(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】インプラントを配置するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20240219BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61F2/95
A61B17/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019146052
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ソラウン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ブルーメンスティック
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/118011(WO,A1)
【文献】特表2001-504717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367857(US,A1)
【文献】特表2013-535286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントを配置するためのシステムであって、
ハイポチューブであって、前記ハイポチューブを通る管腔、及び近位端を備える、ハイポチューブと、
前記管腔内に位置決めされ、前記ハイポチューブの前記近位端の近位を延伸するプルワイヤであって、近位端及び外周を備える、プルワイヤと、
前記プルワイヤ上で前記プルワイヤの前記近位端に近接して位置決めされ、前記プルワイヤの前記外周を越えて延伸する係合隆起部と、
前記係合隆起部を摺動可能に受容するように寸法決めされた溝と、
遠位方向及び近位方向に移動可能なグリッパであって、前記グリッパは前記近位方向に移動すると前記係合隆起部と係合し、前記遠位方向に移動すると前記係合隆起部と係合解除する、グリッパと、
を備え
、
前記グリッパは、前記近位方向を向いた近位面を備え、前記係合隆起部は、前記遠位方向を向いた遠位面を備え、
前記グリッパが前記近位方向に移動すると、前記グリッパの前記近位面が前記係合隆起部の前記遠位面と係合し、前記グリッパが前記近位方向に移動することにより、前記係合隆起部が前記近位方向に移動して、前記プルワイヤが前記近位方向に移動し、その後、前記グリッパが前記遠位方向に移動すると、前記グリッパの前記近位面と前記係合隆起部の前記遠位面との係合が解除され、前記グリッパが前記遠位方向に移動しても、前記係合隆起部および前記プルワイヤは静止したままである、システム。
【請求項2】
前記グリッパの前記近位方向への移動は、前記係合隆起部のみを係合させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記グリッパと前記プルワイヤの前記外周との間に維持される空間を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記係合隆起部は、前記グリッパの前記近位方向への第1の移動の際に、前記溝の第1の長さにわたって前記近位方向に摺動し、
前記係合隆起部は、前記グリッパの前記遠位方向への第2の移動の際に、前記溝に対して静止したままであり、
前記係合隆起部は、前記グリッパの前記近位方向への第3の移動の際に、前記溝の第2の長さにわたって前記近位方向に摺動する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
軌道を更に備え、それを通って前記グリッパが移動可能であり、前記軌道が、
前記
溝に平行に位置決めされた平行セグメントと、
前記平行セグメントの遠位に位置決めされて、少なくとも横方向に前記
溝から遠ざかるように延伸する延伸セグメントと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記グリッパは、前記グリッパが前記近位方向に移動すると、前記プルワイヤを前記ハイポチューブの前記近位端から近位に延伸させ、前記プルワイヤは、前記グリッパが前記遠位方向に移動すると、前記ハイポチューブに対して静止したままである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記溝は、前記ハイポチューブの前記近位端に係合し、前記ハイポチューブが前記溝に対して近位移動するのを防止する遠位端を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記溝は、前記係合隆起部の横方向の移動を阻止するように寸法決めされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記グリッパに前記遠位方向のバネ力を加えるバネを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
