(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ロジンエマルションサイズ剤
(51)【国際特許分類】
D21H 21/16 20060101AFI20240219BHJP
D21H 17/62 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
D21H21/16
D21H17/62
(21)【出願番号】P 2019211870
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018219772
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成田 行徳
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040021(JP,A)
【文献】特開2015-105452(JP,A)
【文献】特公昭54-020499(JP,B2)
【文献】特開2014-014867(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098240(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(A1)とα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との反応物である強化ロジン類(A2)を含有するロジン系物質を乳化分散してなるロジンエマルションサイズ剤であって、
ロジン類(A1)が、原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジン類(a)と、スラッシュマツに由来するロジン類(b)とを含有することを特徴とする、ロジンエマルションサイズ剤。
【請求項2】
前記ロジン類(a)とロジン類(b)の質量比が10/90~90/10である、請求項1に記載のロジンエマルションサイズ剤。
【請求項3】
前記ロジン系物質が、さらにロジン類(A1)のエステル化物であるロジンエステル類(A3)及び/又は該ロジンエステル類(A3)と不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との反応物(A4)を含有する、請求項1又は2に記載のロジンエマルションサイズ剤。
【請求項4】
前記ロジン系物質が、前記(A1)乃至(A4)成分を、[(A1)+(A2)]/[(A3)+(A4)]=50/50~100/0の質量比で含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のロジンエマルションサイズ剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項におけるロジンエマルションサイズ剤をパルプスラリーへ添加しサイジングを行うことを特徴とする紙の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項におけるロジンエマルションサイズ剤を紙に塗工してサイジングを行うことを特徴とする紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジンエマルションサイズ剤に関するものであり、詳しくは原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジン類を使用しても乳化性が良好で、製紙工程における発泡が少なく、サイズ効果に優れるロジンエマルションサイズ剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年中国産ガムロジンの価格変動に伴いその供給が不安定になっており、製紙用サイズ剤の原料として東南アジア産のロジンが注目されている(非特許文献1及び2参照)。
中でも、インドネシアやベトナム等で産出されるメルクシマツに由来するロジンは価格や供給面で有利である。しかし、アビエチン酸類の割合が低く、また乳化性が悪いため、十分なサイズ効果が得られないなど、中国産ガムロジンと比較してエマルションサイズ剤の原料ロジンとしては適していない。
【0003】
分散剤を増量することで乳化性は改善するが、過剰の分散剤は抄紙系での発泡の原因となり操業性を悪化させるため、それを抑制するべく消泡剤を添加する必要が生じる。発泡性がより高くなると消泡剤の添加量を更に多くする必要が生じるため、製紙工程全体としてのコストの増加につながる。
【0004】
特許文献1には、東南アジア産のロジンに二塩基性ジテルペンカルボン酸が多く含まれていて酸価が高いことがその用途が制約される原因であるとして、これを抽出除去するロジンの精製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】B.Wiyono, S.Tachibana, Pakistan Journal of Biological Sciences 11(15),1884-1892,2008“Maleo-and Fumaro-Pimaric Acids Synthesized from Indonesian Pinus merkusii Rosin and Their Sizing Properties”
