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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20240219BHJP
   A45D 40/04 20060101ALI20240219BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A45D40/00 Y
A45D40/04 B
B65D83/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020129682
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026289
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043079(JP,A)
【文献】実開昭57-072810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/30
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器と、前記本体容器に着脱可能な付け替え容器と、を有し、
前記付け替え容器が、上端に繰り出し口を備える筒状の上ケースと、前記上ケースの内部に配置される中皿と、を有し、
前記本体容器が、前記上ケースに着脱可能な筒状の下ケースと、前記下ケースに相対回転可能に連結する操作部材と、前記下ケースに対する前記操作部材の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部と、前記操作部材に螺合し、前記下ケースに対する前記周方向一方側への相対回転を阻止され、且つ、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向一方側への前記相対回転によって前記中皿を押し上げるねじ軸部材と、を有し、
前記操作部材が、前記ねじ軸に螺合する螺合部を内周面に備える径方向に弾性変形可能な螺合片を有し、
前記上ケースが、前記螺合部が前記ねじ軸に螺合した状態を維持するために前記螺合片の外周面を支持する支持面を有することを特徴とする繰り出し容器。
【請求項2】
前記付け替え容器が、前記ねじ軸に対する前記螺合部の螺合が外れるように前記螺合片を径方向外側に弾性変形させる第1所定値以上の押圧力で前記ねじ軸の被係合部を下方に押圧可能である一方、前記第1所定値を超える第2所定値の押圧力で前記被係合部を弾性変形により下方に乗り越える係合部を有し、
前記支持面が、前記係合部が前記被係合部を乗り越えることにより、前記螺合片の外周面を支持可能な位置に配置される、請求項に記載の繰り出し容器。
【請求項3】
前記ラチェット機構部が、前記操作部材に設けられ、径方向に弾性変形可能な弾性片と、前記下ケースの内周面に設けられ、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向一方側への前記相対回転により前記弾性片を乗り越えさせる一方、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向他方側への前記相対回転により前記弾性片を係止する係合凸部と、を有する、請求項1又は2に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布可能な固形状の内容物を収納する容器として、繰り出し容器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、上端に繰り出し口を備える筒状のケースと、ケースの内部に配置され、且つ、ケースに対する周方向一方側への相対回転を阻止される中皿と、ケースに相対回転可能に連結する操作部材と、ケースに対する操作部材の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部と、を有し、操作部材が、中皿に螺合し、且つ、ケースに対する操作部材の周方向一方側への相対回転によってケースに対して中皿を上方に相対移動させるねじ軸を有する繰り出し容器が記載されている。
【0004】
