(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
F04B 27/18 20060101AFI20240219BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F04B27/18 Z
F16K31/06 305E
F16K31/06 305J
(21)【出願番号】P 2021512307
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015183
(87)【国際公開番号】W WO2020204137
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019071838
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】葉山 真弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】神崎 敏智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-291821(JP,A)
【文献】米国特許第04403765(US,A)
【文献】米国特許第03168242(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108843646(CN,A)
【文献】特開2001-349278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルへの通電により固定鉄心に可動鉄心を磁力で吸引移動させることで、弁体の位置を変化させる容量制御弁であって、
一方の前記鉄心は外径側に凸部を備え、他方の前記鉄心は内径側に凸部を備え、これらが吸着移動した状態で遊嵌可能となっており、
一方の前記凸部は、その先端の有効磁力面が対向する鉄心の対向面よりも小さく形成され、かつ
その内周面または外周面に先端に向けて径方向に傾斜する傾斜面を有する先細り形状に形成されて
おり、
他方の前記凸部は、その外周面及び内周面の双方が前記鉄心の軸方向に対して平行な平行面のみで形成されていることを特徴とする容量制御弁。
【請求項2】
前記凸部の先端の有効磁力面と、前記鉄心の対向面とは、前記鉄心の軸方向に対して直交して形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
一方の前記凸部の
前記傾斜面は、他方の前記凸部の周面と対向していることを特徴とする請求項1
または2に記載の容量制御弁。
【請求項4】
一方の前記凸部の
前記傾斜面は、他方の前記凸部の周面と対向しない側に位置していることを特徴とする請求項1
または2に記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記電磁コイルへの非通電時に開放状態となるノーマルオープン形式であることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項6】
電磁コイルへの通電により固定鉄心に可動鉄心を磁力で吸引移動させることで、弁体の位置を変化させる容量制御弁であって、
一方の前記鉄心は外径側に凸部、内径側に凹部を備え、他方の前記鉄心は内径側に凸部、外径側に凹部を備え、これらが吸着移動した状態で遊嵌可能となっており、
吸引時において、一方の前記凸部の先端と前記凹部奥端との間隔は、他方の前記凸部の先端と前記凹部奥端との間隔と異なっており、
非吸引時において、一方の前記凸部の先端と前記凹部奥端とが有効磁力範囲内に位置するとともに、他方の前記凸部の先端と前記凹部奥端とは有効磁力範囲外に位置するように形成されている容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量を可変制御する容量制御弁に関し、例えば、自動車の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の吐出量を圧力に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
容量可変型圧縮機の連続駆動時において、容量制御弁は、制御コンピュータにより通電制御され、ソレノイドで発生する電磁力により弁体を軸方向に移動させ、吐出圧力Pdの吐出流体が通過する吐出ポートと制御圧力Pcの制御流体が通過する制御ポートとの間に設けられるDC弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行う形式のものと、吸入圧力Psの吸入流体が通過する吸入ポートと制御圧力Pcの制御流体が通過する制御ポートとの間に設けられるCS弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行う形式のものがある。
【0004】
容量制御弁の通常制御時においては、容量可変型圧縮機における制御室の圧力が適宜制御されており、回転軸に対する斜板の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて吐出室に対する流体の吐出量を制御し、空調システムが所望の冷却能力となるように調整している。また、容量制御弁は、ソレノイドへの印加電流による電磁力に応じて弁体の弁開度が変化し、これに対応して圧力差の目標値が変更され、制御圧力Pcを変化させるようになっている。
