルムは、例えば、反射防止フィルムであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0108】
図1は、一実施形態に係る光学フィルムの概略的な断面図であり、図2は、光学フィルムの外光反射防止原理を示す概略図であり、図3は、偏光フィルムの一例を示した概略図である。
【0109】
図1を参照すると、一実施形態に係る光学フィルム100は、偏光子110と補償フィルム120を含む。補償フィルム120は、偏光子110を通過した光を円偏光させて位相差を発生させることができ、光の反射および/または吸収に影響を与え得る。
【0110】
一例として、光学フィルム100は、表示装置の一側または両側に備えられてもよく、特に表示装置の画面部側に配置されて外部から流入される光が反射されること(以下、「外光反射」という)を防止することができる。したがって、外光反射による視認性低下を防止することができる。
【0111】
図2は、光学フィルムの外光反射防止原理を示す概略図である。
図2を参照すると、入射される非偏光された光(incident unpolarized light)は偏光子110を通過しながら二つの偏光直交成分のうちの一つの偏光直交成分、つまり、第1偏光直交成分だけが透過され、偏光された光は補償フィルム120を通過しながら円偏光に変わり得る。前記円偏光された光は基板、電極などを含む表示パネル50で反射されて円偏光方向が変わるようになり、前記円偏光された光が補償フィルム120を再び通過しながら二つの偏光直交成分のうちの他の一つの偏光直交成分、つまり、第2偏光直交成分だけが透過され得る。前記第2偏光直交成分は、偏光子110を通過することができず、外部に光が放出されないため、外光反射防止効果を有することができる。
偏光子110は、例えば偏光板または偏光フィルムであってもよい。
【0112】
図3を参照すると、偏光子110は、例えば高分子樹脂71と二色性染料72の溶融混合物(melt blend)で作られた一体型構造の偏光フィルムであってもよい。
【0113】
高分子樹脂71は、例えば疎水性高分子樹脂であってもよく、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびこれらの共重合体のようなポリオレフィン;ナイロンおよび芳香族ポリアミドのようなポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)およびポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル;ポリメチル(メタ)アクリレートのようなポリアクリール;ポリスチレン(PS)およびアクリロニトリル-スチレン共重合体のようなポリスチレン;ポリカーボネート;塩化ビニル系樹脂;ポリイミド;スルホン樹脂;ポリエーテルスルホン;ポリエーテル-エーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ビニルアルコール樹脂;ビニリデンクロリド樹脂;ビニルブチラール樹脂;アリレート樹脂;ポリオキシメチレン;エポキシ、これらの共重合体またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0114】
このうち、高分子樹脂71は、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリール樹脂、ポリスチレン樹脂、これらの共重合体またはこれらの組み合わせであってもよく、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン(nylon)、これらの共重合体またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0115】
このうち、高分子樹脂71は、ポリオレフィンであってもよい。ポリオレフィンは、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンとポリプロピレンの共重合体(PE-PP)から選択された少なくとも二つの混合物であってもよく、例えばポリプロピレン(PP)およびポリエチレン-ポリプロピレン共重合体(PE-PP)の混合物であってもよい。
【0116】
高分子樹脂71は、約400乃至780nmの波長領域で透過度が約85%以上であってもよい。高分子樹脂71は、一軸方向に延伸されている。前記一軸方向は、後述する二色性染料72の長さ方向と同一であってもよい。
二色性染料72は、高分子樹脂71に分散されており、高分子樹脂71の延伸方向に沿って一方向に配列されている。二色性染料72は、所定の波長領域に対して二つの偏光直交成分のうちの一つの偏光直交成分だけを透過させることができる。