このようにラチェット機構部を有する繰り出し容器によれば、中皿が内容物を繰り入れる方向に動作することを阻止することができるので、例えば、内容物が比較的柔らかい場合に繰り入れによって内容物に形状の崩れや破断などの損傷が生じてしまうことを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-50521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにラチェット機構部を有する繰り出し容器において、内容物を実質的に使い切ったときなどに付け替え可能に構成された、内容物を収容する付け替え容器を有するものは無く、その開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、その目的は、ラチェット機構部と付け替え容器とを有する繰り出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の繰り出し容器は、本体容器と、前記本体容器に着脱可能な付け替え容器と、を有し、前記付け替え容器が、上端に繰り出し口を備える筒状の上ケースと、前記上ケースの内部に配置される中皿と、を有し、前記本体容器が、前記上ケースに着脱可能な筒状の下ケースと、前記下ケースに相対回転可能に連結する操作部材と、前記下ケースに対する前記操作部材の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部と、前記操作部材に螺合し、前記下ケースに対する前記周方向一方側への相対回転を阻止され、且つ、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向一方側への前記相対回転によって前記中皿を押し上げるねじ軸部材と、を有し、前記操作部材が、前記ねじ軸に螺合する螺合部を内周面に備える径方向に弾性変形可能な螺合片を有し、前記上ケースが、前記螺合部が前記ねじ軸に螺合した状態を維持するために前記螺合片の外周面を支持する支持面を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記付け替え容器が、前記ねじ軸に対する前記螺合部の螺合が外れるように前記螺合片を径方向外側に弾性変形させる第1所定値以上の押圧力で前記ねじ軸の被係合部を下方に押圧可能である一方、前記第1所定値を超える第2所定値の押圧力で前記被係合部を弾性変形により下方に乗り越える係合部を有し、前記支持面が、前記係合部が前記被係合部を乗り越えることにより、前記螺合片の外周面を支持可能な位置に配置されるのが好ましい。
【0011】
本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記ラチェット機構部が、前記操作部材に設けられ、径方向に弾性変形可能な弾性片と、前記下ケースの内周面に設けられ、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向一方側への前記相対回転により前記弾性片を乗り越えさせる一方、前記下ケースに対する前記操作部材の前記周方向他方側への前記相対回転により前記弾性片を係止する係合凸部と、を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラチェット機構部と付け替え容器とを有する繰り出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態である繰り出し容器を内容物を繰り出す前の状態で示す縦断面図である。
図2図1に示す繰り出し容器の付け替え容器をカバーキャップを装着した状態で示す一部断面側面図である。
図3図1に示す繰り出し容器のねじ軸部材を示す一部断面側面図である。
図4】(a)は、図1に示す繰り出し容器の操作部材を示す側面図であり、(b)は(a)のA-A断面図であり、(c)は(a)のB-B断面図であり、(d)は(a)のC-C断面図である。
図5図1に示す繰り出し容器を内容物の繰り出しを開始した時の状態で示す縦断面図である。
図6図1に示す繰り出し容器の本体容器から付け替え容器を離脱させる要領を説明するための説明図であり、(a)はねじ軸部材が上昇限界位置に達した時の状態を示し、(b)は上ケースを下ケースから離脱させた時の状態を示し、(c)は中皿をねじ軸部材から離脱させた時の状態を示す。