【0005】
特許文献1における従来技術の説明にもあるように、従来は可動鉄心と固定鉄心の2つの鉄心同士の対向面をこれら鉄心の軸方向に対して直交する平面にしたものがある。このような構造では、鉄心同士が近接すると、すなわち弁体が初期位置から最大ストローク位置まで移動するに伴い、鉄心同士の対向面に軸方向に作用する磁力が急増するため、弁体の細かい開閉調整が難しいという問題があった。
【0006】
また、一方の鉄心の対向面を円錐状とし、他方をこの円錐状の対向面と凹凸遊嵌する形状にしたものがある。このような構造では、弁体が初期位置から最大ストローク位置まで移動するに伴い、傾斜して平行に対向する対向面の間に、径方向の成分を持って作用する磁力が徐々に働くため、鉄心同士の対向面に作用する磁力の急増が防止され、弁体の細かい開閉調整が可能となっている。しかしながら、対向面の間に作用する磁力が小さく可動鉄心を軸方向に電磁力によって移動させる軸方向推力が小さいという欠点があり、軸方向推力を十分に確保するためには、大型の強力なソレノイドを必要とするという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献1の実施例として、一方の鉄心に先端に鉄心の軸方向に対して直交する平面を広く有する載頭円錐状、換言すると断面視台形状の凸部を形成し、この凸部に対応する形状の凹部を他方の鉄心に形成しているものも提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2892473号公報(第2頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の実施例として開示された容量制御弁にあっては、上記したような構造としたことで、鉄心の軸方向に対して直交する平面によって対向面の間に作用する磁力を増大させ、弁体の最大ストローク位置にて弁体を確実に保持する軸方向推力を確保しながら、弁体が初期位置から最大ストローク位置まで移動するに伴い、鉄心同士の対向面に作用する磁力が急増することを防ぐことで、弁体の細かい開閉調整が可能となっている。しかしながら、一方の鉄心の対向面は載頭円錐状であり、他方の鉄心の対向面は載頭円錐状と相補的な凹形状とされ、両鉄心は互いに凹凸遊嵌する形状であるため、弁体の最大ストローク位置における軸方向推力を高めたい場合には全体の構造が大型化してしまう、一方、両鉄心の弁体の最大ストローク位置における離間距離が小さくなる配置構成とすると傾斜する対向面同士の間に作用する磁力が軸方向の近接に起因して上昇してしまい、弁体の細かい開閉調整を円滑に制御できないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、弁体を円滑に制御できるとともに、弁体を最大ストローク位置において安定して保持できる容量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は、
電磁コイルへの通電により固定鉄心に可動鉄心を磁力で吸引移動させることで、弁体の位置を変化させる容量制御弁であって、
一方の前記鉄心は外径側に凸部を備え、他方の前記鉄心は内径側に凸部を備え、これらが吸着移動した状態で遊嵌可能となっており、
一方の前記凸部は、その先端の有効磁力面が対向する鉄心の対向面よりも小さく形成され、かつ先細り形状に形成されている。
これによれば、一方の凸部が先細り形状であるため、その先端側では他方の凸部との間で径方向の成分を持って作用する磁力が小さく、根元側では他方の凸部との間で径方向の成分を持って作用する磁力が大きくなるため、弁体の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲において鉄心同士の間で作用する磁力は、その軸方向の近接の影響を受けにくく、軸方向推力がフラットとなる特性を有するとともに、弁体の最大ストローク近傍以降では、凸部の先端の有効磁力面が対向する鉄心との対向面と近接し、軸方向に作用する磁力が急激に増加し軸方向推力が急増する特性、すなわち軸方向推力がフラットとなる領域を広く確保しつつ最大ストローク近傍で急激に増加する特性とすることができる。これにより、初期位置から最大ストローク近傍までの範囲においては小さい軸方向推力であるため弁体を円滑に制御できるとともに、最大ストローク位置においては弁体を大きな軸方向推力で安定して保持することができる。
【0012】
一方の前記凸部の先細り形状を構成する傾斜面と、他方の前記凸部の周面とは非平行であってよい。
これによれば、一方の凸部の傾斜面と他方の凸部の周面とが非平行であるため、弁体の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲と、弁体の最大ストローク位置側とで、軸方向推力の特性を顕著に区別することができる。
【0013】
他方の前記凸部の周面は、前記鉄心の軸方向に対して平行であってよい。
これによれば、鉄心の軸方向に対して平行であることから、一方の凸部との間で径方向の成分を持って作用する磁力を極めて小さくでき、弁体の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲における軸方向推力の上昇を効果的にフラットにすることができる。
【0014】