【0117】
二色性染料72は、高分子樹脂71 100重量部に対して約0.01乃至5重量部で含まれてもよい。前記範囲で含まれることによって偏光フィルムとして形成時、透過度を低下させずに十分な偏光特性を示すことができる。前記範囲内で高分子樹脂71 100重量部に対して約0.05乃至1重量部で含まれてもよい。
【0118】
偏光子110は、約100μm以下の比較的に薄い厚さを有することができ、例えば約30μm乃至約95μmの厚さを有することができる。前記範囲の厚さを有することによって、トリアセチルセルロース(TAC)のような保護層が要求される偏光板と比較して厚さを大幅減らすことができ、これによって薄型表示装置を実現することができる。
【0119】
補償フィルム120は、前述したとおりである。
【0120】
光学フィルム100は、補償フィルム120の一面に位置する補正層(図示せず)をさらに含んでもよい。補正層は、例えば色変異防止層(color shift resistant layer)であってもよいが、これに限定されるのではない。
光学フィルム100は、周縁に沿って伸びている遮光層(light blocking layer)(図示せず)をさらに含んでもよい。遮光層は、光学フィルム100の周縁に沿って帯の形態に形成されてもよく、例えば偏光子110と補償フィルム120の間に位置してもよい。遮光層は、不透明な物質、例えば黒色の物質を含んでもよい。例えば遮光層は黒色インクで作られてもよい。
【0121】
光学フィルム100は、多様な表示装置に適用可能である。
一実施形態に係る表示装置は、表示パネル、そして表示パネルの一面に位置する光学フィルムを含む。表示パネルは、液晶表示パネルまたは有機発光表示パネルであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0122】
以下、表示装置の一例として有機発光表示装置について説明する。
図4は、一実施形態に係る有機発光表示装置を概略的に示した断面図である。
図4を参照すると、一実施形態に係る有機発光表示装置は、有機発光表示パネル400、そして有機発光表示パネル400の一面に位置する光学フィルム100を含む。
【0123】
有機発光表示パネル400は、ベース基板410、下部電極420、有機発光層430、上部電極440および封止基板450を含んでもよい。
ベース基板410は、ガラスまたはプラスチックで作られてもよい。
【0124】
下部電極420および上部電極440のうちの一つはアノード(anode)であり、他の一つはカソード(cathode)であってもよい。アノードは正孔(hole)が注入される電極であり、仕事関数(work function)が高く、発光した光が外部に出ることができる透明導電物質から作られてもよく、例えばITOまたはIZOであってもよい。カソードは電子(electron)が注入される電極であり、仕事関数が低く、有機物質に影響を与えない導電物質で作られてもよく、例えばアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)より選択されてもよい。
【0125】
有機発光層430は、下部電極420と上部電極440に電圧が印加された時、光を出すことができる有機物質を含む。
【0126】
下部電極420と有機発光層430の間および上部電極440と有機発光層430の間には、付帯層(図示せず)をさらに含んでもよい。付帯層は、電子と正孔のバランスを合わせるための正孔伝達層(hole transporting layer)、正孔注入層(hole injecting layer)、電子注入層(electron injecting layer)および電子伝達層(electron transporting layer)を含んでもよい。
【0127】
封止基板450は、ガラス、金属または高分子で作られてもよく、下部電極420、有機発光層430および上部電極440を封止して外部から水分および/または酸素が流入することを防止することができる。
【0128】
光学フィルム100は、光が出る側に配置されてもよい。例えばベース基板410側に光が出る背面発光(bottom emission)構造である場合、ベース基板410の外側に配置されてもよく、封止基板450側に光が出る前面発光(top emission)構造である場合、封止基板450の外側に配置されてもよい。
【0129】
光学フィルム100は、前述した一体型の偏光子110と一体型の補償フィルム120を含む。偏光子110と補償フィルム120は、それぞれ前述したとおりであり、偏光子110を通過した光が有機発光表示パネル400の電極などのような金属により反射されて表示装置の外側に出ることを防止して外部から流入される光による視認性低下を防止することができる。したがって、有機発光表示装置の表示特性を改善することができる。
