(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】超音波霧化装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
B05B17/06
(21)【出願番号】P 2023546250
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2022046883
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平松 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】織田 容征
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019468(WO,A1)
【文献】特開2004-358457(JP,A)
【文献】国際公開第2006/095816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液を収容する内部空間を有し、上面にミスト出力用配管が設けられた原料溶液用容器と、
前記原料溶液用容器の下方に設けられた超音波振動子と、
前記ミスト出力用配管を含む前記原料溶液用容器と接触することなく、前記原料溶液用容器の上方に配置される非接触型ミスト供給配管と、
前記原料溶液用容器を下方から支持し、かつ、前記原料溶液用容器、前記超音波振動子及び前記原料溶液を含む測定対象物の重量を測定する重量測定器とを備え、
前記超音波振動子による超音波振動動作によって、前記原料溶液をミスト化して前記内部空間内で原料溶液ミストが生成され、
前記非接触型ミスト供給配管は重複配管部と前記重複配管部以外の非重複配管部とを有し、前記重複配管部は前記ミスト出力用配管の上部領域との間でミスト出力方向に沿った配管重複領域を有し、前記重複配管部と前記上部領域との間に配管重複空間が設けられ、
前記原料溶液ミストは、前記ミスト出力用配管及び前記非接触型ミスト供給配管の内部を前記ミスト出力方向に沿って流れ、前記非接触型ミスト供給配管から出力される、
超音波霧化装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波霧化装置であって、
前記配管重複空間内に前記ミスト出力用配管及び前記非接触型ミスト供給配管に接触することなく設けられ、漏洩防止ガスを前記ミスト出力方向に沿って出力するためのガス出力口を有する漏洩防止ガス供給管をさらに備える、
超音波霧化装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波霧化装置であって、
前記原料溶液用容器に設けられ、輸送ガスを前記内部空間に供給するための輸送ガス用供給管と、
前記ミスト出力用配管に設けられ、希釈ガスを前記ミスト出力用配管内に供給するための希釈ガス用供給管とをさらに備え、
前記輸送ガス及び前記希釈ガスによって、前記原料溶液ミストは前記ミスト出力用配管及び前記非接触型ミスト供給配管の内部を前記ミスト出力方向に沿って流れる、
超音波霧化装置。
【請求項4】
請求項2記載の超音波霧化装置であって、
前記原料溶液用容器に設けられ、輸送ガスを前記内部空間に供給するための輸送ガス用供給管をさらに備え、
前記輸送ガスによる輸送ガス流量と前記漏洩防止ガスによる漏洩防止ガス流量との和が原料溶液ミストの総ガス流量として規定される、
超音波霧化装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のうち、いずれか1項に記載の超音波霧化装置であって、
前記漏洩防止ガス供給管は内部に漏洩防止ガス流通経路を有する円環体構造を呈し、
前記ガス出力口は前記漏洩防止ガス供給管の上部に離散して設けられる複数の部分ガス出力口を含む、
超音波霧化装置。
【請求項6】
請求項5記載の超音波霧化装置であって、
前記漏洩防止ガス流通経路は一定値となる流通経路断面積を有し、
前記複数の部分ガス出力口それぞれの面積は同一に設定され、
前記複数の部分ガス出力口の総面積は前記流通経路断面積より狭い、
超音波霧化装置。
【請求項7】
請求項2から請求項4のうち、いずれか1項に記載の超音波霧化装置であって、
前記漏洩防止ガス供給管は内部に漏洩防止ガス流通経路を有する円環体構造を呈し、
前記ガス出力口は前記漏洩防止ガス供給管の上部に円環状に設けられる単一ガス出力口を含む、
超音波霧化装置。
【請求項8】
請求項7記載の超音波霧化装置であって、
前記漏洩防止ガス流通経路は一定値となる流通経路断面積を有し、
前記単一ガス出力口の面積は前記流通経路断面積より狭い、
超音波霧化装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
4のうち、いずれか1項に記載の超音波霧化装置であって、
前記原料溶液用容器は底面にセパレータカップを有し、
前記超音波霧化装置は、
内部に超音波伝達媒体を収容する水槽をさらに備え、前記水槽及び前記セパレータカップは、前記セパレータカップの底面が前記超音波伝達媒体に浸るように位置決めされ、
前記超音波振動子は前記セパレータカップの下方に位置する前記水槽の底面に設けられ、
前記重量測定器は前記超音波振動子に接触することなく、前記水槽の底面から前記水槽を支持し、
前記測定対象物は、前記セパレータカップ、前記水槽及び前記超音波伝達媒体をさらに含む、
超音波霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波振動子を用いて原料溶液を霧化して原料溶液ミストを得る超音波霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原料溶液を霧化(ミスト化)して得られる原料溶液ミストを基板等の基材上に吹き付け、機能性薄膜を得る成膜装置として、原料溶液に超音波振動を印加して原料溶液ミストを発生させる超音波霧化装置が用いられている。超音波霧化装置において、原料溶液用容器内で生成された原料溶液ミストは輸送ガスにより、原料溶液用容器からノズル等のミスト噴射部に供給され、ミスト噴射部から基材上に原料溶液ミストを吹き付けて薄膜を形成している。このような従来の超音波霧化装置として例えば特許文献1で開示された霧化装置がある。
【0003】
基材上に安定で均一な薄膜を形成するには、超音波霧化装置から供給される原料溶液ミストの量を安定化させる必要があるため、超音波霧化装置から単位時間あたりに供給されるミスト量を正確に把握する必要がある。
【0004】
(第1のミスト供給量測定)
図8は従来の第1の構成である超音波霧化装置300を模式的に示す説明図である。
図8にXYZ直交座標系を記している。以下、
図8を参照して、従来の超音波霧化装置300の構成を説明する。
【0005】
超音波霧化装置300において霧化容器1及びセパレータカップ12により原料溶液用容器を構成している。原料溶液用容器の底面がセパレータカップ12となる。このように、霧化容器1及びセパレータカップ12から構成される原料溶液用容器内に原料溶液15を収容している。
【0006】
霧化容器1の上部と連通してセパレータカップ12の上方に管部1Aが設けられる。管部1Aの配管出口1Xは図示しないミスト供給配管を介して図示しないノズル等のミスト噴射部に接続される。したがって、超音波霧化装置300の原料溶液用容器内で生成された原料溶液ミストMTは管部1A及びミスト供給配管を介してミスト噴射部に供給される。
【0007】
超音波霧化装置300は内部に超音波伝達媒体となる超音波伝達水9を収容する水槽10をさらに有している。水槽10及びセパレータカップ12は、セパレータカップ12の底面が超音波伝達水9に浸るように位置決めされている。
【0008】
セパレータカップ12下方における水槽10の底面に複数の超音波振動子2が設けられている。
図8では2つの超音波振動子2が示されている。複数の超音波振動子2はそれぞれ超音波振動版2Tを有しており、各超音波振動子2は、超音波振動版2Tの平面形状に合致したサイズの超音波W2を超音波振動版2Tから発生する超音波振動動作を行う。
【0009】
霧化容器1の上部側面に輸送ガス用供給管であるガス供給管4が設けられ、ガス供給管4から輸送ガスG4が霧化容器1内の内部空間1Hに供給される。ガス供給管4には図示しないガス制御機器が取り付けられており、ガス制御機器によって霧化容器1に供給される輸送ガスG4の流量が制御される。
【0010】