前記凸部の先端の有効磁力面と、前記鉄心の対向面とは、前記鉄心の軸方向に対して直交して形成されていてもよい。
これによれば、有効磁力面と対向面とが軸方向に対して直交して形成されていることで、これらが近接した際における軸方向に作用する磁力を大きく確保でき、弁体の最大ストローク位置において軸方向推力を急増させることができる。
【0015】
一方の前記凸部の先細り形状を構成する傾斜面は、他方の前記凸部の周面と対向していてもよい。
これによれば、一方の凸部の先細り形状を構成する傾斜面と他方の凸部の周面とが対向することで、弁体の最大ストローク近傍以降では、一方の凸部の傾斜面の根元側と他方の凸部の周面とが近接し、これらの間において径方向の成分を持って作用する磁力が大きくなるため、弁体を最大ストローク位置において安定して保持することができる。
【0016】
一方の前記凸部の先細り形状を構成する傾斜面は、他方の前記凸部の周面と対向しない側に位置していてもよい。
これによれば、一方の凸部の先細り形状を構成する傾斜面と他方の凸部の周面とが対向しないことで、弁体の移動時にこれらの径方向の離間距離が近づくことはなく、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力の影響を極めて小さくでき、弁体の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲における軸方向推力の上昇を効果的にフラットにすることができる。
【0017】
前記電磁コイルへの非通電時に開放状態となるノーマルオープン形式であってよい。
これによれば、通電時の閉塞状態にあって、流体から弁体に圧力が作用しても閉塞状態である弁体の最大ストローク位置では軸方向推力が強いので、閉塞状態を確実に維持できる。
【0018】
本発明の容量制御弁は、
電磁コイルへの通電により固定鉄心に可動鉄心を磁力で吸引移動させることで、弁体の位置を変化させる容量制御弁であって、
一方の前記鉄心は外径側に凸部、内径側に凹部を備え、他方の前記鉄心は内径側に凸部、外径側に凹部を備え、これらが吸着移動した状態で遊嵌可能となっており、
吸引時において、一方の前記凸部の先端と前記凹部奥端との間隔は、他方の前記凸部の先端と前記凹部奥端との間隔と異なっており、
非吸引時において、一方の前記凸部の先端と前記凹部奥端とが有効磁力範囲内に位置するとともに、他方の前記凸部の先端と前記凹部奥端とは有効磁力範囲外に位置するように形成されている。
これによれば、非吸引時において有効磁力範囲内に位置する一方の凸部の先端と凹部奥端とが作動力として弁体を移動させる。この際、有効磁力範囲外に位置する他方の凸部の先端と凹部奥端とは作動力が初期段階では顕在化せず、一方の作動を伴い他方が有効磁力範囲内に進入後顕在化する。このため、弁体の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲において鉄心同士の間で作用する磁力は、軸方向推力がフラットとなる特性を有するとともに、軸方向に作用する磁力が急激に増加し軸方向推力が急増する特性、すなわち軸方向推力がフラットとなる領域を広く確保しつつ最大ストローク近傍で急激に増加する特性とすることができる。これにより、初期位置から最大ストローク近傍までの範囲においては小さい軸方向推力であるため弁体を円滑に制御できるとともに、最大ストローク位置においては弁体を大きな軸方向推力で安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る実施例の容量制御弁が組み込まれる斜板式容量可変型圧縮機を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例1の容量制御弁の非通電状態においてCS弁が開放された様子を示す断面図である。
【
図3】実施例1の容量制御弁の通電状態(通常制御時)においてCS弁が閉塞された様子を示す断面図である。
【
図4】実施例1の可動鉄心とセンタポストとの対向形状を示す要部を拡大した断面図であり、通電直後のCS弁体が初期位置に位置する状態を示す。
【
図5】同様に、通電時においてCS弁体が閉弁位置に位置する状態を示す要部を拡大した断面図である。
【
図6】CS弁体のストロークと可動鉄心の軸方向推力との関係を示すグラフである。
【
図7】実施例1の可動鉄心とセンタポストとの対向形状を示す要部を拡大した断面図であり、(a)は、通電直後のCS弁体が初期位置に位置する状態を示し、(b)は、通電時においてCS弁体が閉弁位置に位置する状態を示す。
【
図8】実施例2の可動鉄心とセンタポストとの対向形状を示す要部を拡大した断面図であり、通電直後のCS弁体が初期位置に位置する状態を示す。
【
図9】同様に、通電時においてCS弁体が閉弁位置に位置する状態を示す要部を拡大した断面図である。
【
図10】実施例3の容量制御弁の通電状態(通常制御時)においてCS弁が閉塞された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係る容量制御弁につき、
図1から
図7を参照して説明する。以下、
図2の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。
【0022】