それぞれ前記遠位方向及び前記近位方向に移動可能な第1及び第2のグリッパを更に備え、それぞれが前記近位方向に移動すると前記係合隆起部と係合し、前記遠位方向に移動すると前記係合隆起部と係合解除する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2のグリッパは、前記近位方向及び前記遠位方向に同時移動するために接合されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記グリッパは横方向に移動可能であり、前記グリッパの前記近位方向への移動は、前記プルワイヤに近づく第1の横方向移動をもたらし、前記グリッパの前記遠位方向への移動は、前記プルワイヤから後退する第2の横方向移動をもたらす、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には医療機器に関し、より具体的には管腔内インプラントを配置することに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の血管内インプラント装置が、当該分野において周知されている。多くは、送達のために1つ以上のカテーテルとワイヤとを組み合わせるシステムを介して機械的に配置される。機械的に送達され得るインプラントの例としては、塞栓要素、ステント、移植片、薬物送達インプラントなどが挙げられる。いくつかの分娩及び胃腸インプラントもまた、1つ以上のカテーテルとワイヤとを組み合わせる同様のシステムを介してインプラントされ得る。機械的手段によって解放又は配置され得る装置は、設計が大きく異なるが、同様の送達カテーテル及びワイヤシステムを用いることができる。多くのこうしたカテーテルベースの送達システムは、装置の解放時間までカテーテル内にインプラントを保持するためのワイヤを含む。これらのシステムは、続いてワイヤをカテーテルに対して後退させるか又は引くことによって作動される。こうしたワイヤは本明細書では「プルワイヤ」と称される。
【0003】
インプラントの正確な配置は、血管及び管腔異常の成功的治療のために極めて重要である。一部の用途では、プルワイヤが近位に引かれ、続いて遠位に押されると問題が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、こうした用途における問題を低減するためのシステム、デバイス、及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、上記の必要性に対処することができる、本発明の様々な例示的なシステム、装置、及び方法を開示する。一般に、実施例は、ハイポチューブの近位端から延伸するプルワイヤを有する埋め込み装置を含むことができ、プルワイヤは、プルワイヤの近位端付近に係合隆起部又は延伸部分を有することができる。実施例は、概して、ハイポチューブからプルワイヤを後退させるための装置を追加的に又は代替的に含むことができる。後退装置は、プルワイヤ及び係合隆起部が位置決めされ得るチャネル又は溝と、プルワイヤの係合隆起部と係合するように移動させることができる可動グリッパ又はリトラクタを有することができる。いったん係合隆起部が係合されると、グリッパが続いて近位に移動された場合、グリッパは、チャネルを通してプルワイヤを近位に引くことができ、又はグリッパが続いて遠位に移動された場合、グリッパは、プルワイヤの位置を乱すことなく、若しくはプルワイヤを遠位に移動させることなく係合隆起部を係合解除することができる。
【0006】
一実施例では、インプラントを配置するためのシステムは、ハイポチューブ、プルワイヤ、プルワイヤ上に位置決めされた係合隆起部、係合隆起部を摺動可能に受容するように寸法決めされた溝、及び可動グリッパを備えることができる。プルワイヤは、ハイポチューブの管腔内に位置決めされてハイポチューブ管腔外に近位方向へと延伸してもよく、係合隆起部はプルワイヤの近位端の近くに位置決めされてもよい。グリッパは、近位方向及び遠位方向に移動可能であり得、その結果、グリッパは、近位方向に移動すると係合隆起部と係合し、遠位方向に移動すると係合隆起部と係合解除することができる。グリッパの近位方向への移動は、プルワイヤの係合隆起部のみを係合させることができ、プルワイヤの他の表面は係合させない。システムは、グリッパとプルワイヤの外周との間に維持される空間を更に備えることができる。