管部1Aの側面に希釈ガス用供給管であるガス供給管3が設けられ、ガス供給管3から希釈ガスG3が供給される。ガス供給管3には図示しないガス制御機器が取り付けられており、ガス制御機器によって管部1A内に供給される希釈ガスG3の流量が制御される。
【0011】
前述したように、原料溶液15は、霧化容器1とセパレータカップ12とからなる原料溶液用容器内に収容されている。原料溶液用容器の底面がセパレータカップ12となる。
【0012】
さらに、霧化容器1及びセパレータカップ12を含む原料溶液用容器とは独立して原料タンク35が設けられる。原料タンク35は原料溶液用容器に供給するための原料溶液15を内部に収容している。原料溶液用容器と原料タンク35との間に原料溶液供給管31が設けられる。原料溶液供給管31を介して原料タンク35から原料溶液15を原料溶液用容器に供給することができる。
【0013】
原料溶液供給管31には吸引用ポンプ32及び流量計33を含む原料溶液供給機構8が設けられている。
【0014】
さらに、従来の第1の構成である超音波霧化装置300は、原料タンク35及び原料タンク35内の原料溶液15を測定対象物として重量を測定するはかり51を有している。重量測定器であるはかり51は測定対象物の重量を測定重量として測定することができる。
【0015】
なお、原料溶液供給機構8及び原料溶液供給管31は、はかり51の測定対象物から除外される。例えば、吸引用ポンプ32及び流量計33は、はかり51の重量測定に影響しないように、別の設置台上に設置される。ただし、原料溶液供給管31において流量計33から原料タンク35までの部分(以下、「供給管測定対象部分」と略記)は、はかり51の測定対象物に含まれる。
【0016】
しかしながら、上記供給管測定対象部分の重量は一定値となるため、測定対象物に供給管測定対象部分が含まれていても、測定対象物の重量変化を正確に測定することができる。したがって、超音波霧化装置300は、はかり50によって測定される測定対象物の重量変化から、原料溶液用容器への原料溶液15の供給量を推定することができるため、特に問題はない。
【0017】
超音波霧化装置300は、はかり51により測定された測定重量に基づき、原料タンク35から原料溶液用容器に供給された原料溶液15の供給量を求めることができる。
【0018】
すなわち、時刻t1における測定対象物の測定重量を測定重量P1とし、時刻t1後の時刻t2における測定対象物の測定重量を測定重量P2とすると、重量減少量ΔP12(=P1-P2)に基づき、原料タンク35から原料溶液用容器への原料溶液15の供給量を求めることができる。
【0019】
原料溶液15の供給量は、原料溶液ミストMTのミスト供給量を間接的に示す値となる。なぜならば、原料溶液15の供給量は、霧化容器1内の原料溶液15の消費量に合致し、原料溶液15の消費量分、原料溶液ミストMTが発生していると推測できるからである。
【0020】
したがって、超音波霧化装置300は、はかり51により測定された測定対象物の測定重量に基づき得られた原料溶液15の供給量から、原料溶液ミストMTのミスト供給量を求めることができる。
【0021】
このような構成の従来の超音波霧化装置300において、各々が超音波振動版2Tを有する複数の超音波振動子2から超音波振動が印加する超音波振動動作が実行されると、複数の超音波振動子2からの超音波W2の振動エネルギーが超音波伝達水9及びセパレータカップ12を介して、原料溶液用容器内の原料溶液15に伝達される。
【0022】
すると、
図8に示すように、液面15Aから液柱6が立上り、原料溶液15は、液粒及びミストへと移行し、霧化容器1の内部空間1H内で原料溶液ミストMTが得られる。このように、超音波振動子2から超音波W2を印加する超音波振動動作を実行することにより、原料溶液15を霧化して原料溶液ミストMTが生成される。
【0023】
超音波振動動作の実行時に霧化容器1内で生成された原料溶液ミストMTは、ガス供給管4から供給された輸送ガスG4によって、管部1A内をミスト出力方向DMに沿って流れた後、管部1Aの配管出口1Xからミスト供給配管及びミスト噴射部に供給される。
【0024】
従来の超音波霧化装置300に接続させるガス系統は、輸送ガスG4と希釈ガスG3との2系統となる。希釈ガスG3は、ノズル等のミスト噴射部から噴出される原料溶液ミストMTのガス総量を一定化させるためのガスである。
【0025】
複数の超音波振動子2による超音波振動動作によって霧化容器1の内部空間1H内に発生した原料溶液ミストMTは、希釈ガスG3及び輸送ガスG4により霧化容器1外の管部1Aの配管出口1Xから、図示しないミスト供給配管及びミスト噴射部に供給される。霧化容器1の内部空間1H内で発生する原料溶液ミストMTが一定量に保たれている場合、霧化容器1からミスト噴射部に供給される原料溶液ミストMTのミスト量は、ガス供給管4から供給される輸送ガスG4の輸送ガス流量LCにより増減させることができる。
【0026】
一方、原料溶液ミストMTを用いた薄膜の成膜には、安定したミスト量に加えて、ミスト噴射部から出力される原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを一定に保つ必要がある。総ガス流量LTを一定するとミスト噴射部から噴出される原料溶液ミストMTの吹き出し速度を一定にすることができるからである。なお、ミスト噴射部であるノズルの開口部は例えばスリット状に設けられる。
【0027】
前述したように、原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4により霧化容器1の外部に供給される。この外部への原料溶液ミストMTの輸送(搬送)に伴い、原料溶液用容器内の原料溶液15は減少する。ミスト発生量を安定化させるためには、原料溶液用容器内の原料溶液15の量を一定に保つ必要がある。なぜなら、原料溶液ミストMTの発生量は複数の超音波振動子2からの原料溶液15の液面15Aの高さに応じて変動するからである。
【0028】
このため、原料溶液用容器内の原料溶液15の液面15Aの高さを液面検出器19により検知し、液面15Aの高さに基づき原料溶液15の減少量を求め、原料溶液15の減少量に応じて原料タンク35より原料溶液15を適宜供給している。すなわち、原料溶液用容器内の原料溶液15の減少量を補うべく、原料タンク35から原料溶液供給管31を介して原料溶液15が補充される。
【0029】
原料タンク35からの原料溶液15の補充によって、原料溶液用容器内における原料溶液15の液面15Aの高さは一定に保たれるため、原料タンク35からの原料溶液15の供給量は、結果的には原料溶液用容器における原料溶液15の減少量と等しくなる。そこで、超音波霧化装置300では、原料タンク35からの原料溶液15の供給量に基づき、原料溶液ミストMTのミスト発生量を推定している。
【0030】
このように、従来の第1の構成である超音波霧化装置300は、原料タンク35からの原料溶液15の供給量に基づき、原料溶液ミストMTのミスト発生量、すなわち、ミスト噴射部へのミスト供給量を測定し、原料溶液ミストMTの生成プロセスの安定性を図っていた。
【0031】
一方、原料溶液ミストMTのミスト供給量を制御するために、輸送ガス流量LCを増減させた場合、これに伴い原料溶液ミストMTの総ガス流量LTも増減する。
【0032】
したがって、総ガス流量LTを一定に保つために、
図9に示すように、霧化容器1の近くの管部1Aに輸送ガスG4とは別系統の希釈ガスG3をガス供給管3から供給する必要がある。ここで、希釈ガスG3のガス流量を希釈ガス流量LD1とすると、輸送ガス流量LC、希釈ガス流量LD1及び総ガス流量LTの関係は以下の式(1)で決定する。
【0033】
LT=LC+LD1…(1)
なお、輸送ガス流量LC、希釈ガス流量LD1及び総ガス流量LTは、単位時間当たりの体積量を示し、「l(リットル)/min」等の単位で表される。
【0034】
例えば、原料溶液ミストMTのミスト供給量を減少させるために、輸送ガス流量LCをΔLC分減少させた場合、希釈ガス流量LD1をΔLC分増加させることにより、総ガス流量LTを一定に保つことができる。
【0035】
このように、従来の超音波霧化装置300は、希釈ガスG3用の希釈ガス系統を追加することによって、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを輸送ガス流量LCの変化に関係なく一定に保つことができる。
【0036】
(第2のミスト供給量測定)
図9は従来の第2の構成である超音波霧化装置301を模式的に示す説明図である。
図9にXYZ直交座標系を記している。以下、
図9を参照して、従来の第2の構成である超音波霧化装置301の構成を説明する。なお、超音波霧化装置301の構成において、