本発明の容量制御弁Vは、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機Mに組み込まれ、冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する)の圧力を可変制御することにより、容量可変型圧縮機Mの吐出量を制御し空調システムを所望の冷却能力となるように調整している。
【0023】
先ず、容量可変型圧縮機Mについて説明する。
図1に示されるように、容量可変型圧縮機Mは、吐出室2と、吸入室3と、制御室4と、複数のシリンダ4aと、を備えるケーシング1を有している。尚、容量可変型圧縮機Mには、制御室4と吸入室3とを直接連通する図示しない連通路が設けられており、この連通路には吸入室3と制御室4との圧力を平衡調整させるための固定オリフィスが設けられている。
【0024】
また、容量可変型圧縮機Mは、ケーシング1の外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動される回転軸5と、制御室4内において回転軸5に対してヒンジ機構8により偏心状態で連結される斜板6と、斜板6に連結され各々のシリンダ4a内において往復動自在に嵌合された複数のピストン7と、を備え、電磁力により開閉駆動される容量制御弁Vを用いて、流体を吸入する吸入室3の吸入圧力Ps、ピストン7により加圧された流体を吐出する吐出室2の吐出圧力Pd、斜板6を収容した制御室4の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室4内の圧力を適宜制御することで斜板6の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストン7のストローク量を変化させて流体の吐出量を制御している。尚、説明の便宜上、
図1においては、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vの図示を省略している。
【0025】
具体的には、制御室4内の制御圧力Pcが高圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は小さくなりピストン7のストローク量が減少するが、一定以上の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が略垂直状態、すなわち垂直よりわずかに傾斜した状態となる。このとき、ピストン7のストローク量は最小となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最小となることで、吐出室2への流体の吐出量が減少し、空調システムの冷却能力は最小となる。一方で、制御室4内の制御圧力Pcが低圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は大きくなりピストン7のストローク量が増加するが、一定以下の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が最大傾斜角度となる。このとき、ピストン7のストローク量は最大となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最大となることで、吐出室2への流体の吐出量が増加し、空調システムの冷却能力は最大となる。
【0026】
図2および
図3に示されるように、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vは、ソレノイド80を構成する電磁コイル86に通電する電流を調整し、容量制御弁VにおけるCS弁50の開閉制御を行うことにより、制御室4から吸入室3に流出する流体を制御することで制御室4内の制御圧力Pcを可変制御している。尚、容量可変型圧縮機Mには、吐出室2と制御室4とを直接連通する連通路が設けられており、この連通路には吐出室2と制御室4との圧力を平衡調整させるための固定オリフィス9が設けられている。すなわち、吐出室2の吐出圧力Pdの吐出流体が固定オリフィス9を介して制御室4に常時供給されており、容量制御弁VにおけるCS弁50を閉塞させることにより制御室4内の制御圧力Pcを上昇させられるようになっている。
【0027】
本実施例において、CS弁50は、弁体としてのCS弁体51とバルブハウジング10の内周面に形成されたCS弁座10aとにより構成されており、CS弁体51の軸方向左端51aがCS弁座10aに接離することで、CS弁50が開閉するようになっている。
【0028】
次いで、容量制御弁Vの構造について説明する。
図2および
図3に示されるように、容量制御弁Vは、金属材料または樹脂材料により形成されたバルブハウジング10と、バルブハウジング10内に軸方向左端部が配置されるCS弁体51と、バルブハウジング10に接続されCS弁体51に駆動力を及ぼすソレノイド80と、から主に構成されている。
【0029】
図2および
図3に示されるように、CS弁体51は、断面一定の柱状体であり、ソレノイド80の電磁コイル86に対して貫通配置されるロッドを兼ねている。
【0030】
図2および
図3に示されるように、バルブハウジング10には、容量可変型圧縮機Mの吸入室3と連通する吸入ポートとしてのPsポート11と、容量可変型圧縮機Mの制御室4と連通する制御ポートとしてのPcポート12が形成されている。
【0031】
バルブハウジング10の内部には、弁室20が形成され、弁室20内にはCS弁体51の軸方向左端部が軸方向に往復動自在に配置される。また、Psポート11は、バルブハウジング10の外周面から内径方向に延びて弁室20と連通し、Pcポート12は、バルブハウジング10の軸方向左端の内径側から軸方向右方に延びて弁室20と連通している。