【文献】B.Wiyono, S.Tachibana, D.Tinambunan, Pakistan Journal of Biological Sciences 9(1),7-14,2006“Chemical Composition of Indonesian Pinus merkusii Turpentine Oils Gum Oleoresins and Rosins from Sumatra and Java”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メルクシマツ由来のロジンに10質量%程度含まれるジヒドロアガト酸は、分子の両端にカルボキシル基を2個有する構造から、ロジン類の乳化を阻害する成分であると考えられる。そのため、特許文献1に開示されている方法等により精製除去することが望ましいが、製造工程が複雑になり、コストの増加を招く。
【0008】
そこで、本発明者は、メルクシマツ由来のロジンに乳化性の良好な中国産ロジンを各種割合で混合することを検討した。しかし、分散剤の量を増やさずに乳化性を改善するには中国産ロジンを相当量混合する必要があり、サイズ剤として必要な性能と経済性をともに満足できるものは得られなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジンを使用しても乳化性が良好で、製紙工程における発泡が少なく、サイズ効果に優れるロジンエマルションサイズ剤の提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため、ジヒドロアガト酸の2個のカルボキシル基のうちの一方が反応性の高い一級カルボキシル基であることに着目し、これと活性水素原子を有する化合物とを反応させてエステル化すれば乳化を阻害しなくなるのではないかと考えた。そして、その考えに基づき、ジテルペンアルコールや脂肪族アルコールなどのアルコール成分を含むスラッシュマツに由来するロジン類をメルクシマツに由来するロジン類とともに溶融混合することを着想して、従来の工程を変更することなく、乳化性が改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]ロジン類(A1)、及び/又はロジン類(A1)とα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との反応物である強化ロジン類(A2)を含有するロジン系物質を乳化分散してなるロジンエマルションサイズ剤であって、
ロジン類(A1)が、原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジン類(a)と、スラッシュマツに由来するロジン類(b)とを含有することを特徴とする、ロジンエマルションサイズ剤。
[2]前記(a)成分と(b)成分の質量比が10/90~90/10である、[1]に記載のロジンエマルションサイズ剤。
[3]前記ロジン系物質が、さらにロジン類(A1)のエステル化物であるロジンエステル類(A3)及び/又は該ロジンエステル類(A3)と不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との反応物(A4)を含有する、[1]又は[2]に記載のロジンエマルションサイズ剤。
[4]ロジン系物質が、前記(A1)乃至(A4)成分を、(A1+A2)/(A3+A4)=50/50~100/0の質量比で含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のロジンエマルションサイズ剤に関する。
[5][1]~[4]のいずれかにおけるロジンエマルションサイズ剤をパルプスラリーへ添加しサイジングを行うことを特徴とする紙の製造方法。
[6][1]~[4]のいずれかにおけるロジンエマルションサイズ剤を紙に塗工してサイジングを行うことを特徴とする紙の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な操作をすることなくメルクシマツ由来のロジンの乳化性を改善することができ、それを原料ロジンとして使用しても、製紙工程での発泡が少なく、サイズ効果に優れるロジンエマルションサイズ剤の提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<ロジン類(A1)>
本発明のロジンエマルションサイズ剤は、原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジン類(a)と、スラッシュマツに由来するロジン類(b)とを含有するロジン類(A1)を用いる。
【0014】
メルクシマツ(Pinus merkusii)は、東南アジアを主な原産地とするマツ科の植物であり、ベトナム、カンボジア、インドネシア等で生育している。また、ラオスを産地とするメルクシマツは、ラオス松と別称されることがある。
【0015】
メルクシマツに由来するロジン類(a)としては、例えば、メルクシマツから採取された生松脂や、これを蒸留・精製してなるガムロジン、メルクシマツ材を使用して得られるトール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。
【0016】
スラッシュマツ(Pinus elliottii)は、アメリカ合衆国南東部を主な原産地とするマツ科の植物であり、現在は中国や東南アジア、タイなどでも植林されている。特に中国を産地とするスラッシュマツは、湿地松と別称されることがある。なお、本発明において、スラッシュマツには湿地松とカリビアマツの混種であるハイブリッドマツも含まれる。