図8で示した超音波霧化装置300と同様な構成要素は同一の参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0037】
図9で図示を省略しているが、超音波霧化装置301においても、超音波霧化装置300と同様、原料溶液供給管31、原料溶液供給機構8及び原料溶液15を収容する原料タンク35が存在する。ただし、超音波霧化装置301では、原料タンク35及び原料溶液15を測定対象物としたはかり51は設けていない。
【0038】
従来の第2の構成である超音波霧化装置301は、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、水槽10、複数の超音波振動子2、霧化容器1内の原料溶液15、及び、水槽10内の超音波伝達水9を測定対象物として重量を測定するはかり52を有している。重量測定器であるはかり52は測定対象物の重量を測定重量として測定している。
【0039】
なお、ガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31は、はかり52の測定対象物から除外されている。例えば、ガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31に対し複数の支持箇所を設け、複数の支持箇所によってガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31それぞれを吊す態様で安定性良く支持する。その結果、ガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31を、はかり52の測定対象物から除外することができる。
【0040】
なお、重量測定器であるはかり52は、複数の超音波振動子2に接触することなく、支持部材53によって水槽10の底面から水槽10を支持し、かつ、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、複数の超音波振動子2、水槽10、原料溶液15及び超音波伝達水9を含む測定対象物の重量を測定している。
【0041】
そして、超音波霧化装置301では、はかり52により測定された測定重量に基づき、原料溶液用容器内で消費された原料溶液15の消費量を求めることができる。
【0042】
すなわち、時刻t1における測定対象物の測定重量を測定重量P1とし、時刻t1後の時刻t2における測定対象物の測定重量を測定重量P2とすると、重量減少量ΔP12(=P1-P2)から原料溶液用容器の原料溶液15の消費量を求めることができる。この際、原料溶液15の消費量分、原料溶液ミストMTが発生していると推測できる。
【0043】
したがって、従来の第2の構成である超音波霧化装置301は、はかり52により測定された測定対象物の測定重量に基づき測定された原料溶液15の消費量から、原料溶液ミストMTのミスト供給量を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
図8で示した従来の第1の構成である超音波霧化装置300による第1のミスト供給量測定方法は、霧化容器1の内部空間1H内で発生した原料溶液ミストMTがミスト噴射部に供給される結果、原料溶液用容器内の原料溶液15が減少し、これを検知したタイミングで原料タンク35から原料溶液用容器に原料溶液15が供給される原料溶液供給特性を利用している。
【0046】
したがって、超音波霧化装置300による原料タンク35からの原料溶液15の供給量は、原料溶液ミストMTが発生し外部に供給されているその瞬間をとらえた情報ではなく、遅延のある情報となってしまう。このため、超音波霧化装置300が用いる原料溶液15の供給量は、ミスト供給量を一定に制御するための情報としては、応答性に劣るという第1の問題点を有している。
【0047】
一方、
図9で示した従来の第2の構成である超音波霧化装置301による第2のミスト供給量測定方法は、原料溶液用容器内の原料溶液15を含む測定対象物の重量を測定し、その重量変化よりミスト供給量を見積もる方法である。したがって、第2のミスト供給量測定方法は上述した第1の問題点の解消を図っている。
【0048】
しかしながら、霧化容器1に対し、ミストをノズル等のミスト噴射部に供給するためのミスト供給配管が管部1Aの配管出口1Xに接続されており、このミスト供給配管には、耐薬品性や機械的強度が要求されるために、剛性の高い金属製の配管や、フッ素樹脂製の配管が用いられることが多い。そして、ミスト供給配管の少なくとも一部は、はかり52の測定対象物に含まれてしまう。
【0049】
このため、ミスト供給配管は、はかり52の測定重量における重量分散の効果を生むため、従来の超音波霧化装置301は、測定対象物の重量を正確に測定することができない第2の問題点を有している。
【0050】
なお、重量の分散効果とは、ミスト供給配管を管部1Aに取り付ける際に、霧化容器1を
図9の上方に向けた力が霧化容器1を引っ張り上げる力としてかかるため、測定対象物の重量を正確に測定できない特性を意味している。
【0051】
このように、超音波霧化装置300及び超音波霧化装置301を含む従来の超音波霧化装置は、原料溶液ミストMTのミスト供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができないという問題点があった。
【0052】
本開示では、上記のような問題点を解決し、原料溶液ミストのミスト供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる超音波霧化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本開示における超音波霧化装置は、原料溶液を収容する内部空間を有し、上面にミスト出力用配管が設けられた原料溶液用容器と、前記原料溶液用容器の下方に設けられた超音波振動子と、前記ミスト出力用配管を含む前記原料溶液用容器と接触することなく、前記原料溶液用容器の上方に配置される非接触型ミスト供給配管と、前記原料溶液用容器を下方から支持し、かつ、前記原料溶液用容器、前記超音波振動子及び前記原料溶液を含む測定対象物の重量を測定する重量測定器とを備え、前記超音波振動子による超音波振動動作によって、前記原料溶液をミスト化して前記内部空間内で原料溶液ミストが生成され、前記非接触型ミスト供給配管は重複配管部と前記重複配管部以外の非重複配管部とを有し、前記重複配管部は前記ミスト出力用配管の上部領域との間でミスト出力方向に沿った配管重複領域を有し、前記重複配管部と前記上部領域との間に配管重複空間が設けられ、前記原料溶液ミストは、前記ミスト出力用配管及び前記非接触型ミスト供給配管の内部を前記ミスト出力方向に沿って流れ、前記非接触型ミスト供給配管から出力される。
【発明の効果】
【0054】
本開示の超音波霧化装置における非接触型ミスト供給配管は、ミスト出力用配管を含む原料溶液用容器と接触関係を有していないため、比較的容易に非接触型ミスト供給配管を重量測定器の測定対象物から除外することができる。
【0055】
一方、重量測定器の測定対象物に原料溶液用容器内の原料溶液が含まれており、かつ、測定対象物において原料溶液を除く重量は一定値となっている。このため、測定対象物の重量変化から原料溶液の消費量を精度良く求めることができる。加えて、原料溶液の消費量と原料溶液ミストの発生量との間に遅延は生じていない。
【0056】
その結果、本開示の超音波霧化装置は、超音波振動動作の実行期間中において、測定対象物の重量変化から原料溶液の消費量を求め、原料溶液の消費量に基づき原料溶液ミストの供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる。
【0057】
加えて、ミスト出力用配管の重複配管部とミスト出力用配管の上部領域との間に配管重複空間が設けられる。このため、本開示の超音波霧化装置は、原料溶液ミストが配管重複空間を介して非接触型ミスト供給配管外に漏れるミスト漏洩現象を抑制することができる。
【0058】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本開示の実施の形態1である超音波霧化装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1で示した漏洩防止ガス供給管の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図1で示した漏洩防止ガス供給管の第1の構成例の上面構造を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図1で示した漏洩防止ガス供給管の第2の構成例の上面構造を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図1で示した非接触型ミスト供給配管を含むミスト供給系統を模式的に示す説明図である。