図7図1に示す繰り出し容器の本体容器に付け替え容器を装着する要領を説明するための説明図であり、(a)はねじ軸部材の被係合部に中皿の係合部を当接させた時の状態を示し、(b)は中皿の係合部によってねじ軸部材を下降限界位置まで押し下げ、上ケースを下ケースに装着し始めた時の状態を示し、(c)は上ケースを下ケースに装着し終わった時の状態を示す。
図8】(a)は、図1に示す繰り出し容器の変形例を示す縦断面図であり、(b)は(a)に示す繰り出し容器の下ケースの接続部を径方向内側から視たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施の形態である繰り出し容器1を例示説明する。
【0015】
なお、本明細書において、繰り出し容器1について、上下方向は下ケース4の中心軸線Oに沿う方向を意味し、上方は内容物10が繰り出される方向を意味し、下方はその反対方向を意味し、径方向は中心軸線Oと直交する直線に沿う方向を意味し、周方向は中心軸線Oを周回する方向を意味し、縦断面は中心軸線Oを含む断面を意味している。
【0016】
図1に示す本発明の一実施の形態である繰り出し容器1は、本体容器2と、本体容器2に着脱可能な付け替え容器3と、を有している。本体容器2は、下ケース4、操作部材5、ねじ軸部材6及びキャップ7を有している。付け替え容器3は、上ケース8及び中皿9を有しており、固形状の内容物10を収容している。また、付け替え容器3は、内容物10を収容した状態で、本体容器2と共に流通させてもよいし、別々に流通させてもよい。図2に示すように、付け替え容器3は、カバーキャップ11で繰り出し口8aを覆った状態で流通させるのが好ましい。なお、付け替え容器3はカバーキャップ11を嵌めた状態でブリスターケースや紙箱などのケースに入れて流通させてもよいし、カバーキャップ11なしでケースに入れて流通させてもよい。また、本体容器2には、下ケース4に対する操作部材5の相対回転を周方向一方側(本実施の形態では、上方を視たときの時計回り方向)に許容するとともに周方向他方側(本実施の形態では、上方を視たときの反時計回り方向)に阻止するラチェット機構部12が設けられている。
【0017】
下ケース4、操作部材5、ねじ軸部材6、キャップ7、上ケース8及び中皿9は、それぞれ、合成樹脂材料による射出成形で一体に形成されている。なお、これらの部材の材料及び形成方法はこれに限らない。しかし、これらの部材はそれぞれ一体成形物であるのが好ましい。
【0018】
図1に示すように、付け替え容器3は本体容器2に装着されており、下ケース4、操作部材5、ねじ軸部材6、キャップ7、上ケース8及び中皿9は、共通の中心軸線Oを有している。
【0019】
内容物10としては、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布可能なものを採用することができる。本実施の形態では、内容物10は、略円柱状の口紅である。なお、固形状の内容物10とは、形状を留めておける程度の堅さを有するものを意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。付け替え容器3に収容された内容物10の上端面は、繰り出し口8aと面一に設けられている。
【0020】
図1及び図2に示すように、上ケース8は、中心軸線Oを中心とする円筒状をなしており、上端に繰り出し口8aを形成している。なお、繰り出し口8aは、中心軸線Oに垂直な面に対して斜めに傾斜しているが、中心軸線Oに垂直であってもよい。
【0021】
上ケース8の外周面における下部には、下ケース4の接続部4aに着脱可能に接続される被接続部8bが設けられている。接続部4aは中心軸線Oを中心とするらせん状の雌ねじ状をなしており、被接続部8bは中心軸線Oを中心とするらせん状の雄ねじ状をなしている。上ケース8の外周面における被接続部8bよりも上方の部分には、周方向に延びる円環状のフランジ8cが設けられている。フランジ8cの下面が、下ケース4の上端に設けられた環状段部4bの上面に当接するまで被接続部8bを接続部4aにねじ込むことにより、被接続部8bが接続部4aに接続され、これにより上ケース8が下ケース4に装着される。また、接続部4a及び被接続部8bのねじの回転方向は、後述するねじ軸6aのねじ部6eのねじの回転方向と同じ向きとなっている。本実施の形態では、ねじ部6eが左ねじであるので、接続部4a及び被接続部8bも左ねじとされている。したがって、上ケース8が下ケース4に装着された状態では、下ケース4に対する上ケース8の周方向一方側への相対回転が阻止されている。また、下ケース4に対する上ケース8の周方向他方側への相対回転により、上ケース8が下ケース4から離脱させられる。