【0017】
スラッシュマツに由来するロジン類(b)としては、例えば、スラッシュマツから採取された生松脂や、これを蒸留・精製してなるガムロジン、スラッシュマツ材を使用して得られるトール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。
【0018】
本発明のロジンエマルションサイズ剤は、原料ロジンとしてメルクシマツに由来するロジン類(a)と、スラッシュマツに由来するロジン類(b)を含有する混合ロジンを用いることで、ロジン類(a)の乳化性を改善することができる。これは、ロジン類(a)中のジヒドロアガト酸の一級カルボキシル基がロジン類(b)に含まれるアルコール成分と反応して乳化を阻害しない構造に変化するためであると考えられる。そのため、ロジン類(a)とロジン類(b)はかかるエステル化反応が進行するよう十分溶融混合することが好ましく、例えば150~300℃、好ましくは200~280℃で0.5~10時間溶融混合することが好ましい。
【0019】
メルクシマツに由来するロジン類(a)と、スラッシュマツに由来するロジン類(b)の質量比は、乳化性の観点から、(a)/(b)=10/90~90/10が好ましく、20/80~80/20がより好ましく、30/70~70/30が特に好ましい。
【0020】
原料ロジンには、メルクシマツやスラッシュマツ以外の松に由来するロジン類(c)(以下、「(c)成分」という。)が含有されていてもよい。そのような松としては、馬尾松(Pinus massoniana)、雲南松(Pinus yunnanensis)、ケシア松(Pinus kesiya)、樟子松(Pinus sylvestris var. mongolica)、アレッポ松(Pinus halepensis)等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、このロジン類(A1)の他に、ロジン類(A1)とα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との反応物である強化ロジン類(A2)の少なくとも1種、さらにロジン類(A1)を用いたロジンエステル類(A3)及び強化ロジンエステル類(A4)の少なくとも1種のロジン系物質を使用することができ、また、これらを2種以上併用してもよい。これらのロジン系物質の配合割合については、ロジンエマルションサイズ剤が使用される抄紙工程の条件により適宜変更することができる。例えば抄紙工程のpHが4.0~5.5程度である場合は、強化ロジン類の配合量を50質量%~100質量%、ロジンエステル類及び/又は強化ロジンエステル類を0~50質量%配合して使用することが好ましく、抄紙工程のpHが5.0~8.0程度である場合は、強化ロジン類を10~60質量%、ロジンエステル類及び/又は強化ロジンエステル類を20~90質量%配合し使用することが好ましい。
【0022】
強化ロジン類(A2)は、前述のロジン類(A1)にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を1~20質量%、好ましくは3~18質量%付加反応させたものである。α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物として挙げられるものとしてはフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等のα,β-不飽和二塩基性カルボン酸及びその無水物、アクリル酸及びメタクリル酸等のα,β-不飽和一塩基性カルボン酸が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種又は2種類以上併用して使用できる。
【0023】
ロジンエステル類(A3)は、上記ロジン類(A1)とアルコール類、フェノール類、エポキシ化合物類等とのエステル化反応によって得られる。完全及び/又は部分エステル化物を含むとともに、未反応ロジン類を含んでも良い。アルコール類としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール等が挙げられる。フェノール類としてはヒドロキノン、ピロガロール、ビスフェノールA等を例示できる。エポキシ化合物としてはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。エステル化反応は、これらアルコール類、フェノール類、エポキシ化合物類の中から少なくとも1種又は2種類以上併用して反応が行える。反応方法は公知の方法で行うことが可能である。
【0024】
強化ロジンエステル類(A4)は、ロジンエステル類にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物等を付加させたものである。付加反応はエステル化反応前、エステル化反応と同時、エステル化反応後のいずれの段階でもよい。
【0025】