【0130】
以下、表示装置の一例として液晶表示装置について説明する。
図5は、一実施形態に係る液晶表示装置を概略的に示した断面図である。
図5を参照すると、一実施形態に係る液晶表示装置は、液晶表示パネル500、そして液晶表示パネル500の一面または両面に位置する光学フィルム100を含む。
【0131】
液晶表示パネル500は、ツイストネマチック(twist nematic、TN)モード、垂直配向(patterned vertical alignment、PVA)モード、イン・プレイン・スイッチング(in plane switching、IPS)モード、OCB(optically compensated bend)モードなどであってもよい。
【0132】
液晶表示パネル500は、第1表示板510、第2表示板520および第1表示板510と第2表示板520の間に介されている液晶層530を含む。
【0133】
第1表示板510は、例えば基板(図示せず)の上に形成されている薄膜トランジスター(図示せず)およびこれに連結されている第1電場生成電極(図示せず)を含んでもよく、第2表示板520は、例えば基板(図示せず)の上に形成されている色フィルター(図示せず)および第2電場生成電極(図示せず)を含んでもよい。しかし、これに限定されず、色フィルターが第1表示板510に含まれてもよく、第1電場生成電極と第2電場生成電極が第1表示板510に共に位置することもできる。
【0134】
液晶層530は、複数の液晶分子を含んでもよい。液晶分子は、陽または陰の誘電率異方性を有することができる。液晶分子が陽の誘電率異方性を有する場合、電場がない状態でその長軸が第1表示板510と第2表示板520の表面に対してほぼ平行になるように配向され、電場が印加された状態でその長軸が第1表示板510と第2表示板520の表面に対してほぼ垂直になるように配向されてもよい。これとは反対に、液晶分子が陰の誘電率異方性を有する場合、電場がない状態でその長軸が第1表示板510と第2表示板520の表面に対してほぼ垂直に配向され、電場が印加された状態でその長軸が第1表示板510と第2表示板520の表面に対してほぼ平行に配向されてもよい。
【0135】
光学フィルム100は、液晶表示パネル500の外側に位置し、図面では液晶表示パネル500の下部および上部にそれぞれ形成されたものと図示したが、これに限定されず、液晶表示パネル500の下部および上部のうちのいずれか一つにだけ形成されてもよい。
【0136】
以下、実施例を通じて前述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0137】
(実施例)
合成例1:エステル酸二無水物化合物M-1の合成
下記反応式M-1により化合物M-1を製造し、中間体I-1および最終生成物である化合物M-1の製造方法を段階1と段階2に分けて以下で詳細に説明する:
【0138】
【化20】
【0139】
段階1:中間体I-1(2,5-Dihydroxybenzoic acid benzyl ester)の合成:
2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-Dihydroxybenzoic acid)(m=77.06gr、0.5mol、mw=154.13g/mol)、ベンジルブロミド(benzylbromide)(m=85.52gr、0.5mol、mw=171.04g/mol)および炭酸水素カリウム(potassium hydrogen carbonate)(m=100.12gr、1mol、mw=100.12g/mol)を0.5Lのジメチルアセトアミド(DMAC)に入れて窒素大気下で65℃で24時間攪拌する。反応が終結した後、前記混合物を3Lの水に注いで攪拌する。反応初期にはオイリーな物質であるが、次第に固形化される。次に、固形物を濾過し洗浄した後、真空下80℃で乾燥して中間体I-1(m=119.7gr、0.49mol、mw=244.25g/mol)を黄白色の粉末状態で得た(収率:98.0%)。
【0140】
=0.60(eluent ethylacetate:hexane= 1:2,TLC silica gel 60 F254);
H NMR(DMSO-d)300MHz,δ,ppm:5.37(s,2H),6.83(d,1H,J12=9Hz),6.99(dd,1H,J12=9Hz,J13=3.0Hz),7.19(d,1H,J13=3.0Hz),7.35-7.50(m,5H),9.25(br s,1H,OH),9.89(br s,1H,OH).
