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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】局所的音場支援装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240219BHJP
   G10L 21/007 20130101ALI20240219BHJP
   G10L 21/0364 20130101ALI20240219BHJP
   G10L 25/51 20130101ALI20240219BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240219BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240219BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10L21/007
G10L21/0364
G10L25/51 400
H04R1/02 102A
H04R1/02 106
H04R1/40 320A
H04R3/00 320
H04R3/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019126012
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021013088
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】谷川 将規
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162212(JP,A)
【文献】特開2006-211177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0116755(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0068397(KR,A)
【文献】特開2007-304446(JP,A)
【文献】特開2014-236347(JP,A)
【文献】特開2016-219965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G10L 21/007
G10L 21/0364
G10L 25/51
H04R 1/02
H04R 1/40
H04R 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンスペース内のそれぞれのエリアの音を収音する収音器と、
前記収音器で収音された前記音に含まれるターゲット音を抽出するターゲット音抽出器と、
前記ターゲット音抽出器によって抽出された前記ターゲット音を強調して強調音を生成する強調音生成器と、
前記強調音を前記エリアに向けて出力する強調音出力器と、
を備え、
前記強調音は、前記ターゲット音の周波数成分から2kHz未満の周波数成分を削除し、2kHz以上の周波数成分を残すことで生成され
前記収音器は、前記エリアの上方に配され、円筒形のホルダと、前記ホルダに取り付けられた複数の収音マイクと、を有し、
前記複数の収音マイクは、前記ホルダの側面に、周方向において互いに等しい間隔をあけて放射状に配置され、
前記強調音出力器は、前記エリアの上方で、かつ、前記エリアの外周を囲むように配された指向性を有する複数のスピーカーである、
局所的音場支援装置。
【請求項2】
前記収音器で収音された前記音の成分の情報及び前記音が収音された所定の時間によって前記エリアにおける音源の位置を推定する音源位置推定器をさらに備えた、
請求項1に記載の局所的音場支援装置。
【請求項3】
前記収音器による前記音の収音、前記強調音生成器による前記強調音の生成、及び前記強調音出力器からの前記エリアへの前記強調音の出力を互いに同期させてそれぞれ行うタイミング制御器をさらに備えた、
請求項1又は2に記載の局所的音場支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的音場支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場やホールには、反響板又は音響反射板をはじめとする残響処理装置が設置されている。劇場等に比べて小スペースのオフィスには、吸音構造や吸音材料を有する壁、天井、仕切り板等が設置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オフィスや居住空間等でノイズ音に加えてターゲット音が同一空間に存在する場合においても、ノイズ音のみを聞こえにくくして、効果的にターゲット音を聞き取りやすくするための音環境制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-52049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、店舗や公共空間等に、オープンスペースや所謂「ワイガヤ」環境が多く設けられている。