【
図6】実施の形態1の超音波霧化装置における原料溶液の流量制御系の構成を模式的に示す説明図である。
【
図7】本開示の実施の形態2である超音波霧化装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図8】従来の第1の構成例である超音波霧化装置を模式的に示す説明図である。
【
図9】従来の第2の構成例である超音波霧化装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
<実施の形態1>
図1は本開示の実施の形態1である超音波霧化装置101の構成を模式的に示す説明図である。
図1にXYZ直交座標系を記している。以下、
図1を参照して、実施の形態1の超音波霧化装置101の構成を説明する。
【0061】
超音波霧化装置101において霧化容器1及びセパレータカップ12により原料溶液用容器を構成している。原料溶液用容器の底面がセパレータカップ12となる。このように、霧化容器1及びセパレータカップ12から構成される原料溶液用容器の内部空間1H内に原料溶液15を収容している。
【0062】
霧化容器1の上面と連通してセパレータカップ12の上方にミスト出力用配管1tが設けられる。すなわち、霧化容器1は上面にミスト出力用配管1tを有している。
【0063】
超音波霧化装置101は内部に超音波伝達媒体となる超音波伝達水9を収容する水槽10をさらに有している。水槽10及びセパレータカップ12は、セパレータカップ12の底面が超音波伝達水9に浸るように位置決めされている。霧化容器1と水槽10との間にセパレータカップ12の端部を挟むことにより、霧化容器1、水槽10及びセパレータカップ12は一体的に構成される。
【0064】
セパレータカップ12の下方における水槽10の底面に複数の超音波振動子2が設けられている。
図1では2つの超音波振動子2が示されている。複数の超音波振動子2はそれぞれ超音波振動版2Tを有しており、各超音波振動子2は、超音波振動版2Tの平面形状に合致したサイズの超音波を超音波振動版2Tから発生する超音波振動動作を行う。
【0065】
霧化容器1の上部側面にガス供給管4が設けられ、輸送ガス用供給管であるガス供給管4から輸送ガスG4が霧化容器1内の内部空間1Hに供給される。ガス供給管4には図示しないガス制御機器が取り付けられており、ガス制御機器によって霧化容器1に供給される輸送ガスG4の流量である輸送ガス流量LCが制御される。
【0066】
ミスト出力用配管1tの側面にガス供給管3が設けられ、希釈ガス用供給管であるガス供給管3から希釈ガスG3が供給される。ガス供給管3には図示しないガス制御機器が取り付けられており、ガス制御機器によってミスト出力用配管1t内に供給される希釈ガスG3の流量である希釈ガス流量LD1が制御される。
【0067】
ミスト出力用配管1tを含む霧化容器1と接触することなく、霧化容器1の上方に非接触型ミスト供給配管20が配置される。非接触型ミスト供給配管20は下流配管部21、テーパー状配管部22及び連結用配管部23を有している。
【0068】
連結用配管部23はミスト出力用配管1tの上部領域A1tを囲むように配置される。したがって、連結用配管部23とミスト出力用配管1tの上部領域A1tとの間でミスト出力方向DMに沿った配管重複領域R12を有し、連結用配管部23と上部領域A1tとの間に配管重複空間SP12が設けられる。このように、連結用配管部23は上部領域A1tとの重複配管部となる。
【0069】
一方、テーパー状配管部22及び下流配管部21は上部領域A1tとの間にミスト出力方向DMに沿った配管重複領域R12を有していない。すなわち、テーパー状配管部22及び下流配管部21は、重複配管部以外の非重複配管部となる。
【0070】
連結用配管部23は内径が一定の図中Z方向に延びて形成される配管部であり、テーパー状配管部22は内径が図中+Z方向に従い狭くなる配管部であり、下流配管部21は内径が一定の図中Z方向に延びて形成される配管部である。テーパー状配管部22の上端の内径が下流配管部21の内径と一致し、テーパー状配管部22の下端の内径が連結用配管部23の内径と一致する。
【0071】
このように、非接触型ミスト供給配管20は、+Z方向に沿って連続的に設けられる連結用配管部23、テーパー状配管部22及び下流配管部21を有している。なお、下流配管部21はミスト出力用配管1tの上方に位置し、ミスト出力用配管1tに対し+Z方向の延長線上に設けられる。
【0072】
連結用配管部23の内径はミスト出力用配管1tの内径より十分に長いため、連結用配管部23はミスト出力用配管1tの上部領域A1tと接触することなく、連結用配管部23と上部領域A1tとの間に配管重複空間SP12が設けられる。一方、非重複配管部であるテーパー状配管部22及び下流配管部21とミスト出力用配管1tとの間には配管重複空間SP12が設けられない。
【0073】
配管重複空間SP12内にミスト出力用配管1t及び非接触型ミスト供給配管20それぞれと接触することなく漏洩防止ガス供給管25が設けられる。
【0074】
図2は漏洩防止ガス供給管25の断面構造及びその周辺を模式的に示す説明図である。
図2にXYZ直交座標系を記している。漏洩防止ガス供給管25は内部に漏洩防止ガス流通経路を有する円環体構造を呈しており、漏洩防止ガス流通経路のXZ断面において円状の流通経路断面領域25dを有している。
【0075】
図2に示すように、漏洩防止ガス供給管25は供給管本体部25m及びガス出力口28を主要構成要素として含み、供給管本体部25mの上部にガス出力口28が設けられている。
【0076】
図2に示すように、漏洩防止ガス制御機器55から外部配管56を介してミスト漏洩防止用ガスG2が非接触型ミスト供給配管20の漏洩防止ガス流通経路に供給される。外部配管56は、例えば、ミスト出力用配管1t及び非接触型ミスト供給配管20それぞれと接触することなく、漏洩防止ガス供給管25の下部に連結される。なお、外部配管56と連結される漏洩防止ガス供給管25の下部にはミスト漏洩防止用ガスG2が流通可能な開口部が設けられる。
【0077】
このような構造の漏洩防止ガス供給管25において、漏洩防止ガス流通経路を流れるミスト漏洩防止用ガスG2をガス出力口28から+Z方向に向けて出力される。
【0078】
また、漏洩防止ガス供給管25は、ミスト出力用配管1t、非接触型ミスト供給配管20及び外部配管56それぞれと接触することなく、漏洩防止ガス供給管25の下方から図示しない支持部材等で安定性良く支持することができる。
【0079】
図3は漏洩防止ガス供給管25の第1の構成例である漏洩防止ガス供給管25Aの上面構造を模式的に示す説明図である。
図3にXYZ直交座標系を記している。
【0080】
同図に示すように、配管重複空間SP12内に漏洩防止ガス供給管25Aは配置され、漏洩防止ガス供給管25Aは供給管本体部25mと複数の部分ガス出力口28Aとを主要構成要素として有している。
【0081】
複数の部分ガス出力口28Aは供給管本体部25mの上部に離散して均等間隔で設けられる。すなわち、漏洩防止ガス供給管25Aは、ガス出力口28として複数の部分ガス出力口28Aを有している。
【0082】
漏洩防止ガス供給管25Aは、漏洩防止ガス制御機器55から外部配管56を介してミスト漏洩防止用ガスG2を漏洩防止ガス流通経路内に取り込み、漏洩防止ガス流通経路内を循環させつつ、供給管本体部25mの上部に設けられる複数の部分ガス出力口28Aから+Z方向に向けてミスト漏洩防止用ガスG2を出力する。すなわち、複数の部分ガス出力口28Aは漏洩防止ガス流通経路に連通している。
【0083】
図4は漏洩防止ガス供給管25の第2の構成例である漏洩防止ガス供給管25Bの上面構造を模式的に示す説明図である。
図4にXYZ直交座標系を記している。
【0084】
同図に示すように、配管重複空間SP12内に漏洩防止ガス供給管25Bは配置され、漏洩防止ガス供給管25Bは供給管本体部25mと単一ガス出力口28Bとを主要構成要素として有している。スリット状の単一ガス出力口28Bは円環構造を呈している。すなわち、漏洩防止ガス供給管25Bはガス出力口28として単一ガス出力口28Bを有している。
【0085】
