(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】燃料電池用加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240219BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20240219BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04119
(21)【出願番号】P 2019154368
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0157535
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンソン
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112568(JP,A)
【文献】特開2011-089749(JP,A)
【文献】特開2007-093192(JP,A)
【文献】特開2007-205613(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0073524(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0364779(US,A1)
【文献】特開2009-064766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0162150(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0066418(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0054962(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0011273(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00 - 6/18
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、
前記膜モジュール部の一側に結合され、前記加湿膜に供給空気を供給する第1キャップ部と、
前記膜モジュール部の、前記一側の反対側である他側に結合され、前記加湿膜から流入される加湿された供給空気を排出する第2キャップ部と、
前記膜モジュール部の前記一側に結合され、燃料電池スタックから排出される排出空気を前記膜モジュール部に注入する排出空気流入部と、
前記膜モジュール
部の前記他側に結合され、前記膜モジュール部を通過した除湿された(dehumidified)排出空気を排気系統へ排出する排出空気排出部とを含み、
前記第1キャップ部には、前記加湿膜に供給される供給空気が流れる供給空気流入流路と、前記供給空気流入流路の内部に設置されるか又は少なくとも一部分が前記供給空気流入流路の内側へ進入可能に備えられる可変部材とが設けられ、
前記供給空気流入流路の内部の
前記供給空気の圧力を一方から受けるとともに前記排出空気流入部から注入される前記排出空気の圧力を他方から受けることにより、前記可変部材が、前記供給空気流入流路の中心に向かう内側方向と前記内側方向の反対方向である外側方向に移動させられ、前記供給空気流入流路の少なくとも一部分の流路断面積が可変となるように設けられる、燃料電池用加湿器。
【請求項2】
前記第1キャップ部は、前記供給空気流入流路及び前記可変部材が収容される内部空間を設ける第1キャップ部ハウジングを含み、
前記第1キャップ部ハウジングは、前記排出空気流入部と連通され、排出空気が前記第1キャップ部ハウジングの内部空間に流入され、
供給空気により前記可変部材の一側面が受ける力と、排出空気により前記可変部材の他側面が受ける力の差によって、前記可変部材が、前記内側方向と前記外側方向に移動させられる、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項3】
前記可変部材は、前記第1キャップ部ハウジングに軸回転可能に設置され、前記供給空気流入流路の一部分を形成するプレートを含み、
前記プレートは、一端が前記第1キャップ部ハウジングの一側に設置され、他端が前記膜モジュール
部の入口に向かって延長され、
供給空気により前記プレートの内側面が受ける力と、排出空気により前記プレートの外側面が受ける力の差によって、前記プレートが、前記内側方向と前記外側方向に回転させられる、請求項2に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項4】
