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特許7438662T細胞依存性二重特異的抗体をアッセイするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】T細胞依存性二重特異的抗体をアッセイするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240219BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240219BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALN20240219BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20240219BHJP
   C12Q 1/42 20060101ALN20240219BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
G01N33/53 N
C12Q1/02
C12Q1/34
C12Q1/37
C12Q1/42
C12Q1/66 ZNA
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2018538107
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 US2017014974
(87)【国際公開番号】W WO2017132279
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】62/286,862
(32)【優先日】2016-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】チアン, クオイン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ピン イー
(72)【発明者】
【氏名】キャリー, ケンドール
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】渡戸 正義
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-508163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0203579(US,A1)
【文献】国際公開第2015/142314(WO,A1)
【文献】ZHI-JIE CHENG JEY et al.,“Development of a Robust Reporter-based T cell Activation Assay for Therapeutic Biologics in Immunotherapy”,[ONLINE],2014年5月2日,p.1,URL,https://cdn.technologynetworks.com/TN/Resources/PDF/development-of-a-robust-reporter-based-t-cell-activation-assay-for-therapeutic-biologics-in.pdf
【文献】PETE STECHA et al.,“Development of a robust reporter-based T-cell activation assay for bispecific therapeutic antibodies in immunotherapy”,CANCER RESEARCH,2015年8月1日,Volume75,Issue15 Supplement,Abstract 5439,p.1-4,URL,https://aacrjournals.org/cancerres/article/75/15_Supplement/5439/604651/Abstract-5439-Development-of-a-robust-reporter
【文献】DONGHAI WANG et al.,“CD3/CD28 Costimulation-Induced NF-κB Activation Is Mediated by Recruitment of Protein Kinase C-θ, Bcl10, and IκB Kinase β to the Immunological Synapse through CARMA1”, MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, 2004年1月, Vol.24, No.1,p.164-171,URL, https://www.researchgate.net/publication/8961790_CD3CD28_Costimulation-Induced_NF-kB_Activation_Is_Mediated_by_Recruitment_of_Protein_Kinase_C-th_Bcl10_and_IkB_Kinase_b_to_the_Immunological_Synapse_through_CARMA1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物中のT細胞依存性二重特異性抗体(TDB)を検出するための方法であって、前記二重特異性抗体が、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含み、前記方法が、
細胞及び標的細胞の集団を、前記組成物と接触させることを含み、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターであり、前記標的細胞が、前記標的抗原を発現し、
前記レポーターの発現が、TDBの存在を示す、方法。
【請求項2】
T細胞の集団を、0.01ng/mL~50ng/mLの範囲の濃度で前記TDBを含む組成物と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物中のTDBの量を定量化するための方法であって、前記TDBが、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含み、前記方法が、
細胞及び標的細胞の集団を、前記組成物の1つ以上の濃度で、前記組成物と接触させることであって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターであり、前記標的細胞が、前記標的抗原を発現する、前記接触させることと、
前記レポーターの発現を、前記T細胞及び標的細胞の集団を異なる濃度の精製したTDBと接触させることにより生じる標準曲線と抗体濃度の関数として相関させることと、を含む、方法。
【請求項4】
T細胞の集団を、0.01ng/mL~100ng/mLの範囲の濃度で前記TDBを含む組成物と接触させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記標準曲線が、前記T細胞及び標的細胞の集団を、0.01ng/mL~100ng/mLの範囲である異なる濃度の精製したTDBと接触させることにより生じる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比が、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞集団が、1×10~1×10細胞または1×10~5×10細胞の範囲である、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TDBの特異性を決定するための方法であって、前記TDBが、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含み、前記方法が、
a)細胞及び試験細胞の集団を、前記TDBと接触させることであって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターであり、前記試験細胞が、前記標的抗原を発現しない、前記接触させることと、
b)細胞及び標的細胞の集団を、前記TDBと接触させることであって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターであり、前記標的細胞が、前記標的抗原を発現する、前記接触させることと、
パートa)中の前記試験細胞の存在下の前記レポーターの発現を、パートb)中の標的細胞の存在下の前記レポーターの発現と比較することと、を含み、前記試験細胞対前記標的細胞の前記レポーターの発現の比が、前記TDBの前記特異性を示す、方法。
【請求項9】
ステップa)の前記細胞集団におけるT細胞対試験細胞の比、及び/またはステップb)の前記細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比が、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)及び/またはb)の前記細胞集団が、1×10~1×10細胞及び/または1×10~5×10細胞の範囲である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)のT細胞及び試験細胞の集団ならびにステップb)のT細胞及び標的細胞の集団を、0.01ng/mL~100ng/mLの範囲の濃度で前記TDBを含む組成物と接触させる、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
試験細胞の集団が標的抗原を発現するかどうかを決定するための方法であって、
a)前記試験細胞の集団をT細胞の集団と接触させることであって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターである、前記接触させることと、
b)記試験細胞の集団及びT細胞の集団をTDBと接触させることであって、前記TDBが、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含む、前記接触させることと、を含み、
前記レポーターの発現が、前記試験細胞によって発現される前記標的抗原の存在を示す、方法。
【請求項13】
前記試験細胞が、腫瘍細胞、免疫細胞、または血管細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試験細胞が、T細胞を含まない、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
T細胞対試験細胞の比が、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
試験細胞及びT細胞の集団が、1×10~1×10細胞または1×10~5×10細胞の範囲である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
試験細胞及びT細胞の集団が、0.01ng/mL~100ng/mLの範囲の濃度でTDBと接触される、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記レポーターが、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ルシフェラーゼが、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記T細胞活性化に応答する応答要素が、NFκBからのT細胞活性化応答要素を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記T細胞の集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞の集団である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記T細胞の集団が、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞の集団である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的抗原が、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
a)前記標的抗原がHER2受容体であり、前記標的細胞及び/または試験細胞がBT-474細胞であるか、
b)前記標的抗原がHER2受容体であり、前記標的細胞及び/または試験細胞がSKBR3細胞であるか、
c)前記標的抗原がCD20であり、前記標的細胞及び/または試験細胞がWil2-S細胞であるか、または
d)前記標的抗原がCD79bであり、前記標的細胞及び/または試験細胞がBJAB細胞である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記レポーターが、前記細胞を前記組成物またはTDBと接触させた1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、20、または24時間後のうちの任意の1つ以上に検出される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
二重特異性抗体を含む組成物中のTDBの検出のためのキットであって、前記二重特異性抗体が、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含み、キットが、T細胞活性化に応答する応答要素に作動可能に連結したレポーターを含む操作されたT細胞、及び前記標的抗原を発現する標的細胞を含み、前記T細胞活性化に応答する応答要素がNFκBプロモーターである、キット。
【請求項27】
TDBアッセイ標準物及び/またはTDB対照をさらに含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記標的抗原が、標的細胞の表面上に発現される、請求項26または27に記載のキット。
【請求項29】
前記レポーターが、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである、請求項26~28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記ルシフェラーゼが、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記T細胞活性化に応答する応答要素が、NFκBからのT細胞活性化応答要素を含む、請求項26~30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
前記T細胞の集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞の集団である、請求項26~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
前記T細胞の集団が、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞の集団である、請求項26~32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
前記標的抗原が、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である、請求項26~33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
キットが標的抗原を発現する標的細胞を含み、かつ/または標的抗原が標的細胞の表面上に発現され、
a)前記標的抗原がHER2受容体であり、前記標的細胞がBT-474細胞であるか、
b)前記標的抗原がHER2受容体であり、前記標的細胞がSKBR3細胞であるか、
c)前記標的抗原がCD20であり、前記標的細胞がWil2-S細胞であるか、または
d)前記標的抗原がCD79bであり、前記標的細胞がBJAB細胞である、請求項26~34のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月25日に出願された特許仮出願第62/286,862号の利益を主張するものであり、その内容物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:146392036240SEQLIST.TXT、記録日:2017年1月20日、サイズ:17KB)。
【0003】
本発明は、CD3サブユニット等のT細胞受容体複合体サブユニットに結合する抗原結合断片、及び標的抗原に結合する抗原結合断片を有する多特異性抗体の調製物を分析するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、組成物中のTDBを検出する、組成物中のTDBの量を定量化する、TDBの効力及び/または特異性を決定する、または細胞集団が標的抗原を発現するかどうかを決定するための方法を提供する。組成物及びキットもまた、企図される。
【背景技術】
【0004】
T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)は、標的細胞上に発現する標的抗原、及びT細胞上に発現するT細胞受容体(TCR)複合体サブユニット(例えば、CD3ε等のCD3サブユニット)に結合するように設計された二重特異的抗体である。標的抗原及びTCR複合体サブユニット(TCS)の両方の細胞外ドメインへの二重特異性抗体の結合は、標的細胞に対するT細胞の動員をもたらし、T細胞活性化及び標的細胞枯渇をもたらす。標的抗原特異的及びTCS特異的(例えば、CD3特異的)抗原結合断片のある特定の組み合わせは、標的細胞の存在下でT細胞を特異的に活性化するためのものよりもさらに有効である。TDBの弱い活性化は、ほとんど治療的有用性を有しない。オフターゲット細胞の存在下でT細胞の非特異的活性化は、炎症性サイトカインの望ましくない放出をもたらし得る。したがって、安全かつ効果的な臨床薬物候補の開発を支援するために、様々なTDBによって媒介されるT細胞活性化の程度及び特異性をアッセイすることが望ましい。
【0005】
最適なT細胞活性化アッセイは、正確、精密、かつ使いやすく、短い応答時間ならびに自動化及びハイスループットのスケーリングに対する適切性を有するべきである。いくつかの従来のバイオアッセイは、分泌型サイトカインに対しては、例えば、PBMC系の方法、FACS系の方法、及びELISAが利用可能である。残念ながら、これらのアッセイの多くは、極めて可変な結果をもたらし、及び/または時間を要す。本明細書に記載の新規のTDBアッセイは、T細胞活性化を検出するために、標的細胞及びレポーターT細胞を用いた細胞系アプローチを使用し、TDB抗原結合断片の両方のそれらの標的への同時結合を検出するためにELISA系架橋結合アッセイによって検証される。
【0006】
特許出願及び刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)によって媒介されるT細胞活性化を検出するための方法であって、TDBは、標的抗原結合断片及びT細胞受容体複合体サブユニット(TCS)結合断片を含む、方法、ならびにそれらの様々な使用を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、組成物中のTDBの検出方法が提供され、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)標的抗原を発現する標的細胞を含む、細胞集団と接触させることを含み、レポーターの発現は、組成物中のTDBの存在を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0009】
上述の組成物中のTDBの検出方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちのいずれかの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0010】
上述の組成物中のTDBの検出方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させたほぼ1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物中のTDBの量の定量化方法が提供され、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることと、レポーターの発現を、T細胞及び標的細胞の集団を異なる濃度の精製した参照TDBと接触させることにより生じる標準曲線と抗体濃度の関数として相関させることと、を含む。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0012】
上述の組成物中のTDBの量の定量化方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、標準曲線は、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mLの範囲である複数の濃度の精製した参照TDBと接触させることにより生じる。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約0.01ng/ml、0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、750ng/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、または500μg/mLのうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約3、4、5、6、7、8、9、10倍、または10倍を超える濃度である。
【0013】
上述の組成物中のTDBの量の定量化方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0014】
いくつかの実施形態では、TDBによって媒介されるT細胞活性化の特異性の決定方法が提供され、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、a)TDBを含む組成物を、i)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにii)標的抗原を発現しない試験細胞を含む細胞集団と接触させることと、b)TDBを含む組成物を、i)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにii)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることと、パートa)中の試験細胞の存在下のレポーターの発現を、パートb)中の標的細胞の存在下のレポーターの発現と比較することと、を含み、試験細胞のレポーターの発現と標的細胞のレポーターの発現との比率は、標的細胞に対するTDBの特異性を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、ステップa)の細胞集団におけるT細胞対試験細胞の比、及び/またはステップb)の細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、ステップa)の細胞集団におけるT細胞対試験細胞の比、及び/またはステップb)の細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、ステップa)及び/またはb)の細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、ステップa)及び/またはb)の細胞集団は、約1×10~約5×10の範囲である。
【0015】
上述のTDBによって媒介されるT細胞活性化の特異性の決定方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ステップa)のT細胞及び試験細胞の集団ならびにステップb)のT細胞及び標的細胞の集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちのいずれかの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0016】
上述のTDBによって媒介されるT細胞活性化の特異性の決定方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0017】
いくつかの実施形態では、標的抗原結合断片及びTCS結合断片を含む二重特異性抗体を含む組成物中のTDBの検出用のキットが提供され、本キットは、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターを含む操作されたT細胞を含む。いくつかの実施形態では、キットは、参照TDBアッセイ標準物(既知の濃度の精製したTDB)及び/またはTDB対照をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、標的抗原を発現する標的細胞を含む組成物をさらに含む。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、キットは、上述の方法のうちのいずれかにおいて使用される。
【0018】