【0022】
上ケース8の外周面におけるフランジ8cよりも上方の部分はキャップ7に覆われている。キャップ7は、外周壁7aと頂壁7bとを有する有頂円筒状となっており、上ケース8に着脱可能に装着されることで、上ケース8の繰り出し口8aを覆うように構成されている。キャップ7が上ケース8に装着された図1に示す状態では、外周壁7aの下端が上ケース8の外周面におけるフランジ8cの近傍部分に嵌合している。
【0023】
図1及び図2に示すように、上ケース8の内部には、中皿9が配置されている。中皿9は、上ケース8の内部に収容された内容物10の底部を支持する支持板9aと、支持板9aの外周縁から下方に延び、中心軸線Oを中心とする円筒状をなす周壁9bと、を有している。
【0024】
上ケース8の内周面には、上ケース8に対して中皿9が周方向一方側及び周方向他方側の両方に相対回転することを阻止しながら、上ケース8に対する中皿9の上方への相対移動を案内する、上下方向に沿って延びる案内レール部8dが設けられている。案内レール部8dは凸状をなし、案内レール部8dに案内される被案内部9cは凹状をなしている。なお、案内レール部8dを凹状に形成し、被案内部9cを凸状に形成してもよい。中皿9が案内レール部8dに案内されて上昇することにより、内容物10が中皿9に押し上げられて、繰り出し口8aから繰り出される。
【0025】
上ケース8の内周面における案内レール部8dよりも下方の部分には、中皿9の周壁9bの外周面に段差面状に形成された下面に当接することで、上ケース8に対する中皿9の下方への相対移動を停止させる段差面状に形成された上面で構成されるストッパ8eが設けられている。
【0026】
上ケース8の内周面におけるストッパ8eよりも下方の部分には、中皿9の周壁9bの外周面に着脱可能に嵌合する嵌合部8fが設けられている。嵌合部8fは、上ケース8に対して中皿9が、後述する第2所定値を超える第3所定値の押圧力で上方に上下方向に沿って押圧されると弾性変形により嵌合が外れるように形成されている。嵌合部8fは、中皿9の周壁9bの外周面に段差面状に形成された上面に嵌合するように上ケース8の内周面に段差面状に形成された下面で構成されている。
【0027】
上ケース8の内周面における嵌合部8fよりも下方の部分には、ねじ軸部材6の上端を中皿9の周壁9bの内部に向けて案内する案内凸部8gが設けられている。案内凸部8gは、中皿9の周壁9bの下端面に対向する上面と、径方向内側に向けて上方に傾く下面と、を有するとともに周方向に並ぶ複数の縦リブで構成されている。
【0028】
上ケース8の内周面における案内凸部8gよりも下方の部分には、螺合部5gがねじ軸6aのねじ部6eに螺合した状態を維持するために螺合片5fの外周面を支持する支持面8hが設けられている。支持面8hは、円筒面状をなしており、螺合片5fの外周面に当接している。
【0029】
図1及び図3に示すように、ねじ軸部材6は、中心軸線Oを中心とする円筒状のねじ軸6aと、ねじ軸6aの上端に連なる天壁6bと、を有している。天壁6bの上面は中皿9の支持板9aの下面に当接している。
【0030】
ねじ軸6aの上端には被係合部6cが設けられている。また、中皿9の周壁9bの内周面には、後述する第1所定値以上の押圧力でねじ軸6aの被係合部6cを下方に上下方向に沿って押圧可能である一方、第1所定値を超える第2所定値の下方への上下方向に沿う押圧力で被係合部6cを弾性変形により下方に乗り越える係合部9dが設けられている。なお、被係合部6cはねじ軸6aの外周面から突出する凸部で形成され、係合部9dは中皿9の周壁9bの内周面から突出する凸部で形成されているが、これに限らない。上ケース8の支持面8hは、係合部9dが被係合部6cを乗り越えることにより、螺合片5fの外周面を支持可能な位置に配置されるように構成されている。