前記可変部材は、前記プレートを弾性支持するために、前記第1キャップ部ハウジングの内部空間に設置される弾性部材をさらに含む、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項5】
前記プレートの動きが許容されるようにするために、前記プレートと前記供給空気流入流路の、固定された部分の間を連結しつつ伸縮可能に設けられる連結部材をさらに含む、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項6】
前記第1キャップ部ハウジングは、供給空気が流入される一側から前記膜モジュール部と結合される他側に行くほど内部空間が広くなるように形成され、前記プレートが前記外側方向に所定角度だけ回転させられ得るように設けられる、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項7】
前記第1キャップ部ハウジングの一側には、供給空気が流入される供給空気注入口が形成され、
前記供給空気流入流路の流路断面積は、前記供給空気注入口の流路断面積より広く形成される、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項8】
前記プレートは、第1及び第2プレートを含み、
前記第1キャップ部ハウジングの内部空間には、一対の固定流路壁が互いに向き合うように固定され、前記第1及び第2プレートが一対の固定流路壁の一側及び他側に互いに向き合って配置され、
前記第1及び第2プレートのそれぞれは、前記第1キャップ部ハウジングに軸回転可能に設置され、前記一対の固定流路壁と前記第1及び第2プレートが共に前記供給空気流入流路を形成する、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項9】
前記可変部材は、前記供給空気流入流路の内部に設置され、
ヘッドプレートと、前記ヘッドプレートを弾性支持し前記供給空気流入流路の内側に向けて前記ヘッドプレートを押す内部弾性部材と、前記ヘッドプレートと前記供給空気流入流路の間の気密を維持し、前記ヘッドプレートの動きが許容されるようにするために、伸縮可能に設けられる伸縮部材とを含み、
前記ヘッドプレートと前記伸縮部材によって、前記内部弾性部材が収容される可変部材の内部空間が設けられ、
前記供給空気流入流路の、前記可変部材が設置される部分には貫通ホールが形成され、前記貫通ホールを介して排出空気が前記可変部材の内部空間に流入されて前記ヘッドプレートの外側面を加圧し、
供給空気により前記ヘッドプレートの内側面が受ける力と、排出空気により前記ヘッドプレートの外側面が受ける力の差によって、前記ヘッドプレートが、前記内側方向と前記外側方向に移動させられる、請求項2に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項10】
加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、
前記膜モジュール部の一側に結合され、前記加湿膜に供給空気を供給する第1キャップ部と、
前記膜モジュール部の、前記一側の反対側である他側に結合され、前記加湿膜から流入される加湿された供給空気を排出する第2キャップ部と、
前記膜モジュール部の前記一側に結合され、燃料電池スタックから排出される排出空気を前記膜モジュール部に注入する排出空気流入部と、
前記膜モジュール部の前記他側に結合され、前記膜モジュール部を通過した除湿された(dehumidified)排出空気を排気系統へ排出する排出空気排出部とを含み、
前記第1キャップ部には、前記加湿膜に供給される供給空気が流れる供給空気流入流路と、前記供給空気流入流路の内部に設置されるか又は少なくとも一部分が前記供給空気流入流路の内側へ進入可能に備えられる可変部材とが設けられ、
前記第1キャップ部は、前記供給空気流入流路及び前記可変部材が収容される内部空間を設ける第1キャップ部ハウジングを含み、
前記可変部材は、前記第1キャップ部ハウジングに軸回転可能に設置され、前記供給空気流入流路の一部分を形成するプレートを含み、
前記プレートは、一端が前記第1キャップ部ハウジングの一側に設置され、他端が前記膜モジュール部の入口に向かって延長され、
