(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】昇温検知センサ、昇温検知システム、及び昇温検知ユニット
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240219BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240219BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240219BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K19/077 248
G06K19/077 280
H01Q1/38
H01Q1/22 A
(21)【出願番号】P 2020021871
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】磯村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
(72)【発明者】
【氏名】内田 フランソワ オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061069(WO,A1)
【文献】特開2000-259808(JP,A)
【文献】特開2005-030589(JP,A)
【文献】特開2009-064111(JP,A)
【文献】特開2007-089054(JP,A)
【文献】特開2005-078114(JP,A)
【文献】特表2017-502639(JP,A)
【文献】特開2016-011945(JP,A)
【文献】特開2002-168699(JP,A)
【文献】特開2008-139067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
H01Q 1/38
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の温度上昇を検知する昇温検知部を有する昇温検知回路と、前記昇温検知部が前記温度上昇を検知すると自己の検知情報が書き換えられるRFIDチップと、前記RFIDチップに電気的に接続されたアンテナ回路
とが形成された実装基板と、
第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、
前記実装基板を支持する板状の絶縁部材と、を備え、
前記昇温検知部が、前記絶縁部材の前記第2面側よりも前記第1面側に配置され、前記アンテナ回路が、前記絶縁部材の前記第1面側よりも前記第2面側に配置され
、
前記絶縁部材は、樹脂材料により構成されて前記実装基板と組み合わされている、昇温検知センサ。
【請求項2】
前記昇温検知部は、一定温度以上に加熱されると断線することにより前記構造物の前記温度上昇を検知する、請求項1に記載の昇温検知センサ。
【請求項3】
前記昇温検知部が、前記絶縁部材の前記第1面から露出するように配置されている、請求項1又は2に記載の昇温検知センサ。
【請求項4】
前記アンテナ回路が、前記絶縁部材の前記第2面上に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の昇温検知センサ。
【請求項5】
前記構造物に取り付けられる取付部を有し、且つ、前記絶縁部材を支持するハウジングを更に備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の昇温検知センサ。
【請求項6】
前記ハウジングの材料が、前記絶縁部材よりも硬い材料を含む、請求項5に記載の昇温検知センサ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記絶縁部材の前記第1面の一部を覆うように配置される被覆部を有し、前記昇温検知部が、前記被覆部の外部に露出している、請求項5又は6のいずれかに記載の昇温検知センサ。
【請求項8】
前記構造物が、鉄道車両用台車である、請求項1~7のいずれか1項に記載の昇温検知センサ。
【請求項9】
前記鉄道車両用台車の表面に設けられた窪み部の内部に収容される、請求項8に記載の昇温検知センサ。
【請求項10】
前記鉄道車両用台車の軸箱、前記鉄道車両用台車の主電動機と車輪とを接続する継手、及び前記鉄道車両用台車の前記主電動機の回転動力を車輪に伝達する歯車箱のうちの少なくともいずれかと熱結合するように配置される、請求項8又は9に記載の昇温検知センサ。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の前記昇温検知センサと、前記昇温検知センサと通信可能な読取装置とを備え、
