(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20240219BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20240219BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240219BHJP
【FI】
B65F3/00 L
B60P3/00 Q
G06T7/00 660B
(21)【出願番号】P 2020161965
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 聡
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156564(JP,A)
【文献】特開2019-156565(JP,A)
【文献】特開2018-193203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00~ 3/28
B60P 3/00~ 9/00
G06T 7/00~ 7/90
G06V 10/00~20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G06T 1/00~ 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体像取得部と、該物体像取得部によって取得された画像データから人物の装着物の色を認識する画像処理ユニットと、前記物体像取得部が取り付けられる荷箱と、を備えた作業車両であって、
前記物体像取得部は、前記荷箱の一部と該荷箱の近傍とが前記画像データに含まれるように配設されており、
前記荷箱の一部は、前記装着物の色設定領域として設定されており、
前記画像処理ユニットは、
前記画像データのうち前記色設定領域に配置された前記装着物の色を色特徴データとして設定保存する色設定モードを有し、この色設定モードで設定保存された前記色特徴データを利用して、前記物体像取得部によって取得された画像データから前記人物の装着物の色を認識する
ように構成され、
さらに、前記画像処理ユニットには、周囲環境の明るさの変化を複数段階に分けた明るさレベルが設定され、
前記色設定モードでは、同じ装着物に対し、各前記明るさレベルに応じた複数の色特徴データが前記画像処理ユニットに設定保存されるように構成されている、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1記載の作業車両において、
前記画像処理ユニットには、前記明るさレベルと前記明るさレベルの違いに応じて変化する基準色マーカの前記画像データ上の色との関係が予め保存され、
前記画像処理ユニットは、前記色設定モードにおいて、前記色設定領域に配置された前記基準色マーカと前記装着物とのうち、前記基準色マーカの現在の前記画像データ上の色から現在の前記明るさレベルを判断し、現在の前記明るさレベルと前記装着物の色とを関連づけて設定保存することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2記載の作業車両において、
前記画像処理ユニットは、前記色設定モードで前記基準色マーカの現在の前記画像データ上の色に対応する前記明るさレベルが所定範囲内に無いと判定した場合に、前記色特徴データの設定保存に不適切である旨のエラー情報を報知部から発信するように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れか一つに記載の作業車両において、
前記荷箱は、塵芥投入口を有する塵芥投入箱を備え、
前記物体像取得部は、前記塵芥投入箱に対して前記塵芥投入口の上方位置に配設されるとともに前記塵芥投入口およびその近傍を撮像するように構成されており、
前記塵芥投入口の下縁部には、前記塵芥投入口より外方へ延びる水平状態と起立状態とに起伏自在な投入口テーブルが設けられ、前記投入口テーブルに前記色設定領域を設定したことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一つに記載の作業車両において、
前記画像処理ユニットには無線通信部が接続され、作業者が携帯するとともに表示部を有する携帯端末との間で無線通信可能となっており、前記表示部に、前記色特徴データの情報を表示することを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塵芥収集車等の作業車両に関し、特に、物体像取得部によって取得された画像データから人物の装着物(例えば手袋等)の色を認識するようにした作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一例として塵芥収集車においては、車台の後部に設けられた塵芥投入箱内に塵芥積込装置が装備されており、その塵芥投入箱内に塵芥投入口から投入される塵芥を回転板や押込板等によって掻き込んで、塵芥収容箱に積み込むようになっている。また、塵芥投入口に塵芥を投入する作業者(人物)等が、不注意によって塵芥積込装置に巻き込まれることを防止するために、塵芥投入口の近傍の人物を認識するようにした人物認識装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の技術では、塵芥投入箱の後方上部に物体像取得部としてのカメラを配設し、塵芥投入口の近傍の所定エリアを撮像するようにしている。そして、塵芥積込装置の作動中にカメラによって撮像した画像のデータ(画像データ)を画像処理装置に送信し、この画像において予め設定されている侵入禁止エリア内に人物が侵入したと判定すれば、塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。更に、この特許文献1には、作業者が手でごみ袋(塵芥)を塵芥投入口に積み込んだり、足でごみ袋を塵芥投入口に蹴り込んだりすることから、手や足を正確に認識できるようにしておくことが望ましいことに鑑み、作業者が手や足に装着した装着物の色を画像処理装置で判定することが開示されている。つまり、装着物の色の特徴データ(色特徴データ)を予め画像処理装置の記憶部に設定保存(登録)しておき、塵芥積込装置の作動中にカメラによって撮像した画像のデータの中から装着物の色の特徴データと同一のデータを抽出して作業者の手や足が認識できるようにしている。そして、認識した手や足が侵入禁止エリア内に侵入した場合には、塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような従来の塵芥収集車では、装着物の色の特徴データを予め画像処理装置の記憶部に設定保存する際、パソコン等の端末機器を運転室内に設けた画像処理装置に有線接続(ケーブル接続)し、端末機器の操作によって色のRGB値を直接入力するか、カメラで撮像した装着物を含む画像を端末機器の画面上に表示させ、装着物の位置をマウス等のポインティングデバイスで指定して装着物の色を特定するといった作業(以下、色特定作業という)が必要であった。端末機器を画像処理装置に接続する作業や色特定作業は煩雑であり、装着物の色が変更されることに伴って前記装着物の色の特徴データの設定保存を行う度に、この煩雑な作業が必要になるといった課題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、人物の装着物の色の特徴データを設定保存する作業の簡素化を図ることができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。即ち、本発明は、物体像取得部と、該物体像取得部によって取得された画像データから人物の装着物の色を認識する画像処理ユニットと、前記物体像取得部が取り付けられる荷箱と、を備えた作業車両であって、前記物体像取得部は、前記荷箱の一部と該荷箱の近傍とが前記画像データに含まれるように配設されており、前記荷箱の一部は、前記装着物の色設定領域として設定されており、前記画像処理ユニットは、前記画像データのうち前記色設定領域に配置された前記装着物の色を色特徴データとして設定保存する色設定モードを有し、この色設定モードで設定保存された前記色特徴データを利用して、前記物体像取得部によって取得された画像データから前記人物の装着物の色を認識するように構成され、さらに、前記画像処理ユニットには、周囲環境の明るさの変化を複数段階に分けた明るさレベルが設定され、前記色設定モードでは、同じ装着物に対し、各前記明るさレベルに応じた複数の色特徴データが前記画像処理ユニットに設定保存されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、作業者は、装着物の色を色特徴データとして設定保存する際に、荷箱のどの場所が装着物の色設定領域かが予め分かっている。また、画像処理ユニットは、物体像取得部の撮像範囲のうちどの領域が色設定領域になるかどうかや、取得した画像データのうち色設定領域内の色に着目して色を抽出したらよいことを予め分かっている。これにより、色設定モード(装着物の色を色特徴データとして設定保存するモード)では、作業者が装着物を色設定領域に配置するだけで、画像処理ユニットがこの装着物の色を色特徴データとして自動的に設定保存することができる。そして、画像処理ユニットの作動(例えば画像処理ユニットによる画像認識が有効で荷箱への積込作業中)にあっては、画像処理ユニットは、この設定保存した色特徴データを利用して、物体像取得部によって取得された画像データから装着物の色を認識し、人物の位置(人物が装着している装着物の位置)を認識することになる。色設定モードでは前述したような色特徴データの設定保存が行われるため、作業者は、パソコン等の端末機器を画像処理ユニットに有線接続する作業が不要になる。また、作業者は、色のRGB値を直接入力したり、物体像取得部で撮像した画像内における装着物の位置をマウス等のポインティングデバイスで指定するといった色特定作業も不要になる。このため、人物の装着物の色を色特徴データとして設定保存する作業の簡素化を図ることができる。