【0007】
係合隆起部は、グリッパの近位方向への第1の移動の際に、溝の第1の長さにわたって近位方向に摺動することができ、係合隆起部は、グリッパの遠位方向への第2の移動の際に、溝に対して静止したままであることができ、係合隆起部は、グリッパの近位方向への第3の移動の際に、溝の第2の長さにわたって近位方向に摺動することができる。
【0008】
システムは、軌道を更に備えることができ、それを通ってグリッパが移動可能である。軌道は、チャネルに平行に位置決めされた平行セグメントと、平行セグメントの遠位に位置決めされて、少なくとも横方向にチャネルから遠ざかるように延伸する延伸セグメントと、を有することができる。
【0009】
グリッパは、グリッパが近位方向に移動すると、プルワイヤをハイポチューブの近位端から近位に延伸させることができ、プルワイヤは、グリッパが遠位方向に移動すると、ハイポチューブに対して静止したままであることができる。グリッパはまた、横方向に移動可能であってもよく、グリッパの近位方向への移動は、プルワイヤに近づく第1の横方向移動をもたらすことができ、グリッパの遠位方向への移動は、プルワイヤから後退する第2の横方向移動をもたらすことができる。システムは、グリッパに遠位方向のバネ力を加えるバネを更に備えることができる。
【0010】
溝は、ハイポチューブの近位端に係合し、ハイポチューブが溝に対して近位移動するのを防止する遠位端を更に備えることができる。溝は、係合隆起部の横方向の移動を阻止するように寸法決めされ得る。
【0011】
システムは、それぞれ遠位方向及び近位方向に移動可能な第1及び第2のグリッパを更に備えることができ、それぞれが近位方向に移動すると係合隆起部と係合し、遠位方向に移動すると係合隆起部と係合解除する。第1及び第2のグリッパは、近位方向及び遠位方向に同時移動するために接合され得る。
【0012】
ハイポチューブからプルワイヤを後退させるための例示的な装置は、チャネル及び遠位面を有するレセプタクルと、係合面を有するレセプタクルに連結されたリトラクタと、を備えることができる。レセプタクルのチャネルはプルワイヤを摺動可能に受容することができ、レセプタクルの遠位面はハイポチューブの近位端と係合することができる。リトラクタは、チャネルに平行に近位方向及び遠位方向に移動可能であり得、係合面は、プルワイヤの延伸部分と係合するようにチャネルの近くに位置決めされ得る。リトラクタの近位移動は、ハイポチューブの近位端からプルワイヤを引き抜き、それによってプルワイヤをチャネル内に延伸させることができる。続くリトラクタの遠位移動は、プルワイヤがハイポチューブに対して静止したままであるように、プルワイヤの延伸部分を係合解除させることができる。
【0013】
装置は、チャネルに平行に位置決めされた平行セグメントを有する軌道を更に備えることができる。リトラクタは、平行セグメントがリトラクタの横方向の移動を阻止するように、軌道に連結することができる。軌道は、チャネルから遠ざかるように延伸する平行セグメントの遠位に位置決めされた延伸セグメントを更に備えることができ、リトラクタは、軌道の延伸セグメントに沿って移動されるとき、少なくとも横方向に移動可能であり得る。
【0014】
装置は、リトラクタに遠位方向のバネ力を加えるバネを更に備えることができる。
【0015】
装置は、第1の軌道内で移動可能な第1のリトラクタと、第2の軌道内で移動可能な第2のリトラクタと、を更に備えることができる。第1及び第2の軌道は、チャネルの長さによって画定される軸を中心に互いの鏡像として形状決めされることができ、第1及び第2のリトラクタは、同時移動のために連結されることができる。
【0016】
インプラント送達システムを操作する例示的な方法は、プルワイヤ及びハイポチューブを有する埋め込み装置を提供する工程と、プルワイヤ上のプルワイヤの近位端付近に係合隆起部を位置決めする工程と、チャネル及びグリッパを有する後退装置を提供する工程と、プルワイヤをチャネル内に位置決めする工程と、ハイポチューブの近位端を後退装置の遠位面と係合させる工程と、グリッパを移動させて係合隆起部と係合させる工程と、チャネルを通してグリッパ及び係合された係合隆起部を近位に引くことにより、プルワイヤをハイポチューブの近位端から近位に後退させる工程と、グリッパを遠位に移動させて係合隆起部と係合解除させる工程と、グリッパの遠位への移動に応答して、チャネルに対してプルワイヤの静止位置を維持する工程と、を含むことができる。