前記読取装置が、前記鉄道車両用台車を備える鉄道車両に搭載されている、鉄道車両用昇温検知システム。
【請求項12】
構造物の温度上昇を検知する、複数の昇温検知センサを備え、
前記昇温検知センサは、
前記構造物の前記温度上昇を検知する昇温検知部を有する昇温検知回路と、前記昇温検知部が前記温度上昇を検知すると自己の検知情報が書き換えられるRFIDチップと、前記RFIDチップに電気的に接続されたアンテナ回路
とが形成された実装基板と、
第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、
前記実装基板を支持する板状の絶縁部材と、を備え、
前記昇温検知部が、前記絶縁部材の前記第2面側よりも前記第1面側に配置され、前記アンテナ回路が、前記絶縁部材の前記第1面側よりも前記第2面側に配置され、
前記絶縁部材は、樹脂材料により構成されて前記実装基板と組み合わされ、
前記複数の昇温検知センサの前記昇温検知部が断線する温度が異なる、昇温検知ユニット。
【請求項13】
前記複数の昇温検知センサを一体的に支持する支持部材を更に備える、請求項12に記載の昇温検知ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇温検知センサ、昇温検知システム、及び昇温検知ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の温度管理を非接触で行う方法として、例えば特許文献1に開示されるように、一定温度以上の温度上昇を検知する検知回路と、検知回路により検知した検知情報を記録するRFID(Radio frequency identifier)チップとを有するRFIDタグを構造物に配置し、RFIDタグの検知情報を読取装置で通信により読み取ることで構造物の温度管理を行う方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、例えば、RFIDタグと読取装置との通信の際、構造物がRFIDタグの近傍に存在すると、通信が構造物により妨げられる場合がある。この場合、検知情報がRFIDタグに適切に記録されていても、検知情報を読取装置で読み取ることが困難となる。
【0005】
そこで本発明は、RFIDタグを用いて構造物の温度管理を行う場合において、構造物の温度を適切に検知すると共に、RFIDタグと読取装置との通信が構造物により妨げられるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る昇温検知センサは、構造物の温度上昇を検知する昇温検知部を有する昇温検知回路と、前記昇温検知部が前記温度上昇を検知すると自己の検知情報が書き換えられるRFIDチップと、前記RFIDチップに電気的に接続されたアンテナ回路と、第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、前記RFIDチップ、前記昇温検知部、及び前記アンテナ回路を支持する板状の絶縁部材と、を備え、前記昇温検知部が、前記絶縁部材の前記第2面側よりも前記第1面側に配置され、前記アンテナ回路が、前記絶縁部材の前記第1面側よりも前記第2面側に配置されている。
【0007】
また、本発明の一態様に係る昇温検知ユニットは、構造物の温度上昇を検知する、複数の昇温検知センサを備え、前記昇温検知センサは、前記構造物の前記温度上昇を検知する昇温検知部を有する昇温検知回路と、前記昇温検知部が前記温度上昇を検知すると自己の検知情報が書き換えられるRFIDチップと、前記RFIDチップに電気的に接続されたアンテナ回路と、第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、前記RFIDチップ、前記昇温検知部、及び前記アンテナ回路を支持する板状の絶縁部材と、を備え、前記昇温検知部が、前記絶縁部材の前記第2面側よりも前記第1面側に配置され、前記アンテナ回路が、前記絶縁部材の前記第1面側よりも前記第2面側に配置され、前記複数の昇温検知センサの前記昇温検知部が断線する温度が異なる。
【0008】
上記した昇温検知センサ及び昇温検知ユニットでは、昇温検知回路の昇温検知部が、絶縁部材の第1面側よりも第2面側に配置され、アンテナ回路が、絶縁部材の第2面側よりも第1面側に配置されている。このため、例えば、絶縁部材の第1面を構造物の表面と対向するように昇温検知センサを配置することで、昇温検知回路を構造物と熱結合するように配置しながら、RFIDチップに電気的に接続されたアンテナ回路を構造物の表面と離隔した状態で配置できる。これにより、例えば、構造物がRFIDタグの近傍に存在する場合でも、RFIDタグと読取装置との通信が構造物により妨げられるのを防止しながら、昇温検知回路により構造物の温度上昇を適切に検知できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、RFIDタグを用いて構造物の温度管理を行う場合において、構造物の温度を適切に検知できると共に、RFIDタグと読取装置との通信が構造物により妨げられるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る昇温検知センサの斜視図である。