【0010】
また、物体像取得部によって取得された画像データ上の装着物の色(装着物の色の見え方)は、周囲環境の明るさによって変化する。従来技術にあっては、周囲環境の明るさを考慮することなく装着物の色を設定保存していた。このため、装着物の色を設定保存した時と、作業車両の使用時とで周囲環境の明るさが異なっている場合には、この使用時に装着物の色が認識されない可能性があった。本解決手段では、周囲環境の明るさによって画像データ上の見え方が変化する装着物の色を、予め複数の明るさレベルに応じた複数の色特徴データとして画像処理ユニットに設定保存しておくことができる。これにより、作業者が意識することなく複数の色特徴データが明るさレベルごとに整理して設定保存されるので、人物の装着物の色を色特徴データとして設定保存する作業の簡素化を図ることができる。また、作業車両の使用時には、作業者は、周囲環境の明るさを気にしなくても、画像処理ユニットが常に装着物の色を適切に認識して(周囲環境の明るさに対応した色として適切に認識して)該装着物を検出することになる。これにより、装着物の誤認識を抑制することができる。
【0011】
また、本発明において、前記画像処理ユニットには、前記明るさレベルと前記明るさレベルに応じて変化する基準色マーカの前記画像データ上の色との関係が予め保存され、前記画像処理ユニットは、前記色設定モードにおいて、前記色設定領域に配置された前記基準色マーカと前記装着物とのうち、前記基準色マーカの現在の前記画像データ上の色から現在の前記明るさレベルを判断し、現在の前記明るさレベルと前記装着物の色とを関連づけて設定保存することが好ましい。
【0012】
明るさレベルとこの明るさレベルに応じて変化する基準色マーカの色との関係を予め画像処理ユニットに保存しておき、色設定モードにおいて色設定領域に基準色マーカと装着物とを同時に配置することにより、別途明るさセンサを作業車両に設けることなく、容易に現在の明るさレベルと前装着物の色とを関連づけて設定保存することができる。また、基準色マーカは複数の作業車両で共用することができる。
【0013】
また、本発明では、前記画像処理ユニットは、前記色設定モードで前記基準色マーカの現在の前記画像データ上の色に対応する前記明るさレベルが所定範囲内に無いと判定した場合に、前記色特徴データの設定保存に不適切である旨のエラー情報を報知部から発信するように構成することが好ましい。
【0014】
色設定モードにおいて、作業者が装着物の色を色特徴データとして設定保存しようとした際に、暗すぎることで周囲環境の明るさが色特徴データの設定保存に不適切な場合には報知部からエラー情報が発信される。これにより、作業者は、この状況を容易に把握することができ、色設定モードを解除する等して、思わぬ色で装着物の色特徴データが設定保存されてしまうといったことを未然に防止することができる。
【0015】
また、本発明において、前記荷箱は、塵芥投入口を有する塵芥投入箱を備え、前記物体像取得部は、前記塵芥投入箱に対して前記塵芥投入口の上方位置に配設されるとともに前記塵芥投入口およびその近傍を撮像するように構成されており、前記塵芥投入口の下縁部には、前記塵芥投入口より外方へ延びる水平状態と起立状態とに起伏可能な投入口テーブルが設けられ、前記投入口テーブルに前記色設定領域を設定することが好ましい。
【0016】
塵芥投入口を有する塵芥投入箱を備えた塵芥収集車では、塵芥投入口の下縁部に起伏自在な投入口テーブルが設けられることが多い。投入口テーブルは、塵芥を塵芥投入口へ投入する際に塵芥を一時的に載せる等のために従来から使用されている。塵芥投入口の下縁部は塵芥を塵芥投入口へ投入しやすくするために作業者の手が届きやすい位置にあり、投入口テーブルも作業者が操作しやすい位置にある。本発明では、この投入口テーブルが、水平状態にした場合に塵芥投入口およびその近傍を撮像するように設定された物体像取得部の撮像範囲に収まることを利用し、この投入口テーブルに色設定領域を設定するようにしている。これにより、作業者は、投入口テーブルの色設定領域に装着物を容易に配置して装着物の色を色特徴データとして容易に設定保存することができる。
【0017】
また、本発明において、前記画像処理ユニットには無線通信部が接続され、作業者が携帯するとともに表示部を有する携帯端末との間で無線通信可能となっており、前記表示部に、前記色特徴データの情報を表示することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、画像処理ユニットの設置場所と色設定領域とが離れていても、作業者は、携帯端末の表示部で色特徴データの設定保存の状況を確認することができる。これにより、パソコン等の端末機器を運転室内に設けた画像処理装置に有線接続してその端末機器の画面により設定状況の確認をしていた従来と比較して、色特徴データを設定保存する作業の利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、色設定モードにおいて、作業車両の荷箱の一部に設定された色設定領域に装着物を配置し、この装着物の色を色特徴データとして画像処理ユニットに設定保存するようにしている。このため、人物の装着物の色を色特徴データとして設定保存する際に、パソコン等の端末機器を画像処理装置に有線接続する作業は不要になり、また、色のRGB値を直接入力したり、カメラで撮像した画像内における装着物の位置をマウス等のポインティングデバイスで指定するといった色特定作業も不要になる。その結果、人物の装着物の色を色特徴データとして設定保存する作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る塵芥収集車を示す側面図である。
【
図3】塵芥収集車に装備された塵芥積込装置の作動の説明図である。
【
図5】塵芥収集車の塵芥積込装置の油圧回路図である。
【
図6】塵芥収集車の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】カメラによって撮像された画像の一例であって、塵芥の積み込み時を示す図である。
【
図8】カメラによって撮像された画像の一例であって、色設定領域および基準色マーカを説明するための図である。
【
図9】周囲環境の明るさについての明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカの色と、手袋の色特徴データとが互いに関連付けられたマップの一例を示す図である。
【
図10】画像処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を塵芥収集車に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。つまり、本発明に係る作業車両が、車台上に架装された塵芥積込装置を備えた塵芥収集車である場合について説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、塵芥収集車の前後左右を単に「前後左右」と言うこともある。
【0022】
-塵芥収集車の概略構成-
図1、
図2は、本発明の実施形態に係る塵芥収集車100を示している。塵芥収集車100は、車台1上に荷箱としての塵芥収容箱2および塵芥投入箱3が設けられており、塵芥収容箱2の後方の開口部と塵芥投入箱3の前面の開口部とが連通されている。また、塵芥投入箱3は、その上部に設けられた左右方向の枢軸3aによって塵芥収容箱2に対して軸支されており、左右一対の傾動シリンダ(図示省略)によって傾動されるようになっている。
【0023】
また、塵芥投入箱3の背面における下寄りの部位には、塵芥G(
図7を参照)を投入するための略矩形状の塵芥投入口4が開口され、昇降可能なテールゲート5によって、塵芥投入口4が開閉されるようになっている。このテールゲート5には、開閉操作時に作業者が把持するハンドル51,51が設けられている。塵芥投入口4の左側方には、塵芥積込装置の作動(各種アクチュエータの作動)等の操作のためのスイッチボックス6が設けられている。また、塵芥投入口4の上方位置には、塵芥投入口4およびその近傍のエリアを撮像するようにカメラユニット7が配設されている。カメラユニット7は、塵芥投入口4より上方に配設された塵芥投入箱3の傾斜後面部(湾曲状の後面部)3bから後方に突出する支持部材80を介して、塵芥投入箱3の上部に固定されている。