各エリア内の作業効率の向上と良好なコミュニケーションの確保のためには、使用目的毎のエリア内でターゲット音を聞き取りやすい音環境が求められる。しかしながら、オープンスペースでは、エリアと時間によって使用目的及び音源、音量が変わる。そのため、ノイズ音や他のエリアの音を制御して対象エリアの音環境を制御する従来の技術では、エリア毎に好適な音環境を確保しにくい、又は好適な音環境の確保に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、オープンスペースの各エリアに好適な音環境を提供可能な局所的音場支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の局所的音場支援装置は、オープンスペース内のそれぞれのエリアの音を収音する収音器と、前記収音器で収音された前記音に含まれるターゲット音を抽出するターゲット音抽出器と、前記ターゲット音抽出器によって抽出された前記ターゲット音を強調して強調音を生成する強調音生成器と、前記強調音を前記エリアに向けて出力する強調音出力器と、を備え、前記強調音は、前記ターゲット音の周波数成分から2kHz未満の周波数成分を削除し、2kHz以上の周波数成分を残すことで生成され、前記収音器は、前記エリアの上方に配され、円筒形のホルダと、前記ホルダに取り付けられた複数の収音マイクと、を有し、前記複数の収音マイクは、前記ホルダの側面に、周方向において互いに等しい間隔をあけて放射状に配置され、前記強調音出力器は、前記エリアの上方で、かつ、前記エリアの外周を囲むように配された指向性を有する複数のスピーカーである
【0008】
上述の局所的音場支援装置によれば、オープンスペース内の各エリアに強調音が出力されるので、ユーザが自身のいるエリア内にいるユーザ同士の会話等のターゲット音を聞き取りやすくなるように局所的音場がアクティブに支援される。このことによって、各エリアに好適な音環境が提供される。
【0009】
本発明の局所的音場支援装置において、前記収音器で収音された前記音の成分の情報及び前記音が収音された所定の時間情報によって前記エリアにおける音源の位置を推定する音源位置推定器をさらに備えてもよい。
【0010】
上述の局所的音場支援装置によれば、各エリア内の音源の位置が推定されるので、収音器を音源に向ける等によって収音能力が高まる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の局所的音場支援装置によれば、オープンスペースの各エリアに好適な音環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の局所的音場支援装置及び該局所的音場支援装置が設けられたオープンスペースの側面図である。
図2図1に示すオープンスペースの1つのエリアにおいて天井と床との間の構成の平面図である。
図3図2に示すY方向から見た局所的音場支援装置及びオープンスペースの側面図である。
図4図1に示す局所的音場支援装置のターゲット音抽出器によって抽出された会話音声の振幅成分の一例を示す図である。
図5図4に示す振幅成分から所定の周波数帯域に相当する振幅成分が除去された振幅成分を示す図である。
図6図4に示す振幅成分に図5に示す振幅成分を合成した強調会話音声の振幅成分を示す図である。
図7図1に示す局所的音場支援装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の局所的音場支援装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態の局所的音場支援装置10は、建築物の床202と天井200との間のオープンスペース100の局所的音場を支援するための装置である。オープンスペース100は、水平方向において壁や仕切り板等で仕切られないエリア110を複数有する。つまり、「局所的音場」とは、オープンスペース100を全体としたときに、オープンスペース100の一部であって空間的に互いに隣り合うエリア110の音場を意味する。オープンスペース100は、エリア110毎に会議や個別の作業、歓談等の個別の目的で同時に使用可能となるように構成された1つの空間である。
【0015】