【0031】
ねじ軸6aの外周面における被係合部6cよりも下方の部分には、中皿9に対してねじ軸部材6が周方向一方側及び周方向他方側の両方に相対回転することを阻止するように中皿9の周壁9bに係合する回り止め部6dが設けられている。回り止め部6dはねじ軸6aの外周面から突出するとともに周方向に並ぶ複数の縦リブで形成され、各々の縦リブが中皿9の周壁9bの内周面に設けられた縦溝に挿入されるように構成されているが、これに限らない。
【0032】
ねじ軸6aの外周面における回り止め部6dよりも下方の部分には、中心軸線Oを中心とするらせん状をなす雄ねじ状のねじ部6eが設けられている。ねじ部6eの上下方向の全長は、上ケース8に対する中皿9の上下方向の可動範囲の全長とほぼ同じである。ねじ部6eは螺合部5gに螺合している。
【0033】
ねじ軸6aの外周面におけるねじ部6eよりも下方の部分には、空回り部6fが設けられている。空回り部6fに対して螺合部5gは周方向一方側に相対回転することができる。空回り部6fは、螺合部5gと螺合する部分がない滑らかな表面からなっている。
【0034】
ねじ軸6aの外周面における空回り部6fよりも下方の部分には、抜け止め部6gが設けられている。抜け止め部6gは、径方向外側に突出する円環状の凸部で形成されており、この凸部の上面が、螺合部5gの下端に設けられた段差面状の下面に当接することで、ねじ軸6aが操作部材5から上方に抜け出ることを規制することができる。なお、抜け止め部6gは円環状以外の凸部で形成してもよい。抜け止め部6gはねじ軸6aの下端に設けられている。
【0035】
図1に示すように、下ケース4は、中心軸線Oを中心とする円筒状をなしており、上ケース8の下部を挿入可能な上筒部4cと、上筒部4cの下端に連なる下筒部4dと、を有している。上筒部4cの内周面における上端には、環状段部4bが設けられている。環状段部4bの上面にはフランジ8cの下面が当接している。上筒部4cの内周面における環状段部4bよりも下方の部分には、接続部4aが設けられている。接続部4aには被接続部8bが接続されている。上筒部4cの内周面は、上ケース8の下部の外周面に対向している。
【0036】
下ケース4の下筒部4dの内周面における下部には、ラチェット機構部12の係合凸部12aが設けられている。ラチェット機構部12は、この係合凸部12aと、操作部材5に設けられ、径方向に弾性変形可能な2つの弾性片12b(図4(a)、(d)参照)とで構成されている。係合凸部12aは、下ケース4に対する操作部材5の周方向一方側への相対回転により各々の弾性片12bを乗り越えさせる一方、下ケース4に対する操作部材5の周方向他方側への相対回転により各々の弾性片12bを係止するように構成されている。なお、弾性片12bの数は2つに限らず、適宜設定可能である。
【0037】
下筒部4dの内周面における係合凸部12aよりも下方の部分には、操作部材5を周方向に相対回転可能に連結させる連結部4eが設けられている。連結部4eは、操作部材5に設けられた環状凸部5dに係合する環状溝で形成されているが、これに限らない。
【0038】
図1及び図4に示すように、操作部材5は、中心軸線Oを中心とする円筒状の周壁部5aと、周壁部5aの下端に連なる底壁部5bと、を有し、有底円筒状をなしている。周壁部5aの下端は、下ケース4よりも下方に位置するとともに下ケース4の外周面と面一になるように拡径した外周面を有する把持部5cを形成している。なお、把持部5cは下面に開口する環状溝によって中空円筒状に形成されているが、これに限らない。
【0039】
ねじ軸部材6の下端は操作部材5の底壁部5bの上面に当接している。つまり、ねじ軸部材6は、下ケース4に対して相対的に下降限界位置まで下降している。
【0040】
操作部材5の周壁部5aにおける把持部5cよりも上方の部分には、環状凸部5dが設けられている。環状凸部5dは、連結部4eに係合している。
【0041】
操作部材5の周壁部5aにおける環状凸部5dよりも上方の部分には、ラチェット機構部12の2つの弾性片12bが設けられている。各々の弾性片12bは、横向きU字形状の切欠きによって形成されており、固定端から周方向他方側に延びる片持ち梁状をなしている。
