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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】抜栓キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20240219BHJP
   B65D 47/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B65D51/22 120
B65D47/12 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113346
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011921
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137092(JP,A)
【文献】特開2020-083464(JP,A)
【文献】特開2018-002225(JP,A)
【文献】実開昭53-142162(JP,U)
【文献】特開2016-011165(JP,A)
【文献】実開昭53-131947(JP,U)
【文献】米国特許第04181232(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
B65D 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着される中栓と、中栓に螺合して着脱自在に装着されるねじキャップとを備える抜栓キャップであって、
中栓は、注出筒と、注出筒の内周面に薄肉弱化部を介して連設され、周方向に第1係合部が形成された移行栓体とを有し、
ねじキャップは、頂壁と、頂壁から垂下され、閉蓋時に外周で注出筒を密閉する密封筒部と、移行栓体の第1係合部と係合可能な第2係合部とを有し、
第1係合部は、略径方向に形成され、第2係合部と係合する第1係合面を有し、
第2係合部は、略径方向に形成され、第1係合部の第1係合面と係合する第2係合面を有し、
中栓は、薄肉弱化部を挟んだ内側と外側に、下面から形成された凹溝を有し、
凹溝は、第1係合部の第1係合面から螺着方向に0°~105°の範囲に対向して形成されることを特徴とする抜栓キャップ。
【請求項2】
凹溝は、第1係合部の第1係合面から螺着方向に30°~60°の範囲に形成されることを特徴とする請求項1に記載の抜栓キャップ。
【請求項3】
第1係合部と第2係合部は、対向する位置にそれぞれ2個所形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の抜栓キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移行栓体を有する中栓を備える抜栓キャップに関し、特に、ねじキャップを開蓋方向に回動することにより開封できる抜栓キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドレッシングなどの内容物を収容する食品容器として、開封するまで移行栓体を有する中栓により容器本体内を密封状態にし、中栓に螺合して装着されたねじキャップを開蓋方向に回動することによって、中栓から移行栓体を除去し、移行栓体をねじキャップの係着部に保持して開封することができる抜栓キャップが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-83464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の抜栓キャップは、ねじキャップを開蓋方向に回動するだけで中栓から移行栓体を除去して開封することができるが、注出筒の内周面に薄肉弱化部を介して連結された移行栓体は、注出口の穴径を拡げていくと、開封トルクが高くなるために、現状では、穴径を最大16mm程度に抑える必要があり、穴径をこれ以上大きくできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、容器本体の口部に装着され、移行栓体を有する中栓と、中栓に螺合して着脱自在に装着されるねじキャップとを備える抜栓キャップにおいて、ねじキャップを開蓋方向に回動した際に、薄肉弱化部にかかる応力が増大せず、低減された開封トルクで開封することができる抜栓キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