本実施形態のオープンスペース100では、各エリア110に、机121と椅子122が設けられている。エリア110では、少なくとも1人のユーザ130が椅子122に座り、使用目的に合わせて過ごすことができる。例えば、図1には、1つのエリア111と、エリア111に隣り合うエリア112,113が図示されている。エリア111では、複数のユーザ130が机121を囲んでそれぞれ椅子122に座り、互いにコミュニケーションを取りつつ、会議を行っている。エリア112では、1人のユーザ130が椅子122に座り、机121の上で個人作業を進めている。エリア113では、少なくとも1人のユーザ130が椅子122に座り、休憩している。
【0016】
局所的音場支援装置10は1つのエリア110に1つ設けられているが、各エリア110の局所的音場支援装置10は互いに同様の構成を備えている。図1には、エリア111に設けられている局所的音場支援装置10のみが図示されている。以下、エリア111に設けられている局所的音場支援装置10の構成を中心に説明する。
【0017】
局所的音場支援装置10は、収音器20、ターゲット音抽出器40、強調音生成器50、強調音出力器60、音源位置推定器80及びタイミング制御器90を備えている。
【0018】
収音器20は、エリア111の中央部の天井200からエリア111の上方に垂下されている。収音器20は、円筒形のホルダ24と、複数の収音マイク22を有する。図2に示すように、本実施形態の収音器20は、8個の収音マイク22を有する。8個の収音マイク22は、ホルダ24の側面に、周方向において互いに等しい間隔をあけて配置されている。なお、図2では、ユーザ130は省略されている。図1は、図2に示すX-X線で見た局所的音場支援装置10及びオープンスペース100の側面図に対応している。
【0019】
収音マイク22は、エリア111の音を収音する。8個の収音マイク22の初期状態の収音方向は、ホルダ24の平面視中心から径方向の外側に向かって放射状に向いている。収音マイク22の種類は、特に限定されないが、例えば市販の収音マイク(製品名;CSMIC-S1R0、販売元;株式会社システムインフロンティア)等である。
【0020】
ターゲット音抽出器40は、天井空間210に配置されている。ターゲット音抽出器40は、音制御機構70に収められている。音制御機構70は、例えば平面視における収音器20と重なる天井空間210に設置されている。
【0021】
ターゲット音抽出器40は、収音器20に接続され、収音器20で収音された音に含まれるターゲット音を抽出する。ターゲット音は、各エリア110においてユーザ130が使用目的に応じて聞き取る対象の音を意味する。エリア111のターゲット音は、エリア111内にいる全てのユーザ130の会話音声である。ターゲット音抽出器40は、8個の収音マイク22によって収音された音から、複数のユーザ130の会話音声を抽出し、抽出した会話音声を強調音生成器50に出力する。
【0022】
強調音生成器50は、音制御機構70に収められている。強調音生成器50は、ターゲット音抽出器40によって抽出され且つターゲット音抽出器40から入力されたターゲット音を強調して強調音を生成する。強調音は、ターゲット音をユーザ130が聞き取りやすくなるように強調した音を意味する。ターゲット音から強調音を生成する方法として、例えば、ターゲット音の周波数成分から母音成分が多く含まれる2kHz未満の周波数成分を削除し、子音成分が多く含まれる2kHz以上の周波数成分を残す、又は2kHz以上の周波数成分を増幅する方法が挙げられる。ターゲット音から強調音を生成する他の生成方法としては、例えば、ターゲット音の音量を、ターゲット音のピーク周波数に対しラウドネス曲線に基づいてユーザ130がターゲット音の音量を所定の音量[dB]であると感じることができる物理音量[dB]に増幅する方法が挙げられる。強調音生成器50は、生成した強調音を強調音出力器60に出力する。
【0023】
強調音出力器60は、強調音生成器50に接続され、エリア111の外周部の天井200からエリア111の上方に複数垂下されている。強調音出力器60は、スピーカー62を有する。図2に示すように、本実施形態では、エリア111の椅子122と同数の6個のスピーカー62が設けられている。図1及び図3に示すように、スピーカー62は、エリア111の上方に設けられている。図2に示すように、スピーカー62は、平面視において、収音器20の平面視中心と椅子122の座123の平面視中心とを結ぶ線上の近傍且つ椅子122を挟んで収音器20とは反対側の位置に設けられている。
【0024】
6個のスピーカー62は、それぞれ指向性を有する。図1に示すように、スピーカー62の出力面64は、側面視において、エリア111の上方から椅子122及び椅子122に座っているユーザ130に向いている。スピーカー62の指向性、即ちスピーカー62から強調音が出力される方向は、エリア111の上方の出力面64の正面視中心と座123の平面視中心とを結ぶ線に概ね沿っている。強調音出力器60は、強調音生成器50から入力された強調音をエリア111に向かって出力する。スピーカー62の種類は、特に限定されないが、例えば市販の超指向性スピーカー(製品名;PS-60E、販売元;三菱電機エンジニアリング株式会社)等である。