いくつかの実施形態では、試験細胞の集団が標的抗原を発現するかどうかを決定する方法が提供され、本方法は、a)試験細胞の集団を、T細胞の集団と接触させることであって、T細胞がT細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含む、接触させることと、b)T細胞及び試験細胞の集団を、TDBと接触させることであって、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含む、接触させることと、を含み、レポーターの発現は、試験細胞によって発現される標的抗原の存在を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、試験細胞の集団は、腫瘍細胞、免疫細胞、または血管細胞の集団である。いくつかの実施形態では、試験細胞の集団は、T細胞を含まない。いくつかの実施形態では、T細胞対試験細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、T細胞対試験細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団は、約1×10~約1×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団は、約1×10~約5×10個の細胞を含む。
【0019】
試験細胞の集団が上述の標的抗原を発現するかどうかを決定する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちのいずれかの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0020】
試験細胞の集団が上述の標的抗原を発現するかどうかを決定する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物に接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】標的抗原に対して結合特異性を有する第1のアームと、CD3サブユニットに対して特異性を有する第2のアームとを有する、例示的なT細胞依存性二重特異性抗体(TDB)の概略図を示す。
図2】例示的なTDBによって媒介されるレポーターT細胞活性化の概略図を示す。レポーターT細胞は、NFκB応答要素によって動かされるホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有し、TDBによってレポーターT細胞と標的腫瘍細胞とを架橋することによって媒介されるT細胞活性化後に発現される。
図3A図3Aは、抗CD3ホモ二量体によるT細胞活性化が、レポーター遺伝子アッセイを用いてモニタリングされ得ることを示す。ヒトJurkat CD4T細胞株は、様々なT細胞受容体(TCR)に応答する転写応答要素(AP-1、NFAT、及びNFκB)によって駆動されるホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作され、安定した細胞プールが選択され、プールが、10μg/mLの精製した抗CD3ホモ二量体による4時間の処理への応答に対して評価された。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)がプロット化され、最高応答が、Jurkat/NFκBルシフェラーゼの安定したプールから観察された。
図3B図3Bは、Jurkat/NFκBルシフェラーゼの安定したクローンを示す。
図4A図4A図4Bは、精製した抗CD3ホモ二量体が、標的細胞の存在または不在下でT細胞を活性化し得ることを示す。図4Aは、T細胞を活性化する可能性がある精製したCD20 TDB及び精製した抗CD3ホモ二量体の比較を示す。NFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkat T細胞は、標的抗原を発現する細胞の存在下でCD20 TDBによって用量依存的に活性化される。CD20 TDBは、標的抗原を発現する細胞株の存在下でJurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞を活性化する。精製したCD20 TDBは、共刺激標的抗原を発現する細胞の存在下で、精製した抗CD3ホモ二量体よりも1000倍以上活性である。
図4B図4A図4Bは、精製した抗CD3ホモ二量体が、標的細胞の存在または不在下でT細胞を活性化し得ることを示す。図4Bは、標的抗原を発現する細胞(四角)の不在下で、CD20 TDBがJurkat/NFκBルシフェラーゼ細胞を活性化しないが、精製した抗CD3ホモ二量体がNFκB依存性ルシフェラーゼ活性(ひし形)を用量依存的に誘導することを示す。
図5】適切な標的細胞(それぞれ、Wil2-S、BT-474、及びBJAB細胞)の存在下で、αCD20/CD3、αHER2/CD3、及びαCD79b/CD3 TDBによるT細胞活性化が、Jurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイを用いてモニタリングされ得ることを示す。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)が、TDB濃度の関数としてプロット化された。
図6A図6A図6Bは、T細胞活性化のマーカーCD69及びCD25が、αCD20/αCD3 TDBによるインキュベーションに応答して用量依存性様式において増加したことを示す。図6Aは、様々な濃度で、例示的なαCD20/αCD3 TDB、BCTC4465AによってT細胞活性化のフローサイトメトリー分子を示す。
図6B図6A図6Bは、T細胞活性化のマーカーCD69及びCD25が、αCD20/αCD3 TDBによるインキュベーションに応答して用量依存性様式において増加したことを示す。図6Bは、フローサイトメトリーの結果の定量化を示す。
図7】CD69及びCD25の陽性表面発現に対してJurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ系レポーターアッセイまたはフローサイトメトリーのいずれかを用いて測定された、αCD20/αCD3 TDB BCTC4465AによるT細胞活性化に対する用量反応曲線の比較を示す。
図8】HER2エピトープに特異的なTDBの第1のアームと、CD3εエピトープに特異的なTDBの第2のアームとを有する、ELISA系架橋結合アッセイにおける例示的なTDBの概略図を示す。HER2エピトープを含有するHER2タンパク質の細胞外断片は、プレートの表面上にコーティングされ、抗HER2/CD3ε TDBによってCD3εエピトープを含有するビオチン標識されたCD3εペプチドで架橋され、結合は、ストレプトアビジン共役HRPによって検出される。
図9】T細胞活性化に対する効力が、BT-474標的細胞の存在下で、異なるCD3結合親和性を有する2つのαHER2/CD3 TDB(αHER2/CD3 Vx及びαHER2/CD3 WT)の間で異なり、Jurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞系レポーターアッセイを用いてモニタリングされたことを示す。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)が、TDB濃度の関数としてプロット化された。
図10A図10A図10Bは、T細胞活性化に対する効力が、応力なし、40℃で2週間、40℃で4週間を含む、異なる熱応力条件に供されたαHER2/CD3 TDBサンプルの間で異なり、Jurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞系レポーターアッセイ及びELISA系架橋結合アッセイを用いてモニタリングされたことを示す。図10Aは、相対的な効力が各アッセイを用いて計算され、試験した各条件についてプロット化したことを示す。
図10B図10A図10Bは、T細胞活性化に対する効力が、応力なし、40℃で2週間、40℃で4週間を含む、異なる熱応力条件に供されたαHER2/CD3 TDBサンプルの間で異なり、Jurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞系レポーターアッセイ及びELISA系架橋結合アッセイを用いてモニタリングされたことを示す。図10Bは、各アッセイを用いて計算された相対的効力間の線状相関を示す。
図11】FcRH5を発現するEJM標的細胞の存在下でαFcRH5/CD3 TDBのT細胞活性化に対する効力が、Jurkat/NFκBホタルルシフェラーゼ細胞系レポーターアッセイを用いてモニタリングされたことを示す。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)が、TDB濃度の関数としてプロット化された。
図12】ELISA系架橋アッセイを用いてαFcRH5/CD3 TDBのT細胞活性化に対する効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)によって媒介されるT細胞活性化を検出するための方法、及び/またはTDBの効力を決定するための方法であって、TDBは、標的抗原に結合する抗原結合断片、及びCD3サブユニット(例えばT細胞上に発現されたCD3ε)等のT細胞受容体複合体サブユニット(TCS)に結合する抗原結合断片を含む、方法、ならびにこれらの様々な使用を提供し、とりわけ、組成物中のTDBを検出することと、組成物中のTDBの量を定量化することと、TDBの特異性を決定することと、細胞集団が標的抗原を発現するかどうかを決定することと、を含む。
【0023】
他の態様では、本発明は、TDBによって媒介されるT細胞活性化を検出するためのキット、及び/またはTDBの効力を決定するためのキットを提供し、本キットは、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターを含む操作されたT細胞を含み、任意に、TDB、参照TDB、対照TDB、及び/または標的細胞を含む。
【0024】
I.定義
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で同義に使用される。ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語はまた、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分もしくは毒素とのコンジュゲーション等によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当該技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。本明細書で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、抗体を具体的に包含する。
【0025】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)とは、ポリペプチドがその天然環境下で存在するよりもさらに純粋な形態で存在するように、及び/または実験室条件下で最初に合成及び/または増幅されたときにポリペプチドの純度が増加することを意味する。純度は、相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味しない。
【0026】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子を含む。同様の様式で、「アゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニストまたはアンタゴニストの分子としては、具体的には、アゴニストまたはアンタゴニストの抗体または抗体断片、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列変異形等が挙げられる。ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストの特定方法は、ポリペプチドを候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させることと、ポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することとを含み得る。
【0027】
対象となる抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的「と結合する」ポリペプチドは、ポリペプチドが、抗原を発現する細胞または組織を標的とするのに診断及び/または治療剤として有用であり、他のポリペプチドと有意には交差反応しないように十分な親和性でその抗原と結合するものである。このような実施形態では、ポリペプチドの「非標的」ポリペプチドへの結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降法(RIA)によって決定されるように、ポリペプチドのその特定の標的ポリペプチドへの結合の約10%未満である。
【0028】
標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープの「特異的結合」、またはそれに「特異的に結合する」、またはそれに「特異的な」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有しない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較して、分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的、例えば、過剰な非標識標的に類似である対照分子との競合によって決定され得る。この場合、プローブへの標識した標的の結合が過剰な非標識標的によって競合的に阻害された場合に、特異的結合が示される。
【0029】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を呈する場合に限りにおける抗体断片を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書で抗体と同義に使用される。
【0030】
抗体は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子であり、それらの構造は全て免疫グロブリン折り畳みに基づく。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合して機能的抗体を形成する2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖はそれ自体、「定常」(C)領域及び「可変」(V)領域を含む。V領域が抗体の抗原結合特異性を決定する一方で、C領域は、構造的支持を提供し、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体または抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性は、特定の抗原に特異的に結合する抗体の能力である。
【0031】
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴によって決定される。可変性は、可変ドメインの110アミノ酸長にわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長である「超可変領域」(HVR)と呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離した15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変の伸長部からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0032】
各V領域は、典型的には、3つのHVR、例えば、相補性決定領域(各々が「超可変ループ」を含有する「CDR」)、及び4つのフレームワーク領域を含む。したがって、特定の所望の抗原に対して実質的な親和性で結合するために必要とされる最小の構造単位である抗体結合部位は、典型的には、3つのCDRと、適切な立体配座でのCDRを保持し提示するためにそれらの間に散在する少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域とを含む。古典的な4つの鎖抗体は、Vドメイン及びVドメインが協働して定義される抗原結合部位を有する。ラクダ及びサメ抗体等のある特定の抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。単一ドメインの操作された免疫グロブリンは、VとVとの間に協働がない場合、結合部位が重鎖または軽鎖のみによって形成されるように調製され得る。
【0033】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が抗体の中で大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等には分布していない。これは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0034】
「超可変領域」(HVR)という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」(例えば、Vでは、ほぼ、残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)、ならびにVでは、ほぼ、31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)からのアミノ酸残基(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、及び/または「超可変ル-プ」からのこれらの残基(例えば、Vでは、残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、ならびにVでは、26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含み得る。
【0035】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0036】
本明細書で使用される、「T細胞依存性二重特異性」抗体または「TDB」は、細胞上に発現する標的抗原に結合する、及び例えば、T細胞上に発現するT細胞受容体複合体サブユニット(例えば、CD3ε)への結合によってT細胞に結合するように設計された二重特異性抗体である。
【0037】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号の実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995));一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、一本鎖抗体分子;抗体断片から形成される多重特異性抗体(例えば、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3、(scFV)4-Fc、ジ-scFv、バイ-scFv、またはタンデム(ジ、トリ)-scFvが挙げられるが、これらに限定されない);及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTEs)が挙げられる。
【0038】
抗体のパパイン消化は、各々、単一の抗原結合部位を持つ、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称を持つ、残った「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有して、依然として抗原と交差結合することが可能であるF(ab’)断片を生じる。
【0039】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、V-V二量体の表面上に抗原結合部位を画定する。集合的に、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な超可変領域を3つのみ含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有するが、全結合部位よりも親和性が低い。
【0040】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab’の表記である。F(ab’)抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
【0041】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0042】
抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2にさらに分割され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
【0043】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にする。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
【0044】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内(V~V)で軽鎖可変ドメイン(V)に接続した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成することができる。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、WO 93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)にさらに詳述されている。
【0045】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を具体的に包含する。かかる多重特異性抗体としては、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗体(V単位がポリエピトープ特異性を有する)、2つ以上のV及びVドメインを有する抗体(各V単位が異なるエピトープに結合する)、2つ以上の単一可変ドメインを有する抗体(各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する)、完全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重機能性抗体、共有結合している抗体断片または共有結合していない抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」とは、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
【0046】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、一般に、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与し得る抗体を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ科動物(ラマ及びラクダ)ならびに軟骨魚類(例えば、テンジクザメ)由来の抗体、ならびにヒト及びマウス抗体からの組換え方法から得られる抗体が挙げられる(Nature(1989)341:544-546、Dev Comp Immunol(2006)30:43-56、Trend Biochem Sci(2001)26:230-235、Trends Biotechnol(2003):21:484-490、WO2005/035572、WO03/035694、Febs Lett(1994)339:285-290、WO00/29004、WO02/051870)。
【0047】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る想定される変異体を除いて、同一であり、及び/または同じエピトープに結合し、かかる変異体は、一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されない点でも有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本明細書に提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature 256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ法によって作製されても、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載される技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0048】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望される生物学的活性を呈する限りはそのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書において対象となるキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、またはカニクイザル等の旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体が挙げられる(米国特許第5,693,780号)。
【0049】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、上述のFR置換(複数可)を除いて、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、かつFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。