【0024】
より具体的に説明すると、
図1~
図4に示すように、支持部材80は、傾斜後面部3bの左右両端部に基端部を有する枠状となっている。カメラユニット7は、支持部材80において塵芥投入箱3の左右中央部となる位置に固定されている。カメラユニット7は、塵芥投入口4の近傍の物体の物体像を動画で取得可能な物体像取得部としてのカメラ71と、検出ランプ73と、作動中ランプ72とを有している。カメラ71は、塵芥Gの積込作業中に塵芥投入口4の近傍の人物が危険なエリアにいるかどうかを画像像処理によって判定するために設けられている。また、カメラ71は、車両後退時に作業者が車両後方を監視するバックカメラとしても使用される。このカメラ71は、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を有する単眼カメラである。カメラ71によって撮像された画像(動画)のデータは、後述する画像処理ユニット9の記憶部(メモリ)M(
図6を参照)に保存されるようになっている。
【0025】
カメラ71は、塵芥投入箱3の後方上部に所定の取付角度で取り付けられている。具体的には、カメラ71は、カメラユニット7の左右中央部に設けられた凹部74の中に取付ブラケット75を介して取り付けられている。カメラ71は、撮像レンズ71aを有しており、この撮像レンズ71aが斜め下方に向くようにしてカメラユニット7の取付ブラケット75に対し水平軸回りに上下回動調整可能に取り付けられている。カメラユニット7の凹部74の左右両側には、水平面に対して後方上傾状の(車両後方に向かうにつれて上方に傾斜する)固定面7aが設けられている。左側の固定面7aには作動中ランプ72が下向きに取り付けられている。また、右側の固定面7aには検出ランプ73が下向きに取り付けられている。つまり、作動中ランプ72と検出ランプ73は、カメラ71の撮像レンズ71aの近傍となるカメラ71の左右両側に設けられている。
【0026】
次に、
図3に示すように、塵芥投入箱3の内部には、投入された塵芥Gを塵芥収容箱2に積み込む塵芥積込装置(可動装置)が装備されている。この塵芥積込装置によって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gを、塵芥投入箱3の前方に連設された塵芥収容箱2へ押し込むようになっている。塵芥収容箱2には、収容された塵芥Gを排出する図示省略の塵芥排出装置が設けられている。この塵芥排出装置としては、例えば塵芥収容箱2を、車台1と塵芥収容箱2との間に介設されたダンプシリンダによって傾動させて塵芥Gを排出したり、塵芥収容箱2の内部に設けた排出板を排出シリンダにより塵芥収容箱2の後方に移動させて塵芥Gを排出したりするものが考えられる。
【0027】
次に、本実施形態の塵芥積込装置について具体的に説明する。本実施形態の塵芥積込装置は、回転板(積込部材)10の回転によって塵芥Gを掻き上げるとともに、押込板20によって塵芥Gを塵芥収容箱2内へと押し込む、いわゆる回転板式の塵芥積込装置として構成されている。塵芥投入箱3内の下部においてその幅方向に延びるように回転軸11が架設され、これに回転板10の基端側が固定されている。
【0028】
図示の例では、回転軸11の端部に減速機構12を介して正逆回転可能な油圧モータ13が連結されている。この油圧モータ13の回転が減速機構12によりトルクアップされて回転軸11に伝達され、この回転軸11と一体に回転板10が回転されることで、その先端部は、断面略半円弧状に形成された塵芥投入箱3の底壁に沿って前後方向に移動するようになる。
【0029】
一方、押込板20は、回転板10の上方において塵芥投入箱3の幅方向全体に亘って設けられ、その上部に設けられた左右方向の揺動軸21の周りに前後方向に揺動自在に支持されている。また、押込板20には、揺動軸21よりも上方に延びる延設部22が設けられ、この延設部22とその前方の支持ピン23との間に押込シリンダ24が架設されており、その伸縮作動によって押込板20を前後方向に揺動させるようになっている。
【0030】
具体的には、
図3に実線で示すように、押込板20が塵芥収容箱2の側に最も揺動した位置(前進限界位置)にあるときは、この押込板20に干渉することなく回転板10が上方に回動するようになり、これに遅れて押込板20が塵芥投入口4側へ揺動する。そして、押込板20が塵芥投入口4側に最も揺動し、
図3に仮想線で示す後退限界位置に達した後も、回転板10の回動は継続される。
【0031】
このようにして回転する回転板10は、塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き込んで、
図3に実線で示すように、前方の塵芥収容箱2側に延びる設定停止位置に一旦、停止する。そうすると、今度は押込板20が塵芥収容箱2側に揺動して、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んでいく。そして、押込板20が再び前進限界位置に達すると、再び回転板10が上方へ回動するようになる。
【0032】
このように互いに同期して回転板10の回転および押込板20の揺動が繰り返されることによって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gが連続的に塵芥収容箱2に積み込まれる塵芥積込動作が行われる。このように回転板10および押込板20を作動させるための油圧回路および制御系の構成については後述する。
【0033】
塵芥投入箱3の内部には、回転板10および押込板20の位置を検出するためのスイッチLS1~LS4が設けられている。具体的には、
図3に示すように、押込板20が前進限界位置または後退限界位置にあるときにそれぞれONになるスイッチLS1,LS2と、回転板10が設定停止位置にあるときにONになるスイッチLS3と、その設定停止位置から回転板10が正の向き(
図3の時計回り)に所定角度回転したときにONになり、更に所定角度回転したときにOFFになるスイッチLS4とが設けられている。
【0034】
なお、スイッチLS1,LS2は、押込板20の揺動軸21の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっており、スイッチLS3,LS4は、回転板10の回転軸11の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっている。また、これらのスイッチLS1~LS4としては、例えばリミットスイッチ、光電スイッチ、近接スイッチ等を用いることができる。また、スイッチLS4は、
図3にハッチングで示すように、回転板10が塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下から、その後方へ回転しつつ下降して塵芥投入口4の後縁部(下縁部)4bに最も近接するまでの角度範囲Zを検出するもので、回転板10が塵芥投入口4の近傍にて作動していることを検出するためのセンサである。
【0035】
更に、
図1、
図2に示すように、塵芥投入口4の近傍には、塵芥積込装置の作動を停止させるための緊急停止スイッチ60,61や、緊急停止プレート62等が配設されている。塵芥投入口4の左側に設けられたスイッチボックス6の側面には、塵芥積込装置をサイクル作動させるための積込装置操作スイッチ64と塵芥積込装置を緊急停止させるための緊急停止スイッチ60とが配設され、また、塵芥投入口4の右側に緊急停止スイッチ61が配設されている。緊急停止プレート62は、塵芥投入口4の下方においてスイッチSW2(
図3を参照)をON/OFFするように配設されている。また、
図2に示すように、スイッチボックス6の後面には、停止解除スイッチ63が配設されている。この停止解除スイッチ63は、後述する画像解析に基づく塵芥積込装置の塵芥積込動作の緊急停止を一時的に解除する際に操作される。
【0036】
-塵芥積込装置の制御系-
次に、
図5および
図6を参照して、塵芥積込装置を作動させるための制御系について説明する。この制御系は、塵芥積込装置の油圧モータ13や、押込シリンダ24等に供給する油圧を制御する油圧回路と、この油圧回路に設けられた電磁制御弁V1,V2に制御信号を出力する架装本体制御部PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)と、カメラ71からの画像データに基づいて人物認識処理を行う画像処理ユニット9とを備えている。なお、架装本体制御部PLCは、塵芥積込装置の駆動だけでなく塵芥排出装置の駆動も制御するようになっている。また、画像処理ユニット9と架装本体制御部PLCとで塵芥収集車100の制御装置を構成している。
【0037】
まず、