、抜栓キャップとして、容器本体の口部に装着される中栓と、中栓に螺合して着脱自在に装着されるねじキャップとを備える抜栓キャップであって、中栓は、注出筒と、注出筒の内周面に薄肉弱化部を介して連設され、周方向に第1係合部が形成された移行栓体とを有し、ねじキャップは、頂壁と、頂壁から垂下され、閉蓋時に外周で注出筒を密閉する密封筒部と、移行栓体の第1係合部と係合可能な第2係合部とを有し、第1係合部は、略径方向に形成され、第2係合部と係合する第1係合面を有し、第2係合部は、略径方向に形成され、第1係合部の第1係合面と係合する第2係合面を有し、中栓は、薄肉弱化部を挟んだ内側と外側に、下面から形成された凹溝を有し、凹溝は、第1係合部の第1係合面から螺着方向に0°~105°の範囲に対向して形成されることを特徴とする構成を採用する。
【0007】
抜栓キャップの実施形態として、凹溝は、第1係合部の第1係合面から螺着方向に30°~60°の範囲に形成されることを特徴とする構成を採用し、また、第1係合部と第2係合部は、対向する位置にそれぞれ2個所形成されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抜栓キャップは、上記構成を採用することにより、抜栓キャップのねじキャップを開蓋方向に回動した際に、薄肉弱化部にかかる応力が増大せず、低減された開封トルクで開封することができ、移行栓体を有する抜栓キャップにおいて、注出口の穴径を16mmよりも大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る抜栓キャップにおけるねじキャップと中栓とのセット後の状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
図2】実施例の抜栓キャップにおけるねじキャップと中栓とのセット後の状態を示す図であり、(a)は図1(a)のX-X線における断面矢視図、(b)は図1(a)のY-Y線における断面矢視図である。
図3】実施例の抜栓キャップにおける中栓を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面半断面図である。
図4】実施例の抜栓キャップにおけるねじキャップを示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は下面図である。
図5】実施例の抜栓キャップにおける中栓の第1係合部と凹溝との位置関係を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の抜栓キャップについて、実施例として示した図面を参照して説明する。
【実施例
【0011】
図1(a)において、Aは容器本体、Bは容器本体Aに装着される中栓、Cは中栓Bに螺合して着脱自在に装着されるねじキャップである。
図1(a)に示すように、容器本体Aは、口部1に、中栓Bを嵌着して抜け止め保持する係止突条2を備えている。
【0012】
図1および図3に示すように、中栓Bは、外周側の外筒5、内周側の内筒6、口部1の天面側に位置する上壁7とからなり、口部1が嵌入する環状溝を形成する嵌合筒部4と、嵌合筒部4から立設されたねじ壁部8と、ねじ壁部8の上端に天壁9を介して連設された注出筒10とから構成されている。
【0013】
注出筒10は、容器本体A内に収容された内容物を注出する注出口を形成し、円筒状の基部11と、基部11の上部に拡径して外側に湾曲するリップ部12とを有する。
注出筒10の基部11の内周面には、全周にわたって形成された薄肉弱化部14を介して移行栓体15が一体に連設されている。
移行栓体15は、頂部が閉鎖された中空の柱状壁16と、柱状壁16の底部に設けられたリング状の底壁17とを備え、薄肉弱化部14とともに注出口を密閉している。
【0014】
図2(a)および図3(a)に示すように、柱状壁16の外周には、第1係合部を構成する広幅外歯18が軸心に対して0°、180°の位置に2個所形成されている。
広幅外歯18は、後述するねじキャップCの第2係合部と係合する略径方向に形成された第1係合面18aと、その周方向反対側に形成され柱状壁16の外周面から螺着方向に傾斜した第1非係合面18bと、柱状壁16に沿って円弧状に形成された肉抜き部18cとを備えている。
【0015】
本実施例では、第1係合部は、移行栓体15の柱状壁16の外周に形成された広幅外歯18として具体化されているが、第1係合部は、移行栓体15の周方向に、ねじキャップCの第2係合部と係合する凹凸を有するものであれば、個数および構造は問わない。