さらに上記ロジン系物質に本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ロジン類の変成物である水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、アルデヒド変性ロジンなどや、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、パラフィンワックス類、石油樹脂類などを併用することも可能である。併用する場合は、これら化合物を変性前、変性後いずれの段階でも上記ロジン類(A)に添加し使用して良く、これらのうち1種又は2種類以上併用しても本発明の効果を阻害しない範囲では構わない。さらに本発明の効果を阻害しない範囲でアルキルケテンダイマーやアルケニルコハク酸無水物、脂肪酸アミドなども上記ロジン系物質に併用することも可能である。
【0026】
本発明のロジンエマルションサイズ剤の製造には、分散剤を使用することができる。
【0027】
分散剤としては、a)疎水性ビニル系モノマー類、b)アニオン性水溶性ビニル系モノマー類及びc)ノニオン性水溶性ビニル系モノマー類のそれぞれに属する少なくとも1種のビニル系モノマーを必須成分として重合させてなる分散剤を用いることができる。
【0028】
a)疎水性ビニル系モノマー類としては、炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数5~20の(メタ)アクリル酸脂環基エステル、或いは芳香族オレフィン、脂肪族オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、2種以上併用することができる。これらの中でも、特にブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、などやスチレン類、スチレン系化合物のモノマーが好ましく、さらにはブチルアクリレートやシクロヘキシルメタクリレート、スチレンが好ましい。
分散剤中のa)成分の好ましい共重合割合は、a)~c)のモノマー類の合計100質量%に対し、6~80質量%であり、さらに好ましくは7~70質量%である。6質量%未満の場合、ロジン系物質と分散剤との親和性が低下し、80質量%を超える場合はロジン系物質との親和性が良好になるものの水性分散媒への親和性が低下し、良好な乳化性の分散剤が得られなくなる。
【0029】
次に使用するb)アニオン性水溶性ビニル系モノマー類としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアルキルスルホン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルリン酸エステルなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリルリン酸エステルおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり2種以上併用することができる。これらの中ではメタクリル酸、イタコン酸が好ましい。分散剤中のb)成分の好ましい共重合割合は、6~50質量%であり、さらに好ましくは7質量%~40質量%である。6質量%未満の場合には分散剤の親水性が低下し良好な乳化性が得られず、50質量%を超えると、その分散剤により得られるエマルションを含有するロジンエマルションサイズ剤の機械的安定性が悪くなる傾向がある。
【0030】
c)ノニオン性水溶性ビニル系モノマー類としては(メタ)アクリルアミド、N,N-アルキル(C1~2)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルエステルなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルエステル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルエステルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリルエステルから選ばれる少なくとも1種類であり、2種類以上併用することができる。これらの中ではアクリルアミドが好ましい。c)成分の好ましい共重合割合は0~70質量%であり、さらに好ましくは0質量%~60質量%である。70質量%を超えると、良好な乳化性が得られなくなる。
【0031】
また上記(a)~(c)成分の他にアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アミノヒドロキシアルキルビニルエーテル、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジアリルアミンなどやこれらの第4級アンモニウム塩のカチオン性モノマーやメチレンビスアクリルアミド等の多官能アクリルアミド類、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋性多官能モノマーも分散剤の乳化性能を阻害しない範囲で使用できる。
【0032】
また重合調整剤としては、メルカプタン類としてn-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、チオフェノール、チオ安息香酸、チオサリチル酸、ナフタレンチオール、トルエンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトグリコール、チオグリセリン、システアミン塩酸(塩)、メルカプトプロピオン酸(塩)、チオグリコール酸(塩)、チオ酢酸(塩)チオリンゴ酸(塩)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシルなどのアルキル基やエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの多価水酸基を有するチオグリコール酸エステル及びメルカプトプロピオン酸エステル類や、テルピノレン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレン2量体等を分散剤の乳化性能を阻害しない範囲で使用できる。