【0141】
段階2:モノマーM-1(Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)の合成:
無水トリメリット酸クロリド(Trimellitic anhydride chloride)(m=115.8gr、0.55mol、mw=210.57g/mol)を1.5Lのアセトニトリルに入れ、100℃で溶解した後、前記溶液に中間体I-1(m=61.06gr、0.25mol、mw=244.2g/mol)を添加する。200mLのアセトニトリルに溶解されたトリエチルアミン溶液(m=55.65gr、0.55mol、mw=101.19g/mol)を100℃で前記反応混合物に滴加し、30分間激しく攪拌する。次に、不溶性物質を除去するために前記結果物を4時間還流後、熱い状態で濾過した後、溶液を室温で冷却させて白色の結晶性沈殿物を得る。前記沈殿物を濾過し、少量のアセトニトリルで洗浄した後、得られた白色の固体に酢酸無水物(m=102.09gr、1mol、mw=102.09g/mol)を添加しながら1.5Lのアセトニトリルで2回再結晶化する。結晶化された固体を少量のアセトニトリルで洗浄した後、90℃、真空雰囲気で24時間乾燥して、モノマーM-1(m=118.5gr、0.2mmol、mw=592.48g/mol)を白色の結晶性固体で得た(収率:80%)。
【0142】
H NMR(DMSO-d)300MHz,δ,ppm:5.21(s,2H),7.20-7.30(m,5H),7.67(d,1H,J12=8.7Hz),7.85(dd,1H,J12=8.7Hz,J13=2.7Hz),8.14(d,1H,J13=2.7Hz),8.24(dd,1H,J12=8.1Hz,J14=0.6Hz),8.30(d,1H,J12=8.1Hz),8.46-8.47(m,1H),8.55(dd,1H,J12=8.1Hz,J13=1.5Hz),8.65-8.68(m,2H);
HRMS APCI(m/z) for C321612:592.0607(measured mass),592.0643(calculated mass) for [M]
Thermal analysis:TGA(heating 10C/min,N atmosphere):1wt% loss(268℃);
【0143】
合成例2:エステル酸二無水物化合物M-18の合成
下記反応式M-18により化合物M-18を製造し、中間体I-18と最終生成物である化合物M-18の製造方法をそれぞれ段階1および段階2に分けて以下で詳細に説明する:
【0144】
【化21】
【0145】
段階1:中間体I-18(2,5-Dihydroxybenzoic acid 4-N,N-dibutylcarbamoylbenzyl ester)の合成:
0.2Lのジメチルアセトアミド(DMAC)に2,5-ジヒドロキシ安息香酸 (2,5-Dihydroxybenzoic acid)(mw=154.12g/mol、99.35mmol、m=15.31gr)、N,N-ジブチル-4-クロロメチルベンズアミド(N,N-dibutyl-4-chloromethylbenzamide)(mw=281.83g/mol、99.35mol、m=33.17gr)、および炭酸水素カリウム(mw=100.12g/mol、200mmol、m=20.02gr)を入れ、窒素大気下で65℃で24時間反応させて中間体I-1と類似する方法で中間体I-18を合成する。反応が終了した後、前記混合物を1.5Lの水に注いで沈殿された白色の粘っこい固形物を濾過し、水で洗浄し、乾燥した後、ヘキサン/ジクロロメタン約400mLで結晶化した。白色の結晶性物質を濾過し、ヘキサンで洗浄した後、80℃に減圧下で24時間乾燥させる。最終生成物は白色の結晶性固体である。R=0.23(eluent ethylacetate:hexane=1:2,TLC silica gel 60 F254),m=31.4gr(mw=399.49g/mol,78.60 mmol),収率79.1%.mp=117-119℃.
【0146】
H NMR(DMSO-d)300 MHz,δ,ppm:0.65-0.75(m,3H),0.88-0.98(m, 3H),1.00-1.12(m, 2H),1.27-1.37(m, 2H),1.39-1.49(m,2H),1.51-1.61(m,2H),3.09-3.19(m,2H),3.35-3.45(m,2H),5.40(s,2H),6.83(d,1H,J12=9.0Hz),6.98(dd,1H,J12=9.0Hz,J13=3.0Hz),7.19(d,1H,J13=3.0Hz),7.36(d,2H,J12=8.4Hz),7.53(d,2H,J12=8.4Hz),9.24(br s,1H),9.89(br s,1H).