漏洩防止ガス供給管25Bは、漏洩防止ガス供給管25Aと同様、漏洩防止ガス制御機器55から外部配管56を介してミスト漏洩防止用ガスG2を漏洩防止ガス流通経路内に取り込み、漏洩防止ガス流通経路内を循環させつつ、供給管本体部25mの上部に設けられる単一ガス出力口28Bから+Z方向に向けてミスト漏洩防止用ガスG2を出力する。すなわち、単一ガス出力口28Bは漏洩防止ガス流通経路に連通している。
【0086】
図5は非接触型ミスト供給配管20を含むミスト供給系統を模式的に示す説明図である。同図に示すように、非接触型ミスト供給配管20の配管出口20Xとミスト供給配管5の一端とが連結される。ミスト供給配管5の他端にミスト噴射部であるノズル17が連結される。
【0087】
ノズル17の下方に基材となる基板18が配置される。基板18は例えば図示しない載置台上に載置される。ミスト噴射部であるノズル17に供給された原料溶液ミストMTは、ノズル17の底面に設けられた図示しない開口部から基板18の表面に噴出されることにより、加熱状態の基板18の表面に薄膜を成膜することができる。ノズル17の開口部は例えばスリット状に設けられる。
【0088】
図1では図示省略しているが、実施の形態1の超音波霧化装置101は、
図8で示した超音波霧化装置300と同様、霧化容器1及びセパレータカップ12を含む原料溶液用容器とは独立して設けられる原料タンク35を有している。
図8で示したように、原料タンク35は原料溶液用容器に供給するための原料溶液15を内部に収容している。また、超音波霧化装置101は、
図8で示した超音波霧化装置300と同様に、原料溶液供給管31及び原料溶液供給機構8を有している。ただし、原料タンク35を含む測定対象物の重量を測定するはかり51は設けられていない。
【0089】
実施の形態1の超音波霧化装置101は、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、水槽10、複数の超音波振動子2、原料溶液用容器内の原料溶液15、及び水槽10内の超音波伝達水9を測定対象物として重量を測定するはかり50を有している。重量測定器であるはかり50は測定対象物の重量を測定重量として測定している。
【0090】
実施の形態1の超音波霧化装置101において、例えば、ガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31に対し複数の支持箇所を設け、複数の支持箇所によってガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31それぞれを吊す態様で安定性良く支持する。その結果、ガス供給管3、ガス供給管4及び原料溶液供給管31は、はかり50の測定対象物から除外することができる。
【0091】
なお、重量測定器であるはかり50は、複数の超音波振動子2に接触することなく、支持部材53によって水槽10の底面から水槽10を支持し、かつ、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、複数の超音波振動子2、水槽10、原料溶液15及び超音波伝達水9を含む測定対象物の重量を測定している。このように、はかり50は、原料溶液用容器を下方から支持し、測定対象物の重量を測定している。
【0092】
超音波霧化装置101において、非接触型ミスト供給配管20及び
図5で示したミスト供給系統は、ミスト出力用配管1tを含む霧化容器1と接触関係を有していないため、はかり50の測定対象物から確実に除外することができる。また、漏洩防止ガス供給管25も霧化容器1と接触関係を有していないため、はかり50の測定対象物から確実に除外することができる。
【0093】
実施の形態1の超音波霧化装置101は、はかり50により測定された測定重量に基づき、原料溶液用容器内で消費された原料溶液15の消費量を求めることができる。
【0094】
すなわち、時刻t1における測定対象物の測定重量を測定重量P1とし、時刻t1後の時刻t2における測定対象物の測定重量を測定重量P2とすると、実施の形態1の超音波霧化装置101は、重量減少量ΔP12(=P1-P2)から原料溶液用容器の原料溶液15の消費量を求めることができる。
【0095】
したがって、実施の形態1の超音波霧化装置101は、
図9で示した超音波霧化装置301と同様、はかり50により測定された測定対象物の測定重量の重量変化に基づき得られた原料溶液15の消費量から、原料溶液ミストMTのミスト供給量を求めることができる。
【0096】
図6は実施の形態1の超音波霧化装置101における原料溶液15の流量制御系の構成を模式的に示す説明図である。
図6に示すように、流量制御系は、はかり50、原料溶液供給機構8及び流量制御部60を主要構成要素としている。原料溶液供給機構8は吸引用ポンプ32及び流量計33を含んでいる。
【0097】
流量計33は原料溶液供給管31を流れる流量を測定して、測定した流量を示す流量情報S33を得る。はかり50は測定対象物の重量を測定し重量を示す測定重量情報S50を出力する。
【0098】
流量制御部60は、流量計33より流量情報S33を受け、はかり50より測定重量情報S50を受ける。したがって、流量制御部60は、流量情報S33が示す測定流量によって、原料溶液供給管31を流れる流量を常に認識している。
【0099】
流量制御部60は、測定重量情報S50が示す測定重量の重量変化から、原料溶液用容器内の原料溶液15の消費量を常に求めることができる。なお、原料タンク35から原料溶液用容器の内部空間1Hに原料溶液15に供給されている場合、流量制御部60は、流量情報S33が示す測定流量から原料溶液15の供給量を求め、原料溶液15の供給量を加味して原料溶液15の消費量を正確に求めることができる。
【0100】
したがって、流量制御部60は、流量情報S33及び測定重量情報S50に基づき、内部空間1H内における原料溶液15の消費量を補うように、吸引用ポンプ32の駆動量を指示する制御信号SC32を出力する原料供給制御処理を実行することができる。
【0101】
このように、流量制御部60は、吸引用ポンプ32及び流量計33を含む原料溶液供給機構8に対し、原料溶液用容器に原料溶液15を供給する原料溶液供給動作を制御する原料供給制御処理を実行している。
【0102】
原料溶液供給機構8による原料溶液供給動作が実行されると、内部空間1H内に原料溶液15が供給される。
【0103】
このような構成の実施の形態1の超音波霧化装置101において、各々が超音波振動版2Tを有する複数の超音波振動子2から超音波振動が印加する超音波振動動作が実行されると、複数の超音波振動子2からの超音波の振動エネルギーが超音波伝達水9及びセパレータカップ12を介して、原料溶液用容器内の原料溶液15に伝達される。
【0104】
すると、
図1に示すように、液面15Aから液柱6が立上り、原料溶液15は、液粒及びミストへと移行し、霧化容器1の内部空間1H内で原料溶液ミストMTが得られる。このように、超音波振動子2から超音波を印加する超音波振動動作を実行することにより、原料溶液15を霧化して原料溶液ミストMTを生成することができる。
【0105】
超音波振動動作の実行時に霧化容器1の内部空間1H内で生成された原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4及び希釈ガスG3によってミスト出力用配管1tの内部をミスト出力方向DMに沿って流れる。原料溶液ミストMTは、ミスト出力用配管1tの配管出口1Xから出力された後も、輸送ガスG4、希釈ガスG3及びミスト漏洩防止用ガスG2によって、非接触型ミスト供給配管20の内部をミスト出力方向DMに沿って流れる。その後、原料溶液ミストMTは、非接触型ミスト供給配管20からミスト供給配管5及びノズル17を含むミスト供給系統に供給される。
【0106】
実施の形態1の超音波霧化装置101に接続させるガス系統は、輸送ガスG4と希釈ガスG3とミスト漏洩防止用ガスG2との3系統となる。希釈ガスG3は、ノズル等のミスト噴射部から噴出される原料溶液ミストMTのガス総量を一定化させるためのガスである。ミスト漏洩防止用ガスG2は原料溶液ミストMTが配管重複空間SP12を介して外部に漏洩するミスト漏洩現象を回避させるためのガスである。なお、ミスト漏洩防止用ガスG2は、希釈ガスG3と同様に原料溶液ミストMTのガス総量を一定化させる働きも補助的に有している。
【0107】