【0042】
操作部材5の周壁部5aにおける2つの弾性片12bよりも上方の部分には、周方向に並ぶ4つの摺動抵抗付与片5eが設けられている。各々の摺動抵抗付与片5eは、逆U字形状の切欠きによって形成されており、固定端から上方に上下方向に沿って延びる片持ち梁状をなしている。各々の摺動抵抗付与片5eの自由端は、下ケース4の下筒部4dの内周面に圧接しており、それにより、下ケース4に対して操作部材5が周方向一方側に相対回転する際に適度な摺動抵抗を付与することができる。なお、摺動抵抗付与片5eの数は適宜設定可能である。また、摺動抵抗付与片5eを設けない構成としてもよい。
【0043】
操作部材5の周壁部5aにおける4つの摺動抵抗付与片5eよりも上方の部分には、周方向に並ぶ4つの螺合片5fが設けられている。各々の螺合片5fは、周壁部5aの上端から下方に延びるスリットにより形成されており、固定端から上方に上下方向に沿って延びる片持ち梁状をなしている。各々の螺合片5fの自由端の内周面には、螺合部5gが設けられている。4つの螺合部5gは全体として、中心軸線Oを中心とする間欠らせん状の雌ねじ状をなしている。各々の螺合部5gはねじ軸6aのねじ部6eに螺合している。また、各々の螺合片5fの自由端の外周面には突起5hが設けられている。各々の螺合片5fの外周面が突起5hを介して上ケース8の支持面8hに支持されることにより、螺合部5gがねじ部6eに螺合した状態が維持される。なお、突起5hを設けることなく、螺合部5gがねじ部6eに螺合した状態が維持されるように、各々の螺合片5fの外周面を上ケース8の支持面8hによって支持する構成としてもよい。また、螺合片5fの数は適宜設定可能である。
【0044】
各々の螺合片5fは、支持面8hに支持されない状態では、ねじ軸6aのねじ部6eから第1所定値の押圧力で下方に上下方向に沿って押圧されることにより、ねじ軸6aのねじ部6eに対する螺合部5gの螺合が外れるように径方向外側に弾性変形するように構成されている。
【0045】
上述したように付け替え容器3が本体容器2に装着された繰り出し容器1の使用を開始する際は、図5に示すように、キャップ7を取り外した状態で、例えば下ケース4と操作部材5の把持部5cをそれぞれ把持し、下ケース4に対して操作部材5を周方向一方側に相対回転させる順方向の回転操作を行う。その際、操作部材5は、下ケース4に対して下方への相対移動が規制されており、ねじ軸部材6は、中皿9に対する上ケース8の嵌合部8fの嵌合が外れる第3所定値の押圧力で下ケース4に対して上方に相対移動することができ、且つ、下ケース4に対して上ケース8と中皿9を介した連結により周方向一方側への相対回転が阻止されている。したがって、嵌合部8fの嵌合が外れる強さの順方向の回転操作により、操作部材5の螺合部5gがねじ軸部材6のねじ部6eを押し上げ、ねじ軸部材6が中皿9を押し上げ、中皿9が内容物10を押し上げ、それにより、内容物10を繰り出し口8aから繰り出すことができる。嵌合部8fの嵌合が外れた後は、順方向の回転操作を適宜行うことにより、ねじ軸部材6と中皿9を上昇させ、内容物10をさらに繰り出して使用することができる。
【0046】
一方、下ケース4に対して操作部材5を周方向他方側に相対回転させる逆方向の回転操作が過誤等により行われた場合には、ラチェット機構部12により、そのような逆方向の相対回転は阻止される。したがって、内容物10が比較的柔らかい口紅等である場合に、繰り入れによって内容物10に形状の崩れや破断などの損傷が生じてしまうことを抑制することができる。
【0047】
図6(a)に示すように、内容物10は、ねじ軸部材6の空回り部6fが螺合部5gに到達して空回りする上昇限界位置までねじ軸部材6が上昇するまで、繰り出して使用することができる。また、このとき、抜け止め部6gにより、ねじ軸部材6が操作部材5から抜け出てしまうことが抑制される。
【0048】
内容物10を実質的に使い切ったときなどにおいては、図6(a)~(c)に示すように、下ケース4に対して上ケース8を周方向他方側に相対回転させて接続部4aから被接続部8bを離脱させることにより、付け替え容器3を本体容器2から取り外し、廃棄することができる。そして、残った本体容器2は、内容物10の使用前の状態の別の付け替え容器3とともに再使用することができる。