供給空気により前記プレートの内側面が受ける力と、排出空気により前記プレートの外側面が受ける力の差によって、前記プレートが、前記内側方向と前記外側方向に回転させられる、燃料電池用加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、連続的に供給される燃料の化学的な反応により電気エネルギーを継続的に生産するシステムであって、地球環境問題を解決できる代案として持続的な研究開発が行われている。
【0003】
燃料電池システムは、用いられる電解質の種類によってリン酸型燃料電池(PAFC;phosphoric acid fuel cell)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC;molten carbonate fuel cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC;solid oxide fuel cell)、高分子電解質型燃料電池(PEMFC;polymer electrolyte membrane fuel cell)、アルカリ型燃料電池(AFC;alkaline fuel cell)及び直接メタノール燃料電池(DMFC)等に分類でき、用いられる燃料の種類とともに作動温度、出力範囲等によって移動電源用、輸送用、分散発電用等の多様な応用分野に適用され得る。
【0004】
このうち、高分子電解質型燃料電池は、内燃機関の代わりをするように開発されている水素自動車(水素燃料電池の自動車)分野に適用されている。
【0005】
水素自動車は、水素と酸素の化学反応を介して電気を生産し、モーターを駆動して走行するように構成される。したがって、水素自動車は、水素(H2)が保存される水素タンク(H2 Tank)、水素と酸素(O2)の酸化還元反応を介して電気を生産するスタック(FC STACK:Fuel Cell Stack)、生成された水を排水するための各種装置だけでなく、スタックで生産された電気を保存するバッテリー、生産された電気を変換及び制御するコントローラー、駆動力を生成するモーター等を含む構造を有する。
【0006】
このうち、スタックは、数十又は数百個のセルを直列で積み上げた燃料電池本体を称する装置であって、エンドプレートの間に複数個のセルが積層された構造を有し、且つ、それぞれのセルの内部は電解質膜で区画され、一側はアノード他側はカソードが設けられる。
【0007】
それぞれのセルの間には分離板が配置されて水素と酸素の流動経路を制限し、前記分離板は酸化還元反応時に電子を移動させるように伝導体(電気伝導体)で製造される。
【0008】
このようなスタックは、アノードに水素が供給されれば触媒によって水素イオンと電子に分離され、電子は分離板を介してスタック外部に移動しながら電気を生産し、水素イオンは電解質膜を通過てカソードに移動した後、外気から供給される酸素及び電子と結合して水を形成し外部に排出される。
【0009】
一方、燃料電池の運転時には、電解質膜を介して水素イオンが移動する時に外気から供給される他の成分の一部も移動が発生する問題がある。すなわち、大気の成分は、酸素が約21%、窒素が約78%で構成されるため、外気から流入された空気には、酸素よりさらに多い窒素が含有される。このとき、カソードから電解質膜を介してアノードへ移動した窒素は、アノード内に残るようになり水素濃度を相対的に低下させる問題をもたらすことになる。アノード内の水素濃度が一定水準以下になると、性能低下はもちろん耐久性低下の原因になる。
【0010】
このような問題を解決するために、スタック内のアノードには、排気ラインが連結されパージ弁の開閉により前記アノード内のガスを一定周期に外部へ排出するように構成される。しかし、アノードから排出されるパージガスには、相当な濃度の水素(一般的に60~70%水準)が含まれている。このように排出され捨てられる水素は、水素利用率の低下による燃料電池システムの効率低下をもたらす問題がある。
【0011】
高分子電解質型燃料電池は、膜-電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)の高分子電解質膜に一定量の水分を供給し、適正含水率を維持してこそ発電効率が維持され得る。
【0012】
燃料電池システムは、スタック内部に流入される流入ガスを加湿するために加湿器を含んで構成されてもよい。
【0013】
加湿器は、燃料電池スタック内部の湿度状態によって加湿量の調節が必要であるが、スタック内部が過湿の場合にも流入ガスの拡散が低下され発電効率が低下され得るからである。
【0014】