【0032】
バルブハウジング10の内周面には、Pcポート12の弁室20側の開口端縁にCS弁座10aが形成されている。また、バルブハウジング10の内周面には、CS弁座10aおよび弁室20よりもソレノイド80側にCS弁体51の外周面が略密封状態で摺動可能なガイド孔10bが形成されている。
【0033】
また、バルブハウジング10は、軸方向右端の内径側が軸方向左方に凹む凹部10cを備え、ソレノイド80を構成する固定鉄心であるセンタポスト82のフランジ部82dが軸方向右方から挿嵌されることにより一体に略密封状態で接続固定されている。尚、バルブハウジング10の凹部10cの底面の内径側には、ガイド孔10bのソレノイド80側の開口端が形成されている。
【0034】
図2および
図3に示されるように、ソレノイド80は、軸方向左方に開放する開口部81aを有するケーシング81と、ケーシング81の開口部81aに対して軸方向左方から挿入されケーシング81の内径側に固定される略円筒形状のセンタポスト82と、センタポスト82に挿通され軸方向に往復動自在、かつその軸方向左端部がバルブハウジング10内に配置されるCS弁体51と、CS弁体51の軸方向右端部が挿嵌・固定される可動鉄心84と、センタポスト82と可動鉄心84との間に設けられ可動鉄心84をCS弁50の開弁方向である軸方向右方に付勢するスプリングとしてのコイルスプリング85と、センタポスト82の外側にボビンを介して巻き付けられた励磁用の電磁コイル86と、から主に構成されている。
【0035】
次いで、
図4を用いてセンタポスト82と可動鉄心84の構造について説明する。センタポスト82は、可動鉄心84と対向する側に突出して形成された対向面から見て環状に連続する凸部90を備えている。凸部90は外径側に形成されており、軸方向に対して直交する方向に延びる先端面90aと、該先端面90aに連続するセンタポスト82の軸方向に対して傾斜する内周面90bを備えた先細り形状となっている。凸部90の根元部分の内径側にはセンタポスト82の軸方向に対して直交する凹部奥端としての対向面91が形成されている。
【0036】
可動鉄心84は、センタポスト82と対向する側に突出して形成された対向面から見て環状に連続する凸部92を備えている。凸部92は内径側に形成されており、軸方向に対して直交する方向に延びる先端面92aと、該先端面92aに連続し可動鉄心84の軸方向に対して平行な面を成す外周面92bを備えた均等幅の形状となっている。凸部92の根元部分の外径側には可動鉄心84の軸方向に対して直交する凹部奥端としての対向面93が形成されている。センタポスト82の先端面90a、対向面91と、可動鉄心84の対向面93、先端面92aとは、それぞれ平行である。
【0037】
尚、センタポスト82の外径は、好ましくはφ7.4~φ9.4の範囲、さらに好ましくはφ7.9~φ8.9に形成されてよい。また、センタポスト82の内径は、好ましくはφ2.0~φ4.0の範囲、さらに好ましくはφ2.5~φ3.5の範囲に形成されてよい。また、センタポスト82の軸方向に対する内周面90bの傾斜角度αは、好ましくは5度~15度の範囲、さらに好ましくは8度~12度の範囲に形成されてよく、これによれば、軸方向推力が小さくなることを防止しながら、後述する推力フラット部の範囲を広く確保することができる。
【0038】
さらに尚、可動鉄心84の外径は、好ましくはφ7.5~φ9.5の範囲、さらに好ましくはφ8.0~φ9.0の範囲に形成されてよい。また、可動鉄心84の内径は、好ましくはφ3.3~φ5.3の範囲、さらに好ましくはφ3.8~φ4.8の範囲に形成されてよい。また、可動鉄心84の凸部92の先端面92aの径方向の寸法L2は、好ましくは1.0mm以上に形成されてよく、これによれば、軸方向推力が小さくなることを防止できる。さらに、可動鉄心84の凸部92の外周面92bとセンタポスト82の凸部90の内周面90bとの間における最小隙間の径方向の寸法L1は、好ましくは0.1mm~0.3mmの範囲、さらに好ましくは0.15mm~0.25mmの範囲に形成されてよく、これによれば、軸方向推力が小さくなることを防止しながら、通電直後のCS弁体51が初期位置に位置する状態における推力低下を抑えることができる。
【0039】
次いで、容量制御弁Vの動作、主にCS弁50の開閉動作について説明する。
【0040】
先ず、容量制御弁Vの非通電状態について説明する。
図2に示されるように、容量制御弁Vは、非通電状態において、可動鉄心84がソレノイド80を構成するコイルスプリング85の付勢力により軸方向右方へと押圧されることで、CS弁体51が軸方向右方へ移動し、CS弁体51の軸方向左端51aがバルブハウジング10の内周面に形成されたCS弁座10aから離間し、CS弁50が開放されている。
図2では、CS弁体51が初期位置に位置する状態を示す。
【0041】
図3に示されるように、容量制御弁Vは、通電状態、すなわち通常制御時、いわゆるデューティ制御時において、ソレノイド80に電流が印加されることにより可動鉄心84がセンタポスト82側、すなわち軸方向左側に引き寄せられ、可動鉄心84に固定されたCS弁体51が軸方向左方へ共に移動することにより、CS弁体51の軸方向左端51aがバルブハウジング10のCS弁座10aに着座し、CS弁50が閉塞される。