【0050】
本明細書では、「無傷抗体」は、重及び軽可変ドメイン、ならびにFc領域を含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、無傷抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0051】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、続いて、いくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0052】
「裸抗体」は、細胞毒性部分等の異種分子または放射標識に複合されない(本明細書に定義される)抗体である。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方調節が挙げられる。
【0054】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを行ってもよい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価してもよい。
【0055】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。いくつかの実施形態では、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球を含み、PBMC及びNK細胞が好ましい。
【0056】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させる分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の成分の、同種抗原と複合した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイが行われ得る。
【0057】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。いくつかの実施形態では、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び代替的にスプライシングされた形態も含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。将来的に特定されるものも含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。この用語は、母体IgGsの胎児への移行に関与している新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0058】
「混入物」とは、所望のポリペプチド生成物とは異なる物質を指す。本発明のいくつかの実施形態では、混入物は、ポリペプチドの荷電変異体を含む。本発明のいくつかの実施形態では、混入物は、抗体または抗体断片の荷電変異体を含む。本発明の他の実施形態では、混入物としては、宿主細胞物質、例えばCHOP;浸出されたタンパク質A;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体、または誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性混入物;細胞培養培地成分等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、混入物は、例えば限定されるものではないが、細菌性細胞、例えばE.coli細胞、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、真菌細胞からの宿主細胞タンパク質(HCP)であってもよい。
【0059】
本明細書に使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種ポリペプチドの結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である所望の結合特異性を有する(すなわち、「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的に、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、またはIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD、またはIgM等の任意の免疫グロブリンから得られ得る。
【0060】
「レポーター分子」とは、本明細書で使用される場合、その化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析によって特定可能なシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア、または放射性核種を含有する分子(すなわち、放射性同位体)、及び化学発光分子のいずれかである。
【0061】
本明細書で使用される場合、「本質的に同じ」は、値またはパラメータが、著しい影響により変更されていないことを示す。例えば、カラム出口のクロマトグラフィー移動相のイオン強度は、イオン強度が著しく変化していない場合、移動相の最初のイオン強度と本質的に同じである。例えば、初期イオン強度の10%、5%、または1%以内であるカラム出口のイオン強度は、初期イオン強度と本質的に同じである。
【0062】
本明細書において「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(かつ記述する)。例えば、「約X」を言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0063】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「または」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書に記載の本発明の態様及び変形は、態様及び変形「からなる」及び/または「本質的にからなる」を含むことが理解される。
【0064】
II.細胞系レポーターアッセイ
本発明は、標的細胞の存在下のTDB媒介性T細胞活性化を検出する、及び/またはTDBの効力を決定するための細胞系アッセイを提供し、TDBの1つの抗原結合断片は、TCR複合体サブユニット(例えば、CD3サブユニット、例えばCD3ε)に結合し、T細胞を活性化し、他の抗原結合断片は、標的細胞上の標的抗原に結合する。細胞系アッセイは、とりわけ、組成物中のTDBを検出する、組成物中のTDBの量を定量化する、TDBの特異性を決定する、及び細胞集団が標的抗原を発現するかどうかを決定するのに有用である。
【0065】
A.T細胞活性化
TDBの作用の機序は、標的抗原発現細胞を特異的に減損することである。TDBの、T細胞受容体(TCR)複合体サブユニット、またはTCS、(CD3ε等)、及び標的細胞の表面上に発現した標的抗原への同時結合は、TCRのクラスタリングをもたらし、T細胞活性化及び標的細胞の細胞毒性の減損をもたらす。診療所に多くのTDBが存在しており(αCD3/αCD19、αCD3/αCD20、αCD3/αHER2;de Gast GC,et al.,1995,Cancer Immunol Immunother.40(6):390-396、Buhmann R,et al.,2009 Bone Marrow Transplant.43(5):383-397、Chan JK,et al.,2006,Clin Cancer Res.12(6):1859-1867)、新しいバージョンのTDB様二重特異性が、臨床的有効性を改善するために評価されている(Chames,P.and Baty,D.2009,MAbs 1(6):539-547、Fournier,P.and Schirrmacher,V.,2013,BioDrugs 27(1):35-53)。TDBの二重特異性は、正しい標的発現細胞が存在するという条件で、CD4及びCD8T細胞系統の両方を活性化することができる。CD4T細胞の活性化は、サイトカイン遺伝子発現(IL-2等)の誘導をもたらし、CD8T細胞の拡張及び増殖を含む他の免疫細胞の動員及び活性化を引き起こす。CD8CTLの活性化は、TDB媒介性細胞架橋を介して標的細胞を用いた免疫学的シナプス様構造の形成をもたらし、パーフォリン及びグランザイム(A、B、C;CTLサブタイプに応じて)の転写の誘導、脱顆粒、及び標的細胞とエフェクター細胞との間の「免疫学的シナプス」様の界面にわたるパーフォリン及びグランザイムの局在的な放出を引き起こし、標的細胞の死滅をもたらす(Pores-Fernando,Pores-Fernando AT,Zweifach A,2009,Immunol Rev.,231(1):160-173、Pipkin,ME,et al.,2010,Immunol Rev.,235(1):55-72)。エフェクター細胞媒介性細胞死滅は、数時間シナプスの安定化を必要とする比較的遅いプロセスであり、完全な細胞死滅を確実にするためにprf1遺伝子及びグランザイム遺伝子の転写依存性活性化を必要とする。あるいは、標的細胞のCTL媒介性死滅はまた、Fas媒介性アポトーシスによって生じることも示されている(Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441-1450)。prf1、grB、及びFas媒介性細胞死滅機構の転写調節は、B細胞枯渇を媒介するのに必要とされる遺伝子のプロモーター内に位置するNFAT、NFκB、及びSTATエンハンサー要素に依存する(Pipkin,ME,et al.,2010,Immunol Rev.,235(1):55-72、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441-1450)。標的細胞とエフェクター細胞との間の相互作用の強度(免疫学的シナプス)は、シグナル伝達が、標的細胞とエフェクター細胞との間の相互作用を安定化及び維持するためにも必要とされる他の共刺激性分子に依存している(Krogsgaard M,et al.,2003,Semin Immunol.15(6):307-315、Pattu V,et al.,2013,Front Immunol.,4:411、Klieger Y,et al.,2014,Eur J Immunol.44(1):58-68、Schwartz JC,et al.,2002,Nat Immunol.3(5):427-434)。レポーター遺伝子アッセイを用いて、標的遺伝子の転写誘導のモニタリングは、したがって、TDBによってT細胞の活性化を観察するために、作用機序(MoA)に反映する代替のアッセイシステムである。
【0066】
T細胞活性化は、免疫学的シナプスを形成するための抗原提示細胞の接触部位での細胞表面タンパク質及びシグナル伝達分子の空間的及び動力学的再構築を必要とする。TCR及び共刺激受容体(CD28、CD40、ICOS等)及びリガンドの活性化及びシグナル伝達の協調は、T細胞活性化に必要とされる期間及びシグナル伝達の両方を調節する。MHC/ペプチド複合体として抗原提示細胞(APC)の表面上に提示された抗原は、T細胞の表面上にTCRによって認識され得る。MHC及びTCRのクラスタリングは、T細胞活性化の調節において重要な役割を果たす、共刺激及び免疫調節性受容体の発現に応じて、T細胞活性化をもたらし得るシグナル伝達経路の動員及び活性化を開始する。CD3ε等のTCR複合体のサブユニットに結合する抗体(OKT3;Brown,WM,2006,Curr Opin Investig Drugs 7:381-388、Ferran,C et al.,1993 Exp Nephrol 1:83-89)は、TCRを架橋結合し、それによって、免疫学的シナプスでTCRのクラスタリングを模倣することによってT細胞活性化を誘導し、インビトロでTCRシグナル伝達を研究するために、臨床的に、及び長年代理活性剤として使用することができる。共刺激を有しない抗CD3抗体によるTCRクラスタリングは、T細胞を弱く活性化するが、依然として、T細胞活性化及び制限されたサイトカイン転写及び放出を引き起こす。抗CD3媒介性シグナル伝達は、NFAT、AP1、及びNFκBを含む、いくつかの転写因子を活性化することが示されている(MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767-773、Shapiro VS et al.,1998,J.Immunol.161(12)6455-6458、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441-1450)。共刺激は、シグナル伝達の調節を介してサイトカイン放出のレベル及び種類を調節し、サイトカイン発現の転写調節、及びT細胞活性化反応の性質に影響を及ぼす(Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767-773)。TDBは、T細胞と標的抗原発現細胞との間に形成された架橋の結果としてT細胞の細胞表面上にTCRをクラスター化する。T細胞活性化によって転写誘導され得るレポーター遺伝子の発現を推進する転写調節要素は、どの事象が標的細胞の存在及び不在下でTDBによって活性化されるかを決定するためにT細胞株において試験された。
【0067】
B.レポーター分子
レポーターアッセイは、細胞中のレポーターの発現の誘導をモニタリングすることにより、刺激の生物学的特徴を可能にする分析方法である。刺激は、典型的には遺伝子転写の調節を含む細胞応答をもたらす細胞内シグナル伝達経路の誘導をもたらす。いくつかの例では、細胞シグナル伝達経路の刺激は、タンパク質産生をもたらすRNA転写の開始に必要であるDNAの上流非コード領域への転写因子の調節及び動員による遺伝子発現の調節をもたらす。刺激に応答する遺伝子転写及び翻訳の制御は、細胞増殖、分化、生存、及び免疫応答等の生物学的応答の大部分を誘発するために必要とされる。エンハンサーとも呼ばれる、DNAのこれらの非コード領域は、遺伝子転写の効率を調節する転写因子のための認識要素、ひいては、刺激に応答する細胞により生じるタンパク質の量及び種類である特定の配列を含有する。レポーターアッセイにおいて、刺激に応答するエンハンサー要素及び最小プロモーターは、標準分子生物学方法を使用してレポーター遺伝子の発現を促進するように操作される。次いで、DNAは、刺激に特異的に応答する全ての機序を含有する細胞にトランスフェクトされ、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性のレベルは、生物学的応答の代替的測定値として測定される。
【0068】
いくつかの態様では、本発明は、TCS特異的(例えば、CD3サブユニット特異的、例えば、CD3ε特異的)抗原結合断片及び標的抗原特異的抗原結合断片を含むTDBを、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)それらの表面上で標的抗原を提示する標的細胞を含む細胞集団と接触させることによってTDB媒介性T細胞活性化の検出方法を提供し、そのため、レポーターの発現は、T細胞活性化を示す。レポーター分子は、任意の分子であり得、そのため、アッセイが、刺激に応答する細胞によって産生されるその分子の量を測定するために開発され得る。例えば、レポーター分子は、刺激(例えば、T細胞活性化)に応答するレポーター遺伝子によってコードされるレポータータンパク質であり得る。レポーター分子の一般的に使用された例としては、基質の触媒作用の副生成物として実験的に測定され得る光を発する、ルシフェラーゼ等の発光タンパク質が挙げられるが、これに限定されない。ルシフェラーゼは、多くの供給源に由来する発光タンパク質のクラスであり、これには、ホタルルシフェラーゼ(Photinus pyralis種から)、sea pansyからのRenillaルシフェラーゼ(例えば、Renilla reniformis)、click beetleルシフェラーゼ(例えば、Pyrearinus termitilluminansから)、marine copepod Gaussiaルシフェラーゼ(例えば、Gaussia princepsから)、及びdeep sea shrimpナノルシフェラーゼ(例えば、Oplophorus gracilirostrisから)が含まれる。ホタルルシフェラーゼは、ルシフェリンのオキシルシフェリンへの酸化を触媒し、光の光子の放出をもたらす一方、Renilla等の他のルシフェラーゼは、セレンテラジンの酸化を触媒することによって発光する。異なるルシフェラーゼ形態及び変異体から放出された光の波長は、異なるフィルター系を用いて読み取り可能であり、これにより多重化を容易にする。発光の量は、細胞内で発現するルシフェラーゼの量に比例し、ルシフェラーゼ遺伝子は、生物学的応答を引き起こすための刺激の効力を定量的に評価するために感受性レポーターとして使用されている。レポーター遺伝子アッセイは、基本的な研究、HTS選別を含む広範囲の目的及び有効性のために長年の間使用されている(Brogan J,et al.,2012,Radiat Res.177(4):508-513、Miraglia LJ,et al.,2011,Comb Chem High Throughput Screen.14(8):648-657、Nakajima Y,and Ohmiya Y.2010,Expert Opin Drug Discovery,5(9):835-849、Parekh BS,et al.,2012,Mabs,4(3):310-318、Svobodova K,and Cajtham L T.,2010,Appl Microbiol Biotechnol.,88(4):839-847)。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞中のTDB媒介性T細胞活性化を検出するための細胞系アッセイを提供する。いくつかの実施形態では、レポーター構築体は、ルシフェラーゼを含む。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ(例えば、Photinus pyralis種から)、sea pansyからのRenillaルシフェラーゼ(例えば、Renilla reniformis種から)、click beetleルシフェラーゼ(例えば、Pyrearinus termitilluminans種から)、marine copepod Gaussiaルシフェラーゼ(例えば、Gaussia princeps種から)、またはdeep sea shrimp ナノルシフェラーゼ(例えば、Oplophorus gracilirostris種から)である。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞中のルシフェラーゼの発現は、TDBによるT細胞の活性化を示す。他の態様では、レポーター構築体は、β-グルクロニダーゼ(GUS);蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、もしくはこれらの変異体;クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT);β-ガラクトシダーゼ;β-ラクタマーゼ;または分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードする。
【0070】
いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーを含む制御配列に動作可能に連結したレポーター分子(例えば、ルシフェラーゼ等のレポータータンパク質)をコードする核酸を含む操作されたT細胞が提供される。プロモーター及び/またはエンハンサー配列は、T細胞活性化に応答するために、当技術分野で既知のもののうちのいずれかの中から選択され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、T細胞ゲノムに安定的に組み込まれる。
【0071】
いくつかの実施形態では、1つ以上のT細胞活性化応答エンハンサー要素に動作可能に連結した最小プロモーターの制御下のレポーター分子をコードする核酸を含む操作されたT細胞が提供される。いくつかの実施形態では、最小プロモーターは、チミジンキナーゼ(TK)最小プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)からの最小プロモーター、SV40由来の最小プロモーター、または最小伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターである。いくつかの実施形態では、最小プロモーターは、最小TKプロモーターである。いくつかの実施形態では、最小プロモーターは、最小CMVプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化応答エンハンサー要素は、NFAT(活性化T細胞の核因子)エンハンサー、AP-1(Fos/Jun)エンハンサー、NFAT/AP1エンハンサー、NFκBエンハンサー、FOXOエンハンサー、STAT3エンハンサー、STAT5エンハンサー、またはIRFエンハンサーである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化応答エンハンサー要素は、タンデム反復(例えば、ほぼ2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のタンデム反復のうちのいずれか)として配置される。T細胞活性化応答エンハンサー要素は、レポーターをコードする配列に対して5’または3’に位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、T細胞活性化応答エンハンサー要素は、最小プロモーターからの5’部位に位置する。いくつかの実施形態では、T細胞活性化応答エンハンサー要素は、NFκBエンハンサーである。いくつかの実施形態では、レポーター分子は、ホタルまたはRenillaルシフェラーゼ等のルシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、核酸は、T細胞ゲノムに安定的に組み込まれる。
【0072】
C.細胞
いくつかの実施形態では、TCS特異的(例えば、CD3特異的、例えば、CD3ε特異的)抗原結合断片及び標的抗原特異的抗原結合断片を含むTDBを、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、及びb)それらの表面上で標的抗原を提示する標的細胞を含む細胞集団と接触させることによってTDBによって媒介されるT細胞活性化の検出方法が提供され、そのため、レポーターの発現が、T細胞活性化を示す。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8T細胞である。さらに他の実施形態では、T細胞は、CD4/CD8T細胞である。いくつかの実施形態では、CD4及び/またはCD8T細胞は、IFN-γ、TNF-α、及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの放出の増加を呈する。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、不死化T細胞の集団(例えば、不死化T細胞株)である。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、TCR/CD3εを発現した、不死化CD4及び/またはCD8細胞の集団である。いくつかの実施形態では、T細胞は、Jurkat細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CTLL-2 T細胞である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明のT細胞は、T細胞受容体を含む。T細胞受容体は、いくつかのタンパク質の複合体として存在する。T細胞受容体はそれ自体、独立したT細胞受容体アルファ及びベータ(TCRα及びTCRβ)遺伝子によりコードされた2つの別個のペプチド鎖からなる。複合体中の他のタンパク質は、CD3タンパク質:CD3ε、CD3γ、CD3δ、及びCD3ζを含む。CD3タンパク質は、CD3εγ及びCD3εδヘテロ二量体、ならびにCD3ζホモ二量体として見出される。CD3ζホモ二量体により、これらのタンパク質の周囲でのシグナル伝達複合体の凝集が可能になる。いくつかの実施形態では、TDBの1つのアームが、T細胞受容体複合体に結合する。いくつかの実施形態では、TDBは、CD3に結合する。いくつかの実施形態では、TDBは、CD3εサブユニットに結合する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明は、TDB媒介性T細胞活性化を検出及び/または定量化するために細胞系アッセイにおいて使用するためのT細胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、CD4T細胞である。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、CD8T細胞である。さらに他の実施形態では、組成物のT細胞は、CD4/CD8T細胞である。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、不死化T細胞である。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、Jurkat細胞である。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、CTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、組成物のT細胞は、T細胞活性化に応答するレポーター構築物を含む。いくつかの実施形態では、レポーター構築体は、ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、レポーター(例えば、ルシフェラーゼ)をコードするポリヌクレオチドは、T細胞活性化応答調節要素(例えば、T細胞活性化応答プロモーター及び/またはエンハンサー)に作動可能に連結させる。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明は、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーを含む制御配列に作動可能に連結したレポーター分子をコードするT細胞活性化レポーター構築体で操作されたT細胞の組成物を提供する。いくつかの実施形態では、レポーター分子は、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP等)、アルカリホスファターゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答エンハンサー要素を含む。いくつかの実施形態では、T細胞の組成物は、CD4T細胞及び/またはCD8T細胞を含む。いくつかの実施形態では、T細胞は、Jurkat細胞またはCTLL-2細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、NFκBプロモーターに作動可能に連結したルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むJurkat細胞である。