図5を参照して油圧回路について説明する。この油圧回路は、油圧ポンプPと、オイルリザーバTと、押込シリンダ24を制御するための電磁制御弁V1と、油圧モータ13を制御するための電磁制御弁V2とを備えている。なお、油圧ポンプPには、車両走行駆動源としてのエンジン(図示省略)の動力を取り出すPTO(パワー テイク オフ)によって駆動力が伝達されるようになっている。
【0038】
一例として、電磁制御弁V1,V2は、何れも6ポート3位置の電磁式の方向切換弁からなる。電磁制御弁V1は、ソレノイドSOLaおよびソレノイドSOLbと図示省略のスプールとを有している。電磁制御弁V1は、架装本体制御部PLCによりソレノイドSOLaが励磁されると第1連通位置(
図5の上位置)に切り換わって、油圧ポンプPからの作動油を一対の押込シリンダ24のロッド側油室に供給する。一方、電磁制御弁V1は、架装本体制御部PLCによりソレノイドSOLbが励磁されると第2連通位置(
図5の下位置)に切り換わって、作動油をヘッド側油室に供給する。
【0039】
そして、電磁制御弁V1から作動油がヘッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24が伸長作動して押込板20を前方に揺動させる。一方、作動油がロッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24は収縮作動して、押込板20を後方に揺動させる。また、何れのソレノイドSOLa,SOLbも励磁されていないときに、電磁制御弁V1は中立位置(
図5の中央位置)に復帰するようになる。
【0040】
電磁制御弁V2は、ソレノイドSOLcおよびソレノイドSOLdと図示省略のスプールとを有している。電磁制御弁V2は、ソレノイドSOLcが励磁されると第1連通位置(
図5の下位置)に切り換わって、作動油を油圧モータ13の正転側油室に供給し、当該油圧モータ13を正転作動させる他、押込シリンダ24も伸縮作動させることができる。一方、ソレノイドSOLdが励磁されると電磁制御弁V2は第2連通位置(
図5の上位置)に切り換わって、作動油を油圧モータ13の逆転側油室に供給し、当該油圧モータ13を逆転作動させる。
【0041】
また、何れのソレノイドSOLc,SOLdも励磁されていないときに、電磁制御弁V2は中立位置(
図5の中央位置)に復帰するようになる。電磁制御弁V1,V2の両方が中立位置にあるとき、作動油はオイルリザーバTへ還流するようになる。なお、図示の油圧回路において、符号V3はチェック弁であり、また、符号V4は、油圧ポンプPの吐出圧の上限を設定するためのリリーフ弁である。
【0042】
次に、
図6を参照して塵芥収集車100の制御系の概略構成について説明する。この塵芥収集車100の制御系としては、前記架装本体制御部PLCと前記画像処理ユニット9とを備えている。これら架装本体制御部PLCと画像処理ユニット9とは制御信号等の送受信が可能に信号線によって接続されている。
【0043】
架装本体制御部PLCには、PTOスイッチ(動力源スイッチ)SWP、前記積込装置操作スイッチ64、排出装置操作スイッチ65、積込・排出切換スイッチ66、積込装置用のアクチュエータ13,24およびセンサ(スイッチ)LS1~LS4、排出装置用のアクチュエータ30およびセンサ31、積込装置用の制御弁V1,V2のソレノイドSOLa~SOLd、排出装置用の制御弁V5のソレノイドSOLeが信号線によって接続されている。
【0044】
PTOスイッチSWPは、図示しないイグニッションがONになっている上でONとなることで図示しないリレーコイルを励磁させて該リレーコイルの接点を閉じ、これにより、架装本体制御部PLCに電力を供給し、該架装本体制御部PLCを作動可能な状態にする。
【0045】
積込装置操作スイッチ64は、ON操作されることにより、架装本体制御部PLCに対して塵芥積込装置を作動させるための信号を出力し、塵芥積込装置にサイクル作動(塵芥積込動作)を行わせる。
【0046】
排出装置操作スイッチ65は、ON操作されることにより、架装本体制御部PLCに対して塵芥排出装置を作動させるための信号を出力し、塵芥収容箱2に収容された塵芥Gを排出するための動作(塵芥排出動作)を行わせる。
【0047】
積込・排出切換スイッチ66は、前述した塵芥積込装置による塵芥積込動作と、塵芥排出装置による塵芥排出動作とを切り換えるためのスイッチである。
【0048】
積込装置用のアクチュエータ13,24は、塵芥積込装置に塵芥積込動作を行わせるためのアクチュエータであって、前述した油圧モータ13および押込シリンダ24が相当する。
【0049】
積込装置用のセンサ(スイッチ)LS1~LS4は、前記回転板10および押込板20の位置を検出するためのセンサであって、前述したスイッチLS1~LS4が相当する。
【0050】
排出装置用のアクチュエータ30は、塵芥排出装置に塵芥排出動作を行わせるためのアクチュエータであって、前述したダンプシリンダや排出シリンダが相当する。
【0051】
排出装置用のセンサ31は、塵芥排出装置が塵芥排出動作を行う際におけるアクチュエータ30の伸縮量を検知する。
【0052】
積込装置用の制御弁V1,V2は、油圧モータ13や押込シリンダ24に供給する油圧を調整するものであって、前述した電磁制御弁V1,V2が相当する。
【0053】
積込装置用のソレノイドSOLa~SOLdは、積込装置用の制御弁V1,V2を切り換えるためのものであり、前述したソレノイドSOLa~SOLdが相当する。
【0054】
排出装置用の制御弁V5は、排出装置用のアクチュエータ30に供給する油圧を調整するためのものである。
【0055】
排出装置用のソレノイドSOLeは、排出装置用の制御弁V5を切り換えるためのものである。
【0056】
前記架装本体制御部PLCは、各種スイッチSWP,64,65,66やセンサLS1~LS4,31等から入力される信号に基づいて、予め設定された手順に従い油圧モータ13や押込シリンダ24等を作動させたり、ダンプシリンダや排出シリンダ等を作動させたりするべく、対応するソレノイドSOLa~SOLeに制御信号を出力するようにプログラムされている。
【0057】
例えば塵芥積込装置が塵芥積込動作を行うときには、PTOスイッチSWPが閉じられて、リレーコイルの接点が閉じられ、架装本体制御部PLCが作動可能な状態になって適宜、ソレノイドSOLa~SOLdに制御信号を出力するようになる。
【0058】
この制御信号を受けてソレノイドSOLa~SOLdが励磁され、電磁制御弁V1,V2のスプール位置が適宜、切り換えられることで、油圧モータ13や押込シリンダ24などに作動油圧が供給される。これにより、油圧モータ13や押込シリンダ24などがそれぞれ作動し、
図3を参照して前述したように、回転板10の回転および押込板20の揺動が互いに同期して繰り返されることになる。
【0059】
詳しくは、まず
図3に実線で示すように押込板20が前進限界位置にあって、スイッチLS1からON信号が出力されるとともに、回転板10が設定停止位置にあって、スイッチLS3からもON信号が出力されるときに、積込装置操作スイッチ64の信号を受けた架装本体制御部PLCから制御信号が出力され、電磁制御弁V2が第1連通位置に切り換えられて、油圧モータ13が正転作動を開始する。これにより、回転板10は上方に回動し始める。
【0060】
そして、所定の期間が経過すると架装本体制御部PLCから電磁制御弁V1のソレノイドSOLaへ制御信号が出力されて、電磁制御弁V1が第1連通位置に切り換えられ、押込シリンダ24が収縮作動を開始する。これにより押込板20は後方の塵芥投入口4側へ揺動するようになり、この押込板20が後退限界位置に達すると、スイッチLS2からON信号が出力される。
【0061】
これを受けて架装本体制御部PLCがソレノイドSOLaへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰し、押込板20の揺動が停止する。また、そうして押込板20が揺動している間も回転板10の回動は継続しており、塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き込んでゆくが、こうして回動する回転板10が設定停止位置に至り、スイッチLS3からON信号が出力される。
【0062】
これを受けて架装本体制御部PLCが、電磁制御弁V2のソレノイドSOLcへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V2が中立位置に復帰し、油圧モータ13の回動が停止する。また、架装本体制御部PLCは、電磁制御弁V1のソレノイドSOLbへ制御信号を出力し、電磁制御弁V1が第2連通位置に切り換えられて、押込シリンダ24が伸長作動を開始することで、押込板20が前方へ揺動し始める。
【0063】
こうして前方の塵芥収容箱2側に揺動する押込板20が、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んでゆき、前進限界位置に達すれば、スイッチLS1からON信号が出力される。これを受けて架装本体制御部PLCがソレノイドSOLbへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰して、押込シリンダ24の伸長作動、即ち、押込板20の前方への揺動が停止し、一連の動作が終了する。