【0033】
該分散剤の製造における重合方法については、溶液重合、乳化重合、懸濁重合など従来公知の方法で行うことができる。溶液重合の場合は水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ターシャルブチルアルコールなどの低級アルコール類やアセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン等の溶剤を使用して重合する。これらの溶剤において2種以上併用して使用することも可能である。乳化重合の場合は公知のアニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤を使用し、前記溶剤下において重合をする。
【0034】
ラジカル重合触媒としては、公知のものが使用できる。例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、これら過硫酸塩と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合触媒、あるいは2’2-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系触媒、もしくは過酸化水素、t-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を挙げることができる。
【0035】
得られた重合物は必要に応じて共重合体中の酸を無機及び/又は有機アルカリにより中和し使用することも可能である。中和に用いる無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、有機アルカリとしてはアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられる。無機及び/又は有機アルカリによる中和は重合前、重合後、いずれの機会において、必要に応じて、また重合を阻害しない範囲で、且つ分散剤の性能を阻害しない範囲で行うことができる。
【0036】
こうして得られる分散剤は、重量平均分子量(Mw)で、Mw1,000~700,000程度で好ましくは50,000~500,000である。重量平均分子量が、その範囲以下の場合ロジン系物質に対する乳化力が劣り、それ以上であるとこれを使用したサイズ剤の粘度が高くなる傾向があるため、乳化力が低下し好ましくない。
【0037】
分散剤の使用量(固形分換算)は、ロジン系物質の全固形分100重量部に対して、乳化性と抄紙系での発泡の抑制の観点から好ましくは5~12重量部、より好ましくは6~10重量部である。
【0038】
またロジン系物質を乳化する方法は、特に限定されず公知の方法(例えば米国特許第2393179号、米国特許第3565755号、米国特許4157982号)で製造可能である。例えば、転相乳化法、溶剤乳化法、機械乳化法などいずれの方法でも乳化することができる。剪断力、圧力などの乳化条件を最適化させることにより、望まれる粒子径および粒度分布のロジンエマルションを得ることができる。
【0039】
また本発明の効果を害しない範囲で、乳化の際に公知の界面活性剤や高分子系共重合体を併用することも可能である。併用可能な界面活性剤として、カチオン性界面活性剤としてはアルキルアミン塩およびその4級化物、アルキルアミドアミン、ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンロジンエステル、アニオン性界面活性剤としてはロジン類及び強化ロジン類のアルカリ中和塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ナフタレン系スルホン酸塩、ASAのアルカリ塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高分子系共重合体としてはスチレン-メタクリル酸系共重合体や(メタ)アクリルアミド系共重合体などが挙げられる。
【0040】
こうして得られるロジンエマルションサイズ剤の粘度は好ましくは100mPa・s以下であり、粒子径0.01~1.0μmである。粘度が100mPa・sを超える場合、製品が皮張りしやすくなり凝集物が発生しやすくなり、粒子径が1.0μmを超える場合、サイズ効果が低下したり保管中に沈降物が多く生じたりする。
【0041】
本発明のロジン系エマルションサイズ剤を用いるサイジング方法は公知の方法で行うことができる。例えば抄造時のウェットエンドで添加する場合にはロジン系エマルションサイズ剤をパルプスラリーに対し固形分換算で0.01%~10%添加する。その添加時のパルプスラリーのpHは4.0~9.0の範囲である。またコーターにて塗工液に添加し表面サイズ剤としても使用可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、配合量は質量部で示す。