【0147】
段階2:モノマーM-18(Bis-trimellitic acid anhydride ester of 2,5-Dihydroxybenzoic acid 4-N,N-dibutylcarbamoylbenzyl ester)の合成:
1Lのアセトニトリルに無水トリメリット酸クロリド(trimellitic anhydride chloride)(mw=210.57g/mol、164.13mmol、m=34.56gr)、中間体I-18,2,5-Dihydroxybenzoic acid 4-N,N-dibutylcarbamoylbenzyl ester(mw=399.49g/mol、78.15mmol、m=31.22gr)、およびトリエチルアミン(mw=101.19g/mol、168mmol、m=17gr)を入れて反応させ、モノマーM-1と類似する方法でモノマーM-18を得る。反応が終了した後、褐色溶液を熱い条件で濾過して不溶性物質を除去し、溶液を0.4L体積に濃縮させる。前記熱い溶液からほぼ即時に白色の固体が沈殿する。前記固体を濾過し、少量のアセトニトリルで洗浄する。粗生成物をアセトニトリル(500mL)および酢酸無水物(30mL)の混合物から2回再結晶化した後、生成物を真空85℃で24時間乾燥してモノマーM-18を白色の結晶性固体で得る。m=35.09gr(mw=747.72g/mol、46.93mmol)、収率60.5%。
【0148】
H NMR(DMSO-d)300MHz,δ,ppm:0.62-0.72(m,3H),0.90-1.08(m,5H),1.25-1.60(m,6H),3.00-3.10(m,2H),3.35-3.45(m,2H),5.24(s,2H),7.11(d,2H,J12=8.1Hz),7.32(d,2H,J12=8.1Hz),7.65(d,1H,J12=8.7Hz),7.85(dd,1H,J12=9.0Hz,J13=3.0Hz),8.15(d,1H,J13=3.0Hz),8.19(d,1H,J12=7.8Hz),8.29(d,1H,J12=8.4Hz),8.40(br s,1H),8.49(dd,1H,J12=7.8Hz,J13=1.5Hz),8.65-8.68(m,2H).
Thermal analysis:TGA(heating 10 ℃/min,N atmosphere):1wt% loss(332.8 ℃); DSC(heating 10 ℃/min,N atmosphere): mp=180.0 C.
【0149】
実施例1乃至10および比較例1乃至3:ポリ(エステル-イミド)の製造
実施例1
25℃、窒素大気下で、4.6113g(0.0144mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の40mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)7.5837g(0.0128mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)1.4216g(0.0032mol)、および26mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。その後、末端キャッパー(end-cappaer)として0.476ml(0.00288mol)のオクチルアミン(octyl amine:OA)を添加し、反応混合物を25℃で2時間攪拌することによって、オクチルアミン(OA)で末端キャッピングされたポリ(エステル-アミック酸)溶液を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に3.9ml(0.0418mol)の酢酸無水物と3.4ml(0.0418mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られた1.8gのポリ(エステル-イミド)を8.2gのDMAcに溶かして18重量%溶液を製造する。
【0150】
図6に示したように、前記の得られたオクチルアミンで末端キャッピングされたポリマーの構造をH-NMRスペクトロスコーピー(Bruker AVANCE DPX 300 spectrometer(300MHz))で確認した。0.85 ppm 、1.25 ppm 、および1.64ppmでの化学的シフトは、オクチルアミンの脂肪族陽子から起因したものである。
【0151】
前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を次のような方法で測定し、それぞれ下記表1に示す。
(1)溶液粘度はDMAc内18重量%ポリマー溶液に対してコーン直径40mmおよびコーン角2°を有するコーンおよびプレート形状を用いてAR2000レオメートル(rheometer)で測定する。
(2)DMAc内0.5g/dlポリマー溶液のインヘレント粘度(ηinh)をCannon Polyvis Automated Viscosimeterで測定する。
(3)ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量方均分資糧(Mw)、および多分散度(Polydispersity)は、それぞれポリスチレン標準を用い、0.5ml/minの流れ速度で、溶媒としてDMFを用い、Acquity APC Chromatograph(Waters)で測定する。
【0152】
実施例2