【0016】
底壁17は、柱状壁16の外周側に下面から所定の高さを有する拡径部20と、拡径部20の外周上部に周設された第1係着部を構成する第1係着突部21と、拡径部20の外周下部に連設され、外側に向けて漸次肉薄になるとともに薄肉弱化部14と連設するフランジ部22とを有している。
【0017】
図1(b)および図2(b)に示すように、中栓Bは、薄肉弱化部14を挟んだ外側と内側に位置する基部11の下面とフランジ部22の下面には、外凹溝13と内凹溝19が所定の角度範囲にわたって対向して2個所形成されている。
図5に示すように、所定の角度範囲について説明すると、移行栓体15の広幅外歯18の第1係合面18aの延長上の角度を0°とし、この0°は、薄肉弱化部14の破断開始位置でもあり、破断開始位置からねじキャップCの螺着方向(矢印と反対方向)に向かう角度をθとすると、外凹溝13と内凹溝19は、角度θが30°から60°の範囲に形成されている。
【0018】
ねじ壁部8は、注出筒10の下部に内周縁で連設した天壁9の外周縁から垂設され、外周面には第1ねじ部を構成する雄ねじ23が設けられている。
図1(b)に示すように、雄ねじ23は、通常のねじ山のように、断面が上下対称ではなく、上面が急傾斜して形成される傾斜上面23aと、下面が平坦に形成される平坦下面23bとから構成され、雄ねじ23は、図3(a)に示すように、上端部が180°間隔で始まる2条ねじで形成されている。
なお、本実施例では、雄ねじ23は、2条ねじとしているが、ねじ壁部8の高さに応じて、3条以上の多条ねじとすることができる。
【0019】
ねじ壁部8の内周面には、上部を天壁9に連設し軸方向に延びる補強リブ24が複数(本実施例では、2個所)配設されている。
図3に示すように、天壁9の周縁部には、外周側に陥没した段部25が設けられ、段部25の内周側には、180°間隔で2個所に音出し突部26が配設されている。
【0020】
嵌合筒部4は、外筒5と内筒6と上壁7によって、容器本体Aの口部1が嵌入する嵌合溝が形成され、外筒5の内周には、容器本体Aの係止突条2に係合して口部1を抜け止めする係止縮径部27が設けられている。
図3に示すように、上壁7の上面には、周方向の2個所にストッパー28が設けられている。
【0021】
外筒5には、周方向にわたって外周面から径方向に切欠き凹部29が凹設され、切欠き凹部29の下部には、中栓Bを容器本体Aから分離して分別廃棄可能とする分別機構30が設けられている。
分別機構30は、図2および図3に示すように、外筒5の下部外周面の所定円弧範囲にわたって軸方向に形成されたスリット31を介して把持部32が設けられ、把持部32は、薄肉の縦切断部33によって外筒5から切り離され外方に展開可能になっている。
【0022】
図3(b)に示すように、把持部32の縦切断部33から右方向には、上部に指先を入れて引っ掛けるための引っ掛け凹部34が形成されている。
スリット31は、縦切断部33から把持部32と反対方向に始端部31aまで延び、他方の端部である終端部31bで把持部32が外筒5と一体となっている。
なお、本実施例では、スリット31は、約120°の円弧範囲にわたって形成され、スリット31のうち、始端部31aから引っ掛け凹部34に隣接する中間部31cまでは、上下方向に貫通しており、中間部31cから終端部31bまでの部分は、容易に破断できるように薄肉で接続されている。
【0023】
スリット31の終端部31bに隣接する外筒5の係止縮径部27を含めた下部は、径方向に切り欠かれており、外筒5と把持部32の間に破断可能な薄肉始断部35が形成されている。
外筒5の切欠き凹部29には、スリット31の終端部31bから背面方向に延び、始端部31a付近までの間の外筒5の内周側に破断可能な薄肉の周方向切断部36と、周方向切断部36の端部と終端部31bとの間の大部分が把持部32に対向する厚肉の厚肉連結部37が形成されている。
【0024】
図1および図4に示すように、ねじキャップCは、円板状の頂壁40と、頂壁40の外周縁から垂設された外周壁41とを備え、頂壁40の内面には、内側から順に、密封筒部43とねじ筒部44とが頂壁40と一体に垂設され、さらに、密封筒部43とねじ筒部44との間に、音出し部材45が同心円上に180°間隔で2個所に配設されている。
【0025】