【0076】
いくつかの実施形態では、レポーターエフェクター細胞はJurkat-Dual(商標)細胞(InvivoGen)である。Jurkat-Dual(商標)細胞は、5個のコンセンサスNF-κB転写応答要素及び3個のc-Rel結合部位の制御下のLucia(商標)分泌ルシフィルーゼ遺伝子を含む。細胞はまた、ISG54最小プロモーター及び5つのインターフェロン刺激応答要素の制御下の分泌胚アルカリホスファターゼ(SEAP)遺伝子も含む。
【0077】
D.TDB媒介性T細胞活性化アッセイ及びその使用
いくつかの態様では、本発明は、TDBによって媒介されるT細胞活性化を検出するための方法を提供し、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、TDBを含む組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、及びb)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることを含み、レポーターの発現は、TDB媒介性T細胞活性化の存在を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0078】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちの任意の濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0079】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0080】
いくつかの態様では、本発明は、組成物中のTDBを検出するための方法を提供し、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることを含み、レポーターの発現は、組成物中のTDBの存在を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちの任意の濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0082】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0083】
いくつかの態様では、本発明は、組成物中のTDBの量を定量化するための方法を提供し、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることと、レポーターの発現を、T細胞及び標的細胞の集団を異なる濃度の精製した参照TDBと接触させることにより生じる標準曲線と抗体濃度の関数として相関させることと、を含む。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0084】
いくつかの実施形態では、標準曲線は、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mLの範囲の複数の濃度の精製した参照TDBと接触させることにより生じる。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約0.01ng/ml、0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、750ng/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、または500μg/mLのうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約3、4、5、6、7、8、9、10倍、または10倍を超える濃度である。
【0085】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0086】
いくつかの態様では、本発明は、TDBによって媒介されるT細胞活性化の効力を決定するための方法を提供し、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、TDBを含む組成物を、a)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにb)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることと、レポーターの発現を、細胞集団を異なる濃度の参照TDBと接触させることにより生じる標準曲線と抗体濃度の関数として相関させ、それにより、TDBによって媒介されるT細胞活性化の効力の相対的測定値を得ることと、を含む。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、約1×10~約5×10である。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちの任意の濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0088】
いくつかの実施形態では、標準曲線は、細胞集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mLの範囲の複数の濃度の精製した参照TDBと接触させることにより生じる。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約0.01ng/ml、0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、750ng/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、または500μg/mLのうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約3、4、5、6、7、8、9、10倍、または10倍を超える濃度である。
【0089】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0090】
いくつかの態様では、本発明は、TDBによって媒介されるT細胞活性化の特異性を決定するための方法を提供し、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含み、本方法は、a)TDBを含む組成物を、i)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにii)標的抗原を発現しない試験細胞を含む細胞集団と接触させることと、b)TDBを含む組成物を、i)T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含むT細胞、ならびにii)標的抗原を発現する標的細胞を含む細胞集団と接触させることと、パートa)中の試験細胞の存在下のレポーターの発現を、パートb)中の標的細胞の存在下のレポーターの発現と比較することと、を含み、試験細胞のレポーターの発現対標的細胞のレポーターの発現の比は、標的細胞に対するTDBの特異性を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。いくつかの実施形態では、ステップa)の細胞集団におけるT細胞対試験細胞の比、及び/またはステップb)の細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、ステップa)の細胞集団におけるT細胞対試験細胞の比、及び/またはステップb)の細胞集団におけるT細胞対標的細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、ステップa)及び/またはb)の細胞集団は、約1×10~約1×10の範囲である。いくつかの実施形態では、ステップa)及び/またはb)の細胞集団は、約1×10~約5×10の範囲である。
【0091】
いくつかの実施形態では、ステップa)のT細胞及び試験細胞ならびにステップb)のT細胞及び標的細胞の集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちのいずれかの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0092】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0093】
いくつかの態様では、本発明は、試験細胞の集団が標的抗原を発現するかどうかを決定するための方法を提供し、本方法は、a)試験細胞の集団をT細胞の集団と接触させることであって、T細胞は、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含む、接触させることと、b)T細胞及び試験細胞の集団をTDBと接触させることであって、TDBは、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含む、接触させることと、を含み、レポーターの発現は、試験細胞によって発現される標的抗原の存在を示す。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞の集団である。いくつかの実施形態では、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞の集団である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、試験細胞の集団は、腫瘍細胞、免疫細胞、または血管細胞の集団である。いくつかの実施形態では、試験細胞の集団は、T細胞を含まない。いくつかの実施形態では、T細胞対試験細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10である。いくつかの実施形態では、T細胞対試験細胞の比は、約1:4である。いくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団は、約1×10~約1×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団は、約1×10~約5×10個の細胞を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、試験細胞及びT細胞の集団を、約0.01ng/mL~約5000ng/mL、約0.05ng/mL~約5000ng/mL、約0.1ng/mL~約5000ng/mL、約0.5ng/mL~約5000ng/mL、約1ng/mL~約5000ng/mL、約5ng/mL~約5000ng/mL、約10ng/mL~約5000ng/mL、約0.01ng/mL~約4000ng/mL、約0.01ng/mL~約3000ng/mL、約0.01ng/mL~約2000ng/mL、約0.01ng/mL~約1000ng/mL、約0.01ng/mL~約500ng/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約5ng/mL、約0.1ng/mL~約1000ng/mL、約0.5ng/mL~約1000ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1000ng/mL、または約5ng/mL~約5000ng/mLのうちのいずれかの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触させる。
【0095】
いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間後のうちのいずれかよりも後に検出される。いくつかの実施形態では、レポーターは、細胞を組成物と接触させた約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間、約1時間~約2時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、約4時間~約8時間、約8時間~約24時間、約8時間~約12時間、約16時間~約24時間、約16時間~約20時間、または約20時間~約24時間後のうちのいずれかの間で検出される。
【0096】
E.アッセイ開発
以下は、TDB媒介性T細胞活性を検出するための、例示的ではあるが、非限定的な細胞系アッセイの開発方法である。
【0097】
DNA構築体:レンチウイルスは、TDB二重特異性抗体の効力を評価するために使用された安定したレポーターT細胞株を生成するために使用される。NFAT(活性化T細胞の核因子)、AP-1(Fos/Jun)、NFAT/AP1、NFκB、FOXO、STAT3/5、またはIRFのためのDNA認識要素によって調節される最小のTKプロモーターの制御下でレポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼを発現するレンチウイルスベクターが、構築される。安定したレポーター細胞株の作製に使用されるレンチウイルス発現カセットは、安定した細胞株の作製を可能にするための構成的プロモーター/エンハンサー(EF1アルファまたはSV40)の制御下で様々な抗生物質選択マーカーを発現する第3世代の自己不活性化二シストロン性ベクターであり得る。使用されるレポーターレンチウイルスベクターは、pCDH.MCS.EF1a.Puro市販のベクター(SBI biosciences;カタログ番号CD510B-1)から修飾される。プロモーター修飾には、CMV最小プロモーターの除去、様々なエンハンサー要素(NFAT、NFκB等)による置換、pRK5.CMV.ルシフェラーゼ(Osaka,G et al.,1996 J Pharm Sci.1996,85:612-618)からの最小コアRNAポリメラーゼプロモーター(TATA box)の添加、ならびに内部DNA(pRK5.tk.neoからのネオマイシン耐性遺伝子、pRK5.tk.hygroからのハイグロマイシン、及びpRK5.tk.ブラストシジンからのブラストサイジン耐性遺伝子)からの異なる選択カセットの置換が含まれる。エンハンサー要素の活性化に対する選択に使用される構成的プロモーターの影響は、プロモーター/エンハンサーのクロストークを最小限に抑えるように設計されたDNAのノンコーディング伸長の組み込みのために最小である。pRK5.CMV.ルシフェラーゼ(Osaka,1996)からのホタルルシフェラーゼは、修飾レンチウイルス親ベクターのHindIII-NotI部位にクローニングされる。Renillaルシフェラーゼ及びナノルシフェラーゼを含む他の発光性タンパク質もまた、HindIII-NotI部位にサブクローニングされ得る。293s(293懸濁液適合細胞株)細胞の一過性トランスフェクションからのウイルスストックを作製するために使用されたレンチウイルスパッケージング構築体(pCMV.HIVデルタ、pCMC.VSV-G、及びpCMV.Rev)は、得られても(pCMV.VSV-G)、作製されてもよい(pCMV.HIVデルタ、pCMV.REV)。HIV株MN(Nakamura,GR et al.,1993,J.Virol.67(10):6179-6191)は、pCMV.HIVデルタパッケージングベクターを作製するために使用されてもよく、安全目的のために5’及び3’LTRに対するHIVウイルスエンベロープ及び修飾の欠失によって不活性化するために内部EcoRI部分消化欠失を含有する。HIV Revは、RT-PCRによるpCMV.HIVデルタトランスフェクト293s細胞RNAからクローン化され、pRK5.tk.ネオのClaI-Xho部位中に導入される。レンチウイルスレポーターに偽型するためのVSV-Gの使用(HIV envの代わりにVSV-Gを置換すること)は、任意の細胞型の感染を可能にする。レンチウイルス発現プラスミド及びパッケージング構築体は、Stbl2コンピテント細胞(Life Technologies、カタログ 番号10268-019)に増幅され、DNAは、Qiagen Maxi Prepキット(カタログ番号12662)を用いて精製される。全てのDNA構築体は、DNA配列決定によって確認される。
【0098】
レポーター遺伝子アッセイ細胞株の開発:Jurkat CD4+T細胞株(DSMZ、カタログ 番号ACC 282)及びCTLL-2 CD8T細胞株(Life Technologies、カタログ 番号K1653)は、TDBによってT細胞の活性化をモニタリングするためにレポーター遺伝子アッセイの実行可能性を評価するために使用される。NFAT(活性化T細胞の核因子)、AP-1(Fos/Jun)、NFAT/AP1、NFκB、FOXO、STAT3,5、及びIRFのためのDNA認識要素によって調節される最小のTKプロモーターの制御下でレポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼを発現するレンチウイルスベクターが、構築される。レポーター遺伝子ウイルスストックは、標準方法を使用して、293s細胞の一過性トランスフェクションによって作製され、VSV-Gを用いて偽型され、濃縮され、滴定される(Naldini,L.,et al.,1996 Science,272:263-267)。Jurkat CTLL-2細胞は、スピノキュレーションにより10のMOIでレンチウイルスレポーターウイルスストックに感染し、3日後、感染した細胞は、抗生物質抵抗性に関して選択される。2週間後、安定したプールが作製され、精製されたTDBへの応答に対して評価される。コピー数及び統合を評価するqPCR方法が、全ての安定したプールがレポーター構築体に安定して感染することを示すために使用される。これらの実験に基づいて、Jurkat/NFκB-ルシフェラーゼ及びJurkat/NFAT-ルシフェラーゼの限定希釈液を組成し、単一細胞のクローニング及び単一の安定したレポーター細胞株の作製を可能にする。
【0099】
T細胞活性化アッセイの開発及び評価:TDB媒介性T細胞活性化の効力を定量化するために、ルシフェラーゼ活性の量が、Jurkat/NFκBホテルルシフェラーゼエフェクター細胞の集団と共にインキュベートされたTDB試験試料の複数の希釈液について観察され、標的細胞が、参照TDBについて観察されるルシフェラーゼ活性と比較される。試験TDB試料の相対的効力は、参照TDBを使用することにより生じる標準曲線から決定される。
【0100】
III.非細胞系レポーターアッセイ
いくつかの態様では、本発明は、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)の同時TDB結合を検出するための非細胞系アッセイを提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原に結合し、他方の抗原結合断片は、TCSに結合する。TDBの、T細胞受容体(TCR)複合体サブユニット(例えば、CD3サブユニット、例えばCD3ε)、及び標的細胞の表面上に発現した標的抗原への同時結合は、TCRのクラスタリングをもたらし、T細胞活性化及び標的細胞の細胞毒性の減損をもたらす。これらの非細胞系アッセイは、T細胞活性化の代替的測定として機能する。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明は、TDBの、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)への同時結合の検出方法を提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一方の抗原結合断片は、TCS上の第2のエピトープに結合し、本方法は、固定化された標的抗原または第1のエピトープを含むその断片、ならびにビオチン及びTCSの複合体または第2のエピトープを含むその断片を使用してELISA系架橋結合アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、標的抗原の細胞外部分に局在され、及び/または第2のエピトープは、TCSの細胞外部分に局在される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明は、TDBの、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)への同時結合の検出方法を提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一方の抗原結合断片は、TCS上の第2のエピトープに結合し、本方法は、a)標的抗原または第1のエピトープを含むその断片を固相に固定化することと、b)TDBを、標的抗原または第1のエピトープを含むその断片とインキュベートし、固相に固定化することと、c)TDBを、レポーター分子及びTCSの複合体または第2のエピトープを含むその断片(ビオチン-TCS複合体)とインキュベートすることと、d)レポーター-TCS複合体を、レポーター分子を検出するために必要とされるアクセサリー分子と任意にインキュベートすることと、e)(例えば、洗浄することによって)固相に結合されない分子を除去することと、f)検出剤を用いて固相に結合されるレポーター分子を検出し、それによって、TDBの、標的抗原及びTCSへの同時結合を検出することと、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、TDBの、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)への同時結合の検出方法を提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一方の抗原結合断片は、TCS上の第2のエピトープに結合し、本方法は、a)標的抗原または第1のエピトープを含むその断片を固相に固定化することと、b)TDBを、標的抗原または第1のエピトープを含むその断片とインキュベートし、固相に固定化することと、c)TDBを、ビオチン及びTCSの複合体または第2のエピトープを含むその断片(ビオチン-TCS複合体)とインキュベートすることと、d)ビオチン-TCS複合体を、ストレプトアビジン-HRP複合体とインキュベートすることと、e)(例えば、洗浄することによって)固相に結合されない分子を除去することと、f)検出剤を用いて固相に結合されるHRPを検出し、それによって、TDBの、標的抗原及びTCSへの同時結合を検出することと、を含む。洗浄ステップは、固体相に結合されない分子を除去するために、インキュベーションステップの間に含まれ得る。いくつかの実施形態では、インキュベーションステップは、独立して、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、またはそれ以上のうちのいずれかで行われ、これには、これらの値の間の任意の範囲が含まれる。いくつかの実施形態では、TCSは、CD3サブユニットである。いくつかの実施形態では、CD3サブユニットは、CD3εである。いくつかの実施形態では、標的抗原は、細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、標的抗原の細胞外部分に局在され、及び/または第2のエピトープは、TCSの細胞外部分に局在される。
【0103】