25℃、窒素大気下で、2.8821g(0.009mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の30mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)4.7398g(0.008mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)0.8885g(0.002mol)、および13mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。その後、末端キャッパー(end-cappaer)として0.316ml(0.002mol)の4-フェニルブチルアミン(4-phenylbutyl amine:PBA)を添加し、反応混合物を25℃で2時間攪拌することによって、4-フェニルブチルアミン(PBA)で末端キャッピングされたポリ(エステル-アミック酸)溶液を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に2.8ml(0.03mol)の酢酸無水物と2.4ml(0.03mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造する。
【0153】
前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0154】
実施例3
末端キャッパーとしてアリルアミン(AA)0.150ml(0.002mol)を用いた点を除き、残りは前記実施例2と同様な方法を用いてポリ(エステル-イミド)を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を表1に示す。
【0155】
実施例4
末端キャッパーとしてブチルアミン(BA)0.198ml(0.002mol)を用いた点を除き、残りは前記実施例2と同様な方法を用いてポリ(エステル-イミド)を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を表1に示す。
【0156】
実施例5
末端キャッパーとしてヘキサデシルアミン(HDA)0.539g(0.002mol)を用いた点を除き、残りは前記実施例2と同様な方法を用いてポリ(エステル-イミド)を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を表1に示す。
【0157】
実施例6
末端キャッパーとしてドデシルアミン(DDA)0.3707g(0.002mol)を用いた点を除き、残りは前記実施例2と同様な方法を用いてポリ(エステル-イミド)を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を表1に示す。
【0158】
実施例7
25℃、窒素大気下で、2.786g(0.0087mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の30mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)4.7398g(0.008mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)0.8885g(0.002mol)、および12.5mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。その後、末端キャッパー(end-cappaer)として0.430ml(0.0026mol)のオクチルアミン(octyl amine:OA)を添加し、反応混合物を25℃で2時間攪拌することによって、オクチルアミン(OA)で末端キャッピングされたポリ(エステル-アミック酸)溶液を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に2.8ml(0.03mol)の酢酸無水物と2.4ml(0.03mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0159】
実施例8
末端キャッパーとしてオクチルアミン(OA)0.33ml(0.002mol)を用いた点を除き、残りは前記実施例7と同様な方法を用いてポリ(エステル-イミド)を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、表1に示す。
【0160】
実施例9
25℃、窒素大気下で、2.5618g(0.008mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の30mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)4.7398g(0.008mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)0.8885g(0.002mol)、および11mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。その後、末端キャッパー(end-cappaer)として0.330ml(0.002mol)のオクチルアミン(octyl amine:OA)を添加し、反応混合物を25℃で2時間攪拌することによって、オクチルアミン(OA)で末端キャッピングされたポリ(エステル-アミック酸)溶液を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に2.8ml(0.03mol)の酢酸無水物と2.4ml(0.03mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0161】
実施例10