このために、従来の燃料電池システムには、流入ガスの一部が加湿器を通過せず、スタックに真直ぐ連結されるようバイパス流路を形成し、他の一部が加湿されるよう構成もしたが、この場合、システムが複雑になる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、スタックの多様な運転条件に合わせて能動的に加湿量を適切に調節可能な燃料電池用加湿器を提供することに主目的がある。
【0016】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるはずであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を達成するために、本発明の一実施形態による燃料電池用加湿器は、加湿膜を内部に収容する膜モジュール部と、膜モジュール部の一側に結合され、加湿膜に供給空気を供給する第1キャップ部と、膜モジュール部の、一側の反対側である他側に結合され、加湿膜から流入される加湿された供給空気を排出する第2キャップ部と、膜モジュール部の一側に結合され、燃料電池スタックから排出される排出空気を膜モジュール部に注入する排出空気流入部と、膜モジュールの他側に結合され、膜モジュール部を通過した除湿された(dehumidified)排出空気を排気系統へ排出する排出空気排出部とを含む。
【0018】
前記第1キャップ部には、加湿膜に供給される供給空気が流れる供給空気流入流路と、供給空気流入流路の内部に設置されるか又は少なくとも一部分が供給空気流入流路の内側へ進入可能に備えられる可変部材が設けられ、供給空気流入流路の内部の圧力により、可変部材が、供給空気流入流路の中心に向かう内側方向と内側方向の反対方向である外側方向に移動させられ、供給空気流入流路の少なくとも一部分の流路断面積が可変となるように設けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、次のような効果が一つ或いはそれ以上ある。
【0020】
供給空気流入流路の内部の圧力により、可変部材が、供給空気流入流路の中心に向かう内側方向と内側方向の反対方向である外側方向に移動され、供給空気流入流路の少なくとも一部分の流路断面積が可変されるように設けられることで、別途の電源供給なしにも加湿器の加湿量が能動的に調節され得る。
【0021】
これを介して、スタックの多様な運転条件に合わせて能動的に加湿量が調節されることで、スタックの内部でドライング又はフラッディングが発生し、スタックの性能が減少されるか、ひいてはスタックが損傷されることを防止できる。
【0022】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、特許請求範囲の記載から当業者に明確に理解されるはずであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図である。
【
図3】
図1の燃料電池用加湿器の動作を説明するための図である。
【
図4】
図1の燃料電池用加湿器の動作を説明するための図である。
【
図5】本発明の他の実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一部実施形態を例示的な図面を介して詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同一の構成要素に対してはたとえ他の図面上に表示されるとしても、出来る限り同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施形態を説明することにおいて、関連された公知構成又は機能に対する具体的な説明が本発明の実施形態に対する理解を邪魔すると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0025】
また、本発明の実施形態の構成要素を説明することにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)等の用語を用いてよい。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためだけのものであり、その用語によって当該構成要素の本質や順番又は順序等が限定されない。ある構成要素が他の構成要素に『連結』、『結合』又は『接続』されると記載された場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接的に連結されるか接続されてよいが、各構成要素の間にまた他の構成要素が『連結』、『結合』又は『接続』されてもよいと理解されなければならない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図であり、
図2aは、
図1のA-A’断面図であり、
図2bは、