【0017】
方法は、チャネルに平行に位置決めされた平行軌道セグメントを提供する工程と、グリッパを平行軌道セグメントに連結する工程と、平行軌道セグメントを通してグリッパをチャネルと平行に移動させる工程と、平行軌道セグメントの連結によってグリッパの横方向の移動を阻止する工程と、を更に含むことができる。後退装置は、上述のグリッパ及び第2のグリッパの2つのグリッパを有することができ、方法は、チャネルの両側にグリッパを位置決めする工程と、同時移動するためにグリッパを互いに連結する工程と、を更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記及び更なる態様は、
添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ以上の実装形態を描写している。
【
図2B】軌道及びチャネルを描写する、
図2Aの例示的な装置の一部分の拡大図である。
【
図3】ハイポチューブから延伸してチャネル内に位置決めされた係合隆起部を有するプルワイヤを描写する、本発明の例示的なシステムの一部分の拡大図である。
【
図4】プルワイヤの係合隆起部に係合する一対のグリッパの近位移動を示す、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図5A】プルワイヤ上の係合隆起部付近に位置決めされた一対のグリッパを描写する、本発明の例示的なシステムの一部分の拡大図である。
【
図5B】係合隆起部に係合する一対のグリッパを描写する、
図5Aの例示的なシステムの一部分の拡大図である。
【
図6】プルワイヤが完全に後退していることを描写する、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図7】プルワイヤの後退後にそれらの元の位置に戻された一対のグリッパを描写する、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図8A】グリッパの近位方向の第1の移動、グリッパの遠位方向の第2の移動、及びグリッパの近位方向の第3の移動を(それぞれ)示す、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図8B】グリッパの近位方向の第1の移動、グリッパの遠位方向の第2の移動、及びグリッパの近位方向の第3の移動を(それぞれ)示す、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図8C】グリッパの近位方向の第1の移動、グリッパの遠位方向の第2の移動、及びグリッパの近位方向の第3の移動を(それぞれ)示す、本発明の例示的なシステムの図である。
【
図9】本発明に従って実施することができる方法工程を概説するフローチャートである。
【
図10】本発明に従って実施することができる方法工程を概説するフローチャートである。
【
図11】本発明に従って実施することができる方法工程を概説するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
インプラント送達システムは、カテーテル又はハイポチューブから延伸するプルワイヤを備えることができ、プルワイヤは、プルワイヤの近位端に係合隆起部又は延伸部分を有している。プルワイヤは、後退装置の溝又はチャネル内に位置決めすることができ、ハイポチューブが溝を通って移動することが防止される間に、溝を通して制御可能に摺動させることができる。
【0020】
後退装置は、Y字形を共に形成する、溝の両側に配置された軌道を含むことができ、グリッパ又はリトラクタは、プルワイヤ溝に沿って軌道によって案内され得る。これらの初期位置では、グリッパは、Y字軌道の幅広の遠位端上に位置決めすることができる。グリッパは、Y字軌道を通して近位に並進させて、グリッパが、プルワイヤとは接触しないが係合隆起部と接触するまでプルワイヤに近づくように移動させることができる。グリッパは、プロセス内で、Y字軌道の平行部分を通して更に近位に並進させて、係合隆起部(及び、その結果、プルワイヤ)を近位方向に引くことができる。
【0021】