【
図2】
図1の昇温検知センサのII-II線矢視断面と読取装置とを示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る昇温検知ユニットを示す図である。
【
図4】第2実施形態の変形例に係る昇温検知ユニットを示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る昇温検知センサが配置される鉄道車両用台車を示す模式図である。
【
図6】
図5の軸箱に対する昇温検知センサの取付構造を示す図である。
【
図7】
図5の継手に対する昇温検知センサの取付構造を示す部分正面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線矢視断面図である。
【
図10】第4実施形態に係る鉄道車両用昇温検知システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る昇温検知センサ1の斜視図である。
図2は、
図1の昇温検知センサ1のII-II線矢視断面と読取装置16とを示す図である。
図2中の断面図は、昇温検知センサ1の長手方向に垂直な断面図に相当する。
図1及び2に示す昇温検知センサ1は、構造物15の温度管理に用いられ、構造物15と熱結合するように構造物15の表面に配置される。
【0012】
昇温検知センサ1は、RFIDにより構造物15の温度上昇を検知し、構造物15のメンテナンスの負担軽減に寄与するRFIDタグである。構造物15の種類は、限定されない。昇温検知センサ1は、一例として、直方体状の外観形状を有する。昇温検知センサ1は、実装基板7、絶縁部材5、及びハウジング6を備える。実装基板7には、昇温検知回路2、RFIDチップ3、及びアンテナ回路4が形成されている。実装基板7は、一例としてフレキシブル基板である。実装基板7は、一部分が絶縁部材5の内部に配置され、残余の部分が外部に露出された状態で、絶縁部材5に支持されている。ハウジング6は、絶縁部材5を支持する。
【0013】
昇温検知回路2は、構造物15の温度上昇を検知する昇温検知部8を有する。本実施形態の昇温検知部8は、一定温度以上に加熱されると断線することにより構造物15の温度上昇を検知する。昇温検知部8は、一例として温度ヒューズを含む。この温度ヒューズは、一例として、RFIDチップ3に電気的に接続される一対のリード線と、一対のリード線同士を電気的に接続する合金である可溶体とを有する合金型である。温度ヒューズの形式は、限定されない。このように昇温検知回路2は、断線されることで対象物の一定温度以上の温度上昇を検出するタンパー回路である。
【0014】
RFIDチップ3は、昇温検知回路2の昇温検知部8が構造物15の温度上昇を検知すると(本実施形態では当該検知により昇温検知部8が断線すると)自己の検知情報が書き換えられる。RFIDチップ3は、昇温検知回路2に電気的に接続されている。RFIDチップ3は、一例として、電源が不要なパッシブ型である。RFIDチップ3は、自己のID情報と、自己に電気的に接続された昇温検知回路2の断線の有無を示す検知情報とを記憶する記憶部を有する。RFIDチップ3は、一例としてICチップにより実現される。一例として、RFIDチップ3は、昇温検知回路2が断線している場合は、検知情報として「0」を記憶部に記憶し、昇温検知回路2が断線していない場合は、検知情報として「1」を記憶部に記憶する。RFIDチップ3は、アンテナ回路4を介して受信した外部の読取装置16からの信号により起電して動作し、自己のID情報と検知情報とを、アンテナ回路4を介して外部に無線送信する。
【0015】
絶縁部材5は、第1面5aと、第1面5aとは反対側に位置する第2面5bとを有する板状に形成されている。昇温検知センサ1の構造物15への取り付けの際、絶縁部材5は、第1面5aが構造物15の表面と対向するように配置される。絶縁部材5は、RFIDチップ3を支持する。また絶縁部材5は、第2面5b側よりも第1面5a側に昇温検知回路2の昇温検知部8が偏在し、第1面5a側よりも第2面5b側にRFIDチップ3が偏在するように、昇温検知回路2とRFIDチップ3とを支持する。
【0016】