図1のB-B’断面図である。
【0027】
本発明の実施形態による燃料電池用加湿器は、水素としての燃料と酸化剤である空気の電気化学的な反応によって電気エネルギーを発生させる燃料電池システムに適用されてよい。例えば、前記燃料電池システムは、燃料電池車両に採用され電気モーターを作動させて車両を駆動させることができる。
【0028】
本発明の実施形態による燃料電池用加湿器は、燃料電池スタックから排出される排出空気と空気圧縮機から供給される供給空気の膜加湿が行われ、その加湿された空気(以下では、便宜上『加湿空気』と言う)を燃料電池スタックへ供給できる。
【0029】
このような燃料電池用加湿器は、基本的に膜モジュール部10、第1キャップ部20及び第2キャップ部30を含む。
【0030】
前記膜モジュール部10は、当業界で『シェル-イン(shell-in)』とも言い、複数の束の中空糸膜である加湿膜11が内部に密集されたものであり、例えば、円筒形状のハウジング内部に加湿膜11が内蔵されてよい。
【0031】
膜モジュール部10は、加湿膜11の両端を支持する支持部材(当業界では『ポッティング部』とも言う)を含んでよい。例えば、前記支持部材は、高分子素材でなり、ハウジングの両端に固定された状態で加湿膜11の両端部を支持できる。
【0032】
膜モジュール部10には、燃料電池スタックから排出される排出空気をハウジングの内部に注入するための排出空気流入口15と、水分が除去された排出空気を排気系統に排出するための排出空気排出口17が形成される。
【0033】
図1を参照すれば、本実施形態において前記排出空気流入口15と前記排出空気排出口17は、膜モジュール部10の上端にそれぞれ形成されるが、これに限定されず、膜モジュール部10の上端及び下端にそれぞれ形成されてもよい。
【0034】
前記第1キャップ部20は、当業界で『キャップ-イン(cap-in)』とも言い、空気圧縮機を介して供給される供給空気を膜モジュール部10の内部に注入するために設けられる。前記第1キャップ部20は、膜モジュール部10の一側端部に結合される。前記第1キャップ部20には、供給空気を膜モジュール部10に供給するための供給空気注入口21が形成される。
【0035】
前記第2キャップ部30は、当業界で『キャップ-アウト(cap-out)』とも言い、膜モジュール部10から流入された加湿空気を燃料電池スタックに排出するためのものである。前記第2キャップ部30は、膜モジュール部10の他の一側端部に結合される。第2キャップ部30には、その加湿空気を燃料電池スタックに排出するための加湿空気排出口31が形成される。
【0036】
従来の燃料電池用加湿器は、特定形状に固定され、燃料電池システムの作動条件に対応して能動的に加湿量を調節しにくい問題点が存在した。それにより、燃料電池システムが高出力の条件では燃料電池スタックが充分に加湿されず、乾燥(Drying)するようになって高い膜抵抗による性能低下が発生するか、燃料電池システムが低出力の条件では燃料電池スタックが過度に加湿され、セル内のフラッディング(Flooding)で空気流入を塞ぐようになり、性能低下が発生する問題点があった。
【0037】
本実施形態による燃料電池システムの作動条件に対応し、能動的に加湿性能が調節され得る燃料電池用加湿器に関するものである。より具体的に、本実施形態による燃料電池用加湿器は、燃料電池システムの作動条件に対応して能動的に加湿性能を調節するため、加湿膜11に供給される供給空気が流れる供給空気流入流路の内部の圧力により、前記供給空気流入流路の中心に向かう内側方向と前記内側方向の反対方向である外側方向に移動され、前記供給空気流入流路の少なくとも一部分の流路断面積が可変となるようにする可変部材100を含むことに基本的な特徴がある。
【0038】
以下の説明において加湿器の加湿性能は、加湿器自体の特性による最大加湿性能を意味するのではなく、加湿器が動作する条件により変化する加湿性能を意味するものと理解しなければならない。
【0039】
本実施形態による燃料電池用加湿器の特徴を以下でより詳細に上述する。
【0040】
第1キャップ部20は、第1キャップ部ハウジング22を含み、第1キャップ部ハウジング22は、内部空間を設け、排出空気流入口15と連通され、排出空気が第1キャップ部ハウジングの内部空間22sに流入されてよい。
【0041】
前記第1キャップ部20には、加湿膜11に供給される供給空気が流れる供給空気流入流路24が設けられてよい。
【0042】
第1キャップ部20は、供給空気流入流路24の内部に設置されるか又は少なくとも一部分が前記供給空気流入流路24の内側へ進入可能に備えられる可変部材100を含んでよい。