後退装置は、グリッパに取り付けられたバネを含むことができ、バネはグリッパを遠位方向に押すバネ力を提供することができ、グリッパは、摺動部による同時並進のために一体に接合され得る。摺動部が解放されると、グリッパは、軌道の幅広の遠位端上のこれらの初期位置まで遠位に移動することができる。グリッパの遠位移動は、プルワイヤを乱すことなく係合隆起部を係合解除することができる。グリッパが時期尚早に解放されるシナリオであっても、グリッパは、プルワイヤの遠位並進を引き起こすことなく遠位方向に移動することができる。
【0022】
インプラントを配置するための例示的なシステム100を
図1に示す。システム100は、ハイポチューブ310及びプルワイヤ320を有する埋め込み装置と、チャネル又は溝220及び1つ以上のグリッパ又はリトラクタ240を有するリトラクタ装置と、を含むことができる。プルワイヤ320は、ハイポチューブ310の管腔316から近位方向に延伸し得る。プルワイヤ320はチャネル220内に位置決めすることができ、ハイポチューブ310は、リトラクタ装置に当接する近位面312を有するように位置決めすることができ、ハイポチューブ310がチャネル220を通って近位方向に移動することを防止する。プルワイヤ320は、プルワイヤ320の近位端324上又はその付近に位置決めされた係合隆起部328を有することができ、係合隆起部328は、チャネル220を通って摺動するように寸法決めされ得る。
図1は、バネ250によって遠位方向14に押された、開始位置に位置決めされたグリッパ240を示す。図示のように、グリッパ240は軌道260内に位置決めされ得、バネ250が反対方向のバネ力を提供することにより、軌道260を通って近位方向12に引かれ得る。軌道260は、グリッパ240が近位に引かれると、グリッパ240がプルワイヤ320に近づき、プルワイヤ320の係合隆起部328と係合するように、Y字形を形成することができる。グリッパ240は、続いて、グリッパ240とプルワイヤ320との間の空間を維持しながら、チャネル220に対して平行に近位方向に引っ張られることができる。いったん解放されると、グリッパ240は、プルワイヤ320の位置決めを妨げることなく、係合隆起部328を係合解除し、開始位置に戻ることができる。
【0023】
図2Aは、例示的なリトラクタ装置200を示す。リトラクタ装置は、埋め込み装置のプルワイヤ320を受容するためのレセプタクル210を有することができる。
【0024】
図2Bは、軌道260及びチャネル220を描写する、
図2Aの例示的な装置の一部分の拡大図である。軌道260は、チャネル220に実質的に平行に移動する平行セグメント262と、チャネル220から離れるように少なくとも横方向20に延伸する延伸セグメント264と、を有することができる。図示のように、延伸セクションはまた、Y字形の半体を形成するように遠位に延伸し得る。
図2Aの装置は、Y字形の2つの半体を形成するように中心軸232を中心にミラーリングされた、チャネル220の反対側に位置決めされた2つの軌道260を有することができる。
【0025】
図3は、例示的なシステムの一部分の拡大図である。図示のように、プルワイヤ320は、ハイポチューブ管腔316から延伸して、チャネル220内に位置決めされ得る。チャネル220は、プルワイヤ320の近位端324で係合隆起部328を摺動可能に受容し、同時にハイポチューブ310が近位方向に移動するのを阻止するように寸法決めされた幅222を有することができる。ハイポチューブ310は、チャネル220よりも大きい寸法の外周318を有することができ、後退装置は、チャネル220の遠位端224付近に遠位面230を有することができ、その結果、プルワイヤ320がチャネル220内に位置決めされると、ハイポチューブ310の近位端312が後退装置の遠位面230に当接して、それによってチャネル220に対するハイポチューブ310の近位移動を防止することができる。
【0026】
図4は、プルワイヤ320の係合隆起部328に係合するように位置決めされた一対のグリッパ240a、240bを示す図である。第1及び第2のグリッパは、軌道がY字形状を形成するように、第1及び第2の軌道260a、260bに沿って移動させることができる。各軌道は、チャネル220から離れるように延伸する延伸セグメント264と、チャネル220と平行に延伸する平行セグメント262と、を有し得る。
図4では、グリッパ240a、240bは、延伸セグメント264と平行セグメント262との交点に位置決めされて示されている。この位置で、グリッパ240a、240bは係合隆起部328と係合することができ、グリッパ240a、240bの更なる近位移動は、チャネル220を通してプルワイヤ320を近位方向に移動させることができる。
【0027】
