(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/072 20220101AFI20240219BHJP
【FI】
B01F27/072
(21)【出願番号】P 2018081786
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-03-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】長船 勝己
(72)【発明者】
【氏名】江 文宏
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】松井 裕典
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245130(JP,A)
【文献】特開2017-18883(JP,A)
【文献】特開2011-115731(JP,A)
【文献】米国特許第4981367(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0088907(US,A1)
【文献】米国特許第3559962(US,A)
【文献】特開2000-280700(JP,A)
【文献】米国特許第1734120(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193575(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2463489(GB,A)
【文献】米国特許第3455540(US,A)
【文献】特開2004-66214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F27/00-27/96
B01F35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向における一端部が駆動装置に連結され、前記駆動装置によって回転駆動される棒状の回転部材と、
前記回転部材の軸線に直交するように第1方向に延び、前記回転部材の前記軸線方向における他端部に取り付けられる円柱状の支持部材と、
前記支持部材を回転中心として前記支持部材の周方向に回転できるように前記支持部材に支持される一対の板状の羽根と、を備え、
前記第1方向から見て、前記支持部材は、前記回転部材の前記軸線上に設けられ、
前記一端部が上で前記他端部が下になるように前記回転部材の前記軸線方向が鉛直方向に一致しかつ前記回転部材が停止している停止状態では、前記一対の羽根は、前記第1方向から見て、前記第1方向と前記軸線方向とに直交する第2方向に互いにずれた状態で前記支持部材から垂れ下がり、かつ前記支持部材は、前記一対の羽根の前記第2方向における中心を通り、
前記回転部材が回転することによって、前記一対の羽根は、遠心力によって、前記支持部材を回転中心として互いに離れる方向に回転し、
前記一対の羽根はそれぞれ、前記第1方向から見て、長尺形状を有しかつ短手方向において中心からずれた位置で前記支持部材に支持されており、
前記停止状態において、前記第2方向における前記一方側の前記羽根の重心は、前記回転部材の前記軸線に対して前記第2方向における前記一方側に位置し、前記第2方向における前記他方側の前記羽根の重心は、前記軸線に対して前記第2方向における前記他方側に位置している、攪拌装置。
【請求項2】
前記回転部材は、前記軸線方向に延びる本体部と、前記軸線方向において前記本体部の一方側の端部に設けられかつ前記駆動装置に連結される連結部と、前記軸線方向において前記本体部の他方側の端部から前記軸線方向における前記他方側に突出する一対の支持部とを有し、
前記支持部材は、前記一対の支持部に取り付けられ、
前記停止状態において、
前記一対の羽根のうち前記第2方向における一方側の羽根が前記支持部材を回転中心として前記第2方向における他方側に回転すること、および前記一対の羽根のうち前記第2方向における他方側の羽根が前記支持部材を回転中心として前記第2方向における前記一方側に回転することは、各羽根の長手方向における一方側の端部が前記本体部の前記軸線方向における前記他方側の端面に接触することによって規制されている、請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
各羽根は、長手方向における中心よりも一方側に、前記支持部材に支持される基部を有し、かつ前記長手方向における中心よりも他方側に攪拌部を有し、
各羽根を前記長手方向から見た場合に、前記攪拌部は前記基部に対して捻られている、請求項1または2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記一端部側から前記他端部側を見た場合に時計回りに回転するように前記駆動装置によって回転駆動され、
