(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/202 20060101AFI20240219BHJP
H01P 7/04 20060101ALI20240219BHJP
H01P 1/205 20060101ALI20240219BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H01P1/202
H01P7/04
H01P1/205 K
H03H7/075 Z
(21)【出願番号】P 2020092277
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】星 宏幸
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248121(JP,A)
【文献】特開2008-005182(JP,A)
【文献】特開2010-288179(JP,A)
【文献】特開2006-109237(JP,A)
【文献】特開平01-029001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/202
H01P 7/04
H01P 1/205
H03H 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された少なくともn(nは1以上の整数)個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、
nが2以上とされた際に、前記共振器間を結合する(n-1)個の第3並列共振回路とを備え、
通過周波数をFoとした時に、前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路の内のFoにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能する並列共振回路は、Foの高域の周波数で共振するよう設定され、
前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路の内のFoにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能する並列共振回路は、Foの低域の周波数で共振するよう設定され、
前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路が共振する周波数において減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、
前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Faで共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記周波数Faおよび前記周波数Fbで減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項3】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、
前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記周波数Fa1および前記周波数Fa2で減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項4】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、
前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記周波数Fb1および前記周波数Fb2で減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項5】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された2個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、
前記共振器間を結合する第3並列共振回路とを備え、
前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第3並列共振回路は、Foの低域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
あるいは、前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第3並列共振回路は、Foの高域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記周波数Fa1と前記周波数Fa2および前記周波数Fbで減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項6】
入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された3個の共振器と、
入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、
出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、
前記共振器間をそれぞれ結合する第3並列共振回路および第4並列共振回路とを備え、
前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第3並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第4並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
あるいは、前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、
前記第3並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記第4並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、
前記周波数Fa1と前記周波数Fa2および前記周波数Fb1と前記周波数Fb2で減衰極を生じることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項7】
前記共振器が、半同軸型誘電体共振器で構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項8】
前記半同軸型誘電体共振器に替えて、前記半同軸型誘電体共振器と同じ周波数で共振するヘリカル型共振器あるいは集中定数による共振回路で構成されていることを特徴とする請求項7に記載のバンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰域に有極特性を持つバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
バンドパスフィルタの減衰特性を改善するために、減衰域に有極特性を持たせる方法が従来から提案されている。例えば、特許文献1には、金属ケースの内部底面に3つ以上の共振導体が固定され、通過帯域の両側または片側に減衰極をもたせるために前記3つ以上の共振導体のうち内側の1つ以上の共振導体を飛び越した共振導体間を誘導結合させる有極用結合ループが設けられたコムライン形バンドパスフィルタが開示されている。また、特許文献2には、入出力結合回路を容量結合回路で形成した2個の共振器を互いに磁気結合(M結合)する帯域通過ろ波器が開示されている。この帯域通過ろ波器では、2個の共振器のインダクタンス分であるL1とL2とが磁気結合し、一方の共振器の入出力端子T1と他方の共振器の入出力端子T2との間が、結合容量CCで副結合されて、有極型伝送特性を持つようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2670963号公報