図5Aは、プルワイヤ320上の係合隆起部328の近くに位置決めされた一対のグリッパ240a、240bを示す拡大図である。各グリッパは、グリッパ240a、240bが近位方向12に引っ張られると係合隆起部328と係合することができる係合面242を有し得る。示されるように、プルワイヤ320は、係合隆起部328よりも狭い外周326を有することができ、グリッパ240a、240bはプルワイヤ320に接近して、プルワイヤ320と接触することなく係合隆起部328と係合することができる。チャネル220は、幅222を有することができ、プルワイヤ320の外周326は、グリッパ240a、240bがチャネル220内に延伸して、プルワイヤ320と接触することなく係合隆起部328と係合することができるように寸法決めされ得る。
【0028】
図5Bは、係合隆起部328と係合する一対のグリッパ240a、240bを示す拡大図である。グリッパ240a、240bは、
図5Aに対して近位方向12に移動されている。グリッパ240a、240bとプルワイヤ外周326との間に空間244が維持され、その結果、グリッパ240a、240bは係合隆起部328のみと係合し、他の方法でプルワイヤ320と係合しない。
【0029】
図5Cは
図5Bに示されるシステムの断面図である。プルワイヤ320は、プルワイヤ320から円周方向に延伸する係合隆起部328と共に中央に位置して示され、チャネル220は係合隆起部328を部分的に取り囲むように示されている。グリッパ240a、240bは、各グリッパが、グリッパと係合隆起部328との重なり合いによって画定される係合面242を有するように、係合隆起部328と重なって示されている。グリッパ240a、240bがプルワイヤ320に接触しないようにグリッパ240a、240bとプルワイヤ320との間に配置された間隙244が示されている。
【0030】
図6は、完全に後退したプルワイヤ320を示す図である。第1及び第2のグリッパは、第1及び第2の軌道260a、260bを通って近位方向に移動して、プルワイヤ320をハイポチューブ310から後退させることができる。
図6は、これらの対応する軌道260a、260bの近位端にそれぞれ位置決めされたグリッパ240a、240bを示す。
【0031】
図7は、プルワイヤ320の後退後にそれらの元の位置に戻された一対のグリッパ240a、240bを示す図である。グリッパ240a、240bが解放されると、バネ250は、プルワイヤ320が完全に後退したままで、各グリッパを各軌道260a、260bを通してこれらの元の位置に移動させることができる。
【0032】
図8A~
図8Cは、グリッパ240a、240bの一連の移動を示す図である。
図8Aは、各対応する軌道260a、260bの平行セグメント262に沿った、グリッパ240a、240bの近位方向12への第1の移動を示す。グリッパ240a、240bは、係合隆起部328と係合して、プルワイヤ320をチャネル220の第1の長さ226を通して摺動させることができる。
図8Bは、グリッパ240a、240bの遠位方向14への第2の移動を示す。グリッパ240a、240bの遠位移動は、係合隆起部328を係合解除させることができ、プルワイヤ320は、
図8Aに示すように、部分的に後退した位置に留まることができる。
図8Cは、グリッパ240a、240bの近位方向12への第3の移動を示す。グリッパ240a、240bが
図8Aに示すように更に近位方向に移動されると、グリッパ240a、240bは係合隆起部328と係合して、プルワイヤ320をワイヤの第2の長さ228を通して近位方向に移動させることができる。
【0033】
図9は、インプラント送達中に実行され得る方法工程を概説するフローチャート700である。工程710では、プルワイヤ及びハイポチューブを有する埋め込み装置を提供することができる。工程720では、プルワイヤ上のプルワイヤの近位端に近接して係合隆起部を位置決めすることができる。工程730では、チャネル及びグリッパを有する後退装置を提供することができる。工程740では、プルワイヤをチャネル内に位置決めすることができる。工程750では、ハイポチューブの近位端は、後退装置の遠位面と係合することができる。工程760では、グリッパを移動させて係合隆起部に係合させることができる。工程770では、チャネルを通してグリッパ及び係合された係合隆起部を近位に引くことにより、プルワイヤをハイポチューブの近位端から近位に後退させることができる。工程780では、グリッパを遠位方向に移動させて、係合隆起部と係合解除させることができる。工程790では、グリッパが遠位方向に移動されると、プルワイヤはチャネルに対して静止位置に留まることができる。