いくつかの実施形態では、インキュベーションステップにおいて含まれるTDBは、約0.01ng/mL~約100μg/mL、約0.05ng/mL~約100μg/mL、約0.1ng/mL~約100μg/mL、約0.5ng/mL~約100μg/mL、約1ng/mL~約100μg/mL、約5ng/mL~約100μg/mL、約10ng/mL~約100μg/mL、約0.01ng/mL~約50μg/mL、約0.01ng/mL~約10μg/mL、約0.01ng/mL~約1μg/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約0.1ng/mL、約0.01ng/mL~約0.05ng/mL、約0.01ng/mL~約0.05ng/mL、約0.1ng/mL~約1μg/mL、約0.5ng/mL~約1μg/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1μg/mL、または約5ng/mL~約5μg/mLのうちの任意の濃度範囲である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明は、TDBの、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)への同時結合の定量化方法を提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一方の抗原結合断片は、TCS上の第2のエピトープに結合し、本方法は、a)標的抗原または第1のエピトープを含むその断片を固相に固定化することと、b)TDBを、標的抗原または第1のエピトープを含むその断片とインキュベートし、固相に固定化することと、c)TDBを、レポーター及びTCSの複合体または第2のエピトープを含むその断片(例えば、ビオチン-TCS複合体)とインキュベートすることと、d)レポーター-TCS複合体を、アクセサリーレポーター分子と任意にインキュベートすることと、e)(例えば、洗浄することによって)固相に結合されない分子を除去することと、f)検出剤を用いて固相に結合されるレポーターを検出することと、g)参照TDBを用いて作製される標準物と検出剤のシグナル強度を比較することによって、TDBの相対的効力を決定することと、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、TDBの、標的抗原及びTCS(CD3サブユニット等)への同時結合の定量化方法を提供し、TDBの一方の抗原結合断片は、標的抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一方の抗原結合断片は、TCS上の第2のエピトープに結合し、本方法は、a)標的抗原または第1のエピトープを含むその断片を固相に固定化することと、b)TDBを、標的抗原または第1のエピトープを含むその断片とインキュベートし、固相に固定化することと、c)TDBを、TCSまたは第2のエピトープを含むその断片(ビオチン-TCS複合体)とインキュベートすることと、d)ビオチン-TCS複合体を、ストレプトアビジン-HRP複合体とインキュベートすることと、e)(例えば、洗浄することによって)固相に結合されない分子を除去することと、f)検出剤を用いて固相に結合されるHRPを検出することと、g)参照TDBを用いて作製される標準物と検出剤のシグナル強度を比較することによって、TDBの相対的効力を決定することと、を含む。いくつかの実施形態では、シグナル強度の比較は、TDB及び参照TDBのそれぞれについて用量応答曲線を作製することと、曲線から生じるEC50値の間の比を決定することと、を含む。洗浄ステップは、固体相に結合されない分子を除去するために、インキュベーションステップの間に含まれ得る。いくつかの実施形態では、インキュベーションステップは、独立して、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、またはそれ以上のうちのいずれかで行われ、これには、これらの値の間の任意の範囲が含まれる。いくつかの実施形態では、TCSは、CD3サブユニットである。いくつかの実施形態では、CD3サブユニットは、CD3εである。いくつかの実施形態では、標的抗原は、細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、標的抗原の細胞外部分に局在され、及び/または第2のエピトープは、TCSの細胞外部分に局在される。
【0105】
いくつかの実施形態では、インキュベーションステップにおいて含まれるTDBは、約0.01ng/mL~約100μg/mL、約0.05ng/mL~約100μg/mL、約0.1ng/mL~約100μg/mL、約0.5ng/mL~約100μg/mL、約1ng/mL~約100μg/mL、約5ng/mL~約100μg/mL、約10ng/mL~約100μg/mL、約0.01ng/mL~約50μg/mL、約0.01ng/mL~約10μg/mL、約0.01ng/mL~約1μg/mL、約0.01ng/mL~約100ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約0.1ng/mL、約0.01ng/mL~約0.05ng/mL、約0.01ng/mL~約0.05ng/mL、約0.1ng/mL~約1μg/mL、約0.5ng/mL~約1μg/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約1μg/mL、または約5ng/mL~約5μg/mLのうちの任意の濃度範囲である。
【0106】
いくつかの実施形態では、参照TDBからの標準曲線は、約0.01ng/mL~100μg/mLの範囲の複数の濃度で参照TDBをインキュベーションすることにより生じる。いくつかの実施形態では、複数の濃度の参照TDBには、約0.01ng/ml、0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、または500μg/mLのうちのいずれか1つが含まれる。いくつかの実施形態では、複数の濃度の精製した参照TDBは、約3、4、5、6、7、8、9、10倍、または10倍を超える濃度である。
【0107】
IV.キット
本発明のいくつかの態様では、キットまたは製品は、標的抗原結合断片及びTCS結合断片(CD3結合断片等)を含むTDBを含む様々な方法で用いるために提供され、本明細書に記載のT細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結したレポーターをコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む組成物を保持する容器を備え、任意に、その使用のための取扱説明書を提供する。いくつかの実施形態では、キットは、参照TDBアッセイ標準物(既知の濃度の精製したTDB)を保持する容器、及び/またはTDB対照物を保持する容器をさらに備える。いくつかの実施形態では、キットは、標的抗原を発現する標的細胞を含む組成物を保持する容器をさらに備える。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、またはナノシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFATプロモーター、AP-1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態では、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、NFAT、AP-1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのうちの任意の1つ以上からのT細胞活性化応答要素を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、Jurkat T細胞またはCTLL-2 T細胞である。いくつかの実施形態では、TCS結合断片は、CD3結合断片である。いくつかの実施形態では、CD3結合断片は、CD3ε結合断片である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、標的細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、a)標的抗原はHER2受容体であり、標的細胞はBT-474細胞であるか、b)標的抗原は、HER2受容体であり、標的細胞はSKBR3細胞であるか、c)標的抗原はCD20であり、標的細胞はWil2-S細胞であるか、またはd)標的抗原はCD79bであり、標的細胞はBJAB細胞である。容器は、製剤を保持し、容器上または容器と関連したラベルは、使用法を示し得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、培養容器、レポーター分子を検出するための試薬、及び使用説明書を含む添付文書含む、商業的及び使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0108】
本発明のいくつかの態様では、TCS(CD3サブユニット等)を含む組成物またはその断片を含み、ビオチンと複合され、組成物を保持する容易器を含むキットまたは製品が、提供され、任意にその使用説明書を提供する。いくつかの実施形態では、TCSは、CD3サブユニットである。いくつかの実施形態では、CD3サブユニットは、CD3εである。いくつかの実施形態では、キットは、標的抗原またはその断片をさらに提供する。いくつかの実施形態では、標的抗原は、細胞の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD4、CD8、CD18、CD19、CD11a、CD11b、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、CD79β(CD79b)、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、HER4受容体、FcRH5、CLL1、LFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、VEGF、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7、Tenb2、STEAP、または膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの実施形態では、キットは、参照TDBアッセイ標準物(既知の濃度の精製したTDB)及び/またはTDB対照をさらに提供する。容器は、製剤を保持し、容器上または容器と関連したラベルは、使用法を示し得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、培養容器、レポーター分子を検出するための試薬、及び使用説明書を含む添付文書含む、商業的及び使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0109】
VI.ポリペプチド
本明細書に記載の方法を使用して分析されるポリペプチドは、概して、組換え技法を使用して産生される。組換えタンパク質を産生するための方法が、例えば、米国特許第5,534,615号及び同第4,816,567号に記載され、具体的には、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、対象となるタンパク質は、CHO細胞内に産生される(例えば、WO 94/11026を参照のこと)。いくつかの実施形態では、対象となるポリペプチドは、E.coli細胞内に産生される。例えば、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を説明している、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号、及び米国特許第5,840,523号を参照のこと。また、E.coliにおける抗体断片の発現を説明している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照のこと。組換え技法を使用する場合、ポリペプチドは、細胞内に、ペリプラズム空間に産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。
【0110】
ポリペプチドは、培養培地または宿主細胞溶解物から回収され得る。ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、様々な物理的または化学的手段、例えば、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤によって破壊され得る。ポリペプチドが細胞内に産生される場合、第1のステップとして、粒子状残屑、宿主細胞、または溶解された断片のいずれかが、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10: 163-167(1992)は、E.coliのペリプラズム空間に分泌されるポリペプチドを単離するための手順を説明している。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分にわたって解凍される。細胞残屑は、遠心分離により除去され得る。ポリペプチドが培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清は、一般に、市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して最初に濃縮される。PMSF等のプロテアーゼ阻害剤を、タンパク質分解を阻害するために前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、抗生物質を付随的混入物質の成長を阻止するために含まれてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド及び1つ以上の混入物質を含む組成物中のポリペプチドは、本発明の方法により分析前に精製または部分的に精製されている。例えば、方法のポリペプチドは、親和性クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからの溶離液中にある。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、プロテインAクロマトグラフィーからの溶離液中にある。
【0112】
本発明の方法によって分析され得るポリペプチドの例としては、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫複合体、サイトカイン、及びインターロイキンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
(A)抗体
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドを分析する方法のうちのいずれかで使用するためのポリペプチド及び本明細書に記載される方法によってポリペプチドを含む製剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体である。
【0114】
抗体の分子標的としては、CDタンパク質及びそれらのリガンドが挙げられ、例えば、(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、及びCD79β(CD79b)、(ii)EGF受容体、HER2、HER3、またはHER4受容体等のErbB受容体ファミリーのメンバー、(iii)細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、及びαv/β3インテグリン(それらのアルファもしくはベータサブユニット(例えば、抗CD11a、抗CD18、もしくは抗CD11b抗体)のいずれかを含む)、(iv)VEGF、IgE、血液型抗原、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、mpl受容体、CTLA-4、プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7等の成長因子、(v)米国特許第7,521,541号に記載されるもの等の細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、ならびに(vi)FcRH5、LyPD1、TenB2、及びSTEAP等の他の標的等であるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、抗CD20/抗CD3抗体である。例示的な二重特異性抗体を、表1に提供する。
表1.例示的な抗体
【0115】
他の例示的な抗体としては、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl-2抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15-3抗体、抗CA19-9抗体、抗c-erbB-2抗体、抗P-糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras癌タンパク質抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki-67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c-myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異抗原抗体、抗S-100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体、抗TebB2抗体、抗STEAP抗体、及び抗Tn-抗原抗体から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
(i)モノクローナル抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られ、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、及び/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じる想定される変異体は除外され、かかる変異体は、概して、少量で存在する。したがって「モノクローナル」という修飾語は、個別のまたはポリクローナル抗体の混合物ではないような抗体の特徴を示す。
【0117】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に記載されるハイブリドーマ法により作製されてもよいし、組換えDNA法によって作製されてもよい(米国特許第4,816,567号)。
【0118】
ハイブリドーマ法において、マウス、またはハムスター等の他の適切な宿主動物が、本明細書に記載されるように免疫化されて、免疫化のために使用されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球が誘発される。代替として、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次いで、ポリエチレングリコール等の適した融剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0119】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、非融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。
【0120】
いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示すものである。これらの中で、いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞に由来するもの等のマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について説明されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001 (1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0121】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、または放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって測定される。
【0122】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.107:220(1980)のスキャチャード分析によって測定され得る。
【0123】
所望の特異性、親和性、及び/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長され得る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice pp.59-103 (Academic Press,1986))。この目的に好適な培養培地には、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。
【0124】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、ポリペプチドA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィー等によって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0125】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定される。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの供給源としての機能を果たす。一旦単離されると、DNAは発現ベクター内に配置され得、次いで、宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞等にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成体が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する概説論文には、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.5:256-262(1993)、及びPluckthun,Immunol.Revs.,130:151-188(1992)が含まれる。
【0126】
さらなる一実施形態では、抗体または抗体断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)に記載される技法を使用して作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。その後の刊行物は、非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783 (1992))、ならびに組み合わせ感染及びインビボ組換えによる高い親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生を記載する(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法の実行可能な代替法である。
【0127】
DNAはまた、例えば、コード配列を、相同的なマウス配列の代わりに、ヒトの重及び軽鎖の定常ドメインに置換することによるか(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより修飾されてもよい。
【0128】
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換されるか、またはそれらが、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0129】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0130】
(ii)ヒト化抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野で記載されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒトである源からそれに導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、本質的には、Winter及び共同研究者らの方法(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))に従って、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって行うことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、実質的に無傷ヒト可変ドメインより少ない部分が、非ヒト種からの対応する配列により置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基、かつ場合によってはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0131】
ヒト化抗体を作製するのに使用される軽及び重の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するのに非常に重要である。いわゆる「最良適合」法に従って、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変-ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として許容する(Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987))。別の方法は、軽または重鎖可変領域の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するの特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用され得る(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993))。