25℃、窒素大気下で、2.786g(0.0087mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の30mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例2で製造されたモノマーM-18(2,5-ジヒドロキシ安息香酸4-N,N-ジブチルカルバモイルベンジルエステルのビス-トリメリット酸無水物エステル(Bis-trimellitic acid anhydride ester of 2,5-Dihydroxybenzoic acid 4-N,N-dibutylcarbamoylbenzyl ester))5.9817g(0.008mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)0.8885g(0.002mol)、および17mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。その後、末端キャッパー(end-cappaer)として0.430ml(0.0026mol)のオクチルアミン(octyl amine:OA)を添加し、反応混合物を25℃で2時間攪拌することによって、オクチルアミン(OA)で末端キャッピングされたポリ(エステル-アミック酸)溶液を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に2.8ml(0.03mol)の酢酸無水物と2.4ml(0.03mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0162】
比較例1
25℃、窒素大気下で、4.6113g(0.0144mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の50mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)7.5837g(0.0128mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)1.4216g(0.0032mol)、および16mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に4ml(0.0432mol)の酢酸無水物と3.5ml(0.0432mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0163】
比較例2
25℃、窒素大気下で、4.4576g(0.01392mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の50mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例1で製造されたモノマーM-1(ベンジル-2,5-ジヒドロキシ-ベンゾエートのビス-トリメリット酸無水物エステル:Bis-trimellitic acid anhydride ester of benzyl-2,5-dihydroxy-benzoate)7.5837g(0.0128mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride) 1.4216g(0.0032mol)、および15.5mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に3.9ml(0.0418mol)の酢酸無水物と3.4ml(0.0418mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0164】
比較例3
25℃、窒素大気下で、2.786g(0.0087mol)のTFDBを機械攪拌機および窒素流入器が備えられた250mlの二重壁反応器内の30mlのDMAcに溶かす。次に、前記溶液に、合成例2で製造されたモノマーM-18(2,5-ジヒドロキシ安息香酸4-N,N-ジブチルカルバモイルベンジルエステルのビス-トリメリット酸無水物エステル(Bis-trimellitic acid anhydride ester of 2,5-Dihydroxybenzoic acid 4-N,N-dibutylcarbamoylbenzyl ester)5.9817g(0.008mol)と、6FDA(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride)0.8885g(0.002mol)、および17mlのDMAcを添加した後、25℃で24時間反応させてポリ(エステル-アミック酸)溶液(固形分含有量18重量%)を得る。前記ポリ(エステル-アミック酸)溶液に2.5ml(0.0261mol)の酢酸無水物と2.1ml(0.0261mol)のピリジンを徐々に添加し、25℃で15時間攪拌して化学的イミド化を完了する。得られたポリ(エステル-イミド)を蒸溜水に沈殿させた後、エタノールで洗浄する。白色の沈殿物を濾過して、80℃で一晩中真空乾燥する。得られたポリ(エステル-イミド)をDMAcに溶かして18重量%溶液を製造し、前記ポリマー溶液の粘度、インヘレント粘度(ηinh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(PDI:Polydispersity Index)を、前記実施例1で記載した方法で測定して表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
前記表1に示したように、実施例1乃至10によるポリ(エステル-イミド)は、酸二無水物含有量に対してジアミンの含有量を約0.8乃至約0.95のモル比で反応させることによって、両末端がアンハイドライドであるポリ(エステル-アミック酸)で製造された後、ここに末端キャッパーとしてモノアミンを追加反応させることによって、両末端がアルキル置換されたアミノ基でキャッピングされたポリ(エステル-イミド)で製造され得る。また、前記モル比で反応させることによって、その結果、ポリマーの分子量およびインヘレント粘度を適正範囲に調整することができる。
【0167】
フィルムの製造および評価
実施例1乃至実施例10および比較例1乃至比較例3で製造したポリマー溶液のそれぞれをガラス基板(5X5cm)に滴下し、600乃至3,000rpmの回転速度でスピンコーティングする。スピンコーティングされたサンプルを80℃ヒーティングプレートの上で30分間予備乾燥して過剰の溶媒を蒸発させる。その後、窒素大気下で10℃/minの加熱速度で200℃まで加熱した後、1時間維持、乾燥させて、それぞれの実施例および比較例によるポリ(エステル-イミド)フィルムを製造する。