【0034】
図10は、
図9に概説される方法工程に加えて、又はその代わりに実行され得る方法工程を概説するフローチャート800である。工程832では、平行軌道セグメントをチャネルと平行に位置決めすることができる。工程834では、グリッパを平行軌道セグメントと連結することができる。工程872では、グリッパを、平行軌道セグメントを通ってチャネルと平行に移動させることができる。工程880では、グリッパを平行軌道セグメントと連結することにより、グリッパの横方向の移動を阻止することができる。
【0035】
図11は、
図9及び
図10に概説される方法工程に加えて、又はその代わりに実行され得る方法工程を概説するフローチャート900である。工程930では、チャネルと一対のグリッパとを備える後退装置を提供することができる。工程933では、グリッパを、チャネルの両側で互いに反対側に位置決めすることができる。工程935では、グリッパを、同時移動のために互いに連結することができる。
【0036】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されるように、本発明は、ボール若しくはフック又は同様の機能を提供するその他の形状などの係合隆起部のための代替的構造、チャネルに対してグリッパを案内するための代替的手段、ハイポチューブを受容してその近位移動を防止するための代替的手段、溝内に配置されるときに係合隆起部がグリッパ空間を通って近位方向に通過することを可能にする代替的手段などを含む埋め込み配置システムの多くの変形及び修正を企図する。これらの修正は、本発明が関連する当技術分野の当業者に明らかとなり、また以下の特許請求項の範囲内であることが意図される。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) インプラントを配置するためのシステムであって、
ハイポチューブであって、前記ハイポチューブを通る管腔、及び近位端を備える、ハイポチューブと、
前記管腔内に位置決めされ、前記ハイポチューブの前記近位端の近位を延伸するプルワイヤであって、近位端及び外周を備える、プルワイヤと、
前記プルワイヤ上で前記プルワイヤの前記近位端に近接して位置決めされ、前記プルワイヤの前記外周を越えて延伸する係合隆起部と、
前記係合隆起部を摺動可能に受容するように寸法決めされた溝と、
遠位方向及び近位方向に移動可能なグリッパであって、前記グリッパは前記近位方向に移動すると前記係合隆起部と係合し、前記遠位方向に移動すると前記係合隆起部と係合解除する、グリッパと、
を備える、システム。
(2) 前記グリッパの前記近位方向への移動は、前記係合隆起部のみを係合させる、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記グリッパと前記プルワイヤの前記外周との間に維持される空間を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記係合隆起部は、前記グリッパの前記近位方向への第1の移動の際に、前記溝の第1の長さにわたって前記近位方向に摺動し、
前記係合隆起部は、前記グリッパの前記遠位方向への第2の移動の際に、前記溝に対して静止したままであり、
前記係合隆起部は、前記グリッパの前記近位方向への第3の移動の際に、前記溝の第2の長さにわたって前記近位方向に摺動する、
実施態様1に記載のシステム。
(5) 軌道を更に備え、それを通って前記グリッパが移動可能であり、前記軌道が、
前記チャネルに平行に位置決めされた平行セグメントと、
前記平行セグメントの遠位に位置決めされて、少なくとも横方向に前記チャネルから遠ざかるように延伸する延伸セグメントと、
を備える、実施態様1に記載のシステム。
【0038】
(6) 前記グリッパは、前記グリッパが前記近位方向に移動すると、前記プルワイヤを前記ハイポチューブの前記近位端から近位に延伸させ、前記プルワイヤは、前記グリッパが前記遠位方向に移動すると、前記ハイポチューブに対して静止したままである、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記溝は、前記ハイポチューブの前記近位端に係合し、前記ハイポチューブが前記溝に対して近位移動するのを防止する遠位端を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記溝は、前記係合隆起部の横方向の移動を阻止するように寸法決めされている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記グリッパに前記遠位方向のバネ力を加えるバネを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(10) それぞれ前記遠位方向及び前記近位方向に移動可能な第1及び第2のグリッパを更に備え、それぞれが前記近位方向に移動すると前記係合隆起部と係合し、前記遠位方向に移動すると前記係合隆起部と係合解除する、実施態様1に記載のシステム。