第1面5a側に昇温検知回路2の昇温検知部8を偏在させることで、昇温検知部8を構造物15と熱結合させ易くできる。また、第2面5b側にアンテナ回路4を偏在させることで、例えば、電波を吸収する材料を含む構造物15が昇温検知センサ1の近傍に配置されている場合でも、昇温検知センサ1と読取装置16との通信が構造物15により妨げられるのが防止される。本実施形態の昇温検知部8は、絶縁部材5の第1面5aから露出するように配置されている。これにより、昇温検知部8は、構造物15と接触する。なお、昇温検知部8と構造物15との間に、例えば銅板や熱伝導グリース等の伝熱体を介在させることで、昇温検知部8の昇温検知精度を向上させることもできる。
【0017】
絶縁部材5は、一例として、樹脂材料により構成されている。本実施形態の昇温検知センサ1の製造時には、RFIDチップ3及びアンテナ回路4が第2面5bに露出すると共に、昇温検知回路2の一部が絶縁部材5の内部に配置されるように、金型の内部に実装基板7を配置した状態で、金型の内部に樹脂材料を射出して成型することにより、絶縁部材5と実装基板7とが組み合わされる。なお絶縁部材5は、セラミック等の他の材料により構成されていてもよい。
【0018】
絶縁部材5の第1面5aと第2面5bとに垂直な方向の厚み寸法(以下、単に厚み寸法とも称する。)は、昇温検知センサ1の構造物15への取り付けの際に、昇温検知部8を構造物15と熱結合させると共に、RFIDチップ3がアンテナ回路4を介して読取装置16と通信できる値に適宜設定可能である。絶縁部材5の厚み寸法は、一例として、数mm以上数cm以内の範囲の値に設定されている。絶縁部材5の厚み寸法の下限値としては、5mmが好ましく、8mmがより好ましい。絶縁部材5は、実装基板7よりも高い硬度を有する。これにより実装基板7は、昇温検知センサ1内での実装基板7の配置が変化しないように、絶縁部材5により強固に支持されている。
【0019】
ハウジング6は、構造物15に取り付けられる取付部6aを有する。本実施形態のハウジング6は、絶縁部材5の平面視における周縁を取り囲むと共に、絶縁部材5の4つの側面を覆うように形成されている。ハウジング6は、一例として、一対の取付部6aを有する。取付部6aは、絶縁部材5の厚み方向に挿通する挿通孔であり、絶縁部材5の長手方向両端部に配置されている。ハウジング6が絶縁部材5と組み合わされた状態において、絶縁部材5の取付部6aと重なる部分には、絶縁部材5の厚み方向に延びる挿通孔5cが形成されている。取付部6aと挿通孔5cとには、ボルトの軸が挿通され、当該ボルトを用いた締結構造により、昇温検知センサ1が構造物15に脱着自在に取り付けられる。本実施形態のハウジング6の材料は、絶縁部材5よりも硬い材料を含む。これによりハウジング6は、絶縁部材5よりも高い硬度を有する。
【0020】
ハウジング6は、絶縁部材5の第1面5aの一部を覆うように配置される被覆部6bを更に有する。被覆部6bは、絶縁部材5の長手方向に延びながら、第1面5aの幅方向一端側の領域を覆っている。本実施形態の昇温検知センサ1では、昇温検知回路2の昇温検知部8は、被覆部6bの外部に露出している。
【0021】
図2に示すように、絶縁部材5の長手方向に垂直な断面において、実装基板7に実装された昇温検知部8は、実装基板7の絶縁部材5に埋設された側の一端部に配置されている。これにより昇温検知センサ1では、昇温検知部8が、絶縁部材5の第2面5b側よりも第1面5a側に配置され、アンテナ回路4が、絶縁部材5の第1面5a側よりも第2面5b側に配置されている。
【0022】
昇温検知部8は、全部が絶縁部材5に覆われていてもよいし、少なくとも一部が第1面5aに露出していてもよい。昇温検知部8の少なくとも一部が絶縁部材5に覆われる場合、昇温検知部8の昇温検知精度を高めるため、絶縁部材5の材料は、熱伝導性に優れる材料であることが好ましい。また、絶縁部材5とハウジング6との材料は、RFIDチップ3と読取装置16との通信を妨げないように、電波を吸収しにくい材料であることが望ましい。
【0023】
ハウジング6の材料としては、絶縁部材5を支持できる硬度を有するものが望ましい。このような材料としては、例えば、金属材料や樹脂材料等が挙げられる。ハウジング6の材料が樹脂材料等の絶縁材料である場合、RFIDチップ3及びアンテナ回路4のうち少なくともいずれかが、ハウジング6により覆われていてもよい。
【0024】
本実施形態では、昇温検知センサ1の第1面5a側の表面と、第2面5b側の表面とは、滑らかな平坦面として形成されている。第1面5a又は第2面5bと、ハウジング6の外表面との間には、段差が設けられていてもよい。
【0025】