前記羽根を前記長手方向において前記一方側から前記他方側に見た場合に、前記攪拌部は、前記基部に対して反時計回りの方向に捻られている、請求項3に記載の攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を攪拌するために用いられる攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を攪拌するために、種々の攪拌装置が用いられている。例えば、特許文献1には、容器内の液体を攪拌するための攪拌装置が開示されている。特許文献1に開示された攪拌装置は、回転軸と、回転軸の端部に設けられたボス部と、ボス部に取り付けられた3つの攪拌羽根とを有している。ボス部には、放射状に延びる3つの溝が形成されており、各溝に支軸が設けられている。3つの攪拌羽根はそれぞれ、ボス部の各溝に設けられた支軸に支持されている。
【0003】
特許文献1の攪拌装置では、容器内に攪拌羽根を配置する際には、回転軸を停止させて3つの攪拌羽根を垂れ下がらせる。これにより、容器の開口部が小さい場合でも、3つの攪拌羽根を容器の開口部に容易に通すことができ、3つの攪拌羽根を液体中に配置することができる。
【0004】
また、特許文献1の攪拌装置では、3つの攪拌羽根を液体中に配置した状態で回転軸を回転させることによって、遠心力によって3つの攪拌羽根を起き上がらせることができる。その状態で回転軸の回転を継続することによって、3つの攪拌羽根によって容器内の液体を攪拌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された攪拌装置では、攪拌羽根ごとに支軸を設ける必要がある。この場合、部品点数が増加するので、攪拌装置の製造コストが増加するとともに、製造効率が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、製造が容易でかつ低コストの攪拌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の攪拌装置を要旨とする。
【0009】
(1)軸線方向における一端部が駆動装置に連結され、前記駆動装置によって回転駆動される棒状の回転部材と、
前記回転部材の軸線に直交するように第1方向に延び、前記回転部材の前記軸線方向における他端部に取り付けられる円柱状の支持部材と、
前記支持部材を回転中心として前記支持部材の周方向に回転できるように前記支持部材に支持される一対の板状の羽根と、を備え、
前記一端部が上で前記他端部が下になるように前記回転部材の前記軸線方向が鉛直方向に一致しかつ前記回転部材が停止している場合には、
前記一対の羽根は、前記第1方向から見て、前記第1方向と前記軸線方向とに直交する第2方向に互いにずれた状態で前記支持部材から垂れ下がり、かつ前記支持部材は、前記一対の羽根の前記第2方向における中心を通るように設けられ、
前記回転部材が回転することによって、前記一対の羽根は、遠心力によって、前記支持部材を回転中心として互いに離れる方向に回転する、攪拌装置。
【0010】
(2)前記回転部材の前記軸線方向が鉛直方向に一致しかつ前記一対の羽根が前記支持部材から垂れ下がっている状態において、
前記一対の羽根のうち前記第2方向における一方側の羽根が前記支持部材を回転中心として前記第2方向における他方側に回転すること、および前記一対の羽根のうち前記第2方向における他方側の羽根が前記支持部材を回転中心として前記第2方向における前記一方側に回転することは規制されている、上記(1)に記載の攪拌装置。
【0011】
(3)前記羽根はそれぞれ第1方向から見て長尺形状を有し、
各羽根は、長手方向における中心よりも一方側に、前記支持部材に支持される基部を有し、かつ前記長手方向における中心よりも他方側に攪拌部を有し、
各羽根を前記長手方向から見た場合に、前記攪拌部は前記基部に対して捻られている、上記(1)または(2)に記載の攪拌装置。
【0012】
(4)前記回転部材は、前記一端部側から前記他端部側を見た場合に時計回りに回転するように前記駆動装置によって回転駆動され、
前記羽根を前記一方側から前記他方側に見た場合に、前記攪拌部は、前記基部に対して反時計回りの方向に捻られている、上記(3)に記載の攪拌装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造が容易でかつ低コストの攪拌装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る攪拌装置を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る攪拌装置を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る攪拌装置を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る攪拌装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る攪拌装置について図面を参照しつつ説明する。