【0043】
原料ロジン及び強化ロジン中のジヒドロアガト酸の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製GCMS-QP2010)で測定した。
【0044】
分散剤の重量平均分子量の測定は、下記条件により行った。
測定器:東ソー(株)製 GPC-8020 mode III
カラム:(株)東ソーGPWXL
測定温度:40℃
検出器:示差屈折計
また、粘度の測定にはB型粘度計(株式会社東京計器製 形式:BM)を使用した。
【0045】
ロジンエマルションサイズ剤の粒子径の測定には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD-2100)を使用した。なお、前記粒子径は、体積平均粒子径を元にした粒子径分布において、全粒子量に対する積算粒子量が50%となる粒子径(いわゆるメディアン径)を意味し、以下同様とする。
【0046】
<ロジンのフマル酸強化物の製造例>
製造例1
原料ロジンとしてインドネシア産メルクシマツ(pinus.merkusii)由来のガムロジン(a)70部と、ブラジル産スラッシュマツ(pinus.elliottii)由来のガムロジン(b)30部を1L四つ口フラスコに仕込み、250℃で加熱溶融させた。その後フマル酸を10部添加し、同温度で3時間保持し、フマル酸強化ロジン(A2-1)を得た。原料ロジンの溶融直後に約7%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0047】
製造例2、3
原料ロジンの仕込み部数を表1に示すとおりに変更した以外は製造例1と同様にして、フマル酸強化ロジン類(A2-2)及び(A2-3)を得た。いずれの強化ロジンにおいても、原料ロジンの溶融直後にそれぞれ約5%、約3%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0048】
製造例4
原料ロジンとしてインドネシア産メルクシマツ(pinus.merkusii)由来のガムロジン(a)50部、ブラジル産スラッシュマツ(pinus.elliottii)由来のガムロジン(b)30部と、中国産馬尾松(pinus.massoniana)由来のガムロジン(c)20部を1L四つ口フラスコに仕込み、250℃で加熱溶融させた。その後フマル酸を10部添加し、同温度で3時間保持し、フマル酸強化ロジン(A2-4)を得た。原料ロジンの溶融直後に約5%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0049】
製造例5、6
原料ロジンの仕込み部数を表1に示すとおりに変更した以外は製造例4と同様にして、フマル酸強化ロジン類(A2-5)及び(A2-6)を得た。いずれの強化ロジンにおいても、原料ロジンの溶融直後にそれぞれ約4%、約3%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0050】
比較製造例1~4
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表1に示すとおりに変更した以外は製造例1と同様にして、フマル酸強化ロジン類(B2-1)~(B2-4)を得た。元々ジヒドロアガト酸が含まれていない比較製造例2の原料ロジンを除き、溶融直後にそれぞれ5~10%程度存在したジヒドロアガト酸がほぼそのまま残存していることを確認した。
【0051】
【0052】
<ロジンの無水マレイン酸強化物の製造例>
製造例7
原料ロジンとしてインドネシア産メルクシマツ(pinus.merkusii)由来のガムロジン(a)70部と、ブラジル産スラッシュマツ(pinus.elliottii)由来のガムロジン(b)30部を1L四つ口フラスコに仕込み、250℃で加熱溶融させた。その後無水マレイン酸を10部添加し、同温度で3時間保持し、無水マレイン酸強化ロジン(A2-7)を得た。原料ロジンの溶融直後に約7%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0053】
製造例8、9
原料ロジンの仕込み部数を表2に示すとおりに変更した以外は製造例7と同様にして、無水マレイン酸強化ロジン類(A2-8)及び(A2-9)を得た。いずれの強化ロジンにおいても、原料ロジンの溶融直後にそれぞれ約5%、約3%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0054】
製造例10
原料ロジンとしてインドネシア産メルクシマツ(pinus.merkusii)由来のガムロジン(a)50部、ブラジル産スラッシュマツ(pinus.elliottii)由来のガムロジン(b)30部、中国産馬尾松(pinus.massoniana)由来のガムロジン(c)20部を1L四つ口フラスコに仕込み、250℃で加熱溶融させた。その後無水マレイン酸を10部添加し、同温度で3時間保持し、無水マレイン酸強化ロジン(A2-10)を得た。原料ロジンの溶融直後に約5%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0055】
製造例11、12