図3では、CS弁体51が最大ストローク位置まで移動し、CS弁50が閉弁された状態を示す。
【0042】
図4は通電直後であり、CS弁体51が初期位置に位置する状態を示し、
図5は最大の電流値で通電されCS弁体51が閉弁位置まで移動した状態を示す。
図4に示されるように、センタポスト82の凸部90が先細り形状であるため、凸部90の先端側では可動鉄心84の凸部92と径方向に離間しており、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力の影響が非常に小さくなっている。このように、通電によって可動鉄心84がセンタポスト82に向けて吸着移動した状態で、センタポスト82の凸部90と可動鉄心84の凸部92とは、遊嵌可能となっている。
図4と
図5ではCS弁体51の初期位置と閉弁位置における磁力線の様子を概念的に表示している。
【0043】
また、センタポスト82の凸部90の先細り形状を構成する内周面90bと、軸方向と平行である可動鉄心84の凸部92の外周面92bとが異なる角度であることから、CS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの範囲においては、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力の増加が少ない。
【0044】
加えて、センタポスト82の凸部90が先細り形状であることによる効果としては、上記した凸部90と凸部92との離間距離の関係に加えて、センタポスト82は先端側に比べて根元側の断面積が大きいため、可動鉄心84の凸部92との間で径方向の成分を持って作用する磁力が先端側で小さくなっている。
【0045】
また、可動鉄心84の凸部92の外周面92bが可動鉄心84の軸方向に対して平行な面を成しているため、センタポスト82の凸部90との間で径方向の成分を持って作用する磁力を極めて小さくでき、CS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの広い範囲において軸方向推力の上昇を効果的にフラットにすることができる(
図6参照)。参考までに、外周面92bが傾斜する内周面90bと平行となるように傾斜して形成されていると、閉弁方向への可動鉄心84の移動に伴ってこれら外周面92bと内周面90bを通過する磁束が多く、本実施例1の形態よりも軸方向推力のフラットとなる領域が狭くなり、なだらかに軸方向推進力が増加する特性となる。
【0046】
また、CS弁体51が閉弁位置まで移動している際には、センタポスト82の凸部90の先端の有効磁力面である先端面90aと可動鉄心84の対向面93、センタポスト82の対向面91と可動鉄心84の凸部92の先端面92aとがそれぞれ接近するため、これらセンタポスト82と可動鉄心84との軸方向に作用する磁力が急激に増加する。換言すると、CS弁体51が閉弁位置まで移動する前、すなわちCS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの範囲においては、センタポスト82と可動鉄心84との軸方向に作用する磁力が急激に増加することがない。
【0047】
また、センタポスト82の凸部90の先端の有効磁力面である先端面90aと可動鉄心84の対向面93、センタポスト82の対向面91と可動鉄心84の凸部92の先端の有効磁力面である先端面92aは、それぞれセンタポスト82および可動鉄心84の軸方向に対して直交して形成されているため、これらが近接した際における軸方向に作用する磁力を大きく確保でき、CS弁50の閉弁位置において可動鉄心84の軸方向推力を効果的に急増させることができる。
【0048】
また、センタポスト82の凸部90の先端の有効磁力面である先端面90aよりも可動鉄心84の対向面93の対向面積が大きく、センタポスト82の対向面91は可動鉄心84の凸部92先端の有効磁力面である先端面92aよりも対向面積が大きいため、磁束が通りやすく、これら対向する面同士の間において大きな磁力による吸引力を確保することができる。尚、可動鉄心84の凸部92先端がセンタポスト82内径よりも内側まで延び、センタポスト82の対向面91は可動鉄心84の凸部92先端の有効磁力面である先端面92aよりも対向面積が小さい形態も妨げない。
【0049】
上記したような構成を採用することで、
図6に示すCS弁体51のストロークと可動鉄心84の軸方向推力との関係を示すグラフからも分かるように、当該特性は漸近線がそれぞれx軸、y軸である双曲線に近い形状をなしている。そして、CS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの範囲においては小さい軸方向推力の状態がフラットに推移する推力フラット部を示し、CS弁体51を円滑に制御できるとともに、CS弁体51の閉弁位置においてはCS弁体51を大きな軸方向推力で安定して保持することができる。つまり、制御圧力PcがかかるCS弁50の閉弁状態を確実に維持することができる。
【0050】
また、センタポスト82の凸部90の先細り形状を構成する内周面90bは、可動鉄心84の凸部92の外周面92bと対向する側に位置しており、