【0043】
供給空気流入流路24と可変部材100は、第1キャップ部ハウジング22の内部空間に設けられてよい。
【0044】
前記第1キャップ部ハウジング22は、供給空気が流入される一側から前記膜モジュール部10と結合される他側に行くほど内部空間が広くなるように形成され、プレート110が前記外側方向に所定角度で回転され得るように設けられてよい。
【0045】
前記第1キャップ部ハウジング22の一側には、供給空気が流入される供給空気注入口21が形成される。
【0046】
前記供給空気流入流路24の流路断面積は、前記供給空気注入口21の流路断面積より広く形成され、前記供給空気流入流路24に流入されつつ供給空気の圧力が上昇されるように設けられてよい。
【0047】
可変部材100は、プレート110と、弾性部材120と、連結部材130とを含んでよい。
【0048】
プレート110は、一端が第1キャップ部ハウジング22の一側に設置され、他端が膜モジュール部10の入口に向かって延長されてよい。
【0049】
プレート110は、第1及び第2プレート110を含んでよい。第1及び第2プレート110は、一対の固定流路壁23の一側及び他側にそれぞれ連結されてよい。
【0050】
前記第1キャップ部ハウジング22の内部空間には、一対の固定流路壁23が互いに向き合うように固定され、前記第1及び第2プレート110が一対の固定流路壁23の一側及び他側に互いに向き合って配置されてよい。
【0051】
これにより、前記一対の固定流路壁23と前記第1及び第2プレート110が共に前記供給空気流入流路24を形成するようになる。
【0052】
連結部材130は、プレート110の動きが許容されるようにするために、プレート110及びプレート110と連結されるようになる部材の間にそれぞれ設けられてよい。すなわち、プレート110は、連結部材130によって間接的に固定流路壁23、第1キャップ部ハウジング22、及び膜モジュール部10と連結されてよい。
【0053】
連結部材130は、プレート110と第1キャップ部ハウジング22を互いに連結する第1連結部材131を含んでよい。連結部材130は、プレート110と膜モジュール部10を互いに連結する第2連結部材132を含んでよい。連結部材130は、プレート110と固定流路壁23を互いに連結する第3連結部材133を含んでよい。
【0054】
プレート110は、一端が第1連結部材131によって第1キャップ部ハウジング22の一側に結合されてよい。すなわち、プレート110は、厳しい意味で一定の回転軸を中心に回転するように設置されてよく、又はプレート110は、ある程度回転する中心軸が変化されるが、全体的に見てはプレート110が軸回転するように見えてよい。
【0055】
プレート110の他端は、第2連結部材132によって膜モジュール部10の一端に連結されてよい。但し、プレート110が必ず膜モジュール部10の一端と連結されなければならないのではなく、供給空気流入流路24を形成する流路壁のうち膜モジュール部10の一端に連結される流路壁と連結されてもよい。
【0056】
弾性部材120は、プレート110を弾性支持するために第1キャップ部ハウジングの内部空間22sに設置されてよい。弾性部材120は、一端が第1キャップ部ハウジング22に固定され、他端がプレート110に固定されてよい。
【0057】
通常、空気圧縮機によって加湿器に供給される空気の流れによる圧力降下を考慮する時、加湿器での内部圧力は、第1キャップ部20の供給空気流入流路24>第2キャップ部30>膜モジュール部10の順である。すなわち、供給空気流入流路24の内部に流動される供給空気の圧力PINが第1キャップ部ハウジングの内部空間22sに流動される排出空気の圧力PEXより通常高い。
【0058】
したがって、弾性部材120は、供給空気流入流路24の中心に向けてプレート110を弾性支持するように設けられてよい。
【0059】
このように設けられるプレート110は、供給空気によって前記プレート110の内側面が受ける力と、排出空気によって前記プレート110の外側面が受ける力の差によって、前記内側方向と前記外側方向に回転されてよい。
【0060】
図3及び
図4は、
図1の燃料電池用加湿器の動作を説明するための図である。
【0061】
図3は、燃料電池システムが低出力条件の時を示した図である。
【0062】
燃料電池システムが低出力条件の時、燃料電池スタックに供給される供給空気の圧力が減少するようになる。供給空気流入流路24の内部で供給空気の圧力PINも相対的に減少するようになり、第1キャップ部ハウジングの内部の排出空気の圧力PEXもまた減少するようになる。
【0063】