密封筒部43は、閉蓋時に、外周が注出筒10の内周面に当接して注出口を密閉するシール部50と、密封筒部43の内周面から径方向に延び、移行栓体15の第1係合部を構成する広幅外歯18と係合する第2係合部を構成する狭幅内歯51とを備え、狭幅内歯51は、広幅外歯18と同数の周方向2個所に設けられている。
狭幅内歯51は、開封時に、ねじキャップCを開蓋方向に回動させたとき、移行栓体15の広幅外歯18の第1係合面18aと係合する略径方向の第2係合面51aと、その周方向反対側に形成され密封筒部43の内周面から螺脱方向に傾斜した第2非係合面51bとを備えている。
【0026】
本実施例では、第2係合部は、密封筒部43の内周面から径方向に延びる狭幅内歯51として具体化されているが、第2係合部は、密封筒部43に限らず、ねじキャップCに設けられ(例えば、頂壁40から垂設され)、移行栓体15の第1係合部と係合する凹凸を有するものであれば、第1係合部と同様に、個数および構造は問わない。
【0027】
さらに、密封筒部43は、先端内周に形成された第2係着部を構成する環状の第2係着突部48が移行栓体15に形成された第1係着突部21を乗り越えて拡径部20の外周面に緊密に嵌合するところまで延びている。
【0028】
ねじ筒部44は、内周に中栓Bの雄ねじ23に螺合する第2ねじ部を構成する雌ねじ55が設けられ、雌ねじ55は、図1(b)に示すように、通常のねじ山のように、断面が上下対称ではなく、上面が平坦に形成される平坦上面55aと、下面が急傾斜して形成される傾斜下面55bとから構成され、雌ねじ55は、図4(b)に示すように、下端部が180°間隔で始まる2条ねじで形成されている。
なお、雌ねじ55は、前述のように、雄ねじ23に対応して、3条以上の多条ねじとすることができる。
【0029】
ねじ筒部44の下端面には、ストッパー28に係合するくさび状凹部56が周方向2個所に形成されている。
ストッパー28およびくさび状凹部56は、本実施例では周方向2個所に設けられているが、これに限定されず適宜の複数個所に設けることができる。
【0030】
音出し部材45は、頂壁40の下面から垂設された剛直な板状の基部57と、基部57から垂設され、弾性変形可能に形成された棒状の振動片58とからなっている。
音出し部材45は、ねじキャップCの締め込み終了直前に振動片58の先端が中栓Bの音出し突部26に当接し、振動片58を湾曲変形させながら締め込みが進み、締め込み終了と同時に振動片58が音出し突部26を乗り越え、復元しようとすることにより、振動し、音が発生されるように設定される。
本実施例では、基部57は、同心円上の180°間隔で2個所に分かれて配設されているが、基部57は、リング状に連続したものであっても構わない。
【0031】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
まず、本実施例の抜栓キャップを容器本体Aに装着するには、中栓Bの上部からねじキャップCを打栓し、中栓BとねじキャップCをセットしてから口部1に中栓Bの嵌合筒部4を当てがって打栓する。
【0032】
中栓Bの上部からねじキャップCを打栓してセットする際には、図示しないマーク等によって中栓BとねじキャップCとの周方向の位置を仮に合わせて載置してもよいが、本実施例の場合には、事前の仮位置決めを行わずに、ねじキャップCを中栓Bの軸心と合わせるように載置すると、中栓BとねじキャップCは、仮位置決めされていないために、ねじキャップCの密封筒部43の狭幅内歯51は、移行栓体15の広幅外歯18と当接し、広幅外歯18の間に嵌入されない可能性が高く、この場合には、ねじキャップCの雌ねじ55は、中栓Bの雄ねじ23と当接しない状態となる。
【0033】
その後、ねじキャップCに荷重を掛けない状態で、ねじキャップCを左右いずれかの方向に最大180°回動させることにより、密封筒部43の狭幅内歯51は、図2(a)に示す位置に到達するので、狭幅内歯51の第2係合面51aと広幅外歯18の第1係合面18aとが対向するとともに、狭幅内歯51の第2非係合面51bと広幅外歯18の第1非係合面18bとが対向するように、2個所の狭幅内歯51を2個所の広幅外歯18の間に嵌入させることができる。
【0034】
この状態から、ねじキャップCを中栓Bに押し込むと、ねじキャップCの雌ねじ55は、傾斜下面55bが雄ねじ23の傾斜上面23aに摺接しながら雄ねじ23を乗り越えて、ねじキャップCのねじ筒部44は、中栓Bのねじ壁部8に嵌合するようになる。
このとき、密封筒部43の第2係着突部48は、中栓Bの移行栓体15に形成された第1係着突部21を乗り越えて拡径部20の外周面に嵌合するようになる。