【0049】
その再使用に際しては、図7(a)~(c)に示す要領で付け替え容器3を本体容器2に装着することができる。具体的には、まず、流通時のケースから取り出した付け替え容器3の下端をねじ軸部材6の上端に被せ、中皿9の係合部9dでねじ軸部材6の被係合部6cを第1所定値以上の押圧力で下方に押圧する。この押圧により、螺合片5fが径方向外側に弾性変形して螺合部5gとねじ部6eとの螺合が外れ、図7(b)に示すように、ねじ軸部材6が一気に下降限界位置まで下降する。ねじ軸部材6が下降限界位置に達すると、下ケース4に対して上ケース8を周方向一方側に相対回転させて接続部4aに被接続部8bをねじ込む。このねじ込みにより、中皿9の係合部9dがねじ軸部材6の被係合部6cに第2所定値以上の押圧力で下方に押圧される。したがって、上記のねじ込みにより、係合部9dが被係合部6cを下方に乗り越え、それにより、図7(c)に示すように上ケース8の支持面8hが螺合片5fの外周面を支持可能な位置まで下降し、本体容器2に対する付け替え容器3の装着が完了する。
【0050】
なお、付け替え容器3の装着に際しては、ねじ軸部材6を指で直接押し下げてもよいが、上述のように付け替え容器3で押し下げる方が装着の作業が容易である。
【0051】
本実施の形態では、付け替え容器3が上ケース8及び中皿9を有し、本体容器2が下ケース4、操作部材5、ラチェット機構部12及びねじ軸部材6を有している。したがって、本実施の形態によれば、ラチェット機構部12と付け替え容器3とを有する繰り出し容器1を実現することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、操作部材5が螺合片5fを有し、上ケース8が支持面8hを有している。したがって、本実施の形態によれば、付け替え容器3を本体容器2に付け替える際に、螺合片5fを径方向外側に弾性変形させることでねじ軸部材6を回転させることなく一気に下降限界位置まで下降させることができるので、良好な作業性を実現することができる。また、内容物10を繰り出す際には、支持面8hによって螺合片5fが径方向外側に弾性変形することを阻止し、螺合片5fとねじ軸部材6との螺合状態を維持することができるので、良好な操作性を確保することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、付け替え容器3が係合部9dを有し、支持面8hが、係合部9dが被係合部6cを乗り越えることにより、螺合片5fの外周面を支持可能な位置に配置されるように構成されている。したがって、本実施の形態によれば、付け替え容器3を本体容器2に付け替える際に、付け替え容器3の係合部9dによってねじ軸部材6を下降限界位置まで押し下げることができるので、より一層、良好な作業性を実現することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、ラチェット機構部12が、操作部材5に設けられる弾性片12bと、下ケース4の内周面に設けられる係合凸部12aと、を有している。したがって、本実施の形態によれば、ラチェット機構部12を簡単で小型の構造によって実現することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、付け替え容器3が本体容器2に装着された状態では、下ケース4に対する上ケース8の周方向一方側への相対回転が阻止され、上ケース8に対する中皿9の周方向一方側への相対回転が阻止され、中皿9に対するねじ軸部材6の周方向一方側への相対回転が阻止されており、それにより、下ケース4に対するねじ軸部材6の周方向一方側への相対回転が阻止されている。そして、本実施の形態では、付け替え容器3が本体容器2に装着された状態で下ケース4に対する上ケース8の周方向一方側への相対回転が阻止されるように、接続部4aはらせん状の雌ねじとして構成されている。また、この雌ねじは1条ねじとして構成されている。
【0056】