【文献】特開平6-268405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のバンドパスフィルタにおいて減衰域に有極特性を持たせるには、共振素子間を結合しなければならないことから、対象となる共振素子が複数個必要となって1個の共振器だけ備えるバンドパスフィルタに有極特性を持たせられないことになる。また、共振素子間の結合は電磁界結合であるから、共振素子が露出していないブロック化された誘電体共振器等に応用することが困難になるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、共振器は1つ以上を備えていればよく、共振器をブロック化された誘電体共振器や集中定数による共振回路としても減衰域に複数の有極特性を持たせることができるバンドパスフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された少なくともn(nは1以上の整数)個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、nが2以上とされた際に、前記共振器間を結合する(n-1)個の第3並列共振回路とを備え、通過周波数をFoとした時に、前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路の内のFoにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能する並列共振回路は、Foの高域の周波数で共振するよう設定され、前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路の内のFoにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能する並列共振回路は、Foの低域の周波数で共振するよう設定され、前記第1並列共振回路ないし前記第3並列共振回路が共振する周波数において減衰極を生じることを最も主要な特徴としている。
【0007】
また、本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Faで共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記周波数Faおよび前記周波数Fbで減衰極を生じることを特徴としている。
さらに、本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記周波数Fa1および前記周波数Fa2で減衰極を生じることを特徴としている。
【0008】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された1個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路とを備え、前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記周波数Fb1および前記周波数Fb2で減衰極を生じることを特徴としている。
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された2個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、前記共振器間を結合する第3並列共振回路とを備え、前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第3並列共振回路は、Foの低域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、あるいは、前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第3並列共振回路は、Foの高域の周波数Fbで共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記周波数Fa1と前記周波数Fa2および前記周波数Fbで減衰極を生じることを特徴としている。
【0009】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続され、通過周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定された3個の共振器と、入力端子と前記共振器とを結合する第1並列共振回路と、出力端子と前記共振器とを結合する第2並列共振回路と、前記共振器間をそれぞれ結合する第3並列共振回路および第4並列共振回路とを備え、前記第1並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの低域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第3並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第4並列共振回路は、Foの高域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、あるいは、前記第1並列共振回路は、Foの高域の周波数Fb1で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第2並列共振回路は、Foの高域の周波数Fb2で共振すると共に、Foにおいて等価的にインダクタンスの結合素子として機能し、前記第3並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa1で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記第4並列共振回路は、Foの低域の周波数Fa2で共振すると共に、Foにおいて等価的にキャパシタンスの結合素子として機能し、前記周波数Fa1と前記周波数Fa2および前記周波数Fb1と前記周波数Fb2で減衰極を生じることを特徴としている。
上記した本発明のバンドパスフィルタにおいて、前記共振器が、半同軸型誘電体共振器で構成されていてもよい。
また、上記した本発明のバンドパスフィルタにおいて、前記半同軸型誘電体共振器に替えて、前記半同軸型誘電体共振器と同じ周波数で共振するヘリカル型共振器あるいは集中定数による共振回路で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバンドパスフィルタは、入力端子と出力端子との間であってアースとの間にシャント接続されたn(nは1以上の整数)個の共振器を備えるバンドパスフィルタにおいて、入力端子と共振器、出力端子と共振器および共振器間を並列共振回路で結合し、通過周波数をFoとした時に、Foで等価的にインダクタンスとして機能する並列共振回路の共振周波数がFoの低域に設定され、Foで等価的にキャパシタンスとして機能する並列共振回路の共振周波数がFoの高域に設定されることにより、並列共振回路の共振周波数で減衰極が生じるようになる。これにより、共振器は1つ以上あればよく、共振器をブロック化された誘電体共振器や集中定数による共振回路としても減衰域に有極特性を持たせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図4】本発明のバンドパスフィルタにおける共振器の構成を示す斜視図、正面図、断面図で示す正面図である。
【