超音波振動動作により霧化容器1の内部空間1H内に発生した原料溶液ミストMTは、希釈ガスG3、輸送ガスG4及びミスト漏洩防止用ガスG2により霧化容器1外のミスト出力用配管1t、非接触型ミスト供給配管20及びミスト供給配管5を流れ、ノズル17(ミスト噴射部)に供給される。この際、原料溶液ミストMTは、ミスト出力用配管1t及び非接触型ミスト供給配管20の内部をミスト出力方向DM(+Z方向)に沿って流れる。
【0108】
霧化容器1の内部空間1H内で発生する原料溶液ミストMTが一定量に保たれている場合、霧化容器1からミスト噴射部に供給される原料溶液ミストMTのミスト量は、輸送ガスG4の輸送ガス流量LCにより増減させることができる。
【0109】
一方、前述したように、原料溶液ミストMTを用いた薄膜の成膜には、安定したミスト量に加えて、ミスト噴射部に供給する原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを一定に保つ必要がある。総ガス流量LTを一定するとミスト噴射部から噴出される原料溶液ミストMTの吹き出し速度を一定にすることができる。
【0110】
複数の超音波振動子2による超音波振動動作により内部空間1H内で発生した原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4、希釈ガスG3及びミスト漏洩防止用ガスG2により霧化容器1の外部に供給される。この外部への原料溶液ミストMTの輸送に伴い、原料溶液用容器内の原料溶液15の量は減少する。前述したように、原料溶液ミストMTのミスト発生量を安定化させるためには、原料溶液用容器内の原料溶液15の量を一定に保つ必要がある。
【0111】
原料溶液ミストMTのミスト供給量を制御するために、輸送ガスG4の輸送ガス流量LCを増減させた場合、これに伴い原料溶液ミストMTの総ガス流量LTも増減する。
【0112】
したがって、総ガス流量LTを一定に保つために、
図1に示すように、霧化容器1近くのミスト出力用配管1tにガス供給管3を設け、希釈ガス用供給管であるガス供給管3から輸送ガスG4とは別系統の希釈ガスG3を供給している。ここで、希釈ガスG3のガス流量を希釈ガス流量LD1、ミスト漏洩防止用ガスG2のガス流量を漏洩防止ガス流量LD2とし、輸送ガスG4のガス流量を輸送ガス流量LCとする。この場合、輸送ガス流量LC、希釈ガス流量LD1、漏洩防止ガス流量LD2及び総ガス流量LTの関係は以下の式(2)で決定する。
【0113】
LT=LC+LD1+LD2…(2)
なお、輸送ガス流量LC、希釈ガス流量LD1、漏洩防止ガス流量LD2及び総ガス流量LTは、単位時間当たりの体積量を示し、「l(リットル)/min」等の単位で表される。
【0114】
希釈ガス総流量LDは希釈ガス流量LD1と漏洩防止ガス流量LD2との和となる。例えば、原料溶液ミストMTのミスト供給量を減少させるために、輸送ガス流量LCをΔLC分減少させた場合、希釈ガス流量LD1をΔLC分増加させることにより、総ガス流量LTを一定に保つことができる。この際、漏洩防止ガス流量LD2は一定値で固定しておく。したがって、漏洩防止ガス流量LD2の増減制御は特に必要としない。
【0115】
このように、実施の形態1の超音波霧化装置101は、希釈ガスG3を用いて総ガス流量LTを輸送ガス流量LCの変化に関係なく一定に保つことができる。
【0116】
実施の形態1の超音波霧化装置101における非接触型ミスト供給配管20は、ミスト出力用配管1tを含む霧化容器1と接触関係を有していないため、非接触型ミスト供給配管20を比較的容易に重量測定器であるはかり50の測定対象物から除外することができる。
【0117】
一方、重量測定器であるはかり50の測定対象物に原料溶液用容器内の原料溶液15が含まれており、かつ、測定対象物において原料溶液15を除く重量は一定値となっている。
【0118】
具体的には、霧化容器1、セパレータカップ12、水槽10、複数の超音波振動子2及び超音波伝達水9の総重量は一定値となっている。なお、超音波伝達水9の重量は超音波振動動作によって増減することはない。
【0119】
このため、実施の形態1の超音波霧化装置101は、測定対象物の重量変化から原料溶液用容器内の原料溶液15の消費量を精度良く求めることができる。この際、原料溶液15の消費量と原料溶液ミストMTの発生量との間に遅延は生じていない。
【0120】
その結果、実施の形態1の超音波霧化装置101は、複数の超音波振動子2による超音波振動動作の実行期間中において、測定対象物の重量変化から原料溶液15の消費量を求め、原料溶液15の消費量に基づき原料溶液ミストMTの供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる。
【0121】
ここで、原料溶液供給機構8の原料溶液供給動作によって、原料タンク35から原料溶液用容器の内部空間1H内に原料溶液15が供給されている場合を想定する。
【0122】
この場合、流量制御部60は、原料溶液供給機構8の流量計33から受ける流量情報S33に基づき、原料タンク35から内部空間1Hに供給される原料溶液15の供給量を求め、測定対象物の重量変化から原料溶液15の供給量分を適切に除外することができる。
【0123】
加えて、重複配管部である連結用配管部23とミスト出力用配管1tの上部領域A1tとの間に配管重複空間SP12が設けられる。このため、実施の形態1の超音波霧化装置101は、原料溶液ミストMTが配管重複空間SP12内を-Z方向(ミスト出力方向DMと反対方向)に流れ、配管重複空間SP12を介して非接触型ミスト供給配管20外に漏れるミスト漏洩現象を抑制することができる。
【0124】
さらに、実施の形態1の超音波霧化装置101は漏洩防止ガス供給管25のガス出力口28からミスト漏洩防止用ガスG2をミスト出力方向DMに沿って出力することにより、上記ミスト漏洩現象を確実に回避することができる。
【0125】
なお、実施の形態1の超音波霧化装置101において、配管重複空間SP12内に漏洩防止ガス供給管25を設けない構成を採用しても、配管重複空間SP12の存在により、ミスト漏洩現象の抑制効果を発揮することができる。
【0126】
実施の形態1の超音波霧化装置101は、輸送ガス用供給管であるガス供給管4と希釈ガス用供給管であるガス供給管3とを備えている。このため、輸送ガスG4の輸送ガス流量LCが増減した際、輸送ガス流量LCの増減分を補うように希釈ガス総流量LDを増減させることにより、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを常に一定に保つことができる。実施の形態1では、希釈ガス流量LD1及び漏洩防止ガス流量LD2の合計流量(LD1+LD2)が希釈ガス総流量LDとなる。
【0127】
さらに、実施の形態1の超音波霧化装置101は、漏洩防止ガス供給管25として漏洩防止ガス供給管25Aを採用した場合に以下の効果を奏する。
【0128】
実施の形態1の超音波霧化装置101は、円環体構造の漏洩防止ガス供給管25Aの上部に設けられた複数の部分ガス出力口28Aから分散して複数の部分漏洩防止ガスを出力する。この際、複数の部分漏洩防止ガスの集合体がミスト漏洩防止用ガスG2となる。したがって、実施の形態1の超音波霧化装置101は、円環体構造の漏洩防止ガス供給管25Aからミスト出力方向DMに沿ってミスト漏洩防止用ガスG2を偏りなく出力することができる。
【0129】
また、実施の形態1の超音波霧化装置101は、漏洩防止ガス供給管25として漏洩防止ガス供給管25Bを採用した場合に以下の効果を奏する。
【0130】
円環状の単一ガス出力口28Bから漏洩防止用ガスを出力することにより、実施の形態1の超音波霧化装置101は、単一ガス出力口28B内で偏りを生じさせることなくミスト漏洩防止用ガスG2をミスト出力方向DMに沿って出力することができる。
【0131】
さらに、実施の形態1の超音波霧化装置101は、水槽10及び原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)を含むダブルチャンバー方式を採用し、はかり50の測定対象物はセパレータカップ12、水槽10及び超音波伝達水9(超音波伝達媒体)をさらに含んでいる。したがって、ダブルチャンバー方式を採用した超音波霧化装置101において、原料溶液ミストMTのミスト供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる。
【0132】
<実施の形態2>
図7は本開示の実施の形態2である超音波霧化装置102の構成を模式的に示す説明図である。
図7にXYZ直交座標系を記している。以下、
図7を参照して、実施の形態2の超音波霧化装置102の構成を説明する。なお、