【0168】
前記製造されたフィルムのそれぞれの光学的特性、つまり、フィルムの全波長透過率(%)、450nmでの透過率(%)、黄色指数(YI)、ヘイズ(%)、面内屈折率(nxy)、厚さ方向屈折率(n)、および厚さ方向複屈折(out-of-plane birefringence Δnth)と、ガラス転移温度(Glass transition temperature:T)、および5%重量損失温度(Td5%)のような熱特性を下記表2に示す。前記フィルムの光学的特性および熱特性の測定方法は次のとおりである:
【0169】
(1)フィルムの光学的特性(透過率、黄色指数、およびヘイズ)は「Konica Minolta CM3600d」スペクトロフォトメーターをtransmittance opacity/hazeモードで用いて測定する。全波長透過率(Tr@Total)は360nm乃至700nm波長範囲で測定する。
(2)フィルムの屈折率nxy、n、および厚さ方向複屈折Δnthは、450nm波長でプリズムカプラー(Metricon MODEL 2010/M)を用いて測定する。
(3)フィルムのガラス転移温度(Glass transition temperature(Tg))は、thermal mechanic alanalyzer(TMA Q400、TA Instruments)を用いて0.05Nの固定引張力(fixed tension force)、および5℃/minの昇温速度で50℃乃至400℃の温度範囲で測定する。
(4)フィルムの5%重量損失温度(Td5%)は、窒素大気下で10℃/分の昇温速度でDiscovery TGA(TA Instruments社製品)を用いてポリマーの熱重量分析(Thermal Gravimetrical Analysis:TGA)により測定する。
【0170】
【表2】
【0171】
表2から分かるように、実施例1乃至実施例10により製造された、両末端が置換もしくは非置換のアルキルアミノ基でキャッピングされたポリ(エステル-イミド)フィルムは、高い光透過率、低い黄色指数およびヘイズ、そして高い厚さ方向複屈折を有すると共に、340℃以上の高い5%重量損失温度を有しながらも、ガラス転移温度(Tg)が200℃以下の低いフィルムで製造され得る。特に、ポリマー両末端のキャッパー部分を除いた残りのフィルムの組成が全て同一な実施例1乃至実施例6によるフィルムから、両末端キャッパーの脂肪族炭素数が増加するほどガラス転移温度(Tg)が低くなることが分かる。反面、前記キャッパーの脂肪族炭素数の増加は、フィルムの他の光学的または熱的特性にはほとんど影響を与えないことが分かる。したがって、一実施形態により両末端に置換もしくは非置換の脂肪族アルキル基で置換されたアミノ基キャッパーは、前記フィルム内で一種の可塑剤(plasticizer)としての役割を果たすことによって、フィルムの耐熱特性に影響を与えず、ガラス転移温度だけを有効に低めることができることが分かる。
【0172】
実施例1と実施例7および実施例9の場合、フィルムを形成する成分と末端キャッパーの種類も全て同一であるが、酸二無水物含有量に対してジアミン含有量の差がある。この場合、酸二無水物含有量に対してジアミンの含有量が低くなるほど、製造されるポリマーの分子量が減少し、これによってフィルムのガラス転移温度も減少するが、フィルムの重量損失温度および厚さ方向複屈折も減少する傾向がある。一方、実施例7と実施例8から分かるように、酸二無水物含有量に対してジアミンの含有量比が同一である場合、末端キャッパーの含有量が高い実施例7によるポリマーが実施例8によるポリマーより分子量が減少するが(表1参照)、表2から分かるように、末端キャッパー含有量が高い実施例7の熱安定性がより高いことが分かる。
【0173】
一方、両末端に置換もしくは非置換のアルキル基で置換されたアミノ基でキャッピングされていない点を除いては、実施例1と同一の組成を有する比較例1によるフィルムの場合、実施例1に比べて比較例1によるフィルムの厚さ方向複屈折がより低く、ガラス転移温度もより高い反面、5%重量損失温度はより低いことが分かる。
【0174】
また、両末端に置換もしくは非置換のアルキル基で置換されたアミノ基でキャッピングされていない点を除いては、実施例7と同一の組成を有する比較例2によるフィルムの場合にも、実施例7に対して比較例2によるフィルムの厚さ方向複屈折はより低く、ガラス転移温度は約10℃程度もより高い反面、5%重量損失温度はより低いため、熱安定性がより低いことが分かる。
【0175】
また、両末端に置換もしくは非置換のアルキル基で置換されたアミノ基でキャッピングされていない点を除いては、実施例10と同一の組成を有する比較例3によるフィルムの場合にも、実施例10に対して比較例3によるフィルムの厚さ方向複屈折は類似しているが、ガラス転移温度は10℃超過より高い反面、5%重量損失温度はより低いため、熱安定性がより低いことが分かる
【0176】
このように、一実施形態により両末端に置換もしくは非置換のアルキル基で置換されたアミノ基でキャッピングされたポリイミドまたはポリ(エステル-イミド)は、両末端がキャッピングされていないポリイミドまたはポリ(エステル-イミド)と比較して同等な程度の優れた光学特性および耐熱性を有しながらも、顕著に低いガラス転移温度を有することによって、フィルム製造時、優れた加工性を確保して産業上非常に有利であることが分かる。
【0177】
以上を通じて本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0178】
100:光学フィルム
110:偏光子
120:補償フィルム
50:表示パネル
400:有機発光表示パネル
410:ベース基板
420:下部電極
430:有機発光層
440:上部電極
450:封止基板
500:液晶表示パネル
510:第1表示板
520:第2表示板
530:液晶層
図1
図2
図3
図4
図5
図6