図5】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおける他の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおける他の挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおけるさらに他の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施例のバンドパスフィルタにおけるさらに他の挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施例のバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図12】本発明の第2実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図13】本発明の第2実施例のバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。
【
図14】本発明の第3実施例のバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
【
図15】本発明の第3実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図16】本発明の第3実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図17】本発明の第3実施例のバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。
【
図18】本発明の第4実施例のバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
【
図19】本発明の第4実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図20】本発明の第4実施例のバンドパスフィルタにおける挿入損失・減衰量の他の周波数特性を示す図である。
【
図21】本発明の第4実施例のバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の第1実施例>
本発明にかかる第1実施例のバンドパスフィルタ1の回路構成を
図1に示す。以下の説明では、バンドパスフィルタをBPFと云うものとする。
図1に示す本発明の第1実施例のBPF1は、入力端子INと出力端子OUTとの間に1個の共振器Rがアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Rとを結合する並列共振回路H1と、共振器Rと出力端子OUTとを結合する並列共振回路H2とが縦続に接続されて構成されている。並列共振回路H1はインダクタンスLaとキャパシタンスCaとが並列接続されて構成され、並列共振回路H2はインダクタンスLbとキャパシタンスCbとが並列接続されて構成されている。
【0013】
共振器Rは、酸化チタン等から成る誘電体のセラミクスを用いた半同軸誘電体共振器として構成されており、共振器Rの構成を
図4(a)(b)(c)に示す。
図4(a)は共振器Rの構成を示す上方斜めから見た斜視図であり、
図4(b)は共振器Rの構成を示す正面図であり、
図4(c)は共振器Rの構成を示すA-A断面図で示す正面図である。
これらの図に示すように共振器Rは、中央に断面円形の貫通孔10aが形成された円筒状の本体10を備え、本体10は酸化チタン等から成る誘電体のセラミクスを焼成して同軸構造に形成されており、全体にメタライズあるいは無電解めっき処理を施した後、一方の端面を剥離して開放面14が形成されている。これにより、本体10の外表面に外導体11が形成され、貫通孔10aの内面に内導体12が形成されている。他方の端面では、外導体11と内導体12とが短絡された短絡面13とされ、内導体12の外径がaとされ外導体11の内径がbとされている。
【0014】
図1に示す本発明の第1実施例のBPF1において、入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスをZoとし、BPF1の通過帯域の中心周波数である通過周波数をFoとし、Foの波長をλとする。共振器Rは電気長が約λ/4に設定され、並列共振回路H1はFoの高域の周波数Faで共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。また、並列共振回路H2はFoの低域の周波数Fbで共振し、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能する。そして、BPF1の減衰域においてFaとFbの周波数で減衰極を生じるようになる。すなわち、本発明の第1実施例のBPF1は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを1個だけ備えているが、Foの高域と低域の減衰域において有極特性を持ち、減衰特性が改善されている。
【0015】
図1に示す本発明の第1実施例のBPF1の電気定数を求めるために、BPF1の等価回路とされたBPF1aの回路構成を
図5(a)に示す。
図5(a)に示すBPF1aでは、入力端子INと出力端子OUTとの間に共振器Rがアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Rとを結合するインダクタンスL1と、共振器Rと出力端子OUTとを結合するキャパシタンスC1とが縦続に接続されて構成されている。すなわち、等価回路のBPF1aでは、並列共振回路H1をインダクタンスL1に、並列共振回路H2をキャパシタンスC1に等価的に置き換えている。共振器RはBPF1の共振器Rと同様とされている。
ここで、等価回路のBPF1aの通過周波数Foを150MHz、減衰量AttをFo±4MHzにて20dBとし、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rの本体10の比誘電率εrを93、外導体11の内径bと内導体12の外径aの比率b/aを3.6に定めると、共振器Rの特性インピーダンスWは約7.9696Ωと求められる。この結果を踏まえ、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスL1およびキャパシタンスC1のパラメータ値と、共振器Rの電気長がλ/4となる自己共振周波数Fvを伝送関数計算やコンピュータシミュレーションから求めると、L1は約453.241nHと、C1は約2.48387pFと、Fvは150MHzと求められる。
【0016】
本発明の第1実施例のBPF1では、並列共振回路H1はFoの周波数においてインダクタンスの結合素子、すなわち、インダクタンスL1として機能し、並列共振回路H2はFoの周波数においてキャパシタンスの結合素子、すなわち、キャパシタンスC1として機能する。これにより、並列共振回路H1はFoにおいてインダクタンスL1のパラメータ値となり、並列共振回路H2はキャパシタンスC1のパラメータ値となる。
本発明の第1実施例のBPF1の電気定数を減衰域の高域側有極周波数Faを158MHzとし、低域側有極周波数Fbを142MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,εr=93,b/a=3.6,W=7.9696Ω,Fv=150MHzで、Fo±4MHzで20dBが設定減衰量とされる。
【0017】