図1で示した実施の形態1の超音波霧化装置101と同様な部分は同一参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0133】
実施の形態2の超音波霧化装置102の霧化容器1の上面に設けられたミスト出力用配管1tの側面に希釈ガス用供給管は設けられていない。
【0134】
一方、実施の形態2の超音波霧化装置102においても、実施の形態1の超音波霧化装置101と同様、配管重複空間SP12に漏洩防止ガス供給管25が設けられる。
【0135】
また、実施の形態2においても、実施の形態1と同様、漏洩防止ガス制御機器55から外部配管56を介してミスト漏洩防止用ガスG2が非接触型ミスト供給配管20の漏洩防止ガス流通経路に供給される。
【0136】
また、実施の形態2の超音波霧化装置102においても、実施の形態1と同様、
図5で示したミスト供給系統を有している。
【0137】
図7では図示省略しているが、実施の形態2の超音波霧化装置102は、
図8で示した超音波霧化装置300と同様、霧化容器1及びセパレータカップ12を含む原料溶液用容器とは独立して原料タンク35が設けられる。また、実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、原料溶液供給管31及び原料溶液供給機構8を有しているが、原料タンク35を含む測定対象物の重量を測定するはかり51は設けられていない。
【0138】
実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、水槽10、複数の超音波振動子2、原料溶液用容器内の原料溶液15、及び水槽10内の超音波伝達水9を測定対象物として重量を測定するはかり50を有している。重量測定器であるはかり50は測定対象物の重量を測定重量として測定している。
【0139】
また、実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、ガス供給管4及び原料溶液供給管31は、はかり50の測定対象物から除外されている。
【0140】
なお、重量測定器であるはかり50は、複数の超音波振動子2に接触することなく、支持部材53によって水槽10の底面から水槽10を支持し、かつ、原料溶液用容器(霧化容器1+セパレータカップ12)、複数の超音波振動子2、水槽10、原料溶液15及び超音波伝達水9を含む測定対象物の重量を測定している。
【0141】
一方、非接触型ミスト供給配管20及び
図5で示したミスト供給系統は、ミスト出力用配管1tを上面に有する霧化容器1と接触関係を有していないため、はかり50の測定対象物から確実に除外することができる。また、漏洩防止ガス供給管25も霧化容器1と接触関係を有していないため、はかり50の測定対象物から確実に除外することができる。
【0142】
実施の形態2の超音波霧化装置102では、実施の形態1と同様、はかり50により測定された測定対象物の測定重量の重量変化から、原料溶液用容器内で消費された原料溶液15の消費量を求めることができる。
【0143】
なお、実施の形態2の超音波霧化装置102においても、実施の形態1と同様、流量制御部60の制御下で、原料溶液供給機構8に対し、原料溶液用容器に原料溶液15を給する原料溶液供給動作を制御する原料供給制御処理を実行している。
【0144】
このような構成の実施の形態2の超音波霧化装置102において、複数の超音波振動子2から超音波振動が印加する超音波振動動作が実行されると、複数の超音波振動子2からの超音波の振動エネルギーが超音波伝達水9及びセパレータカップ12を介して、原料溶液用容器内の原料溶液15に伝達される。
【0145】
すると、
図7に示すように、液面15Aから液柱6が立上り、原料溶液15は、液粒及びミストへと移行し、霧化容器1の内部空間1H内で原料溶液ミストMTが得られる。このように、超音波振動子2から超音波を印加する超音波振動動作を実行することにより、原料溶液15を霧化して原料溶液ミストMTが生成される。
【0146】
超音波振動動作の実行時に霧化容器1の内部空間1H内で生成された原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4によってミスト出力用配管1tの内部をミスト出力方向DMに沿って流れる。原料溶液ミストMTは、ミスト出力用配管1tの配管出口1Xから出力された後も、輸送ガスG4及びミスト漏洩防止用ガスG2によって、非接触型ミスト供給配管20の内部をミスト出力方向DMに沿って流れる。その後、原料溶液ミストMTは、非接触型ミスト供給配管20の配管出口20Xからミスト供給配管5及びノズル17を含むミスト供給系統に供給される。
【0147】
実施の形態2の超音波霧化装置102に接続させるガス系統は、輸送ガスG4とミスト漏洩防止用ガスG2との2系統となる。ミスト漏洩防止用ガスG2は、原料溶液ミストMTが配管重複空間SP12を介して外部に漏洩するミスト漏洩現象を回避させるためのガスである。さらに、実施の形態2の超音波霧化装置102において、ミスト漏洩防止用ガスG2は、原料溶液ミストMTのガス総量を一定化させる唯一の希釈ガスとしても機能する。
【0148】
したがって、実施の形態2の超音波霧化装置102において、漏洩防止ガス制御機器55は漏洩防止ガス流量LD2の増減制御機能を備える必要がある。
【0149】
超音波振動動作により霧化容器1の内部空間1H内に発生した原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4及びミスト漏洩防止用ガスG2により霧化容器1外のミスト出力用配管1t、非接触型ミスト供給配管20及びミスト供給配管5を流れ、ノズル17(ミスト噴射部)に供給される。この際、原料溶液ミストMTは、ミスト出力用配管1t及び非接触型ミスト供給配管20の内部をミスト出力方向DM(+Z方向)に沿って流れる。
【0150】
霧化容器1の内部空間1H内で発生する原料溶液ミストMTが一定量に保たれている場合、霧化容器1から供給される原料溶液ミストMTのミスト量は、輸送ガスG4の輸送ガス流量LCにより増減させることができる。
【0151】
前述したように、原料溶液ミストMTを用いた薄膜の成膜には、安定したミスト量に加えて、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを一定に保つ必要がある。
【0152】
複数の超音波振動子2による超音波振動動作により内部空間1H内で発生した原料溶液ミストMTは、輸送ガスG4により霧化容器1の外部に供給される。この外部への原料溶液ミストMTの輸送に伴い、原料溶液用容器内の原料溶液15の量は減少する。前述したように、ミスト発生量を安定化させるためには、原料溶液用容器内の原料溶液15の量を一定に保つ必要がある。
【0153】
原料溶液ミストMTのミスト供給量を制御するために、輸送ガスG4の輸送ガス流量LCを増減させた場合、これに伴い総ガス流量LTが増減する。
【0154】
したがって、総ガス流量LTを一定に保つために、実施の形態2では、漏洩防止ガス供給管25から出力されるミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして利用している。ここで、ミスト漏洩防止用ガスG2のガス流量を漏洩防止ガス流量LD2とし、輸送ガスG4のガス流量を輸送ガス流量LCとする。この場合、輸送ガス流量LC、漏洩防止ガス流量LD2及び総ガス流量LTの関係は以下の式(3)で決定する。
【0155】
LT=LC+LD2…(3)
なお、輸送ガス流量LC、漏洩防止ガス流量LD2及び総ガス流量LTは、単位時間当たりの体積量を示し、「l(リットル)/min」等の単位で表され、式(3)において、漏洩防止ガス流量LD2が希釈ガス総流量LDとなる。
【0156】
例えば、原料溶液ミストMTのミスト供給量を減少させるために、輸送ガス流量LCをΔLC分減少させた場合、漏洩防止ガス流量LD2をΔLC分増加させることにより、総ガス流量LTを一定に保つことができる。
【0157】
このように、実施の形態2の超音波霧化装置102は、ミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして用いて総ガス流量LTを輸送ガス流量LCの変化に関係なく一定に保つことができる。
【0158】
実施の形態2の超音波霧化装置102における非接触型ミスト供給配管20は、ミスト出力用配管1tを有する霧化容器1との間で接触関係を有していないため、非接触型ミスト供給配管20を比較的容易に重量測定器であるはかり50の測定対象物から外すことができる。
【0159】