図1~
図4は、本発明の一実施形態に係る攪拌装置100を示す図である。なお、
図2は、
図1に示す攪拌装置100を紙面右側から見た図であり、
図4は、
図3に示す攪拌装置100を紙面右側から見た図である。
図1~
図4においては、攪拌装置100の軸線Xを一点鎖線で示している。本明細書では、軸線Xに平行な方向を軸線方向という。本実施形態に係る攪拌装置100は、例えば、図示しない容器に収容された液体を攪拌する際に利用される。
【0016】
図1~
図4に示すように、攪拌装置100は、棒状の回転部材10と、円柱状の支持部材12と、一対の板状の羽根14とを備えている。回転部材10、支持部材12、および一対の板状の羽根14はそれぞれ、例えば、金属材料からなる。回転部材10は、本体部10a、連結部10b、および一対の支持部10cを有している。本体部10aは、回転部材10の軸線方向における中央部に設けられ、連結部10bは、回転部材10の軸線方向における一端部に設けられ、一対の支持部10cは、回転部材10の軸線方向における他端部に設けられている。
【0017】
本体部10aは、円柱形状を有しかつ軸線方向に延びるように設けられている。連結部10bは、図示しない駆動装置に連結される。駆動装置としては、インパクトレンチ等の公知の電動工具を用いることができる。本実施形態では、回転部材10は、駆動装置によって回転駆動される。
【0018】
なお、
図1および
図2には、連結部10bが上で一対の支持部10cが下になるように軸線方向が鉛直方向に一致しかつ停止している状態の回転部材10を示している。また、
図3および
図4には、連結部10bが上で一対の支持部10cが下になるように軸線方向が鉛直方向に一致しかつ回転している状態の回転部材10を示している。
図3および
図4には、回転部材10の回転方向Rが示されている。本実施形態では、回転部材10は、連結部10b側から一対の支持部10c側を見た場合に時計回りに回転するように、駆動装置によって回転駆動される。
【0019】
一対の支持部10cは、本体部10aから軸線方向における他方側に向かって突出するように設けられている。
図2および
図4に示すように、本実施形態では、一対の支持部10cは、軸線方向に直交する第1方向D1において互いに離れて設けられている。支持部材12は、軸線Xに直交するように第1方向D1に対して平行に延びかつ一対の支持部10cに固定されている。なお、
図1および
図3には、軸線方向と第1方向D1とに直交する第2方向D2が示されている。
【0020】
一対の羽根14は、一対の支持部10cの間において、支持部材12に支持されている。具体的には、各羽根14は、第1方向から見て、支持部材12を回転中心として支持部材12の周方向に回転できるように、支持部材12に支持されている。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、連結部10bが上で一対の支持部10cが下になるように軸線方向が鉛直方向に一致しかつ回転部材10が停止している場合に、一対の羽根14は、第1方向D1から見て第2方向D2に互いにずれた状態で支持部材12から自重によって垂れ下がる。また、上記の状態において、支持部材12は、一対の羽根14の第2方向D2における中心を通るように設けられている。このように、本実施形態では、
図1に示す状態において、一対の羽根14は、第1方向から見て一部分が互いに重なった状態で、支持部材12から下方に垂れ下がる。一方、
図3に示すように、駆動装置によって回転部材10を回転駆動した場合には、一対の羽根14は、遠心力によって、支持部材12を回転中心として互いに離れる方向に回転する。以下、
図1に示す一対の羽根14の状態を、一対の羽根14が閉じた状態といい、
図3に示す一対の羽根14の状態を、一対の羽根14が開いた状態という。
【0022】
図1および
図3に示すように、本実施形態では、各羽根14は、第1方向から見て長尺形状を有している。各羽根14は、長手方向における中心よりも一方側に、支持部材12に回転可能に支持される基部14aを有し、長手方向における中心よりも他方側に攪拌部14bを有している。
【0023】
図4に示すように、各羽根14を長手方向から見た場合に、攪拌部14bは基部14aに対して捻られている。本実施形態では、羽根14を上記一方側(攪拌部14b側)から上記他方側(基部14a側)に見た場合に、攪拌部14bは、基部14aに対して反時計回りの方向に捻られている。