プレート110に加えられる主力は、供給空気の圧力PINによってプレート110の内側面に加えられる力、排出空気の圧力PEXによってプレート110の外側面に加えられる力、そして、弾性部材120によって加えられる弾性力があるが、燃料電池システムが低出力条件の時には弾性力が全体合力において占める比重が大きくなる。
【0064】
これにより、弾性部材120の弾性力によってプレート110が回転しつつ供給空気流入流路24の内側方向に引込まれるようになる。
【0065】
プレート110が回転しつつ供給空気流入流路24の内側方向に引込まれるようになれば、供給空気流入流路24の、膜モジュール部10と隣接する一端部での流路断面積が減少されるようになる。供給空気は、供給空気流入流路24の狭くなった流路に沿って流動しつつ膜モジュール部10に流入されるようになり、このとき、膜モジュール部10の全体加湿領域のうち一部に供給空気が流入されるようになる。このとき、供給空気が流入される膜モジュール部10の加湿領域を第1有効領域A1と言う時、
図3のように第1有効領域A1が表れてよい。
【0066】
膜モジュール部10の全体加湿領域のうち一部にのみ供給空気が流入されるようになれば、膜モジュール部10の加湿領域全体に供給空気が流入される場合と比較する時、膜モジュール部10を通過しつつ供給空気が加湿される程度が低くなる。
【0067】
その結果、燃料電池システムが低出力の条件では加湿器の加湿性能が能動的に減少され得るようになる。
【0068】
図4は、燃料電池システムが高出力条件の時を示した図である。燃料電池システムが高出力条件の時、燃料電池スタックに供給される供給空気の圧力が増加するようになる。
【0069】
供給空気流入流路24の内部で供給空気の圧力PINも相対的に増加するようになり、第1キャップ部ハウジングの内部の排出空気の圧力PEXもまた増加するようになる。
【0070】
プレート110に加えられる主力は、供給空気の圧力PINによってプレート110の内側面に加えられる力、排出空気の圧力PEXによってプレート110の外側面に加えられる力、そして、弾性部材120によって加えられる弾性力があるが、燃料電池システムが高出力条件の時には弾性力が全体合力において占める比重が低くなる。
【0071】
通常、空気圧縮機によって加湿器に供給される空気の流れによる圧力降下を考慮する時、加湿器での内部圧力は、第1キャップ部20の供給空気流入流路24>第2キャップ部30>膜モジュール部10の順である。すなわち、供給空気流入流路24の内部に流動される供給空気の圧力PINが第1キャップ部ハウジングの内部空間22sに流動される排出空気の圧力PEXより通常高い。
【0072】
したがって、供給空気によって前記プレート110の内側面が受ける力と、排出空気によって前記プレート110の外側面が受ける力の差によって、プレート110が回転しつつ供給空気流入流路24の外側方向に移動されるようになる。
【0073】
プレート110が回転しつつ供給空気流入流路24の外側方向に移動されるようになれば、供給空気流入流路24の、膜モジュール部10と接する一端部での流路断面積が増加されるようになる。供給空気は、供給空気流入流路24の広くなった流路に沿って流動しつつ膜モジュール部10に流入されるようになり、このとき、膜モジュール部10の全体加湿領域に供給空気が流入されるようになる。このとき、供給空気が流入される膜モジュール部10の加湿領域を第2有効領域A2と言う時、
図4のように第2有効領域A2が表れてよい。
【0074】
図3と
図4を比較すれば、第2有効領域A2が第1有効領域A1より広く表れることを確認できる。
【0075】
その結果、燃料電池システムが高出力の条件では加湿器の加湿性能が能動的に増加されるようになる。
【0076】
以上では、高出力と低出力の条件のみを互いに比較して説明したが、燃料電池システムの出力条件が変わるにつれ加湿器の内部の空気圧力も変わるため、それに応じて加湿器の加湿性能が変化し得る。
【0077】
このように設けられる燃料電池用加湿器は、燃料電池システムの作動条件により加湿器の加湿性能を能動的に調節でき、特に、別途の電源を供給しなくても機械的な構造によって加湿器の加湿性能を調節できるように設けられてよい。
【0078】
これを介して、燃料電池スタックの内部で発生するドライング又はフラッディングを低減させ、燃料電池スタックの効率を高めることができる。
【0079】
図5は、本発明の他の実施形態による燃料電池用加湿器を概略的に示した図である。
【0080】
図5を参照すれば、本実施形態で可変部材200は供給空気流入流路24の内部に設置されてよい。
【0081】