【0132】
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることがさらに重要である。この目標を達成するために、本方法のいくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び様々な概念上のヒト化産生物の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に、利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの精査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能にする。このように、標的抗原(複数可)に対する増加した親和性等の所望の抗体特徴が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わされ得る。概して、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接的に、かつ最も実質的に関与している。
【0133】
(iii)ヒト抗体
いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。ヒト化の代替物として、ヒト抗体が生成され得る。例えば、免疫化すると内因性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。かかる生殖系突然変異マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイの導入は、抗原攻撃に際してヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.7:33(1993)、ならびに米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号、及び同第5,545,807号を参照のこと。
【0134】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990))は、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体及び抗体断片をインビトロで産生するために使用することができる。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfd等の糸状バクテリオファージの主要または非主要なコートポリペプチド遺伝子中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示させる。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択により、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択ももたらされる。したがって、ファージは、B細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレイは、種々のフォーマットで行うことができる;それらの概説については、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの源は、ファージディスプレイのために使用することができる。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)は、免疫化マウスの膵臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多種多様なアレイを単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーは、構築され得、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、本質的には、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)、またはGriffith et al.,EMBO J.12:725-734(1993)によって記載される技術に従って単離することができる。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照のこと。
【0135】
また、ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞により生じ得る(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照のこと)。
【0136】
(iv)抗体断片
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞により直接産生され得る。例えば、抗体断片は、上記で考察される抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成し得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチによると、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片を産生するための他の技法が、当業者に明らかである。他の実施形態では、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「線状抗体」でもあり得る。かかる線状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、Fv、及びダイアボディからなる群から選択される。
【0138】
(v)二重特異性抗体
いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、二重特異性抗体結合アームは、細胞に対する細胞防御機序に集中するために、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えば、CD2もしくはCD3)、またはIgG(FcγR)に対するFc受容体、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組合され得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体である。いくつかの実施形態では、TDBは、標的抗原結合断片及びT細胞受容体結合断片を含む。いくつかの実施形態では、TDBは、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含む。いくつかの実施形態では、TDBは、標的抗原結合断片及びCD3ε結合断片を含む。
【0139】
二重特異性抗体の作製方法が、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)が10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、それらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常は親和性クロマトグラフィーステップにより行われる正しい分子の精製は、やや煩雑であり、生成物収率は低い。同様の手順が、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に記載されている。
【0140】
異なるアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。いくつかの実施形態では、融合は、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。いくつかの実施形態では、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物のうちの少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物と、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これにより、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の不等比が最適収率をもたらす実施形態では、3つのポリペプチド断片の相互比率の調整において優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等比での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収率がもたらされる場合、またはそれらの比が特に重要ではない場合に、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0141】
このアプローチのいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにある(第2の結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対からなる。二重特異性分子の半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が分離の容易な方法を提供するため、この非対称構造が、所望の二重特異性化合物の望ましくない免疫グロブリン鎖組み合わせからの分離を容易にすることが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。
【0142】
米国特許第5,731,168号に記載される別のアプローチに従って、一対の抗体分子間の界面が操作されて、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。いくつかの実施形態では、界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大型側鎖(単数または複数)と同一のまたは類似のサイズの代償性「キャビティ」が、大型アミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニンまたはトレオニン)に取り替えることにより、第2の抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体等の他の望ましくない最終産物を上回るヘテロ二量体の収率を増大するための機序を提供する。
【0143】
二重特異性抗体としては、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体のうちの一方がアビジンにカップリングし得、他方がビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、かつHIV感染を治療するために(WO91/00360、WO92/200373、及びEP03089)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤が当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0144】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法もこの文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製され得る。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、無傷抗体がタンパク質分解的に切断されてF(ab’)断片が生成される手順を記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、隣接ジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。次いで、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’-TNB誘導体のうちの1つが、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再変換され、等モル量の他のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0145】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接作製及び単離するための様々な技法についても記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用され得る。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)により記載される「ダイアボディ」技法は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に接続した重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つの断片のV及びVドメインは、別の断片の相補的なV及びVドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用して二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
【0146】
2より大きい力価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0147】
(v)多価抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、多価抗体である。多価抗体は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも速く内部移行(及び/または異化)され得る。本明細書に提供される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する(IgMクラス以外の)多価抗体(例えば、四価抗体)とすることができ、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に産生することができる。多価抗体は、二量体化ドメイン、及び3つ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれらからなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端側に3つ以上の抗原結合部位とを含む。本明細書において好ましい多価抗体は、3つ~約8つ、しかし好ましくは4つの抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、このポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含み得、ここで、VD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VH-CH1-可動性リンカー-VH-CH1-Fc領域鎖、またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含んでもよい。本明細書における多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(また好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書における多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。本明細書に企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意に、CLドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、多価抗体は、T細胞結合断片を含む。いくつかの実施形態では、多価抗体は、T細胞受容体結合断片を含む。いくつかの実施形態では、多価抗体は、CD3結合断片を含む。いくつかの実施形態では、多価抗体は、CD3ε結合断片を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性抗体である。多重特異性抗体の例としては、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含みV単位がポリエピトープ特異性を有する抗体、2つ以上のV及びVドメインを有し各V単位が異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重機能性抗体、共有結合している抗体断片または共有結合していない抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その抗体は、ポリエピトープ特異性、例えば、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する。いくつかの実施形態では、その抗体は、単一特異性、例えば、1つのエピトープにのみ結合する抗体である。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
【0149】
(vi)他の抗体修飾
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本明細書に提供される抗体を修飾することが望ましい場合がある。これは、1つ以上のアミノ酸置換を抗体のFc領域内に導入することによって達成され得る。あるいはまたは加えて、システイン残基(複数可)は、Fc領域内に導入され得、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にする。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能力、ならびに/または増加した補体媒介性細胞殺滅及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有し得る。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191-1195(1992)及びShopes,B.J.,Immunol.148:2918-2922(1992)を参照のこと。増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体はまた、Wolff et al.,Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載される、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製され得る。あるいは、二重Fc領域を有し、それにより、増強された補体溶解及びADCC能力を有し得る、抗体を操作することができる。Stevenson et al.,Anti-Cancer Drug Design 3:219-230(1989)を参照のこと。
【0150】
抗体の血清半減期を増大するために、アミノ酸代替物が、US 2006/0067930に記載される抗体において作製され得、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0151】
(B)ポリペプチド変異体及び修飾
本明細書に記載の抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾(複数可)が、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、抗体)を精製する方法で使用され得る。
【0152】
(i)変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」とは、ポリペプチドの完全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書に定義されるポリペプチド、好ましくは活性ポリペプチドを意味する。かかるポリペプチド変異体としては、例えば、1つ以上のアミノ酸残基が完全長天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に付加または欠失されたポリペプチドが挙げられる。通常、TATポリペプチド変異体は、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のうちの任意のアミノ酸配列同一性を有する。通常、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換を有し、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のうちの任意の以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0153】
変異体ポリペプチドは、N末端またはC末端で切断され得るか、または例えば、全長天然ポリペプチドと比較して、内部残基を欠き得る。ある特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物学的活性にとって不可欠ではないアミノ酸残基を欠き得る。切断、欠失、及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、いくつかの従来の技法のうちのいずれかによって調製され得る。所望の変異体ポリペプチドは、化学的に合成されたものであり得る。別の好適な技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片の単離及び増幅することを伴う。核酸断片の所望の末端を定義するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’プライマー及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、変異体ポリペプチドは、本明細書に開示される天然ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/または免疫学的活性を共有する。
【0154】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N-末端メチオニル残基を有する抗体、または細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体としては、抗体の血清半減期を増大する酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0155】
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかる修飾としては、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物に到達するためになされるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。アミノ酸変化は、ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後プロセスも改変することができ、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化することができる。
【0156】
どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を及ぼすことなく挿入、置換、または欠失され得るかを決定する際の手引きは、ポリペプチドの配列を同種の既知のポリペプチド分子の配列と比較し、かつ相同性の高い領域のアミノ酸配列変化の数を最小限に抑えることによって見出され得る。
【0157】
変異誘発の好ましい位置であるポリペプチド(例えば、抗体)のある特定の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells,Science 244:1081-1085(1989)によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は、さらなるまたは他の変異体を置換部位に、またはそこの代わりに導入することにより洗練される。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されている一方で、変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を分析するために、alaスキャニングまたはランダム突然変異生成が標的コドンまたは領域で実行され、発現された抗体変異体が所望の活性に関して選別される。
【0158】
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基に置き換えられた抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換変異誘発に関する最も関心ある部位としては、超可変領域が挙げられるが、FR改変も企図される。保存的置換が、「例示的な置換」という見出しで以下の表2に示される。かかる置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表2に「置換」と表示されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされ得る。
表2.