原料ロジンの仕込み部数を表2に示すとおりに変更した以外は製造例10と同様にして、無水マレイン酸強化ロジン類(A2-11)及び(A2-12)を得た。いずれの強化ロジンにおいても、原料ロジンの溶融直後にそれぞれ約4%、約3%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0056】
比較製造例5~8
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表2に示すとおりに変更した以外は製造例7と同様にして、フマル酸強化ロジン類(B2-5)~(B2-8)を得た。元々ジヒドロアガト酸が含まれていない比較製造例6の原料ロジンを除き、溶融直後にそれぞれ5~10%程度存在したジヒドロアガト酸がほぼそのまま残存していることを確認した。
【0057】
【0058】
製造例13
無水マレイン酸の仕込み部数を12部に変更した以外は製造例7と同様にして、無水マレイン酸強化ロジン(A2-13)を得た。原料ロジンの溶融直後に約7%存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0059】
製造例14~18
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表3に示すとおりに変更した以外は製造例13と同様にして、無水マレイン酸強化ロジン類(A2-14)~(A2-18)を得た。いずれの強化ロジンにおいても、原料ロジンの溶融直後にそれぞれ3~5%程度存在したジヒドロアガト酸由来のピークが消失していることを確認した。
【0060】
比較製造例9~12
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表3に示すとおりに変更した以外は製造例13と同様にして、フマル酸強化ロジン類(B2-9)~(B2-12)を得た。元々ジヒドロアガト酸が含まれていない比較製造例10の原料ロジンを除き、溶融直後にそれぞれ5~10%程度存在したジヒドロアガト酸がほぼそのまま残存していることを確認した。
【0061】
【0062】
<ロジンのグリセリンエステルの製造例>
製造例19
原料ロジンとしてインドネシア産メルクシマツ(pinus.merkusii)由来のガムロジン(a)70部と、ブラジル産スラッシュマツ(pinus.elliottii)由来のガムロジン(b)30部を1L四つ口フラスコに仕込み、200℃で加熱溶融させた。その後グリセリン9部を仕込み、窒素気流下で200℃まで加熱し脱水反応を行った。その後さらに270℃で14時間脱水反応を行いロジンエステル(A3-1)を得た。
【0063】
製造例20~24
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表4に示すとおりに変更した以外は製造例19と同様にして、ロジンエステル(A3-2)~(A3-6)を得た。
【0064】
比較製造例13~16
原料ロジンの種類及び/又はその仕込み部数を表4に示すとおりに変更した以外は製造例19と同様にして、ロジンエステル(B3-1)~(B3-4)を得た。
【0065】
【0066】
<分散剤の製造例>
製造例31
温度計、冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた五つ口フラスコに疎水モノマーとしてスチレン59.1部、n-ブチルメタアクリレート39.6部、アニオン性モノマーとしてメタクリル酸89.2部、非イオン性モノマーとして40%アクリルアミド水溶液を24.7部、n-ドデシルメルカプタンを13.1部、β-メルカプトプロピオン酸を5.0部仕込んだ。その後、水を250.0部、イソプロピルアルコールを250.0部加え80℃まで加熱を行った。重合触媒として過硫酸アンモニウムを7.9部添加し、4時間重合を行った。その後、イソプロピルアルコールの留去を行い、48%苛性ソーダを86.4g添加し、水を添加し、濃度25%、重量平均分子量(Mw)93,000、粘度100mPa・sの分散剤1を得た。
【0067】
製造例32
製造例31と同様の装置にスチレン59.3部、イソブチルメタクリルアクリレート30.0部、メタクリル酸79.1部、40%アクリルアミド水溶液74.1部、n-ドデシルメルカプタン10.5部、β-メルカプトプロピオン酸8.5部を仕込んだ。その後水を250部、イソプロピルアルコールを250部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム7.5部を加え溶解し、80℃まで加熱し、同温度で4時間保持した。その後、実施例1と同様にイソプロピルアルコールの留去を行い、48%苛性ソーダ76.7部と水を添加し、濃度25%、Mw65,000、粘度240mPa・sの分散剤2を得た。
【0068】
製造例33
製造例31と同様の反応装置にスチレン20部、ノルマルブチルアクリレート20部、メタクリル酸99部、40%アクリルアミド水溶液148.0部、n-ドデシルメルカプタン6.4部、β-メルカプトプロピオン酸12部を仕込んだ。さらに水200部、イソプロピルアルコール300部仕込み80℃で溶解を行った。重合触媒としてアゾイソブチロニトリルを8.2部添加し、4時間重合を行った。その後、イソプロピルアルコールの留去を行い、48%苛性ソーダ96部および水を添加し、濃度25%、Mw170,000、粘度1000mPa・sの分散剤3を得た。
【0069】
<ロジンエマルションサイズ剤の製造例>
実施例1