【0024】
本実施形態では、
図1に示す状態において、第2方向D2における一方側の羽根14が第2方向D2における他方側に回転すること、および第2方向D2における他方側の羽根14が第2方向D2における一方側に回転することは規制されている。具体的には、
図1に示す状態から、第2方向D2における一方側の羽根14が第2方向D2における他方側に回転しようとすると、基部14aが本体部10aの端面10d(
図4参照)に接触する。これにより、上記一方側の羽根14の回転が規制される。同様に、第2方向D2における他方側の羽根14が第2方向D2における一方側に回転しようとすると、基部14aが本体部10aの端面10dに接触する。これにより、上記他方側の羽根14の回転が規制される。
【0025】
以上のように、本実施形態では、回転部材10を停止させることによって、一対の羽根14を閉じた状態にすることができ、回転部材10を回転させることによって、一対の羽根14を開いた状態にすることができる。したがって、液体を収容する容器の開口部が小さい場合でも、回転部材10を停止させることによって、一対の羽根14を開口部に容易に通すことができる。これにより、一対の羽根14を液体内に配置することができる。また、羽根14を液体内に配置した状態で回転部材10を回転させることによって、開いた状態の一対の羽根14によって、液体を攪拌することができる。
【0026】
また、本実施形態では、一つの支持部材12によって一対の羽根14を支持することができるので、部品点数の増加を抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、
図1に示す状態において、一対の羽根14は第2方向D2に互いにずれており、かつ支持部材12は一対の羽根14の第2方向D2における中心を通るように設けられている。このため、本実施形態では、
図1に示す状態において、第2方向D2における一方側の羽根14の重心が、軸線Xに対して上記一方側に位置し、第2方向D2方向における他方側の羽根14の重心が、軸線Xに対して上記他方側に位置する。これにより、
図1に示す状態から回転部材10を回転させることによって、一対の羽根14を遠心力によって容易に開いた状態にすることができる。すなわち、本実施形態では、羽根14の重心を軸線X上からずらすために羽根14に特別な加工を施す必要がない。したがって、羽根14の加工が簡単になる。
【0028】
以上の結果、本実施形態によれば、攪拌装置100の製造が容易になりかつ製造コストを抑制できる。
【0029】
また、本実施形態では、
図1に示す状態において、第2方向D2における一方側の羽根14が第2方向D2における他方側に回転すること、および第2方向D2における他方側の羽根14が第2方向D2における一方側に回転することは規制されている。これにより、回転部材10を回転駆動した際に、一対の羽根14を容易に開いた状態にすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、各羽根14を長手方向から見た場合に、攪拌部14bは基部14aに対して捻られている。このように攪拌部14bを構成することによって、液体をより効率的に攪拌することができる。
【0031】
特に、本実施形態では、羽根14を攪拌部14b側から基部14a側に見た場合に、攪拌部14bは、基部14aに対して反時計回りの方向に捻られている。これにより、本実施形態では、羽根14を攪拌部14b側から基部14a側に見た場合に、攪拌部14bは、軸線Xに対して反時計回りの方向に傾斜する。さらに、回転部材10は、連結部10b側から一対の支持部10c側を見た場合に時計回りに回転するように駆動される。これにより、各羽根14の攪拌部14bは、軸線Xにおける他方側(
図3および
図4において紙面下方側)に液体を送るように液体を攪拌することができる。その結果、容器の底部近傍の液体を効率的に攪拌することが可能になる。
【0032】
なお、詳細な説明は省略するが、連結部10b側から一対の支持部10c側を見た場合に反時計回りに回転するように回転部材10を駆動して液体を攪拌する場合には、羽根14を攪拌部14b側から基部14a側に見て、攪拌部14bが基部14aに対して時計回りの方向に捻られていることが好ましい。これにより、各羽根14の攪拌部14bは、軸線Xにおける他方側に液体を送るように液体を攪拌することができる。その結果、容器の底部近傍の液体を効率的に攪拌することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、製造が容易でかつ低コストの攪拌装置が得られる。
【符号の説明】
【0034】
10 回転部材
10a 本体部
10b 連結部
10c 支持部
12 支持部材
14 羽根
14a 基部
14b 攪拌部
100 攪拌装置