以上説明したように、昇温検知センサ1は、昇温検知回路2の昇温検知部8が、絶縁部材5の第2面5b側よりも第1面5a側に配置され、アンテナ回路4が、絶縁部材5の第1面5a側よりも第2面5b側に配置されている。このため、例えば、絶縁部材5の第1面5aを構造物15の表面と対向するように昇温検知センサ1を配置することで、昇温検知回路2を構造物15と熱結合するように配置しながら、RFIDチップ3に電気的に接続されたアンテナ回路4を構造物15の表面と離隔した状態で配置できる。これにより、例えば、構造物15が昇温検知センサ1の近傍に存在する場合でも、昇温検知センサ1と読取装置16との通信が構造物15により妨げられるのを防止しながら、昇温検知回路2により構造物15の温度上昇を適切に検知できる。
【0026】
また、昇温検知センサ1の検知情報を読み取る読取装置16は、比較的安価であるため、昇温検知センサ1と読取装置16とを用いることで、構造物15の温度管理を低コストで行うことができる。また、パッシブ型のRFIDチップ3を用いることで、昇温検知センサ1の電源を省略できるため、昇温検知センサ1を安価に製造できる。
【0027】
また昇温検知センサ1では、昇温検知部8が、絶縁部材5の第1面5aから露出するように配置されている。これにより、構造物15と昇温検知部8とを熱結合し易くでき、昇温検知センサ1により構造物15の温度管理を精度よく行える。
【0028】
また昇温検知センサ1では、アンテナ回路4が、絶縁部材5の第2面5b上に配置されている。これにより、アンテナ回路4を構造物15から適切に離隔でき、RFIDチップ3と読取装置16との通信が構造物15により妨げられるのを一層防止できる。
【0029】
また昇温検知センサ1は、構造物15に取り付けられる取付部6aを有し、且つ、絶縁部材5を支持するハウジング6を備える。これにより、ハウジング6で絶縁部材5を支持しながら、ハウジング6の取付部6aを用いて、昇温検知センサを構造物15に取り付けることができる。
【0030】
また昇温検知センサ1では、ハウジング6の材料が、絶縁部材5よりも硬い材料を含む。これにより、昇温検知回路2、RFIDチップ3、及びアンテナ回路4を支持する絶縁部材5をハウジング6で強固に支持でき、絶縁部材5が外力により変形するのを防止できる。よって、昇温検知センサ1を安定して駆動できる。
【0031】
またハウジング6は、絶縁部材5の第1面5aの一部を覆うように配置される被覆部6bを有し、昇温検知部8が、被覆部6bの外部に露出している。これにより、絶縁部材5をハウジング6で適切に保護し且つ支持しながら、昇温検知部8を構造物15と熱結合し易くできる。
【0032】
なお、昇温検知センサ1を用いて、構造物15の単一の部品の温度管理を行ってもよいし、複数の昇温検知センサ1を用いて、構造物15の複数の部品の温度管理を行ってもよい。以下、その他の実施形態等について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0033】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る昇温検知ユニット17を示す図である。
図3に示すように、昇温検知ユニット17は、構造物15の温度上昇を検知する複数の昇温検知センサ1を備える。この複数の昇温検知センサ1は、昇温検知部8が断線する温度が異なっている。また昇温検知ユニット17は、複数の昇温検知センサ1を一体的に支持する支持部材18を備える。支持部材18は、一例として板材であり、一方の板面に複数の昇温検知センサ1が分散して配置されている。支持部材18の材料としては、例えば、絶縁性及び熱伝導性に優れる材料が挙げられる。
【0034】
以上の構成を有する昇温検知ユニット17によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。更に、昇温検知部8が断線する温度が異なる複数の昇温検知センサ1を用いることで、構造物15の温度上昇値を詳細に確認できる。これにより、構造物15の高精度な温度管理を行える。このような温度管理を行うことで、例えば、構造物15の温度上昇値に応じて、構造物15のメンテナンス内容を変更できる。なお、昇温検知部8が断線する温度が異なる昇温検知センサ1を異なる色に着色してもよい。これにより、昇温検知ユニット17に含まれる複数の昇温検知センサ1の各配置を確認し易くできると共に、昇温検知部8が断線する温度が異なる複数の昇温検知センサ1を適切に用いて昇温検知ユニット17を製造し易くできる。
【0035】
なお、単一の昇温検知ユニット17を用いて、構造物15の単一の部品の温度管理を行ってもよいし、複数の昇温検知ユニット17を用いて、構造物15の複数の部品の温度管理を行ってもよい。
【0036】
図4は、第2実施形態の変形例に係る昇温検知ユニット19を示す図である。昇温検知ユニット19は、複数の実装基板7、絶縁部材5と同様の単一の絶縁部材20、及び、ハウジング6と同様の単一のハウジング21を備える。
【0037】