【0025】
音源位置推定器80は、音制御機構70に収められている。音源位置推定器80は、収音器20で収音されたエリア111内の音の成分の情報及びエリア111内の音が収音された所定の時間によってエリア111における音源の位置を推定する。エリア111内の音の成分の情報には、例えばエリア111内の会話音声の数、各会話音声の周波数分布、時間変化等が含まれる。前述の所定の時間は、収音開始から収音終了までの時間であり、音制御機構70において適宜設定された一定又は不定の時間であってもよい。
【0026】
タイミング制御器90は、音制御機構70に収められている。タイミング制御器90は、収音器20によるエリア111内の音の収音、強調音生成器50による強調音の生成、及び強調音出力器60からのエリア111への強調音の出力を互いに同期させてそれぞれ行う。
【0027】
音制御機構70は、例えばコンピュータで構成されている。ターゲット音抽出器40は、収音器20で収音された音に含まれるターゲット音を抽出するプログラムで構成され、前述のコンピュータに内蔵されている。強調音生成器50は、ターゲット音抽出器40によって抽出されたターゲット音を強調して前述のように強調音を生成するプログラムで構成され、前述のコンピュータに内蔵されている。音源位置推定器80は、収音器20で収音されたエリア111内の音の成分の情報及びエリア111内の音が収音された時間によってエリア111における音源の位置を推定するプログラムで構成され、前述のコンピュータに内蔵されている。タイミング制御器90は、前述のように収音器20による収音、強調音生成器50による強調音の生成、強調音出力器60からの強調音の出力を互いに同期させて制御するプログラムで構成され、前述のコンピュータに内蔵されている。
【0028】
音制御機構70には、ターゲット音抽出器40、強調音生成器50、音源位置推定器80、タイミング制御器90に加えて、収音マイク22の指向性を制御する収音器調整器、緊急事態発生時には緊急事態発生を知らせる内容の強調音をはじめとする各種出力音の調整器、制御器が収められている。つまり、音制御機構70は、局所的音場支援装置10の動作を総合的に制御する制御機構として機能する。
【0029】
次に、局所的音場支援装置10によるエリア111の音場支援の流れの一例を説明する。エリア111でユーザ130同士の会話が開始されると、収音器20はエリア111内の音を収音する。収音された音は、収音器20からターゲット音抽出器40に伝送される。
【0030】
ターゲット音抽出器40は、入力された音から、エリア111のターゲット音である会話音声を抽出する。抽出された会話音声(ターゲット音)は、ターゲット音抽出器40から強調音生成器50に伝送される。強調音生成器50は、入力された会話音声を強調して強調音を生成する。例えば、図4は、入力された会話音声の90秒間の振幅分布を表している。図4では、会話音声の振幅は-1~+1の範囲で規格化されている。強調音生成器50は、図4に示す会話音声の振幅分布をフーリエ変換し、不図示の周波数分布を得る。強調音生成器50は、得られた周波数分布のうち子音成分が少ない2kHz未満の成分を除去し、残りの周波数分布を逆フーリエ変換し、図5に示す強調音声(強調音)の振幅分布を得る。このような強調音声の生成方法は強調音生成器50における強調音の生成方法の一例である。
【0031】
生成された強調音は、強調音生成器50から強調音出力器60に伝送される。本実施形態では、強調音生成器50は、例えば図4に示す元の会話音声の振幅分布に図5に示す強調音声の振幅分布を加え、図6に示す強調会話音声(強調音)の振幅分布を得る。強調音生成器50は、図6に示す振幅分布を有する強調会話音声を強調音出力器60に出力する。
【0032】
強調音出力器60は、強調音生成器50から入力された強調音をエリア111に向かって出力する。
【0033】
図7に示すように、収音器20によって収音されたエリア111内の音は、収音器20から音源位置推定器80にも伝送される。音源位置推定器80は、入力されたエリア111内の音の成分の情報、及び少なくとも音制御機構70が把握しているエリア111内の音が収音された時間によって、エリア111における音源の位置を推定する。エリア111については、例えば音源位置推定器80は、入力されたエリア111内の音の成分及び時間の各情報に基づいて、エリア111内のユーザ130の位置情報(音源の位置)を推定する。エリア111内のユーザ130の位置には、例えば図2に示す6つの椅子122のいずれにユーザ130が座っているのかという情報、椅子122に座っておらずにエリア111内にいるユーザ130の有無等が広く含まれる。
【0034】