【0159】
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域中のポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくは螺旋立体配座、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルク、を維持するそれらの効果において大いに異なる置換を選択することによって達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従って群分けされ得る(A.L.Lehninger,Biochemistry second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0160】
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0161】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0162】
抗体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基も概してセリンで置換されて、分子の酸化的安定性が改善され、異常な架橋が阻止され得る。逆に、システイン結合(複数可)がポリペプチドに付加されて、その安定性を改善することができる(具体的には、抗体がFv断片等の抗体断片である場合)。
【0163】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。概して、さらなる開発のために選択されて得られた変異体(複数可)は、それらが生成される親抗体に対して改善された生物学的特性を有する。かかる置換変異体を生成するための好都合な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7つの部位)は、各部位に全ての可能なアミノ置換を生成するために突然変異される。このように生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物への融合物として糸状ファージ粒子からの一価様式で表示される。その後、ファージディスプレイされた変異体は、本明細書に開示されるそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を特定するために、アラニンスキャニング突然変異生成が行われ、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基が特定され得る。あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と標的との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書に詳述される技法に従う置換の候補である。かかる変異体が生成されると、変異体のパネルが本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
【0164】
ポリペプチドの別の種類のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを改変する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含み得る。例えば、ポリペプチドは、グリコシル化され得る。かかるグリコシル化は、宿主細胞または宿主生物でのポリペプチドの発現中に天然に生じ得るか、またはヒト介入に起因する計画的な修飾であり得る。改変とは、ポリペプチドに見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/またはポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0165】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0166】
グリコシル化部位のポリペプチドへの付加は、(N結合グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、(O連結グリコシル化部位のための)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加、またはそれによる置換によっても行われ得る。
【0167】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、またはグリコシル化の標的としての機能を果たすアミノ酸残基をコードするコドンの変異置換によって達成され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンド-及びエキソ-グリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0168】
他の修飾としては、グルタミニル及びアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0169】
(ii)キメラポリペプチド
本明細書に記載のポリペプチドは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法で修飾され得る。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。かかるエピトープタグ形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。エピトープタグの提供により、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別の種類の親和性マトリックスを使用してポリペプチドが親和性精製によって容易に精製されることも可能になる。
【0170】
代替的な実施形態では、キメラ分子は、ポリペプチドと免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域との融合を含み得る。二価の形態のキメラ分子は、「イムノアドヘシン」と称される。
【0171】
本明細書に使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種ポリペプチドの結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である所望の結合特異性を有する(すなわち、「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的に、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、またはIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD、またはIgM等の任意の免疫グロブリンから得られ得る。
【0172】
Ig融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、可溶性の(膜貫通ドメインが欠失または不活性化されている)形態のポリペプチドの置換を含む。特定の好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合体には、ヒンジ、CH、及びCH、またはヒンジ、IgG1分子の、CH、CH、及びCH領域が含まれる。
【0173】
(iii)ポリペプチド複合体
ポリペプチド製剤において使用するためのポリペプチドは、細胞毒性剤、例えば化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)と複合化され得る。
【0174】
かかる複合体の生成において有用な化学療法剤を使用することができる。さらに、使用することができる酵素的に活性な毒素及びそれらの断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosaからの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンが含まれる。多様な放射性同位体は、放射性複合ポリペプチドの産生のために利用可能である。例には、212Bi,131I、131In、90Y、及び186Reが含まれる。ポリペプチドと細胞毒性剤とのコンジュゲートは、N-サクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCL等)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジル等)、アルデヒド(グルタレルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン(tolyene)2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)等の多様な二機能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14-で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドのポリペプチドへの複合のための例示的なキレート剤である。
【0175】
ポリペプチドと、1つ以上の小分子毒素、例えば、カリケアマイシン、マイタンシノイド、トリコテセン、及びCC1065、ならびに毒素活性を有する、これらの毒素の誘導体との複合体はまた、本明細書において企図される。
【0176】
マイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの低木であるMaytenus serrataから最初に単離された。その後、特定の微生物もまた、マイタンシノール及びC-3マイタンシノールエステル等のマイタンシノイドを産生することが発見された。合成マイタンシノールならびにその誘導体及び類似体もまた、企図される。ポリペプチド-マイタンシノイド複合体を作製するための当該技術分野で既知の多くの連結基があり、例えば、米国特許第5,208,020号に開示されているものを含む。連結基は、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸に不安定な基、光不安定性基、ペプチターゼに不安定な基、またはエステラーゼに不安定な基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
【0177】
結合の種類に応じて、リンカーが様々な位置でマイタンシノイド分子に結合され得る。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技法を使用してヒドロキシル基との反応によって形成され得る。反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾したC-14位、ヒドロキシル基で修飾したC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じ得る。好ましい実施形態では、結合は、マイタンシノールまたはマイタンシノール類似体のC-3位に形成される。
【0178】
対象となる別の複合体は、1つ以上のカリケアミシン分子に複合化されたポリペプチドを含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、サブピコモルの濃度で二本鎖DNAの切断を産生することができる。カリケアマイシンファミリーの複合体の調製については、例えば、米国特許第5,712,374号を参照のこと。使用され得るカリケアマイシンの構造類似体としては、γ 、α 、α 、N-アセチル-γ 、PSAG、及びθ が挙げられるが、これらに限定されない。抗体が複合され得る別の抗腫瘍薬物は、抗葉酸剤であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAはともに、作用の細胞内部位を有し、原形質膜と容易に交差しない。したがって、ポリペプチド(例えば、抗体)媒介性内部移行を通したこれらの薬剤の細胞取り込みによって、それらの細胞毒性効果を大いに増強する。
【0179】
本明細書に記載されるポリペプチドに複合され得る他の抗腫瘍薬剤には、BCNU、ストレプトズマイシン、ビンクリスチン、及び5-フルオロウラシル、集合的にLL-E33288複合体に既知の薬剤ファミリー、ならびにエスペラミシンが含まれる。
【0180】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドと核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ、またはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ、DNase)との間の複合体であり得る。
【0181】
さらに別の実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)は、腫瘍前標的化において利用するために「受容体」(ストレプトアビジン等)と複合させてもよく、この場合、ポリペプチド受容体複合体が患者に投与され、続いて除去剤を使用して血液循環から非結合複合体が除去された後、細胞毒性薬剤(例えば、放射性ヌクレオチド)と複合されている「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
【0182】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素に複合され得る。免疫複合体の酵素構成成分には、前駆薬物において、それをより活性な細胞毒性形態に変換するような方法で作用することができる任意の酵素が含まれる。
【0183】
有用である酵素としては、リン酸塩含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸塩含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒性5-フルオロシトシンを抗癌薬物、5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)等のプロテアーゼ;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なβ-ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ等の炭水化物切断酵素、β-ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なβ-ラクタマーゼ、ならびにアミン窒素において、フェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基でそれぞれ誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼ等のペニシリンアミダーゼが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、「アブザイム」としても当技術分野で既知の酵素活性を有する抗体が、プロドラッグを遊離活性薬物に変換するために使用され得る。
【0184】
(iv)その他
ポリペプチドの別の種類の共有結合修飾は、ポリペプチドを様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマーのうちの1つに連結することを含む。ポリペプチドはまた、例えば、コアセルベーション技法もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル)によって、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、またはマイクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th edition,Gennaro,A.R.,Ed.,(1990)において開示されている。
【0185】
VII.製剤及び方法における使用のためのポリペプチドの取得
本明細書に記載される分析方法で使用されるポリペプチドは、組換え方法を含む、当技術分野で周知の方法を使用して得られ得る。以下のセクションは、これらの方法に関する手引きを提供する。
【0186】
(A)ポリヌクレオチド
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。
【0187】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチドmRNAを保有し、検出可能なレベルでそれを発現すると考えられている組織から調製されたcDNAライブラリーを含むが、これに限定されない、任意の供給源から得られ得る。したがって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。ポリペプチドをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから、または既知の合成手順(例えば、自動核酸合成)によっても得られ得る。
【0188】
例えば、ポリヌクレオチドは、軽鎖または重鎖等の全体の免疫グロブリン分子鎖をコードし得る。完全な重鎖は、重鎖可変領域(V)だけでなく、重鎖定常領域(C)も含み、これは典型的には3つの定常ドメイン:C1、C2、及びC3;及び「ヒンジ」領域を含む。場合によっては、定常領域の存在が望ましい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、TDBの1つ以上の免疫グロブリン分子鎖をコードする。