複数の実装基板7は、互いに分散した状態で絶縁部材20に支持されている。絶縁部材20は、第2面20b側よりも第1面20a側に昇温検知回路2の昇温検知部8が偏在し、第1面20a側よりも第2面20b側にRFIDチップ3とアンテナ回路4とが偏在するように、各実装基板7の昇温検知部8とアンテナ回路4とを支持している。これにより、昇温検知部8が、絶縁部材20の第2面20b側よりも第1面20a側に配置され、アンテナ回路4が、絶縁部材20の第1面20a側よりも第2面20b側に配置されている。
【0038】
共通の絶縁部材20に支持される複数の実装基板7の昇温検知回路2は、断線する温度が異なる昇温検知部8を含む。昇温検知ユニット19は、ハウジング21に設けられた取付部21aに、不図示の締結部材を挿通し且つ締結することで、構造物15に取り付けられる。以上の構成を有する昇温検知ユニット19によっても、昇温検知ユニット17と同様の効果が得られる。
【0039】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る昇温検知センサ1が配置される鉄道車両用台車23を示す模式図である。
図5に示すように、本実施形態では、構造物15が、鉄道車両用台車23である。この鉄道車両用台車23は、車輪30、軸箱31、主電動機32、主電動機32の回転動力を車輪30に伝達する歯車箱33、主電動機32と歯車箱33とを接続する継手34、及び、軸箱31を支持する軸梁35(
図6参照)を備える。本実施形態では、この鉄道車両用台車23に対し、昇温検知センサ1は、軸箱31、継手34、及び歯車箱33のうちの少なくともいずれか(ここでは全て)と熱結合するように配置される。昇温検知センサ1は、鉄道車両用台車23の走行時に脱落しないように、鉄道車両用台車23に取り付けられている。
【0040】
図6は、
図5の軸箱31に対する昇温検知センサ1の取付構造を示す図である。この例では、車両長手方向に延びる軸梁35の長手方向一端部の表面に軸箱31が支持されている。昇温検知センサ1は、軸箱31の軸梁35とは反対側の外表面に取付部6aを用いて取り付けられている。このような昇温検知センサ1の取付構造によれば、例えば、既存の軸箱31に対しても比較的容易に昇温検知センサ1を取り付けることができる。
【0041】
図7は、
図5の継手34に対する昇温検知センサ1の取付構造を示す部分正面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9は、
図7のIX-IX線矢視断面図である。
図7では、鉄道車両用台車23の車幅方向から見たハブ41,43のフランジ部41a,43aのみを部分的に示している。また
図7では、軸40、42の輪郭と、ハブ41,43の内周面に設けられた外歯車41d,43dの輪郭とを破線で示している。
図8,9では、外歯車41d,43dは省略している。
【0042】
図7~9に示す継手34は、一例として、歯車形撓み軸継手である。継手34は、主電動機32の回転動力が出力される原動軸40と一体的に回転する原動ハブ41と、歯車箱33の内部に原動軸40からの回転動力を入力する被動軸42(
図5参照)と一体的に回転する被動ハブ43とを備える。軸40,42の対向端部には、外周面に内歯車が設けられた不図示の円筒部が設けられ、この円筒部の内歯車が、ハブ41,43の外歯車41d,43dと組み合わされている。前記内歯車と外歯車41d,43dとの歯面には、前記内歯車と外歯車41d,43dとの回転軸に垂直な方向から見たときの形状が円弧状のクラウニングが形成されている。
【0043】
原動ハブ41と被動ハブ43とは、フランジ部41a,43aを有する。原動ハブ41と被動ハブ43とは、互いに組み合わせられることで、鉄道車両用台車23の車幅方向に延びるスリーブを構成する。フランジ部41a,43aは、互いに組み合わせられた状態で、原動軸40と被動軸42との軸周りに配置された複数の締結部材12により締結されている。
【0044】
原動軸40の軸線P1と被動軸42の軸線P2とが一致した状態で、これらの軸線方向から見たフランジ部41a,43aは、一例として円環状である。フランジ部41a,43aは、当該状態において、前記軸線方向から見て軸線P1,P2の軸心に対する対称位置に配置された窪み部41b,43bを有する。窪み部41b,43bは、フランジ部41a,43aのうち、一方のフランジ部の他方のフランジ部とは反対側の面に形成されている。窪み部41b,43bは、前記軸線方向に窪んでいる。窪み部41b,43bは、昇温検知センサ1が収容可能な内部空間を有する。昇温検知センサ1は、窪み部41b,43bの内部空間に収容された状態で、フランジ部41a,43aに取り付けられている。
【0045】