【0064】
-画像処理の制御系-
ところで、前記のように塵芥積込装置が塵芥積込動作を行っているときには、塵芥投入口4に塵芥Gを投入している作業者(人物)が不注意から回転板10などに巻き込まれるおそれがある。そこで、本実施形態の塵芥収集車100においては、塵芥投入口4の近傍を撮像するようにカメラ71を配設し、画像処理によって塵芥投入口4の近傍の人物が危険なエリアにいると判定すれば、直ちに塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。
【0065】
即ち、
図1~
図3に示すように、塵芥投入箱3の背面の上部、即ち塵芥投入口4の上方にはカメラ71が配設され、その撮像レンズ71aが後方の斜め下に向けられている。このカメラ71は、
図7に一例を示すように塵芥投入口4およびその後方(近傍)の所定範囲を撮像するようになっている。
【0066】
塵芥投入口4の後方を撮像するためにカメラ71の撮像レンズ71aの光軸は、鉛直下向きから後方に振り向けられて、塵芥投入口4の近傍の人物Hを上方から撮像するようになっている。
【0067】
そして、
図6に示すようにカメラ71は、画像処理ユニット9(画像処理装置であり、例えば
図1に破線で示すように運転席周辺に配設されている)に接続されている。また、画像処理ユニット9には表示部(モニタ)93が接続されている。この表示部93は、塵芥収集車100を運転する作業者Hにカメラ71の画像を提供するものである。また、この画像に基づいて画像処理ユニット9では、作業者Hなどが危険なエリアにいるか否か判定される。
【0068】
即ち、
図7には、塵芥投入口4の近傍に立った作業者(人物)Hが両腕を前方に伸ばして、ごみ袋(塵芥)Gを積み込む様子が示されており、この人物Hが危険なエリアにいるか否かを画像処理ユニット9において判定するようになっている。本実施形態にあっては、作業者Hの頭部や手が危険なエリアに入っているか否かを画像処理ユニット9において判定する。なお、この危険なエリアの詳細については後述する。
【0069】
そして、特に、本実施形態では、作業者Hの手が危険なエリアに入っているか否かについては、一般的に作業者Hが手袋GLを装着していることに鑑み、この手袋GLの色を、後述する色設定モードによって予め画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存(登録)しておき、塵芥積込装置の作動中にカメラ71によって撮像した画像のデータの中から手袋GLの色の特徴データ(色特徴データ)と同一のデータ(同一の色データ)を抽出して作業者Hを認識(作業者Hの手を認識)することができるようにしている。そして、認識した作業者Hの手が塵芥投入口4の近傍の危険なエリアにいると判定すれば、直ちに塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。この色設定モードを実現するための構成および色設定モードの動作については後述する。
【0070】
図6に模式的に示すように、画像処理ユニット9には、カメラ71からの画像データを入力して、以下に説明する画像処理を行う画像処理部DSPが設けられている。この画像処理部DSPは、画像処理ロジックを高速で行う集積回路であり、例えば
図10のフローチャートに示すような画像処理(人物認識処理)のルーチンを実行する。より具体的に、この画像処理部DSPは、後述する制御部(中央処理部)CPUとともに画像解析部に相当する。画像処理部DSPおよび制御部CPUは、カメラ71によって取得された動画のデータに基づいて、記憶部Mに保存された辞書データや前述した色特徴データを参照することによって、塵芥投入口4の近傍の危険なエリアに人物Hが入っているか(危険なエリアに人物Hの手が入っているか)否かを画像解析によって判定する。
【0071】
画像処理ユニット9には、所定のプログラムを実行して各種の制御を行う制御部CPU、この制御部CPUや前記画像処理部DSPにおいて使用されるデータを記憶する記憶部M、画像処理ユニット9の作動と停止とを切り換える作動スイッチSW4なども設けられている。そして、画像処理部DSPにおいて人物Hが危険なエリアの外にいる(作業者Hの手が危険なエリアの外にある)と判定されている間、制御部CPUが人物安全信号を架装本体制御部PLCへ出力している。一方で、画像処理部DSPにおいて人物Hが危険なエリアにいる(人物Hの手が危険なエリアに入っている)と判定すれば、制御部CPUが人物安全信号を架装本体制御部PLCへ出力しないようになっている。画像処理ユニット9の制御部CPUから人物安全信号が出力されなくなると、架装本体制御部PLCは、人物安全信号の入力の遮断をトリガにして塵芥積込装置の作動を停止させることとなる。また、画像処理ユニット9には、パソコン等の端末機器をUSBケーブル等で有線接続するための外部機器接続端子ETや、色設定モードのONとOFFを切り換えるための色設定モードスイッチ91なども設けられている。
【0072】
画像処理ユニット9には、前記カメラ71の他に、カメラ71で取得された画像データや画像処理の結果を表示するための表示部93、報知部94および無線通信部95が接続されている。
【0073】
報知部94は、色設定モードの実行時において、周囲環境の明るさが所定範囲内に無いと判定された場合にエラー情報(色特徴データの設定保存に不適切である旨のエラー情報)を作業者Hに向けて発信するためのものである。ここでいう明るさの所定範囲としては、作業者Hの装着物(手袋GL等)の色が適正に認識できる(カメラ71によって撮像した画像のデータから色が適正に認識できる)周囲環境の明るさの範囲として予め実験などによって決定されている。この報知部94は例えばブザーによって構成され、鳴動によってエラー情報を発信する。また、この報知部94としては、表示部93の画面上にエラー情報を発信(画面表示)するものであってもよい。
【0074】
無線通信部95は、作業者Hが携帯する端末(携帯端末)200との間で無線通信を行う。本実施形態では、無線通信部95は、携帯端末200から色設定モードのONとOFFに関する信号を受けることができるようになっている。
【0075】
携帯端末200は、無線通信部95との間で近距離無線通信により情報の授受を行う無線通信部201、作業者Hによる操作入力が行われる入力部202、送受信した情報に対する処理や送受信の制御を行う制御部203、表示部204等を備えている。
【0076】
携帯端末200は、作業者Hにより携帯され、手袋GLの色を色特徴データとして設定保存する際に、まず画像処理ユニット9とペアリングされるようになっている。そして、画像処理ユニット9とペアリングされた携帯端末200から、色設定モードが起動できるようになっている。そのため、作業者は塵芥収集車100の運転室内に配設された画像処理ユニット9の色設定モードスイッチ91に触れることなく、塵芥投入口9および投入口テーブル41の前に立った状態で、色設定の作業を行うことができるようになっている。
【0077】
また、携帯端末200の表示部204には、画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存される手袋GLの色の特徴データの情報が表示されるようになっている。
【0078】
なお、本実施形態では、この携帯端末200からの情報入力によって手袋GLの色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存することも可能となっている。すなわち、作業者Hが、携帯端末200を操作して色設定モードを起動させ、表示部204に表示された各色の中から手袋GLの色の特徴データ(色特徴データ)を入力部202の操作によって指定し、その情報が無線通信部201から無線通信部95を介して画像処理ユニット9に無線通信されることによって当該画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存することも可能となっている。
【0079】
-色設定モード-
次に、本実施形態の特徴である色設定モードについて説明する。この色設定モードは、前述したように、塵芥投入口4の近傍の所定エリアの人物Hを認識するために、この人物Hが身に着けているまたは身に着ける可能性のある装着物の色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存(登録)するためのモードである。そして、塵芥積込装置の作動中にカメラ71によって撮像した画像のデータの中から、この設定保存した色特徴データと同一のデータを抽出して作業者Hを認識し(例えば作業者Hの手を認識し)、この認識した作業者H(作業者Hの手)が塵芥投入口4の近傍の危険なエリアにいると判定すれば、直ちに塵芥積込装置の作動を停止させることになる。
【0080】