図3のようにCS弁体51が閉弁位置まで移動していく過程において、センタポスト82の凸部90の根元側にて可動鉄心84の凸部92が径方向に接近するため、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力が軸方向の近接に起因して緩やかに上昇する。つまり、閉弁位置の近傍以降では径方向の成分を持って作用する磁力が軸方向推力を補助するようになっている。
【0051】
また、前記実施例における容量制御弁Vは、電磁コイル86への非通電時に開放状態となるノーマルオープン形式である。上記したように通電時の閉塞状態において、流体からCS弁体51に圧力が作用しても閉塞状態であるCS弁体51の閉弁位置では軸方向推力が強いので、閉塞状態を確実に維持できるため、本発明の構成はこのようなノーマルオープンタイプに有用である。加えて、実施例1の容量制御弁Vは閉塞状態である場合に、吐出圧力Pdの影響によりPcポート12に作用する圧力が時間と共に高まる形式であることからも有用である。
【0052】
また、
図7(b)に示されるように、吸引時、すなわちCS弁体51が閉弁位置に位置する状態において、可動鉄心84の凸部92の先端面92aとセンタポスト82の対向面91との間隔L8は、センタポスト82の凸部90の先端面90aと可動鉄心84の対向面93との間隔L7と異なっている。
【0053】
また、
図7(a)に示されるように、非吸引時、すなわちCS弁体51が初期位置に位置する状態において、可動鉄心84の凸部92の先端面92aとセンタポスト82の対向面91とが有効磁力範囲E内に位置する。すなわち、可動鉄心84の凸部92の先端面92aとセンタポスト82の対向面91との間隔L6が有効磁力範囲Eよりも短くなる。
【0054】
さらに、非吸引時において、センタポスト82の凸部90の先端面90aと可動鉄心84の対向面93とは有効磁力範囲E外に位置する。すなわち、センタポスト82の凸部90の先端面90aと可動鉄心84の対向面93との間隔L5が有効磁力範囲Eよりも長くなるように形成されている。
【0055】
これによれば、非吸引時において有効磁力範囲E内に位置する可動鉄心84の凸部92の先端面92aとセンタポスト82の対向面91とが作動力としてCS弁体51を移動させる。この際、有効磁力範囲E外に位置するセンタポスト82の凸部90の先端面90aと可動鉄心84の対向面93とは作動力が初期段階では顕在化せず、可動鉄心84の凸部92の先端面92aとセンタポスト82の対向面91との作動を伴いセンタポスト82の凸部90の先端面90aと可動鉄心84の対向面93とが有効磁力範囲E内に進入後顕在化する。このため、CS弁体51の初期位置から最大ストローク近傍までの範囲においてセンタポスト82と可動鉄心84との間で作用する磁力は、軸方向推力がフラットとなる特性を有するとともに、軸方向に作用する磁力が急激に増加し軸方向推力が急増する特性、すなわち軸方向推力がフラットとなる領域を広く確保しつつ最大ストローク近傍で急激に増加する特性とすることができる。これにより、初期位置から最大ストローク近傍までの範囲においては小さい軸方向推力であるためCS弁体51を円滑に制御できるとともに、最大ストローク位置においてはCS弁体51を大きな軸方向推力で安定して保持することができる。尚、本実施例において、有効磁力範囲Eとは、所定値以上の磁気吸引力が生じる軸方向の距離のことを示している。
【実施例2】
【0056】
実施例2に係る容量制御弁につき、
図8と
図9を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0057】
図8に示されるように、センタポスト94は、可動鉄心84と対向する側に突出して形成された凸部95を備えている。凸部95は外径側に形成されており、先端面95aに亘りセンタポスト82の軸方向に対して傾斜する外周面95bを備えた先細り形状となっている。凸部95の内周面95cはセンタポスト94の軸方向に対して平行な面を成している。また、凸部95の根元部分の内径側にはセンタポスト82の軸方向に対して直交する凹部奥端としての対向面96が形成されている。
【0058】
尚、センタポスト94の軸方向に対する外周面95bの傾斜角度βは、好ましくは15度~25度の範囲、さらに好ましくは18度~22度の範囲に形成されてよく、これによれば、軸方向推力が小さくなることを防止しながら、推力フラット部の範囲を広く確保することができる。
【0059】
図8と
図9に示されるように、センタポスト94の凸部95が先細り形状であるため、先端側に比べて根元側の断面積が大きく、可動鉄心84の凸部92との間で径方向の成分を持って作用する磁力が先端側で小さく、根元側で大きくなる。そのため、CS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの範囲においてセンタポスト94と可動鉄心84との間で作用する磁力は小さいまま推移し、軸方向推力が急増せずフラットとなる。
【0060】
また、CS弁体51が閉弁位置側まで移動している際には、センタポスト94の凸部95の先端の有効磁力面である先端面95aと可動鉄心84の対向面93、センタポスト94の対向面96と可動鉄心84の凸部92の先端面92aとがそれぞれ接近するため、これらセンタポスト94と可動鉄心84との軸方向に作用する磁力が急激に増加する。
【0061】