そして、前述したように並列共振回路H1は、FoにおいてインダクタンスL1と同じパラメータ値である約453.241nHとなり、並列共振回路H2は、FoにおいてキャパシタンスC1のパラメータ値である約2.48387pFとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路H1における減衰域の有極周波数Faは158MHzとなるから、Laは約44.7359nHと、Caは約22.6814pFと求められる。また、並列共振回路H2における減衰域の有極周波数Fbは142MHzとなるから、Lbは約52.5079nHと、Cbは約23.9243pFと求められる。
上記求められたパラメータ値とされた第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図2に示す。
図2において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図2を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量が20dBとなる周波数帯域は146MHz~154MHzとなっており、Fo-4MHzで約25.1dBの減衰量が得られ、Fo+4MHzで約25.6dBの減衰量が得られて、Fo±4MHzで20dBの設定減衰量を満足していることが分かる。さらに、第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図3に示す。
図3を参照すると、Foの高域の減衰域において158MHzに減衰極が生じており、Foの低域の減衰域において142MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第1実施例のBPF1は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを1個だけ備えていても、通過周波数Foの高域の周波数Faと低域の周波数Fbにおいて有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
【0018】
ところで、本発明の第1実施例のBPF1において、パラメータ値を変更することにより、BPF1の通過周波数をFoとした時に、並列共振回路H1をFoの高域の周波数Fa1で共振するように、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能させる。また、並列共振回路H2をFoの高域の周波数Fa2で共振するように、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能するよう設定することができる。
このように設定された第1実施例のBPF1の等価回路のBPF1bの回路構成を
図5(b)に示す。
図5(b)に示す等価回路のBPF1bでは、並列共振回路H1をインダクタンスL2に、並列共振回路H2をインダクタンスL2に等価的に置き換えている。共振器RはBPF1の共振器Rと同様に電気長が約λ/4とされ同様の構成とされている。
【0019】
ここで、前述と同様に等価回路のBPF1bの通過周波数Foを150MHzとし、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rの本体10の比誘電率εrを93、外導体11の内径bと内導体12の外径aの比率b/aを3.6とすると、共振器Rの特性インピーダンスWは約7.9696Ωと求められる。この結果を踏まえ、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスL2のパラメータ値と、共振器Rの電気長がλ/4となる自己共振周波数Fvを伝送関数計算やコンピュータシミュレーションから求めると、L2は約447.637nHと、Fvは約146.526MHzと求められる。
【0020】
上記のように設定された本発明の第1実施例のBPF1では、並列共振回路H1および並列共振回路H2はFoの周波数においてインダクタンスの結合素子、すなわち、インダクタンスL2として機能する。これにより、並列共振回路H1および並列共振回路H2はFoにおいてインダクタンスL2のパラメータ値となる。
本発明の第1実施例のBPF1の電気定数を減衰域の第1の高域側有極周波数Fa1を158MHzとし、第2の高域側有極周波数Fa2を162MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,εr=93,b/a=3.6,W=7.9696Ω,Fv=146.526MHzで、Fo±4MHzで約20dBが設定減衰量とされる。
【0021】
そして、前述したように並列共振回路H1および並列共振回路H2は、FoにおいてインダクタンスL2と同じパラメータ値である約447.637nHとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路H1における減衰域の有極周波数Fa1は158MHzとなるから、Laは約44.1827nHと、Caは約22.9654pFと求められる。また、並列共振回路H2における減衰域の有極周波数Fa2は162MHzとなるから、Lbは約63.8604nHと、Cbは約15.1140pFと求められる。
上記変更されたパラメータ値とされた第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図6に示す。
図6において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図6を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量はFo-4MHzで約16.3dBの減衰量となるが、Fo+4MHzで約32.2dBの減衰量が得られていることが分かる。さらに、上記変更されたパラメータ値とされた第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図7に示す。
図7を参照すると、Foの高域の減衰域において158MHzおよび162MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第1実施例のBPF1は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを1個だけ備えていても、通過周波数Foの高域の周波数Fa1,Fa2において有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
【0022】
さらに、本発明の第1実施例のBPF1において、パラメータ値をさらに変更することにより、BPF1の通過周波数をFoとした時に、並列共振回路H1をFoの低域の周波数Fb1で共振するように、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能させる。また、並列共振回路H2をFoの低域の周波数Fb2で共振するように、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能するよう設定することができる。
このように設定された第1実施例のBPF1の等価回路のBPF1cの回路構成を
図5(c)に示す。
図5(c)に示す等価回路のBPF1cでは、並列共振回路H1をキャパシタンスC3に、並列共振回路H2をキャパシタンスC3に等価的に置き換えている。共振器RはBPF1の共振器Rと同様に電気長が約λ/4とされ同様の構成とされている。
【0023】
ここで、前述と同様に等価回路のBPF1cの通過周波数Foを150MHzとし、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rの本体10の比誘電率εrを93、外導体11の内径bと内導体12の外径aの比率b/aを3.6とすると、共振器Rの特性インピーダンスWは約7.9696Ωと求められる。この結果を踏まえ、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスL2のパラメータ値と、共振器Rの電気長がλ/4となる自己共振周波数Fvを伝送関数計算やコンピュータシミュレーションから求めると、C3は約2.45652pFと、Fvは約153.558MHzと求められる。