同時に、ねじ筒部44の下部のくさび状凹部56が中栓Bの上壁7のストッパー28に嵌合することにより、両ねじの螺合が完了する。
【0035】
セット状態に組立られた抜栓キャップは、内容物が充填された容器本体Aの口部1に、中栓Bの嵌合筒部4を当てがって打栓され、使用に供される。
このように、本実施例の抜栓キャップは、ねじキャップCを中栓Bにセットする際に、ねじキャップCを打栓によって中栓Bに装着することができるので、従来の抜栓キャップのようにラチェット機構を必要とせず、ワンタッチでねじキャップCと中栓Bとのセットを完了させることができるとともに、密封筒部43の先端部を従来よりも延長して第2係着突部48を形成したことにより、ねじキャップCを移行栓体15に対して安定して案内することができるので、ねじキャップCと中栓Bとのセット作業性を向上させることができる。
なお、本実施例では、ラチェット機構を用いていないが、従来の抜栓キャップのようにラチェット機構を用いてねじキャップCを中栓Bに螺合する構造としても構わない。
【0036】
次に、本実施例の抜栓キャップが装着された容器を使用するには、ねじキャップCを中栓Bに対して開蓋方向に回動させる。
ねじキャップCを回動すると、密封筒部43の狭幅内歯51が回動して、その第2係合面51aが移行栓体15の広幅外歯18の第1係合面18aに当接すると、ねじキャップCの回動力が内外歯を介して移行栓体15に加わるようになる。
【0037】
ここで、抜栓キャップの開封時に、注出筒10の内周と移行栓体15とを連結する薄肉弱化部14にかかる応力を解析し、できる限り薄肉弱化部14にかかる応力が増大せず、かつ、応力がかかる範囲が少なくなるような中栓Bの形状について検討してみた。
解析には、材質がポリプロピレン樹脂で、図5に示すように、中栓Bの薄肉弱化部14(注出口)の穴径φが19.5mmの抜栓キャップを使用し、広幅外歯18の第1係合面18aに3kgf/cm2 の圧力をかけ、薄肉弱化部14にかかる最大応力を解析し、抜栓キャップの開封トルクを測定した。
【0038】
(1)基準の中栓No.0
中栓No.0は、注出筒10の基部11の下面および移行栓体15のフランジ部22の下面に、外凹溝13および内凹溝19を形成していないものであり、最大応力は、740000N/m2 で、開封トルクは、190.6N・cmであった。
【0039】
(2)比較の中栓No.1
中栓No.1は、図5に示す角度θが0°から30°の範囲に、移行栓体15のフランジ部22の下面に、内凸リブを対向する2個所に形成したところ、最大応力は、740000N/m2 で、応力が高い部分の範囲が広がり、開封トルクは、213.6N・cmであった。
【0040】
さらに、中栓No.1の変形例として、移行栓体15のフランジ部22の下面に、内凹溝を対向する2個所に形成したところ、中栓No.1と同様に効果がなく、また、注出筒10の基部11の下面に、外凹溝を対向する2個所に形成したところ、同様に効果がなかった。
【0041】
(3)実施例の中栓No.2
中栓No.2は、図5に示す角度θが30°から60°の範囲に、注出筒10の基部11の下面および移行栓体15のフランジ部22の下面に、外凹溝13および内凹溝19をそれぞれ対向する2個所に形成したところ、最大応力は、710000N/m2 で、応力が高い部分の範囲が狭くなり、開封トルクは、159.8N・cmであった。
【0042】
さらに、中栓No.2の変形例として、図5に示す角度θが0°から30°の範囲、角度θが45°から75°の範囲、および角度θが75°から105°の範囲に、注出筒10の基部11の下面および移行栓体15のフランジ部22の下面に、外凹溝13および内凹溝19をそれぞれ対向する2個所に形成したところ、いずれも中栓No.2に次いで効果があった。
【0043】
以上のように、薄肉弱化部14の破断開始位置である広幅外歯18の第1係合面18aを0°としたとき、角度θが0°~105°の範囲に、注出筒10の基部11の下面および移行栓体15のフランジ部22の下面に、外凹溝13および内凹溝19をそれぞれ対向する2個所に形成した中栓No.2およびその変形例について、穴径φを19.5mmにしても薄肉弱化部14にかかる応力が増大せず、開封トルクを低減できることが確認できた。
【0044】
その後、回動が進むと、ねじキャップCの音出し部材45の振動片58先端が、中栓Bの天壁9の音出し突部26に当接し、さらに回動が進むと、振動片58が湾曲変形しながら進み、振動片58の先端が音出し突部26を乗り越え、湾曲変形した振動片58が復元して振動し、音が発せられる。