また、センタポスト94の凸部95の先細り形状を構成する外周面95bは、可動鉄心84の凸部92の外周面92bと対向しない側に位置しており、センタポスト94の凸部95の内周面95cはセンタポスト94の軸方向に対して平行な面を成している。これによれば、CS弁体51の移動時に、互いに平行なセンタポスト94の凸部95の内周面95cと可動鉄心84の凸部92の外周面92bとが径方向に近づくことはなく、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力の影響を極めて小さくでき、CS弁体51の初期位置から閉弁位置の手前までの範囲における軸方向推力の上昇を効果的にフラットにすることができる。
【0062】
また、
図9のようにCS弁体51が閉弁位置まで移動している際には、センタポスト94の凸部95の根元側では断面積が徐々に大きくなるため、磁気飽和による磁束の抑制が徐々に少なくなるため、これらの間で径方向の成分を持って作用する磁力が軸方向の近接に起因して緩やかに上昇する。つまり、閉弁位置の近傍以降では径方向の成分を持って作用する磁力が軸方向推力を補助するようになっている。
【実施例3】
【0063】
実施例3に係る容量制御弁につき、
図10を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0064】
容量制御弁V2は、非通電状態において、可動鉄心84がコイルスプリング85の付勢力により軸方向右方へと押圧されることで、CS弁体151が軸方向右方へ移動し、CS弁体151の大径部151aの軸方向右側面がCS弁座110aに着座し、CS弁150が閉塞されている。そして、通電状態、すなわち通常制御時、いわゆるデューティ制御時において、ソレノイド80に電流が印加されることにより可動鉄心84がセンタポスト82側、すなわち軸方向左側に引き寄せられ、可動鉄心84に固定されたCS弁体151が軸方向左方へ共に移動することにより、CS弁体151の大径部151aの軸方向右側面がバルブハウジング110のCS弁座110aから離間し、CS弁150が開放される。
図10では、CS弁体151が最大ストローク位置まで移動し、CS弁150が開弁された状態を示す。
【0065】
これによれば、容量制御弁V2は、CS弁体151がコイルスプリング85によりCS弁150の閉弁方向に付勢されるノーマルクローズタイプとして構成されていることから、上記したように通電時の開放状態において、CS弁体151はコイルスプリング85に抗する電磁力によってのみ位置が保持される構成である。本発明の容量制御弁V2は上述したような可動鉄心84とセンタポスト82との対向形状を備えることから、CS弁体151の開弁位置では軸方向推力が強いので、CS弁体151の開弁位置を確実に維持できるため、本発明の構成はこのようなノーマルクローズタイプにも有用である。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施例では、2つの鉄心である可動鉄心84とセンタポスト82のうち、センタポスト82の凸部90を先細り形状としたが、これに限らず可動鉄心を先細り形状としてセンタポストの内周面と外周面とをそれぞれ軸方向に平行な面としてもよいし、可動鉄心とセンタポストのいずれも先細り形状としてもよい。尚可動鉄心とセンタポストのいずれも先細り形状である場合には、これらが互いに軸方向に対して異なる角度で傾斜していればよい。
【0068】
また、センタポスト82の凸部90の先端の有効磁力面である先端面90a、可動鉄心84の対向面93、センタポスト82の対向面91、可動鉄心84の凸部92先端の有効磁力面である先端面92aは、それぞれ軸方向に対して直交する角度に形成される構成に限らず、直交方向に対してわずかに傾斜していてもよい。
【0069】
また、センタポスト82の凸部90を構成する先細り形状を構成する傾斜面である内周面90bと、センタポスト94の凸部95を構成する先細り形状を構成する傾斜面である外周面95bとは、平面に限らず曲面形状であってもよい。
【0070】
また、容量可変型圧縮機Mの制御室4と吸入室3とを直接連通する連通路および固定オリフィスは設けなくてもよい。
【0071】
また、容量制御弁V,V2は、CS弁の開閉動作を行うことで制御室4内の制御圧力Pcを調整する構成であるが、これに限らず、例えば吐出圧力Pdの吐出流体が通過する吐出ポートと制御圧力Pcの制御流体が通過する制御ポートとの間に設けられるDC弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行う容量制御弁であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ケーシング
2 吐出室
3 吸入室
4a シリンダ
4 制御室
5 回転軸
6 斜板
7 ピストン
9 固定オリフィス
10 バルブハウジング
10a 弁座
50 CS弁
51a 軸方向左端
51 CS弁体
80 ソレノイド
82 センタポスト(固定鉄心)
84 可動鉄心
85 コイルスプリング
86 電磁コイル
90 凸部
90a 先端面(有効磁力面)
90b 内周面
91 対向面(凹部奥端)
92b 外周面
92a 先端面(有効磁力面)
92 凸部
93 対向面(凹部奥端)
94 センタポスト(固定鉄心)
95 凸部
95a 先端面(有効磁力面)
95b 外周面
95c 内周面
96 対向面(凹部奥端)
110 バルブハウジング
110a 弁座
150 CS弁
151 CS弁体
E 有効磁力範囲
M 容量可変型圧縮機
V 容量制御弁
V2 容量制御弁