【0024】
上記のように設定された本発明の第1実施例のBPF1では、並列共振回路H1および並列共振回路H2はFoの周波数においてキャパシタンスの結合素子、すなわち、キャパシタンスC3として機能する。これにより、並列共振回路H1および並列共振回路H2はFoにおいてキャパシタンスC3のパラメータ値となる。
本発明の第1実施例のBPF1の電気定数を減衰域の第1の低域側有極周波数Fb1を138MHzとし、第2の低域側有極周波数Fb2を142MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,εr=93,b/a=3.6,W=7.9696Ω,Fv=153.558MHzで、Fo±4MHzで約20dBが設定減衰量とされる。
【0025】
そして、前述したように並列共振回路H1および並列共振回路H2は、FoにおいてキャパシタンスC3と同じパラメータ値である約2.45652pFとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路H1における減衰域の有極周波数Fb1は138MHzとなるから、Laは約83.1674nHと、Caは約15.9930pFと求められる。また、並列共振回路H2における減衰域の有極周波数Fb2は142MHzとなるから、Lbは約53.0926nHと、Cbは約23.6608pFと求められる。
上記さらに変更されたパラメータ値とされた第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図8に示す。
図8において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図8を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量はFo-4MHzで約31.6dBの減衰量の減衰量が得られているが、Fo+4MHzで約16.7dBとなることが分かる。さらに、上記さらに変更されたパラメータ値とされた第1実施例のBPF1の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図9に示す。
図9を参照すると、Foの低域の減衰域において138MHzおよび142MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第1実施例のBPF1は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを1個だけ備えていても、通過周波数Foの低域の周波数Fb1,Fb2において有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
【0026】
<本発明の第2実施例>
本発明にかかる第2実施例のバンドパスフィルタ2の回路構成を
図10に示す。
図10に示す本発明の第2実施例のBPF2は、入力端子INと出力端子OUTとの間に共振器Ra1と共振器Ra2とがアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Ra1とを結合する並列共振回路Ha1と、共振器Ra1と共振器Ra2とを結合する並列共振回路Ha2と、共振器Ra2と出力端子OUTとを結合する並列共振回路Ha3とが縦続に接続されて構成されている。また、シャント接続されている共振器Ra1と共振器Ra2に並列に同調周波数を微調整するキャパシタンスCt1,Ct2がそれぞれ接続されている。共振器Ra1,Ra2は通過周波数Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定され、
図4(a)~
図4(c)に示す半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rと同様の構成とされている。並列共振回路Ha1はインダクタンスLa1とキャパシタンスCa1とが並列接続されて構成され、並列共振回路Ha2はインダクタンスLa2とキャパシタンスCa2とが並列接続されて構成され、並列共振回路Ha3はインダクタンスLa3とキャパシタンスCa3とが並列接続されて構成されている。
【0027】
図10に示す本発明の第2実施例のBPF2において、入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスをZoとし、BPF2の通過周波数をFoとした時に、並列共振回路Ha1はFoの高域の周波数FHa1で共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。また、並列共振回路Ha2はFoの低域の周波数FLaで共振し、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能する。さらに、並列共振回路Ha3はFoの高域の周波数FHa2で共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。そして、BPF2の減衰域においてFHa1,FHa2とFLaの周波数において減衰極を生じるようになる。すなわち、本発明の第2実施例のBPF2は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを2個備え、減衰域においてFoの高域側に2個と低域側に1個の減衰極を持つ有極特性とされ、減衰特性が改善されている。
【0028】
図10に示す本発明の第2実施例のBPF2の電気定数を求めるために、BPF2の等価回路とされるBPF2aの回路構成を
図13に示す。
図13に示すBPF2aでは、入力端子INと出力端子OUTとの間に2個の共振器Ra1,Ra2がアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Ra1とを結合するインダクタンスLa0と、共振器Ra1と共振器Ra2とを結合するキャパシタンスCa0と、共振器Ra2と出力端子OUTとを結合するインダクタンスLa0とが縦続に接続されて構成されている。すなわち、等価回路のBPF2aでは、並列共振回路Ha1および並列共振回路Ha2をインダクタンスLa0に、並列共振回路Ha2をキャパシタンスCa0に等価的に置き換えている。共振器Ra1,Ra2は
図4(a)~
図4(c)に示す共振器Rと同様とされている。
【0029】
ここで、等価回路のBPF2aの通過周波数Foを150MHz、減衰量AttをFo±4MHzにて30dBとし、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Ra1,Ra2の本体10の比誘電率εrを75、外導体11の内径bと内導体12の外径aの比率b/aを3.6に定めると、共振器Ra1,Ra2の特性インピーダンスWは約8.87457Ωと求められる。この結果を踏まえ、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスLa0およびキャパシタンスCa0のパラメータ値と、共振器Ra1,Ra2の電気長がλ/4となる自己共振周波数Fvを伝送関数計算やコンピュータシミュレーションから求めると、La0は約307.186nHと、Ca0は約0.644592pFと、Fvは約150.090MHzと求められる。また、Ct1は約3.0pFと、Ct2も約3.0pFに設定される。
【0030】