【0045】
このとき、密封筒部43の第2係着突部48が移行栓体15の拡径部20の外周面に緊密に嵌合しているので、ねじキャップCの回動に伴って移行栓体15を上方に引き上げる力を拡径部20の全周に発生させることができる。
ねじキャップCの回動が進むと、移行栓体15に加わる回動力と引き上げ力により、ついには薄肉弱化部14が破断して注出筒10内に注出口が開口され、注出筒10から分離された移行栓体15は、底壁17の第1係着突部21と係合する密封筒部43の第2係着突部48によって引き上げられ、ねじキャップCとともに上昇していく。
【0046】
さらに、雌ねじ55が雄ねじ23から螺脱して、ねじキャップCを中栓Bから離脱させれば、ねじキャップCとともに移行栓体15が除去された注出筒10の注出口から容器本体A内の内容物を注出することができる。
【0047】
内容物を注出した後、再度、ねじキャップCを中栓Bに螺合する際には、ねじキャップCの密封筒部43のシール部50が注出筒10の内周に密着して容器内を密封することができる。
また、両ねじの螺合が完了する際には、再度、音出し部材45の振動片58先端が、音出し突部26に当接して振動し、音が発せられるので、本実施例の利用者は、感覚的にキャップの閉蓋終了を知ることができる。
【0048】
本実施例の抜栓キャップの中栓Bは、容器を使用した後に廃棄する際に、簡単な操作で容器本体Aから分離し、分別して廃棄することができる。
まず、図3(b)に示す縦切断部33付近の引っ掛け凹部34に手指を掛けて把持部32を手前に引っ張ると、縦切断部33が破断し、把持部32が外方に展開する。
把持部32を指で把持しながら、さらに把持部32を引っ張ると、スリット31の中間部31cから終端部31bまでの薄肉部分は、簡単に破断された後、スリット31の終端部31bに隣接して設けられた薄肉始断部35が破断し、周方向切断部36へと破断が進んでいく。
【0049】
周方向切断部36が破断したところでは、係止縮径部27の係止突条2への係合が解除されるので、厚肉連結部37の近くまで破断が進むと、係止縮径部27による口部1への拘束が解除され、把持部32を引き上げると、中栓Bを容器本体Aから離脱させ分別廃棄することができる。
【0050】
本実施例では、閉蓋終了後の回動を止めるために、中栓BおよびねじキャップCにストッパー28およびくさび状凹部56を設けているが、閉蓋終了時に、音出し部材45により音が発せられ、利用者は、感覚的にキャップの閉蓋終了を知ることができるので、ストッパー28およびくさび状凹部56を設けなくても構わないし、さらに、音出し突部26と音出し部材45による音出し機構を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の抜栓キャップは、容器本体の口部に装着され、除去可能な移行栓体を有する中栓と、中栓に螺合して着脱自在に装着されるねじキャップとを備える抜栓キャップにおいて、ねじキャップを開蓋方向に回動した際に、薄肉弱化部にかかる応力が増大せず、低減された開封トルクで開封することができ、注出口の穴径を従来よりも大きくできるから、飲食品や調味料などの容器に広く利用可能な抜栓キャップとして好適である。
【符号の説明】
【0052】
A 容器本体
B 中栓
C ねじキャップ
θ 角度
φ 穴径
1 口部
2 係止突条
4 嵌合筒部
5 外筒
6 内筒
7 上壁
8 ねじ壁部
9 天壁
10 注出筒
11 基部
12 リップ部
13 外凹溝
14 薄肉弱化部
15 移行栓体
16 柱状壁
17 底壁
18 広幅外歯(第1係合部)
18a 第1係合面
18b 第1非係合面
18c 肉抜き部
19 内凹溝
20 拡径部
21 第1係着突部(第1係着部)
22 フランジ部
23 雄ねじ(第1ねじ部)
23a 傾斜上面
23b 平坦下面
24 補強リブ
25 段部
26 音出し突部
27 係止縮径部
28 ストッパー
29 切欠き凹部
30 分別機構
31 スリット
31a 始端部
31b 終端部
31c 中間部
32 把持部
33 縦切断部
34 引っ掛け凹部
35 薄肉始断部
36 周方向切断部
37 厚肉連結部
40 頂壁
41 外周壁
43 密封筒部
44 ねじ筒部
45 音出し部材
48 第2係着突部(第2係着部)
50 シール部
51 狭幅内歯(第2係合部)
51a 第2係合面
51b 第2非係合面
55 雌ねじ(第2ねじ部)
55a 平坦上面
55b 傾斜下面
56 くさび状凹部
57 基部
58 振動片
図1
図2
図3
図4
図5