可変部材200は、ヘッドプレート210と、内部弾性部材220と、伸縮部材230を含んでよい。
【0082】
ヘッドプレート210は、所定厚さのプレート形状に設けられてよい。
【0083】
内部弾性部材220は、ヘッドプレート210を弾性支持するために供給空気流入流路24の内側面に設置されてよい。
【0084】
伸縮部材230は、ヘッドプレート210と前記供給空気流入流路24の間の気密を維持し、前記ヘッドプレート210の動きが許容されるようにするために伸縮可能に設けられてよい。
【0085】
ヘッドプレート210と前記伸縮部材230によって、前記内部弾性部材220が収容される可変部材の内部空間が設けられてよい。
【0086】
前記供給空気流入流路24の、前記可変部材200が設置される部分には貫通ホール23hが形成され、前記貫通ホール23hを介して排出空気が前記可変部材の内部空間に流入され前記ヘッドプレート210の外側面を加圧してよい。
【0087】
供給空気により前記ヘッドプレート210の内側面が受ける力と、排出空気により前記ヘッドプレート210の外側面が受ける力の差によって、前記ヘッドプレート210が、前記内側方向と前記外側方向に移動されてよい。
【0088】
ヘッドプレート210の内側面は、供給空気と接触するようになるヘッドプレート210の一面と定義されてよい。ヘッドプレート210の外側面は、内部弾性部材220によって支持され、排出空気と接触するようになるヘッドプレート210の一面と定義されてよい。
【0089】
前記内側方向は、ヘッドプレート210が供給空気流入流路24の中心に向かう方向と定義されてよい。前記外側方向は、前記内側方向の反対方向と定義されてよい。
【0090】
図5を参照し、本実施形態による加湿器の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0091】
燃料電池システムが高出力の時には、供給空気流入流路24の内部の供給空気の圧力PINが大きくなり、これによって、供給空気により前記ヘッドプレート210の内側面が受ける力と、排出空気により前記ヘッドプレート210の外側面が受ける力の差によって、前記ヘッドプレート210が、前記外側方向に移動される。
【0092】
そして、ヘッドプレートの間の距離Dが遠くなり、可変部材200によって定義される流路断面積が増加するようになる。
【0093】
その結果、膜モジュール部10の加湿領域のうち供給空気が流入される有効領域が増加され、加湿器の加湿性能が増加するようになる。
【0094】
一方、燃料電池システムが低出力の時には、供給空気流入流路24の内部の供給空気の圧力PINが小くなり、これによって、供給空気により前記ヘッドプレート210の内側面が受ける力と、排出空気により前記ヘッドプレート210の外側面が受ける力の差によって、前記ヘッドプレート210が、前記内側方向に移動される。このとき、ヘッドプレート210が受ける全体合力において、内部弾性部材220による弾性力の占める比重が大きくてよく、したがって、弾性力によりヘッドプレート210が内側方向に移動されるものと見てもよい。
【0095】
そして、ヘッドプレートの間の距離Dが近くなり、可変部材200によって定義される流路断面積が減少するようになる。
【0096】
その結果、膜モジュール部10の加湿領域のうち供給空気が流入される有効領域が減少され、加湿器の加湿性能が減少するようになる。
【0097】
以上で本発明は、限定された実施形態と図面によって説明されたが、本発明は、これによって限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者により、本発明の技術思想と、以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で多様な実施が可能である。
【符号の説明】
【0098】
10:膜モジュール部
11:加湿膜
15:排出空気流入口
17:排出空気排出口
20:第1キャップ部
21:供給空気注入口
22:第1キャップ部ハウジング
22s:第1キャップ部ハウジングの内部空間
23:固定流路壁
23h:流路壁貫通ホール
24:供給空気流入流路
30:第2キャップ部
31:供給空気排出口
32:第2キャップ部ハウジング
100、200:可変部材
110:プレート
120:弾性部材
130:連結部材
131:第1連結部材
132:第2連結部材
133:第3連結部材
200s:可変部材の内部空間
210:ヘッドプレート
220:内部弾性部材
230:伸縮部材
A1:第1有効領域
A2: 第2有効領域
PIN:供給空気の圧力
PEX:排出空気の圧力
D:ヘッドプレートの間の距離