本発明の第2実施例のBPF2では、並列共振回路Ha1および並列共振回路Ha3はFoの周波数においてインダクタンスの結合素子、すなわち、インダクタンスLa0として機能し、並列共振回路Ha2はFoの周波数においてキャパシタンスの結合素子、すなわち、キャパシタンスCa0として機能する。これにより、並列共振回路Ha1および並列共振回路Ha3はFoにおいてインダクタンスLa0のパラメータ値となり、並列共振回路Ha2はFoの周波数においてキャパシタンスCa0のパラメータ値となる。
本発明の第2実施例のBPF2の電気定数を減衰域の第1の高域側有極周波数FHa1を158MHzとし、第2の高域側有極周波数FHa2を166MHzとし、減衰域の低域側有極周波数FLaを142MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,εr=75,b/a=3.6,W=8.87457Ω,Fv=150.090MHzで、Fo±4MHzで30dBが設定減衰量とされる。
【0031】
そして、前述したように並列共振回路Ha1および並列共振回路Ha3は、FoにおいてインダクタンスLa0と同じパラメータ値である約307.186nHと、並列共振回路Ha2は、FoにおいてキャパシタンスCa0と同じパラメータ値である約0.644592pFとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路Ha1における減衰域の有極周波数FHa1は158MHzとなるから、La1は約30.3199nHと、Ca1は約33.4656pFと求められる。また、並列共振回路Ha2における減衰域の有極周波数FLaは142MHzとなるから、La2は約202.334nHと、Ca2は約6.20861pFと求められる。さらに、並列共振回路Ha3における減衰域の有極周波数FHa2は166MHzとなるから、La3は約56.3628nHと、Ca3は約16.3092pFと求められる。なお、Ct1は約3.069pFとCt2は約3.072pFと調整される。
なお、同調周波数を微調整するキャパシタンスCt1,Ct2の値が第2実施例のBPF2と等価回路のBPF2aとで僅かに異なるのは、BPF2において減衰極を持たせた影響によるVSWRの周波数特性を補正したことによる。
【0032】
上記求められたパラメータ値とされた第2実施例のBPF2の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図11に示す。
図11において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図11を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量が30dBとなる周波数帯域は146MHz~154MHzとなっており、Fo-4MHzで約35.5dBの減衰量が得られ、Fo+4MHzで約40.2dBの減衰量が得られて、Fo±4MHzで30dBの設定減衰量を満足していることが分かる。さらに、上記パラメータ値とされた第2実施例のBPF2の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図12に示す。
図12を参照すると、Foの高域の減衰域において158MHzおよび166MHzに減衰極が生じており、Foの低域の減衰域において142MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第2実施例のBPF2は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを2個備え、通過周波数Foの高域の周波数FHa1,FHa2および低域の周波数FLaにおいて有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
【0033】
<本発明の第3実施例>
本発明にかかる第3実施例のバンドパスフィルタ3の回路構成を
図14に示す。
図14に示す本発明の第3実施例のBPF3は、入力端子INと出力端子OUTとの間に共振器Rb1と共振器Rb2と共振器Rb3がアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Rb1とを結合する並列共振回路Hb1と、共振器Rb1と共振器Rb2とを結合する並列共振回路Hb2と、共振器Rb2と共振器Rb3とを結合する並列共振回路Hb3と、共振器Rb3と出力端子OUTとを結合する並列共振回路Hb4とが縦続に接続されて構成されている。また、シャント接続されている共振器Rb1ないし共振器Rb3に並列に同調周波数を微調整するキャパシタンスCt1,Ct2,Ct3がそれぞれ接続されている。共振器Rb1ないし共振器Rb3は通過周波数Foの波長をλとした時に、電気長が約λ/4に設定され、
図4(a)~
図4(c)に示す半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rと同様の構成とされている。並列共振回路Hb1はインダクタンスLb1とキャパシタンスCb1とが並列接続されて構成され、並列共振回路Hb2はインダクタンスLb2とキャパシタンスCb2とが並列接続されて構成され、並列共振回路Hb3はインダクタンスLb3とキャパシタンスCb3とが並列接続されて構成され、並列共振回路Hb4はインダクタンスLb4とキャパシタンスCb4とが並列接続されて構成されている。
【0034】
図14に示す本発明の第3実施例のBPF3において、入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスをZoとし、BPF3の通過周波数をFoとした時に、並列共振回路Hb1はFoの低域の周波数FLb1で共振し、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能する。また、並列共振回路Hb2はFoの高域の周波数FHb1で共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。さらに、並列共振回路Hb3はFoの高域の周波数FHb2で共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。さらにまた、並列共振回路Hb4はFoの低域の周波数FLb2で共振し、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能する。そして、BPF3の減衰域においてFHb1,FHb2とFLb1,FLb2の周波数において減衰極を生じるようになる。すなわち、本発明の第3実施例のBPF3は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器を3個備え、減衰域においてFoの高域側に2個と低域側に2個の減衰極を持つ有極特性とされ、減衰特性が改善されている。
【0035】
図14に示す本発明の第3実施例のBPF3の電気定数を求めるために、BPF3の等価回路とされるBPF3aの回路構成を
図17に示す。
図17に示すBPF3aでは、入力端子INと出力端子OUTとの間に3個の共振器Rb1,Rb2,Rb3がアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Rb1とを結合するキャパシタンスCb0と、共振器Rb1と共振器Rb2とを結合するインダクタンスLb0と、共振器Rb2と共振器Rb3とを結合するインダクタンスLb0と、共振器Rb3と出力端子OUTとを結合するキャパシタンスCb0とが縦続に接続されて構成されている。すなわち、等価回路のBPF3aでは、並列共振回路Hb1および並列共振回路Hb4をキャパシタンスCb0に、並列共振回路Hb2および並列共振回路Hb3をインダクタンスLb0に等価的に置き換えている。共振器Rb1ないし共振器Rb2は
図4(a)~
図4(c)に示す共振器Rと同様とされている。
【0036】