前記装着物としては、作業者Hが手でごみ袋Gを塵芥投入口4に積み込むことを考慮すれば、前述したように手袋GLであることが好ましい。なお、装着物としては手袋GLに限定されるものではなく、リストバンドであってもよい。また、作業者Hが足でごみ袋Gを塵芥投入口4に蹴り込むことを考慮すれば、装着物としては靴としてもよい。また、これら以外の装着物としては帽子等であってもよい。以下の説明では、装着物を手袋GLとした場合を例に挙げて説明する。
【0081】
色設定モードの動作を説明する前に、この色設定モードを実現するための構成について説明する。
【0082】
図8に示すように、塵芥投入口4の下縁部であって緊急停止プレート62の上側には、後縁部(下縁部)4bから後方(外方)に向かって延びる投入口テーブル41が設けられている。この投入口テーブル41は、平面視が長方形であって、例えば塵芥投入口4の車幅方向の略全体に亘って配設されている。また、この投入口テーブル41の車体前後方向の長さは例えば十数cm程度に設定されている。また、投入口テーブル41は、塵芥投入口4より後方(外方)へ延びる水平状態と起立状態とに起伏自在に設けられている。
【0083】
そして、この投入口テーブル41の上面41aは、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色とは異なる色に着色されていることが好ましい。例えば、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色として、赤色、青色、緑色が想定される場合、投入口テーブル41の上面41aは白色や黒色に着色されていることが好ましい。これは、後述するように、色設定モードにおいて投入口テーブル41の上面41aに手袋GLを配置してカメラ71によって撮像した場合に、その撮像によって取得された画像のデータの中から手袋GLの色が特徴的に現れるように(手袋GLの色が明確に特定できるように)するためである。このため、この投入口テーブル41の上面41aが、本発明でいう装着物の色設定領域(荷箱の一部として設定された装着物の色設定領域)となっている。前述した手袋GLの色や投入口テーブル41の上面41aの色としては前述したものには限定されない。ただし、手袋GL(装着物)の色は作業者Hが完全自由で選択されるものではなく、画像処理ユニット9が画像データから抽出すべき色の範囲を限定できるように、複数個の基本的な色が設定されている。また、色設定領域は、投入口テーブル41の上面41aの全部ではなく一部に設定してもよい。
【0084】
色設定モードは、前記色設定モードスイッチ91をON操作するか、画像処理ユニット9とペアリングされた携帯端末200の入力部202を操作することで起動され、作業者Hが投入口テーブル41の上面41aに手袋GLを配置して(
図8に示す手袋GLを参照)カメラ71によって撮像することによって、作業者Hが装着する手袋GLの色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存する。つまり、カメラ71と投入口テーブル41との位置関係は固定されているため、カメラ71によって撮像された画像中における投入口テーブル41の位置は固定されている。このため、この画像中における投入口テーブル41の位置(例えば画像中における投入口テーブル41の座標位置の範囲)は特定されている。従って、色設定モードでは、この位置に存在する投入口テーブル41の上面41aの色以外の色の物体(更には後述する基準色マーカSMの色以外の色の物体)の色を手袋GLの色であるとし、この色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存することになる。
【0085】
一方、投入口テーブル41の上面41aには基準色マーカSMが配置されるようになっている。この基準色マーカSMは、色設定モードの際に作業者Hによって周囲環境の明るさを認識するために配置される円板状部材である。色設定モード以外では基準色マーカSMが投入口テーブル41の上面41aから除去されることにより、塵芥投入箱3への積込作業中に塵芥Gが基準色マーカSMに接触する等で基準色マーカSMが汚れることがないようになっている。周囲環境の明るさが異なれば、カメラ71によって撮像した基準色マーカSMの色合い(明度)も異なることになるので、基準となる明るさレベルでの基準色マーカSMの色合いが分かっておれば、カメラ71によって撮像して得られた画像のデータ上における基準色マーカSMの色合いから周囲環境の明るさを判断することが可能となる。このため、この基準色マーカSMの色としては、周囲環境の明るさに応じて色合いが大きく変化する色であって、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色および投入口テーブル41の上面41aの色とは異なる色に設定されていることが好ましい。前述したように、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色として、赤色、青色、緑色が想定される場合、基準色マーカSMの色としては紫色等に設定される。基準色マーカSMの色としてはこれに限定されることはない。明るさに応じて色合いが大きく変化するように色相や彩度が適切なものに設定される。画像処理ユニット9の記憶部Mには、明るさレベルと明るさレベルに応じて変化する基準色マーカSMの画像データ上の色との関係が予め保存されている。基準色マーカSMの色は、投入口テーブル41の上面41aの色とは異なる色に設定されていることにより、画像認識ユニット9は、カメラ71で取得する画像データから基準マーカSMの色を取得しやすい。なお、画像処理ユニット9の記憶部Mには、この基準色マーカSMの投入口テーブル41上の設置位置(カメラ71によって撮像された画像中における基準色マーカSMの座標位置)を予め記憶させておくと、作業者Hは投入口テーブル41の上面41aに記された設置位置に基準マーカSMを容易に配置できる一方、画像認識ユニット9は、基準マーカSMの色をより確実に取得することができる。
【0086】
このため、色設定モードにおいて、作業者Hが、投入口テーブル41の上面41aに基準色マーカSMを配置し、カメラ71によって投入口テーブル41の上面41aが撮像されると、基準色マーカSMの色(周囲環境の明るさに応じて変化する色)も自動的に取得されることになる。
【0087】
また、色設定モードにおいて、画像処理ユニット9の記憶部Mには、明るさレベルと、手袋GLの色特徴データとを関連付けた情報が設定保存される。
【0088】
より具体的には、色設定モードにおいて、画像処理ユニット9は、投入口テーブル41の上面41aに配置された基準色マーカSMと手袋GLとのうち、基準色マーカSMの現在の画像データ上の色から現在の明るさレベルを判断することによって、現在の明るさレベルと手袋GLの色とを関連づけて設定保存するようになっている。
【0089】
また、色設定モードでは、同じ手袋(同じ色の手袋)GLに対し、各明るさレベルに応じた複数の色特徴データを画像処理ユニット9の記憶部Mに記憶させることによって、周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとが互いに関連付けられた情報が設定保存される。
【0090】
図9は、これら周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋(色設定対象物)GLの色特徴データとが互いに関連付けられたマップの一例を示す図である。この
図9で示すものは、周囲環境の明るさレベルとして、周囲環境が最も明るいレベルをレベル1とし、周囲環境が最も暗いレベルをレベル5とし、これら5段階の明るさレベルに対応するように、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとを互いに関連付けた情報となっている。
【0091】
この
図9に示すマップの作成手法の例としては、ある特定の明るさの環境下で、作業者Hが携帯端末200の入力部202を操作して画像処理ユニット9に指示を出すと、画像処理ユニット9が、投入口テーブル41の上面41aに配置された基準色マーカSMおよび手袋GLをカメラ71によって撮像する。そして、画像処理ユニット9は、現在の画像データ上の色から現在の明るさレベルを判断(例えばレベル3と判断)し、その特定の周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとを関連付ける。さらに、画像処理ユニット9は、画像処理による色補正(明度の補正)によって、画像データ上の基準色マーカSMの色の明度および手袋GLの色の明度を、他の複数の段階(例えばレベル1,2,4,5に対応する明るさの環境)に合致するように変化させて、これら複数の段階それぞれにおける周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとを関連付けた情報を作成して
図9に示すマップを作成することが挙げられる。または、実際に周囲環境の明るさを複数の段階に変化させながら、カメラ71によって基準色マーカSMおよび手袋GLをカメラ71によって撮像していくことにより、複数の段階それぞれにおける周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとを関連付けた情報を作成して