一方、重量測定器であるはかり50の測定対象物に原料溶液用容器内の原料溶液15が含まれており、かつ、測定対象物において原料溶液15を除く重量は一定値となっている。
【0160】
その結果、実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、超音波振動動作の実行期間中において、測定対象物の重量変化から原料溶液15の消費量を求め、原料溶液15の消費量に基づき原料溶液ミストMTの供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる。
【0161】
加えて、実施の形態2の超音波霧化装置102は、配管重複空間SP12が設けられ、かつ、漏洩防止ガス供給管25のガス出力口28からミスト漏洩防止用ガスG2をミスト出力方向DMに沿って出力することにより、上記ミスト漏洩現象を確実に回避することができる。
【0162】
実施の形態2の超音波霧化装置102は、輸送ガス用供給管であるガス供給管4及び非接触型ミスト供給配管20を備えている。このため、輸送ガス流量LCが増減した際、輸送ガス流量LCの増減分を補うように、希釈ガス総流量LDを増減させることにより、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを常に一定に保つことができる。実施の形態2では、希釈ガス総流量LDは漏洩防止ガス流量LD2となる。
【0163】
加えて、実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1のガス供給管3に相当する専用の希釈ガス用供給管を設ける必要がない分、実施の形態1の超音波霧化装置101と比較して超音波霧化装置102の装置構成の簡略化を図ることができる。
【0164】
さらに、実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、ダブルチャンバー方式を採用した装置構造において、原料溶液ミストMTのミスト供給量を精度良く求めることができる。
【0165】
実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、漏洩防止ガス供給管25として
図3で示した漏洩防止ガス供給管25Aを採用することができ、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0166】
ただし、実施の形態2の超音波霧化装置102では、ミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして用いるため、ミスト漏洩防止用ガスG2の漏洩防止ガス流量LD2を精度良く制御する必要がある。したがって、漏洩防止ガス供給管25Aに対し以下の寸法設定を行っている。
【0167】
漏洩防止ガス供給管25Aにおいて、漏洩防止ガス流通経路における流通経路断面領域25dは円状を呈し、一定値の流通経路断面積S25を有している。そして、複数の部分ガス出力口28Aはそれぞれ円状に設けられ、径は同一に設定される。すなわち、複数の部分ガス出力口28Aそれぞれの面積S28Aは同一に設定される。ここで、複数の部分ガス出力口28Aの個数をN個とすると、流通経路断面積S25及び面積S28Aは以下の式(4)を満足する。
【0168】
S25>N×S28A…(4)
式(4)に示すように、複数の部分ガス出力口28Aの総面積は流通経路断面積S25より狭い。
【0169】
漏洩防止ガス供給管25Aは式(4)を満足するため、複数の部分ガス出力口28A全体に亘って圧力がかかるため、漏洩防止ガス制御機器55(
図5参照)によって漏洩防止ガス流量LD2を精度良く制御することができる。
【0170】
このように、実施の形態2の超音波霧化装置102において、漏洩防止ガス供給管25Aを採用する場合、複数の部分ガス出力口28Aの総面積を流通経路断面積S25より狭くすることにより、複数の部分ガス出力口28Aそれぞれから均一にミスト漏洩防止用ガスG2を出力させることができる。
【0171】
したがって、実施の形態2の超音波霧化装置102は、漏洩防止ガス供給管25として漏洩防止ガス供給管25Aを採用した場合、漏洩防止ガス流量LD2を安定性良く制御することにより、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを精度良く一定に保つことができる。
【0172】
その結果、漏洩防止ガス供給管25Aを採用した実施の形態2の超音波霧化装置102は、ミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして用いても、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを精度良く一定に保つことができる。
【0173】
実施の形態2の超音波霧化装置102は、実施の形態1と同様、漏洩防止ガス供給管25として
図4で示した漏洩防止ガス供給管25Bを採用することができ、実施の形態2と同様な効果を奏する。
【0174】
ただし、実施の形態2の超音波霧化装置102では、ミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして用いるため、ミスト漏洩防止用ガスG2の漏洩防止ガス流量LD2を精度良く制御する必要がある。したがって、漏洩防止ガス供給管25Bに対し以下の寸法設定を行っている。
【0175】
漏洩防止ガス供給管25Bにおいて、漏洩防止ガス流通経路における流通経路断面領域25dは一定値の流通経路断面積S25を有している。そして、単一ガス出力口28Bは円環状に設けられ、単一ガス出力口28Bは形成面積S28Bを有している。流通経路断面積S25及び形成面積S28Bは以下の式(5)を満足する。
【0176】
S25>S28B…(5)
式(5)に示すように、単一ガス出力口28Bの形成面積S28Bは流通経路断面積S25より狭い。
【0177】
漏洩防止ガス供給管25Bは式(5)を満足するため、単一ガス出力口28Bの全体に亘って圧力がかかるため、漏洩防止ガス制御機器55(
図5参照)によって漏洩防止ガス流量LD2を精度良く制御することができる。
【0178】
このように、実施の形態2の超音波霧化装置102において、漏洩防止ガス供給管25Bを採用する場合、単一ガス出力口28Bの形成面積S28Bを流通経路断面積S25より狭くすることにより、単一ガス出力口28Bの全体から均一にミスト漏洩防止用ガスG2を出力することができる。
【0179】
したがって、実施の形態2の超音波霧化装置102は、漏洩防止ガス供給管25として漏洩防止ガス供給管25Bを採用した場合、漏洩防止ガス流量LD2を安定性良く制御することにより、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを精度良く一定に保つことができる。
【0180】
その結果、漏洩防止ガス供給管25Bを採用した実施の形態2の超音波霧化装置102は、ミスト漏洩防止用ガスG2を唯一の希釈ガスとして用いても、原料溶液ミストMTの総ガス流量LTを精度良く一定に保つことができる。
【0181】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0182】
1 霧化容器
1t ミスト出力用配管
2 超音波振動子
3,4 ガス供給管
5 ミスト供給配管
10 水槽
12 セパレータカップ
15 原料溶液
17 ノズル
20 非接触型ミスト供給配管
21 下流配管部
22 テーパー状配管部
23 連結用配管部
25,25A,25B 漏洩防止ガス供給管
28 ガス出力口
28A 部分ガス出力口
28B 単一ガス出力口
35 原料タンク
50 はかり
G2 ミスト漏洩防止用ガス
G3 希釈ガス
G4 輸送ガス
MT 原料溶液ミスト
SP12 配管重複空間
【要約】
本開示は、原料溶液ミストのミスト供給量を応答性良く、かつ正確に求めることができる超音波霧化装置を提供することを目的とする。本開示の超音波霧化装置(101)は、ミスト出力用配管(1t)を含む霧化容器(1)と接触することなく、霧化容器(1)の上方に非接触型ミスト供給配管(20)を有している。非接触型ミスト供給配管(20)の連結用配管部(23)とミスト出力用配管(1t)の上部領域(A1t)との間に配管重複空間(SP12)が設けられる。配管重複空間(SP12)内にミスト出力用配管(1t)及び非接触型ミスト供給配管(20)それぞれと接触することなく漏洩防止ガス供給管(25)が設けられる。漏洩防止ガス供給管(25)は上部に設けられたガス出力口(28)からミスト漏洩防止用ガス(G2)を出力する。