音源位置推定器80で推定された音源の位置は、収音器20に対して出力される。具体的には、音制御機構70によって、例えば各収音マイク22の指向性を制御する制御器によって、8個の収音マイク22のそれぞれの指向性を音源の位置に集中させる。音制御機構70によって、例えば8個の収音マイク22のうち音源の位置に近い収音マイク22の収音性能を他の収音マイク22の収音性能より高める、又は音源の位置に近い収音マイク22で収音された音を他の収音マイク22で収音された音より増幅する。
【0035】
図7に示すように、タイミング制御器90は、収音器20によるエリア111内の音の収音、強調音生成器50による強調音の生成、及び強調音出力器60からのエリア111への強調音の出力を互いに同期させる。タイミング制御器90は、エリア111内のユーザ130がリアルタイムの会話音声と強調音出力器60によって背後上方から届く強調会話音声との両方を違和感なく聞き取れるように、収音器20、ターゲット音抽出器40、強調音生成器50、強調音出力器60を互いに同期させ、前述の各種構成の動作のタイミングを制御する。
【0036】
上述の流れにより、エリア111の音場は、ユーザ130がターゲット音を聞き取りやすくなるように支援される。つまり、エリア111では、ユーザ130が同じエリア111内にいるユーザ130とのリアルな会話音声と背後上方から届く強調会話音声の両方を聞き取る。
【0037】
エリア111以外のオープンスペース100内の各エリア110では、上述の流れと同様の流れで音場が支援される。各エリア110のターゲット音抽出器40は、入力された音から、各エリア110の使用目的に合うターゲット音を抽出する。例えば、エリア112のターゲット音抽出器は、ターゲット音として、エリア112の収音器で収音された音から作業用のバックグラウンドミュージック(強調音)を抽出する。エリア113のターゲット音抽出器は、ターゲット音として、エリア113の強調音出力器から初期設定等で出力され且つエリア113内にいるユーザ130にリラックス効果を与えることができる音楽(強調音)そのものを抽出する。
【0038】
各エリア110の強調音生成器50は、入力されたターゲット音を各エリア110の使用目的に合わせて強調して、各エリア110の使用目的に合う強調音を生成する。例えば、エリア112の強調音生成器は、エリア112のターゲット音抽出器から入力されたバックグラウンドミュージックの高周波成分のみを増幅した強調音を生成する。エリア113の強調音生成器は、エリア113のターゲット音抽出器から入力された音楽そのものを強調音として再生成する。
【0039】
以上説明した局所的音場支援装置10によれば、オープンスペース100内の各エリア110に強調音が出力されるので、各エリア110の音場が支援され、ユーザ130が自身のいるエリア110のターゲット音を聞き取りやすくなる。従来の音場支援装置等は各エリア110の使用目的に合ったターゲット音以外のノイズの原因となり得るノイズを検出し、ノイズの音量を減らす、或いはノイズを除去するというパッシブな音場の支援を行ってきた。一方、局所的音場支援装置10は、ノイズ等がある中で、ユーザ130に対して自身のいるエリア110に合ったターゲット音を強調して届けるというアクティブな音場の支援を行う。このことによって、局所的音場支援装置10は、オープンスペース100において使用目的が適宜変わる各エリア110に好適な音環境を提供できる。
【0040】
局所的音場支援装置10によれば、音源位置推定器80を備えているので、各エリア110内の音源の位置を推定し、収音マイク22を音源に向け、収音能力を高めることができる。
【0041】
局所的音場支援装置10によれば、タイミング制御器90を備えているので、各エリア110においてユーザ130がリアルタイムの音と強調音とを違和感なく聞き取り、ユーザ130に対する快適性を高めることができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0043】
例えば、収音器20の構成は、上述したようにホルダ24の側面に等間隔に8個の収音マイク22が配置されている構成に限定されない。収音器20は、指向性の方向を音制御機構からの制御信号に応じて適宜変更可能な1つ以上の収音マイクを備えていてもよい。
【0044】
また、エリア110の構成は、机121及び椅子122が設けられている構成に限定されない。エリア110には、机121のみが設けられてもよく、椅子122のみが設けられてもよく、これら以外の什器等が設けられてもよく、何ら設置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 局所的音場支援装置
20 収音器
40 ターゲット音抽出器
50 強調音生成器
60 強調音出力器
80 音源位置推定器
90 タイミング制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7