図9に示すマップを作成するようにしてもよい。
【0092】
このマップの作成は、例えば塵芥収集車100の出発前(ごみ収集基地等からの出発前)において、画像処理ユニット9のモードを色設定モードとすることによって行われる。つまり、その日に使用する手袋GLを投入口テーブル41の上面41aに配置して(
図8に示す手袋GLを参照)カメラ71によって撮像することによって、その手袋GLの色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存することにより行われる。
【0093】
このようなマップを作成しておくことにより、カメラ71によって塵芥投入口4およびその近傍のエリアが撮影されて取得される画像データから手袋GLの色を抽出したときに現在の周囲環境の明るさレベルが適切な範囲にあれば、画像データから抽出された手袋GLの色と、記憶部Mに設定保存されたいずれかの明るさレベルの手袋GLの色特徴データとが一致することになる。この場合、画像データから抽出された手袋GLの色が、現在の周囲環境の明るさレベルにおいて検出すべき手袋GLの色であると特定され、作業者Hを認識(作業者Hの手を認識)できることになる。
【0094】
また、このようなマップを作成しておけば、その色(既に色特徴データが設定登録された色)の手袋GLを装着する限りにおいては再度色設定モードによって色特徴データを設定保存する必要はなくなる。但し、手袋GLは、使用頻度によって汚れたり、洗濯等によって色落ちしたりすることがあるため、これらを考慮すれば、同一色の手袋GLを使用する場合であっても、所定期間毎に色設定モードによって色特徴データを画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存するようにしておくことが好ましい。
【0095】
-画像処理のルーチン-
次に、前述の如く構成された画像処理ユニット9における画像処理のルーチンについて説明する。この画像処理のルーチンは、前述した色設定モードによって、周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとが互いに関連付けられた情報が画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された状態(
図9で示したマップが記憶部Mに保存された状態)で実施される。
【0096】
前記画像処理部DSPは、前述した如く公知の画像処理ロジックを高速で行う一般的な集積回路である。この画像処理部DSPと制御部CPUが協働することにより、例えば入力画像データのカラー二値化処理と、この二値化された画像データにおいて互いに近接する各画素について領域化するラベリング処理と、ラベリングにより領域化された物体像の領域が所定範囲の大きさであることにより装着物を身に着けた人物であることを識別する人物識別処理と、人物像と識別された物体像の位置が危険なエリアか否か判定する人物位置判定処理とが行われる。
【0097】
具体的に、
図10のフローチャートを参照して画像処理のルーチンについて説明すると、まず、スタート後のステップS1においてカラー二値化処理が行われる。これは例えば、入力画像データについてRGB色空間からHSV色空間への変換処理を行い、各画素毎の色相と彩度と明度のそれぞれが予め設定された閾値範囲内である場合に抽出色とし、閾値範囲外であれば抽出対象外色とする処理である。生成されるカラー二値化画像データは、ノイズや光量変化の影響の多くが除去されたものとなる。
【0098】
ここで判断基準に使用される抽出色は、前述した色設定モードによって画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された色特徴データとなる。つまり、カラー二値化処理では、色特徴データと一致する画素を、カメラ71によって撮像した画像のデータの中から抽出することになる。
【0099】
カラー二値化処理の判断に使用される色特徴データは
図9のマップから選択される。例えば、明るさセンサが搭載されていない塵芥収集車100では積込作業中の現在の明るさレベルがわからないので、すべての明るさレベルに対応する色特徴データについてカラー二値化処理を行い、いずれか明るさレベルの色特徴データと一致する画素があればそれを抽出する。一方で、明るさセンサが搭載されている塵芥収集車100の場合には、画像処理ユニット9が明るさセンサを使用して現在の明るさレベルを取得し、その明るさレベルに対応する色特徴データについてのみ、カラー二値化を行い、その色特徴データと一致する画素を抽出する。
【0100】
次にステップS2ではラベリング処理が行われる。これは、前記のカラー二値化画像データにおいて抽出された互いに近接する各画素を領域化するものであり、例えば同じ色特徴データに属するとともに、所定距離内で密接する複数の画素について1つの領域と見なす処理である。ラベリング処理は画像平面全体について行われ、これにより1つの領域とされたものが、それぞれ物体像として認識される。
【0101】
そして、続くステップS3において、前記それぞれの物体像についての人物識別処理が行われる。本実施形態では、大きさを示すデータを参照し、所定範囲の大きさであるという条件を満たすような物体像を、人物Hと判定する。すなわち、ステップS3においては、色設定モードによって画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された手袋GLの色特徴データと一致した物体像であることを前提に、その大きさが所定範囲の大きさであるという限定を行うことによって、人物Hの手を認識する。
【0102】
このようにして人物Hの手であると識別した物体像についてステップS4では、この物体像が予め設定されている危険なエリアに入っているか否か判定する。
【0103】
本実施形態において危険なエリアは
図7に示すように、塵芥投入口4の前縁部4aおよび後縁部4bの中央の境界線B1よりも前方、即ち塵芥投入口4の奥側のエリアとされている。
【0104】
そして、前記のように人物Hの手であると識別した物体像(領域)の外形をなす画素の位置座標が、危険なエリアの境界線B1よりも前方にあるか否かを判定する。
【0105】
そのようにして人物Hの手が危険なエリアに入っていると肯定判定すれば(YES)、ステップS5に進んで塵芥積込装置の作動を停止させるべく、画像認識ユニット9の制御部CPUは、架装本体制御部PLCに対する人物安全信号の出力を停止し、画像処理ルーチンを終了する(エンド)。一方、人物Hの手が危険なエリアに入っていないと否定判定すれば(NO)、人物安全信号の出力は維持して画像処理ルーチンを終了する(エンド)。
【0106】
そうして制御部CPUからの人物安全信号の入力が停止されると、これを受けた架装本体制御部PLCは、スイッチLS4からの信号がONであれば、即ち、回転板10が危険な角度範囲Zにあれば、電磁制御弁V1,V2の全てのソレノイドSOLa~SOLdへの通電を停止する。よって、第1連通位置または第2連通位置にある電磁制御弁V1,V2が全て中立位置に復帰するようになり、その結果、直ちに油圧モータ13および押込シリンダ24の作動が停止される。
【0107】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態に係る塵芥収集車100では、作業者Hは、装着物(手袋GL等)の色を色特徴データとして設定保存する際に装着物を配置する色設定領域が投入口テーブル41の上面41aであることが予め分かっている。また、画像処理ユニット9は、カメラ71の撮像範囲のうち投入口テーブル41の上面41aが色設定領域になることが予め分かっている。これにより、色設定モードでは、作業者Hが装着物を投入口テーブル41の上面41aに配置するだけで、画像処理ユニット9がこの装着物の色を色特徴データとして記憶部Mに自動的に設定保存することができる。従来技術にあっては、パソコン等の端末機器を画像処理ユニットに有線接続する作業や、色のRGB値を直接入力したり、カメラで撮像した画像内における装着物の位置をマウス等のポインティングデバイスで指定するといった色特定作業が必要であったが、本実施形態ではこれら作業が不要になる。このため、人物Hの装着物の色を色特徴データとして設定保存する作業の簡素化を図ることができる。
【0108】
また、本実施形態では、画像処理ユニット9において、周囲環境の明るさの変化を複数段階に分けた明るさレベルが設定され、色設定モードでは、同じ装着物に対し、各明るさレベルに応じた複数の色特徴データを画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存する(