【0189】
ポリヌクレオチドによってコードされ得る他のポリペプチドには、抗原結合抗体断片、例えば、単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’、及びF(ab’)、及び「ミニボディ」が含まれる。ミニボディは、(典型的には)C1及びCまたはCドメインが切除されている二価抗体断片である。ミニボディは、従来の抗体より小さいので、それらは臨床/診断用途では良好な組織浸透を達成するはずであるが、dAbのような一価抗体断片よりも高い結合親和性を保持しなければならない二価である。したがって、別途文脈が規定しない限り、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、全ての抗体分子だけでなく、上記で考察される型の抗原結合抗体断片も包含する。好ましくは、コードされたポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒト受容体フレームワークに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。したがって、例えば、フレームワーク領域は、受容体フレームワーク領域に対して、合計で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸置換を含み得る。
【0190】
本明細書に開示される特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えられてもよい。したがって、別途明確に示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の一例にすぎない。
【0191】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例により例示されている。本明細書における全ての参考文献の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0192】
以下の実施例は、単に本発明の例示となるよう意図されており、それ故に、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定するものではなく、例証として提供されている。
【0193】
実施例1.T細胞活性化アッセイ
T細胞活性化アッセイは、標的細胞の存在下でT細胞を活性化するためのT細胞依存性二重特異性(TDB)抗体の効力及び特異性を決定するために開発されている。例示的な略図については図2を参照のこと。TDBが二価であり、二重特異性であるように、1つのアームがTCR複合体サブユニットに対して特異的であり、もう一方のアームが標的抗原に対して特異的であり、T細胞活性化をもたらすTCRの架橋により、標的細胞及びT細胞はともに、TDBによって結合される場合にのみ生じ得る。抗CD3を含有するTDBによるTCR媒介性架橋は、NFAT及びNFκBを含む転写因子のリン酸化及び核局在化をもたらすT細胞シグナル伝達カスケードを活性化し、サイトカイン等の標的遺伝子または細胞死滅剤、例えば、Fas、グランザイムB、及びパーフォリンの転写誘導をもたらす(Brown,WM,2006,Curr Opin Investig Drugs 7:381-388、Ferran,C et al.,1993 Exp Nephrol 1:83-89、Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767-773、Shapiro,1998、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441-1450)。AP1、NFAT、またはNFκBの転写制御下で、ホタルルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子は、シグナル伝達経路のTCR活性化及びT細胞活性化をモニタリングするために使用されている(Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767-773、Shapiro,1998)。TDBがT細胞をインビトロで活性化することができるかどうか評価するために、Jurkat T細胞(DSMZ、ACC 282)を、組換えTCR応答性レポーター遺伝子レンチウイルスストック(AP1-ルシフェラーゼ、NFAT-ルシフェラーゼ、またはNFκB-ルシフェラーゼ)と感染させ、レポーターT細胞の安定したプールを単離した。活性化をアッセイするためのレポーターT細胞の適合性を最初に評価するために、それらは、標的細胞の不在下でTCR受容体を架橋することができる精製した抗CD3ホモ二量体で10μg/mLで4時間処理した。Jurkat/AP1ルシフェラーゼ、Jurkat/NFATルシフェラーゼ、及びJurkat/NFκBルシフェラーゼの安定したプールは、精製した抗CD3ホモ二量体による刺激時にルシフェラーゼの用量依存性誘導を示した。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)をプロットし、最高応答が、Jurkat/NFκBルシフェラーゼの安定したプールから観察された(図3A)。限定希釈液により単離されたJurkat/NFκBルシフェラーゼの安定したクローンは、10μg/mLの精製した抗CD3ホモ二量体に対するそれらの応答についてスクリーニングされた。Jurkat T細胞NFκBルシフェラーゼプールは、他のTCR応答要素と比較して抗CD3ホモ二量体に対して最高応答を示し、さらなる調査のために選択された(図3B)。
【0194】
αCD20/αCD3 TDBまたは抗CD3ホモ二量体のいずれかに、このクローンの相対的応答を決定するために、Jurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2細胞株を、標的細胞株を発現するCD20の存在下で、増加した濃度のαCD20/αCD3 TDBまたは抗CD3ホモ二量体のいずれかで処置し、ルシフェラーゼ活性をプロットした(図4A)。細胞を、10%のウシ胎児血清で補充したRPMI 1640培地中で、αCD20/αCD3 TDBまたはCD3ホモ二量体で4時間刺激した。精製したαCD20/αCD3 TDBは、共刺激標的細胞の存在下で、精製した抗CD3ホモ二量体よりも1000倍以上活性であった。標的細胞の不在下でαCD20/αCD3 TDBは、この細胞株におけるルシフェラーゼ転写のNFκB依存性活性化によって測定されるように、TDBのさらに高いレベルでT細胞活性化をもたらさず、標的及びエフェクター細胞へのTDBの同時結合を検出するためのアッセイの特異性を示した(図4B)。操作されたJurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2レポーター遺伝子細胞株について観察されるT細胞活性化応答は、T細胞活性化の他の測定を用いてドナー末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたヒトT細胞を用いて観察されたものと同等であり、T細胞活性化応答をモニタリングするためのレポーター遺伝子の使用が同等であることを示す(表3)。Jurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2細胞株(Jurkat-NFκBLuc)は、TDB媒介性T細胞活性化の検出のための細胞系アッセイ方法を開発し、最適化するために使用された。
表3
【0195】
実施例2.TDB媒介性T細胞活性化を検出するための定量化方法
標的細胞の存在下でT細胞活性化の誘導を測定することによる抗CD3を含有するTDBの効力を決定するための感受性及び定量的プラットフォームTDB細胞系アッセイを開発した。TDBのT細胞活性化アッセイは、操作されたT細胞レポーター遺伝子細胞株、Jurkat-NFκBLucを用いてRel/NFκBシグナル伝達経路のTCR架橋誘導の活性化を測定することによって、標的細胞の存在下でのTDBによるT細胞の活性化を検出する。活性化したNFκBは、核に移行し、合成プロモーターの8つのNFκB応答要素に結合し、ルシフェラーゼの転写を駆動する。
【0196】
アッセイでは、抗CD20/CD3(または抗HER2/CD3もしくは抗CD79b/CD3)のアッセイ標準物、対照、及び試験試料の希釈液を調製し、50μLを、96ウェルアッセイプレートに添加した。次いで、標的細胞(それぞれ、αCD20/CD3、αHER2/CD3、及びαCD79b/CD3について、Wil2-S、BT-474またはSKBR3、及びBJAB細胞)及びJurkatNFkBレポーター細胞を、凍結細胞が新鮮な培養細胞と同等であるという評価に従って、すぐに使用できる(R-to-U)凍結細胞または培養細胞のいずれかを使用して調製した。等体積の4.0×10細胞/mLの標的細胞希釈液及び1.6×10細胞/mLのJurkatNFkB細胞希釈液を組み合わせて、標的:エフェクター(T:E)細胞比が1:4の細胞混合物を調製した。50μLの混合した標的及びJurkatNFkBLuc細胞を、アッセイプレート中で各TDB希釈液に添加した。αHER2/CD3及びαCD79b/CD3細胞系アッセイについても、これらのアッセイが参照及び対照TDBを含むため、同じT:E比を使用した。TDBによるJurkatNFkBLuc T細胞レポーター細胞株への標的細胞の複合後、活性化したNFκBは核に移行し、合成プロモーターの8つのNFκB応答要素に結合し、ルシフェラーゼの転写を駆動する。4~5時間のアッセイインキュベーション後に、各試料によって誘導されたルシフェラーゼ活性の量を、発光プレートリーダーを用いて測定した(図5)。対照及び試験試料の相対的効力は、以下のように、4P分析を用いてTDB参照標準物から生じた発光の標準曲線から決定された。
4パラメータロジスティック曲線フィッティングプログラムを使用して、標準物、対照、及び試料(複数可)に対する別個の曲線を生成する。
式は、
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
であり、式中、x=独立した変数
A=ゼロ用量応答(下漸近線=LA)
B=傾き
C=EC50、ng/mL
D=最大用量応答(上漸近線=UA)
以下のように、標準曲線(ST)及び各試験物質(TA)(対照または試料(複数可))曲線に対する応答倍率を決定する。
応答振幅=UA/LA
値を報告する。
以下のように、STと各TA曲線との間の類似性を確認する。
並列化について試験する。以下の式を用いて傾きの比を決定する。
以下の式を用いて下漸近線パーセントの差(LAD)を決定する。
以下の式を用いて上漸近線パーセントの差(UAD)を決定する。
制約された4-P平行曲線を用いて試験物質の効力を決定する。
ST及びTAについては、以下の式を用いて制約された曲線を生成する。
ρ=試験物質の相対的効力(相対的効力は、STのEC50のTAのEC50に対する比である)
対照及び試験(複数可)に対する、効力(相対的効力(%)として表される)を計算する。
効力=ρ×参照材料の活性
【0197】
CD69(C型レクチンタンパク質)及びCD25(IL-2受容体)は、T細胞活性化のマーカーであり(Shipkova M,2012,Clin.Chim.Acta.413:1338-49及びZiegler SF,et al.,1994,Stem Cells 12(5):465-465)、αCD20/CD3 TDBの添加から24時間後に、T細胞の表面上のそれらの誘導を、フローサイトメトリーにより評価した。CD69及びCD25細胞表面発現は、αCD20/αCD3 TDBとのインキュベーションに応答して用量依存性様式で増加し(図6A及び6B)、用量反応曲線は、JurkatNFkBLuc T細胞レポーター細胞株からのルシフェラーゼシグナルを測定することによって得られたものとよく相関し(図7)、ルシフェラーゼ測定が、JurkatNFkBLuc細胞を用いたTDB細胞系アッセイにおけるT細胞活性化の妥当な読み出しであることを示した。
【0198】
TDBとその標的との同時結合の量は、ELISA系架橋結合アッセイを用いて評価された。例示的な略図については図8を参照のこと。TDBによる標的抗原の、TCR複合体サブユニット及び細胞外ドメイン(ECD)の架橋は、TDBの作用の機序を表す不可欠な相互作用である。アッセイは、抗HER2/CD3 TDB変異体の異なる親和性を検出するために使用され(図9)、抗HER2/CD3使用は、熱応力条件(40℃で2週間及び4週間、図10Aを参照のこと)に供された。抗HER2/CD3についてのTDB架橋結合アッセイにおいて、HER2 ECD(CR#156)を、プレート上のコーティング材料として使用した。16~72時間後、プレートを洗浄し、次いでαHER2/CD3 TDBをアッセイ希釈剤中で1~2時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化CD3εペプチドを1~2時間インキュベートし、続いてStrep-HRPインキュベーションした。最終洗浄後、プレートに複合されたHRPの量を検出剤を使用して測定した。架橋結合アッセイとTDB細胞系アッセイとの間に強い相関関係(R=0.9976)が観察され(図10B)、これは、TDB効力の尺度としてTDB細胞系アッセイの使用をさらに支援した。
【0199】
架橋アッセイ
材料
コート材料:HER2 ECD(CR#156)
コーティング緩衝液:CaCl及びMgClを含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、Gibcoカタログ番号14190
アッセイ希釈/検出希釈緩衝液:PBS+0.5% BSA+0.05% PS20
洗浄緩衝液:PBS+0.05% PS20
検出:Strep-HRP
【0200】
コートプレート
1.コーティング緩衝液中で4μg/mLになるまでコーティング試薬を希釈する。
2.全ての96ウェルを、100μLをコーティングする。
3.プレートシーラーで密閉する。
4.2~8℃で16~72時間インキュベートする。
【0201】
アッセイ手順
1.洗浄プログラム「自動」を用いて洗浄緩衝液で6回プレートを洗浄する(すなわち、自動プログラムの2サイクルを実行する)。
2.1ウェル当たり200μLのADを用いてプレートをブロックする。密閉し、25℃で1~2時間振とうしながらインキュベートする。
3.AD中でaHER2 TDB Abを調製する。
4.ブロック後、ステップ1としてプレートを6回洗浄する。
5.100uLの希釈aHER2 TDBを各ウェルに添加する。25℃で1時間10分振とうしながらインキュベートした。
6.ステップ1を繰り返す。
7.CD3eペプチド(16mer)を最終濃度:1μg/mLのCD3eペプチドで調製する
8.100μLを各ウェルに添加する。1時間インキュベートする。
9.ステップ1を繰り返す。
10.Strep-HRPを2ng/mLの最終濃度で添加し、25Cで1時間インキュベートする。
11.ステップ1を繰り返す。
12.100μLのSure Blue Reserveをウェルに添加する。100μLの0.6N 硫酸で反応を停止する前に、最適な色現像まで現像する。
15.OD 450/650を読み取る
【0202】
実施例3.抗FcRH5/抗CD3抗体の分析
実施例2に記載されるアッセイを使用して、抗FcRH5/抗CD3 TBDの効力を測定した。アッセイでは、抗FcRH5/CD3のアッセイ標準物、対照、及び試験試料の希釈液を調製し、50μLを、96ウェルアッセイプレートに添加した。次いで、標的細胞(FcRH5を発現するEJM細胞)及びJurkatNFkBレポーター細胞を、凍結細胞が新鮮な培養細胞と同等であるという評価に従って、すぐに使用できる(R-to-U)凍結細胞または培養細胞のいずれかを使用して調製した。等体積の4.0×10細胞/mLの標的細胞希釈液及び1.6×10細胞/mLのJurkatNFkB細胞希釈液を組み合わせて、標的:エフェクター(T:E)細胞比が1:4の細胞混合物を調製した。50μLの混合した標的及びJurkatNFkBLuc細胞を、アッセイプレート中で各TDB希釈液に添加した。参照及び対照TDBについては、同じT:E比が、使用された。4~5時間のアッセイインキュベーション後に、各試料によって誘導されたルシフェラーゼ活性の量を、発光プレートリーダーを用いて測定した(図11)。対照及び試験試料の相対的効力は、実施例2に記載されるように、4P分析を用いてTDB参照標準物から生じる発光の標準曲線から決定された。
【0203】
抗FcRH5/CD3 TDBとその標的との同時結合の量は、実施例2に記載されるように、ELISA系架橋結合アッセイを用いて評価された。抗FcRH5/CD3についてのTDB架橋結合アッセイにおいて、ドメイン9のFcRH5 ECDをプレート上のコーティング材料として使用した。16~72時間後、プレートを洗浄し、次いでαFcRH5/CD3 TDBをアッセイ希釈剤中で1~2時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化CD3εペプチドを1~2時間インキュベートし、続いてStrep-HRPインキュベーションした。最終洗浄後、プレートに複合されたHRPの量を、検出剤を使用して測定した(図12)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
【配列表】
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