十字撹拌羽を三枚装備した1Lオートクレーブに製造例1で得たフマル酸強化ロジン(A2-1)100部を仕込み、150℃に加熱溶融した。これに製造例31で得た分散剤1を固形分換算で7部(有姿28部)を添加混合し、撹拌数を800rpmまで上昇させた。撹拌数を維持し、さらに熱水を76部加えながら転相させ固形分50%、メディアン径488nmのロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0070】
実施例2~6、比較例1~4
実施例1において製造例2~6のフマル酸強化ロジン(A2-2)~(A2-6)を用いたこと以外は同様の操作で、それぞれ固形分50%のロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0071】
実施例1~6及び比較例1~4のサイズ剤の発泡性とサイズ効果を、下記の手順で評価した。結果を表5に示す。
【0072】
<泡立ち性試験>
カナディアン・スタンダード・フリーネス400ccに叩解したパルプ(LBKP100%)を0.2%のパルプスラリーとした。このパルプスラリー1Lに対して、絶乾パルプに対して固形分20%の硫酸バンド、5%のカチオン化澱粉(日本NSC社Cato3210)及び20%の実施例および比較例で得たサイズ剤を添加した。このパルプスラリーを循環式発泡試験機に入れた。パルプスラリーをポンプで循環してこれを60cmの高さから容器中に落下させ、1分後の泡高さを測定した。
【0073】
<手抄き試験によるサイズ効果の評価>
実施例1~6および比較例1~4における評価方法
カナディアン・スタンダード・フリーネス380ccまで叩解したパルプ(UKP100%)を絶乾固形分2%のパルプスラリーとした。このパルプスラリーに絶乾パルプに対して固形分2%の硫酸バンド、0.2%の上記実施例および比較例で得たそれぞれのサイズ剤を添加し、パルプ濃度0.2%まで希釈した。JIS丸型抄紙機でJIS P8222に準拠して坪量80g/m2となるように抄紙した。湿紙の乾燥はドラムドライヤーを用いて90℃で2分間乾燥させた。得られたサイジング紙をJIS P8111に準拠して調湿し、JIS P8122に準拠して試験紙のステキヒトサイズ度を測定した。
【0074】
【0075】
<ロジンエマルションサイズ剤の製造例>
実施例7
10Lオートクレーブに製造例13で得た無水マレイン酸強化ロジン(A2-7)70部、ロジンエステル(A3-1)30部を仕込み、150℃に加熱溶融した。これに製造例32で得た分散剤2を固形分換算で7部(有姿28部)を添加混合し、さらに熱水を76部加え、ガウリン高圧乳化装置で乳化分散し、固形分50%、粒子径525nmのロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0076】
実施例8~12、比較例5~8
実施例7において製造例13~18の無水マレイン酸強化ロジン(A2-7)~(A2-12)、ロジンエステル(A3-1)~(A3-6)を用い、表7に示した組成比で用いたこと以外は同様の操作で、それぞれ固形分50%のロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0077】
実施例7~12及び比較例5~8のサイズ剤について、段落[0072]に記載したものと同様の手順で発泡性を評価した。また、カナディアン・スタンダード・フリーネス320ccの段古紙(坪80g/m2、パルプ濃度3%)にバンド2%、サイズ剤0.3%添加した以外は、段落[0073]に記載したものと同様の評価条件で抄紙した紙のステキヒトサイズ度(秒)を測定した。結果を表6に示す。
【0078】
【0079】
<ロジンエマルションサイズ剤の製造例>
実施例13
10Lオートクレーブに製造例19で得た無水マレイン酸強化ロジン(A2-13)50部、ロジンエステル(A3-1)50部を仕込み、150℃に加熱溶融した。これに製造例33で得た分散剤3を固形分換算で7部(有姿28部)を添加混合し、さらに熱水を76部加え、ガウリン高圧乳化装置で乳化分散し、固形分50%、粒子径752nmのロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0080】
実施例14~18、比較例9~12
実施例13において製造例19~24の無水マレイン酸強化ロジン(A2-13)~(A2-18)、ロジンエステル(A3-1)~(A3-6)を用い、表8に示した組成比で用いたこと以外は同様の操作で、それぞれ固形分50%のロジンエマルションサイズ剤を得た。
【0081】
実施例13~18及び比較例9~12のサイズ剤について、段落[0072]に記載したものと同様の手順で発泡性を評価した。また、カナディアン・スタンダード・フリーネス420ccBKP(坪80g/m2、3%濃度)にバンド1%、サイズ剤0.4%添加し、パルプ濃度0.2%まで希釈した。さらに炭酸カルシウムを10%配合し、歩留まり剤を500ppm添加した以外は、段落[0073]に記載したものと同様の評価条件で抄紙し得られた紙のステキヒトサイズ度(秒)を測定した。結果を表7に示す。
【0082】
【0083】
表5~7に示すように、メルクシマツ由来のロジンにスラッシュマツ由来のロジンを混合した原料ロジンを使用した実施例1~18のロジンエマルションサイズ剤は、比較例1~12のサイズ剤よりも乳化性に優れ、発泡量が少ないものであった。また、サイズ効果も良好であった。