図9で示したマップとして設定保存する)ようにしている。このように、周囲環境の明るさによって画像データ上の見え方が変化する装着物の色を、予め複数の明るさレベルに応じた複数の色特徴データとして画像処理ユニット9に設定保存しておくことができる。これにより、作業者Hが意識することなく複数の色特徴データが明るさレベルごとに整理して設定保存されるので、人物Hの装着物の色を色特徴データとして設定保存する作業の簡素化を図ることができる。また、塵芥収集車100の使用時には、作業者Hは、周囲環境の明るさを気にしなくても、画像処理ユニット9が常に装着物の色を適切に認識して(周囲環境の明るさに対応した色として適切に認識して)該装着物を検出することになる。これにより、装着物の誤認識を抑制することができる。
【0109】
また、本実施形態では、明るさレベルと明るさレベルに応じて変化する基準色マーカSMの画像データ上の色との関係が画像処理ユニット9の記憶部Mに予め保存され、画像処理ユニット9の制御部CPUは、色設定モードにおいて、投入口テーブル41の上面41aに配置された基準色マーカSMと装着物とのうち、基準色マーカSMの現在の画像データ上の色から現在の明るさレベルを判断し、現在の明るさレベルと装着物の色とを関連づけて記憶部Mに設定保存している。これより、別途明るさセンサを塵芥収集車100に設けることなく、容易に現在の明るさレベルと装着物の色とを関連づけて記憶部Mに設定保存することができる。また、基準色マーカSMは複数の塵芥収集車100で共用することができる。
【0110】
また、本実施形態では、色設定モードにおいて、作業者Hが装着物の色を色特徴データとして設定保存しようとした際に、暗すぎることで周囲環境の明るさが色特徴データの設定保存に不適切な場合には報知部94からエラー情報が発信されるようになっている。これにより、作業者Hは、この状況を容易に把握することができ、色設定モードを解除する等して、思わぬ色で装着物の色特徴データが設定保存されてしまうといったことを未然に防止することができる。
【0111】
また、本実施形態では、カメラ71は、塵芥投入箱3に対して塵芥投入口4の上方位置に配設されるとともに塵芥投入口4およびその近傍を撮像するように構成されており、塵芥投入口4の下縁部には、塵芥投入口4より外方へ延びる水平状態と起立状態とに起伏可能な投入口テーブル41が設けられ、投入口テーブル41の上面に色設定領域を設定している。塵芥投入口4の下縁部は塵芥Gを塵芥投入口4へ投入しやすくするために作業者Hの手が届きやすい位置にあり、投入口テーブル41も作業者Hが操作しやすい位置にある。本実施形態では、この投入口テーブル41が、水平状態にした場合に塵芥投入口4およびその近傍を撮像するように設定されたカメラ71の撮像範囲に収まることを利用し、この投入口テーブル41の上面に色設定領域を設定するようにしている。これにより、作業者Hは、投入口テーブル41の色設定領域に装着物を容易に配置して装着物の色を色特徴データとして容易に設定保存することができる。
【0112】
また、本実施形態では、画像処理ユニット9は、無線通信部95を介して、作業者Hの携帯端末200との間で無線通信可能となっており、この携帯端末200の表示部93には、色特徴データの情報が表示されるようになっている。このため、画像処理ユニット9の設置場所と投入口テーブル41の上面41a(色設定領域)とが離れていても、作業者Hは携帯端末200の表示部93で色特徴データの設定保存の状況を確認することができる。これにより、パソコン等の端末機器を運転室内に設けた画像処理装置に有線接続してその端末機器の画面により設定状況の確認をしていた従来と比較して、色特徴データを設定保存する作業の利便性を高めることができる。
【0113】
-他の実施形態-
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0114】
前記実施形態では、いわゆる回転板式の塵芥積込装置を装備した塵芥収集車100として本発明を具現化した場合について説明しており、塵芥積込装置の主要部は回転板10および押込板20により構成されている。しかし、これに限らず、塵芥積込装置の主要部は昇降板および押込板によって構成されていてもよく、その構造を特に限定するものではない。また、本発明は、ダンプトラック、ミキサ車、タンクローリ、コンテナ荷役車両、吸引車等、塵芥収集車以外の作業車両にも適用することが可能であり、車台に架装される可動装置としては塵芥積込装置以外の種々のものが考えられる。
【0115】
また、前記実施形態では、作業者Hが装着する手袋GLの色を色特徴データとして、画像処理によって手であることを識別しているが、手袋GL等の装着物に加えて、作業者Hの頭部形状について画像認識により識別するようにしてもよい。
【0116】
また、前記実施形態では、色設定モードにおいて
図9に示すマップ(周囲環境の明るさレベルと、画像データ上の基準色マーカSMの色と、手袋GLの色特徴データとが互いに関連付けられたマップ)を作成するようにしていたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、塵芥積込装置への塵芥Gの積込作業の開始直前に、色設定モードによって手袋GLの色の特徴データ(色特徴データ)を画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存するようにしておけば、周囲環境の明るさが変化しない状況にあっては手袋GLの色を適切に認識できるので、前記マップを予め作成しておく必要はなくなる。例えば、日中(周囲環境の明るさが明るい状況)の積込作業の開始直前および夕方(周囲環境の明るさが比較的暗い状況)の積込作業の開始直前それぞれにおいて、色設定モードを実施して手袋GLの色の色特徴データを画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存するようにしておくことが挙げられる。
【0117】
また、前記実施形態では、色設定モードにおいて、投入口テーブル41の上面41a(色設定領域)に配置された基準色マーカSMと手袋GLとのうち、基準色マーカSMの現在の画像データ上の色から現在の明るさレベルを判断し、現在の明るさレベルと手袋GLの色とを関連づけて記憶部Mに設定保存していた。本発明はこれに限らず、画像処理ユニット9が現在の明るさレベルを認識するために塵芥投入箱に設けた明るさセンサと画像処理ユニットとを接続し、画像処理ユニット9が明るさセンサの検出値から明るさレベルを判断するようにしてもよい。
【0118】
また、前記実施形態では、本発明でいう装着物の色設定領域を投入口テーブル41の上面41aとしていた。本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ71によって撮像される画像範囲内の塵芥投入箱3の一部であれば、何れの箇所を色設定領域として設定してもよい。
【0119】
また、色設定領域は、カメラ71によって撮像される画像範囲内に常時存在する必要はなく、色設定モードの際にのみ当該画像範囲内に存在するようにしてもよい。例えば、投入口テーブルに引き出し部を設けてこの引き出し部に色設定領域を設定するようにしてもよい。その場合、引き出し部を引き出していないときには色設定領域が投入口テーブルの内部に収納されることで色設定領域が汚れるのを防ぐことができる。また、色設定モードの際には、作業者が引き出し部を引き出すことによって、カメラによって撮像される画像範囲内に色設定領域を容易に配置することができる。
【0120】
また、前記実施形態では、画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存される色特徴データが対象とする色は一色としていた(具体的には赤色、青色、緑色のうちの一色としていた)。本発明はこれに限定されず、設定保存される色特徴データが対象とする色を二色以上としてもよい。例えば、作業者Hが右手と左手とで色の異なる手袋GLを装着する場合や、互いに色の異なる手袋GLを装着した複数の作業者Hによって塵芥Gの積込作業が行われる場合には、これら装着される各手袋GLの色を色特徴データとして画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存することが好ましい。
【0121】
また、前記実施形態では、物体像取得部は、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を有する単眼カメラとして構成されていたが、本発明はこれに限らず、ステレオカメラや、距離画像とカラー画像とを同時に取得できる距離画像センサによって物体像取得部を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、塵芥投入箱の内部に配設された塵芥積込装置と、塵芥投入箱に取り付けられて塵芥投入箱の塵芥投入口の近傍の画像を取得する物体像取得部とを備えた塵芥収集車に利用可能である。
【符号の説明】
【0123】
3 塵芥投入箱(荷箱)
41 投入口テーブル
41a 上面(色設定領域)
71 カメラ(物体像取得部)
9 画像処理ユニット
94 報知部
95 無線通信部
100 塵芥収集車(作業車両)
200 携帯端末
M 記憶部
H 作業者(人物)
GL 手袋(装着物)
SM 基準色マーカ