【0039】
(11) 前記第1及び第2のグリッパは、前記近位方向及び前記遠位方向に同時移動するために接合されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記グリッパは横方向に移動可能であり、前記グリッパの前記近位方向への移動は、前記プルワイヤに近づく第1の横方向移動をもたらし、前記グリッパの前記遠位方向への移動は、前記プルワイヤから後退する第2の横方向移動をもたらす、実施態様1に記載のシステム。
(13) ハイポチューブからプルワイヤを後退させるための装置であって、
プルワイヤを摺動可能に受容するためのチャネルと、ハイポチューブの近位端と係合するための遠位面と、を備える、レセプタクルと、
前記プルワイヤの延伸部分と係合するように前記チャネルの近くに位置決めされる係合面を備える、前記チャネルに平行に近位方向及び遠位方向に移動可能な、前記レセプタクルに連結されたリトラクタと、を備え、
前記リトラクタの近位移動は、前記ハイポチューブの前記近位端から前記プルワイヤを引き抜いて、前記プルワイヤを前記チャネル内に延伸させ、続く前記リトラクタの遠位移動は、前記プルワイヤが前記ハイポチューブに対して静止したままであるように、前記プルワイヤの前記延伸部分を係合解除させる、
装置。
(14) 前記チャネルに平行に位置決めされた平行セグメントを備える軌道を更に備え、前記リトラクタは前記軌道に連結され、前記平行セグメントは前記リトラクタの横方向の移動を阻止する、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記軌道は、前記平行セグメントの遠位に位置決めされ、前記チャネルから遠ざかるように延伸する延伸セグメントを更に備え、
前記リトラクタは、前記軌道の前記延伸セグメント内で少なくとも横方向に移動可能である、
実施態様14に記載の装置。
【0040】
(16) 第1の軌道内で移動可能な第1のリトラクタ及び第2の軌道内で移動可能な第2のリトラクタを更に備え、前記第1及び第2の軌道は、前記チャネルの長さによって画定される軸を中心に互いの鏡像として形状決めされ、前記第1及び第2のリトラクタは、同時移動のために連結されている、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記リトラクタに前記遠位方向のバネ力を加えるバネを更に備える、実施態様13に記載の装置。
(18) インプラント送達システムを操作する方法であって、
プルワイヤ及びハイポチューブを備える埋め込み装置を提供する工程と、
前記プルワイヤ上の前記プルワイヤの近位端付近に係合隆起部を位置決めする工程と、
チャネル及びグリッパを備える後退装置を提供する工程と、
前記プルワイヤを前記チャネル内に位置決めする工程と、
前記ハイポチューブの近位端を前記後退装置の遠位面と係合させる工程と、
前記グリッパを移動させて前記係合隆起部と係合させる工程と、
前記チャネルを通して前記グリッパ及び前記係合された係合隆起部を近位に引くことにより、前記プルワイヤを前記ハイポチューブの前記近位端から近位に後退させる工程と、
前記グリッパを遠位に移動させて前記係合隆起部と係合解除させる工程と、
前記グリッパの遠位への前記移動に応答して、前記チャネルに対して前記プルワイヤの静止位置を維持する工程と、
を含む、方法。
(19) 前記チャネルに平行に位置決めされた平行軌道セグメントを提供する工程と、
前記グリッパを前記平行軌道セグメントに連結する工程と、
前記平行軌道セグメントを通して前記グリッパを前記チャネルと平行に移動させる工程と、
前記平行軌道セグメントの連結によって前記グリッパの横方向の移動を阻止する工程と、
を更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記後退装置は前記グリッパ及び第2のグリッパを備え、前記方法は、前記チャネルの両側に前記グリッパを位置決めする工程と、同時移動するために前記グリッパを互いに連結する工程と、を更に含む、実施態様18に記載の方法。