ここで、等価回路のBPF3aの通過周波数Foを150MHz、減衰量AttをFo±4MHzにて40dBとし、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rb1ないし共振器Rb3の本体10の比誘電率εrを34、外導体11の内径bと内導体12の外径aの比率b/aを3.6に定めると、共振器Rb1ないし共振器Rb3の特性インピーダンスWは約13.1807Ωと求められる。この結果を踏まえ、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスLb0およびキャパシタンスCb0のパラメータ値と、共振器Rb1ないし共振器Rb3の電気長がλ/4となる自己共振周波数Fvを伝送関数計算やコンピュータシミュレーションから求めると、Lb0は約2200.76nHと、Cb0は約3.96765pFと、共振器Rb1のFvは約157.877MHzと、共振器Rb2のFvは約152.382MHzと、共振器Rb3のFvは約157.877MHzと求められる。また、Ct1は約3.0pFとなり、Ct2およびCt3も約3.0pFとなる。
【0037】
本発明の第3実施例のBPF3では、並列共振回路Hb1および並列共振回路Hb4はFoの周波数においてキャパシタンスの結合素子、すなわち、キャパシタンスCb0として機能し、並列共振回路Hb2および並列共振回路Hb3はFoの周波数においてインダクタンスの結合素子、すなわち、インダクタンスLb0として機能する。これにより、並列共振回路Hb1および並列共振回路Hb4はFoの周波数においてキャパシタンスCb0のパラメータ値となり、並列共振回路Hb2および並列共振回路Hb3はFoにおいてインダクタンスLb0のパラメータ値となる。
本発明の第3実施例のBPF3の電気定数を減衰域の第1の高域側有極周波数FHb1を158MHzとし、第2の高域側有極周波数FHb2を166MHzとし、減衰域の第1の低域側有極周波数FLb1を134MHzとし、減衰域の第2の低域側有極周波数FLb2を142MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,εr=34,b/a=3.6,W=13.1807Ω,共振器Rb1のFvは約157.877MHz、共振器Rb2のFvは約152.382MHz、共振器Rb3のFvは約157.877MHzで、Fo±4MHzで40dBが設定減衰量とされる。
【0038】
そして、前述したように並列共振回路Hb1および並列共振回路Hb4はFoの周波数においてキャパシタンスCb0のパラメータ値である約3.96765pFとなり、並列共振回路Hb2および並列共振回路Hb3は、FoにおいてインダクタンスLb0と同じパラメータ値である約2200.76nHとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路Hb1における減衰域の有極周波数FLb1は134MHzとなるから、Lb1は約71.8048nHと、Cb1は約19.6461pFと求められる。また、並列共振回路Hb2における減衰域の有極周波数FHb1は158MHzとなるから、Lb2は約217.220nHと、Cb2は約4.67117pFと求められる。さらに、並列共振回路Hb3における減衰域の有極周波数FHb2は166MHzとなるから、Lb3は約403.798nHと、Cb3は約2.27646pFと求められる。さらにまた、並列共振回路Hb4における減衰域の有極周波数FLb2は142MHzとなるから、Lb4は約32.8716nHと、Cb4は約38.2158pFと求められる。なお、Ct1は約2.907pFとなりCt2は約2.921PFとなりCt3は約2.936pFと調整される。
なお、同調周波数を微調整するキャパシタンスCt1~Ct3の値が第3実施例のBPF3と等価回路のBPF3aとで僅かに異なるのは、BPF3において減衰極を持たせた影響によるVSWRの周波数特性を補正したことによる。
【0039】
上記求められたパラメータ値とされた第3実施例のBPF3の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図15に示す。
図15において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図15を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量が40dBとなる周波数帯域は146MHz~154MHz以上となっており、Fo-4MHzで約50.1dBの減衰量が得られ、Fo+4MHzで約50.8dBの減衰量が得られて、Fo±4MHzで40dBの設定減衰量を満足していることが分かる。さらに、上記パラメータ値とされた第3実施例のBPF3の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図16に示す。
図16を参照すると、Foの高域の減衰域において158MHzおよび166MHzに減衰極が生じており、Foの低域の減衰域において142MHzおよび134MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第3実施例のBPF3は、半同軸型誘電体共振器とされた共振器Rを3個備え、通過周波数Foの高域の周波数FHb1,FHb2および低域の周波数FLb1,FLb2において有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
【0040】
<本発明の第4実施例>
本発明にかかる第4実施例のバンドパスフィルタ4の回路構成を
図18に示す。
図18に示す本発明の第4実施例のBPF4は、入力端子INと出力端子OUTとの間にインダクタンスLpとキャパシタンスCpとの並列共振回路からなる共振器Hpがアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Hpとを結合する並列共振回路Hc1と、共振器Hpと出力端子OUTとを結合する並列共振回路Hc2とが縦続に接続されて構成されている。並列共振回路Hc1はインダクタンスLc1とキャパシタンスCc1とが並列接続されて構成され、並列共振回路Hc2はインダクタンスLc2とキャパシタンスCc2とが並列接続されて構成されている。
【0041】
図18に示す本発明の第4実施例のBPF4において、入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスをZoとし、BPF4の通過周波数をFoとした時に、共振器HpはFoで共振し、並列共振回路Hc1はFoの高域の周波数FHcで共振し、Foの周波数においてインダクタンスの結合素子として機能する。さらに、並列共振回路Hc2はFoの低域の周波数FLcで共振し、Foの周波数においてキャパシタンスの結合素子として機能する。そして、BPF4の減衰域においてFHc,FLcの周波数において減衰極を生じるようになる。すなわち、本発明の第4実施例のBPF4は、共振器Hpを1個だけ備え、減衰域においてFoの高域側と低域側に減衰極を持つ有極特性とされ、減衰特性が改善されている。
【0042】
図18に示す本発明の第4実施例のBPF4の電気定数を求めるために、BPF4の等価回路とされるBPF4aの回路構成を
図21に示す。
図21に示すBPF4aでは、入力端子INと出力端子OUTとの間に集中定数による並列共振回路とされた共振器Hpがアースとの間でシャント接続され、入力端子INと共振器Hpとを結合するインダクタンスLc0と、共振器Hpと出力端子OUTとを結合するキャパシタンスCc0とが縦続に接続されて構成されている。すなわち、等価回路のBPF4aでは、並列共振回路Hc1をインダクタンスLc0に、並列共振回路Hc2をキャパシタンスCc0に等価的に置き換えている。共振器HpはBPF4の集中定数による共振器Hpと同様の構成とされている。