しかし、接続部4aは2条以上の多条ねじとして構成してもよいし、らせん状以外の異形ねじとして構成してもよい。また、接続部4aは、下ケース4に対する上ケース8の周方向他方側への相対回転により被接続部8bにスナップ嵌合する周方向スナップ嵌合部4fを有してもよい。接続部4aが周方向スナップ嵌合部4fを有する場合、接続部4aのねじの回転方向は、ねじ部6eのねじの回転方向の逆向きとしてもよい。そのような変形例を図8に示す。なお、図8において、図1図7に示す要素に対応する要素に同一の符号を付している。一方、被接続部8bはねじ状である必要はなく、接続部4aに螺合できる凸部であればよい。その逆に、上ケース8側の被接続部8bをねじ状に構成し、下ケース4側の接続部4aを被接続部8bに螺合できる凸部で構成してもよい。
【0057】
また、接続部4a及び被接続部8bは、ねじとして構成されるものに限らず、例えば、下ケース4に対する上ケース8の下方への相対移動により接続部4aと被接続部8bとが互いにスナップ嵌合する上下方向スナップ嵌合部として構成してもよい。この場合、下ケース4に対する上ケース8の周方向の回り止め構造を適宜設ければよい。
【0058】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
したがって、前記の実施形態の繰り出し容器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0060】
繰り出し容器1は、本体容器2と、本体容器2に着脱可能な付け替え容器3と、を有し、付け替え容器3が、上端に繰り出し口8aを備える筒状の上ケース8と、上ケース8の内部に配置される中皿9と、を有し、本体容器2が、上ケース8に着脱可能な筒状の下ケース4と、下ケース4に相対回転可能に連結する操作部材5と、下ケース4に対する操作部材5の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部12と、操作部材5に螺合し、下ケース4に対する周方向一方側への相対回転を阻止され、且つ、下ケース4に対する操作部材5の周方向一方側への相対回転によって中皿9を押し上げるねじ軸部材6と、を有する限り、種々変更可能である。
【0061】
しかし、繰り出し容器1は、操作部材5が、ねじ軸6aに螺合する螺合部5gを内周面に備える径方向に弾性変形可能な螺合片5fを有し、上ケース8が、螺合部5gがねじ軸6aに螺合した状態を維持するために螺合片5fの外周面を支持する支持面8hを有するのが好ましい。
【0062】
また、繰り出し容器1は、付け替え容器3が、ねじ軸6aに対する螺合部5gの螺合が外れるように螺合片5fを径方向外側に弾性変形させる第1所定値以上の押圧力でねじ軸6aの被係合部6cを下方に押圧可能である一方、第1所定値を超える第2所定値の押圧力で被係合部6cを弾性変形により下方に乗り越える係合部9dを有し、支持面8hが、係合部9dが被係合部6cを乗り越えることにより、螺合片5fの外周面を支持可能な位置に配置されるのが好ましい。
【0063】
また、繰り出し容器1は、ラチェット機構部12が、操作部材5に設けられ、径方向に弾性変形可能な弾性片12bと、下ケース4の内周面に設けられ、下ケース4に対する操作部材5の周方向一方側への相対回転により弾性片12bを乗り越えさせる一方、下ケース4に対する操作部材5の周方向他方側への相対回転により弾性片12bを係止する係合凸部12aと、を有するのが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 繰り出し容器
2 本体容器
3 付け替え容器
4 下ケース
4a 接続部
4b 環状段部
4c 上筒部
4d 下筒部
4e 連結部
4f 周方向スナップ嵌合部
5 操作部材
5a 周壁部
5b 底壁部
5c 把持部
5d 環状凸部
5e 摺動抵抗付与片
5f 螺合片
5g 螺合部
5h 突起
6 ねじ軸部材
6a ねじ軸
6b 天壁
6c 被係合部
6d 回り止め部
6e ねじ部
6f 空回り部
6g 抜け止め部
7 キャップ
7a 外周壁
7b 頂壁
8 上ケース
8a 繰り出し口
8b 被接続部
8c フランジ
8d 案内レール部
8e ストッパ
8f 嵌合部
8g 案内凸部
8h 支持面
9 中皿
9a 支持板
9b 周壁
9c 被案内部
9d 係合部
10 内容物
11 カバーキャップ
12 ラチェット機構部
12a 係合凸部
12b 弾性片
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8