このような昇温検知センサ1の取付構造によれば、継手34の回転中に昇温検知センサ1が継手34の回転に伴って発生する遠心力により脱落するのを防止しながら、昇温検知センサ1をフランジ部41a,43aに強固に取り付けることができる。また、軸線P1,P2に対する対称位置に配置された一対の窪み部41b,43bのそれぞれに昇温検知センサ1を配置することで、昇温検知センサ1が取り付けられた継手34の重量バランスを安定化できる。
【0046】
なお窪み部は、原動ハブ41と被動ハブ43とのフランジ部41a,43aとは反対側の各端部41c,43cに設けられていてもよい。この場合も、重量バランスの観点から、前記軸線方向から見て軸線P1,P2の軸心に対する端部41c,43cの対称位置に窪み部を配置することが望ましい。また窪み部には、昇温検知センサ1が圧入されることで、昇温検知センサ1が取り付けられてもよいし、昇温検知センサ1が接着剤により取り付けられてもよい。昇温検知センサ1は、鉄道車両用台車23や、鉄道車両用台車23を備える鉄道車両のその他の部品の温度管理に用いられてもよい。
【0047】
また本実施形態では、昇温検知センサ1は、軸箱31、継手34、及び歯車箱33のうちの少なくともいずれかと熱結合するように配置されているが、昇温検知センサ1の配置位置はこれに限定されない。昇温検知センサ1は、例えば、車輪30又は主電動機32の少なくともいずれかと熱結合するように配置されていてもよい。
【0048】
次に、第3実施形態の変形例である鉄道車両用昇温検知システムについて説明する。このシステムは、昇温検知センサ1と読取装置16とを備え、読取装置16が、構造物15である鉄道車両用台車23を備える鉄道車両22(
図10参照)に搭載されている。昇温検知センサ1が検知した検知情報は、鉄道車両22内の温度管理者により読取装置16を用いて管理される。この変形例によれば、鉄道車両22が停止中又は走行中のいずれの状態にあるかを問わず、鉄道車両22内の温度管理者により、鉄道車両用台車23の温度管理を行える。従って、必要に応じて鉄道車両用台車23への効率的且つ迅速な対応が可能である。
【0049】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る鉄道車両用温度管理システム9を示す模式図である。このシステム9は、構造物15である鉄道車両用台車23に取り付けられた昇温検知センサ1と、レール11近傍の地表に配置された地上アンテナ装置50と、地上アンテナ装置50に電気的に接続された読取通信装置51と、読取通信装置51とインターネットを介して接続され、読取通信装置51から送信される昇温検知センサ1の検知情報を蓄積するサーバ52と、サーバ52に蓄積された検知情報を格納するデータベース53とを備える。ここでは一例として、昇温検知センサ1は軸箱31に取り付けられている。
【0050】
以上の構成を有するシステム9によれば、鉄道車両用台車23を備える鉄道車両22の停止中又は低速移動中に、鉄道車両用台車23に取り付けられた昇温検知センサ1のID情報と検知情報を、地上アンテナ装置50を介して読取通信装置51が読み取る。これにより、読み取られたID情報と検知情報とが、互いに関連付けられた状態でサーバ52に送信され、データベース53に格納される。鉄道車両用台車23の温度管理を行う際には、データベース53に格納された昇温検知センサ1のID情報と検知情報とを参照することで、各鉄道車両用台車23の温度管理を効率よく行うことができる。また、地上アンテナ装置50は比較的安価であるため、システム9を低コストで実現できると共に、路線の複数個所に地上アンテナ装置50を配置して、各鉄道車両用台車23の温度管理を詳細に行うこともできる。
【0051】
本発明は、上記各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。昇温検知センサ1の外観形状は、直方体状に限定されず、例えば楕円体状等のその他の形状であってもよい。RFIDチップ3の形式は、セミパッシブ型やアクティブ型であってもよい。昇温検知センサ1は、構造物15と熱結合可能に構造物15に取り付けられていればよく、構造物15の表面と直接していなくてもよい。この場合、例えば、構造物15と昇温検知センサ1との間に、熱伝導性に優れる部材等の他の部材が介在していてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 昇温検知センサ
2 昇温検知回路
3 RFIDチップ
4 アンテナ回路
5 絶縁部材
5a 第1面
5b 第2面
6 ハウジング
6a 取付部
6b 被覆部
8 昇温検知部
15 構造物
16 読取装置
17,19 昇温検知ユニット
18 支持部材
22 鉄道車両
23 鉄道車両用台車
30 車輪
31 軸箱
32 主電動機
33 歯車箱
34 継手
41b,43b 窪み部