【0043】
ここで、等価回路のBPF4aの通過周波数Foを150MHz、減衰量AttをFo±4MHzにて20dBとし、集中定数による並列共振回路とされた共振器HpはFoで共振することから自己共振周波数Fvは150MHzとなり、キャパシタンスCpを10pFとおくと、インダクタンスLpは約112.579nHとなる。入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoを50Ωとして、結合素子とされるインダクタンスLc0およびキャパシタンスCc0のパラメータ値を求めると、Lc0は約1436.56nHと、Cc0は約0.78367pFと求められる。
そして、本発明の第4実施例のBPF4では、並列共振回路Hc1はFoの周波数においてインダクタンスの結合素子、すなわち、インダクタンスLc0として機能する。また、並列共振回路Hc2はFoの周波数においてキャパシタンスの結合素子、すなわち、キャパシタンスCc0として機能する。これにより、並列共振回路Hc1はFoにおいてインダクタンスLb0のパラメータ値となり、並列共振回路Hc2はFoの周波数においてキャパシタンスCc0のパラメータ値となる。
【0044】
本発明の第4実施例のBPF4の電気定数を減衰域の高域側有極周波数FHcを158MHzとし、減衰域の低域側有極周波数FLcを142MHzとし、次に示す設定条件で電気定数を求める。設定条件は、Fo=150MHz,Zo=50Ω,共振器HpのFv=150MHz、Fo±4MHzで20dBが設定減衰量とされる。
そして、前述したように並列共振回路Hc1は、FoにおいてインダクタンスLc0と同じパラメータ値である約1436.56nHとなり、並列共振回路Hc2は、Foの周波数においてキャパシタンスCc0のパラメータ値である約0.78367pFとなることをさらなる条件として電気定数を計算する。すると、並列共振回路Hc1における減衰域の有極周波数FHcは158MHzとなるから、Lc1は約141.792nHと、Cc1は約7.15609pFと求められる。また、並列共振回路Hc2における減衰域の有極周波数FLcは142MHzとなるから、Lc2は約166.426nHと、Cb2は約7.54819pFと求められる。
【0045】
上記求められたパラメータ値とされた第4実施例のBPF4の挿入損失・減衰量およびVSWRの周波数特性を
図19に示す。
図19において、横軸は145MHz~155MHzの周波数軸であり、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]およびVSWRとされている。
図19を参照すると、150MHzが最小損失でVSWR最良点となっており、通過周波数が150MHzになっていることが分かる。また、減衰量が20dBとなる周波数帯域は146MHz~154MHz以上となっており、Fo-4MHzで約29.5dBの減衰量が得られ、Fo+4MHzで約29.7dBの減衰量が得られて、Fo±4MHzで20dBの設定減衰量を満足していることが分かる。さらに、上記パラメータ値とされた第4実施例のBPF4の挿入損失・減衰量の周波数レンジを130MHz~170MHzとした周波数特性を
図20に示す。
図20を参照すると、Foの高域の減衰域において158MHzに減衰極が生じており、Foの低域の減衰域において142MHzに減衰極が生じていることが分かる。これにより、本発明の第4実施例のBPF4は、集中定数による並列共振回路とされた共振器Hpを1個だけ備え、通過周波数Foの高域の周波数FHcおよび低域の周波数FLcにおいて有極特性を持ち、減衰特性が改善されていることが分かる。
このように、共振器を集中定数による並列共振回路で構成しても、結合素子を並列共振回路で構成し、結合素子を通過帯域の中心周波数で電気的にインダクタンスまたはキャパシタンスと等価となるパラメータ値とすることにより、通過周波数の高域および低域において減衰極を持たせることができる有極特性のバンドパスフィルタとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明した本発明にかかる実施例のバンドパスフィルタにおいて、電気定数とされるパラメータ値は、上記記載したパラメータ値に限定されるものではなく、各バンドパスフィルタにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏することができるパラメータ値とされていれば、上記記載したパラメータ値に限定されるものではない。すなわち、このパラメータ値には、上記記載したパラメータ値の上下に許容範囲があり、この許容範囲は各バンドパスフィルタにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏する範囲とされている。
以上説明した本発明にかかる第2実施例および第3実施例のバンドパスフィルタにおいては、インダクタンスとして機能する並列共振回路をキャパシタンスとして機能させると共に、キャパシタンスとして機能する並列共振回路をインダクタンスとして機能させてもよい。この場合、キャパシタンスとして機能させる並列共振回路はFoの低域の周波数で共振するように電気定数を変更すると共に、インダクタンスとして機能させる並列共振回路はFoの高域の周波数で共振するように電気定数を変更する。これにより、並列共振回路の共振周波数において、減衰域に複数の減衰極を持たせることができる。なお、上記構成とすると第2実施例のバンドパスフィルタにおいては、高域に2つの減衰極を持つことに替えて低域に2つの減衰極を持つようになる。
以上説明した本発明にかかる実施例のバンドパスフィルタにおいては、共振器として半同軸型誘電体共振器を用いて構成したが、これに限ることはなく、半同軸誘電体共振器に替えて、前記半同軸型誘電体共振器と同じ周波数で共振するヘリカル型共振器あるいは集中定数による共振回路で構成することができる。
本発明にかかる実施例のバンドパスフィルタは、集中定数型共振器、ヘリカル型共振器または半同軸型共振器を備えるバンドパスフィルタにおいて、結合素子を並列共振回路で構成し、結合素子を通過帯域の中心周波数とされる通過周波数で電気的にインダクタンスまたはキャパシタンスと等価となるパラメータ値とすることにより、減衰域において減衰極を生じさせることのできるバンドパスフィルタを実現することができる。
【0047】
従来のバンドパスフィルタにおいて減衰域に有極特性を持たせるには、共振素子間を結合しなければならないことから、対象となる共振素子が複数個必要になるが、本発明のバンドパスフィルタでは、共振器が1個であっても減衰域に2点の有極特性を持たせることが可能となる。本発明のバンドパスフィルタにおいて、共振器の数をN個とすると、結合素子の数は(N+1)個となり、結合素子と同数の減衰極を生じさせることができることから、多くの減衰極を持つ有極特性のバンドバスフィルタとすることが可能となる。この場合、通過周波数において結合素子を電気的にインダクタンスと等価となるパラメータ値とすることにより、通過周波数の高域側に減衰極を生じさせることができ、通過周波数において結合素子を電気的にキャパシタンスと等価となるパラメータ値とすることにより、通過周波数の低域側に減衰極を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3,4 バンドパスフィルタ、10 本体、10a 貫通孔、11 外導体、12 内導体、13 短絡面、14 開放面、BPF1,BPF1a,BPF1b,BPF2,BPF2a,BPF3,BPF3a,BPF4,BPF4a バンドパスフィルタ、H1,H2,Ha1,Ha2,Ha3,Hb1,Hb2,Hb3,Hb4,Hc1,Hc2 並列共振回路、Hp,R,Ra1,Ra2,Rb1,Rb2,Rb3 共振器、IN 入力端子、OUT 出力端子